(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ティーバッグ、その製造方法、及びその香味増強方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/808 20060101AFI20230728BHJP
A23F 3/14 20060101ALI20230728BHJP
B65B 29/02 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B65D85/808
A23F3/14
B65B29/02
(21)【出願番号】P 2020218638
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303044712
【氏名又は名称】三井農林株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 貴浩
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-138696(JP,U)
【文献】特表2016-516431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0329726(US,A1)
【文献】特開2008-054627(JP,A)
【文献】特開2017-153375(JP,A)
【文献】特公昭53-010146(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/808
A23F 3/14
B65B 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉と、乳様粉末と、前記茶葉及び前記乳様粉末を保持する袋状フィルターとを含むティーバッグであって、
前記乳様粉末は、少なくともタンパク質と脂質とを含み、
前記乳様粉末において、脂質/(脂質+タンパク質)が、質量基準で0.72~0.90であり、
前記茶葉と、前記乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)が、1.6~5.0であ
り、
前記茶葉と前記乳様粉末の合計量が1カップ用ティーバッグ当たり4.0~10gである、
ティーバッグ。
【請求項2】
前記茶葉が、紅茶である、請求項1に記載のティーバッグ。
【請求項3】
前記乳様粉末は、脂質を30.0~70.0質量%含む、請求項1又は2に記載のティーバッグ。
【請求項4】
前記乳様粉末は、タンパク質を4.0~18.0質量%含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のティーバッグ。
【請求項5】
前記ティーバッグは、ショ糖をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のティーバッグ。
【請求項6】
茶葉と、乳様粉末と、前記茶葉及び前記乳様粉末を保持する袋状フィルターとを含むティーバッグの製造方法であって、
茶葉を用意する工程と、
少なくともタンパク質と脂質とを含み、脂質/(脂質+タンパク質)が質量基準で0.72~0.90である乳様粉末を用意する工程と、
前記茶葉と、前記乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)が、1.6~5.0
であり、かつ前記茶葉と前記乳様粉末の合計量が1カップ用ティーバッグ当たり4.0~10gとなるようにティーバッグ内に封入する工程とを含む、製造方法。
【請求項7】
前記封入する工程は、前記袋状フィルターに前記茶葉及び前記乳様粉末をそれぞれ入れることにより実施する、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
茶葉と、乳様粉末と、前記茶葉及び前記乳様粉末を保持する袋状フィルターとを含むティーバッグから得られる茶飲料の香味増強方法であって、
茶葉を用意する工程と、
少なくともタンパク質と脂質とを含み、脂質/(脂質+タンパク質)が質量基準で0.72~0.90である乳様粉末を用意する工程と、
前記袋状フィルター内で、前記茶葉と、前記乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)が、1.6~5.0
であり、かつ前記茶葉と前記乳様粉末の合計量が1カップ用ティーバッグ当たり4.0~10gとなるように調整する
工程とを含む、香味増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お湯を注ぐだけで、簡易的に本格的なミルクティーを提供できるティーバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
茶飲料の中でも、ミルクティーは、紅茶の香味とミルクの甘さがあいまって、やさしい味わいが好まれている。
【0003】
茶葉から本格的なミルクティーを作る方法としては、茶葉をポットに入れ、お湯を注ぎ、茶葉を蒸らし、やや濃いめに抽出し、そして茶こしを使って別のポットに注ぎ、最後の一滴まで注ぎ切る。これをカップに注いだ後、好みの量のミルクを注ぎ完成させる方法がある。
別の方法としては、水とミルクを鍋に入れ加熱する。茶葉は湯に浸しておいた後、茶葉を、水とミルクが入っている鍋に入れ、軽くかき混ぜる。やや長めに蒸らした後、茶こしを使って、ポットに注いで完成させる方法もある。
しかしながら、これらの方法は、非常に手間がかかる。そのため、直ぐに飲用できる粉末状のインスタントミルクティーが多く市販されている。
【0004】
インスタントミルクティーは、粉末状、顆粒状等の固体であって、水等の液体に溶解させるだけで簡単に調製できる利点を有する。しかしながら、使用している茶原料は抽出した液を粉末化したエキスパウダーのため、香りが弱く、茶本来の香味を感じにくい。そのため香味を補うために、香料を使用しなければならず、人工的な香味となってしまう。また粉末特性の維持や固結抑制のため、デキストリン等を添加させていることが一般的であるが、茶葉の香味が感じにくくなってしまい、ミルク感も不充分であった。そのため、本格感という観点では、茶葉から淹れるミルクティーに比べて満足できるものではない。容器入りとして市販されているミルクティーについても同様であり、製造されたミルクティーを殺菌する必要があるため、香料を後添加する必要があり、本来の茶の風味とは全く異なる風味を有するものとなってしまう。
【0005】
一方、家庭で簡便に茶葉を用いたミルクティーを味わうためには、沸騰したお湯にティーバッグを入れ、蒸らした後、牛乳を加える。次に沸騰直前まで温めた後、ティーバッグを引き上げ、ポットに移し替えて完成させる方法がある。しかし、この方法も、別途牛乳を用意すること、蒸らした後から牛乳を加えることなど若干手間がかかってしまう。
【0006】
このような課題を解決するための方法として、茶葉以外のミルク等の材料をティーバッグに封入する方法が開示されている。例えば、特許文献1には未抽出時には封入してある可食粉末の漏出を抑制でき、かつ、抽出時には可食粉末を飲料等に分散又は溶解させて容易に漏出させることができる飲料等の抽出用バッグが開示されている。
また、特許文献2には緑茶または抹茶とクリームを一緒に封入時の茶の香気成分の劣化、クリーム粉末の脂肪の劣化を防ぐために、ガスバリア性のある材質の外装に淹れて窒素ガス置換包装にすることによって、長期間保存しても風味劣化せず、簡単にクリーム入り茶が得られることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開WO2014-098097号公報
【文献】特開平05-139472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1及び2のいずれのミルクティーも、満足する香味や、ミルクのコクを得ることは難しかった。
【0009】
本発明では、お湯を注ぐだけで、インスタントティーでは得られない茶葉本来のフレッシュな香り立ちと、濃厚なコク味が感じられるミルクティーを簡便に得ることができる、茶葉と乳様粉末と、前記茶葉と前記乳様粉末を保持する袋状フィルターを含むティーバッグを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ミルク成分として用いる乳様粉末のタンパク質と脂質の割合、そして、乳様粉末と茶葉との質量比が、ティーバッグにより得られるミルクティーの香り立ち、及びコク味に影響することを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 茶葉と、乳様粉末と、前記茶葉及び前記乳様粉末を保持する袋状フィルターとを含むティーバッグであって、
前記乳様粉末は、少なくともタンパク質と脂質とを含み、
前記乳様粉末において、脂質/(脂質+タンパク質)が、質量基準で0.72~0.90であり、
前記茶葉と、前記乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)が、1.6~5.0である、
ティーバッグ。
[2] 前記茶葉が、紅茶である、[1]に記載のティーバッグ。
[3] 前記乳様粉末は、脂質を30.0~70.0質量%含む、[1]又は[2]に記載のティーバッグ。
[4] 前記乳様粉末は、タンパク質を4.0~18.0質量%含む、[1]乃至[3]のいずれかに記載のティーバッグ。
[5] 前記ティーバッグは、ショ糖をさらに含む、[1]乃至[4]のいずれかに記載のティーバッグ。
[6] 茶葉と、乳様粉末と、前記茶葉及び前記乳様粉末を保持する袋状フィルターとを含むティーバッグの製造方法であって、
茶葉を用意する工程と、
少なくともタンパク質と脂質とを含み、脂質/(脂質+タンパク質)が質量基準で0.72~0.90である乳様粉末を用意する工程と、
前記茶葉と、前記乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)が、1.6~5.0となるようにティーバッグ内に封入する工程とを含む、製造方法。
[7] 前記封入する工程は、前記袋状フィルターに前記茶葉及び前記乳様粉末をそれぞれ入れることにより実施する、[6]に記載の製造方法。
[8] 茶葉と、乳様粉末と、前記茶葉及び前記乳様粉末を保持する袋状フィルターとを含むティーバッグから得られる茶飲料の香味増強方法であって、
茶葉を用意する工程と、
少なくともタンパク質と脂質とを含み、脂質/(脂質+タンパク質)が質量基準で0.72~0.90である乳様粉末を用意する工程と、
前記袋状フィルター内で、前記茶葉と、前記乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)が、1.6~5.0となるように調整することを特徴とする香味増強方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のティーバッグは、従来技術では得ることができなかった、お湯を注ぐだけで、簡便に茶葉本来のフレッシュな香り立ちと、濃厚なコク味が感じられるミルクティーを得ることができるものである。さらに、ショ糖を配合することによって、さらにコク味が増し、より飲みやすいミルクティーが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、特別な記載がない場合、「%」は質量%を示す。また、「下限値~上限値」の数値範囲は、特に他の意味であることを明記しない限り、「下限値以上、上限値以下」の数値範囲を意味する。
(茶葉)
本発明で使用する茶葉は、ツバキ目ツバキ科ツバキ属の常緑樹であるチャノキ(Camellia sinensis)を原料としたものであれば良く、緑茶、烏龍茶、紅茶、ジャスミン茶として加工された茶葉をそのまま利用できる。本発明では発酵茶である紅茶葉が好ましく、ダージリン、アッサム、ニルギリ、ディンブラ、ウバ、ヌアラエリア、ケニア、キーモン等の海外産紅茶の他、やぶきた、べにほまれ、べにひかり、べにふじ、べにふうきなどの品種から加工された日本産紅茶葉の、1種あるいは2種以上の茶葉をブレンドして原料として使用できる。
本発明に使用する紅茶葉の大きさは、FOP(フラワリー・オレンジ・ペコー)、OP(オレンジ・ペコー)、P(ペコー)、PS(ペコー・スーチョン)、BPS(ブロークン・ペコー・スーチョン)、BP(ブロークン・ペコー)、BOP(ブロークン・オレンジ・ペコー)、BOPF(ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス)、F(ファニングス)、D(ダスト)、CTC(シーティーシー)等を使用できる。このなかでもBOP(ブロークン・オレンジ・ペコー)、BOPF(ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス)、F(ファニングス)、D(ダスト)、CTC(シーティーシー)が好ましい。
【0014】
(乳様粉末)
本発明のティーバッグは、乳様粉末を含む。本明細書において、乳様粉末とは、乳感やクリーム感を付与することを目的とした粉末であって、全粉乳や脱脂粉乳など牛乳由来の原料やそれらに植物性油脂、デキストリン、糖類、乳化剤、pH調整剤等を加えた粉末であり、またこれらを顆粒化したものを意味する。
本発明に用いることができる乳様粉末は、少なくともタンパク質と脂質とを含み、脂質とタンパク質の合計に対する脂質の比率(脂質/(脂質+タンパク質))は、質量比で、0.72~0.90であり、好ましくは、0.74~0.88である。脂質/(脂質+タンパク質)が0.72以上であると、紅茶のコクが増加し、0.90以下であれば、茶葉特有のすっきりとした香り立ちが得られる。
【0015】
本発明の乳様粉末としては、脂質とタンパク質の合計に対する脂質の比率(脂質/(脂質+タンパク質))は、質量比で、0.72~0.90であれば、特に限定されるものではなく、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、乳糖、ホエーパウダーやこれらの混合物などが挙げられる。なお、全粉乳、脱脂粉乳のみの使用は、脂質/(脂質+タンパク質)について、0.72~0.90の範囲に入らず、好ましくない。
脂質とタンパク質の合計に対する脂質の比率の下限は、0.74以上であると好ましく、0.77以上であるとさらに好ましい。また、脂質とタンパク質の合計に対する脂質の比率の上限は、0.88以下であると好ましく、0.85以下であるとさらに好ましい。
脂質は、乳原料由来及び/又は植物油脂を原料とすることが好ましい。植物油脂として、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、コーン油、綿実油、ナタネ油、米油、ひまわり油、ベニバナ油、中鎖脂肪酸トリグリセリドを添加してもよい。
乳様粉末のタンパク質は、乳由来、大豆等の植物由来でもよいが、紅茶由来の香味との相性の点で、乳由来が好ましい。
なお、本発明で使用する乳様粉末は、好ましくは、タンパク質を4.0~18.0質量%含む。より好ましくは、4.5~16%である。また、脂質を好ましくは、脂質を30.0~70.0質量%含む。より好ましくは、35.0~60.0質量%含む。
【0016】
本発明で使用される乳様粉末は、例えば、デキストリン、クリーム加工品、乳化剤、pH調整剤、カゼインナトリウムなどをさらに含むことができる。
【0017】
本発明の乳様粉末の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、ティーバッグのバッグ(袋状フィルター)から粉漏れが抑制できる平均粒子径であることが好ましい。ティーバッグの袋状フィルターの種類にもよるが、平均粒子径は、例えば、200μm~1200μmであることができる。このサイズであれば、抽出時にティーバッグ内に乳様粉末が溶け残ることがなく、十分に抽出することができ、また、従来から用いられている袋状フィルターから粉漏れしにくい。なお、平均粒子径はホソカワミクロン社の粉末特性総合測定装置(型式PT-X)を用いて測定することができる。
乳様粉末は、市場で入手可能な乳様粉末を使用することができ、粉漏れ抑制及び香味の観点から更に造粒してもよい。市販の乳様粉末としては、例えばミルフィー(三井農林株式会社製)、ニューラクトND-N200(アサヒグループ食品株式会社製)、クリープ(森永乳業株式会社製)などのクリーミングパウダーを使用することができる。市販の乳様粉末はそのまま使用することもできるが、以下に記載の乳タンパク、脂質を適宜調整して使用することができる。乳タンパクとして脱脂粉乳、全粉乳、ホエープロテイン、カゼインまたはカゼインナトリウム、脂質として植物油脂(ヤシ油、パーム油を原料とした油脂)などの素材を利用して、タンパク質および脂質を適宜調整して使用することができる。また、これらを造粒してもよく、造粒する方法は、押出し造粒が好ましく、造粒により所望の平均粒子径の粉末を作製することができる。
タンパク質の含有量は、タンパク質濃縮物や脱脂粉乳といったタンパク質源となる原料の添加量から算出することができるほか、当業者に公知の方法で行うことができ、例えば「日本食品標準成分表2015年度版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省科学技術・学術政策局政策課資源室監修、建帛社2016年2月)のp25-32に記載のケルダール法または燃焼法(改良デュマ法)により全窒素量を測定し、測定値に窒素・タンパク質換算係数6.38を乗じて求めることができる。
脂質の含有量は、原料の添加量から算出することができるほか、当業者に公知の方法で行うことができ、例えば、「日本食品標準成分表2015年度版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省科学技術・学術政策局政策課資源室監修、建帛社2016年2月)のp42-43に記載のレーゼゴットリーブ法を用いて測定することができる。
【0018】
(混合割合)
本発明のティーバッグにおける茶葉と、乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)は、1.6~5.0である。1.6以上であれば、ミルクティーの乳由来のコク味がより増し、5.0以下であれば、紅茶らしさがより感じられる。茶葉と、乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)の下限は2.5以上であれば好ましく、3.0以上であればさらに好ましい。また、茶葉と、乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)の上限は、4.6以下であれば好ましく、4.0以下であればさらに好ましい。
本発明のティーバッグは、上記の乳様粉末との質量比が、1.6~5.0を満たすことと、それに加えて、脂質とタンパク質の合計に対する脂質の比率(脂質/(脂質+タンパク質))は、質量比で、0.72~0.90を満たすことの両方を兼ね備えることにより、一般的にティーバッグで茶を抽出してからミルクを加えてミルクティーを作るよりも、香り立ちがよく、さらにミルクのコクのあるミルクティーを得ることができる。
【0019】
本発明のティーバッグに封入する原料中に、所望により、果実片、果実粉末、香辛料、ハーブを1種又は2種以上配合することができる。なお、これらの配合量は本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜設定することが可能である。
また、ショ糖などの糖質をティーバッグにさらに入れると、甘いミルクティーを得ることだけでなく、さらにコクが出るというという特徴がある。本発明にティーバッグに加えることができる糖質としては、乳由来の乳糖のほか、ショ糖、グルコース、デキストリン等が挙げられる。ショ糖の配合量は、本発明の乳様粉末配合ティーバッグ1袋あたりでは、甘さとコク味の点で0.1g~5gが好ましく、1.0g~3.0gがより好ましい。また、茶葉1gあたりであれば0.05g~2.5gが好ましく、0.5g~1.5gがより好ましい。
【0020】
本発明のティーバッグは、紅茶エキス、紅茶フレーバーまたはミルクフレーバーを別途配合しなくても、本格的なミルクティーが得られるものであるが、これらの配合を排除するものではない。
【0021】
(ティーバッグ)
本発明のティーバッグは、袋状フィルターの中に茶葉及び乳様粉末を含有するものであり、ティーバッグを例えば水や湯につけることで、茶成分を抽出しながら、乳様粉末を水又は湯の中に溶かすことができるものである。袋状フィルターは、その中に茶葉及び乳様粉末を入れることができる形状であれば、特に制限されるものではないが、例えばテトラ型、スクエア型、長方形、丸型などが挙げられる。これらのサイズは、1カップ用で、テトラ型(四面体)であれば1辺が60mm~80mm、平バッグであれば、60~70mm×40~60mmが例示できる。
袋状フィルターの素材は特に限定されるものではないが、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリエステル、紙、不織布などが挙げられる。
本発明に使用される袋状フィルターのメッシュサイズは、茶葉及び乳様粉末を中に保持でき、且つ、水又は湯につけることにより、茶成分を抽出しながら、乳様粉末に溶かすことができる限りにおいては、特に限定されるものではないが、例えば、93~150mesh/inchが好ましく用いられる。茶葉及び乳様粉末をティーバッグに封入する方法としては、当業者に公知の手法を採用することができる。
ティーバッグの製造方法は、茶葉を用意する工程と、少なくともタンパク質と脂質とを含み、脂質/(脂質+タンパク質)が質量基準で0.72~0.90である乳様粉末を用意する工程と、前記茶葉と、前記乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)が、1.6~5.0となるようにティーバッグ内に封入する工程とを含む。
茶葉と、乳様粉末とを袋状フィルターに封入する工程は、茶葉と乳様粉末を事前に混合させておいてから、その混合物を袋状フィルターに封入してもよいし、茶葉と乳様粉末をそれぞれ袋状フィルターに封入してもよいが、取り扱いの観点から、茶葉と乳様粉末をそれぞれ袋状フィルターに封入する方が好ましい。
【0022】
本発明のティーバッグは、それをカップに入れ湯(熱水)を注いで飲用することができる。なお、カップの容量は例えば、180~300mLのものを用いることができる。本発明のティーバッグを使用してミルクティーを淹れる方法としては、従来からの方法を用いればよく、具体的には、例えば、ティーバッグ1個につき85~90℃の熱湯150mLを注ぎ、90秒抽出し、抽出後、ティーバッグをやさしく振り引き上げる等が例示できる。なお、この際のティーバッグの中に含まれる茶葉と乳様粉末の合計量は、おおよそ、4~10g程度であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
このように、脂質/(脂質+タンパク質)が、質量基準で0.72~0.90の乳様粉末を用いて、茶葉と、乳様粉末との質量比(乳様粉末/茶葉)を、1.6~5.0になるように調整することにより、従来のミルク入りティーバッグよりも、茶そのものの香味を増強することができる。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0024】
[分析方法]
まず、実施例・比較例に使用したティーバッグを用いて得られたミルクティーの成分、及び、得られたミルクティーの香気成分の分析方法について説明する。
【0025】
<抽出したミルクティーの成分分析>
実施例、比較例で得られたミルクティーの成分の分析を、下記のように行った。
【0026】
・茶ポリフェノール測定用試料液の調製方法
(試料溶液の調製)
(1)抽出して得られたミルクティー25mLを50mL容メスフラスコに移し、20mLの80%メタノールを加える
(2)(1)に1M-HCl 150μL加え、混和し、蛋白の沈降を確認する
(3)常温に戻し定容する
(4)15mLコーニングにこの抽出液を11mL移し、遠心分離(20℃,3,500rpm,10min)する
(5)上清を孔径0.45μmの親水性PTFEフィルター(ADVANTEC,DISMIC-13HP)でろ過し、得られたろ液をポリフェノール量の測定に用いる試料溶液とした。
【0027】
・抽出したミルクティーの茶ポリフェノールの成分測定
茶ポリフェノールの定量は「日本食品標準成分表2015年度版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省科学技術・学術政策局政策課資源室監修、建帛社2016年2月)のp242-243に記載の酒石酸鉄吸光光度法」に従って行った。なお、定量用標準物質には没食子酸エチル(東京化成工業(株)製)を用い、調製溶液には1M塩酸を0.4%添加した32%メタノール(v/v)を用いた。また、本発明において茶ポリフェノールは茶に含まれるポリフェノールのことであり、タンニンや茶タンニン等の用語と同義に扱う。
【0028】
<抽出したミルクティーの香気成分の分析方法>
実施例及び比較例で得られたミルクティー(抽出液)を20mLバイアルに入れ、水10mL(内部標準物質としてシクロヘプタノール(東京化成工業(株)製)を終濃度で500ppbとなるように添加)を加えた。このサンプル液について固相マイクロ抽出法(Solid Phase Micro Extraction:SPME)を用いたGC/MS分析に供した。評価は各香気成分のピークエリアと内部標準物質のピークエリアの比によって求めた。
(SPME-GC/MS条件)
GC:TRACE GC ULTRA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
MS:TSQ QUANTUM XLS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
SPMEファイバー:50/30μm Divinylbenzene/Carboxen/Polydimethylsiloxane Stableflex
抽出:60℃、30分
カラム:SUPELCO WAX10(0.25mmI.D.×60m×0.25μm、シグマアルドリッチ社製)
オーブンプログラム:40℃で2分間保持した後、100℃まで3℃/分で昇温し200℃まで5℃/分で昇温し、その後240℃まで8℃/分で昇温し、8分間保持した。
キャリアーガス:ヘリウム(100kPa、一定圧力)
インジェクター:スプリット、240℃
イオン化:電子イオン化
イオン化電圧:70eV
【0029】
試験例1[官能評価による茶葉と乳様粉末の配合バランスの評価]
(サンプルの準備)
表1に示したような割合で、紅茶葉(インド、スリランカ、ケニア産の紅茶のブレンドCTC、BOP)と乳様粉乳(脂質33.0%、脂質/(脂質+タンパク質)=0.87)脱脂粉乳、植物油脂配合)を調整し、大紀商事株式会社製サスティコ(不織布、生分解)で作製した袋状フィルター(テトラ型)に封入し、乳様粉末配合ティーバッグにした。
【0030】
(抽出条件)
乳様粉末配合ティーバッグに90℃の熱湯150mLを注ぎ、90秒抽出した。抽出後、ティーバッグをやさしく振り引き上げた。
【0031】
(官能評価方法)
パネリスト7名による官能評価試験を行った。評価基準は、官能評価として、紅茶感とミルク感のバランスを評価し、◎:非常にバランスが良い、○:ややバランスが良い、△:ややバランスが悪い、×:非常にバランスが悪いとした。結果を表1に示す。
また、溶解性も確認し、抽出後のティーバッグを目視で確認した。乳様粉末の溶け残りがなかったものを○、溶け残りがあったものを×とした。
さらに、総合評価として、官能評価と溶解性から、両方が◎または○の場合は○、どちらか一方が×の場合は×とした。×がなく且つどちらかが△の場合は△とした。
【0032】
【0033】
表1より、ティーバッグを用いて紅茶を抽出する場合、紅茶葉に対して、特定の範囲の量の乳様粉末を用いると、総合評価が高いことがわかった。なお、ティーバッグという狭い空間で茶葉と乳様粉末を10g配合する場合、香味は良くなるが、粉末の溶出に時間がかかり、わずかに溶け残りが生じたが、ティーバッグに含まれる茶葉と乳様粉末の合計量は、フィルターの大きさに応じて適宜設計変更できるものである。また、茶葉の配合量は、今回の試験例(1カップ用)のティーバッグ1袋中0.75gでは官能評価として紅茶感とミルク感のバランスの点で好ましくなかった。
【0034】
試験例2[乳様粉末の違いによる評価]
(サンプルの準備)
表2、3に示す原料を用いて、紅茶葉と乳様粉末を調整し、大紀商事株式会社製サスティコ(不織布、生分解)で作製した袋状フィルター(テトラ型)に封入し、乳様粉末配合ティーバッグにした。
なお、表2は乳様粉末の中のタンパク質を一定にした場合の結果、表3は、乳様粉末の中の脂質を実質的に一定にした場合の結果である。使用した茶葉は、表1の茶葉と同じであり、使用した乳様粉末は、エマファットCO-7L(ヤシ油配合(植物油脂)78.5%、タンパク質6.8% 理研ビタミン株式会社製)と、脱脂粉乳(タンパク質34%、脂質1% よつ葉乳業株式会社)とを混合し、表2、表3の脂質、タンパク質となるように調製したものを用いた。
【0035】
(抽出条件)
乳様粉末配合ティーバッグに90℃の熱湯150mLを注ぎ、90秒抽出した。抽出後、ティーバッグをやさしく振り引き上げた。
【0036】
(官能評価方法)
パネリスト7名による官能評価試験を行った。インスタントミルクティーをコントロールとして、乳様粉末配合ティーバッグを評価した。評価基準は、フレッシュな香り立ち、新鮮香、花のような重い香り、油脂感(脂肪感)・乳のコク味、粉臭、紅茶感、総合評価によって判断し、◎:非常に強い(非常においしい)、○:やや強い(ややおいしい)、△:やや弱い(ややおいしくない)、×:非常に弱い(非常においしくない)とした。結果を表2、表3に示す。使用した袋状フィルターは、不織布である。なお、比較例17と比較例23は、コントロール(表では、「C」と表記)とし、他の実施例、比較例の基準とする。
【0037】
【0038】
【0039】
表2、表3より、特定のタンパク質と脂質の比、すなわち、脂質/(タンパク質+脂質)が、適切な範囲であると総合評価として素晴らしい結果が得られた。
【0040】
試験例3[乳様粉末の投入のタイミングの違いによる影響の評価]
茶葉2g(インド、スリランカ、ケニア産ブレンド紅茶)、乳様粉乳5g(アサヒグループ食品株式会社ニューラクトND-N200)を用いた。茶葉と乳様粉末を封入したティーバッグを1つ、茶葉を含むミルク不含有のティーバッグを2つ用意した。また、前記ティーバッグと同じ量の茶葉を粉末化し、同じ茶葉量使用率で調整したインスタントティーも用意した。ティーバッグを用いた抽出は、熱湯150mlを注ぎ90秒抽出し、90秒後、上下にティーバッグを1回/秒で5回振ることにより、行った。なお、ティーバッグは大紀商事株式会社製サスティコ(不織布、生分解)を袋状フィルター(テトラ型)にしたものを使用した。
乳様粉末の投入タイミングを「後」である場合は、ミルク不含有ティーバッグによる抽出が完了した茶飲料に、同量(5g)の乳様粉末を加えた。これをコントロール(評価基準)とした。
また、乳様粉末の投入タイミングを「前」である場合は、同量(5g)の乳様粉末を、熱湯150mlに加え、乳様粉末を完全に溶かしたあと、乳様粉末不含有のティーバッグを入れて、90秒後、上下にティーバッグを1回/秒で5回振って、抽出した。
インスタントティーを利用した試験では、インスタントティーと乳様粉末を同時にカップに入れ90℃の熱湯150mLを注ぎ、よく攪拌した。結果は、表4に示す。
官能評価は、試験例2の評価と同様に実施した。
【0041】
【0042】
表4の結果から、本発明のティーバッグは、素晴らしい総合評価が得られ、後抽出やインスタントティーに比べて、優れた総合評価を得ることができた。特に、本発明のティーバッグで得られたミルクティーは、香り立ち、新鮮香の点において、優れた結果が得られ、同時抽出において懸念される、茶葉から得られる独特の香り立ち、新鮮香の抑制が極めて少ないことがわかった。
【0043】
試験例3(乳様粉末の投入のタイミングの違いによる影響の評価)で得られた抽出液のポリフェノールと香気成分を分析した。結果を表5、6に示す。これらの結果より、本発明の乳様粉末配合ティーバッグで得られる抽出液は、ポリフェノールも十分に抽出されること、香気成分についても、官能評価のフレッシュな香り立ち、新鮮香、花のような重い香りに対応した香気成分、トップ系、グリーン系、フラワリー系・フローラル系とも他の条件よりも高い値を示していた。
【0044】
【0045】
【0046】
表6の香気成分は、官能評価のフレッシュな香り立ち、新鮮香、花のような重い香りに対応した香気成分である。この結果から、本発明の乳様粉末配合ティーバッグで得られるミルクティーがフレッシュな香り立ち、新鮮香、花のような重い香りの点で優れていることが確認できた。
【0047】
試験例4[糖の配合量の違いによる影響の評価]
2gの茶葉(インド、スリランカ、ケニア産のブレンド紅茶)と、7gの乳様粉末(脂質33.0%、脂質/(脂質+タンパク質) =0.87(脱脂粉乳,植物油脂配合) と、表9の砂糖を大紀商事株式会社製サスティコ(不織布、生分解)で作製した 袋状フィルター(テトラ型)に封入して、乳様粉末配合ティーバッグにした。
抽出条件は、90℃の熱湯150mLを注ぎ、90秒抽出した。抽出後、ティーバッグを1回/秒で5回やさしく振り、引き上げた。
なお、官能評価については、砂糖を配合しない乳様粉末配合ティーバッグをコントロールとして、下記内容を表7に示す点数表に基づいて数値化し、数値化した値を表8の判定表に基づいて分類に分け、その結果を表9に示す。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
表9からもわかるように、砂糖を加えることで甘味が増し、さらにコクが付与され、また香り立ちや新鮮香が、無糖(表4参照)の場合と比較し、若干弱まるものの比較的良好な香り立ち、新鮮香を維持しながら、より飲みやすいミルクティーが得られた。
【0052】
一般的にティーバッグを用いてミルクティーを作る場合、ティーバッグや茶葉で抽出した後、乳様粉末を入れて作るが、本発明の乳様粉末配合ティーバッグであれば、香味において、より紅茶感を感じ、乳感とのまとまりもあり、嗜好性に優れたミルクティーを手軽に作ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によればティーバッグ1つで簡便に本格的なミルクティーを作ることが可能である。