IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トラウマ・ケア・コンサルト・トラウマトロギッシュ・フォルシュング・ゲマインニュッツィゲ・ゲゼルシャフト・エムベーハーの特許一覧

特許7321152軟骨移植片の再細胞化を可能にするエラスチン低減
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】軟骨移植片の再細胞化を可能にするエラスチン低減
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/36 20060101AFI20230728BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20230728BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A61L27/36 120
A61L27/36 410
A61L27/56
A61L27/38 112
A61L27/38 111
A61L27/36 312
A61L27/36 311
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020520742
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018078080
(87)【国際公開番号】W WO2019073079
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】17196460.4
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519426667
【氏名又は名称】トラウマ・ケア・コンサルト・トラウマトロギッシュ・フォルシュング・ゲマインニュッツィゲ・ゲゼルシャフト・エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ニュルンベルガー,シルビア
(72)【発明者】
【氏名】ファン・オシュ,ゲールトルーダ・ヨハンナ・ビクトリア・マリア
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,ヨハネス
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522605(JP,A)
【文献】LIZETTE UTOMO et al.,PREPARATION AND CHARACTERIZATION OF A DECELLULARIZED CARTILAGE SCAFFOLD FOR EAR CARTILAGE RECONSTRUCTION,BIOMEDICAL MATERIALS,2015年01月13日,VOL:10,PAGE(S):15010/1-11,http://dx.doi.org/10.1088/1748-6041/10/1/015010
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路および/または小腔を含有する軟骨スキャフォールドを生成する方法であって、
弾性軟骨試料を提供するステップと、
前記軟骨試料を、水溶液であって、エラスターゼ、および任意選択で、1つまたは複数のさらなるタンパク質分解酵素からなる水溶液とともにインキュベートして、それにより、前記軟骨試料のエラスチン線維を低減させて、軟骨スキャフォールドに通路および/または小腔を生成するステップであって、ここで前記エラスチン線維がエラスチン線維の量の10%に低減される、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
エラスチン線維が、エラスチン線維の量の1%に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液が、1U/ml~12U/mlのエラスターゼを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
エラスターゼが、膵エラスターゼであり、さらなるタンパク質分解酵素が、ペプシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液が、0.01U/ml~10U/mlのエラスターゼおよび0.05mg/ml~5mg/mlのペプシンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
軟骨スキャフォールドが、脱細胞化ステップに付される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
軟骨スキャフォールドが、汚染除去ステップにさらに付される、請求項1または6に記載の方法。
【請求項8】
インキュベーションステップが、0.5時間~80時間、または5時間~78時間、または20時間~50時間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
細胞を、エラスチン線維が低減された軟骨スキャフォールドに接着させることによって、前記スキャフォールドを再細胞化させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
軟骨スキャフォールドが、軟骨スキャフォールドの通路および/または小腔への細胞の遊走によって再細胞化される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞が、軟骨スキャフォールド上へ、および/または軟骨スキャフォールドの通路および/または小腔へ細胞を注入することによって播種される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
軟骨スキャフォールドの再細胞化に使用される細胞が、軟骨細胞、軟骨膜細胞、骨膜細胞、ならびに脂肪由来間質血管幹細胞、滑膜由来間葉系細胞および骨髄由来間質細胞等の幹細胞/前駆細胞等の軟骨形成能または骨形成能を有する細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
軟骨スキャフォールドの再細胞化に使用される細胞が、前記軟骨スキャフォールドのレシピエントから得られる自己ヒト細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
軟骨スキャフォールドの再細胞化に使用される細胞が、前記軟骨スキャフォールドのレシピエントではない個体から得られる同種ヒト細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
通路および/または小腔を含む、エラスチン線維が低減された軟骨スキャフォールドであって、前記軟骨スキャフォールドが:
弾性軟骨試料を提供するステップと;
前記軟骨試料を、水溶液であって、エラスターゼ、および任意選択で、1つまたは複数のさらなるタンパク質分解酵素からなる水溶液とともにインキュベートすることによって、前記軟骨スキャフォールドからエラスチン線維を低減するステップ
とによって提供され、
ここでエラスチン線維が、軟骨スキャフォールドからエラスチン線維を低減させるステップに先立つエラスチン線維の量の10%以下に低減されている、前記軟骨スキャフォールド。
【請求項16】
軟骨細胞、軟骨膜細胞、骨膜細胞、ならびに脂肪由来間質血管幹細胞、滑膜由来間葉系細胞および骨髄由来間質細胞等の幹細胞/前駆細胞からなる群から選択される細胞をさらに含む、請求項15に記載の軟骨スキャフォールド。
【請求項17】
関節、鼻、気道および耳軟骨等の軟骨の修復、骨軟骨欠損の修復および骨欠損の修復の方法における使用のための請求項15または16に記載の軟骨スキャフォールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、組織移植片の分野に関する。より具体的には、本発明は、軟骨移植片の改良の分野に関する。特に、本発明は、スキャフォールドの再細胞化(recellularization)を可能にする通路(channel)および/または小腔(lacunae)を含有する軟骨スキャフォールドのエラスチンを低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]身体における臓器は、先天性障害、後天性疾患、事故および老齢に起因して、機能が低下する場合がある。臓器の移植は、ドナー臓器の不足、および臓器拒絶を防止するために免疫系を抑制する必要があることの両方によって困難なものになっている。この数十年間、臓器を構成する細胞の本発明者らの知見は、急速に拡大されており、掻爬片(scratch)からの移植用の臓器の創出(いわゆる組織工学)はますます現実的になっている。臓器は、細胞およびマトリックスの組合せであり、後者は、細胞を適所に保持する三次元構造を提供する。細胞は、各人に特有のマーカーを保有し、身体が外来組織を認識し、免疫応答を示すことによって外来組織を拒絶することを可能にしており、故に、異なる個体間での臓器移植後の免疫抑制が必要とされる。しかしながら、マトリックスを形成する分子は、人々の間で、分子によっては、ヒトと他の動物との間でさえ、同一でないとしても類似している。マトリックスは、組織に構造を提供するため、臓器を作製するための出発物であるスキャフォールドとしてそれらを使用することは、魅力的であるように思われる。このため、脱細胞化(decellularization)と呼ばれる第1のステップでは、細胞が、臓器から除去されて、スキャフォールドを残す。再細胞化と称される第2のステップでは、スキャフォールドへの定着が再び生じるように、レシピエント、即ち、臓器を必要とする患者に由来する細胞が注入されることもある。心臓および膀胱等の臓器に関しては、このアプローチは、見込みがあると示されているが、組織工学は依然として、臨床よりも実験台で行う学問である。
【0003】
[0003]軟骨は、堅固な構造を柔軟にする。軟骨は、例えば、筋肉よりも頑丈であり、さらに骨とは対照的に、破損することなく変形することが可能である。したがって、軟骨は、柔軟性が必要とされる箇所ならばどこにでも存在する。気管および鼻において、軟骨は、気道を開放し続けるのに十分硬いが、呼吸および会話に必要とされる動きに適応するように変形することも可能である。その柔軟性はまた、バイクのタイヤに非常に類似して、例えば関節における骨表面の薄層として、または脊椎の椎間板として存在する場合に、軟骨を、衝撃吸収体として機能させる。軟骨の柔軟性は、硬いが、弾性のあるマトリックスと組み合わせた可逆的な保水性という簡素な原理に起因する。
【0004】
[0004]軟骨スキャフォールドは、絡み合った保水性分子を伴う構造線維のネットワークである。力がかかると、水が軟骨から絞り出されて、組織が収縮する。力が除かれると、水は戻り、軟骨は、その本来のサイズまで膨潤する。
【0005】
[0005]ほとんどの他の組織とは異なり、軟骨は治癒しない。例えば、外傷後、または手術中に損傷を受けると、軟骨は分解して、それにより、軟骨によって通常吸収される機械的な力が、多くの場合、崩壊を加速させる。軟骨損傷は、重要な医療問題であり、整形外科および頭頸部外科の医療分野では最重要である。身体は、損傷を受けた軟骨を修復することが不可能であるので、組織は置換されなくてはならない。軟骨は、1つの細胞型のみ、つまり軟骨細胞を含有し、理論上は、心臓等の、より複雑な臓器と比較すると、その作製はそれほどの難題でもないため、科学者が作製しようと試みた最初の組織の1つであった。
【0006】
[0006]軟骨を脱細胞化するのに、多くのプロトコルが開発されている一方で、ステップ2である再細胞化は不可能であることが明らかになってきた。軟骨は、コラーゲン線維のその高密度なネットワークおよび血管の不足のため、細胞浸潤するように改変できない。軟骨スキャフォールド中に存在する軟骨細胞は、高密度なコラーゲンネットワーク中の孔を通って洗い流されるのに十分小さな小片へと破壊された場合に除去することができる一方で、新たな細胞は一般的に、大きすぎて、ネットワークに入ることができない。さらに、細胞外マトリックスへの細胞接着は、グリコサミノグリカン(GAG)の存在によって防止される可能性がある(Baraら、2012.Connect Tissue Res 53:220~8)。未公開の観察により、軟骨細胞、骨髄由来間質細胞(BMSC)、およびさらには、高侵襲性癌細胞株は、脱細胞化された軟骨へ遊走することが不可能であったことが示されている。さらに、移植片が免疫細胞による浸潤を起こしやすい高度に血管新生された環境であるマウスの皮膚下に移植された脱細胞化された自然軟骨は、細胞浸潤の徴候を全く示さなかった(未公開データ)。
【0007】
[0007]米国特許第2008/077251号は、軟骨移植片をきれいにして、消毒することと、前処理溶液で軟骨移植片を処理することと、抽出溶液で軟骨移植片を処理することと、抽出された軟骨移植片を、すすぎ溶液で洗浄することと、続いて生命活性を失った軟骨移植片を貯蔵溶液に浸漬することとによって、きれいにした消毒済の生命活性を失った軟骨移植片を生成する方法を開示している。軟骨マトリックスの細胞外マトリックスは、修飾するためのコンドロイチナーゼABCを含む前処理溶液によって修飾される。続いて、生命活性を失った軟骨移植片は、移植前または移植後に、生細胞を用いて再細胞化して、組織に生命活性を与えてもよい。国際公開第2009/149224号は、無細胞組織マトリックス(ATM)から、修飾された無細胞組織マトリックス(mATM)を生成する方法を開示しており、そこでは、mATMは、その関連構造完全性または機能的完全性を実質的に損なうことなく、ATMに対して、伸縮性が低減されている。この方法は、軟骨を脱細胞化することと、それを0.1U/ml~0.5U/mlのブタ膵エラスターゼで、12時間~24時間処理し、したがって、存在するエラスチンの少なくとも一部を除去することとを含む。次に、スキャフォールドは、自己または同種骨髄細胞とともに播種される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]軟骨試料の脱細胞化に関する既存の方法は、構造特性および機械特性を維持しながら、細胞が軟骨スキャフォールドに浸潤して再細胞化することを可能にしないが、軟骨スキャフォールドの再細胞化は、移植後に、完全に機能的な軟骨を保証して、マトリックスを維持して、スキャフォールドの分解を防ぐのに必須である。したがって、軟骨スキャフォールドの首尾よい再細胞化を達成することにより、軟骨移植片の品質が大いに改善される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明は、a)弾性軟骨試料を提供するステップと、b)上記軟骨試料からエラスチンを低減させて、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドを生成するステップとを含む、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドを生成する方法を提供する。硝子軟骨および線維軟骨とは対照的に、弾性軟骨は、コラーゲンネットワークを横行して、軟骨細胞が存在する小腔と称されるポケットを包囲するエラスチンの大きな線維束を含有する。本発明は、弾性軟骨試料からエラスチン線維を除去し、細胞が、エラスチンが低減された弾性軟骨スキャフォールドに浸潤および結合することを可能にすることによってこの問題を解決する。
【0010】
[0010]軟骨スキャフォールドは、ヒトから、例えば、軟骨スキャフォールドを移植片として受け入れる軟骨欠損を患うヒト、移植片のレシピエントに由来しない同種ドナーから、または異種供給源から得られ得る。結果産物のエラスチンが低減された軟骨スキャフォールドは主に、哺乳類種で保存されるタンパク質および線維で構成される。したがって、同種供給源または異種供給源由来のスキャフォールドは、ヒトレシピエントへの移植後に免疫反応を起こさないと予想される。
【0011】
[0011]本発明の方法では、エラスチン線維は、軟骨スキャフォールドからエラスチン線維を低減させるステップに先立エラスチン線維の量の約50%、好ましくは約25%、好ましくは約10%、好ましくは1%、好ましくは完全な除去にまで、軟骨スキャフォールドから低減される。この低減は、好ましくは、軟骨スキャフォールドを、好ましくはブタ膵エラスターゼ等のエラスターゼを含む1つまたは複数の酵素とともにインキュベートすることによって得られる。このため、軟骨スキャフォールドは、一実施形態において、1U/ml~12U/mlの酵素とともに、または一実施形態において、2U/ml~10U/mlの酵素とともに、またはさらなる実施形態において、3U/ml~5U/mlの酵素とともに、またはさらなる実施形態において、約3U/mlの酵素とともにインキュベートされることもある。一実施形態において、酵素は、エラスターゼ酵素、具体的には膵エラスターゼである。
【0012】
[0012]あるいは、軟骨スキャフォールドは、少なくとも1つの他のタンパク質分解酵素と組み合わせて、エラスターゼとともにインキュベートされ得る。一実施形態において、インキュベーション溶液は、0.01U/ml~10U/mlのエラスターゼおよび0.05mg/ml~5mg/mlのペプシン、好ましくは約1mg/mlのペプシンを含む。好ましくはエラスターゼを含む1つまたは複数の酵素との上記インキュベーションは、エラスチンを除去して、それにより軟骨スキャフォールド中に通路および/または小腔を生成するのに、0.5時間~80時間、好ましくは少なくとも約24時間~48時間、好ましくは約24時間の軟骨スキャフォールドのインキュベーションを含むことが好ましい。
【0013】
[0013]任意選択で、軟骨試料は、エラスチンの低減前または低減後に、脱細胞化ステップに付される。
[0014]軟骨試料が無菌でない場合、軟骨試料は、エラスチンの低減前または低減後に汚染除去ステップに付され得る。
【0014】
[0015]エラスチンが低減された弾性軟骨マトリックスは、耳欠損または耳奇形等の弾性軟骨欠損の修復に使用され得る。しかしながら、驚くべきことに、エラスチンが低減された弾性軟骨はまた、関節欠損、鼻欠損、気道欠損および肋骨欠損等の硝子軟骨欠損の修復に、椎間板欠損等の線維軟骨欠損の修復に、およびさらには、骨軟骨欠損および骨欠損の修復にも使用することができることが見出された。
【0015】
[0016]軟骨スキャフォールドの再細胞化は、移植後のレシピエント由来の細胞によって、または移植に先立って軟骨スキャフォールドに供給される細胞によって達成され得る。
[0017]本発明の方法は、細胞を、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドへ接着させることによって、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドを再細胞化するステップを含み得る。これは、細胞を、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドへ播種することによって、または細胞を、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドへ注入することと、上記細胞を、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドの空の通路および小腔へ遊走させることとによって達成され得る。細胞を、軟骨スキャフォールドへ注入するために、針を使用してもよい。
【0016】
[0018]軟骨スキャフォールドの再細胞化に使用される細胞は、好ましくは、軟骨形成能または骨形成能を有する細胞である。かかる細胞として、軟骨細胞、軟骨膜細胞、骨膜細胞、ならびに脂肪由来間質血管幹細胞、滑膜由来細胞、本来のマトリックスを有するか、または有さない羊膜由来細胞、および骨髄由来間質細胞等の幹細胞/前駆細胞が挙げられる。上記細胞は、好ましくは、自己ヒト細胞、即ち、移植片のレシピエント由来の細胞、または同種ヒト細胞、即ち、移植のレシピエントではない個体由来の細胞である。上記同種ヒト細胞は、好ましくは、移植片のレシピエントに、好ましくはヒト白血球抗原(HLA)適合および/または血液型適合によって遺伝的に適合されるか、または免疫回避性であり、即ち、いかなる悪影響も招かない。
【0017】
[0019]本発明はさらに、本発明の方法によって得られる、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールド自体、または再細胞化されたエラスチンが低減された軟骨スキャフォールドを提供する。上記軟骨スキャフォールドは、軟骨の修復方法において使用され得る。
【0018】
[0020]本発明の一実施形態は、通路および/または小腔を含むエラスチンが低減された軟骨スキャフォールドに関する。具体的には、軟骨スキャフォールドの通路および/または小腔は、酵素処理の、具体的にはエラスターゼ処理の結果として得られる。
【0019】
[0021]本発明の一実施形態において、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドはさらに、再細胞化された軟骨スキャフォールドであってもよい。したがって、本発明の一実施形態において、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドは、細胞を、具体的には、軟骨細胞、軟骨膜細胞、骨膜細胞、ならびに脂肪由来間質血管幹細胞、滑膜由来間葉系細胞および骨髄由来間質細胞等の幹細胞/前駆細胞からなる群から選択される細胞を播種されている。
【0020】
[0022]エラスチンが低減された弾性軟骨スキャフォールドは、耳軟骨等の弾性軟骨の修復方法においてだけでなく、関節軟骨、鼻軟骨および気道軟骨等の硝子軟骨および線維軟骨の修復にも使用することができる。上記軟骨スキャフォールドは、骨軟骨欠損の修復および骨欠損の修復の方法において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】[0023]弾性線維束に関するレゾルシン-フクシン染色により、ウシ耳介軟骨における弾性線維の存在(A、Bは拡大図)ならびにエラスターゼによる処理後の線維の除去ならびに通路および小腔の開口(C、D)が示される。エラスターゼ処理したウシ耳介軟骨にBMSCを播種し、培養後6日のヘマトキシリン-エオシン染色で、細胞が、組織内に遊走している(E)、および細長い形状を示しチャネルを介して遊走している(F、拡大図)。BMSCを再度播種して、35日間、軟骨形成性に分化された、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色(G)。濃い染色は、グリコサミノグリカンを示し、既存の軟骨スキャフォールド内に新たに形成された軟骨を示す。4つの異なる試料を示す。
図1B】弾性線維束に関するレゾルシン-フクシン染色により、ウシ耳介軟骨における弾性線維の存在(A、Bは拡大図)ならびにエラスターゼによる処理後の線維の除去ならびに通路および小腔の開口(C、D)が示される。エラスターゼ処理したウシ耳介軟骨にBMSCを播種し、培養後6日のヘマトキシリン-エオシン染色で、細胞が、組織内に遊走している(E)、および細長い形状を示しチャネルを介して遊走している(F、拡大図)。BMSCを再度播種して、35日間、軟骨形成性に分化された、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色(G)。濃い染色は、グリコサミノグリカンを示し、既存の軟骨スキャフォールド内に新たに形成された軟骨を示す。4つの異なる試料を示す
図1C】弾性線維束に関するレゾルシン-フクシン染色により、ウシ耳介軟骨における弾性線維の存在(A、Bは拡大図)ならびにエラスターゼによる処理後の線維の除去ならびに通路および小腔の開口(C、D)が示される。エラスターゼ処理したウシ耳介軟骨にBMSCを播種し、培養後6日のヘマトキシリン-エオシン染色で、細胞が、組織内に遊走している(E)、および細長い形状を示しチャネルを介して遊走している(F、拡大図)。BMSCを再度播種して、35日間、軟骨形成性に分化された、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色(G)。濃い染色は、グリコサミノグリカンを示し、既存の軟骨スキャフォールド内に新たに形成された軟骨を示す。4つの異なる試料を示す
図1D】弾性線維束に関するレゾルシン-フクシン染色により、ウシ耳介軟骨における弾性線維の存在(A、Bは拡大図)ならびにエラスターゼによる処理後の線維の除去ならびに通路および小腔の開口(C、D)が示される。エラスターゼ処理したウシ耳介軟骨にBMSCを播種し、培養後6日のヘマトキシリン-エオシン染色で、細胞が、組織内に遊走している(E)、および細長い形状を示しチャネルを介して遊走している(F、拡大図)。BMSCを再度播種して、35日間、軟骨形成性に分化された、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色(G)。濃い染色は、グリコサミノグリカンを示し、既存の軟骨スキャフォールド内に新たに形成された軟骨を示す。4つの異なる試料を示す
図1E】弾性線維束に関するレゾルシン-フクシン染色により、ウシ耳介軟骨における弾性線維の存在(A、Bは拡大図)ならびにエラスターゼによる処理後の線維の除去ならびに通路および小腔の開口(C、D)が示される。エラスターゼ処理したウシ耳介軟骨にBMSCを播種し、培養後6日のヘマトキシリン-エオシン染色で、細胞が、組織内に遊走している(E)、および細長い形状を示しチャネルを介して遊走している(F、拡大図)。BMSCを再度播種して、35日間、軟骨形成性に分化された、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色(G)。濃い染色は、グリコサミノグリカンを示し、既存の軟骨スキャフォールド内に新たに形成された軟骨を示す。4つの異なる試料を示す
図1F】弾性線維束に関するレゾルシン-フクシン染色により、ウシ耳介軟骨における弾性線維の存在(A、Bは拡大図)ならびにエラスターゼによる処理後の線維の除去ならびに通路および小腔の開口(C、D)が示される。エラスターゼ処理したウシ耳介軟骨にBMSCを播種し、培養後6日のヘマトキシリン-エオシン染色で、細胞が、組織内に遊走している(E)、および細長い形状を示しチャネルを介して遊走している(F、拡大図)。BMSCを再度播種して、35日間、軟骨形成性に分化された、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色(G)。濃い染色は、グリコサミノグリカンを示し、既存の軟骨スキャフォールド内に新たに形成された軟骨を示す。4つの異なる試料を示す
図1G】弾性線維束に関するレゾルシン-フクシン染色により、ウシ耳介軟骨における弾性線維の存在(A、Bは拡大図)ならびにエラスターゼによる処理後の線維の除去ならびに通路および小腔の開口(C、D)が示される。エラスターゼ処理したウシ耳介軟骨にBMSCを播種し、培養後6日のヘマトキシリン-エオシン染色で、細胞が、組織内に遊走している(E)、および細長い形状を示しチャネルを介して遊走している(F、拡大図)。BMSCを再度播種して、35日間、軟骨形成性に分化された、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色(G)。濃い染色は、グリコサミノグリカンを示し、既存の軟骨スキャフォールド内に新たに形成された軟骨を示す。4つの異なる試料を示す。
図2A】[0024]ヒト関節軟骨細胞を注入して、軟骨形成培地中で6日間培養した、エラスチンが低減された耳介軟骨のヘマトキシリン-エオシン染色により、(A)注入部位(黒星で示される)から離れた細胞の分布および(B、Aの拡大図)高い細胞密度が示される。(C、D)ヒト関節軟骨細胞を注入して軟骨形成培地中で35日間培養した、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色により、(C)注入部位(黒星で示される)から離れた、および(D)遊走している軟骨細胞周辺の濃い着色領域を特徴とする軟骨様マトリックスの原位置での形成が示される。
図2B】ヒト関節軟骨細胞を注入して、軟骨形成培地中で6日間培養した、エラスチンが低減された耳介軟骨のヘマトキシリン-エオシン染色により、(A)注入部位(黒星で示される)から離れた細胞の分布および(B、Aの拡大図)高い細胞密度が示される。(C、D)ヒト関節軟骨細胞を注入して軟骨形成培地中で35日間培養した、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色により、(C)注入部位(黒星で示される)から離れた、および(D)遊走している軟骨細胞周辺の濃い着色領域を特徴とする軟骨様マトリックスの原位置での形成が示される。
図2C】ヒト関節軟骨細胞を注入して、軟骨形成培地中で6日間培養した、エラスチンが低減された耳介軟骨のヘマトキシリン-エオシン染色により、(A)注入部位(黒星で示される)から離れた細胞の分布および(B、Aの拡大図)高い細胞密度が示される。(C、D)ヒト関節軟骨細胞を注入して軟骨形成培地中で35日間培養した、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色により、(C)注入部位(黒星で示される)から離れた、および(D)遊走している軟骨細胞周辺の濃い着色領域を特徴とする軟骨様マトリックスの原位置での形成が示される。
図2D】ヒト関節軟骨細胞を注入して、軟骨形成培地中で6日間培養した、エラスチンが低減された耳介軟骨のヘマトキシリン-エオシン染色により、(A)注入部位(黒星で示される)から離れた細胞の分布および(B、Aの拡大図)高い細胞密度が示される。(C、D)ヒト関節軟骨細胞を注入して軟骨形成培地中で35日間培養した、エラスチンが低減された耳介軟骨のチオニン染色により、(C)注入部位(黒星で示される)から離れた、および(D)遊走している軟骨細胞周辺の濃い着色領域を特徴とする軟骨様マトリックスの原位置での形成が示される。
図3A】[0025]マウスへ皮下移植したウシ関節欠損モデルへ配置させた、エラスチンが低減された耳介軟骨。(A、B)骨軟骨欠損における播種細胞を伴わない軟骨移植片(BはAの拡大図)。骨関節欠損モデルの骨部分からの、および程度は劣るが、軟骨部分からの細胞の浸潤に起因して、チオニン染色後の濃い着色領域を特徴とする新たな軟骨の原位置での形成;白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示す。(C、Dは拡大図)関節モデルの骨性部分へのアクセスが、欠損(軟骨欠損)の下の無傷の石灰化軟骨層により制限された場合、ウシ関節欠損モデルの軟骨部分からの細胞のみが、軟骨移植片に浸潤して、新たな軟骨を形成した。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化ウシ軟骨を示す。(E、Fは拡大図)白線で境界が定められ、ヒト関節軟骨細胞を播種して、ウシ関節欠損モデルへ配置され、マウスへ皮下移植された、エラスチンが低減された耳介軟骨。ウシ関節欠損モデルの骨性部分からの細胞の浸潤が防止されると、軟骨様マトリックスはまた、耳介軟骨内でも形成され、播種された細胞が、同様に移植片を活性化することができることを示す。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化したウシ軟骨を示す。
図3B】マウスへ皮下移植したウシ関節欠損モデルへ配置させた、エラスチンが低減された耳介軟骨。(A、B)骨軟骨欠損における播種細胞を伴わない軟骨移植片(BはAの拡大図)。骨関節欠損モデルの骨部分からの、および程度は劣るが、軟骨部分からの細胞の浸潤に起因して、チオニン染色後の濃い着色領域を特徴とする新たな軟骨の原位置での形成;白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示す。(C、Dは拡大図)関節モデルの骨性部分へのアクセスが、欠損(軟骨欠損)の下の無傷の石灰化軟骨層により制限された場合、ウシ関節欠損モデルの軟骨部分からの細胞のみが、軟骨移植片に浸潤して、新たな軟骨を形成した。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化ウシ軟骨を示す。(E、Fは拡大図)白線で境界が定められ、ヒト関節軟骨細胞を播種して、ウシ関節欠損モデルへ配置され、マウスへ皮下移植された、エラスチンが低減された耳介軟骨。ウシ関節欠損モデルの骨性部分からの細胞の浸潤が防止されると、軟骨様マトリックスはまた、耳介軟骨内でも形成され、播種された細胞が、同様に移植片を活性化することができることを示す。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化したウシ軟骨を示す。
図3C】マウスへ皮下移植したウシ関節欠損モデルへ配置させた、エラスチンが低減された耳介軟骨。(A、B)骨軟骨欠損における播種細胞を伴わない軟骨移植片(BはAの拡大図)。骨関節欠損モデルの骨部分からの、および程度は劣るが、軟骨部分からの細胞の浸潤に起因して、チオニン染色後の濃い着色領域を特徴とする新たな軟骨の原位置での形成;白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示す。(C、Dは拡大図)関節モデルの骨性部分へのアクセスが、欠損(軟骨欠損)の下の無傷の石灰化軟骨層により制限された場合、ウシ関節欠損モデルの軟骨部分からの細胞のみが、軟骨移植片に浸潤して、新たな軟骨を形成した。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化ウシ軟骨を示す。(E、Fは拡大図)白線で境界が定められ、ヒト関節軟骨細胞を播種して、ウシ関節欠損モデルへ配置され、マウスへ皮下移植された、エラスチンが低減された耳介軟骨。ウシ関節欠損モデルの骨性部分からの細胞の浸潤が防止されると、軟骨様マトリックスはまた、耳介軟骨内でも形成され、播種された細胞が、同様に移植片を活性化することができることを示す。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化したウシ軟骨を示す。
図3D】マウスへ皮下移植したウシ関節欠損モデルへ配置させた、エラスチンが低減された耳介軟骨。(A、B)骨軟骨欠損における播種細胞を伴わない軟骨移植片(BはAの拡大図)。骨関節欠損モデルの骨部分からの、および程度は劣るが、軟骨部分からの細胞の浸潤に起因して、チオニン染色後の濃い着色領域を特徴とする新たな軟骨の原位置での形成;白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示す。(C、Dは拡大図)関節モデルの骨性部分へのアクセスが、欠損(軟骨欠損)の下の無傷の石灰化軟骨層により制限された場合、ウシ関節欠損モデルの軟骨部分からの細胞のみが、軟骨移植片に浸潤して、新たな軟骨を形成した。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化ウシ軟骨を示す。(E、Fは拡大図)白線で境界が定められ、ヒト関節軟骨細胞を播種して、ウシ関節欠損モデルへ配置され、マウスへ皮下移植された、エラスチンが低減された耳介軟骨。ウシ関節欠損モデルの骨性部分からの細胞の浸潤が防止されると、軟骨様マトリックスはまた、耳介軟骨内でも形成され、播種された細胞が、同様に移植片を活性化することができることを示す。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化したウシ軟骨を示す。
図3E】マウスへ皮下移植したウシ関節欠損モデルへ配置させた、エラスチンが低減された耳介軟骨。(A、B)骨軟骨欠損における播種細胞を伴わない軟骨移植片(BはAの拡大図)。骨関節欠損モデルの骨部分からの、および程度は劣るが、軟骨部分からの細胞の浸潤に起因して、チオニン染色後の濃い着色領域を特徴とする新たな軟骨の原位置での形成;白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示す。(C、Dは拡大図)関節モデルの骨性部分へのアクセスが、欠損(軟骨欠損)の下の無傷の石灰化軟骨層により制限された場合、ウシ関節欠損モデルの軟骨部分からの細胞のみが、軟骨移植片に浸潤して、新たな軟骨を形成した。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化ウシ軟骨を示す。(E、Fは拡大図)白線で境界が定められ、ヒト関節軟骨細胞を播種して、ウシ関節欠損モデルへ配置され、マウスへ皮下移植された、エラスチンが低減された耳介軟骨。ウシ関節欠損モデルの骨性部分からの細胞の浸潤が防止されると、軟骨様マトリックスはまた、耳介軟骨内でも形成され、播種された細胞が、同様に移植片を活性化することができることを示す。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化したウシ軟骨を示す。
図3F】マウスへ皮下移植したウシ関節欠損モデルへ配置させた、エラスチンが低減された耳介軟骨。(A、B)骨軟骨欠損における播種細胞を伴わない軟骨移植片(BはAの拡大図)。骨関節欠損モデルの骨部分からの、および程度は劣るが、軟骨部分からの細胞の浸潤に起因して、チオニン染色後の濃い着色領域を特徴とする新たな軟骨の原位置での形成;白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示す。(C、Dは拡大図)関節モデルの骨性部分へのアクセスが、欠損(軟骨欠損)の下の無傷の石灰化軟骨層により制限された場合、ウシ関節欠損モデルの軟骨部分からの細胞のみが、軟骨移植片に浸潤して、新たな軟骨を形成した。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、黒い矢頭は、自然の無傷のウシ軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化ウシ軟骨を示す。(E、Fは拡大図)白線で境界が定められ、ヒト関節軟骨細胞を播種して、ウシ関節欠損モデルへ配置され、マウスへ皮下移植された、エラスチンが低減された耳介軟骨。ウシ関節欠損モデルの骨性部分からの細胞の浸潤が防止されると、軟骨様マトリックスはまた、耳介軟骨内でも形成され、播種された細胞が、同様に移植片を活性化することができることを示す。白い矢頭は、エラスチンが低減された軟骨マトリックスにおける新たに形成された軟骨を示し、網掛けの矢頭は、自然の石灰化したウシ軟骨を示す。
図4】[0026]in vivoでの骨軟骨プラグモデルにおけるhACおよびASC-TERT1の同時培養物を再度播種した耳介軟骨および対照スキャフォールド。6週後、ヌードマウスモデルにおいて、コラーゲンII型の合成が、スキャフォールドの内側の奥深くの通路および小腔において観察され得る(矢印)が、他の通路では、コラーゲンI型が依然として強力に発現された(矢印);n=6。
図5】[0027]in vivoでの骨軟骨プラグモデルにおいて、単独で、または同時培養でウシ軟骨細胞を再度播種した耳介軟骨。細胞は、弾性線維の欠乏によって創出された空の小腔および通路に浸潤して、スキャフォールドの内側に新たなコラーゲンII型を合成した(矢印)。初期の移植片リモデリングの兆候が、同時培養群において見て取れる(矢頭)。コラーゲンI型は、軟骨細胞群では単一細胞によって弱く発現され、同時培養群では完全に存在しない;n=3。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0028]「脱細胞化」という用語は、本明細書中で使用する場合、軟骨細胞外マトリックスから細胞および細胞レムナントを除去して、元の組織の軟骨スキャフォールドを残すプロセスを指す。
【0023】
[0029]「再細胞化」という用語は、本明細書中で使用する場合、軟骨スキャフォールドの脱細胞化後に、細胞が上記軟骨スキャフォールドへ浸潤させるプロセスを指す。
[0030]「軟骨スキャフォールド」という用語は、本明細書中で使用する場合、主にコラーゲン線維、非コラーゲン性糖タンパク質およびプロテオグリカンで構成される軟骨の細胞外物質を指す。「同種」という用語は、本明細書中で使用する場合、移植片のレシピエントではない個体に由来することを指す。
【0024】
[0031]「エラスチン」という用語は、本明細書中で使用する場合、身体の軟骨組織が、伸張または収縮後にその形状を取り戻すことが可能である軟骨組織中の非常に弾性の高いタンパク質を指す。
【0025】
[0032]「エラスチン線維」という用語は、本明細書中で使用する場合、軟骨組織の細胞外スキャフォールド中に見出されるエラスチンタンパク質の束を指す。
[0033]「エラスターゼ」という用語は、本明細書中で使用する場合、ペプチダーゼS1ファミリーのセリンエンドペプチダーゼを指す(http://enzyme.expasy.org/peptidas.txtを参照のこと)。好ましいエラスターゼは、EC番号3.4.21.36、3.4.21.37または3.4.21.71を有する種類由来の酵素である。エラスターゼは、エラスチンを含むタンパク質を加水分解する。エラスターゼ1ユニットは、pH8および25℃で、1分当たりN-スクシニル-L-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド1.0μmを加水分解する酵素の量として定義される。エラスターゼは、膵エラスターゼ、膵エラスターゼII、白血球エラスターゼ、および好中球エラスターゼからなる群から選択され得る。本発明の一実施形態において、エラスターゼは、膵エラスターゼである。
【0026】
[0034]「弾性軟骨」という用語は、例えば耳の中に存在する、コラーゲン線維に隣接する弾性線維を含有する軟骨、即ち、耳管および咽頭蓋を指す。「硝子軟骨」という用語は、関節、滑膜関節中の骨の相対する表面、肋軟骨、咽頭、気管、気管支、鼻中隔および鼻翼の軟骨等の主にコラーゲンII型線維を含有する軟骨を指す。
【0027】
[0035]「線維軟骨」という用語は、本明細書中で使用する場合、コラーゲンII型線維に隣接するコラーゲンI型を含有する軟骨を指し、半月板中に、椎間板の線維輪、顎関節および恥骨結合中に存在する。
【0028】
[0036]「耳介軟骨」という用語は、本明細書中で使用する場合、耳の最外側部分である耳の耳介の軟骨を指す。
[0037]「関節軟骨」という用語は、本明細書中で使用する場合、滑膜関節中の骨の相対する表面、関節接合を覆う軟骨を指す。
【0029】
[0038]「軟骨膜」という用語は、本明細書中で使用する場合、関節の終点にあるものを除く、軟骨を囲む高密度で不規則な結合組織の層を指し、2つの別々の層;コラーゲン産生線維芽細胞を含有する外側線維層、ならびに軟骨芽細胞および軟骨細胞を形成し得る前駆細胞を含有する内側軟骨形成層からなる。
【0030】
[0039]「軟骨芽細胞」という用語は、本明細書中で使用する場合、未熟な軟骨産生細胞を指す。
[0040]「軟骨細胞」という用語は、本明細書中で使用する場合、軟骨を構成および産生する特殊な細胞を指す。
【0031】
[0041]「骨膜」という用語は、本明細書中で使用する場合、関節にあるものを除く、身体の骨全てを覆う特殊な結合組織を指す。骨膜は、軟骨形成能および骨形成能を有する。
[0042]「骨髄由来間質細胞」、またはBMSCという用語は、本明細書中で使用する場合、骨髄に由来して、プラスチックへの付着性ならびにCD45およびCD14等の造血マーカー発現の欠如によって同定される間葉系細胞を指す。
【0032】
[0043]「滑膜由来間葉系細胞」は、本明細書中で使用する場合、滑膜組織に由来して、プラスチックへの付着性によって同定される間葉系細胞を指す。上記細胞は、CD45およびCD14等の造血マーカーのおよび発現を欠如している。
【0033】
[0044]「脂肪由来間質血管幹細胞」という用語は、本明細書中で使用する場合、CD45およびCD14等の造血マーカーの発現の欠如によって同定される脂肪組織由来の間質血管分画に由来する間葉系前駆細胞/幹細胞を指す。
【0034】
[0045]「軟骨形成能」という用語は、本明細書中で使用する場合、細胞が軟骨を産生することができることを指す。
[0046]「骨形成能」という用語は、本明細書中で使用する場合、細胞が骨を産生することができることを指す。
【0035】
[0047]「超音波処理」という用語は、本明細書中で使用する場合、試料中の粒子を攪拌させるのに音波エネルギーを与える行為を指す。
[0048]「障害」という用語は、本明細書中で使用する場合、機能、構造、またはその両方の異常を指し、発達中の遺伝性機能不全もしくは胚性機能不全に、または外傷もしくは疾患等の外因性要因に起因する。
【0036】
[0049]「処理」または「処理すること」という用語は、本明細書中で使用する場合、処理される個体の自然経過を変更させるための臨床的介入を指す。処理の望ましい効果として、障害の発生もしくは再発を防止すること、症状の緩和、および障害の任意の直接的もしくは間接的な結果の減少、および/または障害の状態の改善もしくは軽減が挙げられる。本発明において、「処理」または「処理すること」は、再細胞化された細胞を伴うか、または伴わない軟骨スキャフォールドを含む組成物を投与することによって、損傷を受けた関節軟骨等の軟骨疾患を患うヒトの、あるいは鼻もしくは外耳等の軟骨組織の形成異常または欠如の改善または軽減を意味すると理解される。
【0037】
[0050]「修復」という用語は、本明細書中で使用する場合、組織、好ましくは軟骨組織を、部分的にまたは完全に修復する作用を指す。
軟骨スキャフォールドの提供
[0051]軟骨は通常、組織学的な外観に基づいて、3つのタイプに分類される:a)関節、肋骨、鼻または気管に由来され得る硝子軟骨、b)椎間板、瘢痕組織および半月板に見られ得る線維軟骨、およびc)咽頭蓋、外耳および耳管から得られ得る弾性軟骨。好ましい軟骨試料は、弾性軟骨試料である。
【0038】
[0052]軟骨試料は、例えば、皮膚等の周囲組織を除去することおよび切除、好ましくは、得られた軟骨試料が無菌であることを保証する方法を用いることによって、ドナーから得ることができる。
【0039】
[0053]軟骨試料は、動物から、例えば、限定されないが、雌ウシまたはブタ、およびヒトから得ることができる。ヒト軟骨試料は、例えば、死後のドナーから、または耳の再形成(耳形成術)中のような関連する手順に起因した外科的検体として得ることができる。例えば、成体ウシ(雌ウシ)および未熟なウシ(仔ウシ)等の雌ウシまたはブタ由来の動物軟骨は、屠殺場から得ることができる。
【0040】
[0054]軟骨試料は、任意選択で脱細胞化される。この脱細胞化ステップ中、軟骨試料中の固有の軟骨細胞は、少なくとも1回の凍結融解サイクルに、好ましくは、少なくとも3回の凍結融解サイクル、例えば3回の凍結融解サイクル、4回の凍結融解サイクル、5回の凍結融解サイクルまたは6回の凍結融解サイクルに試料を付すことによって、死滅および除去される。凍結融解サイクルは、細胞を死滅させて、細胞粒子の除去を促進する。
【0041】
[0055]上記凍結融解サイクル(複数可)は、乾燥させて実施され得るか、または低張性緩衝溶液中で、例えばpH=8の10mM トリス-HCl中で、または脱イオン水(ISO 3696グレードI)で、軟骨試料をインキュベーションした後に実施され得る。好ましい方法として、少なくとも1回の乾燥凍結融解サイクル、および低張性緩衝溶液で軟骨試料をインキュベーションした後の少なくとも1回の凍結融解サイクル、例えば、2回の乾燥凍結融解サイクル、続く低張性緩衝溶液中での軟骨試料の2回の凍結融解サイクルが挙げられる。上記凍結融解サイクルはそれぞれ独立して、-200℃~+60℃の温度で実施され得る。
【0042】
[0056]軟骨試料が無菌でない場合、上記軟骨試料は、エラスチンの低減に先立って、またはエラスチンの低減後に、エタノール、過酢酸、ヨウ素溶液、水酸化ナトリウム溶液、塩酸溶液および/または過酸化水素の少なくとも1つ、好ましくは過酸化水素を含む緩衝水溶液中で、0.2時間~10時間、好ましくは1時間~3時間インキュベーションすることによって汚染除去され得る。例えば、汚染除去ステップは、Utomoら、2015年(Utomoら、2015.Biomed Mater 10:015010)によって示されるように、0.1%過酢酸を含むPBSで、室温で3時間、軟骨試料をインキュベートすることによって実施され得る。好ましい汚染除去ステップにおいて、軟骨試料は、5%過酸化水素中で、37℃で60分間のインキュベーションによって汚染除去される。
軟骨スキャフォールドにおけるエラスチンの低減
[0057]とりわけ、弾性軟骨は、エラスチンの大きな線維束を含有し、弾性軟骨に優れた柔軟性を付与する。エラスチン線維は、コラーゲンネットワークを横行して、軟骨細胞が存在する小腔と称されるポケットを包囲する。これらのエラスチン線維を、軟骨スキャフォールドから除去することで、コラーゲンネットワークを横行する空の通路が残る。
【0043】
[0058]上記エラスチン線維は好ましくは、エラスターゼ等のプロテアーゼによって、軟骨スキャフォールドから低減されるか、またはさらには完全に除去される。他のエラスターゼもまた、軟骨スキャフォールドからのエラスチンの低減または除去に使用することができるが、それらは、コラーゲンネットワークに幾らか損傷を引き起こす場合がある。エラスチンの低減に関して、軟骨スキャフォールドは好ましくは、1U/ml~12U/ml、好ましくは3U/mlの濃度で、1時間~80時間、好ましくは24時間~48時間、エラスターゼ等のプロテアーゼとともにインキュベートされる。上記インキュベーション時間は、試料のサイズおよび厚さ、および/または酵素濃度によって、幾らか確定され得る。例えば、インキュベーション時間は好ましくは、3mmの厚さを有する1cmよりも小さい試料に関しては約24時間、および1cmよりも大きな試料に関しては約48時間~72時間である。Utomoら、2015年では、試料は、37℃で24時間、0.03U/mlのエラスターゼとともにインキュベートされた。しかしながら、この手順は、再細胞化を可能にするように軟骨組織中のエラスチン含有量を著しくは変更させなかった。軟骨試料のエラスターゼ処理が、他のタンパク質分解酵素による処理と組み合わされる場合には、上記エラスチン濃度は、低くてもよく、好ましくは約0.01U/ml~1U/mlであり得る。これらの他のタンパク質分解酵素は、好ましくは約0.5mg/ml~5mg/mlのペプシン濃度で、好ましくは約1mg/mlのペプシン濃度でペプシンを含んでもよい。酵素は全て、好ましくは、90%を上回る純度を有し、および/または、適正製造基準(GMP)に従って産生される。
【0044】
[0059]試料は、例えば、2回の乾燥凍結融解サイクルおよび低張性緩衝液中で2回の凍結融解サイクル、続く1mg/mLのペプシンを含む0.5M酢酸での一晩のインキュベーションおよび0.03U/mlのエラスターゼを含むトリス緩衝液pH8.6との一晩のインキュベーションに付されてもよく、その後、試料は、2×30分間、PBSで洗浄され、続いて、一晩洗浄が行われる。好ましくは、軟骨スキャフォールドからエラスチンを低減するか、または完全に除去する上記ステップに続いて、ヌクレアーゼ溶液で軟骨スキャフォールドをインキュベートして、スキャフォールドから、核酸材料全てを除去することもある。このために、上記スキャフォールドは、1U/ml~100U/ml、好ましくは約50U/mlのDNA分解酵素および/または0.1U/ml~10U/ml、好ましくは約1U/mlのRNA分解酵素を含む無毒性緩衝生理食塩水中でインキュベートされて、続いて、競合的セリンプロテアーゼ阻害剤等のプロテアーゼ阻害剤の存在または非存在下で、無毒性緩衝生理食塩水中で反復洗浄を行ってもよい。
in vitroでの軟骨試料の再細胞化に関する方法
[0060]軟骨スキャフォールドからのエラスチンの低減または完全な除去後に、小腔が開放し、エラスチン線維が、マトリックスを横行していたところに通路が生じ、細胞レムナントの除去を容易にする。上記エラスチンの低減または完全な除去はまた、軟骨スキャフォールドのグリコサミノグリカン(GAG)の低減をもたらし得る。軟骨細胞等の細胞の接着は、GAGによって防止され得ると報告されている(Baraら、2012.Connect Tissue Res 53:220~8)ため、軟骨スキャフォールド中のGAGの低減は、スキャフォールドの再細胞化に有益であり得る。ここで、通路およびアクセス可能な小腔は、細胞がスキャフォールドに浸潤するのを可能にし、軟骨の再細胞化を可能にする。
【0045】
[0061]エラスチン束の低減または除去は、耳介中の弾性軟骨等の弾性軟骨における通路につながる。分散性エラスチン線維を含有するが、エラスチン束を欠如する硝子軟骨では、エラスチンの低減または除去は、通路につながらない。
【0046】
[0062]エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドの再細胞化に適切な細胞は、軟骨細胞、軟骨膜細胞、骨膜細胞、および脂肪由来間質血管幹細胞、骨髄由来間質細胞または滑膜由来細胞および羊膜由来細胞等の間葉系幹細胞/前駆細胞等の軟骨形成能を有する細胞である。
【0047】
[0063]軟骨形成能を有する細胞を培養する方法は、当業者に公知である。例えば、Johnstoneら、1998年(Johnstoneら、1998.Exp Cell Res 238:265~72)に記載されるように、BMSC細胞は、10%熱失活FCS(Lonza、ヴェルヴィエ、ベルギー)、50μg/mLのゲンタマイシン、1.5μg/mlのファンギゾン、25μg/mlのL-アスコルビン酸2-リン酸塩および1ng/mLの塩基性線維芽細胞増殖因子2(bFGF2;R&D Systems、ミネアポリス、米国)を含有するMEM-α(Gibco、カールスバッド、米国)を含む、ここでは増殖培地と称される培地中で、2300個の細胞/cmの密度で、37℃および5%COで培養され得る。あるいは例えばNarcisiら、2015年(Narcisiら、2015.Stem Cell Reports 4:459~7)に細胞増殖および/または軟骨形成能を改善し得る、この方法の改案が記載されている。
【0048】
[0064]上記軟骨形成細胞、好ましくはヒト細胞は、当業者に公知である下記の方法の1つを使用して、軟骨スキャフォールドに播種され得る:
a)静的播種;軟骨スキャフォールドは、培養ウェルの底部に配置されてもよく、続いて、培養ウェルに、細胞を含んだ増殖培地(通常、約1.000個の細胞/スキャフォールドmm~10.000個の細胞/mm)を充填する。細胞は沈降し、軟骨スキャフォールドに付着する。
b)動的播種;軟骨スキャフォールドは、細胞を含んだ増殖培地(通常、約5.000個の細胞/スキャフォールドmm~約20.000個の細胞/mm)を充填した閉じたチューブ中に配置されて、角度45°および90°で回転させながらインキュベートされ得る。
c)注入;約1.000個の細胞/スキャフォールドmm~約10.000個の細胞/mmの細胞懸濁液は、針を用いて軟骨スキャフォールドへ注入され得る。
【0049】
[0065]BMSC等の軟骨形成細胞は、静的播種によって軟骨スキャフォールドの表面へ播種されると、スキャフォールドへ遊走して、その中に分布する。ここで使用される培養培地は、遊走速度を高める、または好ましくは軟骨形成性の分化を高める血清勾配またはケモカイン、例えば、Narcisiら、2015年に記載されるように、DMEM-高グルコースGlutaMAX+(GIBCO)、1:100のインスリン、トランスフェリンおよび亜セレン酸(ITS+、BD Biosciences)、40μg/mlのL-プロリン(Sigma-Aldrich)、1mMのピルビン酸ナトリウム(GIBCO)、100nMのデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)、10ng/mlのトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1、R&D Systems)、2μMのWNT阻害剤IWP2(Sigma-Aldrich)、1.5μg/mlのファンギゾン(GIBCO)および50μg/mlのゲンタマイシン(GIBCO)を含有してもよい。遊走細胞は、軟骨スキャフォールド上へ均一に分布せず、スキャフォールド内の高密度スポットで成長する場合がある。あるいは、細胞は、軟骨移植片中に注入されて、続く培養中に、またはin vivoへの移植後に、注入部位からさらに分布し得る。細胞は全て、適正製造基準(GMP)に従って培養される。
【0050】
[0066]移植片を、細胞と同時に、細胞播種の直後に、またはさらなる細胞培養後に移植して、遊走および軟骨形成を刺激し得る。軟骨形成性の分化を受けるように誘導されると、細胞は、スキャフォールド内で軟骨を形成する。コラーゲンスキャフォールドと異なり、エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドは、細胞播種および軟骨形成分化中に、in vivoでその形状を保持する。
再細胞化された軟骨スキャフォールドの移植
[0067]再細胞化された軟骨スキャフォールドは、宿主への移植に使用され得る。
【0051】
[0068]再細胞化された軟骨スキャフォールドは、関節、鼻、気道、半月板および耳軟骨等の軟骨修復に使用され得る。軟骨スキャフォールドは、先天的な軟骨欠損ならびに損傷を受けた軟骨組織の両方を修復するのに使用され得る。軟骨スキャフォールドは、エラスチン低減および再細胞化後に、そのサイズおよび形状を保存するので、かかるスキャフォールドは、外耳軟骨等の、複雑な形状を有する軟骨組織の、大きな軟骨欠損を再構築するのに使用され得る。
【0052】
[0069]輸送中に、再細胞化された軟骨スキャフォールドは、好ましくは、無菌輸送容器を使用することによって、無菌性および湿性が維持される。修復される軟骨組織は、皮膚を切開し、軟骨組織を露出することによって、または関節に開口部を作ることによって到達され得る。移植の直前に、軟骨スキャフォールドまたは再細胞化された軟骨スキャフォールドは、無菌輸送容器から取り出され、必要に応じて、型に合わせて、例えばハサミを用いてサイズを合わせる。再細胞化されたスキャフォールドを移植して、損傷を受けたか、もしくは欠損している軟骨組織またはその一部を置換することができる。再細胞化された軟骨スキャフォールドは、好ましくは無菌作業に関する方法を使用して、軟骨欠損の境界で、それを圧入すること(press-fitting)、縫合すること、または(フィブリン)接着することによって挿入され得る。出血の管理を達成した後、関節中の開口部または切開を閉じてもよい。
エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドの移植
[0070]耳全体の再構築のためには、移植に先立つ再細胞化が好ましい場合があるが、無細胞アプローチは、関節軟骨欠損、骨軟骨欠損の処理に、または軟骨膜がまだ無傷である場合は、鼻もしくは耳介欠損に役立ち得る。このアプローチは、エラスチンが低減された、再細胞化されていない軟骨スキャフォールドの、宿主への移植を含む。再細胞化されていない軟骨スキャフォールドの移植手順は、再細胞化された軟骨スキャフォールドに関して、本明細書中で上述したような手順と同様である。
【0053】
[0071]エラスチンが低減された軟骨スキャフォールドの再細胞化は、環境からスキャフォールドへの自己宿主細胞の内殖によって、in vitroで、またはin vivoで達成され得る。これは、例えば、増殖因子、ケモカインまたは血小板リッチな血漿等の他の軟骨修復刺激剤を添加することによって刺激され得る。
【実施例
【0054】
[0072]下記の実施例は、本発明の理解を促進するために記載するが、いかなる場合においても本発明の範囲を限定すると意図されず、そのように解釈されるべきではない。実施例は、従来法の詳述を含まない。かかる方法は、当業者に周知である。
【0055】
実施例1
動的播種によるBMSCを用いた再細胞化
[0073]12週齢の仔ウシの外耳を水で洗浄して、軟骨のみが残るまで、軟骨膜、皮膚および筋肉を、メスを使用して除去した。続いて、直径6mmおよび高さ1mmのバイオプシーを、バイオプシーパンチを使用して、耳介軟骨から入手し、したがって、試料はそれぞれ、容量が約30mmであった。
【0056】
[0074]続いて、下記のプロトコルを、細胞およびエラスチン線維の除去に用い、別記しない限り、所定の容量を、およそ20個の試料のバッチに適用した。まず、本発明の幾つかの実施形態において、皮膚のばらばらの小片等の単離由来の組織片を除去するために、下記で脱イオン水と称される3696グレードI脱イオン水40mlで、試料を手短に3回すすいだ。必要に応じて、試料を、貯蔵用に-20℃、脱イオン水20ml中で凍結させた。次に、試料を5%過酸化水素20mlで、37℃にて60分間滅菌した。続いて、試料を、脱イオン水40mlで手短に3回すすぎ、試料をそれぞれ完全に凍結および融解するのに十分な時間、-80℃から37℃までで3回、脱イオン水中で凍結融解させた。試料を、pH8.6に設定した3U/mlのエラスターゼ(Sigma-Aldrich)を含む2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)HCl水溶液とともに、1個当たり1mlで、37℃で24時間、30RPMで回転させ、回転中、試料を常に浸しながらインキュベートすることによって、エラスチン線維束を消化した。続いて、それぞれ室温にて30RPMで回転させて、脱イオン水50mlとともに5分間、3回インキュベートすることによって、エラスターゼ溶液を洗い流した。小腔の開口を容易にして、軟骨マトリックスからの細胞組織片の除去を促進するために、試料を物理的なストレインに曝露した:瞬間凍結融解サイクル(-190℃~37℃)、42kHzにて8分間で2回の超音波処理(70ワットの水浴ソニケーター)および2500RPMで約30秒間、液体の非存在下で3回ボルテックスすること。
【0057】
[0075]続いて、無菌状態を試験して、10%熱失活FCS(Lonza、ヴェルヴィエ、ベルギー)を含有するMEM-α(Gibco、カールスバッド、米国)40ml中で、37℃で24時間、30RPMで回転させて、試料をインキュベートすることによって、試料を血清でコーティングした。その後、無菌の試料を、2mlのポリプロピレン微量遠心チューブに入れて、試料はそれぞれ、チューブ1個に入れて、ヒト成体骨髄由来間質細胞(BMSC)を、試料1個当たり250.000個の細胞(およそ8.500個の細胞/mm)を含む1.5mlの増殖培地(10%熱失活FCS(Lonza、ヴェルヴィエ、ベルギー)、50μg/mLのゲンタマイシン(Invitrogen Life Technologies)、1.5μg/mlのファンギゾン(Invitrogen Life Technologies)、25μg/mlのL-アスコルビン酸2-リン酸塩および1ng/mLの塩基性線維芽細胞増殖因子2(bFGF2;R&D Systems、ミネアポリス、米国)を含有するMEM-α(Gibco、カールスバッド、米国))を用いて、播種した。続いて、試料を、微量遠心チューブで、37℃で24時間、角度45°にて30RPMで回転させて、細胞とともにインキュベートした。播種後、試料を、増殖培地で2回、穏やかにすすいで、2cmのウェルに移して(試料はそれぞれ、ウェル1個を占有する)、1ml/ウェルの増殖培地中で6日間、培地は、2日目および4日目に新しくして培養するか、または軟骨形成培地(DMEM-高グルコースGlutaMAX+(GIBCO)、1:100のインスリン、トランスフェリンおよび亜セレン酸(ITS+、BD Biosciences)、40μg/mlのL-プロリン(Sigma-Aldrich)、1mMのピルビン酸ナトリウム(GIBCO)、100nMのデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)、10ng/mlのトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1、R&D Systems)、1.5μg/mlのファンギゾン(Invitrogen Life Technologies)および50μg/mlのゲンタマイシン(Invitrogen Life Technologies))で、培地は3日毎に新しくして、35日間培養した。
【0058】
[0076]培養後、試料を、ピンセットで慎重に収集して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で穏やかに洗浄して、3.7%ホルマリン中で24時間固定した。次に、メーカーのプロトコル、Narcisiら、2015年およびUtomoら、2015年に従って、固定した試料を、アガロース中に包埋して、脱水して、パラフィン中に包埋して、6μm厚で切片化して、切片をスライドガラス上に置き、続いて乾燥させて、再水和して、ヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)および2%エオシン(Merck)または0.4%チオニン溶液(Sigma-Aldrich)またはレゾルシン-フクシン溶液(RF、Klinipath、ダイフェン、オランダ)で染色して、脱水して、カバーガラス下に封入した。
【0059】
[0077]顕微鏡写真(図1A図1D)は、通路および開口された小腔を有する、エラスターゼ処理した脱細胞化された軟骨を示す。続いて、BMSCは、7日以内に組織へと遊走し(図1E)、細胞は、除去されたエラスチン線維によって残された通路を通って遊走するとき、細長い形状を取ったことがわかる(図1F)。軟骨形成性に分化されると、BMSCは、脱細胞化されたマトリックス内の組織内に、新たな軟骨様マトリックスを形成した(図1G)。
【0060】
実施例2
注入後の原位置での軟骨形成
[0078]軟骨の幾つかの領域は、遊走によって細胞が到達するのが困難であり、例えば、外耳の軟骨は、高密度な軟骨膜層で囲まれている。Utomoら、2015年によって示されるように、耳全体を、エラスターゼを使用して脱細胞化することができる。軟骨膜は、軟骨にしっかりと結合されており、軟骨構造に損傷を与えることなく、軟骨膜を除去することは、実現不可能である。
【0061】
[0079]耳全体の再細胞化が実行可能であるかどうかを試験するために、軟骨膜の除去を必要としないウシ耳介軟骨試料を、軟骨膜を貫通する注入によって、軟骨形成細胞で再細胞化した。
【0062】
[0080]12週齢の仔ウシの外耳を水で洗浄して、無傷の軟骨膜を有する軟骨のみが残るまで、皮膚および筋肉を、メスを使用して除去した。続いて、辺長が15mmの正方形バイオプシーを、メスを使用して、耳介軟骨から入手し、試料はそれぞれ、高さが約2mm~4mmであり(軟骨膜を含む)、したがって容量が約450mm~900mmであった。
【0063】
[0081]続いて、下記のプロトコルを、細胞およびエラスチン線維の除去に用い、所定の容量を、試料1個に適用した。まず、皮膚のばらばらの小片等の単離由来の組織片を除去するために、下記で脱イオン水と称されるISO 3696グレードI脱イオン水10mlで、細胞を手短に3回すすいだ。必要に応じて、試料を、貯蔵用に-20℃、脱イオン水5ml中で凍結させた。次に、試料を、それぞれ5%過酸化水素10ml、37℃にて120分間で、2回滅菌した。続いて、試料を、脱イオン水10mlで手短に3回すすぎ、試料をそれぞれ完全に凍結および融解するのに十分な時間、-80℃から37℃までで3回、脱イオン水中で凍結融解させた。試料を、pH8.6に設定した12U/mlのエラスターゼ(GoldBio)を含む2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)HCl水溶液とともに、1個当たり2mlで、37℃で72時間、24時間毎に溶液を新しくして、30RPMで回転させて、回転中、試料を常に浸しながらインキュベートすることによって、エラスチン線維束を消化した。続いて、それぞれ室温にて30RPMで回転させて、脱イオン水10mlとともに5分間、3回インキュベートすることによって、エラスターゼ溶液を洗い流した。小腔の開口を容易にして、軟骨マトリックスからの細胞組織片の除去を促進するために、試料を以下の物理的なストレインに曝露した:瞬間凍結融解サイクル(-190℃~37℃)、42kHzにて8分間で2回の超音波処理(70ワットの水浴ソニケーター)および2500RPMで約30秒間、液体の非存在下で3回ボルテックスすること。
【0064】
[0082]続いて、無菌状態を試験して、10%熱失活FCS(Lonza、ヴェルヴィエ、ベルギー)を含有するMEM-α(Gibco、カールスバッド、米国)5ml中で、37℃で24時間、30RPMで回転させて、試料をインキュベートすることによって、試料を血清でコーティングした。その後、無菌試料を、ピンセットを使用して適所に保持して、ほぼ中心の領域を目指して、3つの異なる部位に、下で詳述するように、10%熱失活FCS(Lonza、ヴェルヴィエ、ベルギー)を含有するMEM-α(Gibco、カールスバッド、米国)150μl中の約1.500.000個の細胞を30ゲージ針を用いて注入した。細胞は、ヒト成体骨髄由来間質細胞(BMSC)または人工膝関節全置換を受けている患者の骨関節炎の膝関節から単離されたヒト関節軟骨細胞のいずれかであり、10%熱失活FCS(Lonza)、ゲンタマイシン(50mg/mL;Invitrogen Life Technologies)、および1.5mg/mLのアンホテリシンB(ファンギゾン;Invitrogen Life Technologies)を有するDMEM(Lonza)中で10日間増殖させた。注入後、試料を、リン酸緩衝生理食塩水で3回、穏やかにすすいで、10cmのウェルに移して(試料はそれぞれ、ウェル1個を占有する)、4ml/ウェルの軟骨形成培地(DMEM-高グルコースGlutaMax+(GIBCO)、1:100のインスリン、トランスフェリンおよび亜セレン酸(ITS+、BD Biosciences)、40μg/mlのL-プロリン(Sigma-Aldrich)、1mMのピルビン酸ナトリウム(GIBCO)、100nMのデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)、10ng/mlのトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1、R&D Systems)、1.5μg/mlのファンギゾン(Invitrogen Life Technologies)および50μg/mlのゲンタマイシン(Invitrogen Life Technologies))で、培地は3日毎に新しくして、35日間培養した。しかしながら、いかなる軟骨形成分化プロトコルも、細胞型および選好に依存するが、機能するはずである。
【0065】
[0083]培養後、試料を、ピンセットで慎重に収集して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で穏やかに洗浄して、3.7%ホルマリン中で24時間固定した。次に、Narcisiら、2015年に記載されるように、固定した試料を、アガロース中に包埋して、脱水して、パラフィン中に包埋して、6μm厚で切片化して、切片を、スライドガラス上に置き、続いて、乾燥させて、再水和して、ヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)および2%エオシン(Merck)または0.4%チオニン溶液(Sigma-Aldrich)で染色して、脱水して、カバーガラス下に封入した。
【0066】
[0084]脱細胞化して再度播種した試料の顕微鏡写真(図2)は、細胞が、注入部位から、周囲の軟骨マトリックスへ遊走して、軟骨形成性の分化を受け、新たな軟骨様マトリックスを形成したことを示し、それは、チオニンを使用したグリコサミノグリカンに対する染色によって可視化された。
【0067】
実施例3
関節モデルにおけるin vivoでの軟骨形成
[0085]エラスターゼ処理した弾性軟骨が、軟骨欠損を修復するのに適しているかどうかを確定するために、エラスターゼ処理した弾性軟骨を、関節軟骨損傷のモデルにおける欠損を充填するのに使用した。まず、12週齢の仔ウシの外耳を水で洗浄して、軟骨のみが残るまで、軟骨膜、皮膚および筋肉を、メスを使用して除去した。続いて、直径6mmのバイオプシーを、バイオプシーパンチを使用して、耳介軟骨から入手し、およそ0.4mmまたは1.2mmのいずれかの高さに切り取った。
【0068】
[0086]細胞およびエラスチン線維の除去に用いられるプロトコルは、実施例1に記載するものと同一であった。別記しない限り、所定の容量を、約20個の試料のバッチに適用した。
【0069】
[0087]次に、細胞およびエラスチン線維の除去後に、試料の半分を、0.3cmのウェルの底部に入れて(1個の試料/ウェル、96ウェルプレート)、200μlの軟骨細胞増殖培地(10%熱失活FCS(Lonza)、50mg/mLのゲンタマイシン(Invitrogen Life Technologies)、および1.5mg/mlのアンホテリシンB(ファンギゾン;Invitrogen Life Technologies)を有するDMEM(Lonza))溶液として、試料1個当たり500.000個の軟骨形成細胞で覆った。この場合、軟骨形成細胞は、人工膝関節全置換を受けている患者の骨関節炎の膝関節から単離されたヒト関節軟骨細胞であり、軟骨細胞増殖培地中で、少なくとも10日間増殖された。試料の他の半分を、無細胞軟骨細胞増殖培地で覆った。続いて、試料を37℃で24時間、培地を8時間後に穏やかに新しくして、静的にインキュベートした。軟骨形成性の分化を誘導するために、試料を、PBSで2回すすいで、200μl/ウェルの軟骨形成培地(DMEM-高グルコースGlutaMax+(GIBCO)、1:100のインスリン、トランスフェリンおよび亜セレン酸(ITS+、BD Biosciences)、40μg/mlのL-プロリン(Sigma-Aldrich)、1mMのピルビン酸ナトリウム(GIBCO)、100nMのデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)、10ng/mlのトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1、R&D Systems)、1.5μg/mlのファンギゾン(Invitrogen Life Technologies)および50μg/mlのゲンタマイシン(Invitrogen Life Technologies))で、培地は3日毎に新しくして、18日間培養した。
【0070】
[0088]関節軟骨損傷のモデルに関して、本発明者らは、Vries-van Melleら、2011年(de Vries-van Melleら、2011.Tissue Eng Part C Methods 18:45~53)によって記載されるように、ダイヤモンドでコーティングされたトレフィンドリル(Synthes)およびバイオプシーパンチを使用して、12週齢の仔ウシの中手指関節から、直径8mmのバイオプシーを取り出した。続いて、関節の骨軟骨バイオプシーを、高さ4mmに切り取って、6mm欠損は、軟骨層のみに影響を及ぼす深さおよそ0.4mm(軟骨欠損)、または骨への深さおよそ1mm(骨軟骨欠損)のいずれかを創出した。ここでは関節モデルと称されるこれらの関節軟骨および骨バイオプシーを、PBSで完全にすすいで、37℃で24時間、静的にインキュベートした。翌日、軟骨細胞を播種したか、または播種されていないエラスターゼ処理した耳軟骨試料を、適合する高さに合わせて、関節欠損モデルに配置させた。
【0071】
[0089]次に、脱細胞化された軟骨試料を用いた複合関節モデルを、Vries-van Melleら、2014年(de Vries-van Melleら、2014.Eur Cell Mater 27:112~23)によって記載されるように、マウス皮膚細胞の浸潤を防止するためのNeuro-Patch膜(Braun、メルズンゲン、ドイツ)下で雌NMRI nu/nuマウス(Charles River、ウィルミントン、MA)に皮下移植して、2週、4週、8週または10週後に収集した。
【0072】
[0090]続いて、試料を、室温で5日間、4%ホルマリンを使用して固定して、10%ギ酸を使用して、溶液を3日毎に新しくして、少なくとも7日間、脱灰した。次に、pHが中性になるまで、試料を脱イオン水で洗浄して、アガロース中に包埋して、脱水して、パラフィン中に包埋して、6μm厚に切片化した。切片を、Narcisiら、2015年に記載されるように、スライドガラス上に置き、続いて乾燥させて、再水和して、ヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)および2%エオシン(Merck)または0.4%チオニン溶液(Sigma-Aldrich)で染色して、脱水して、カバーガラス下に封入した。
【0073】
[0091]顕微鏡写真は、骨軟骨欠損において、ウシ関節欠損モデルの骨部分由来の細胞、および程度は劣るが、ウシ関節欠損モデルの軟骨部分由来の細胞が、播種していない、脱細胞化された、エラスチンが低減された弾性軟骨に浸潤して、2週~4週で軟骨を形成する(白い矢頭)ことを示す(図3A図3B)。
【0074】
[0092]図3Cおよび図3Dに示される軟骨欠損において、石灰化された軟骨の残存層(網掛けの矢頭で示される)が、細胞遊走を阻止するため、ウシ関節欠損モデルの骨部分由来の細胞の浸潤は、防止される。ここで、ウシ関節欠損モデルの軟骨部分由来の細胞のみが、播種されていない、脱細胞化された、エラスチンが低減された弾性軟骨に浸潤して、10週で安定なままである新たな軟骨を形成する(白い矢頭)。
【0075】
[0093]エラスチンが低減された弾性軟骨が、移植に先立ってヒト関節軟骨細胞を播種された場合、播種されたヒト関節軟骨細胞は、移植後に、細胞のさらなる浸潤を防止するようであった。図3Eおよび図3Fにより、エラスチンが低減された弾性軟骨試料(点線の白い輪郭)が、軟骨欠損内に局所的な軟骨形成(白い矢頭)および軟骨様マトリックスの形成を示したことが示される。
【0076】
[0094]4mmの全層欠損を有する直径1cmの骨軟骨プラグを、人工的な軟骨欠損として調製した。欠損に、スキャフォールド(バイオプシーパンチで4mmに切り取った)、ならびに6,25×10個のヒト関節軟骨細胞(高齢の大腿骨頸部骨折患者の)および18,75×10個の不死化脂肪由来幹細胞(ASC/TERT1)の混合集団を充填した。市販のChondroGideにも、対照として同様に再度播種した。スキャフォールドを欠損中に配置させて、フィブリンシーラント(ARTISS、Baxter、米国)で固定して、NeuroPatch(Aesculap、ドイツ)で覆って、周囲のマウス組織由来の細胞の浸潤を防止した。
【0077】
[0095]プラグを、10週齢の雌NMRIヌードマウス(Charles River、ズルツフェルト、ドイツ)に6週間、皮下移植して、次に取り出して、4%中性緩衝ホルマリンで一晩固定して、PBSで洗浄して、脱水して、USEDECALC(Medite、米国)で脱灰した。続いて、試料をパラフィン中に包埋して、3μm~4μm厚で切片化した。脱パラフィン処理後、切片を、全体像染色としてAZANで染色し、コラーゲンI型(Abcam、英国)とコラーゲンII型(Thermo Fisher Scientific、米国、クローン2B1.5または6B3)を区別するために、免疫染色を実施した。
【0078】
[0096]in vivoでの骨軟骨プラグモデルにおいてhACおよびASC-TERT1の同時培養物を再度播種した耳介軟骨および対照スキャフォールドを図4に示す。
[0097]スキャフォールドの積み重ねを試験するために厚い軟骨を有する領域に焦点を当て、骨軟骨プラグを、上述したように調製した。より若い軟骨細胞(ヒトドナーからはほぼ入手不可能)の性能を試験するために、ウシ軟骨細胞を収集して、単独で、またはASC/TERT1と組み合わせて使用した。スキャフォールド1個当たり0.25×10個の細胞として、ウシ関節軟骨細胞を単独で、またはASC/TERT1との同時培養物を播種した、標準化した4mmのスキャフォールドを、欠損に充填した。プラグを、ヌードマウスに6週間、皮下移植して、上述したように組織学的に分析した。
【0079】
[0098]in vivoでの骨軟骨プラグモデルにおいて、ウシ軟骨細胞を単独で、または同時培養物を再度播種した耳介軟骨を図5に示す。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5