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特許7321160フルオロポリマーをベースとするハイブリッド有機/無機複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】フルオロポリマーをベースとするハイブリッド有機/無機複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/16 20060101AFI20230728BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20230728BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20230728BHJP
   C08F 214/22 20060101ALI20230728BHJP
   H01M 8/0221 20160101ALI20230728BHJP
   H05B 33/20 20060101ALI20230728BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C08L27/16
C08K5/5415
C08K5/057
C08F214/22
H01M8/0221
H05B33/20
C08L27/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020531442
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084298
(87)【国際公開番号】W WO2019115502
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】17306761.2
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブルソー, セゴレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ, リッカルド リーノ
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00-27/24
C08K 5/5415
C08K 5/057
C08F 214/22
H01M 8/0221
H05B 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマードメイン及び無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]であって、前記ポリマー(F-h)が、
- 下記:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、
(ii)式:
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位、及び
(iii)VDFとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー(FM2)に由来する繰り返し単位
を含む、部分フッ素化フルオロポリマーである少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]
(ここで、ポリマー(F)は、0.09L/gよりも高く、0.6L/gよりも低い25℃でのジメチルホルムアミド中で測定される固有粘度を有する)
と、
- 式(I):
4-mAY (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、加水分解性基であり、Xは、1個以上の官能基を任意選択的に含む、炭化水素基である)
の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]と
の間の反応によって得られ、
ここで、前記フルオロポリマードメインがポリマー(F)に由来し、前記無機ドメインが化合物(M)に由来し、及び
ここで、前記無機ドメインが、前記モノマー(MA)の前記ROH基の少なくとも一部と、化合物(M)の前記加水分解性基Yの少なくとも一部との反応によって前記フルオロポリマードメインにグラフトされる
ポリマー(F-h)。
【請求項2】
ポリマー(F)が、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
- 0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~3モル%の少なくとも1種のモノマー(MA)、並びに
- 0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)及びトリフルオロエチレン(TrFE)から選択される少なくとも1種のモノマー(FM2)
に由来する繰り返し単位を含む、請求項に記載のポリマー(F-h)。
【請求項3】
モノマー(MA)が、
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
- 式:
のどちらかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
びそれらの混合物
からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリマー(F-h)。
【請求項4】
25℃でのジメチルホルムアミド中で測定される、ポリマー(F)の前記固有粘度が、0.50L/gよりも低い、より好ましくは0.45L/gよりも低い、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)。
【請求項5】
化合物(M)中のXがRであり、YがORであり、ここで、互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、R及びRは、C~C18炭化水素基から独立して選択され、ここで、Rは、少なくとも1つの官能基を任意選択的に含む、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)。
【請求項6】
化合物(M)が官能性化合物(M1)であり、ここで、官能性化合物(M1)が、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、

の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)
式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
式:
NCNHCSi(OCHのアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、

のトリエトキシシリルプロピルマレアミン酸
式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、
-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、及びそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、
Ti(L)t(OR)z(式中、Lは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、x及びyは、t+z=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネート
らなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)。
【請求項7】
化合物(M)が非官能性化合物(M2)であり、ここで、化合物(M2)が、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートからなる群から選択される、請求項1、のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)。
【請求項8】
化合物(M)が化合物(M’)であり、ここで、前記化合物(M’)が、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリメトキシシリルペンチルイソシアネート、トリエトキシシリルペンチルイソシアネート、トリメトキシシリルヘキシルイソシアネート及びトリエトキシシリルヘキシルイソシアネートからなる群から選択される、請求項1、のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)。
【請求項9】
前記無機ドメインに含まれる無機フィラーをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)。
【請求項10】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]の製造方法であって、前記方法が、
(a)混合物であって
- 下記:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、
(ii)式:
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位、及び
(iii)VDFとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM2)]に由来する繰り返し単位
を含む、部分フッ素化フルオロポリマーである少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]
(ここで、ポリマー(F)は、0.09L/gよりも高く、0.6L/gよりも低い25℃でのジメチルホルムアミド中で測定される固有粘度を有する)
と、
- 式(I):
4-mAY (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、加水分解性基であり、Xは、1個以上の官能基を任意選択的に含む、炭化水素基である)
の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]と
の混合物を提供する工程と、
(b)ペンダント-Ym-1AX4-m基(m、Y、A、及びXは上で詳述されたのと同じ意味を有する)を含むグラフトポリマーを得るために、前記ポリマー(F)の前記モノマー(MA)のROH基のヒドロキシル基の少なくとも一部を前記化合物(M)の少なくとも一部と反応させる工程と、
(c)上で詳述された、化合物(M)及び/又はペンダント-Ym-1AX4-m基を加水分解して及び/又は重縮合させて無機ドメインを含むポリマー(F-h)を生成させる工程と
を含む方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)又は請求項10に記載の方法によって得られるポリマー(F-h)の、ガラスの及び/又はセラミック材料の処理のための使用。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)又は請求項10に記載の方法によって得られるポリマー(F-h)を含む層でガラス及び/又はセラミック表面をコート加工する工程を含む請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)又は請求項10に記載の方法によって得られるポリマー(F-h)を含む層によってフルオロポリマー層に結合したガラス及び/又はセラミック基材を含む多層構造体を製造するための請求項11に記載の使用。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)又は請求項10に記載の方法によって得られるポリマー(F-h)の、電気化学用途用及び/又は分離プロセス用の膜の製造のための原材料としての使用。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)又は請求項10に記載の方法によって得られるポリマー(F-h)の、光起電力装置又は有機発光デバイスでのエレクトロルミネッセント材料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月13日出願の欧州特許出願第17306761.2号に対する優先権を主張するものであり、それらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、無機ドメインとフルオロポリマー相との間に化学結合を持った特定のフルオロポリマーをベースとするハイブリッド有機/無機複合材料に、その製造方法に、並びにそれの幾つかの使用及び用途に関する。
【背景技術】
【0003】
有機及び無機化合物をナノメートルスケールでハイブリッド化することは、新規材料を創成するための重要な且つ発展的な方法である。有機ポリマーが無機固体中にナノ又は分子レベルで分散している、有機-無機ポリマーハイブリッドは、それらの独特の特性のために科学的、技術的及び工業的に高い注目を集めている。
【0004】
有機-無機ポリマーハイブリッドを作り出すために、最も有用な且つ重要な手法は、金属アルコキシドを使用するゾルゲル法である。予め形成された有機ポリマーの存在下に、金属アルコキシドの、特にアルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)又はテトラエトキシシラン(TEOS))の加水分解及び重縮合の反応条件を適切に制御することによって、元の化合物と比べて特性が改善されたハイブリッドを得ることが可能である。ポリマーは、さもなければ脆い無機材料の靭性及び加工性を向上させることができ、ここで、無機ネットワークは、前記ハイブリッドの耐引掻性、機械的特性、及び表面特性を向上させることができる。
【0005】
フルオロポリマーから、特にフッ化ビニリデンポリマーから出発するゾルゲル技法により製造されたハイブリッドは、当技術分野において公知である。
【0006】
したがって、論文OGOSHI、Tomokiら、Synthesis of Poly(vinylidene fluoride)(PVDF)/Silica Hybrods having interpenetrating polymer network structure by using crystallization between PVDF chains.(A)J.polym.sci.,A,Polym.chem.,2005,vol.43,p.3543-3550は、触媒量のHClの存在下にPVDFのDMF及びガンマ-ブチロラクトン中の溶液をTMOSと反応させることによる特定のPVDF/シリカハイブリッドの合成を開示している。
【0007】
それにもかかわらず、高い分散能を提供するはずである無機ドメインのin situ形成にもかかわらず、その有機相と無機相との間のこれらの界面が面のかく乱を示し、それが弱点として挙動して機械的特性の点での利点を激減させる可能性がある、並びに/又は無機ドメインが大幅に「凝固」して、例えば、接着性及び/若しくは他の表面特性の点で、均質性利点を激減させる可能性があることが起こる。
【0008】
当技術分野において、上述されたゾル/ゲル法とは異なる技法によって、特定の有機ポリマーとその中に分散した特定の無機ドメインとの間に化学結合を確保するための試みがなされてきた。
【0009】
したがって、米国特許第6620516号明細書(旭化成株式会社)2003年9月16日は、有機ドメインが、複数のカルボン酸基を有する水溶性又は水分散性の有機ポリマーを含み、そして有機ドメイン及び無機ドメインが、有機ポリマーのカルボン酸基によって互いにイオン結合してイオン性架橋構造を形成している、有機ドメイン/無機ドメインハイブリッド材料を開示している。これらのハイブリッドは、カルボキシレート基及びシリケート基への同時イオン的化学結合によってイオン性網状構造の形成を確実にするであろう特定の二価金属カチオンの存在下に、塩基性条件下の水性媒体中で、上で詳述されたような有機ポリマーと特定のメタシリケートアニオンとの間の反応によって製造されている。
【0010】
同様に、米国特許第7244797号明細書(旭化成株式会社)2007年7月17日は、さらに、有機ポリマーが、無機ドメインのメタシリケート官能基にイオン結合するカチオン性官能基(例えば、第四級アンモニウム基)を含むことができる、類似の手法を開示している。
【0011】
それにもかかわらず、これらの手法は、フルオロポリマーに適しているとして提案されているわけではない。
【0012】
SOUZY,Renaudら.Functional Fluoropolymers for fuel cell membranes.Prog.Polym.Sci.,2005,vol.30,644-687は、そのsection 3.3.2において、有機及び無機部分の相互貫入網状構造の形成によってとりわけ製造される複合膜を開示している。例として、予め形成されたNAFION(登録商標)フルオロアイオノマー膜上でのテトラエトキシシラン(TEOS)のゾルゲル酸触媒加水分解/重合が、Nafion(登録商標)-シリカハイブリッド膜を生成させるとして言及されている。
【0013】
欧州特許出願公開第1389634A号明細書(ダイキン工業株式会社)2004年2月18日は、
a)とりわけTEOSであることができる、加水分解性金属アルコキシド;
b)パーフルオロアルキル基と上述の加水分解性化合物と反応する官能基とを含むフルオロ化合物;及び
c)接着性向上剤
を含む表面処理剤を開示している。
好ましい実施形態において、化合物b)は、式:
(式中、Yは、H又は低級アルキル基であり;m及びnは、0~2であり;R1は、加水分解性基又は塩素原子であり;R2は、水素原子又は不活性な一価基であり、Mは、金属であるか又はイソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基、ホスフェート基、アミノ基、及びスルホネート基からなる群から選択される反応基である)
の官能基を含むパーフルオロポリエーテルである。
【0014】
したがって、当技術分野において、先行技術のハイブリッドの欠点を覆すことができる、有機相と無機相とが共有結合によって互いに化学結合している、フルオロポリマーをベースとするハイブリッド有機/無機複合材料が依然として未達である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、したがって、フルオロポリマードメイン及び無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]の製造方法であって、前記方法が、
(a)混合物:
- 下記:
(i)少なくとも1種のフッ素化モノマー(FM)に由来する繰り返し単位、
(ii)式:
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位、及び
(iii)任意選択的に、VDFとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー(FM2)に由来する繰り返し単位
を含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]
(ここで、ポリマー(F)は、0.09L/gよりも高く、0.6L/gよりも低い25℃でのジメチルホルムアミド中で測定される固有粘度を有する)
と、
- 式(I):
4-mAY (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、加水分解性基であり、Xは、1個以上の官能基を任意選択的に含む、炭化水素基である)
の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]と
の混合物を提供する工程と、
ここで、フルオロポリマードメインがポリマー(F)から誘導され、無機ドメインが化合物(M)から誘導され、
ここで、無機ドメインが、モノマー(MA)のROH基の少なくとも一部と化合物(M)の加水分解性基Yの少なくとも一部との反応によって、フルオロポリマードメインにグラフト化されており、
(b)ペンダント-Ym-1AX4-m基(m、Y、A、及びXは上で詳述されたのと同じ意味を有する)を含むグラフトポリマーを得るために、前記ポリマー(F)の前記モノマー(MA)のROH基のヒドロキシル基の少なくとも一部を前記化合物(M)の少なくとも一部と反応させる工程と、
(c)上で詳述されたような、化合物(M)及び/又はペンダント-Ym-1AX4-m基を加水分解して及び/又は重縮合させて無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を生成させる工程と
を含む方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]であって、前記ハイブリッドが:
- 上で詳述されたような、少なくとも1種のポリマー(F)と;
- 上で詳述されたような、少なくとも1種の化合物(M)と
の間の反応によって得られ、
ここで、無機ドメインは、モノマー(MA)のROH基の少なくとも一部と化合物(M)の少なくとも一部との反応によってポリマー(F)にグラフト化されている、
ポリマー(F-h)に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
驚くべきことに、本発明のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は、特に、ガラス若しくはセラミック材料への接着性に関して、及び/又はそれらの改善された耐引掻性に関して、改善された特性を示すことが見出された。また、化合物(M)が使用される場合に、例えば疎水性又はイオン伝導性の観点から、機能性挙動を示すことができるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料が得られる。
【0018】
ポリマー(F)は、少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位及び少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位を含むフルオロポリマーである。
【0019】
用語「フッ素化モノマー」により、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書では意図される。
【0020】
用語「少なくとも1種のフッ素化モノマー」は、ポリマー(F)が、1種又は2種以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらが上で定義されたような1種又は2種以上のフッ素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0021】
用語「少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]」は、ポリマー(F)が、1種又は2種以上の(メタ)アクリルモノマーに由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「(メタ)アクリルモノマー」は、本発明の目的のためには、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらが、上で定義されたような1種又は2種以上の(メタ)アクリルモノマーの両方を意味すると理解される。
【0022】
フッ素化モノマー(FM)が少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0023】
フッ素化モノマー(FM)が水素原子を含まない場合、それは、パー(ハロ)フッ素化モノマーと称される。
【0024】
フッ素化モノマー(FM)は、1個以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含み得る。
【0025】
好適なフッ素化モノマー(FM)の非限定的な例としては、とりわけ、下記:
- テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンなどのC~Cパーフルオロオレフィン;
- フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレンなどのC~C含水素フルオロオレフィン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキルである)のパーフルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレンなどのクロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
- CF=CFOX(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、C~C12アルキル基、C~C12オキシアルキル基又は、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基など、1個以上のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基である];
- 式CF=CFOCFORf2[式中、Rf2は、C~Cフルオロ-若しくはパーフルオロアルキル基、例えばCF、C、C、又は-C-O-CFなどの、1個以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル基である]の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOY[式中、Yは、C~C12アルキル基若しくは(パー)フルオロアルキル基、C~C12オキシアルキル基又は、1個以上のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、Yは、その酸、酸ハライド又は塩の形態での、カルボン酸又はスルホン酸基を含む]の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール
が挙げられる。
【0026】
本発明による好ましい実施形態において、ポリマー(F)は、有利には、少なくとも1種のフッ素化モノマー(FM)少なくとも1種のモノマー(MA)に由来するランダムに分布した繰り返し単位の線状配列を含むランダムポリマー[ポリマー(F)]である。
【0027】
表現「ランダムに分布した繰り返し単位」は、少なくとも1種のモノマー(MA)の配列(前記配列は、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する2つの繰り返し単位間に含まれる)の平均数と、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の総平均数との間のパーセント比を意味することを意図する。
【0028】
少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位のそれぞれが分離されている、すなわちモノマー(MA)に由来する繰り返し単位が少なくとも1種のフッ素化モノマーの2つの繰り返し単位の間に含まれている場合、少なくとも1種のモノマー(MA)の配列の平均数は、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の平均総数に等しく、その結果、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来するランダムに分布した繰り返し単位の分率は100%である:この値は、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の完全にランダムな分布に相当する。したがって、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の総数に対して少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する分離された繰り返し単位の数が大きければ大きいほど、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来するランダムに分布した繰り返し単位の分率の百分率値はより高くなるであろう。
【0029】
ポリマー(F)は、モノマー(MA)とは異なる、少なくとも1種の含水素モノマーに由来する繰り返し単位をさらに任意選択的に含み得る。
【0030】
用語「含水素モノマー」により、少なくとも1個の水素原子を含み、且つ、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書では意図される。
【0031】
用語「少なくとも1種の含水素モノマー」は、ポリマー(F)が1種又は2種以上の含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「含水素モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらが、上で定義されたような1種又は2種以上の含水素モノマーを意味すると理解される。
【0032】
ポリマー(F)は、非晶性であっても半結晶性であってもよい。
【0033】
用語「非晶性」は、ASTM D-3418-08に従って測定されるように、5J/g未満の、好ましくは3J/g未満の、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図される。
【0034】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定されるように、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図される。
【0035】
ポリマー(F)は好ましくは、半結晶性である。
【0036】
ポリマー(F)は、好ましくは少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0037】
ポリマー(F)は、好ましくは最大でも10モル%、より好ましくは最大でも5モル%、さらにより好ましくは最大でも3モル%の、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0038】
ポリマー(F)中の少なくとも1種のモノマー(MA)]に由来する繰り返し単位の平均モル百分率の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。とりわけ、酸-塩基滴定方法又はNMR方法を挙げることができる。
【0039】
ポリマー(F)は、好ましくは、部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0040】
本発明の目的のためには、用語「部分フッ素化フルオロポリマー」は、少なくとも1種のフッ素化モノマー(FM)に由来する繰り返し単位及び少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味することを意図し、ここで、フッ素化モノマー(FM)は、少なくとも1個の水素原子を含む。
【0041】
本発明の第1実施形態によれば、ポリマー(F)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1種のモノマー(MA)及びVDFとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM2)]に由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0042】
本発明のこの第1実施形態のポリマー(F)は、より好ましくは、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
- 0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~3モル%の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー(MA)、及び
- 0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)及びトリフルオロエチレン(TrFE)から選択される少なくとも1種のフッ素化モノマー(FM2)
に由来する繰り返し単位を含む。
【0043】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むモノマー(MA)の非限定的な例としては、とりわけ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
モノマー(MA)は、好ましくは、
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
- 式:
のどちらかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
- 及びそれらの混合物
から選択される。
【0045】
本発明による好ましい実施形態において、ポリマー(F)は、VDF/HEA/HFPターポリマーである。
【0046】
ポリマー(F)は、典型的には、少なくとも1種のフッ素化モノマー、上で定義されたような少なくとも1種のモノマー(MA)、及び、任意選択的に、モノマー(FM2)の重合によって得られる。
【0047】
ポリマー(F)は、典型的には、乳化重合又は懸濁重合によって得られる。
【0048】
好ましくは、25℃でのジメチルホルムアミド中で測定される、ポリマー(F)の固有粘度は、0.50L/gよりも低く、より好ましくは0.45L/gよりも低い。
【0049】
ポリマー(F-h)は、典型的には、フルオロポリマードメイン及び無機ドメインを含み、好ましくはそれらからなる。
【0050】
上で定義されたような式(I)の化合物(M)の加水分解性基Yの選択は、化合物(M)のAと、ROH(メタ)アクリルモノマー(MA)上のヒドロキシル基に属する-O-原子との間の-O-A≡結合の形成をそれが適切な条件下で可能にするならば、特に制限されない。上で定義されたような化合物(M)の加水分解性基Yは、典型的には、好ましくは塩素原子である、ハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基及びヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0051】
好ましい実施形態によれば、化合物(M)中のXは、Rであり、Yは、ORであり、ここで、互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、R及びRは、C~C18炭化水素基から独立して選択され、ここで、Rは、少なくとも1個の官能基を任意選択的に含む。
【0052】
上で定義されたような化合物(M)がX上に少なくとも1個の官能基を含む場合、それは、官能性化合物(M1)と称され;上で定義されたような化合物(M)のXのどれも官能基を含まない場合、化合物(M)は非官能性化合物(M2)と称されるであろう。
【0053】
X上に存在することができる官能基の非限定的な例としては、とりわけ、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハライドの形態での)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩又はハライドの形態での)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、又はハライドの形態での)、チオール基、アミン基、第四級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基のような)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基が挙げられる。
【0054】
より好ましい実施形態によれば、化合物(M)は、mが1~3の整数であり、AがSi、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、XがRA’であり、YがORB’であり、ここで、RA’が少なくとも1個の官能基を含むC~C12炭化水素基であり、RB’がC~C線状若しくは分岐状アルキル基であり、好ましくはRB’がメチル又はエチル基である化合物(M1)である。
【0055】
官能性化合物(M1)の例は、とりわけ、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、
式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
式:
NCNHCSi(OCHのアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミン酸、
式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、及びそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(L)(OR)(式中、Lは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、x及びyは、t+z=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0056】
非官能性化合物(M2)の例は、とりわけ、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0057】
別の好ましい実施形態によれば、化合物(M)中のXは、少なくとも1個の-N=C=O官能基を含むC1~12炭化水素基であり、及び式中、A及びYは、上で定義された通りであり;この場合に、化合物(M)は化合物(M’)と称されるであろう。
【0058】
さらにより好ましい実施形態によれば、化合物(M’)中で、YはORであり、ここで、Rは、C~C線状若しくは分岐状アルキル基であり、好ましくはRは、メチル又はエチル基である。
【0059】
本実施形態による好適な化合物(M’)の非限定的な例としては、下記:トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリメトキシシリルペンチルイソシアネート、トリエトキシシリルペンチルイソシアネート、トリメトキシシリルヘキシルイソシアネート及びトリエトキシシリルヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0060】
好ましい実施形態によれば、本発明の膜に含まれる少なくとも1種のポリマー(F-h)は、
- 上で定義されたような少なくとも1種の[ポリマー(F)]、
- 上で定義されたような少なくとも1種の金属化合物(M’);及び
- 上で定義されたような少なくとも1種の金属化合物(M2)
の間の反応によって得られる。
【0061】
疎水性又はイオン伝導性の観点から機能的挙動を示すこができる、ポリマー(F-h)を製造することを目指して、化合物(M)の官能基は、好ましくは、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハライド形態での)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩又はハライド形態での)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、又はハライド形態での)、アミン基、及び第四級アンモニウム基の中で;最も好ましくは、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハライド形態での)及びスルホン酸基(その酸、エステル、塩又はハライド形態での)から選択されるであろう。
【0062】
化合物(M)は、好ましくは、式:
4-m*(ORm*
(式中、m*は、2~3の整数であり、E*は、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、Rは、1個以上の官能基を任意選択的に含む、C1~12炭化水素基であり;互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、Rは、C~C線状若しくは分岐状アルキルラジカルであり、好ましくはRは、メチル又はエチルである)
に従う。
【0063】
本発明の方法は、ペンダント-Ym-1AX4-m基(m、Y、A及びXは上で詳述されたのと同じ意味を有する)を含むグラフト化ポリマーを得るために、前記ポリマー(F)の前記モノマー(MA)のROH基のヒドロキシル基の少なくとも一部を前記化合物(M)の少なくとも一部と反応させる工程を含む。
【0064】
モノマー(MA)のROH官能基の-OH基は、化合物(M)部分とモノマー(MA)部分との間に共有結合を生成させるように化合物(M)の加水分解性基と反応できることが理解される。
【0065】
ポリマー(F)のヒドロキシル基を上記のような化合物(M)と反応させるために、幾つかの技法を成功裏に用いることができる。
【0066】
ポリマー(F)及び化合物(M)は、とりわけ、溶融状態で反応させることができ;押出機、溶融混練機又は他の装置などの溶融物配合機をこの目的のために有利に使用することができる。
【0067】
ポリマー(F)及び化合物(M)は、とりわけ、溶液中でも反応させることができ;この実施形態によれば、ポリマー(F)及び化合物(M)は、少なくとも部分的に溶媒に溶解している。溶解は、室温でか又は加熱して行うことができる。溶媒の選択は、ポリマー(F)及び化合物(M)の両方を効率的に溶媒和し、且つ、ポリマー(F)のヒドロキシル基と化合物(M)の加水分解性基との間の反応を妨げないならば、決定的に重要であるわけではない。
【0068】
一般に、極性の非プロトン性溶媒が好ましくは選択されるであろう。これらの溶媒の中に、とりわけ、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリエチルホスフェート、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、グリコールジエーテル、グリコールエーテル-エステル、酢酸n-ブチル、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、ブチロラクトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、グリセリルトリアセテート、フタル酸ジメチルを挙げることができる。
【0069】
本発明の実施形態によれば、混合物は、化合物(M)及びポリマー(F)に加えて、少なくとも1種の無機フィラーをさらに含むことができる。
【0070】
無機フィラーは、一般に、粒子の形態下で混合物中に提供される。
【0071】
無機フィラー粒子は、一般に、0.001μm~1000μmの、好ましくは0.01μm~800μm、より好ましくは0.03μm~500μmの平均粒度を有する。
【0072】
無機フィラーの選択は、特に制限されないが;それらの表面上に化合物(M)と反応する基を有する無機フィラーが一般に好ましい。
【0073】
表面反応性基の中に、とりわけ、ヒドロキシル基が挙げられる。
【0074】
この理論に制約されることなく、本出願人は、化合物(M)の少なくとも一部と無機フィラーの前記表面反応性基の少なくとも一部との間の反応は、化合物(M)の少なくとも一部とモノマー(MA)のROH基の少なくとも一部との反応と同時に起こることができ、その結果、その後の加水分解/重縮合ステップにおいて、ポリマー(F)と無機フィラーとの間の化学結合が、化合物(M)に由来する無機ドメインの至る所でたぶん達成されると考えている。
【0075】
本発明の方法において使用されるのに好適な無機フィラーの中に、混合酸化物を含む、無機酸化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硫化物等を挙げることができる。
【0076】
金属酸化物の中に、SiO、TiO、ZnO、Alを挙げることができる。
【0077】
本発明のこの実施形態との関連の中で良好な結果を与える化合物の種類は、とりわけ、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムであり、全てがナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの追加の金属を任意選択的に含有する。
【0078】
これらのケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、一般に、層状構造を有するとして知られている。
【0079】
全てがナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの追加の金属を任意選択的に含有する、これらのケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、とりわけモンモリロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイトなどの、場合により天然起源の、とりわけ、スメクチック粘土であることができる。或いは、全てがナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの追加の金属を任意選択的に含有する、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、とりわけフルオロヘクトライト、ヘクトライト、ラポナイトのような、合成粘土の中から選択することができる。
【0080】
最良の結果は、100nm未満の、好ましくは50nm未満の、より好ましくは10nm未満の少なくとも1つの寸法を有する上記のような層状ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムの粒子で得られている。
【0081】
この実施形態によれば、本発明のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は、前記無機フィラーを含む。前記無機フィラーは、典型的には、本発明の複合材料の無機ドメイン中に含まれる。
【0082】
本方法は、上で詳述されたような、化合物(M)及び/又はペンダント-Ym-1AX4-m基を加水分解する及び/又は重縮合させて無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を生成させる工程をさらに含む。
【0083】
加水分解/重縮合は、ポリマー(F)のヒドロキシル基と化合物(M)とを反応させるステップと同時に実施することができ、又は前記反応が起こるとすぐに実施することができる。
【0084】
典型的には、特にA=Siである化合物については、この加水分解/重縮合は、適切な触媒/反応剤の添加によって開始される。一般に、水又は水と酸との混合物を、この反応を促進するために使用することができる。
【0085】
酸の選択は特に制限されず;有機及び無機酸の両方を使用することができる。HClが、中でも、本発明の方法に使用することができる好ましい酸である。
【0086】
溶融状態でのポリマー(F)と化合物(M)との間の反応の場合には、任意選択的に揮発性酸と組み合わせた、水蒸気の注入が、加水分解/重縮合を促進するために好ましい方法であろう。
【0087】
溶液でのポリマー(F)と化合物(M)との間の反応の場合には、酸を好ましくは含む水性媒体の添加が、加水分解/重縮合を促進するために好ましい方法であろう。
【0088】
この加水分解/重縮合は室温で行うこともできるが、一般に、50℃を超える温度に加熱してこのステップを実施することが好ましい。
【0089】
溶融状態での反応の場合には、温度は、ポリマー(F)の融点の関数として150~250℃の範囲であろうし;溶液での反応の場合には、温度は、溶媒の沸点を考慮して選択されるであろう。一般に、50~150℃、好ましくは60℃~120℃の温度が好ましいであろう。
【0090】
このステップにおいて、化合物(M)の加水分解性基は、ポリマー(F)の鎖からなるフルオロポリマードメイン(2)と、化合物(M)に由来する残基からなる無機ドメイン(1)とを含むハイブリッド複合材料を生成させるように反応するであろうことが理解される。
【0091】
無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は、様々な反応ステップに用いられる技法に依存するであろう、標準的な方法で回収することができる。
【0092】
本発明の他の態様はまた、本発明のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の異なる使用分野での使用にも関する。
【0093】
本発明の一態様によれば、本発明のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は、ガラス及び/又はセラミック材料の処理のために使用される。特に、本発明は、ガラス及び/又はセラミック表面を、前記複合材料を含む層でコートすることを含む、前記複合材料の使用に関する。本発明の複合材料を含む前記層は、特に場合により顔料若しくは他のフィラーとの混合物で、美的仕上げとして使用することができるか、又は飛散防止コーティングとして使用することができる。
【0094】
さらに、上で定義されたような複合材料を含む層によってフルオロポリマー層に結合しているガラス及び/又はセラミック基材を含む多層構造体を製造するための前記複合材料の使用は、本実施形態の範囲下にある。
【0095】
さらに本発明の複合材料は、耐引掻性を付与するために異なる基材上にコーティングとして使用することができる。本発明の複合材料で成功裏にコートすることができる材料の選択は特に制限されないが、プラスチック材料が好ましいであろうことは一般に理解される。
【0096】
さらに、本発明の複合材料、特に、ポリマー(F)と官能性化合物(M)との間の反応によって得られるそれらの複合材料は、電気化学用途用の及び/又は分離プロセス用の膜の製造のための原材料として使用することができる。特に、この使用のための好ましい複合材料は、それらの製造のために使用される官能性化合物(M)が、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハライド形態での)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩又はハライド形態での)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、又はハライド形態での)、アミン基、及び第四級アンモニウム基からなる群から;好ましくはカルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハライド形態での)及びスルホン酸基(その酸、エステル、塩又はハライド形態での)からなる群から選択される官能基を含むものである。この実施形態内で、本発明の複合材料は、リチウム電池用のセパレータの製造のために、燃料電池用のイオン伝導性膜の製造のために、濾過膜の製造のために使用することができる。
【0097】
さらに、本発明の複合材料、特に、ポリマー(F)と官能性化合物(M)との間の反応によって得られるそれらの複合材料は、光起電力装置又は有機発光デバイスにおけるエレクトロルミネッセント材料として使用することができる。
【0098】
特に、この使用のための好ましい複合材料は、それらの製造のために使用される官能性化合物(M)が、とりわけ正孔輸送能、電子輸送能、発色団等などの、電気光学特性を有する官能基を含むものである。これらの基の中に、カルバゾール、オキサジアゾール、テトラフェニレンテトラミン、ジシアノメチレン-4-H-ピラン、ナフタルイミド基を含む官能基を挙げることができる。
【0099】
この場合に、光学の分野での本発明の複合材料の使用は、透明性、良好な接着性、バリア性、防食、屈折率の容易な調整、調整可能な機械特性及び意匠性などの特性の組み合わせを活用する。
【0100】
電気光学特性を有する官能基を含む官能性化合物(M)から製造される本発明の複合材料の可能な使用の広範な再調査は、SANCHEZ,Clementら“Optical Properties of Functional Hybrid Organic-Inorganic Nanocomposites”.Advanced Materials.3/12/2003,vol.15,no.23,p.1969-1994.に提供されている。
【0101】
さらに、本発明の複合材料は、表面ヒドロキシル基を含む表面をコートするために使用することができ;この場合には、複合材料の適用は、コートされる表面との化学結合を化合物(M)にできる限り確立させるように加水分解/重縮合段階中に行うことができる。セルロース系の表面を、とりわけ、本発明の複合材料を含む対応するコートされた表面を生成させるためにこの手法内で使用することができる。基材として好適な基材の中に、繊維製品、布帛(例えば、衣服用)、木製部品(例えば、家具用)、紙(例えば、包装用)を挙げることができる。
【0102】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0103】
本発明は以下の実施例に関連してこれから説明されるが、その目的は、単に例示的であり、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0104】
原材料
ポリマー1-比較:25℃でのDMF中で0.077L/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.8モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
ポリマー(F-A):25℃でのDMF中で0.097L/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.6モル%)-HFP(2.5モル%)ポリマー。
ポリマー(F-B):25℃でのDMF中で0.30L/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.2モル%)ポリマー。
ポリマー(F-C):25℃でのDMF中で0.135L/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.5モル%)ポリマー。
ポリマー(F-D):25℃でのDMF中で0.157L/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.4モル%)ポリマー。
【0105】
実施例1:ポリマー1-比較の合成
300rpmの速度で動作する羽根車を備えた80Lの反応器に、58242gの脱塩水及び11.1gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤(Dowから商業的に入手可能)を順次導入した。反応器を、順に真空(30mmHg)及び14℃でのパージ窒素でパージした。次いで、イソドデカン中のt-アミルペルピバレート開始剤の75重量%溶液の149.9gを反応器に導入した。次いで、21.6gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び1873gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを反応器に導入した。最後に、16597gのフッ化ビニリデン(VDF)を添加した。反応器を57℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を110バールに固定した。重合中、240.6gのHEAを含有する13kgの水溶液を供給することによって、圧力を110バールに常に等しく保った。この供給後に、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は80バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、モノマーのほぼ75%転化率が得られた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0106】
実施例2:ポリマー(F-A)の合成
250rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットルの反応器に、順に49992gの脱塩水及び15.2gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を導入した。反応器を、順に真空(30mmHg)及び20℃でのパージ窒素でパージした。次いで、イソドデカン中のt-アミルペルピバレート開始剤の75重量%溶液の204.4gを導入した。撹拌の速度を300rpmに高めた。最後に、20.4gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び2555gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを反応器に、引き続き22735gのフッ化ビニリデン(VDF)を導入した。反応器を55℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。重合中、235gのHEAを含有する16.9kgの水溶液を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後に、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は90バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、モノマーのほぼ76%転化率が得られた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0107】
実施例3:ポリマー(F-B)の合成
250rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットルの反応器に、順に53435gの脱塩水及び18.3gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を導入した。反応器を、順に真空(30mmHg)及び20℃でのパージ窒素でパージした。次いで、イソドデカン中のt-アミルペルピバレート開始剤の75重量%溶液の76.6gを添加した。撹拌の速度を300rpmに高めた。最後に、5.8gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を反応器に、引き続き22919gのフッ化ビニリデン(VDF)を導入した。反応器を48℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。重合中、水中4.55g/kgのHEAを含有する14.54kgの水溶液を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後に、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は115バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、コモノマーのほぼ79%転化率が得られた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0108】
実施例4:ポリマー(F-C)の合成
650rpmの速度で動作する羽根車を備えた4リットルの反応器に、順に2150gの脱塩水及び0.93gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を導入した。反応器を、順に真空(30mmHg)及び20℃でのパージ窒素でパージした。次いで、イソドデカン中のt-アミルペルピバレート開始剤の75重量%溶液の9.34gを添加した。撹拌の速度を880rpmに高めた。最後に、0.38gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を反応器に、引き続き1166gのフッ化ビニリデン(VDF)を導入した。反応器を55℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。9gのHEAを含有する834gの水溶液を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後に、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は115バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、コモノマーのほぼ78%転化率が得られた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0109】
実施例5:ポリマー(F-D)の合成
650rpmの速度で動作する羽根車を備えた4リットルの反応器に、順に2244gの脱塩水及び0.93gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を導入した。反応器を、順に真空(30mmHg)及び20℃でのパージ窒素でパージした。次いで、イソドデカン中のt-アミルペルピバレート開始剤の75重量%溶液の9.34gを導入した。撹拌の速度を880rpmに高めた。最後に、0.33gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を反応器に、引き続いて1168gのフッ化ビニリデン(VDF)を導入した。反応器を48℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。7.9gのHEAを含有する767gの水溶液を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後に、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は115バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、コモノマーのほぼ76%転化率が得られた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0110】
実施例6:ハイブリッドポリマー/シリカ複合材料の溶液を調製するための一般的な手順
10%のシリカを含むハイブリッドポリマー/シリカ複合材料
実施例1~5のいずれかに従って調製された3グラムのポリマーを、27グラムのN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。次いで、撹拌される溶液に、1.156グラムのTEOS、引き続き0.555mLの水性HCl(0.1M)を滴加し;ハイブリッドVDF-HEA/シリカ複合材料の透明な溶液を得るために、混合物を60℃で2時間撹拌して確実にゾルゲル反応(TEOS加水分解及び重縮合)させた。SiOへの完全なTEOS加水分解/重縮合を仮定して計算される、シリカ含有量は、複合材料に関して10重量%であった。
【0111】
20%のシリカを含むハイブリッドポリマー/シリカ複合材料
実施例1又は2のいずれかに従って調製された2.5グラムのポリマーを、22.5グラムのN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。次いで、撹拌される溶液に、2.167グラムのTEOS、引き続き1.040mLの水性HCl(0.1M)を滴加し;ハイブリッドVDF-HEA/シリカ複合材料の透明な溶液を得るために、混合物を60℃で2時間撹拌して確実にゾルゲル反応(TEOS加水分解及び重縮合)させた。SiOへの完全なTEOS加水分解/重縮合を仮定して計算される、シリカ含有量は、複合材料に関して20重量%であった。
【0112】
実施例7:ハイブリッドポリマー/シリカ複合材料でのガラス基材のコーティング
実施例6に従って得られた溶液を、ガラス板上にドクターブレード系でキャストし、溶媒を120℃で除去した。
【0113】
結果として生じたフィルムは、平滑で、均質で、且つ、不透明であった。湿潤フィルム厚さは、約500μmであった。乾燥フィルム厚さは、約25~35μmであった。
【0114】
実施例8:引張特性:
実施例7において記載されたように得られたフィルムの機械的特性を、引張特性を室温で測定することによって、ASTM D-638タイプV標準に従って評価した。
【0115】
これらの結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
実施例9:クロスカット
ガラスとハイブリッド複合フィルムとの間の接着性を、ISO 2409標準に従って及びASTM D-3359に従って測定した。これらの結果を表2に示す。
【0118】
【0119】
ISO 2409標準下で、格付けは、0(完全な接着)~5(全く接着なし)の範囲である。
【0120】
ASTM D 3359下で、格付けは、0B(全く接着なし)~5B(完全な接着)の範囲である。
【0121】
化合物(M)と、25℃でのDMF中で0.09L/gよりも高い固有粘度を有するポリマー(F)との反応によって製造された本発明のハイブリッドのみが、傑出した接着性能を提供することが見出された。
【0122】
25℃でのDMF中で0.09L/gよりも低い固有粘度を有するVDF-HEA-HFPターポリマー(ポリマー1-比較)に関するゾルゲル反応は、ガラスへのより低い接着性を提供することが示された。