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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】導電性シート付き物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
H05B3/20 347
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020540164
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2019029566
(87)【国際公開番号】W WO2020044903
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2018160469
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 佳明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝至
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-106726(JP,A)
【文献】特開2009-193904(JP,A)
【文献】特開2018-039226(JP,A)
【文献】特開2001-214091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を有する被着体と、
前記被着体の曲面上の少なくとも一部に設けられた非伸張性の電極部と、
前記被着体の曲面上及び前記電極部上に設けられ、複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有するシート状導電部材と、を備える、導電性シート付き物品を製造する方法であって、
前記電極部を前記被着体に形成して、電極部付き被着体を得る工程と、
前記シート状導電部材を伸張して、前記電極部付き被着体に貼る工程と、を備える、導電性シート付き物品の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の導電性シート付き物品の製造方法において、
前記導電性線状体は、金属ワイヤーを含む線状体、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体からなる群から選択される少なくとも1種である、導電性シート付き物品の製造方法。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の導電性シート付き物品の製造方法において、
前記シート状導電部材は、さらに基材を有し、
前記シート状導電部材の前記疑似シート構造体側を前記電極部付き被着体に貼る、導電性シート付き物品の製造方法。
【請求項4】
請求項から請求項のいずれか1項に記載の導電性シート付き物品の製造方法において、
前記シート状導電部材は、さらに接着剤層を有する、導電性シート付き物品の製造方法。
【請求項5】
請求項から請求項のいずれか1項に記載の導電性シート付き物品の製造方法において、
前記導電性線状体は、前記シート状導電部材の平面視において、波形状である、導電性シート付き物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シート付き物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状導電部材(以下、「導電性シート」とも称する)は、発熱装置の発熱体、発熱するテキスタイルの材料、ディスプレイ用保護フィルム(粉砕防止フィルム)等、種々の物品の部材に利用できる可能性がある。シート状導電部材としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム等の導電性粒子を分散させた層を有するもの、又は、複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有するものが用いられる。
発熱体の用途に用いるシートとして、例えば、特許文献1には一方向に延びた複数の線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有する発熱シートが記載されている。この発熱シートは、導電性線状体の直径が7μm~75μmである疑似シート構造体と、疑似シート構造体の一方の表面上に設けられた樹脂保護層と、を有する。また、この発熱シートにおいては、樹脂保護層を有する側の疑似シート構造体の表面上に設けられた層の合計の厚さが、導電性線状体の直径の1.5倍~80倍である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/097321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなシートを用いた発熱装置は、発熱体(シート状導電部材)と電極部が一体に成形されていた。そして、出来上がった発熱装置を使いたい場所に組み込む方法で使用されていた。しかしながら、電極部は一般的に硬いため、曲げたり伸ばしたりすることが難しく、被着体の曲面等には適応しづらいという課題があった。また、電極部を蒸着又は導電性接着剤等により設ける場合でも、発熱体側に設ける場合には、シート状導電部材を伸張させた際にクラックが生じる等の懸念があった。さらに、発熱部又は電極部の見直しが必要となった場合に一体型となっているため全体の設計見直しが必要となり手間がかかっていた。
一方で、シート状導電部材を設置面に設けた後に、シート状導電部材上に電極部を設ける方法も検討されている。しかしながら、この方法による場合、シート状導電部材の構成によっては、製造方法が煩雑になる可能性がある。例えば、シート状導電部材が疑似シート構造体以外の層を表面側に有する場合に、電極部を設ける部分において、疑似シート構造体と電極部を接触させるために、電極部を露出させなければならない。
【0005】
本発明の目的は、被着体の曲面等にも適応でき、かつ、電極部及び導電部の調整を別々に検討できるといった効率化を図れる導電性シート付き物品の製造方法、並びに、導電性シート付き物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る導電性シート付き物品の製造方法は、電極部を被着体に形成して、電極部付き被着体を得る工程と、シート状導電部材を伸張して、前記電極部付き被着体に貼る工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る導電性シート付き物品の製造方法においては、前記シート状導電部材が、複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有することが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る導電性シート付き物品の製造方法においては、前記導電性線状体は、金属ワイヤーを含む線状体、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る導電性シート付き物品の製造方法においては、前記シート状導電部材は、さらに基材を有し、前記シート状導電部材の前記疑似シート構造体側を前記電極部付き被着体に貼ることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る導電性シート付き物品の製造方法においては、前記シート状導電部材は、さらに接着剤層を有することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る導電性シート付き物品の製造方法においては、前記導電性線状体は、前記シート状導電部材の平面視において、波形状であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る導電性シート付き物品は、曲面を有する被着体と、前記被着体の曲面上の少なくとも一部に設けられた非伸張性の電極部と、前記被着体の曲面上及び前記電極部上に設けられ、複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有するシート状導電部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、被着体の曲面等にも適応でき、かつ、電極部及び導電部の調整を別々に検討できるといった効率化を図れる導電性シート付き物品の製造方法、並びに、導電性シート付き物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係るシート状導電部材を示す概略図である。
図2図1のII-II断面を示す断面図である。
図3A】本発明の第一実施形態に係る導電性シート付き物品の製造方法を説明するための説明図である。
図3B】本発明の第一実施形態に係る導電性シート付き物品の製造方法を説明するための説明図である。
図3C】本発明の第一実施形態に係る導電性シート付き物品の製造方法を説明するための説明図である。
図4】本発明の第三実施形態に係るシート状導電部材を示す概略図である。
図5】本発明の第四実施形態に係る導電性シート付き物品を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
【0016】
(シート状導電部材)
まず、本実施形態に係る導電性シート付き物品の製造方法に用いるシート状導電部材について説明する。
本実施形態に係るシート状導電部材10は、図1及び図2に示すように、例えば、疑似シート構造体20と、接着剤層30と、基材32とを有している。具体的には、例えば、シート状導電部材10は、基材32及び接着剤層30上に疑似シート構造体20が積層されている。
【0017】
なお、以下、20Aは、接着剤層30が積層された面とは反対側の疑似シート構造体20の一方の面(以下「第一面20A」と称する)を示す。20Bは、接着剤層30が積層される疑似シート構造体20の他方の面(以下「第二面20B」と称する)を示す(図2参照)。30Aは、疑似シート構造体20が積層された接着剤層30の一方の面(以下「第一接着面30A」と称する)を示す。30Bは、疑似シート構造体20が積層された面とは反対側の接着剤層30の他方の面(以下「第二接着面30B」と称する)を示す(図2参照)。
【0018】
つまり、本実施形態に係るシート状導電部材10では、疑似シート構造体20の第二面20Bと接着剤層30の第一接着面30Aとを対面させて、疑似シート構造体20と接着剤層30とが互いに積層されている。また、接着剤層30の第二接着面30B上に基材32が積層されている。
【0019】
(疑似シート構造体)
本実施形態に係る導電性シート付き物品の製造方法に用いるシート状導電部材10は、シート状導電部材10を伸張することが容易となるように、疑似シート構造体20を有することが好ましい。疑似シート構造体20は、一方向に延びた複数の導電性線状体22が、互いに間隔をもって配列された構造としている。具体的には、例えば、疑似シート構造体20は、直線状に伸びた導電性線状体22が、導電性線状体22の長さ方向と直交する方向に、等間隔で複数配列された構造としている。つまり、疑似シート構造体20は、例えば、導電性線状体22がストライプ状に配列された構造としている。
【0020】
導電性線状体22の体積抵抗率Rは、1.0×10-9Ω・m以上1.0×10-3Ω・m以下であることが好ましく、1.0×10-8Ω・m以上1.0×10-4Ω・m以下であることがより好ましい。導電性線状体22の体積抵抗率Rを上記範囲にすると、疑似シート構造体20の面抵抗が低下しやすくなる。
導電性線状体22の体積抵抗率Rの測定方法は、次の通りである。導電性線状体22の両端に銀ペーストを塗布し、端部からの長さ40mmの部分の抵抗を測定し、導電性線状体22の抵抗値を求める。そして、導電性線状体22の断面積(単位:m)を上記の抵抗値に乗じ、得られた値を上記の測定した長さ(0.04m)で除して、導電性線状体22の体積抵抗率Rを算出する。
【0021】
導電性線状体22の断面の形状は、特に限定されず、多角形、扁平形状、楕円形状、又は円形状等を取り得るが、接着剤層30との馴染み等の観点から、楕円形状、又は円形状であることが好ましい。
導電性線状体22の断面が円形状である場合には、導電性線状体22の直径Dは、5μm以上75μm以下であることが好ましい。シート抵抗の上昇抑制と、シート状導電部材10を発熱体として用いた場合の発熱効率及び耐絶縁破壊特性の向上との観点から、導電性線状体22の直径Dは、8μm以上60μm以下であることがより好ましく、12μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
なお、導電性線状体22の直径Dを、5μm以上75μm以下にすると、後述するように、導電性線状体22が波形状の線状体の場合、シート状導電部材10が三次元成形されたときの波形状の導電性線状体22の直線化が隣接する層(接着剤層30等)によって妨げられ難くなる。
導電性線状体22の断面が楕円形状である場合には、長径が上記の直径Dと同様の範囲にあることが好ましい。
【0022】
導電性線状体22の直径Dは、デジタル顕微鏡を用いて、疑似シート構造体20の導電性線状体22を観察し、無作為に選んだ5箇所で、導電性線状体22の直径を測定し、その平均値とする。
【0023】
導電性線状体22の間隔Lは、0.3mm以上12.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上10.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以上7.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
導電性線状体22同士の間隔Lを0.3mm以上12.0mm以下の範囲にすると、シート状導電部材10が接着剤層30を有する場合に、導電性線状体22同士の間から露出する接着剤層30の露出面積を確保し、疑似シート構造体20から露出する接着剤層30による接着が導電性線状体22により妨げられることを防止できる。また、導電性線状体22同士の間隔が上記範囲であれば、導電性線状体がある程度密集しているため、疑似シート構造体の抵抗を低く維持し、シート状導電部材10を発熱体として用いる場合の温度上昇の分布を均一にする等の、シート状導電部材10の機能の向上を図ることができる。
【0025】
導電性線状体22の間隔Lは、デジタル顕微鏡を用いて、疑似シート構造体20の導電性線状体22を観察し、隣り合う2つの導電性線状体22の間隔を測定する。
なお、隣り合う2つの導電性線状体22の間隔とは、導電性線状体22を配列させていった方向に沿った長さであって、2つの導電性線状体22の対向する部分間の長さである(図2参照)。間隔Lは、導電性線状体22の配列が不等間隔である場合には、全ての隣り合う導電性線状体22同士の間隔の平均値であるが、間隔Lの値を制御しやすくする観点等から、導電性線状体22は疑似シート構造体20において、略等間隔に配列されていることが好ましく、等間隔に配列されていることがより好ましい。
導電性線状体22が後述するように波形状である場合には、導電性線状体22の間隔Lは、導電性線状体22の湾曲、屈曲により導電性線状体22同士が間隔Lよりも近接する箇所が生じるため、間隔Lがより広いことが好ましい場合がある。このような場合には、導電性線状体22の間隔Lは、1mm以上30mm以下であることが好ましく、2mm以上20mm以下であることがより好ましい。
【0026】
導電性線状体22は、特に制限はないが、カーボンナノチューブを含む線状体(以下「カーボンナノチューブ線状体」とも称する)を用いることができる。
【0027】
カーボンナノチューブ線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。このような製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブが捻られた構造を有しない線状体である。このほか、カーボンナノチューブの分散液から、紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、例えば、米国特許出願公開第2013/0251619号明細書(日本国特開2012-126635号公報)に開示されている方法により行うことができる。カーボンナノチューブ線状体の直径の均一さが得られる観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが望ましく、純度の高いカーボンナノチューブ線状体が得られる観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が編まれた線状体であってもよい。また、カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと他の導電性材料が複合された線状体(以下「複合線状体」とも称する)であってもよい。
【0028】
複合線状体としては、例えば、(1)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シート若しくは束、又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、湿式めっき等により担持させた複合線状体、(2)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と共に、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体、又は、(3)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを編んだ複合線状体等が挙げられる。なお、(2)の複合線状体においては、カーボンナノチューブの束を撚る際に、(1)の複合線状体と同様にカーボンナノチューブに対して金属を担持させてもよい。また、(3)の複合線状体は、2本の線状体を編んだ場合の複合線状体であるが、少なくとも1本の金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体が含まれていれば、カーボンナノチューブ線状体又は金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体若しくは複合線状体の3本以上を編み合わせてあってもよい。
複合線状体の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、及び亜鉛等の金属単体、及び、これら金属単体の少なくとも一種を含む合金(銅-ニッケル-リン合金、及び、銅-鉄-リン-亜鉛合金等)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
導電性線状体22は、糸に導電性被覆が施された線状体であってもよい。糸としては、ナイロン、及びポリエステル等の樹脂から紡糸した糸等が挙げられる。導電性被覆としては、金属、導電性高分子、及び炭素材料等の被膜等が挙げられる。導電性被覆は、メッキや蒸着法等により形成することができる。糸に導電性被覆が施された線状体は、糸の柔軟性を維持しつつ、線状体の導電性を向上させることができる。つまり、疑似シート構造体20の抵抗を、低下させることが容易となる。
【0030】
導電性線状体22は、金属ワイヤーを含む線状体であってもよい。金属ワイヤーを含む線状体は、1本の金属ワイヤーからなる線状体であってもよいし、複数本の金属ワイヤーを撚った線状体であってもよい。
金属ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、及び金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料やポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。特に、タングステン及びモリブデン並びにこれらを含む合金から選ばれる一種以上の金属を含むワイヤーが、低い体積抵抗率の導電性線状体22とする観点から好ましい。
金属ワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属ワイヤーも挙げられる。金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、金属光沢が低減し、金属ワイヤーの存在を目立たなくすることが容易となる。また、金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると金属腐食も抑制される。
金属ワイヤーを被覆する炭素材料としては、非晶質炭素(例えば、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、及びカーボンファイバー等)、グラファイト、フラーレン、グラフェン、及びカーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0031】
(接着剤層)
接着剤層30は、接着剤を含む層である。疑似シート構造体20の第二面20B上に接着剤層30を積層したシート状導電部材10とすることで、接着剤層30により、シート状導電部材10の被着体への貼り付けが容易となる。なお、接着剤層30は、必要に応じて設けられる層である。シート状導電部材10は、第一面20Aを被着体に対向させて被着体に接着することが好ましい。この場合には、上述したように、シート状導電部材10において、疑似シート構造体20から露出する接着剤層30の第一接着面30Aにより、シート状導電部材10と被着体との接着が容易となる。
【0032】
接着剤層30は、硬化性であってもよい。接着剤層が硬化することにより、疑似シート構造体20を保護するのに十分な硬度が接着剤層30に付与され、接着剤層30は保護膜としても機能する。また、硬化後の接着剤層30の耐衝撃性が向上し、衝撃による硬化後の接着剤層30の変形も抑制できる。
【0033】
接着剤層30は、短時間で簡便に硬化することができる点で、紫外線、可視エネルギー線、赤外線、電子線等のエネルギー線硬化性であることが好ましい。なお、「エネルギー線硬化」には、エネルギー線を用いた加熱による熱硬化も含まれる。
エネルギー線による硬化の条件は、用いるエネルギー線によって異なるが、例えば、紫外線照射により硬化させる場合、紫外線の照射量は、10mJ/cm以上3,000mJ/cm以下であることが好ましく、照射時間は、1秒間以上180秒間以下であることが好ましい。
【0034】
接着剤層30の接着剤は、熱により接着するいわゆるヒートシールタイプのもの、湿潤させて貼付性を発現させる接着剤等も挙げられる。ただし、適用の簡便さからは、接着剤層30が、粘着剤(感圧性接着剤)から形成される粘着剤層であることが好ましい。粘着剤層の粘着剤は、特に限定されない。例えば、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びゴム系粘着剤からなる群から選択される少なくともいずれかであることが好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0035】
アクリル系粘着剤としては、例えば、直鎖のアルキル基又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体(つまり、アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(つまり、環状構造を有する(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0036】
アクリル系重合体が共重合体である場合、共重合の形態としては、特に限定されない。アクリル系共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0037】
これらの中でも、アクリル系粘着剤としては、炭素数1~20の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「単量体成分(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)、及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「単量体成分(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を含むアクリル系共重合体が好ましい。
なお、当該アクリル系共重合体は、単量体成分(a1’)及び単量体成分(a2’)以外のその他の単量体成分(a3’)に由来する構成単位(a3)をさらに含んでいてもよい。
【0038】
単量体成分(a1’)が有する鎖状アルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、1以上12以下であることが好ましく、4以上8以下であることがより好ましく、4以上6以下であることがさらに好ましい。単量体成分(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体成分(a1’)の中でも、ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0039】
構成単位(a1)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、50質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、55質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上97質量%以下であることがさらに好ましく、65質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。
【0040】
単量体成分(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、及びアルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分(a2’)の中でも、ヒドロキシ基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えばジアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
シアノ基含有モノマーとしては、例えばアクリロニトリル等が挙げられる。
【0041】
構成単位(a2)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
【0042】
単量体成分(a3’)としては、例えば、環状構造を有する(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、及びアクリロイルモルフォリン等)、酢酸ビニル、及びスチレン等が挙げられる。
【0043】
構成単位(a3)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、0質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
【0044】
なお、上述の単量体成分(a1’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、上述の単量体成分(a2’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、上述の単量体成分(a3’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
アクリル系共重合体は架橋剤により架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、公知のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。アクリル系共重合体を架橋する場合には、単量体成分(a2’)に由来する官能基を、架橋剤と反応する架橋点として利用することができる。
【0046】
接着剤層30は、上記粘着剤の他に、エネルギー線硬化性の成分を含有していてもよい。
エネルギー線硬化性の成分としては、例えばエネルギー線が紫外線である場合には、多官能(メタ)アクリレート化合物等の、一分子中に紫外線重合性の官能基を2つ以上有する化合物等が挙げられる。
【0047】
また、粘着剤としてアクリル系粘着剤を適用する場合、エネルギー線硬化性の成分として、アクリル系共重合体における単量体成分(a2’)に由来する官能基に反応する官能基と、エネルギー線重合性の官能基とを一分子中に有する化合物を用いてもよい。当該化合物の官能基と、アクリル系共重合体における単量体成分(a2’)に由来する官能基との反応により、アクリル系共重合体の側鎖がエネルギー線照射により重合可能となる。粘着剤がアクリル系粘着剤以外でも、粘着剤となる共重合体以外の共重合体成分として、同様に側鎖がエネルギー線重合性である成分を用いてもよい。
【0048】
接着剤層30がエネルギー線硬化性である場合には、粘着剤層は光重合開始剤を含有することがよい。光重合開始剤により、粘着剤層がエネルギー線照射により硬化する速度を高めることができる。
【0049】
接着剤層30は、無機充填材を含有していてもよい。無機充填材を含有することで、硬化後の接着剤層30の硬度をより向上させることができる。また、接着剤層30の熱伝導性が向上する。さらに、被着体がガラスを主成分とする場合に、シート状導電部材10と被着体の線膨張係数を近づけることができ、これによって、シート状導電部材10を被着体に貼付及び必要に応じて硬化して得た導電性シート付き物品の信頼性が向上する。
【0050】
無機充填材としては、例えば、無機粉末(例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、及び窒化ホウ素等の粉末)、無機粉末を球形化したビーズ、単結晶繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材としては、シリカフィラー及びアルミナフィラーが好ましい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
接着剤層30には、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶媒、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、及び濡れ性調整剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0052】
接着剤層30の厚さは、シート状導電部材10の用途に応じて適宜決定される。例えば、接着性の観点から、接着剤層30の厚さは、3μm以上150μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0053】
基材32としては、例えば、紙、熱可塑性樹脂フィルム、硬化性樹脂の硬化物フィルム、金属箔、及びガラスフィルム等が挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ゴム系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、及びアクリル系等の樹脂フィルムが挙げられる。また、基材32は、伸縮性を有することが好ましい。
なお、疑似シート構造体20とは対向しない基材32の表面には、シート状導電部材10(疑似シート構造体20)の保護性を強化するために、紫外線硬化性樹脂等を用いたハードコート処理等が施されていてもよい。
【0054】
(シート状導電部材の製造方法)
本実施形態に係るシート状導電部材10の製造方法は、特に限定されない。シート状導電部材10は、例えば、次の工程を経て製造される。
まず、基材32の上に、接着剤層30の形成用組成物を塗布し、塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて、接着剤層30を作製する。次に、接着剤層30の第一接着面30A上に、導電性線状体22を配列しながら配置して、疑似シート構造体20を形成する。例えば、ドラム部材の外周面に基材32付きの接着剤層30を配置した状態で、ドラム部材を回転させながら、接着剤層30の第一接着面30A上に導電性線状体22を螺旋状に巻き付ける。その後、螺旋状に巻き付けた導電性線状体22の束をドラム部材の軸方向に沿って切断する。これにより、疑似シート構造体20を形成すると共に、接着剤層30の第一接着面30Aに配置する。そして、疑似シート構造体20が形成された基材32付きの接着剤層30をドラム部材から取り出し、シート状導電部材10が得られる。この方法によれば、例えば、ドラム部材を回転させながら、導電性線状体22の繰り出し部をドラム部材の軸と平行な方向に沿って移動させることで、疑似シート構造体20における隣り合う導電性線状体22の間隔Lを調整することが容易である。
【0055】
なお、導電性線状体22を配列して疑似シート構造体20を形成した後、得られた疑似シート構造体20の第二面20Bを、接着剤層30の第一接着面30A上に貼り合せて、シート状導電部材10を作製してもよい。
【0056】
(シート状導電部材の特性)
シート状導電部材10に透明性が求められる場合、本実施形態に係るシート状導電部材10の光線透過率は、70%以上であることが好ましく、70%以上100%以下であることがより好ましく、80%以上100%以下であることがさらに好ましい。
なお、シート状導電部材10(疑似シート構造体20)の光線透過率は、光線透過率計により、可視域(380nmから760nm)の光線透過率を測定し、その平均値とする。
【0057】
本実施形態に係るシート状導電部材10の面抵抗(Ω/□=Ω/sq.)は、800Ω/□以下であることが好ましく、0.01Ω/□以上500Ω/□以下であることがより好ましく、0.05Ω/□以上300Ω/□以下であることがさらに好ましい。シート状導電部材10を発熱体として適用した場合、印加する電圧を低減する観点から、面抵抗の低いシート状導電部材10が要求される。シート状導電部材10の面抵抗が800Ω/□以下であれば、印加する電圧の低減が容易に実現される。
なお、シート状導電部材10の面抵抗は、次の方法により測定する。まず、電気的接続を向上させるために、銀ペーストをシート状導電部材10の疑似シート構造体20の両端に塗布する。その後、銅テープを両端に貼付けたガラス基板に、シート状導電部材10を銀ペーストと銅テープが接触するように貼付けた後、電気テスターを用いて抵抗を測定し、シート状導電部材10の面抵抗を算出する。
【0058】
(導電性シート付き物品の製造方法)
次に、本実施形態に係る導電性シート付き物品の製造方法について説明する。
本実施形態に係る導電性シート付き物品の製造方法は、電極部を被着体に形成して、電極部付き被着体を得る工程(電極形成工程)と、シート状導電部材を伸張して、前記電極部付き被着体に貼る工程(シート貼着工程)と、を備える。
【0059】
電極形成工程においては、まず、図3Aに示すような被着体50を準備する。
被着体50は、シート状の物品に限定されない。被着体50としては、例えば、成形体、不織布、及び織物等が挙げられる。成形体の材質は、表面が電気を通さない性質の物質であれば、特に限定されない。成形体の材質としては、例えば、プラスチック、ガラス、セラミック、石材、木材、パルプ集成材、及び絶縁被覆された金属等が挙げられる。
例えば、シート状導電部材10を発熱体として用いる場合、発熱体の用途としては、例えば、デフォッガー(defogger)、及びデアイサー(deicer)等が挙げられる。この場合、被着体50としては、例えば、浴室等の鏡、輸送用装置(乗用車、鉄道、船舶、及び航空機等)の窓、建物の窓、アイウェア、信号機の点灯面、及び標識等が挙げられる。また、被着体50が成形体である場合、電気製品の筐体、車両内装部品、建材・内装材等に使用される成形体の表面に、TOM成形、フィルムインサート成形、真空成形等の三次元成形法を利用して、成形体を被覆し、発熱体やその他の導電性機能材としてもよい。
【0060】
電極形成工程においては、次に、図3Bに示すように、電極部40を被着体50に形成して、電極部付き被着体60を得る。
電極部40を形成する方法は、適宜公知の方法を採用できる。電極部40を形成する方法としては、例えば、導電性接着剤を用いる方法、金属箔又は金属テープを貼着する方法、及び、蒸着膜を形成する方法等が挙げられる。
【0061】
シート貼着工程においては、疑似シート構造体20の第一面20Aと、電極部付き被着体60の電極部40が形成されている面60Aとが対向するようにして、シート状導電部材10を伸張して、電極部付き被着体60に貼る。このようにして、図3Cに示すような導電性シート付き物品100を得る。
シート状導電部材10は、導電性線状体22の長さ方向と直交する方向に、伸張しても、導電性線状体22が切断されることがない。そして、例えば、シート状導電部材10を、導電性線状体22の長さ方向と直交する方向に伸張して、電極部付き被着体60に貼ることができる。
【0062】
(第一実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態においては、シート状導電部材10を伸張して貼る際に、電極部40が伸張することはない。そのため、シート状導電部材10を伸張して貼る際に、電極部40にクラックが発生することを防止したり、電極部40が伸張しないことにより、シート状導電部材10を伸張できなくなることを防止したりすることができ、被着体50の曲面等にも適応できる。
(2)本実施形態においては、シート状導電部材10と、電極部40とが、別の部材である。そのため、例えば、シート状導電部材10の一部の設計に見直しが必要な場合に、シート状導電部材10だけを見直すことができる。つまり、設計の見直しの際に、電極部40及びシート状導電部材10の調整を別々に検討できる。
(3)本実施形態においては、疑似シート構造体20の第一面20Aと、電極部付き被着体60の電極部40が形成されている面とが対向するようにして、シート状導電部材10を電極部付き被着体60に貼る。そのため、疑似シート構造体20と電極部40とを、そのまま接触させ、電気的な接続を図ることができる。なお、後述するように疑似シート構造体20と電極部40との接触を図ることができれば、疑似シート構造体20の第一面20Aと、電極部40の間に第二の接着剤層や補助電極等を介していてもよい。
また、本実施形態において、シート状導電部材10が接着剤層30を有している場合には、さらに以下の作用効果を奏することができる。
(4)シート状導電部材10を接着剤層30により電極部付き被着体60に貼ることで、シート状導電部材10を設置面に固定できる。
また、本実施形態において、シート状導電部材10が基材32を有している場合には、さらに以下の作用効果を奏することができる。
(5)シート状導電部材10が、疑似シート構造体20よりも被着体50から遠い側に、基材32を有しているので、基材32により、疑似シート構造体20及び電極部40を保護できる。
【0063】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する(図示せず。)。
なお、本実施形態では、シート状導電部材10に代えてシート状導電部材10Aを用いた以外は第一実施形態と同様の構成であるので、シート状導電部材10Aについて説明し、それ以外の説明を省略する。
本実施形態に係るシート状導電部材10Aは、接着剤層30の第二接着面30B上に積層された剥離シートを有している。
剥離シートとしては、たとえば剥離シート用基材及び剥離層を有するものが挙げられる。剥離シート用基材としては、基材32に用いるものと同じものが挙げられ、剥離層としては、剥離シート用基材上に設けられた、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、又はアルキッド系剥離剤等の塗膜が挙げられる。
【0064】
(第二実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態における作用効果(1)~(4)と同様の作用効果、並びに、下記作用効果(5’)を奏することができる。
(5’)本実施形態においては、シート状導電部材10Aが、疑似シート構造体20よりも被着体50から遠い側に、剥離シートを有している。そのため、剥離シートにより、シート状導電部材10Aの形状維持性が保たれるとともに、シート状導電部材10Aを被着体に貼り付けた後は、剥離シートを剥離して除去することができる。なお、第二実施形態においては、接着剤層30が硬化性であることが好ましく、シート状導電部材10Aを被着体に貼り付けた後、接着剤層30を硬化させることで、剥離シートを除去しても接着剤層30が硬化した被膜により疑似シート構造体20及び電極部40を保護できる。
【0065】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、シート状導電部材10に代えてシート状導電部材10Bを用いた以外は第一実施形態又は第二実施形態と同様の構成であるので、シート状導電部材10Bについて説明し、それ以外の説明を省略する。
本実施形態に係るシート状導電部材10Bにおいては、図4に示すように、導電性線状体22が、シート状導電部材10Bの平面視において、波形状である。具体的には、導電性線状体22は、例えば、正弦波、矩形波、三角波、又はのこぎり波等の波形状であってもよい。つまり、疑似シート構造体20は、例えば、一方に延びた波形状の導電性線状体22が、導電性線状体22の延びる方向(軸方向)と直交する方向に、等間隔で複数配列された構造としてもよい。一本の導電性線状体22は、全部が波形状とされていてもよいし、一部のみが波形状で、他の部分が直線状等であってもよい。また、一本の導電性線状体22において、2種以上の波形状(例えば、正弦波と三角波)が組み合わせられていてもよいし、一本の導電性線状体22が有する波形状と、他の導電性線状体22が有する波形状が異なる種類のものであってもよい。下記の本実施形態の作用効果を効率よく得るためには、疑似シート構造体20に含まれる全ての導電性線状体22が少なくとも一部に波形状を有していることが好ましい。
【0066】
(第三実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態及び前記第二実施形態における作用効果(1)~(5)及び(5’)と同様の作用効果、並びに、下記作用効果(6)を奏することができる。
(6)本実施形態においては、導電性線状体22が、シート状導電部材10Bの平面視において、波形状である。そのため、シート状導電部材10Bを、導電性線状体22の長さ方向(軸方向)に、伸張した場合にも、導電性線状体22の切断を抑制できる。つまり、シート状導電部材10Bは、導電性線状体22の長さ方向(軸方向)と直交する方向だけでなく、導電性線状体22の長さ方向(軸方向)にも伸張可能である。そのため、シート状導電部材10Bは、被着体50の曲面に、より確実に適応できる。
このような作用効果をより高めるため、波形状に含まれる直線部分が少ないことが好ましく、波形状は、正弦波であることが好ましい。
【0067】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、前記第一実施形態~前記第三実施形態に係る導電性シート付き物品の製造方法で得られる導電性シート付き物品の一態様について説明する。
本実施形態に係る導電性シート付き物品100Cは、曲面を有する被着体50と、被着体50の曲面上の少なくとも一部に設けられた非伸張性の電極部40と、被着体50の曲面上及び電極部40上に設けられ、複数の導電性線状体22が間隔をもって配列された疑似シート構造体20を有するシート状導電部材10Cと、を備える。
【0068】
本明細書において、曲面には、角部又は屈曲部を有する面、及び、凹凸を有する面も含まれる。
非伸張性の電極部40とは、曲げたり伸ばしたりした場合にクラック等が生じる電極部のことである。非伸張性の電極部40としては、蒸着法により設けられた電極部、金属箔又は金属テープにより設けられた電極部、及び、導電性接着剤により設けられた電極部等が挙げられる。電極部40は、図5に示すように、帯状の形状であることが好ましく、この場合に、電極部40は、間隔をもって配列された導電性線状体22の長さ方向(軸方向)と略直交していることが好ましく、直交していることがより好ましい。
導電性線状体22は、前記第一実施形態における線状体と同様である。本実施形態に係るシート状導電部材10Cにおいては、図5に示すように、導電性線状体22が、シート状導電部材10Cの平面視において、波形状であることが好ましい。
【0069】
(第四実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態~前記第三実施形態の導電性シート付物品の製造方法を採用することができることにより、これらの実施形態における作用効果(1)~(6)及び(5’)と同様の作用効果を奏することができる。
すなわち、本実施形態において、被着体50は曲面を有し、かつ、電極部40は非伸張性である。しかし、電極部40は、被着体50の曲面上に設けることができ、その後、伸張されることはない。一方で、シート状導電部材10Cは、少なくとも導電性線状体22の長さ方向(軸方向)と直交する方向に、導電性線状体22が波形状である場合には、導電性線状体22の長さ方向(軸方向)にも伸張可能である。そのため、被着体50は曲面を有する場合にも、電極部40にクラックがなく、また、導電性線状体22に切断がない導電性シート付き物品100Cが得られる。
【0070】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態では、疑似シート構造体20は単層であるが、これに限定されない。例えば、シート状導電部材10は、疑似シート構造体20をシート面方向(シート表面に沿った方向)に複数配列したシートであってもよい。複数の疑似シート構造体20は、シート状導電部材10の平面視において、互いの導電性線状体22を平行に配列してもよいし、交差させて配列させてもよい。
前述の実施形態において、シート状導電部材10は接着剤層30を有していなくてもよく、例えば、基材32上に直接疑似シート構造体20を設けてもよい。
また、前述の実施形態において、疑似シート構造体20の第一面20Aに第二の接着剤層を設けてもよく、疑似シート構造体20の第二面20B側に接着剤層を設けず、第二の接着剤層のみを設けてもよい。これらの場合には、シート状導電部材10を被着体への貼り付けと同時又はその後に、シート状導電部材10に加圧し、導電性線状体22が第二の接着剤層に潜り込み、導電性線状体22が電極部40に接触するようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0071】
10,10B,10C…シート状導電部材、20…疑似シート構造体、22…導電性線状体、30…接着剤層、32…基材、40…電極部、50…被着体、60…電極部付き被着体、100,100C…導電性シート付き物品。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5