(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】フルオロエラストマー硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20230728BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20230728BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20230728BHJP
C08K 5/3467 20060101ALI20230728BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20230728BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20230728BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L79/08 C
C08K5/14
C08K5/3467
C08K5/521
C08K5/5415
C08K5/17
(21)【出願番号】P 2020543071
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 EP2019053343
(87)【国際公開番号】W WO2019155073
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-11
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オキーフ, ショーン
(72)【発明者】
【氏名】キッチンズ, テリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シルト, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
【審査官】長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-165969(JP,A)
【文献】特表2015-529695(JP,A)
【文献】特開2013-227504(JP,A)
【文献】特開平10-292010(JP,A)
【文献】特表2008-508380(JP,A)
【文献】特開2017-071686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00-27/24
C08L 79/00-79/08
C08K 3/00- 5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1つの(パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]と、
- 少なくとも1つの架橋系と、
- 前記フルオロエラストマー(A)に対して少なくとも0.5phr、及び最大で30.0phrの量で存在している、少なくとも1つの芳香族ポリアミド-イミドポリマー[ポリマー(PAI)]とを含み、
前記ポリマー(PAI)が、少なくとも1つの芳香環、そのままで及び/又はそのアミド酸形態での少なくとも1個のイミド基、並びにイミド基のアミド酸形態に含まれない少なくとも1個のアミド基を含む50モル%超の繰り返し単位[繰り返し単位(R
PAI)]を含むポリマーからなる群から選択され、それらは、式(R
PAI-a)及び(R
PAI-b):
[式中、
- Arは、三価の芳香族基であり
;
- Rは、二価の芳香族基で
ある]のいずれかの単位からなる群から選択される、
組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
- Arは、以下の構造:
及び対応する任意選択的に置換された構造からなる群から選択され、Xは、-O、-C(O)-、-CH
2
-、-C(CF
3
)
2
-、-(CF
2
)
n
-(nは、1~5の整数である)であり;
- Rは、以下の構造:
及び対応する任意選択的に置換された構造からなる群から選択され、Yは、-O-、-S-、-SO
2
-、-CH
2
-、-C(O)-、-C(CF
3
)
2
-、-(CF
2
)
n
(nは、0~5の整数である)である、
請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記フルオロエラストマー(A)が、少なくとも1つの(パー)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記(パー)フッ素化モノマー
が、
- C
2~C
8フルオロ-及び/又はパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン;
- C
2~C
8水素化モノフルオロオレフィン、例えばフッ化ビニル;
- 1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、及びトリフルオロエチレン(TrFE);
- 式CH
2=CH-R
f0(式中、R
f0は、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル又は1個以上のエーテル基を有するC
1~C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のような、クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C
2~C
6フルオロオレフィン;
- 式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)に従うフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CH
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)に従うヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF
2=CFOX
0(式中、X
0は、1個以上のエーテル基を有するC
1~C
12オキシアルキル、又はC
1~C
12(パー)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;特に式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1~C
6フルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7であるか又は-C
2F
5-O-CF
3のような、1個以上のエーテル基を有するC
1~C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式CF
2=CFOY
0(式中、Y
0は、C
1~C
12アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル、又はC
1~C
12オキシアルキル若しくはC
1~C
12(パー)フルオロオキシアルキルであり、前記Y
0基は、カルボン酸基又はスルホン酸基を、その酸、酸ハライド若しくは塩形態で含む)に従う官能性フルオロ-アルキルビニルエーテル;
- 式:
(式中、互いに等しいか又は異なるR
f3、R
f4、R
f5、R
f6の各々は、独立して、フッ素原子、1つ以上の酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
6フルオロ-又はパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である)の(パー)フルオロジオキソール
からなる群から選択される、請求項1
又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記フルオロエラストマー(A)が、
(1)VDF系コポリマーであって、VDFが、
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC
2~C
8パーフルオロオレフィン;
(b)水素含有C
2~C
8オレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブテン(HFIB)、式CH
2=CH-R
f(式中、R
fは、C
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(c)ヨウ素、塩素及び臭素の少なくとも1つを含む、C
2~C
8フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF
2=CFOR
f(式中、R
fは、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基、好ましくは、CF
3、C
2F
5、C
3F
7である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC
1~C
12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えばペルフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
(式中、互いに等しいか又は異なるR
f3、R
f4、R
f5、R
f6の各々は、独立して、フッ素原子、及び任意選択的に1個又は2個以上の酸素原子を含む、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基、例えば、とりわけ-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3からなる群から選択される)を有する(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)式:
CF
2=CFOCF
2OR
f2
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(以下、MOVE)
(式中、R
f2は、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル;C
5~C
6環状(パー)フルオロアルキル;及び少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含むC
2~C
6(パー)フルオロオキシアルキルからなる群から選択され;R
f2は、好ましくは-CF
2CF
3(MOVE1);-CF
2CF
2OCF
3(MOVE2);又は-CF
3(MOVE3)である);
(h)C
2~C
8非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレン及びプロピレン
からなる群から選択される少なくとも1つの追加のコモノマーと共重合されている、VDF系コポリマー;並びに
(2)TFE系コポリマーであって、上で詳述した(c)、(d)、(e)、(g)、(h)、及び(i)からなる群から選択される少なくとも1つの追加のコモノマーとTFEが共重合されているTFE系コポリマー;
の中で選択される、請求項
1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
フルオロエラストマー(A)が、前記フルオロエラストマー(A)中の塩化物、ヨウ素及び臭素含有量がフルオロエラストマー(A)の全重量に対して0.001~10重量%であるような量で塩素、ヨウ素及び臭素硬化部位のうちの少なくとも1つ(より好ましくはヨウ素及び/又は臭素)を含み、これらの中でも、ヨウ素硬化部位は硬化速度を最大にするために選択されるものであり、そのためヨウ素硬化部位を含むフルオロエラストマー(A)が好ましい、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記繰り返し単位(R
PAI)が、それらのアミド-イミド(a)又はアミド-アミド酸(b)形態の繰り返し単位(l)、(m)及び(n):
(式中、(l-b)に示される芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸構造を表すと理解される);
(式中、(m-b)に示される芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸構造を表すと理解される);及び
(式中、(n-b)に示される芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸構造を表すと理解される)
から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項7】
前記ポリマー(PAI)を前記フルオロエラストマー(A)に対して少なくとも1.0phr、より好ましくは少なくとも2.0phr、及び最大で25.0phr、より好ましくは最大で18.0phrの量で含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの架橋系が、少なくとも1つの有機過酸化物[過酸化物(O)]と少なくとも1つの多価不飽和化合物[化合物(U)]とを含む過酸化物系架橋系であり、及び前記過酸化物(O)が好ましくは:
- 例えばジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドなどの、ジ(アルキル/アルリル)ペルオキシド;
- ジベンゾイルペルオキシド、ジコハク酸ペルオキシド、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシドなどの、ジアシルペルオキシド;
- ジ-tert-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルエチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンなどの、過カルボン酸及びエステル;
- とりわけジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2-フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ビス[1,3-ジメチル-3-(tert-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート、t-ヘキシルペルオキシイソプロプリルカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどの、ペルオキシカーボネート、
- ペルケタール、例えば1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン及び2、2-ビス(tertブチルペルオキシ)ブタン;
- ケトンペルオキシド、例えばシクロヘキサノンペルオキシド及びアセチルアセトンペルオキシド;
- 有機ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド(別称2-[(2-ヒドロペルオキシブタン-2-イル)ペルオキシ]ブタン-2-ペルオキソールと称される)及びピナンヒドロペルオキシド;
- 油溶性アゾ開始剤、例えば2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シアノ-2-ブタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスジメチルイソブチレート、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-l-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シアノ-2-ブタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスジメチルイソブチレート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(1、1)-ビス(ヒドロキシメチル-)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-ヒドロキシエチル]-プロプリオンアミド、2,2’-アゾビス(N、N’-ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル-)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル-)エチル]プロプリオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-5メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2’-アゾビス(2、2、4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)
からなる群から選択される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
組成物(C)中の過酸化物(O)の量が、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して0.1~15phr、好ましくは0.2~12phr、より好ましくは1.0~7.0phrである、請求項
8に記載の組成物(C)。
【請求項10】
化合物(U)が、
- 2つの炭素-炭素不飽和を含む化合物(U)であって、
一般式:
(式中、互いに等しいか又は異なるR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、H又はC
1~C
5アルキルであり;Zは、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、酸素原子を任意選択的に含有する直鎖又は分岐のC
1~C
18炭化水素基(アルキレン又はシクロアルキレン基など)、又は1つ以上のカテナリーエーテル性結合を含む(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基である)を有するビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]からなる群から好ましくは選択される、2つの炭素-炭素不飽和を含む化合物(U);及び
- 3つの炭素-炭素不飽和を含む化合物(U)であって、
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
cyの各々は、独立して、H、又は基-R
rcy若しくは-OR
rcyから選択され、R
rcyは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
cyの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換シアヌラート化合物であって;
とりわけ好ましいトリアリルシアヌラート、トリビニルシアヌラートを含む三置換シアヌラート化合物;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
isocyの各々は、独立して、H、又は基-R
risocy若しくは-OR
risocyから選択され、R
risocyは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
isocyの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換イソシアヌラート化合物であって;
とりわけ好ましいトリアリルイソシアヌラート(それ以外の場合は、「TAIC」と呼ばれる)、トリビニルイソシアヌラートを含み、TAICが最も好ましい、三置換イソシアヌラート化合物;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
azの各々は、独立して、H、又は基-R
raz若しくは-OR
razから選択され、R
razは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
azの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換トリアジン化合物;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
phの各々は、独立して、H、又は基-R
rph若しくは-OR
rphから選択され、R
rphは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
phの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換亜リン酸塩化合物であって;
とりわけ好ましいトリ-アリル亜リン酸塩を含む三置換亜リン酸塩化合物;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
siの各々は、独立して、H、又は基-R
rsi若しくは-OR
rsiから選択され、R
rsiは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR’
siの各々は、独立して、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキル基から選択され、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
siの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換アルキルトリシロキサンであって;三置換アルキルトリシロキサン化合物は、とりわけ好ましい2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン及び2,4,6-トリビニルエチルトリシロキサンを含む三置換アルキルトリシロキサン;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
anの各々は、独立して、H、又は基-R
ran若しくは-OR
ranから選択され、R
ranは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
anの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)のN,N-二置換アクリルアミド化合物であって;とりわけ好ましいN,N-ジアリルアクリルアミドを含むN,N-二置換アクリルアミド化合物からなる群から好ましくは選択される、3つの炭素-炭素不飽和を含む化合物(U);
及び
- 4個以上の炭素-炭素不飽和を含む化合物(U)であって、式
のトリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、ヘキサ-アリルホスホルアミド、N,N,N’,N’-テトラ-アリルテレフタルアミド、N,N,N’,N’-テトラ-アリルマロンアミドから好ましくは選択される、4個以上の炭素-炭素不飽和を含む化合物(U)からなる群から選択される、請求項
8又は
9に記載の組成物(C)。
【請求項11】
前記化合物(U)の量が、フルオロエラストマー(A)の100重量部(phr)当たり0.1~20重量部、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり好ましくは1~15重量部、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たりより好ましくは1~10重量部の範囲である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの架橋系が、少なくとも1つのポリヒドロキシル化化合物と、少なくとも1つの促進剤と、ZnO、MgO、PbO、及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される少なくとも1つの塩基性金属酸化物とを含むイオン性架橋系である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物(C)の製造方法であって、前記方法が、
- 前記フルオロエラストマー(A)と、
- 前記架橋系と、
- 前記ポリマー(PAI)とを混合する工程を含む、方法。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物(C)を硬化させる工程を含む、造形品を二次加工するための方法。
【請求項15】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物(C)から得られる硬化物品であって、O(四角形)-リング、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、軸シール、バルブステムシール、ピストンリング、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、及びオイルシールなどの、シーリング物品、又は場合によりパイピング及びチュービング、特に、炭化水素流体及び燃料の送達のための導管などの、フレキシブルホース若しくは他の品目からなる群から選択される、硬化物品。
【請求項16】
基材と請求項
15に記載の少なくとも1つの硬化物品とを備える組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/629505号及び2018年8月22日に出願された欧州特許出願第18190115.8号に対する優先権を請求し、これら出願の各々の全内容は、あらゆる目的のために参照として本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、硬化した時に様々な基材に接着することができる特定のフルオロエラストマー組成物、それらの製造方法、前記フルオロエラストマー組成物を硬化させる工程を含む造形品を二次加工するための方法、そこからの硬化物品、及び基材と前記硬化物品とを備える組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
加硫(パー)フルオロエラストマーは、すぐれた耐熱性及び耐化学薬品性を有する材料であり、それらは一般的に、気密性、機械的性質及び鉱油、圧媒液、多様な性質の溶剤又は化学薬剤などの物質に対する耐性が低温から高温まで、広範囲の作業温度にわたって確実にされなければならないオイルシール、ガスケット、シャフトシール及びO-リングなどのシーリング物品の製造において使用され、そこで材料は、純度、耐プラズマ性及び粒子の放出の観点から過酷な要件を満たすことが要求される場合がある。
【0004】
シーリング部品が例えば自動車の部品の構成部品として又は安全上の理由のために、例えば、燃料用の貯蔵装置の構成部品として機械力に耐えなければならない用途において、フルオロエラストマー構成部品は別の部品に固定され得、それは金属部品又はプラスチック部品、特にシリコーン、ポリカーボネート、ポリエステル、又はポリアミドであり得、両方の構成成分の最良の特質を組み合わせる性能を有する複数材料構成部品をもたらす。このような組立体は、互いの間で強い接合を有することが必要とされる:金属又はプラスチックへの硬化(パー)フルオロエラストマーの強靭な接着性を得ることは、それらの表面エネルギーが低く官能基が無いため、簡単な作業ではない。
【0005】
フッ素ゴムと異なった基材との間の接着性を改良する課題を扱うためにいくつかの試みが過去に実証されている。
【0006】
例えば、米国特許第5,656,121号明細書には、フルオロポリマーと他の熱可塑性樹脂との複合材料は、低分子量ジアミン化合物を含有するコーティングを使用して構成部品間の強い接合を形成することによって作製され得ることが記載されている。しかしながら、経済的な理由のためにタイ層及びプライマーのような接着剤又は接合添加剤を必要とせずに弾性構成部品と硬質構成部品とを組み合わせて追加の加工工程及び材料費を省くことによって、複合材料を直接に形成することが望ましい場合がある。
【0007】
さらに、米国特許第6,162,385号明細書において、フルオロエラストマーとポリアミドポリマーとの間の強い且つ直接的な接合を有する複合材料が記載されているが、ポリアミドは高濃度のアミン末端基を有するように選択され、フルオロエラストマーは、それに接着したままイオン性硬化される。
【0008】
更にこの分野において欧州特許第2714388号明細書は、第2の構成要素に直接に接合された第1の構成要素を含む複合材料を目的としており、第1の構成要素がASTM D1329に従って測定されるとき-19C以下の温度反射TR-10を有する過酸化物硬化フルオロエラストマーを含み、第2の構成要素がポリアミド樹脂を含み、この複合材料は、フルオロエラストマーとポリアミドとの間の耐熱性接合を有する。
【0009】
それにもかかわらず、これらの方法のどれも、様々な基材に接着することができ、前記基材の特別な予備処理又は改良を伴わず、且つ最適な性能を有して例えば2K成形加工機内で容易に加工され得る、(パー)フルオロエラストマー基本化合物に基づいた解決策を実際に提供する。
【0010】
特開2017/071686号公報は、その中にブレンドされた芳香族耐熱性樹脂の粉末を含有するパーフルオロゴムから製造されたボディと、成形物の表面の少なくとも一部の上の芳香族耐熱性樹脂のコーティングとを備えるパーフルオロゴム成形物に関する。耐熱性樹脂は、芳香族ポリイミドであり得る。
【0011】
米国特許第7323515号明細書は、架橋性フルオロエラストマーと、架橋剤と、強化用ポリイミド樹脂粉末とを含むシーリング組成物に関する。
【0012】
国際公開第2006/010651号パンフレットは、アンダーカット又は複雑な幾何学的形状を有する成形部品に適した成形プロセスの間に改良された可撓性を有する、芳香族ポリアミド-イミドと0.5~30重量%の量のフルオロエラストマーとを含む芳香族ポリイミド組成物に関する。
【発明の概要】
【0013】
(パー)フルオロエラストマーと、架橋系と、明確に定義された量の少なくとも1つのポリアミドイミドとを含む特定の組成物が上記の問題を解決することができ、(パー)フルオロエラストマーの全ての有利な機械的性質及び封止性質を維持しながら、様々な基材への著しい接着性を達成することを硬化が可能にするのに特に有効であることを本出願人はいま見出した。
【0014】
本発明はしたがって、組成物[組成物(C)]であって
- 少なくとも1つの(パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]と、
- 少なくとも1つの架橋系と、
- フルオロエラストマー(A)に対して少なくとも0.5phr、及び最大で30.0phrの量で存在している、少なくとも1つの芳香族ポリアミド-イミドポリマー[ポリマー(PAI)]とを含む、組成物[組成物(C)]に関する。
【0015】
本発明の目的のために、用語「(パー)フルオロエラストマー」[フルオロエラストマー(A)]は、真のエラストマーを得るための基本構成成分として役立つフルオロポリマー樹脂を指すことが意図され、前記フルオロポリマー樹脂は、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下、(パー)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位、及び任意選択的に、フッ素原子を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下、水素化モノマー)に由来する繰り返し単位10重量%超、好ましくは30重量%超を含む。
【0016】
真のエラストマーは、ASTM、Special Technical Bulletin、第184規格により、室温でその固有長さの2倍に伸長でき、それらを5分間張力下に保持した後、解放すると、同時にその初期長さの10%以内に戻る材料として定義されている。
【0017】
一般的にフルオロエラストマー(A)は、少なくとも1つの(パー)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記(パー)フッ素化モノマーは一般的に、
- C
2~C
8フルオロ-及び/又はパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン;
- C
2~C
8水素化モノフルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル;
1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、及びトリフルオロエチレン(TrFE);
- 式CH
2=CH-R
f0(式中、R
f0は、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル又は1個以上のエーテル基を有するC
1~C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のような、クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C
2~C
6フルオロオレフィン;
- 式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)に従うフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CH
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)に従うヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF
2=CFOX
0(式中、X
0は、1個以上のエーテル基を有するC
1~C
12オキシアルキル、又はC
1~C
12(パー)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;特に式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1~C
6フルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7又は-C
2F
5-O-CF
3のような、1個以上のエーテル基を有するC
1~C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式CF
2=CFOY
0(式中、Y
0は、C
1~C
12アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル、又はC
1~C
12オキシアルキル若しくはC
1~C
12(パー)フルオロオキシアルキルであり、前記Y
0基は、カルボン酸基又はスルホン酸基を、その酸、酸ハライド若しくは塩形態で含む)に従う官能性フルオロ-アルキルビニルエーテル;
- 式:
(式中、互いに等しいか又は異なるR
f3、R
f4、R
f5、R
f6の各々は、独立して、フッ素原子、1つ以上の酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
6フルオロ-又はパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である)の(パー)フルオロジオキソール
からなる群から選択される。
【0018】
水素化モノマーの例は、とりわけ、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの水素化アルファ-オレフィン、ジエンモノマー、スチレンモノマーであり、アルファ-オレフィンが通常使用される。
【0019】
フルオロエラストマー(A)は、一般に、非晶質生成物、つまり低い結晶化度(20体積%未満の結晶相)及び室温未満のガラス転移温度(Tg)を有する生成物である。ほとんどの場合、フルオロエラストマー(A)は、有利には10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃のTgを有する。
【0020】
フルオロエラストマー(A)は、好ましくは、
(1)VDF系コポリマーであって、VDFが、
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC
2~C
8ペルフルオロオレフィン;
(b)水素含有C
2~C
8オレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブテン(HFIB)、式CH
2=CH-R
f(式中、R
fは、C
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(c)ヨウ素、塩素及び臭素の少なくとも1つを含む、C
2~C
8フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF
2=CFOR
f(式中、R
fは、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基、好ましくは、CF
3、C
2F
5、C
3F
7である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC
1~C
12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えばペルフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
(式中、互いに等しいか又は異なるR
f3、R
f4、R
f5、R
f6の各々は、独立して、フッ素原子、及び任意選択的に1個又は2個以上の酸素原子を含む、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基、例えば、とりわけ-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3からなる群から選択される)を有する(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)式:
CF
2=CFOCF
2OR
f2
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(以下、MOVE)
(式中、R
f2は、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル;C
5~C
6環状(パー)フルオロアルキル;及び少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含むC
2~C
6(パー)フルオロオキシアルキルからなる群から選択され;R
f2は、好ましくは-CF
2CF
3(MOVE1);-CF
2CF
2OCF
3(MOVE2);又は-CF
3(MOVE3)である);
(h)C
2~C
8非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレン及びプロピレンからなる群から選択される少なくとも1つの追加のコモノマーと共重合されている、VDF系コポリマー;並びに
(2)TFE系コポリマーであって、TFEは、上で詳述されたとおりの(c)、(d)、(e)、(g)、(h)及び(i)からなる群から選択される少なくとも1種の追加のコモノマーと共重合されている、TFE系コポリマー
の中で選択される。
【0021】
任意選択的に、本発明のフルオロエラストマー(A)はまた、一般式:
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、互いに等しいか又は異なり、H又はC
1~C
5アルキルであり;Zは、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、酸素原子を任意選択的に含有する直鎖又は分岐のC
1~C
18炭化水素基(アルキレン又はシクロアルキレン基など)、又は1つ以上のカテナリーエーテル性結合を含む(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基である)を有するビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位を含み得る。
【0022】
ビス-オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF-1)、(OF-2)、及び(OF-3):
(式中、jは、2~10、好ましくは4~8の整数であり、互いに等しいか又は異なるR1、R2、R3、R4は、H、F、又はC
1~5アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基である);
[式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるAの各々は、独立して、F、Cl、及びHから選択され;互いに及び各存在で等しいか又は異なるBの各々は、独立して、F、Cl、H及びOR
B(式中、R
Bは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化され得る分岐又は直鎖のアルキル基である)から選択され;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくは、Eは、mが3~5の整数である、-(CF
2)
m-基である;(OF-2)タイプの好ましいビス-オレフィンは、F
2C=CF-O-(CF
2)
5-O-CF=CF
2である];
(式中、E、A、及びBは上記で定義されたものと同じ意味を有し;互いに等しいか又は異なるR5、R6、R7は、H、F又はC
1~5アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基である)
に従うものからなる群から選択される。
【0023】
本発明の目的に好適なフルオロエラストマー(A)の具体的な組成の中でも、以下の組成(モル%単位)を有するフルオロエラストマーを挙げることができる:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5~50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~20%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20~30%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)10~30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18~27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~50%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)45~65%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)20~55%、フッ化ビニリデン0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)32~60%モル%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)10~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33~75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15~45%、フッ化ビニリデン(VDF)5~30%、ヘキサフルオロプロペンHFP0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(ix)テトラフルオロエチレン(TFE)20~70%、フルオロビニルエーテル(MOVE)30~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~50%、ビス-オレフィン(OF)0~5%。
【0024】
フルオロエラストマー(A)は、乳化重合又はマイクロエマルション重合、懸濁重合又はミクロ懸濁重合、バルク重合及び溶液重合などの、任意の公知の方法によって調製することができる。
【0025】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、フルオロエラストマー(A)は硬化部位を含み;硬化部位の選択は特に重要ではないが、但し、それらは十分な硬化反応性を確保するものとする。
【0026】
フルオロエラストマー(A)は、ある特定の繰り返し単位に結合したペンダント基として又はポリマー鎖の末端基としてのいずれかで前記硬化部位を含むことができる。
【0027】
硬化部位含有繰り返し単位の中でも、特には以下のものを挙げることができる:
(CSM-1)式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるA
Hfの各々は、独立して、F、Cl、及びHから選択され;B
Hfは、F、Cl、H及びOR
Hf
Bのいずれかであり、R
Hf
Bは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化され得る分岐又は直鎖アルキル基であり;互いに及び各存在で等しいか又は異なるW
Hfの各々は、独立して、共有結合又は酸素原子であり;E
Hfは、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;R
Hfは、エーテル結合が挿入されていてもよい、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化され得る、分岐又は直鎖アルキル基であり;好ましくはEは、-(CF
2)
m-基であり、mは3~5の整数であり;及びX
Hfは塩素、ヨウ素及び臭素からなる群から選択される、好ましくはヨウ素及び臭素からなる群から選択されるハロゲン原子である)のハロゲン(塩素、ヨウ素又は臭素、好ましくはヨウ素又は臭素)含有モノマー;
(CSM-2)場合によりフッ素化された、シアニド基を含むエチレン性不飽和化合物。
【0028】
タイプ(CSM1)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは、
(CSM1-A)式:
(式中、mは、0~5の整数であり、nは、0~3の整数であり、ただし、m及びnの少なくとも一方は、0とは異なり、R
fiは、F又はCF
3である)
のヨウ素含有パーフルオロビニルエーテル;(特に米国特許第4745165号明細書(AUSIMONT SPA)(1988年5月17日)、米国特許第4564662号明細書(MINNESOTA MINING)(1986年1月14日)及び欧州特許出願公開第199138A号明細書(ダイキン工業株式会社)(1986年10月29日)に記載されたとおりの);及び
(CSM-1B)式:
CX
1X
2=CX
3-(CF
2CF
2)
p-I
(式中、互いに等しいか又は異なるX
1、X
2及びX
3の各々は、独立して、H又はFであり;pは、1~5の整数である)のヨウ素含有エチレン性不飽和化合物;これらの化合物の中でも、CH
2=CHCF
2CF
2I、I(CF
2CF
2)
2CH=CH
2、ICF
2CF
2CF=CH
2、I(CF
2CF
2)
2CF=CH
2を挙げることができる;
(CSM-1C)式:
CHR=CH-Z-CH
2CHR-I
(式中、Rは、H又はCH
3であり、Zは、1つ以上のエーテル酸素原子を任意選択的に含有する直鎖又は分岐の、C
1~C
18(パー)フルオロアルキレン基、又は(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)のヨウ素含有エチレン性不飽和化合物;これらの化合物の中でも、CH
2=CH-(CF
2)
4CH
2CH
2I、CH
2=CH-(CF
2)
6CH
2CH
2I、CH
2=CH-(CF
2)
8CH
2CH
2I、CH
2=CH-(CF
2)
2CH
2CH
2Iを挙げることができる;
(CSM-1D)例えば米国特許第4035565号明細書(DU PONT)(1977年07月12日)に記載されているブロモトリフルオロエチレン又はブロモテトラフルオロブテンなどの2~10個の炭素原子を含有するブロモ及び/又はヨードアルファ-オレフィン、又は米国特許第4694045号明細書(DU PONT)(1987年9月15日)に開示されている他の化合物であるブロモ及び/又はヨードアルファ-オレフィン。
【0029】
タイプ(CSM2)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは:
(CSM2-A)式CF2=CF-(OCF2CFXCN)m-O-(CF2)n-CN(式中、XCNはF又はCF3であり、mは0、1、2、3又は4であり;nは1~12の整数である)のシアニド基を含有するパーフルオロビニルエーテル;
(CSM2-B)式CF2=CF-(OCF2CFXCN)m’-O-CF2-CF(CF3)-CN(式中、XCNはF又はCF3であり、m’は0、1、2、3又は4である)のシアニド基を含有するパーフルオロビニルエーテル
からなる群から選択されるものである。
本発明の目的に好適なCSM2-A及びCSM2-B型の硬化部位含有モノマーの具体例としては、特に、米国特許第4281092号明細書(DU PONT)1981年7月28日、米国特許第4281092号明細書(DU PONT)1981年7月28日、米国特許第5447993号明細書(DU PONT)1995年9月5日、及び米国特許第5789489号明細書(DU PONT)1998年8月4日に記載されているものがある。
【0030】
好ましくは、本発明のフルオロエラストマー(A)は、フルオロエラストマー(A)中の塩化物、ヨウ素及び臭素含有量がフルオロエラストマー(A)の全重量に対して0.001~10重量%であるような量で塩素、ヨウ素及び臭素硬化部位のうちの少なくとも1つ(より好ましくはヨウ素及び/又は臭素)を含む。これらの中でも、ヨウ素硬化部位は硬化速度を最大にするために選択されるものであり、そのためヨウ素硬化部位を含むフルオロエラストマー(A)が好ましい。
【0031】
この実施形態によれば、許容される反応性を確保するために、ヨウ素及び/又は臭素が好ましく、フルオロエラストマー(A)中のヨウ素及び/又は臭素の含有量は、フルオロエラストマー(A)の全重量に対して、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.15重量%のものであるべきであることが一般に理解される。
【0032】
他方で、フルオロエラストマー(A)の合計重量に対して、好ましくは7重量%を超えない、より具体的には5重量%を超えない、又はさらには4重量%を超えないヨウ素及び/又は臭素の量は、一般に副反応及び/又は熱安定性に対する悪影響を回避するために選択されるものである。
【0033】
本発明のこれらの好ましい実施形態のこれらのヨウ素又は臭素硬化部位は、フルオロエラストマー(A)ポリマー鎖の主鎖に結合しているペンディング基として(上述したような(CSM-1)型モノマー由来の、及び好ましくは上述したような(CSM-1A)~(CSM1-D)モノマー由来の、繰り返し単位のフルオロエラストマー(A)鎖への組み込みによって)含まれていてもよく、又は前記ポリマー鎖の末端基として含まれていてもよい。
【0034】
第一の実施形態によれば、ヨウ素及び/又は臭素硬化部位は、フルオロエラストマーポリマー鎖の主鎖に結合しているペンディング基として含まれる。この実施形態にかかるフルオロエラストマーは一般に、フルオロエラストマー(A)の全ての他の繰り返し単位100モルあたり0.05~5モルの量でヨウ素又は臭素を含有するモノマー(CSM-1)由来の繰り返し単位を含み、こうして上述のヨウ素及び/又は臭素重量含有量を有利に確保している。
【0035】
第二の好ましい実施形態によれば、ヨウ素及び/又は臭素硬化部位は、フルオロエラストマー(A)ポリマー鎖の末端基として含まれており;この実施形態にかかるフルオロエラストマーは一般にフルオロエラストマー製造中に重合媒体に対して以下のもの:
- ヨウ素化及び/又は臭素化連鎖移動剤;好適な鎖-鎖移動剤は、典型的には式Rf(I)x(Br)y(式中、Rfは、1~8個の炭素原子を含有する(パー)フルオロアルキル又は(パー)フルオロクロロアルキルであり、x及びyは、1≦x+y≦2の0~2の整数である)のものである(例えば、米国特許第4243770号明細書(DAIKIN IND LTD)(1981年1月6日)及び米国特許第4943622号明細書(NIPPON MEKTRON KK)(1990年7月24日)を参照されたい);並びに
- とりわけ米国特許第5173553号明細書(AUSIMONT SRL)(1992年12月22日)に記載のものなどの、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ヨウ化物及び/又は臭化物のうちのいずれかを添加することによって得られる。
【0036】
ポリマー(PAI)
本発明の目的のために、「芳香族ポリアミドイミドポリマー[ポリマー(PAI)]」は、少なくとも1つの芳香環、そのままで及び/又はそのアミド酸形態での少なくとも1個のイミド基、並びにイミド基のアミド酸形態に含まれない少なくとも1個のアミド基を含む50モル%超の繰り返し単位[繰り返し単位(RPAI)]を含む任意のポリマーを意味することが意図される。
【0037】
繰り返し単位(R
PAI)は有利には、式(R
PAI-a)及び(R
PAI-b)のいずれかの単位:
[式中、
- Arは、三価の芳香族基であり;典型的にはArは、以下の構造:
及び対応する任意選択的に置換された構造からなる群から選択され、Xは、-O、-C(O)-、-CH
2-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
n-(nは、1~5の整数である)であり;
- Rは、二価の芳香族基であり;典型的にはRは、以下の構造:
及び対応する任意選択的に置換された構造からなる群から選択され、Yは、-O-、-S-、-SO
2-、-CH
2-、-C(O)-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
n(nは、0~5の整数である)である]
からなる群から選択される。
【0038】
好ましくは、ポリマー(PAI)は、イミド基が、繰り返し単位(RPAI-a)におけるようにそのままで存在する、及び/又は繰り返し単位(RPAI-b)におけるように、そのアミド酸形態で存在する、イミド基を含む繰り返し単位(RPAI)を、ポリマー(PAI)の繰り返し単位の総モル数に対して50モル%超で含む。
【0039】
繰り返し単位(R
PAI)は、好ましくは、それらのアミド-イミド(a)又はアミド-アミド酸(b)形態での繰り返し単位(l)、(m)及び(n):
(式中、(l-b)に示される芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸構造を表すと理解される);
(式中、(m-b)に示される芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸構造を表すと理解される);及び
(式中、(n-b)に示される芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸構造を表すと理解される)
から選択される。
【0040】
非常に好ましくは、ポリマー(PAI)は、90モル%超の繰り返し単位(RPAI)を含む。更により好ましくは、これは、繰り返し単位(RPAI)以外の繰り返し単位を全く含有しない。ポリマー(PAI)は、商標名TORLON(登録商標)の下Solvay Specialty Polymers USA, L.L.C.によって商業化されている。
【0041】
組成物(C)は、前記ポリマー(PAI)をフルオロエラストマー(A)に対して少なくとも0.5phr、好ましくは少なくとも1.0phr、より好ましくは少なくとも2.0phr、及び最大で30.0phr、好ましくは最大で25.0phr、より好ましくは最大で18.0phrの量で含む。
【0042】
架橋系
組成物(C)は、フルオロエラストマー(A)の硬化を促進することができる、少なくとも1つの架橋系を含む。
【0043】
特定の実施形態によると、前記少なくとも1つの架橋系は、少なくとも1つの有機過酸化物[過酸化物(O)]と少なくとも1つの1つの多価不飽和化合物[化合物(U)]とを含む過酸化物系架橋系である。
【0044】
したがってこの実施形態による組成物(C)は、少なくとも有機過酸化物[過酸化物(O)]を含む。前記過酸化物(O)の選択は、これが遷移金属触媒の助けを借りてラジカルを生成することができるならば特に重要ではない。最も一般的に使用されるペルオキシドの中で、
- 例えばジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドなどの、ジ(アルキル/アルリル)ペルオキシド;
- ジベンゾイルペルオキシド、ジコハク酸ペルオキシド、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシドなどの、ジアシルペルオキシド;
- ジ-tert-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルエチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンなどの、過カルボン酸及びエステル;
- とりわけジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2-フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ビス[1,3-ジメチル-3-(tert-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート、t-ヘキシルペルオキシイソプロプリルカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどの、ペルオキシカーボネート、
- ペルケタール、例えば1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン及び2,2-ビス(tertブチルペルオキシ)ブタン;
- ケトンペルオキシド、例えばシクロヘキサノンペルオキシド及びアセチルアセトンペルオキシド;
- 有機ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド(別称2-[(2-ヒドロペルオキシブタン-2-イル)ペルオキシ]ブタン-2-ペルオキソールと称される)及びピナンヒドロペルオキシド;
- 油溶性アゾ開始剤、例えば2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シアノ-2-ブタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスジメチルイソブチレート、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-l-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シアノ-2-ブタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスジメチルイソブチレート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(1,1)-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-ヒドロキシエチル]-プロプリオンアミド、2,2’-アゾビス(N、N’-ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル-)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル-)エチル]プロプリオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-5メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2’-アゾビス(2,2,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)を挙げることができる。
【0045】
他の好適な過酸化物系は、とりわけ、欧州特許出願公開第136596A号明細書(MONTEDISON SPA)(1985年4月10日)及び欧州特許出願公開第410351A号明細書(AUSIMONT SRL)(1991年1月30日)に記載のものであり、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
硬化条件(時間、温度)に応じた最も適切な過酸化物の選択は、とりわけ過酸化物(O)の10時間での半減時間温度を考慮して、当業者によってなされることになる。
【0047】
この実施形態の組成物(C)中の過酸化物(O)の量は一般的に、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して0.1~15phr、好ましくは0.2~12phr、より好ましくは1.0~7.0phrである。
【0048】
前述のように、この実施形態の組成物(C)は、少なくとも1種の多価不飽和化合物又は化合物(U)を含む。「多価不飽和化合物」という表現は、本明細書では、2つ以上の炭素-炭素不飽和を含む化合物を示すものとする。
【0049】
組成物(C)は、上述のように1種又は2種以上の化合物(U)を含み得る。
【0050】
化合物(U)は、2つの炭素-炭素不飽和を含む化合物、3つの炭素-炭素不飽和を含む化合物、及び4つ又は5つ以上の炭素-炭素不飽和を含む化合物から選択され得る。
【0051】
2つの炭素-炭素不飽和を含む化合物(U)の中で、上に詳述されたような、式(OF-1)、(OF-2)及び(OF-3)のいずれかに従うものから好ましくは選択される、上に詳述されたような、ビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]を挙げることができる。
【0052】
3つの炭素-炭素不飽和を含む化合物(U)の中で、次のものを挙げることができる:
- 一般式:3つの炭素-炭素不飽和を含む化合物(U)の中で、次のものを挙げることができる:
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
cyの各々は、独立して、H、又は基-R
rcy若しくは-OR
rcyから選択され、R
rcyは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
cyの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換シアヌラート化合物であって;
とりわけ好ましいトリアリルシアヌラート、トリビニルシアヌラートを含む三置換シアヌラート化合物;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
isocyの各々は、独立して、H、又は基-R
risocy若しくは-OR
risocyから選択され、R
risocyは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
isocyの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換イソシアヌラート化合物であって;
とりわけ好ましいトリアリルイソシアヌラート(それ以外の場合は、「TAIC」と呼ばれる)、トリビニルイソシアヌラートを含み、TAICが最も好ましい、三置換イソシアヌラート化合物;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
azの各々は、独立して、H、又は基-R
raz若しくは-OR
razから選択され、R
razは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
azの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換トリアジン化合物であって;
とりわけ欧州特許出願公開第0860436A号明細書(AUSIMONT SPA)(1998年8月26日)及び国際公開第97/05122号パンフレット(DU PONT)(1997年2月13日)に開示される化合物を含む三置換トリアジン化合物;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
phの各々は、独立して、H、又は基-R
rph若しくは-OR
rphから選択され、R
rphは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
phの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換亜リン酸塩化合物であって;
とりわけ好ましいトリ-アリル亜リン酸塩を含む三置換亜リン酸塩化合物;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
siの各々は、独立して、H、又は基-R
rsi若しくは-OR
rsiから選択され、R
rsiは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR’
siの各々は、独立して、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキル基から選択され、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
siの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)の三置換アルキルトリシロキサンであって;三置換アルキルトリシロキサン化合物は、とりわけ好ましい2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン及び2,4,6-トリビニルエチルトリシロキサンを含む三置換アルキルトリシロキサン;
- 一般式:
(式中、互いに及び各存在で等しいか又は異なるR
anの各々は、独立して、H、又は基-R
ran若しくは-OR
ranから選択され、R
ranは、場合によりハロゲンを含むC
1~C
5アルキルであり、互いに及び各存在で等しいか又は異なるJ
anの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合又は二価炭化水素基から選択される)のN,N-二置換アクリルアミド化合物であって;とりわけ好ましいN,N-ジアリルアクリルアミドを含むN,N-二置換アクリルアミド化合物。
【0053】
4つ以上の炭素-炭素不飽和を含む化合物(U)の中で、式
のトリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、ヘキサ-アリルホスホルアミド、N,N,N’,N’-テトラ-アリルテレフタルアミド、N,N,N’,N’-テトラ-アリルマロンアミドを挙げることができる。
【0054】
一般的に、化合物(U)が、(i)上に詳述されたとおりのオレフィン(OF)、特に(OF-1)タイプのオレフィン;及び(ii)上に詳述されたとおりの三置換イソシアヌラート化合物、特にTAICからなる群から選択されることが好ましい。
【0055】
化合物(U)の量は、通常、フルオロエラストマー(A)の00重量部(phr)当たり0.1~20重量部の範囲であり、好ましくはフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり1~15重量部の範囲であり、より好ましくはフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり1~10重量部の範囲である。
【0056】
この実施形態の組成物(C)はさらに、フルオロエラストマーの過酸化物硬化に一般的に使用され得る成分を追加的に含み得、より具体的には、組成物(C)は通常さらに:
(a)フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~15.0phr、好ましくは1~10phr、より好ましくは1~5phrの量の、1種若しくは2種以上の金属塩基性化合物;金属塩基性化合物は、一般に、(j)二価金属の酸化物又は水酸化物、例えばMg、Zn、Ca又はPbの酸化物又は水酸化物、並びに(jj)弱酸の金属塩、例えばBa、Na、K、Pb、Caのステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩又は亜リン酸塩からなる群から選択される;
(b)フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して一般に0.5~15.0phr、好ましくは1~10.0phr、より好ましくは1~5phrの量での、金属塩基化合物でない1種又は2種以上の酸受容体;これらの酸受容体は、一般に窒素含有有機化合物、例えば、特に欧州特許出願公開第708797A号明細書(DU PONT)(1996年5月1日)に記載されたとおりの、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、オクタデシルアミンなどから選択される。
【0057】
他の実施形態によると、前記少なくとも1つの架橋系は、少なくとも1つのポリヒドロキシル化化合物と、少なくとも1つの促進剤と、少なくとも1つの塩基性金属酸化物とを含むイオン性架橋系である。
【0058】
前述のように、この第2の実施形態による組成物は、少なくとも1つのポリヒドロキシル化化合物を含む。芳香族又は脂肪族ポリヒドロキシル化化合物又はその誘導体を使用してもよく;その例は、とりわけ欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING)(1989年4月10日)、及び米国特許第4233427号明細書(RHONE POULENC IND)(1980年11月11日)に記載されている。これらの中でも、特にジヒドロキシ、トリヒドロキシ及びテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレン又はアントラセン;式(B):
[式中、
- Z’が、少なくとも1つの塩素又はフッ素原子で任意選択的に置換された二価C
1~C
13アルキル又はアルキリデン基、C
4~C
13脂環式、C
6~C
13芳香族又はアリールアルキレン基;チオ(-S-)、オキシ(-O-)、カルボニル(-C(O)-)、スルフィニル(-S(O)-)及びスルホニル基(-SO
2-)からなる群から選択され;
- xは0又は1であり;
- 互いに等しいか又は異なるuの各々は、独立して、各存在で少なくとも1、好ましくは1又は2の整数であり;
- 及びフェニル環は、塩素、フッ素、臭素;-CHO、C
1~C
8アルコキシ基、-COOR
10基(式中、R
10はH又はC
1~C
8アルキル、C
6~C
14アリール、C
4~C
12シクロアルキルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意選択的に置換され得る]のビスフェノールが挙げられる。
【0059】
Z’がC1~C13二価アルキル基であるとき、それは例えばメチレン、エチレン、クロロエチレン、フルオロエチレン、ジフルオロエチレン、1,3-プロピレン、テトラメチレン、クロロテトラメチレン、フルオロテトラメチレン、トリフルオロテトラメチレン、2-メチル-1,3-プロピレン、2-メチル-1,2-プロピレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンであり得る。
Z’がC1~C13二価アルキリデン基であるとき、それは例えばエチリデン、ジクロロエチリデン、ジフルオロエチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、トリフルオロイソプロピリデン、ヘキサフルオロイソプロピリデン、ブチリデン、ヘプタクロロブチリデン、ヘプタフルオロブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン、1,1-シクロヘキシリデンであり得る。
Z’がC4~C13脂環式基であるとき、それは例えば1,4-シクロヘキシレン、2-クロロ-1,4-シクロヘキシレン、2-フルオロ-1,4-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、シクロペンチレン、クロロシクロペンチレン、フルオロシクロペンチレン、及びシクロへプチレンであり得る。
Z’がC6~C13芳香族又はアリールアルキレン基であるとき、それは例えばm-フェニレン、p-フェニレン、2-クロロ-1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、o-フェニレン、メチルフェニレン、ジメチルフェニレン、トリメチルフェニレン、テトラメチルフェニレン、1,4-ナフチレン、3-フルオロ-1,4-ナフチレン、5-クロロ-1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン及び2,6-ナフチレンであり得る。
【0060】
式(B)のポリヒドロキシル化硬化剤の中で、ビスフェノールAFとして公知のヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4-ヒドロキシベンゼン)、ビスフェノールAとして公知の4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン及びイソプロピリデンビス(4-ヒドロキシベンゼン)が好ましく、ビスフェノールAFが特に好ましい。
【0061】
他のポリヒドロキシル硬化剤は、カテコール、レソルシノール、2-メチルレソルシノール、5-メチルレソルシノール、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2,5-ジメチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノンからなる群から選択されるジヒドロキシベンゼン、及びジヒドロキシナフタレン、特に1,5-デヒドロキシナフタレンである。
【0062】
又、前述の芳香族又は脂肪族ポリヒドロキシル化化合物の誘導体を使用することができることも理解される。とりわけ、前記芳香族又は脂肪族ポリヒドロキシル化化合物のアニオン(ヒドロキシル基の1個以上が脱プロトン化されている)と、金属の、典型的にアルカリ又はアルカリ土類金属の1つ又は2つ以上のカチオン(中性に達するために必要とされる)とによって形成される金属塩を挙げることができる;その例はとりわけ、ビスフェノールAFの二カリウム塩及びビスフェノールAFの一ナトリウム一カリウム塩である。
【0063】
さらに加えるに、-オニウムヒドロキシル化物、すなわち、前記芳香族又は脂肪族ポリヒドロキシル化化合物のアニオン(ヒドロキシル基の1個以上が脱プロトン化されている)と、1つ以上の-オニウムカチオンとによって形成される塩もまた、使用することができる。カチオンとして、-オニウム有機誘導体促進剤の構成成分に相当する全てのカチオンを使用することができる。
【0064】
ポリヒドロキシル化化合物の量は一般的に、フルオロエラストマー(A)の重量に対して少なくとも0.5phr、好ましくは少なくとも1phr、及び/又は一般的に最大で15phr、好ましくは最大で10phrである。
【0065】
この第2の実施形態による組成物(C)は少なくとも1つの促進剤を含み、フルオロエラストマーのイオン性硬化のための促進剤は本技術分野に公知である。
【0066】
本発明の組成物において適した促進剤は一般的に、有機オニウム化合物、アミノ-ホスホニウム誘導体、ホスホラン、イミン化合物からなる群から選択される。
【0067】
本発明の組成物において適している有機オニウム化合物は一般的に、式(O):
{[R1R2R3R4Q]+}nXI
n-
(式中、
- Qは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、硫黄;好ましくはリン又は窒素からなる群から選択され;
- XIは有機又は無機アニオンであり、好ましくはハロゲン化物、サルフェート、アセテート、ホスフェート、ホスホネート、水酸化物、アルコキシド、フェナート、ビスフェナートからなる群から選択され;
- nはXIアニオンの原子価であり;
- 互いに等しいか又は異なるR2、R3、R4、R5の各々は、独立して、
C1~C20アルキル基、C6~C20アリール基、C6~C20アリールアルキル基、C1~C20アルケニル基;
塩素、フッ素、臭素から選択されるハロゲン;
シアノ基、式-ORB又は-COORB(式中、RBはアルキル、アリール、アリールアルキル又はアルケニルである)の基からなる群から選択されるもう一方からのものであり;R2、R3、R4、R5から選択される2つの基がQと環状構造を形成し得;
但し、Qが硫黄原子であるときR2、R3、R4、R5基のうちの1つは存在していない)に従う。
【0068】
この第2の実施形態の組成物(C)において使用するために適しているアミノ-ホスホニウム誘導体は一般的に、式(AP-1)又は(AP-2):
{[P(NR6R7)nR8
4-n]+}qYq-(AP-1)
{[R8
3-r(NR6R7)rP-E-P(NR6R7)rR8
3-r]2+}{Yq-}2/q(AP-2)
(式中、
- 互いに等しいか又は異なるR6、R7及びR8の各々は、独立して、
C1~C18アルキル基(好ましくはC1~C12アルキル基);C4~C7シクロアルキル基;C6~C18アリール基(好ましくはC6~C12アリール基);C6~C18アリールアルキル基(好ましくはC6~C12アリールアルキル基);
1つ又は2つ以上のヒドロキシル又は酸素エーテル基を含むC1~C18オキシアルキル基からなる群から選択され;
R6、R7及びR8はハロゲン、CN、OH、カルバルコキシ基を任意選択的に含有することができ;R6及びR7は窒素原子と複素環することができ;
- EはC1~C6二価アルキレン、オキシアルキレン又はC6~C12アリーレン基であり;
- nは、1~4の整数であり;
- rは、1~3の整数であり;
- qはアニオンYの原子価であり、好ましくは1~2の整数であり;
- Yは原子価qを有する有機又は無機アニオンであり;Yは、ハロゲン化物、過塩素酸塩、ニトレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、オキサレート、アセテート、ステアレート、ハロアセテート、パラ-トルエンスルホナート、フェナート、ビスフェナート、水酸化物から選択され得;Yはまた、錯アニオン、例えばZnCl4
2-、CdCl4
2-、NiBr4
2-、HgI3
-であり得る)に従う。
【0069】
この第2の実施形態の組成物(C)に適しているホスホランは一般的に、式(P):
(式中、
- 互いに等しいか又は異なるAr’の各々は、任意選択的に置換されたアリール基、好ましくは任意選択的に置換されたフェニル基又は任意選択的に置換されたナフチル基であり;
- 互いに等しいか又は異なるR
10及びR
11の各々は、独立して、-H、-CN、C
1~C
8アルキル、-O-C(O)-R
12基、-C(O)-R
12基、-NR
13-C(O)-R
12基からなる群から選択され、R
12はC
1~C
6(シクロ)アルキル基であり、及びR
13はH又はC
1~C
6(シクロ)アルキル基であり、
R
10及びR
11はP=C結合の炭素原子と一緒に環状基を場合により形成する)に従う。
【0070】
この第2の実施形態の組成物(C)において適しているイミン化合物は一般的に、式(I):
[(R14)3P=N=P(R14)3]+}zXz-(I)
(式中、
- 互いに各存在で等しいか又は異なるR14は、O、N、S、ハロゲンからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する1つ又は2つ以上の基を任意選択的に含む、C1~C12炭化水素基からなる群から選択され;
- Xは原子価zのアニオンであり、zは一般的に1又は2の整数である)に従う。
【0071】
使用され得る促進剤の例には、とりわけ欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING)(1989年10月4日)及び米国特許第3876654号明細書(DUPONT)(1975年4月8日)に記載されるような第四アンモニウム又はホスホニウム塩;とりわけ米国特許第4259463号明細書(MONTEDISON SPA)(1981年3月31日)に記載されるようなアミノホスホニウム塩;とりわけ米国特許第3752787号明細書(DUPONT)(1973年8月14日)に記載されるようなホスホラン;欧州特許出願公開第0120462A号明細書(MONTEDISON SPA)(1984年10月3日)に記載されるような又は欧州特許出願公開第0182299A号明細書(ASAHI CHEMICAL)(1986年5月28日)に記載されるようなイミン化合物が含まれる。第四級ホスホニウム塩及びアミノホスホニウム塩が好ましく、より好ましいのはテトラブチルホスホニウム、テトラブチルアンモニウムの塩、及び式:
の1,1-ジフェニル-1-ベンジル-N-ジエチル-ホスホルアミンの塩である。
【0072】
促進剤とポリヒドロキシル化化合物とを別々に使用する代わりに、促進剤とポリヒドロキシル化化合物との間の付加物を1:2~1:5及び好ましくは1:3~1:5のモル比で使用することもできる。前記付加物において、カチオンはしたがって、有機オニウム化合物、アミノ-ホスホニウム誘導体、及び上に記載したようなイミン化合物からなる群から選択される促進剤のいずれかの正の電荷をもつ部分によって表され、アニオンは、前記ポリヒドロキシル化硬化剤によって表され、そこでヒドロキシル基の1個以上が脱プロトン化されている。
【0073】
促進剤とポリヒドロキシル化硬化剤との間のこの付加物は、示されたモル比の促進剤と硬化剤との反応生成物を融解することによって、又は示された量の硬化剤が補充された1:1の付加物混合物を融解することによって一般的に得られる。任意選択的に、付加物に含まれる促進剤に対して過剰の促進剤も存在し得る。
【0074】
以下が付加物の調製のためのカチオンとして特に好ましい:特に好ましいアニオンは、2つの芳香環が3~7の炭素原子のパーフルオロアルキル基から選択される2価のラジカルを介して結合されており、パラ位にOH基を有する、ビスフェノール化合物である。前述の付加物の製造に好適な方法は、欧州特許出願公開第0684277A号明細書(AUSIMONT SPA)、1995年11月29日に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0075】
この第2の実施形態による組成物(C)中の促進剤の量は一般的に、フルオロエラストマー(A)の重量に対して少なくとも0.05phr、好ましくは少なくとも0.1phr、及び/又は一般的に最大で10phr、好ましくは最大で5phrである。
【0076】
この第2の実施形態による組成物(C)は、二価金属酸化物からなる群から一般的に選択される、少なくとも1つの塩基性金属酸化物を含む。二価金属の前記金属酸化物の中で、とりわけZnO、MgO、PbO、及びそれらの混合物を挙げることができ、MgOが好ましい。
【0077】
塩基性金属酸化物の量は一般的に、フルオロエラストマー(A)の重量に対して少なくとも0.5phr、好ましくは少なくとも1phr、及び/又は一般的に最大で25phr、好ましくは最大で15phr、より好ましくは最大で10phrである。
【0078】
この第2の実施形態による組成物(C)は、少なくとも1つの金属水酸化物を任意選択的に含むが、但し、前記金属水酸化物が存在している場合、その量は好ましくは、フルオロエラストマー(A)の100重量部に基づいて6phr未満、より好ましくは3phr未満である。
【0079】
使用され得る水酸化物は一般的に、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2からなる群から選択される。
【0080】
この第2の実施形態の組成物(C)の性能を最適化することができ、そこで金属水酸化物の量は有利には、フルオロエラストマー(A)の100重量部に基づいて、金属水酸化物が使用されない場合を含めて、2.5phr未満、好ましくは2phr未満、より好ましくは1phr未満であることは一般的に理解される。
【0081】
組成物(C)に含まれる架橋系がどれであるとしても、例えば充填剤、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、加工助剤/可塑剤などの他の従来の添加剤が存在し得る。カーボンブラックが有利な強化系としてしばしば使用される。
【0082】
前述のように、組成物(C)には、フッ素ゴムで知られるものから一般的に選択される、少なくとも1つの可塑剤(P)が含まれ得る。可塑剤(P)は一般的に、エステル系可塑剤、例えばグルタラート(例えばジイソデシルグルタラート)、アジペート(例えばビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジメチルアジペート、モノメチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブトキシエトキシエチルアジペート、ジブトキシエチルアジペート、ジイソデシルアジペート)、マレエート(例えばジブチルマレエート;ジイソブチルマレエート)、アゼレート、セバケート(例えばジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート)、トリメリテート(例えばトリ-2-エチルヘキシルトリメリテート)、シトレート(例えばトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルトリブチルシトレート、トリオクチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、トリヘキシルシトレート、アセチルトリヘキシルシトレート)、リン酸エステル(例えばトリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート)などの中から選択される。
【0083】
本発明はさらに、上に詳述されたような、組成物(C)の製造方法に関し、前記方法は、
- フルオロエラストマー(A)と、
- 架橋系と、
- ポリマー(PAI)とを混合する工程を含む。
【0084】
本発明はまた、上で記載されたような、組成物(C)を硬化させる工程を含む、造形品の製造方法に関する。
【0085】
組成物(C)は、例えば、成形(射出成形、押出成形)、カレンダー加工、コーティング、スクリーン印刷、現場成形によって、所望の造形品へ二次加工することができ、造形品は、有利には、加工それ自体中に及び/又はその後の工程(後処理又は後硬化)において加硫(硬化)を受け、有利には、比較的柔らかく、弱い、フルオロエラストマー未硬化組成物を、非粘着性の、強い、不溶性の、耐化学薬品性の及び耐熱性の硬化フルオロエラストマー材料でできた完成品へ変換させる。
【0086】
さらに、本発明は、上で詳述されたような、組成物(C)から得られた硬化品に関する。前記硬化品は、一般に、上で詳述されたような、フルオロエラストマー組成物を成形し、硬化させることによって得られる。これらの硬化品は、O(角)-リング、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、シャフトシール、バルブ軸シール、ピストンリング、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、及びオイルシールなどの、シーリング物品であっても、パイピング及び管材料、特に、炭化水素流体及び燃料の送達用の導管などの、フレキシブルホース又は他の品目であってもよい。
【0087】
最後に、本発明はさらに、上に詳述されたような、基材と少なくとも1つの硬化物品とを備える組立体に関する。
【0088】
基材の選択は、特に限定されない。本発明の組成物(C)は、様々な金属及びとりわけプラスチック及びゴム基材などの非金属基材(それらの中でとりわけポリアミド基材、シリコーン基材を挙げることができる)への接着性を確実にするようなものである。
【0089】
本発明の組立体は一般的に、上に詳述されたような組成物(C)を基材と接触させる工程と、前記組成物(C)を前記基材と接触している間に加硫(硬化)に供する工程と、組立体を後続の熱処理工程(後処理又は後硬化)に任意選択的に供する工程とによって製造される。
【0090】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0091】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0092】
原料
Tecnoflon(登録商標)PX647は、Solvay Specialty Polymers Italy,SpAから市販されているヨウ素含有ペルオキシド硬化性フルオロエラストマーである。
【0093】
VAROX(登録商標)DBPH-50は、R.T.Vanderbilt,Norwalk,Conn.から入手可能な2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキサンである。
【0094】
TAICDLC-Aは、NATROCHEM,INC.から市販されている、約72重量%TAICを含む、過酸化物加硫のためのトリアリルイソシアヌレート、二酸化ケイ素ブレンド助剤である。
【0095】
N550 BLACKは、とりわけMAKROChemから市販されているN550半強化カーボンブラックである。
【0096】
ARMEEN 18Dは、Akzo Nobelから市販されている蒸留オクタデシルアミンである。
【0097】
Torlon(登録商標)AI-10は、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから市販されている粉末芳香族ポリアミドイミドである。
【0098】
Torlon(登録商標)4000TFは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから市販されている、他のポリマー及び特殊添加剤と配合するように設計されたニート樹脂芳香族ポリアミド-イミド(PAI)細粉である。
【0099】
シリコーンへの接着性
比較例1A
表1におけるように配合される、市販のTecnoflon(登録商標)銘柄PX647をASTMスラブ型内にシリコーン化合物の上に置いた。スラブの半分のためにワックス紙を置いて、残りの被覆されていない部分でシリコーンとFKM化合物とを一緒に接合したままにした。次に、型を閉じ、25ポンドの重りを型の上に加えてそれを閉じた。システムを30分間177℃でプレス硬化した。
【0100】
【0101】
実施例1
市販のTecnoflon(登録商標)銘柄PX647を開放形ロール機内で6phrの市販のTorlon(登録商標)AI-10とブレンドし、ポリマーAを得た。表2の処方に従ってポリマーAを開放形ロール機内で配合した。次に、比較例1に記載されるように材料をシリコーンと共に成形した。
【0102】
【0103】
実施例2
市販のTecnoflon(登録商標)銘柄PX647を開放形ロール機内で6phrの市販のTorlon(登録商標)4000TFとブレンドし、ポリマーBを得た。表3の処方に従ってポリマーBを開放形ロール機内で配合した。次に、比較例1に記載されるように材料をシリコーンと共に成形した。
【0104】
【0105】
ステンレス鋼への接着性
ステンレス鋼に対するTecnoflon(登録商標)PX647、ポリマーA及びポリマーBの接着性質を以下の成形手順に従って測定した。
【0106】
サンドブラストしたステンレス鋼プラックをASTMD429-方法Bスラブ型内にFKM化合物と共に置いた。スラブの半分のためにワックス紙を置いて、残りの被覆されていない部分にステンレス鋼とFKM化合物とを一緒に接合したままにした。次いで、組み立てられた型を標準圧縮成形機内に入れて閉じた。それを30分間177℃で硬化した。
【0107】
【0108】