(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】空気調和システム、運転制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/56 20180101AFI20230728BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20230728BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20230728BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20230728BHJP
F24F 11/46 20180101ALN20230728BHJP
【FI】
F24F11/56
F24F11/52
F24F11/54
F24F11/63
F24F11/46
(21)【出願番号】P 2020567325
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2019002408
(87)【国際公開番号】W WO2020152837
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】金澤 律子
(72)【発明者】
【氏名】小坂 忠義
(72)【発明者】
【氏名】松下 孝明
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253718(JP,A)
【文献】特開2018-197617(JP,A)
【文献】特開2014-238215(JP,A)
【文献】特開昭60-258611(JP,A)
【文献】特開2017-096603(JP,A)
【文献】特開2010-236748(JP,A)
【文献】特開2018-146188(JP,A)
【文献】特開2012-193901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の室内機と1以上の室外機とを備えた空気調和システムであって、
前記複数の室内機と前記1以上の室外機のうち運転指示を受けて運転している室内機および室外機から運転に関連する情報を取得する取得手段と、
取得された前記情報に応じて、運転指示を受けていない少なくとも1つの室内機に対して運転を指示する制御手段と
を含み、
前記複数の室内機は、運転指示を与えるリモートコントローラ毎、設置空間を複数に分割した設置領域毎、
または設置空間毎にグループ化され、
前記取得手段は、一定の時間間隔で前記情報を取得し、
前記制御手段は、前記空気調和システムの運転に関して優先すべき事項として設定された条件が消費電力優先の場合、室内機の数が少ないグループから順にグループを選択し、選択したグループ内の運転指示を受けていない室内機に対して運転を指示する、空気調和システム。
【請求項2】
複数の室内機と1以上の室外機とを備えた空気調和システムであって、
前記複数の室内機と前記1以上の室外機のうち運転指示を受けて運転している室内機および室外機から運転に関連する情報を取得する取得手段と、
取得された前記情報に応じて、運転指示を受けていない少なくとも1つの室内機に対して運転を指示する制御手段と
を含み、
前記複数の室内機は、運転指示を与えるリモートコントローラ毎、設置空間を複数に分割した設置領域毎、
または設置空間毎にグループ化され、
前記取得手段は、一定の時間間隔で前記情報を取得し、
前記制御手段は、前記空気調和システムの運転に関して優先すべき事項として設定された条件が速さ優先の場合、室内機の数が多いグループから順にグループを選択し、室内機の数が最も多いグループを選択した場合は選択したグループ内の運転指示を受けていない室内機に対して運転を指示し、それ以外のグループを選択した場合は選択したグループ外の運転指示を受けて運転している室内機に対して運転停止を指示する、空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の室内機と1以上の室外機とを備えた空気調和システム、運転制御方法およびその運転制御をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス等の1つの空間(空調制御エリア)が広い場合、複数の室内機を備えた空気調和システムが導入される例が多い。このようなシステムでは、各室内機単位で運転指令を受け付け、各室内機単位で運転を行っている。
【0003】
各室内機単位で運転するシステムでは、ユーザが指定した位置に影響を与える室内機が他に存在するにもかかわらず、その室内機を選択することができないため、ユーザが意図した空調を実現することができない。
【0004】
そこで、ユーザが意図した空調を実現する目的で、複数の室内機のうちから、空調制御エリアにおける指定位置の空調環境(温度、湿度等)に影響を与える室内機を選択することができるように構成した装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の装置では、指定位置の空調環境に影響を与える室内機しか選択されない。例えば1台しか選択されない場合、設定温度に到達するまでに長時間を要し、選択された室内機が大きな電力で運転するため、消費電力が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、複数の室内機と1以上の室外機とを備えた空気調和システムであって、
複数の室内機と1以上の室外機のうち運転指示を受けて運転している室内機および室外機から運転に関連する情報を取得する取得手段と、
取得された情報に応じて、運転指示を受けていない少なくとも1つの室内機に対して運転を指示する制御手段と
を含む、空気調和システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設定温度に到達するまでに要する時間を短縮し、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】室内機と室外機と集中コントローラとの接続状態を例示した図。
【
図3】集中コントローラのハードウェア構成を例示した図。
【
図4】複数の室内機を各グループに指定した例を示した図。
【
図5】集中コントローラが管理するグループ情報を例示した図。
【
図6】集中コントローラの機能構成を例示したブロック図。
【
図7】集中コントローラによる運転制御の流れの一例を示したフローチャート。
【
図9】運転効率に応じて一部の室内機の連携運転を解除する例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、空気調和システムの構成例を示した図である。空気調和システムは、同一空間内に設けられる複数の室内機と、その空間の外部に設置される1以上の室外機とを含む。また、空気調和システムは、室内機と室外機の組からなる空調機をユーザが操作するためのリモートコントローラと、空気調和システムを制御する制御装置としての集中コントローラとを含む。
【0011】
図1に例示したシステムは、建屋内のあるフロアの大きい室内に設置された16台の室内機10と、室外に設置された4台の室外機11と、各室内機10を運転するための16個のリモートコントローラ12と、集中コントローラ13とから構成されている。
【0012】
室内機10は、天井設置型の室内機で、室内の空気を吸い込み、吹き出すファンと、吸い込んだ空気を温め、または冷却する熱交換器と、ファンを制御する制御基板とを備えている。また、室内機10は、吸い込み温度(室内温度)を計測する温度センサと、吹き出し温度を計測する温度センサとを備えている。
【0013】
室内機10の制御基板は、ユーザが操作するリモートコントローラ12と通信を行い、リモートコントローラ12から指示を受けて、室内機10を運転または停止し、運転モード、温度、風量等の設定や変更を行う。また、室内機10の制御基板は、集中コントローラ13と通信を行い、設定温度や設定風量、計測した室内温度等の運転に関連する情報を提供する。
【0014】
室外機11は、外気を吸い込み、吹き出すファンと、吸い込んだ空気を温め、または冷却する熱交換器と、室内機10と室外機11との間で熱媒体としての冷媒を循環する圧縮機と、ファンおよび圧縮機を制御する制御基板と、各種のセンサとを備えている。
図1に示す室外機11は、冷媒を送る室内機を複数台接続することができるマルチ型の室外機である。
【0015】
室外機11の制御基板は、リモートコントローラ12から指示を、室内機10を介して受け付け、その指示により室外機11を運転または停止し、ファンおよび圧縮機を制御する。各種のセンサは、外気温を計測する温度センサ、圧縮機に供給する電流を計測するセンサ、冷媒の流量を計測するセンサ、冷媒の圧力を計測するセンサ等を含む。
【0016】
リモートコントローラ12は、室内機10に対して、室内機10の運転または停止を指示する。また、リモートコントローラ12は、運転モード、温度、風量等の設定や変更を指示する。
【0017】
集中コントローラ13は、システム全体を制御し、各室内機10の制御基板および各室外機11の制御基板と通信を行い、制御に必要な情報を取得し、必要な指示を与える。
【0018】
図2は、室内機と室外機と集中コントローラとの接続状態を例示した図である。室内機10と室外機11とは、冷媒配管14により接続される。室内機10および室外機11と集中コントローラ13とは、通信網15で結ばれる。
【0019】
図2では、空気調和システムは、1本の冷媒配管14で繋がっている4台の室内機10と1台の室外機11とから構成される冷媒系統を4つ備えている。全ての室内機10と室外機11と集中コントローラ13は、通信網15で繋がっている。
【0020】
図2に示した冷媒系統の数、1つの冷媒系統を構成する室内機10や室外機11の数は一例であり、これら以外の数であってもよい。また、通信網15の通信手段は、各機器間で通信を行うことができればいかなる手段であってもよい。したがって、各機器間の通信は、通信ケーブル等を使用した有線通信であってもよいし、Wi-Fi等を使用した無線通信であってもよい。
【0021】
各室内機10および各室外機11は、通信網15上で通信相手を識別するための識別情報が割り当てられる。識別情報は、アドレスであって、他の機器と重ならないID番号等である。識別情報は、システムの管理者が手動で設定することができる。
図2では、16台の室内機10の各々に対し、ID番号としてi11~i44が割り当てられ、4台の室外機11の各々に対し、ID番号としてo1~o4が割り当てられている。
【0022】
冷媒は、室外機11の圧縮機により断熱圧縮されて高温になり、吐出される。暖房として使用する場合、圧縮機から出る高温の冷媒が、冷媒配管14を通して室内機10の熱交換器へ供給される。冷房として使用する場合、圧縮機から出る高温の冷媒は、室外機11の熱交換器へ供給され、外気との熱交換により冷却される。その後、冷媒は、膨張弁等により断熱膨張され、温度がさらに下げられる。このようにして低温となった冷媒が、冷媒配管14を通して室内機10の熱交換器へ供給される。
【0023】
室内機10は、供給された冷媒とファンにより吸い込まれた空気とを熱交換器で熱交換を行い、温かい空気または冷却した空気を室内に吹き出す。熱交換された冷媒は、冷媒配管14を通して再び室外機11へ戻される。暖房に使用された冷媒は、室外機11の膨張弁等で断熱膨張されて温度が下げられ、熱交換器で外気と熱交換された後、圧縮機へ供給される。冷房に使用された冷媒は、圧縮機へ供給される。冷媒は、このように冷媒配管14で結ばれた室内機10と室外機11との間を循環する。
【0024】
図3は、集中コントローラのハードウェア構成を例示した図である。集中コントローラ13は、CPU20と、入出力部21と、通信部22と、RAM23と、メモリディスク24と、電源部25とを含んで構成される。CPU20等は、バス26に接続され、バス26を介して互いに情報のやりとりを行う。
【0025】
CPU20は、ワンチップマイコンで、システムの運転制御を実行する。入出力部21は、表示パネルと入力ボタンとを有し、ユーザが設定や指示を行うための入力を受け付け、現在の室内機10の運転状態等を表示する。
【0026】
メモリディスク24は、OS(Operating System)、運転制御を行うためのプログラム、ドライバソフトウェア、データ通信により取得したデータ等を格納する。RAM23は、CPU20に対して作業領域を提供する。このため、CPU20は、上記のプログラムをメモリディスク24から読み出してRAM23に展開し、それを実行することにより、システムの運転制御を実行する。
【0027】
通信部22は、通信網15で繋がれた各室内機10や各室外機11とデータ通信を行う。電源部25は、コンセント等から電源の供給を受け、交流電流をCPU20等で使用する直流電流に変換し、CPU20等へ供給する。
【0028】
入出力部21は、室内機10(個別)毎の運転設定のほか、複数の室内機10の設置空間を表す室内(エリア)毎や、エリアを2以上の空間(ブロック)に分け、ブロック毎の運転設定も行うことができる。また、入出力部21は、冷媒系統毎やリモートコントローラ12毎の運転設定を行うこともできる。
【0029】
運転設定には、冷房/暖房の選択、温度、風量、風向の設定等が含まれる。入出力部21は、それらの運転設定を行うために、Enterボタン、Selボタン、Escボタン、方向ボタンを含む。ユーザは、これらのボタンを使用し、運転設定に必要な項目の選択や入力等を行う。
【0030】
図4は、複数の室内機をグループ化し、各グループに指定した例を示した図である。集中コントローラ13は、エリアに含まれる室内機を指定して登録し、エリアをさらに各ブロックに分け、各ブロックに含まれる室内機を指定して登録し、登録されたエリア単位およびブロック単位で運転を制御する機能を有する。この例では、エリアとブロックの2段階でグループ化を設定することができるが、これに限られるものではない。
【0031】
図4に示す例では、エリア40に、16台の室内機i11~i14、i21~i24、i31~i34、i41~i44が指定されている。各室外機は、4台の室内機と冷媒配管14で接続されている。
【0032】
図4に示す例では、エリア40が3つのブロック41~43に分けられている。ブロック41には、室内機i11~i14、i21~i24の8台が指定されている。ブロック42には、室内機i31~i34、i41、i43の6台が指定されている。ブロック43には、室内機i42、i44の2台が指定されている。
【0033】
集中コントローラ13は、エリア40に指定された室内機や、各ブロック41~43に指定された室内機を管理するため、エリア・ブロック管理情報を保持する。
図5は、エリア・ブロック管理情報の一例を示した図である。エリア・ブロック管理情報は、エリア毎に割り当てられたエリアを識別するエリア識別情報と、エリアに含まれる各ブロックを識別するブロック識別情報とを対応付けて保持する。
図5では、エリア識別情報が、エリア40に対して「エリア1(第1オフィス)」とされている。また、ブロック識別情報が、ブロック41に対して「ブロック1(北)」、ブロック42に対して「ブロック2(東)」、ブロック43に対して「ブロック3(西)」とされている。
【0034】
エリア・ブロック管理情報は、各ブロック識別情報に対応付けて室内機を識別するID番号を保持する。
図5に示す例では、ブロック1(北)に、室内機i11~i14、i21~i24が対応付けられている。
【0035】
集中コントローラ13は、このようなエリア・ブロック単位で運転を制御する機能のほか、商業施設等に設置される場合、空間毎に消費電力料金を按分計算する機能を有してもよい。
【0036】
ところで、ユーザは、休日出勤や早朝出勤した場合、一部の室内機10および室外機11のみを運転させ、空調を行う。これでは、室内の温度が設定温度に到達するまでには長時間を要し、運転した室内機10および室外機11は、運転効率に関係なく、大きな消費電力で運転される。
【0037】
そこで、設定温度に到達するまでに要する時間を短縮し、消費電力を低減するべく、集中コントローラ13を次のように構成する。
【0038】
図6は、集中コントローラ13の機能構成を例示したブロック図である。集中コントローラ13は、メモリディスク24に格納されたプログラムをRAM23に読み出し実行することで、各種の機能を機能手段として実現する。このため、集中コントローラ13は、機能手段として、取得手段30と、設定手段31と、演算手段32と、判断手段33と、制御手段34と、通知手段35とを含んで構成される。このとき、集中コントローラ13は、RAM23やメモリディスク24を記憶手段36として使用する。
【0039】
ここでは、集中コントローラ13がこれらの機能手段を備えるものとして説明するが、これに限られるものではなく、空気調和システムが繋がるネットワークを介して接続されたサーバ装置等がこれらの機能手段を備えていてもよい。
【0040】
取得手段30は、複数の室内機10と1以上の室外機11のうち運転指示を受けて運転している室内機10および室外機11から運転に関連する情報を取得する。運転に関連する情報は、室内機10および室外機11に対して設定された設定情報や、室内機10および室外機11に搭載された各種センサの出力値等である。
【0041】
設定情報は、リモートコントローラ12により室内機10に対して設定された温度、風量、風向、運転モードや、室外機11に対して設定された圧縮機設定値等である。各種センサの出力値は、室温、吹き出し温度、外気温、圧縮機電流値、冷媒流量、冷媒圧力等である。
【0042】
取得手段30は、一定の時間間隔でこれらの情報を取得し、記憶手段36に一定期間分の情報を取得時刻とともに格納する。
【0043】
設定手段31は、エリアやブロックの指定、各ブロックを構成する室内機の指定を受け付け、エリアとブロックと室内機の各識別情報を対応付け、エリア・ブロック管理情報として記憶手段36に格納することで登録する。
【0044】
演算手段32は、取得手段30により取得され、記憶手段36に格納された情報を用いて、運転中の室内機10および室外機11の消費電力を計算し、消費電力から運転効率を計算する。
【0045】
判断手段33は、演算手段32により計算された運転効率に基づき、運転中の室内機10および室外機11が非効率運転か否かを判断する。非効率運転か否かは、運転効率が閾値未満である状態が一定時間以上継続している室内機および室外機が存在するか否かにより判断することができる。非効率運転と判断された場合、運転中の室内機10および室外機11のみでは運転効率が低いことを示している。
【0046】
制御手段34は、非効率運転と判断された場合、運転効率を上げるために、現在の運転設定を少なくとも1つの他の室内機を含めた運転設定に変更し、当該他の室内機に対して運転を指示する。運転を指示する他の室内機は、運転指示を受けていない運転停止中の室内機である。このように、任意の室内機に加えて、他の室内機を連動させて運転することを連動運転と呼ぶ。
【0047】
制御手段34は、任意の室内機10に対して運転設定が入力され、その室内機10から運転設定変更の通知を受けた場合、連動運転を解除する。このとき、制御手段34は、通知を送信した室内機10以外の連動運転する室内機10を停止する。
【0048】
また、運転中の任意の室内機10が運転停止の指示を受け付けた場合、その室内機10は、制御手段34に対して運転停止の指示を受けた旨を通知し、自身の運転を停止する。制御手段34は、その通知を受けて、連動運転している室内機10の運転停止を指示し、連動運転を解除する。
【0049】
通知手段35は、エリアに含まれる室内機10の全てが運転された後、一定時間が経過しても非効率運転が続く場合、ユーザに対して通知する。通知は、例えば入出力部21の表示画面に、「部屋が冷えません」、「部屋が暖まりません」、「窓が開いていませんか」等の注意を喚起するメッセージを表示させることにより行われる。なお、通知は、メッセージの表示のほか、音声により行ってもよい。
【0050】
図7は、集中コントローラ13による運転制御の処理の一例を示したフローチャートである。集中コントローラ13は、ステップS1で電源が投入され、起動すると、ステップS2で空調ネットワークに接続する全ての室内機10および室外機11と通信を開始し、接続を確認する。取得手段30は、この通信において、全ての室内機10および室外機11から基本情報を取得する。基本情報は、空調ネットワーク上に存在する冷媒系統の数、各冷媒系統の室内機と室外機の構成、各機器のID番号、容量、型式等のシステム構成情報である。取得手段30は、取得した基本情報を記憶手段36格納する。
【0051】
集中コントローラ13は、各室内機10および各室外機11と常時通信し、取得手段30は、各室内機10および各室外機11の運転に関連する情報を取得する。制御手段34は、取得手段30により取得された情報から各機器の運転状態を把握し、任意の室内機10へ運転設定指令を送信して、自動制御する通常処理状態に入る。通常処理状態に入ると、空調空間を指定するための室内機のグループ登録が実施可能となる。
【0052】
判断手段33は、ステップS3で、空調空間の登録または変更を実施するかを判断する。判断手段33は、ユーザが入出力部21を使用して室内機10のグループ登録の機能を選択したか否かにより判断する。実施すると判断した場合、ステップS4へ進み、設定手段31がその選択を受け付け、室内機一覧または現在のエリアとブロックの登録状態を表示する。室内機一覧は、グループ登録が未設定の場合に表示され、現在のエリアとブロックの登録状態は、グループ登録が過去に実施された場合に表示される。実施しないと判断した場合、ステップS6へ進む。
【0053】
新規にグループ登録を行う場合、ユーザは、ブロック名を入力し、表示された室内機一覧からそのブロックを構成する室内機を選択する。次に、ユーザは、エリア名を入力し、エリアを構成するブロックを選択する。記憶手段36は、予めエリアの配置図(レイアウト図)を格納することができ、設定手段31は、室内機一覧の表示の際、各室内機をレイアウト図に重畳させ、どの位置にどの室内機が設置されているかを把握しやすくすることができる。
【0054】
現在のエリアとブロックの登録状態を変更する場合、ユーザは、既存のグループ登録を削除し、再度登録する。設定手段31は、入力されたエリア名やブロック名、各ブロックにつき選択された室内機の識別情報を対応付けて記憶手段36に格納することにより登録する。
【0055】
ユーザは、グループ登録を行った後、連動運転条件を選択または入力する。連動運転条件は、システムの運転に関して優先すべき事項として設定された条件である。連動運転条件としては、消費電力を優先した条件「消費電力優先」や、設定温度等の設定条件に到達するまでの時間を優先した条件「速さ優先」等が挙げられる。ステップS5では、設定手段31が、ユーザにより選択された連動運転条件を記憶手段36に格納することで連動運転条件を設定する。
【0056】
ステップS6では、時間計測手段としてのタイマにより経過時間を計測し、定期的に行う通信時刻に達したかどうかを判断する。達した場合、ステップS7へ進み、達していない場合、ステップS11へ進む。ステップS7では、取得手段30が、各室内機10および各室外機11から運転に関連する情報を取得する。このとき、取得手段30は、運転に関連する情報として、運転のON/OFF、運転モード、設定温度、設定風量、圧縮機のON/OFF、圧縮機設定値、各種センサの出力値等を取得する。なお、運転に関連する情報は、上記に限定されず、運転効率の計算に利用可能な他の情報であってもよい。取得手段30は、取得したこれらの情報を記憶手段36に一定期間分保存する。その際、取得手段30は、計測した時刻の情報とともに保存する。
【0057】
ステップS8では、演算手段32が、保存された情報を用いて、運転中の室内機10および室外機11の消費電力を計算し、消費電力から運転効率を計算する。演算手段32は、保存された情報のうち、運転中の室外機11内の全圧縮機の電流合計値As(A)と、電源電圧V(V)と、力率φとを使用し、次の式1により消費電力Ws(kW)を計算する。力率φは、実際に消費される電力(有効電力)と、実際に消費されない電力(無効電力)を含めた、交流の電圧と電流の積で表される皮相電力との比である。
【0058】
【0059】
また、運転中の各室外機11の製造熱量をQ(kW)とすると、Qは、運転中の室外機11内の全圧縮機の冷媒流量の合計値G(kg/s)と、室外機11出口の冷媒の比エンタルピーHo(kJ/kg)と、室外機11入口の冷媒の比エンタルピーHi(kJ/kg)とを用いて、次の式2により計算される。
【0060】
【0061】
上記式2中、Hoは、室外機11出口の液管温度と圧力から換算された比エンタルピーで、Hiは、室外機11入口のガス管エンドと圧力から換算された比エンタルピーである。現在の運転効率Cは、上記式1により計算されたWsと、上記式2により計算されたQとを用い、次の式3により計算される。
【0062】
【0063】
また、演算手段32は、現在の空調負荷D(kW)も近似計算する。Dは、冷房負荷Dcと暖房負荷Dhとがあり、DcとDhは、室内機10の吸い込み温度センサの出力値Ti(℃)と、室内機10の吹き出し温度センサの出力値Tb(℃)と、室内機10の風量B(kg/s)とし、空気の比熱を1(kJ/kg℃)とすると、次の式4により計算される。
【0064】
【0065】
計算された各値は、記憶手段36に、取得された情報とともに保存される。
【0066】
ステップS9では、判断手段33が、演算手段32により計算された運転効率に基づき、非効率運転か否かを判断する。非効率運転か否かは、Cの値が予め設定した閾値未満(あるいは閾値以下)である状態が一定時間(X時間)以上続いている室外機11が存在するか否かにより判断する。Xは、連動運転条件により相違し、例えば「速さ優先」では2分、「消費電力優先」では5分とすることができる。なお、これらの時間は一例であり、これらの値に限定されるものではない。
【0067】
ステップS9で非効率運転と判断された場合、ステップS10へ進み、効率的な運転と判断された場合、ステップS11へ進む。ステップS10では、制御手段34が運転設定を変更し、連動運転を実施する室内機10を選択する。制御手段34は、選択した室内機10に対して運転を指示する。
【0068】
図8は、連動運転について説明する図である。ユーザは、自分がいる場所に近い室内機i14に対し、リモートコントローラ12により運転を指示する。その際、ユーザは、所望の温度を設定する。運転指示は、室内機i14と同じ冷媒系統の室外機o1へも送られ室内機i14とともに室外機o1の運転が開始される。
【0069】
室内機i14および室外機o1は、広いエリア40内の温度をユーザが設定した設定温度に近づけるため、高負荷で運転される。このため、判断手段33は、非効率運転と判断する。そして、制御手段34は、運転設定を変更して、少なくとも1台の停止中の室内機の運転を指示する。
【0070】
制御手段34は、記憶手段36にレイアウト図が保存されている場合、レイアウト図を参照して、室内機i11~i13、i21~i24および室外機o2に対して運転を指示する際、運転中の室内機i14に向けて送風するように風向を指示する。これにより、ユーザが設定した設定温度に早く到達させることができる。
【0071】
判断手段33は、定期的に非効率運転か否かを判断する。ブロック41内の室内機i11~i14、i21~i24および室外機o1、o2を運転しても、まだ非効率運転と判断された場合、制御手段34は、運転設定を変更して、ブロック41が含まれるエリア40内の停止中の室内機の運転を指示する。これにより、エリア40内の全ての室内機および室外機が運転される。
【0072】
このように、設定された連動運転条件が「消費電力優先」の場合、制御手段34は、消費電力を出来るだけ少なくするために、室内機の数が少なくグループの順にグループを選択し、選択したグループ内の停止中の室内機に対して運転を指示することができる。なお、冷媒系統毎にグループ化されていれば、冷媒系統の停止中の室内機の運転を指示し、それでも非効率運転と判断された場合、ブロック内の停止中の室内機の運転を指示することができる。
【0073】
一方、設定された連動運転条件が「速さ優先」の場合、制御手段34は、室内を速く設定温度に近づけるため、より多くの室内機を運転するべく、エリア40内の停止中の室内機および室外機の運転を指示する。制御手段34は、エリア内の全ての室内機および室外機を運転し、非効率運転でない場合、運転する室内機および室外機を減らすことができる。したがって、制御手段34は、室内機の数が多いグループの順にグループを選択し、選択したグループ内の停止中の室内機に対して運転を指示することができる。
【0074】
判断手段33は、制御手段34が連動運転を実施する室内機10を選択する前に、現在運転中の室内機10の負荷Dから、非効率運転の原因が無駄運転なのか、能力不足なのかを判断する。無駄運転の場合、室内機10を追加して運転しても、設定温度に到達するまでの時間が短縮されず、余分な電力を消費するからである。
【0075】
図9は、運転中の一部の室内機を無駄運転と判断し、その一部の室内機を停止した例を示した図である。判断手段33は、演算手段32により計算された、運転中の一部の室内機の負荷Dが、X時間以上0以下の状態が続いているか否かにより、無駄運転か能力不足かを判断する。室内機の負荷DがX時間以上0以下の状態が続いている場合、そのブロックの空調に全く寄与していないため、無駄運転と判断することができる。
【0076】
ブロック42内の全ての室内機i31~i34、i41、i43および室外機o3、o4を運転している場合に、室温が設定温度に達すると、例えば室外機o4の圧縮機が頻繁に運転停止するサーモオフ状態になり、室外機o4に繋がる室内機i41、i43もほぼ負荷が0となる。
【0077】
判断手段33は、室内機i41、i43の負荷がほぼ0の状態がX時間続いていること(運転停止状態)を検知すると、室内機i41、i43および室外機o4が無駄運転と判断する。これを受けて、制御手段34は、無駄運転している室内機i41、i43および室外機o4の運転停止を指示する。室内機i41、i43および室外機o4は、制御手段34からの指示を受けて、運転を停止する。
【0078】
運転中の一部の室内機の負荷Dが閾値以上の状態がX時間以上続いている場合、負荷が大きすぎ、非効率運転であるため、判断手段33は、能力不足と判断することができる。
判断手段33により能力不足と判断された場合、制御手段34は、以下の制御を実行する。
【0079】
制御手段34は、連動運転条件が「消費電力優先」である場合、運転中の室内機が属するブロック内に、その室内機と同じ冷媒系統の停止中の室内機が存在するか否かを確認する。存在する場合、制御手段34は、その停止中の室内機の設定温度を運転中の室内機の平均設定温度に設定し、その停止中の室内機に対して運転を指示する。
【0080】
制御手段34は、同じブロック内で同じ冷媒系統の停止中の室内機が存在しないときにのみ、同じブロック内で別の冷媒系統の停止中の室内機が存在するか否かを確認する。存在する場合、制御手段34は、別の冷媒系統の停止中の室内機の設定温度を運転中の室内機の平均設定温度に設定し、その停止中の室内機に対して運転を指示する。
【0081】
ブロック内の全ての室内機を運転しても、まだ能力不足と判断される場合、制御手段34は、そのブロックが属するエリア内の停止中の室内機の運転を指示する。この場合も、制御手段34は、その停止中の室内機の設定温度を運転中の室内機の平均設定温度に設定する。これにより、エリア内の全ての室内機が運転される。
【0082】
制御手段34は、連動運転条件が「速さ優先」である場合、エリア内の停止中の室内機が存在するか否かを確認する。存在する場合、制御手段34は、エリア内の停止中の室内機に対して運転を指示する。これにより、エリア内の全ての室内機が運転される。
【0083】
制御手段34は、判断手段33が非効率運転ではないと判断した場合、エリアより室内機の数が少ない、運転指示を受けた室内機が属するブロック以外のブロックに属する室内機および室外機の運転停止を指示する。これにより、運転する室内機の数を減らす。
【0084】
制御手段34は、ブロックに属する室内機を運転しても、判断手段33が非効率運転ではないと判断した場合、運転指示を受けた室内機のみの運転とし、それ以外の室内機の運転停止を指示する。このとき、運転指示を受けた室内機と接続する室外機以外に運転中の室外機が存在する場合、制御手段34は、その運転中の室外機の運転停止も指示する。
【0085】
連動運転条件が「消費電力優先」の場合、ユーザが起動した1台の室内機から同じ冷媒系統の全ての室内機へ大きく増加させるのではなく、1台ずつ増加させてもよい。ブロック内の全ての室内機やエリア内の全ての室内機へ増加させる際も同様で、同じブロック内の別の冷媒系統の室内機を1台ずつ、エリア内の別のブロック内の室内機を1台ずつ増加させてもよい。
【0086】
非効率運転か否かの判断は、X時間毎に実施され、連動運転条件が「消費電力優先」の場合でも非効率運転でなくなったとき、連動運転する室内機を減少させることができる。連動運転する室内機を減少させる制御は、上記の室内機を増加させる制御とは逆の制御となり、エリア内の全ての室内機、ブロック内の全ての室内機、ブロック内のユーザが起動した室内機と同じ冷媒系統の全ての室内機、ユーザが起動した室内機の順に減少させる。
【0087】
集中コントローラ13は、エリアのレイアウト図の情報を保持することができ、レイアウト図に重ねて各室内機を表示させることができる。この場合、制御手段34は、各室内機の設置位置が分かるので、連動運転する際の停止中の室内機の設定温度を、運転中の室内機の平均設定温度ではなく、最も近い運転中の室内機の設定温度に設定することができる。
【0088】
エリア内の全ての室内機を運転した後、一定時間が経過しても能力不足による非効率運転の状態が続く場合、通知手段35が、ユーザに対して注意を喚起する通知を行う。この場合の一定時間は、例えば5×X時間等の非効率運転か否かの判断を行う時間間隔より長い時間間隔とすることができる。なお、5×X時間は一例であるので、これに限られるものではない。
【0089】
再び
図7を参照して、ステップS11では、判断手段33が、連動運転を実施中にユーザによるリモートコントローラ12の操作があったか否かを判断する。判断手段33は、操作を受けた室内機からの操作を受けた旨の通知の有無により、操作の有無を判断することができる。操作がない場合、ステップS3へ戻り、再び非効率運転か否かの判断等を実施する。操作があった場合、ステップS12で、判断手段33が、操作を受けた室内機が連動運転を実施している室内機かどうかを判断する。
【0090】
連動運転実施中の室内機ではない場合、ステップS3へ戻り、再び非効率運転か否かの判断等を実施する。連動運転実施中の室内機である場合、ステップS13へ進む。連動運転実施中の室内機か否かは、操作を受けた室内機が、連動運転実施中のエリア、ブロック、冷媒系統のいずれかに属する室内機か否かにより判断することができる。
【0091】
ステップS13では、制御手段34が、受け付けた操作の内容に従って運転設定の変更等を行い、関連する全ての連動制御を解除する。具体的には、制御手段34は、操作を受けた室内機を除く、連動運転のために運転を指示した全ての室内機に対し、運転の停止を指示する。ユーザの操作が室内機の停止である場合、操作を受けた室内機を含め、連動運転のために運転を指示した全ての室内機の運転の停止を指示する。
【0092】
制御手段34は、無駄運転と判断され、運転を停止した室内機が、ユーザの操作により運転された場合、同じように無駄運転と判断されれば運転が停止されるので、この段階では何も制御しない。
【0093】
ステップS13で連動運転を解除した後は、再びステップS3へ戻り、非効率運転か否かを判断し、連動運転を実施することができる。
【0094】
以上のようにして、ユーザが運転を指示した室内機だけではなく、他の室内機を連動運転することで、設定温度に到達するまでに要する時間を短縮し、運転効率を上げ、消費電力を低減することができる。また、運転効率を上げ、連動運転条件に応じた制御を実現することができるので、効率的かつ空調需要条件を満たす電力デマンド運転制御を行うことが可能となる。
【0095】
これまで本発明の空気調和システム、方法およびプログラムについて上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。したがって、上記のプログラムが記録された記録媒体等のプログラム製品も、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0096】
10…室内機
11…室外機
12…リモートコントローラ
13…集中コントローラ
14…冷媒配管
15…通信網
20…CPU
21…入出力部
22…通信部
23…RAM
24…メモリディスク
25…電源部
26…バス
30…取得手段
31…設定手段
32…演算手段
33…判断手段
34…制御手段
35…通知手段
36…記憶手段
40…エリア
41~43…ブロック