(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ウコン根茎からクルクミノイドを分離する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20230728BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230728BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L33/105
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021171369
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507000637
【氏名又は名称】義美食品股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521461188
【氏名又は名称】高志明
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン クン ペイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ ヤー チー
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-529506(JP,A)
【文献】特開2011-190228(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111440056(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112979445(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112457208(CN,A)
【文献】特表2015-508754(JP,A)
【文献】特表2015-527361(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108047016(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108339086(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111875488(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウコン根茎からクルクミノイドを分離する方法であって、
(A)90%から100%の範囲のエタノール濃度を有する第1エタノール溶液を用いて、100rpmから300rpmの範囲の攪拌速度で、ウコン根茎に対して抽出を行い、エタノールによって抽出した産物を得る、ステップAと、
(B)90%から100%の範囲のエタノール濃度を有する第2エタノール溶液を用いて、2℃から8℃の範囲の温度、及び40rpmから300rpmの範囲の攪拌速度で、前記エタノールによって抽出した産物を結晶化させ、クルクミノイドを得る、ステップBと、を含む方法。
【請求項2】
前記ステップAにおいて、前記第1エタノール溶液の量の範囲、前記ウコン根茎のグラム当たり5mLから10mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップAにおいて、前記抽出は、10℃から100℃の範囲の温度及び15分から150分の範囲の期間で行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップBにおいて、前記第2エタノール溶液の量の範囲は、前記エタノールによって抽出した産物のグラム当たり1gから20gである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップBにおいて、前記結晶化は、3℃から6℃の範囲の温度及び12時間から72時間の範囲の期間で行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記クルクミノイドは、クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、デメトキシクルクミン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップAの前に、12時間から48時間の範囲の期間をかけ、前記ウコン根茎を凍結乾燥することをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記凍結乾燥は、前記ウコン根茎を-20℃から-10℃の範囲の温度に凍結することと、30℃から40℃の範囲の第1上昇温度で3時間から6時間の範囲の第1期間、及び50℃から60℃の範囲の第2上昇温度で18時間から21時間の範囲の第2期間をかけ、前記ウコン根茎を乾燥することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップAにおいて、前記抽出は、95%のエタノール濃度を有する前記第1エタノール溶液を用いて、280rpmの攪拌速度で行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップAにおいて、前記第1エタノール溶液はリサイクルされたエタノール溶液である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップBの前に、前記エタノールによって抽出した産物を、-20℃から8℃の範囲の温度で24時間の期間をかけて放置することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップBの後に、20メッシュから100メッシュの篩いに掛けて、前記クルクミノイドを篩い分けることをさらに含む、請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クルクミノイドを分離する方法に関し、より具体的には、ウコン根茎からクルクミノイドを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコン(Curcuma longa L.)は、ショウガ科(Zingiberaceae)ウコン属(Curcuma)の多年草であり、高さは、通常1から1.5メートルである。ウコンの根は、太くて、先端は拡張した塊状になっている。ウコンの葉は、長楕円形又は楕円形で、先端は短く尖っている。ウコンの苞葉は、卵形又は長楕円形で、先端は丸みを帯び、淡緑色である。ウコンの花冠は、黄色みを帯びている。ウコンは、主に、インド南東部、ジャマイカ、中国、バングラデシュ、カリブ海諸島、南アメリカなどに分布している。
【0003】
ウコンの主な有用部位は、その根茎である。民間療法において、ウコンには、血行促進及び生理痛の緩和の効果がある。さらに、ウコンの主な有効成分の一つであるクルクミノイド(クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンを含む)は、人体に様々な有益効果があることが報告されている。その有益効果は、抗酸化作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、抗真菌作用、及び抗がん作用を含む。従って、クルクミノイドの大量生産は、当業者にとっては主要な研究焦点となっている。
【0004】
従来のクルクミンを製造する方法は、様々な有機溶剤(例えば、アセトンやイソプロパノール)による抽出、及び酸性及び/又はアルカリ性溶剤による加水分解(例えば、中国特許第102617316号、及び中国特許出願公開第1566215号を参照)を含む。しかしながら、これらの溶剤の使用は、環境や人の健康に害を及ぼす可能性がある。また、いくつかの溶剤の抽出効率が悪い。そこで、クルクミノイドの収率(yield)を向上させるため、複数回の抽出を行うこと、又は超音波抽出(ultrasonic extraction)及び超臨界流体抽出(supercritical fluid extraction,SFE)をさらに行うことが必要である(例えば、中国特許第105669410号、及び中国特許第1150924号を参照)が、これらの方法は煩雑で時間がかかるだけではなく、産業上の実用的応用にかかるコストも増加する。
【0005】
従って、収率が高く、操作手順が簡単で、コストが低いクルクミノイドを製造する方法の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本開示の目的は、簡単なプロセスでウコン根茎からクルクミノイドを効率的に分離する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、ウコン根茎からクルクミノイドを分離する方法が提供される。該方法は、以下のステップを含む。
【0008】
(A)90%から100%の範囲のエタノール濃度を有する第1エタノール溶液を用いて、100rpmから300rpmの範囲の攪拌速度で、ウコン根茎に対して抽出を行い、エタノールによって抽出した産物を得る、ステップA。
【0009】
(B)90%から100%の範囲のエタノール濃度を有する第2エタノール溶液を用いて、2℃から8℃の範囲の温度、及び40rpmから300rpmの範囲の攪拌速度で、エタノールによって抽出した産物を結晶化させ、クルクミノイドを得る、ステップB。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示によるウコン根茎からクルクミノイドを分離する方法は、以下のステップを含む。
【0011】
(A)90%から100%の範囲のエタノール濃度を有する第1エタノール溶液を用いて、100rpmから300rpmの範囲の攪拌速度で、ウコン根茎に対して抽出を行い、エタノールによって抽出した産物を得る、ステップA。
【0012】
(B)90%から100%の範囲のエタノール濃度を有する第2エタノール溶液を用いて、2℃から8℃の範囲の温度、及び40rpmから300rpmの範囲の攪拌速度で、エタノールによって抽出した産物を結晶化させ、クルクミノイドを得る、ステップB。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態では、ステップAにおいて、抽出は、95%のエタノール濃度を有する第1エタノール溶液を用いて、280rpmの攪拌速度で行う。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態では、ステップBにおいて、結晶化は、95%のエタノール濃度を有する第2エタノール溶液を用いて、4℃の温度、及び60rpmの攪拌速度で行う。
【0015】
本開示の方法では、様々なウコン栽培品種を使用することができる。本開示のいくつかの実施形態では、ウコン栽培品種は、赤ウコン、黄ウコン、ガジュツ(Curcuma zedoaria、ホワイトターメリックとしても知られる)、ジャワウコン(Curcuma xanthorrhiza)、及びそれらの組み合わせを含む。本開示の例示的な実施形態では、ウコンの栽培品種は、赤ウコンである。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態では、ステップAにおいて、第1エタノール溶液の量の範囲は、ウコン根茎のグラム当たり5mLから10mLである。本開示の例示的な実施形態では、ステップAにおいて、第1エタノール溶液の量は、ウコン根茎のグラム当たり5mLである。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態では、ステップAにおいて、抽出は、10℃から100℃の範囲の温度及び15分から150分の範囲の期間で行う。本開示の例示的な実施形態では、ステップAにおいて、抽出は、25℃の温度及び30分の期間で行う。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態では、ステップBにおいて、第2エタノール溶液の量の範囲は、エタノールによって抽出した産物のグラム当たり1gから20gである。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態では、ステップBにおいて、結晶化は、3℃から6℃の範囲の温度及び12時間から72時間の範囲の期間で行う。本開示の例示的な実施形態では、ステップBにおいて、結晶化は、4℃の温度及び24時間の期間で行う。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態では、クルクミノイドは、クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、デメトキシクルクミン、又はそれらの組み合わせを含む。本開示の例示的な実施形態では、クルクミノイドは、クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンの組み合わせを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ステップAで用いられた第1エタノール溶液は、抽出から得られたリサイクルされたエタノール溶液であり、本開示の方法は、ステップBの前に、エタノールによって抽出した産物を、-20℃から8℃の範囲の温度で24時間の期間をかけて放置すること、及びステップBの後に、20メッシュから100メッシュの篩いに掛けて、クルクミノイドを篩い分けること、をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ステップAの前に、12時間から48時間の範囲の期間をかけ、ウコン根茎を凍結乾燥することをさらに含む。具体的には、凍結乾燥は、脱イオン水で洗浄したウコン根茎を-20℃から-10℃の範囲の温度に凍結した後、30℃から40℃の範囲の第1上昇温度で3時間から6時間の範囲の第1期間をかけ、そして、50℃から60℃の範囲の第2上昇温度で18時間から21時間の範囲の第2期間をかけてウコンを乾燥することによって行う。
【0023】
以下、本開示の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、本開示を限定する意図で示すものではないことを理解されたい。
【0024】
実施例:
一般的な実験材料:
1. ウコン根茎の粉末の調製
以下の実施例で使用されたウコン根茎の粉末は、台湾台南市左鎮区で購入した新鮮な赤ウコン根茎を脱イオン水で洗浄した後、24時間凍結乾燥し、粉砕機(メーカー:Hsiang Tai Machinery Industry Co., Ltd.; 型番:SM-3C)を使用して粉砕し、目開き0.18mmの篩いを使用して篩い分けることによって調製された。
【0025】
一般的な実験手順:
1. クルクミノイドの定量分析
以下の実施例において、各実験サンプル中のクルクミノイド(クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンを含む)の含有量は、台湾衛生福利部が2015年3月19日に公告した「カプセル及び錠状食品中のクルクミノイドの試験方法」に記載された方法を参考し、ウォーターズコーポレーションのACQUITY UPLC(登録商標)フォトダイオードアレイ(photodiode array,PDA)eλ検出器を使用して超高速液体クロマトグラフィー(ultra performance liquid chromatography,UPLC)分析を行うことによって測定された。ULPC分析を行う際の操作条件を以下の表1に示す。
【0026】
【0027】
また、比較のために、Sigma-Aldrich社から購入した適量のクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンを、それぞれ100%のメタノールに溶解し、対照基準としての0.1μg/mLから20μg/mLの範囲の濃度を有するクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミン溶液を調製して、UPLC分析にかけた。
【0028】
クルクミノイドの総含有量は、クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンの含有量を合計することによって計算される。
【0029】
実施例1:ウコン(Curcuma longa L.)根茎のエタノールによって抽出した産物の調製
A.異なる抽出方法によるクルクミノイド総含有量への影響
一般的な実験材料のセクション1で調製したウコン根茎の粉末を、1つの実験群(すなわち、実験群1)及び2つの比較実験群(すなわち、比較実験群1及び比較実験群2)に分け、以下の表2に示す抽出工程にかけた。
【0030】
実験群1のウコン根茎の粉末の抽出工程は、以下のステップに従って行った。まず、30gのウコン根茎の粉末を、150mL、95%のエタノールに加えて十分に混ぜ合わせた。次に、温度25℃、攪拌速度280rpmで、30分の期間をかけて、抽出を行った。
【0031】
比較実験群1のウコン根茎の粉末の抽出工程は、以下のステップに従って行った。まず、30gのウコン根茎の粉末を、150mL、95%のエタノールに加えて十分に混ぜ合わせた。次に、温度25℃で、超音波処理器(Taiwan Supercritical Technologies Co., Ltd.から購入、型番:ES-600N)を用いて、25KHzから30KHzの周波数で、30分の期間をかけて、超音波抽出を行った。
【0032】
比較実験群2のウコン根茎の粉末の抽出工程は、以下のステップに従って行った。まず、30gのウコン根茎の粉末を、超臨界流体抽出システム(Taiwan Supercritical Technologies Co., Ltd.から購入、型番:OV-SCF-B)の抽出容器に入れた。次に、抽出容器に超臨界CO2を導入し、共溶剤として95%のエタノールを加えた。その後、温度40℃、圧力4350psiで、30分の期間をかけ、超臨界流体抽出を行った。
【0033】
そして、250メッシュの濾過網を用いて、実験群1及び比較実験群1と2のエタノールによって抽出した半産物をそれぞれ濾過し、実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれの濾液を収集した。各濾液に含まれたエタノールを減圧下での濃縮工程によって除去し、実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれのエタノールによって抽出した産物を得た。
【0034】
【0035】
その後、実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれのウコン根茎のエタノールによって抽出した産物を10mgから20mg、それぞれ10mLのメタノールに混ぜ合わせて、実験サンプルを調製した。そして、実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれの実験サンプルのクルクミノイド含有量を、一般的な実験手順のセクション1に記載された手順に従って分析した。その結果を以下の表3に示す。
【0036】
【0037】
表3に示すように、実験群1のクルクミノイド総含有量は、比較実験群1と2のクルクミノイド総含有量より有意に高い。これらの結果から、攪拌速度280rpmの攪拌抽出によって得られたウコン根茎のエタノールによって抽出した産物のクルクミノイド総含有量は、超音波抽出及び超臨界流体抽出によって得られたウコン根茎のエタノールによって抽出した産物のクルクミノイド総含有量より有意に高いことがわかる。
【0038】
B.抽出溶剤の様々な濃度によるクルクミノイド総含有量への影響
ウコン根茎の粉末を、1つの実験群(すなわち、実験群1)及び2つの比較実験群(すなわち、比較実験群1及び比較実験群2)に分けた。実験群1のウコン根茎の粉末は、上記セクションAの実験群1について記載された手順に従って攪拌抽出を行った。比較実験群1と2のそれぞれのウコン根茎の粉末は、比較実験群1と2において、95%のエタノールの代わりに、それぞれ50%のエタノール及び75%のエタノールを使用すること以外は、上記セクションAの実験群1について記載された手順と同様な手順に従って行った。
【0039】
その後、実験群1及び比較実験群らのそれぞれのウコン根茎のエタノールによって抽出した産物を、上記セクションAに記載された実験サンプルに調製した。そして、実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれの実験サンプル中のクルクミノイド総含有量を、一般的な実験手順のセクション1に記載された手順に従って分析した。その結果を以下の表4に示す。
【0040】
【0041】
表4に示すように、実験群1のクルクミノイド総含有量は、比較実験群1と2のクルクミノイド総含有量より有意に高い。これらの結果から、95%のエタノールを使用した攪拌抽出によって得られたウコン根茎のエタノールによって抽出した産物のクルクミノイド総含有量は、50%のエタノール及び75%のエタノールを使用した攪拌抽出によって得られたウコン根茎のエタノールによって抽出した産物のクルクミノイド総含有量より有意に高いことがわかる。
【0042】
実施例2:ウコン根茎のエタノールによって抽出した産物中のクルクミノイドの結晶化による精製
ウコン根茎のエタノールによって抽出した産物のクルクミノイド(クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンを含む)を精製する際に、様々な結晶化条件が及ぼす影響を評価するため、以下の実験を行った。
【0043】
実験手順:
上記実施例1のセクションAに記載された実験群1のウコン根茎のエタノールによって抽出した産物を、1つの実験群(すなわち、実験群1)及び2つの比較実験群(すなわち、比較実験群1及び比較実験群2)に分けた。実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれのウコン根茎のエタノールによって抽出した産物に対して、下記の表5に示す条件で、4℃で結晶化工程を行った。
【0044】
【0045】
具体的には、実験群1の結晶化工程は、以下のステップに従って行った。まず、3gのウコン根茎のエタノールによって抽出した産物を、5gの95%のエタノールに加えて十分に混ぜ合わせた後、温度4℃、攪拌速度60rpmで、24時間の期間をかけて連続的に攪拌し、その後、温度4℃で24時間の期間をかけて放置し、沈殿物を形成した。沈殿物を、濾過により収集し、温度60℃に設定したオーブンで乾燥した。
【0046】
比較実験群1の結晶化工程は、攪拌を行わないことを除いて、実験群1について上述した結晶化工程と実質的に同じステップを用いて行った。
【0047】
比較実験群2の結晶化工程は、エタノールの代わりにイソプロパノールを使用することを除いて、実験群1について上述した結晶化工程と実質的に同じステップを用いて行った。
【0048】
その後、実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれの沈殿物10mgから20mgを取り、それぞれ10mLのメタノールに混ぜ合わせて、実験サンプルを調製した。そして、実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれの実験サンプル中のクルクミノイド総含有量を、一般的な実験手順のセクション1に記載された手順に従って分析した。その結果を以下の表6に示す。
結果:
【0049】
【0050】
表6に示すように、実験群1のクルクミノイド総含有量は、比較実験群1と2で測定したクルクミノイド総含有量より有意に高い。これらの結果から、エタノールを用いて、ウコン根茎のエタノールによって抽出した産物を低温で結晶させ、また、その結晶化工程において攪拌することで、より純度の高いクルクミノイドが得られることがわかる。
【0051】
実施例3:ウコン根茎のエタノールによって抽出した産物の調製のためのリサイクルされたエタノール溶液の使用
ウコン根茎の粉末を、1つの実験群(すなわち、実験群1)及び2つの比較実験群(すなわち、比較実験群1及び比較実験群2)に分けた。実験群1のウコン根茎の粉末は、95%のエタノールの代わりに、以前の抽出工程から得られたリサイクルされた90%のエタノールを使用すること以外は、上記実施例1のセクションAの実験群1について記載された手順に従って攪拌抽出を行った。濃縮工程によって得られた濃縮物を、2℃から8℃の温度で、24時間の期間をかけて放置し、沈殿物(オレオレジン)を形成した。
【0052】
沈殿物に対し、実施例2の実験群1について記載された手順に従って結晶化工程を行った。結晶化工程によって得られたクルクミノイドを、20メッシュから100メッシュの篩いに掛けて篩い分けた。
【0053】
比較実験群1のウコン根茎の粉末からは、結晶化工程によって得られたクルクミノイドを篩い分けないことを除いて、実験群1について上述した工程と実質的に同じ工程に従って、クルクミノイドを分離した。
【0054】
比較実験群2のウコン根茎の粉末からは、濃縮工程によって得られた濃縮物を放置しないこと及び結晶化工程によって得られたクルクミノイドを篩い分けないことを除いて、実験群1について上述した工程と実質的に同じ工程に従って、クルクミノイドを分離した。
【0055】
実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれの実験サンプルの調製は、実施例2の「実験手順」のセクションに記載された手順に従って行った。実験群1及び比較実験群1と2のそれぞれの実験サンプル中のクルクミノイド総含有量は、一般な実験手順のセクション1に記載された手順に従って分析した。その結果を以下の表7に示す。
結果:
【0056】
【0057】
表7に示すように、実験群1のクルクミノイド総含有量は、比較実験群1と2で測定したクルクミノイド総含有量より有意に高い。これらの結果から、抽出工程にリサイクルされたエタノール溶液を用いると、濃縮工程で得られた濃縮物を結晶化工程の前に一定期間放置し、結晶化工程で得られたクルクミノイドを篩い分けることによって、より純度の高いクルクミノイドが得られることがわかる。
【0058】
実施例4:クルクミノイドの組成分析
実験手順:
ウコン根茎の粉末に対して、実施例1のセクションAの実験群1について記載された手順に従って攪拌抽出を行った。ウコン根茎のエタノールによって抽出した産物の結晶化及び実験サンプルの調製は、実施例2の「実験手順」のセクションの実験群1について記載された手順に従って行った。その後、実験サンプル中のクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンの含有量を、一般的な実験手順のセクション1に記載された手順に従って分析し、クルクミノイド総含有量をさらに計算した。実験は、3回繰り返し、得られたデータを平均値±標準偏差(standard deviation,S.D.)で表す。
【0059】
その結果を以下の表8に示す。
結果:
【0060】
【0061】
表8に示すように、3つの異なる種類のクルクミノイドを含み、その中でクルクミンの含有量が最も多い製品を得ることが可能である。
【0062】
上記の説明では、説明の目的のために、実施形態の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が述べられた。しかしながら、当業者であれば、一又はそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一実施形態」(one embodiment)「一つの実施形態」(an embodiment)を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は、全て、特定の態様、構造、特徴を有する本開示の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には、複数の変化例が一つの実施形態、図面、又はこれらの説明に組み込まれているが、これは、本説明を合理化させるためのもので、本開示の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一又はそれ以上の特徴或いは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一又はそれ以上の特徴或いは特定の具体例と共に実施され得る。
【0063】
以上、本開示の好ましい実施形態および変化例を説明したが、本開示は、これらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。