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特許7321369基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体のための分配体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体のための分配体
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/10 20060101AFI20230728BHJP
   C25D 5/08 20060101ALI20230728BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C25D5/08
C25D17/00 K
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022520136
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2020082542
(87)【国際公開番号】W WO2021099389
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】19211049.2
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518264310
【氏名又は名称】セムシスコ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SEMSYSCO GmbH
【住所又は居所原語表記】Karolingerstrasse 7C 5020 Salzburg Republic of Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス グライスナー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エンゲッサー
(72)【発明者】
【氏名】ハーラル オコーン-シュミット
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-49046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0129418(US,A1)
【文献】特開2011-58034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0272644(US,A1)
【文献】特開昭57-89495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/08
C25D 17/00
C25D 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(4)の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体(6)のための分配体(1)であって、
前面(2)と、
後面(3)と、
少なくとも1つの入口(5)と、
出口列(20)と、
流れ制御アレイ(21)と、
を備え、
前記前面(2)は、前記基板(4)の前記表面処理のために、前記基板(4)を向くように構成され、
前記後面(3)は、前記前面(2)に対向して配置され、
前記入口(5)は、前記分配体(1)内への前記処理流体(6)の入口用に構成され、
前記出口列(20)はいくつかの出口(8)で構成され、前記出口(8)は、前記分配体(1)から前記基板(4)に向かう前記処理流体(6)の出口用に構成され、
前記流れ制御アレイ(21)は、前記処理流体(6)の流れの前記出口列(20)の上流側に配置され、それにより、層流域を排除することによって、前記出口(8)に向かう前記処理流体(6)の流れを平衡化することができ、更に、
前記流れ制御アレイ(21)は、いくつかの流れ制御要素(30)で構成される、
分配体(1)。
【請求項2】
前記流れ制御要素(30)は、前記出口列(20)に向かう前記処理流体(6)が乱流を生じさせるパターンで配置される、請求項1に記載の分配体(1)。
【請求項3】
前記流れ制御要素(30)は、前記処理流体(6)においてレイノルズ数が少なくとも5000となるパターンで配置される、請求項1又は2に記載の分配体(1)。
【請求項4】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は、前記前面(2)と前記後面(3)の間に延在し、かつ、前記前面(2)及び前記後面(3)に接触している、請求項1~3のいずれか1項に記載の分配体(1)。
【請求項5】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は柱状である、請求項1~4のいずれか1項に記載の分配体(1)。
【請求項6】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は、前記前面(2)と前記後面(3)の間に延在し、かつ、前記前面(2)又は前記後面(3)のうち一方のみと接触している、請求項1~3のいずれか1項に記載の分配体(1)。
【請求項7】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は、鍾乳石状又は石筍状である、請求項1~6に記載の分配体(1)。
【請求項8】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は、模様付き表面を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の分配体(1)。
【請求項9】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は、互いに異なるサイズを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の分配体(1)。
【請求項10】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は、その長さ方向に沿って一定の断面積を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の分配体(1)。
【請求項11】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は、前記流れ制御要素(30)の長さ方向に沿ってサイズが変化する断面積を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の分配体(1)。
【請求項12】
少なくともいくつかの前記流れ制御要素(30)は、互いに異なる間隔で配置される、請求項1~11のいずれか1項に記載の分配体(1)。
【請求項13】
処理流体(6)の中の基板(4)の化学及び/又は電解表面処理用の分配システム(40)であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載の分配体(1)と、
基板ホルダと、
を備え、
前記基板ホルダは、前記分配体(1)の出口列(20)に対して少なくとも1つの基板(4)を保持するように構成される、分配システム(40)。
【請求項14】
処理流体(6)の中の基板(4)であって、前記基板(4)は、300mm以上の対角線又は直径を有する前記基板(4)の化学及び/又は電解表面処理用の、請求項1~13のいずれか1項に記載の分配体(1)又は分配システム(40)の使用方法。
【請求項15】
基板(4)の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体(6)の分配方法であって、以下のステップ、すなわち、
請求項1~12のいずれか1項に記載の分配体(1)を提供するステップと、
前記分配体(1)の少なくとも1つの入口(5)から前記分配体(1)の流れ制御アレイ(21)を通って前記分配体(1)の出口(8)へ、そして前記基板(4)に向けて、処理流体(6)を流すステップと、
を含む、分配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体のための分配体、処理流体中の基板の化学及び/又は電解表面処理用の分配システム、処理流体中の基板の化学及び/又は電解表面処理用の分配体又は分配システムの使用方法、並びに基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体の分配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネル又はプリント回路基板(PCB)としての大型基板を製造するためのパネルの基板寸法は、製造効率を高めるため並びに大型サイズ技術の要件に合わせるために、著しく増大している。
【0003】
今日では、最良の処理結果は、高速めっき技術を含むシステム、いわゆるHSPシステムを用いて達成される。このようなシステムでは、1つ又は2つのHSPが、1つ又は2つの基板と共に、電解液並びに1つ又はいくつかのアノードを含むタンクの中に浸漬される。電解液で満たされたこのタンク内において、電解液(及び電解液による電流分布)は、HSPプレート(単数又は複数)を通して基板表面に向けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HSPシステムを使用して均一な電気めっきを行うには、パネルの完全な活性領域にわたって均一性の高い流れ場を確立し、かつ制御できることが必要である。活性領域とは、基板上で処理を起こすことを目的とする空間であり、処理とは、例えば、空間的均一性が非常に高い銅(又は別の金属)を堆積することである。めっきされるパネルが大きくなるにつれて、HSPも大型化する必要がある。より大きな寸法に関連する大型化の2つの主な課題は、電解液の水平方向の流れ分布及び/又は電流分布、並びに垂直方向の流れ分布及び/又は電流分布である。
【0005】
垂直方向の不均一性とは、HSPの活性領域の最初の数センチメートル以内にある噴射孔から出る流れの速度が、通常、HSPシステムの残りの長さにわたって分布する他の噴射孔と比べて著しく高く、最初の数センチメートル部分(高流速部分)とHSPの残りの部分(低流速部分)の間で流速が急激に変化することを意味する。
【0006】
水平方向の不均一性は、HSPの噴射孔に対する電解液供給分配口の相対位置によって引き起こされる。供給口の上部又は供給口の比較的近くに位置する噴射孔は、供給口の中間に位置する噴射孔よりも流動電解液速度が高くなる。
【0007】
従来技術では、基板表面にわたって不均一な電解液及び/又は電流分布によってめっきが不均一になるという問題は、不均一な流れ分布を低減するためにいわゆるバッフルプレートを1つ(又は複数)実装することによって軽減されてきた。しかし、特に大型システムに対しては、バッフルプレートを設置しても限定的な成功しかもたらさなかった。
【0008】
バッフルプレートにより、流体の高速域の電解液の流れを抑制することでより良好な均一性を達成し、基板に到達する単位時間当たりの電解液がより少なくなるので、これに伴い、一般に電解めっき速度が著しく低下する。また、バッフルプレートは、水平方向の不均一性の問題の緩和にのみ適用できる。垂直方向の不均一性の課題にはこのように対処することができず、したがって、垂直方向のめっきシステムは重大な課題を持ち続けている。それゆえに、全体的な不均一性の問題は、依然として根本的には解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体のための改良した分配体であって、めっきの均一性を増加させることができる分配体を提供することが必要な場合がある。
【0010】
この問題は独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態は従属請求項に盛り込まれている。以下で説明する本発明の態様は、基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体のための分配体、処理流体中の基板の化学及び/又は電解表面処理用の分配システム、処理流体中の基板の化学及び/又は電解表面処理用の分配体又は配電システムの使用方法、並びに、基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体の分配方法にも適用されることに留意されたい。
【0011】
本発明によれば、基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体のための分配体が提供される。分配体は、前面と、後面と、少なくとも1つの入口と、出口列と、及び流れ制御アレイとを備える。前面は、基板の表面処理のために、基板を向くように構成される。後面は、前面に対向して配置される。入口は、分配体内への処理流体の入口用に構成される。出口列はいくつかの出口で構成され、当該出口は、分配体から基板に向かう処理流体の出口用に構成される。流れ制御アレイは、処理流体の流れの出口列の上流側に配置され、いくつかの流れ制御要素で構成される。
【0012】
出口列の上流側にいくつかの流れ制御要素を配置することによって、噴射孔に向かう電解液の流れを平衡化することができる。流れ制御要素を特定の配置に並べることによって、HSP内の液体の水平及び垂直方向の流れ分布を水平及び垂直方向に最適に均一にすることができ、流れ制御要素の配置に関する特別な要件を最小限に抑えることができることは、驚くべき結果である。流れ分布が最適に均一だと、基板上で最適に均一なめっき処理及びめっき結果をもたらす。出口列の上流側にいくつかの流れ制御要素を配置することによって、電解液の全体的な流速を著しく低下させることなく、流れを平衡化することができる。
【0013】
出口列の上流側にいくつかの流れ制御要素を配置することによって、噴射孔に向かう電解液の流れを平衡化することができる。この流れの平衡化は、層流域を排除することによって達成される。したがって、ある実施形態では、流れ制御要素は、出口列に向かう処理流体が乱流を生じさせるパターンで配置される。流体力学において、乱流とは、圧力と流速が無秩序に変化することを特徴とする流体運動である。これは層流と対照的である。層流は、流体が平行な層になって流れるときに、それらの層の間で崩壊が生じない場合に発生する。乱流では、様々なサイズの不安定な渦が出現し、互いに相互作用する。
【0014】
ある実施形態では、流れ制御要素は、処理流体においてレイノルズ数が少なくとも5000となるパターンで配置される。レイノルズ数とは、流体における慣性力と粘性力の比である。運動中の流体は、相対的に摺動する無限に小さな厚さ(光の波長以下)の薄板又は層として振る舞う傾向がある。流体の粘度は流れに対する抵抗であり、層間の剪断力に対する抵抗と解される。流体の慣性力(運動量)は、流体の質量と速度の動的関数、或いは運動の変化に対する抵抗であり、流体層間で剪断力を生成するように働く。この剪断力は、流体がパイプの内壁等の外側障害物からの粘性抵抗に遭うことにより発生し、この場合、流れは、表面に対する抗力によって遅くなるが、一方でパイプの中心付近ではほとんど妨げられないままである。任意の所与の流体について、流量が増加するにつれて、ある時点で慣性力が粘性力に打ち勝ち始める。つまり流体の滑らかに摺動する層が回転して互いを通り過ぎ始め、その結果、粗い乱流が生じる。また、流れ制御要素は、処理流体においてレイノルズ数が少なくとも4000又は少なくとも6000となるパターンで配置してもよい。
【0015】
乱流及びレイノルズ数の点から見た上述のパターンは、(流体の流れ方向から見て)流れ制御要素の第1の列と、少なくとも流れ制御要素30の第2の列を含むことができる。第1の列は、第1のサイズ及び第1の形状を有し、並びに/或いは相対的に第1の間隔で配置される。第2の列は、第2のサイズ及び第2の形状を有し、並びに/或いは相対的に第2の間隔で配置される。列は、流体の流れ方向に対して実質的に垂直方向に延在すると解される。列は、流体の流れ方向から見ると、同じ種類(サイズ、形状、及び/又は間隔)のいくつかの流れ制御要素を有すると解される。第1のサイズ、形状、及び/又は間隔は、第2のサイズ、形状、及び/又は間隔とは異なる。好ましくは、第1のサイズ及び/又は間隔は、第2のサイズ及び/又は間隔よりも大きくすることができる。当然、逆も可能である。隣接する流れ制御部材は、好ましくは相対的にずれており、互いに整列しない。当然、流れ制御要素の隣接する列又はすべての列と異なる、第3の列又はそれ以上の数の列があってもよい。当然、流体の流れ方向に列にして配置することもでき、また同じサイズ及び形状の流れ制御要素を有する配置にすることもできる。
【0016】
ある実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、(分配体の断面から見ると)前面と後面との間に延在し、前面及び後面に接している。これらは連続流れ制御要素と呼ぶことができる。ある実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は柱状又は棒状である。
【0017】
別の実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、前面及び後面と接触するが、前面と後面の間に延在しない。それらは、前面に配置される第1の構成要素と、後面に配置される第2の構成要素を備えるが、第1及び第2の構成要素は互いに分離し、互いに交わらず、また接触もしない。この流れ制御要素を不連続と呼ぶことができる。第1及び第2の構成要素は、例えば三角形状又は半球状にすることができる。第1及び第2の構成要素、特にそれらの中心軸は、別の構成要素を向き、また互いに位置合わせすることができる。また、第1及び第2の構成要素、特にそれらの中心軸は、相対的にずれていることもできる。すべての場合において、第1及び第2の構成要素は、同じ形状及び/又はサイズを有していてもよく、又は異なっていてもよい。
【0018】
別の実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、前面と後面との間に延在し、前面又は後面のうち一方にのみ接触している。換言すれば、流れ制御要素当たり1つの構成要素のみが存在し、この構成要素は一方の面のみに接触するが、他方の面には到達しない。ある実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、鍾乳石状又は石筍状である。鍾乳石状とは、洞穴の天井から氷柱のようにぶら下がる先細り構造である。従って、鍾乳石状の流れ制御要素は、下向きに先細った吊り下げ構造に相当する。石筍とは、洞穴の床からの山又は先細った柱である。したがって、石筍状の流れ制御要素は、上向きに先細った山型構造に相当する。
【0019】
ある実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、異なるサイズを有する。特に、少なくともいくつかの流れ制御要素は、互いに異なる直径を有する。別の実施形態では、流れ制御要素のサイズは等しい。ある実施形態では、流れ制御要素が互いに等間隔で配置される。
【0020】
別の実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、互いに異なる間隔で配置される。互いに異なる間隔は、分配体内への入口に対する個々の流れ制御要素の位置に応じて実現することができる。流れ制御要素のサイズ又は体積、並びに/或いは各流れ制御要素の位置を互いに変えることによって、HSP内の液体の流れ分布を水平及び垂直方向にさらに均一にすることができる。分布が均一だと、基板上のめっき処理及びめっき結果も非常に均一になる。異なる間隔及び不等間隔の流れ制御要素(サイズ/体積及び/又は間隔が互いに異なる)を実現しかつ位置決めすることによって、等間隔で等しいサイズの流れ制御要素にした場合に必要な空間と比べて、均一な流れ分布を得るためにこれらの流れ制御要素に必要な空間を大幅に減少させることができる。空間が減少すると、HSPのサイズ、その重量、及びHSPを製造するための材料コストが大幅に減少することになる。
【0021】
ある実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、その長さ方向に沿って一定の断面積を有する。それらは、柱状又は棒状であってもよい。別の実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、流れ制御要素の長さ方向に沿って変化するサイズの断面積を有する。少なくともいくつかの流れ制御要素は、角錐、円錐、二重円錐、三角形、多角形、球、半球、砂時計、波等の形状の縦断面を有していてもよい。
【0022】
ある実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は塊状である。別の実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、流体が流れ制御要素を通って流れることができるように孔、特に貫通孔を備える。換言すれば、流れ制御要素は、完全な塊状ではない。
【0023】
ある実施形態では、少なくともいくつかの流れ制御要素は、模様付き表面、特にゴルフボール型の表面を有する。模様付き表面だと、少なくとも5000のRe値を有する場合がある。ゴルフボール型の表面とは、ディンプル又は凹みを有する表面を表す。模様は、規則的に又は不規則に離間した凹みで構成されてもよく、凹みは同じサイズ又は異なるサイズを有してもよい。
【0024】
当然、あらゆる種類の流れ制御要素を組み合わせることができる。好ましくは、分配体は、ちょうど2つ又は少なくとも2つの異なる種類の流れ制御要素、すなわち、(断面の)サイズ、形状、及び/又は間隔の異なる流れ制御要素を備える。より好ましくは、分配体は、その(断面の)サイズが異なる2つの異なる種類の流れ制御要素、すなわち、より大きな流れ制御要素のグループと、より小さな流れ制御要素のグループを備える。より大きな流れ制御要素は入口寄りに配置され、より小さな流れ制御要素は処理流体の出口列寄りに配置される。このようにして、HSP内の液体の流れ分布を、水平及び垂直方向にほぼ最適に均一にすることができる。分布が最適に均一だと、基板上のめっき処理及びめっき結果が最適に均一になる。さらに、これらの流れ制御要素に必要な空間が大幅に減少し、これによって、分配体のサイズ、重量、及び材料コストが大幅に減少することになる。
【0025】
流れ制御アレイは、(ある次元で)固定造形サイズに最適化でき、このサイズでは、より大きなパネルをめっきできるようにするために、分配体にスケールを(このある次元で)合わせる必要はない。分配体の固定造形サイズは、(ある方向に)1~10cm、より好ましくは2~7cm、最も好ましくは3~5cmであってよい。このサイズは、処理流体が出口列に到達する前に乱流を生じさせるための最短の造形サイズであろう。
【0026】
本発明によれば、処理流体中の基板の化学及び/又は電解表面処理用の分配システムも提供される。処理流体中の基板の化学及び/又は電解表面処理用の分配システムは、上記の分配体及び基板ホルダを備える。基板ホルダは、分配体の出口列に対して少なくとも1つの基板を保持するように構成される。
【0027】
分配システム及び分配体の任意的な実施形態を、以下でより詳細に説明する。
【0028】
分配システムは、化学及び/又は電解表面処理のために目的とする流れ及び電流密度パターンを生成するように構成され、流体処理溶液に浸漬される分配体を備える。流れ分配体の反対側には、適切な取付部に取り付けられる基板があり、基板の表面は処理溶液によって濡れる。そして電解処理を行う場合には電極体が存在し、電極体は、好ましくは基板の反対側にある分配体の側方に位置し、処理溶液に浸される。
【0029】
分配体は、前面と、前面の反対側に位置する後面とを有し、表面処理の間、前面は基板に面し、前面と処理される基板の表面の間隔は、表面全体にわたって可能な限り一定である。このために、当該間隔は数サブミリメートルから数センチメートルであってもよい。さらに、この分配体は、少なくとも1つの処理溶液用の入口開口部と、少なくとも1つの出口開口部又はノズルの前面で終わる少なくとも1つの任意選択の液体流路とを有する。注入された処理溶液は、この少なくとも1つの出口開口部を通って基板の方向に比較的高速で流れ、その位置で所望の反応を生じさせることができる。
【0030】
流れ分配体の後面側にある処理溶液を排出するために、少なくとも1つの接続流路、好ましくは複数の接続流路を設けることができる。これらの接続流路は、分配体の前面から後面に処理液を誘導し、したがって、溶液を後面から入口開口部の中に再び注入することができるという点で、処理溶液を循環させることができる。
【0031】
少なくとも1つの出口開口部の分布が平面状であれば、基板上で反応する表面要素の分布にほぼ対応することができる。表面要素は、例えば出口開口部が表面要素とほぼ整列するように表示されている構造を画定する。「ほぼ」は、表示されている構造の表面要素の位置の、出口開口部の位置からの偏差と、出口開口部のサイズの、表示されている構造を形成する表面要素のサイズからの偏差の、両者を含むものとする。前者の偏差は、最大で直径、すなわち出口開口部の幅まであり、横方向のずれとも呼ばれる。後者の偏差の場合、出口開口部は、対応するほぼ整列している表面要素よりも最大1桁大きい場合がある。また、「ほぼ」は、複数の隣接する格子状の出口開口部の配置を含むものとする。当該格子は、これらの出口開口部とほぼ整列している、基板の対応するより大きな表面要素に向けて流すために、残りの出口開口部の配置とは反対に狭くなっている。したがって、選択された配置では、十分に高い流速で、処理される領域への均質な流入流を達成することが保証される。
【0032】
有利には、接続流路の配置は基板上に表示される構造にほぼ対応し、特に好ましくは、接続流路は多数のそのような流路の出口開口部と隣接する。この配置によって、化学又は電解反応後に処理溶液が直接逆流する。直接逆流させることで、分配体の表面と基板の間で生じる流れ分布の変化、特に、噴射孔から排出される処理流体の変化を防止することができ、それによって均一な流れ分布を維持し、最適に均一なめっき処理結果を基板上にもたらすことができる。さらに、反応表面領域上で目的とする電場の誘導を達成することができる。このために、「ほぼ」は、出口開口部を参照して上述したように、接続流路について定義されるものとする。
【0033】
基板は、電気又は電子部品の製造用の実質的に板状のワークピースであってもよく、当該ワークピースは取付部に機械的に固定され、処理されるその表面は、流れ分配体から供給される処理媒体としての処理液の中に浸漬される。特別な場合、基板は、マスキングされた又はされていない導体板、半導体基板若しくはフィルム基板、又はほぼ平坦な表面を有する任意の金属又は金属化したワークピースであってもよい。本明細書において、「ほぼ平坦状の表面」とは、板状基板の表面の高い所と低い所の間の高さの差が、最大でも、基板と流れ分配体の間隔と同等となるものと定義される。
【0034】
有利には、流れ分配体は複数の部品、好ましくは2つの部品で具現化される。このように、流れ分配体の個々の構成要素は、異なる流入流又は流出流を調整できるように、簡単に交換することができる。また流れ分配体は、ただ1つの部品として具現化することもできる。
【0035】
流れ分配体の前面と基板表面の間に位置する対流チャンバは、処理溶液に、目的とする流れ分配体を通る逆流を引き起こさせるために、及び対流チャンバ内で任意に印加される電場の影響を束ねるために、固体壁(例えば、プラスチック材から作製される)を用いて、横方向に有利に制限される。
【0036】
有利なさらなる発展形態では、電気化学的表面処理の場合、流れ分配体の後面と対向電極との間に位置する空間が処理液で満たされており、接続流路を通過する以前に電場を均一にするために、当該空間は、別の固体壁(例えば、プラスチック材料から作製される)によってまたも横方向に制限される。
【0037】
出口開口部は穿孔によって前面に形成されてもよく、幅と直径はそれぞれ、サブミリメートル~ミリメートル、好ましくは0.05mm~10mmであってもよい。また純粋な穿孔の代わりとして、出口開口部は別々に製造されたノズルを備えてもよい。当該ノズルは前面の材料にねじ込まれ又は挿入される。
【0038】
接続流路は円形、正方形、又は長方形の断面を有してもよく、その直径又は幅は出口開口部より大きくてもよい。このように、処理溶液は、目的とするやり方で基板表面に高速で衝突し、処理される表面領域において高い材料輸送を引き起こし、同時に、直径がより大きいために、接続流路ではより低い流速が優勢となる。特に、接続流路内で優勢な圧力もはるかに低い。境界線では、接続流路の幅が基板寸法と同じオーダーであってもよい。複数の接続流路が異なる直径又は幅で存在してもよく、特に有利には、直径又は幅のそれぞれの平均が、出口開口部の直径又は幅よりも大きい。
【0039】
流れ分配体は、有利にはプラスチックで構成されてもよく、特に有利には、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、アクリルガラス、すなわちポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、又は処理溶液によって分解されない別の材料で構成されてもよい。
【0040】
別の有利なさらなる発展形態では、入口開口部が流入流及び/又は流出流ゾーンの外側に位置する。このように空間的に分離しているので、流入流又は逆流による流入処理液の影響は、全くない又はわずかしかない。このようにして、流れの分配速度を低下させるいかなる乱流も回避され、さらに、電場が印加される場合、接続流路によって引き起こされる電場の部分的分離が回避される。
【0041】
有利には、対向電極体は、流れ分配体の後部領域で、流れ分配体と機械的に接触し、又は流れ分配体と空間的に分離して取り付けられ、その結果、電流は、対向電極と、処理溶液内で電極として作用する基板との間を、接続流路を通って流れる。使用される表面処理方法に応じて、電極体は、白金めっきされたチタン等の、処理液に不溶性の材料、あるいは、例えばガルバニック堆積される金属等の可溶性材料で構成することができる。装置ではほとんどあらゆる形状の電極体を使用してもよく、電解処理ではありふれているが、例えば閉鎖板、格子状構造、又はペレットを充填した金属バスケット等を使用してもよい。
【0042】
対向電極体と、流れ分配体の異なる側の電極として作用する基板とを配置することは、上記の電極の両方によって生じる電場の電界線分布を均一にできるという利点を有し、当該配置は、処理溶液と反応する表面領域の配置に対応する。したがって、電場分布は、処理される基板表面にも均一に印加される。最後に、基板表面の一部で起こる所望の反応が、流れ分配体によって引き起こされる流入流によって実質的に影響を受けるように、流れ分配体を上記の電極の間で自由に配置してもよい。
【0043】
本発明によれば、処理流体中の基板の化学及び/又は電解表面処理用の上記の分配体又は分配システムの使用方法も提示される。この使用方法は、特に、300mm以上、好ましくは800mm以上、より好ましくは1000mm以上の対角線又は直径を有する大型基板用の分配体又は分配システムの使用方法である。
【0044】
本発明によれば、基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体の分配方法も提示される。基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体の分配方法は、以下のステップ、すなわち、
上記の分配体1を提供するステップと、
分配体の少なくとも1つの入口から分配体の流れ制御アレイを通って分配体の出口へ、そして基板に向けて、処理流体を流すステップと、
を含む。
【0045】
分配方法の任意の実施形態は、以下により詳細に記載される。
【0046】
上記の特性を有する流れ分配体及び処理される基板は、液体処理溶液で満たされた処理容器内に挿入され、出口開口部を備える前面が基板表面に対して面平行に配置されるように位置合わせされる。小さな偏差は許容される。
【0047】
外部から印加される電圧を用いて表面処理を行う場合、基板は、第1の電極と基板が同じ電位上に位置するように、第1の電極に接続される。第1の電極と反対の極性を有する対向電極体も、この場合、処理溶液中に、すなわち流れ分配体の後部領域中に組み込まれる。
【0048】
処理溶液は、入口開口部に又は複数の入口開口部に注入され、流入流として出口開口部から高速で出て来る。有利には、出口開口部が、基板上で製造される構造に近い構造を有するので、所望の反応は、特に基板表面のうち、出口開口部の反対側に位置する箇所で生じる。次いで、処理溶液は、流れ分配体の後面の背後で、逆流として接続流路を通って流れる。処理溶液は、このように循環して注入されてもよい。これにより、流れ分配体及び基板は、流れ分配体の位置を変更することで基板上への流入流を簡単かつ迅速に変化させることができるように、自由に相対移動可能である。
【0049】
本方法の有利なさらなる発展形態では、基板表面上で液体流が静止することを回避するために、流れ分配体及び基板が互いに向かって平行に相対移動してもよい。この目的のために、流れ分配体のみ若しくは基板のみのいずれか、又はもちろん両方とも、直線的なストローク状、円形の旋回又は振動で動かされてもよい。このようにして、処理液の流入が追加の運動によって支持され、流入流の運動は、流れ分配体の永続的な動きによって維持される。さらに、基板と流れ分配体を空間的に分離することによって、任意の所望の軸に沿って相対移動することができる。
【0050】
この方法は、電解又は化学表面処理のグループに由来してもよく、特に、ガルバニックコーティング、化学又は電気化学エッチング、アノードの酸化、又は外部無電流金属堆積といった別の方法を含んでもよい。
【0051】
独立請求項に係るシステム、装置、及び方法は、特に従属請求項で定義される、類似の及び/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。さらに、本発明の好ましい実施形態は、従属請求項と各独立請求項との任意の組合せにすることもできることを理解されたい。
【0052】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載する実施形態から明らかになり、それを参照して説明する。
【0053】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、本発明による基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体のための分配体及び分配システムの断面の側面図を、概略的かつ例示的に示す。
図2図2a~2fは、本発明による流れ制御要素を有する流れ制御アレイを、概略的かつ例示的に示す。
図3図3は、本発明による基板の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体の分配方法を、概略的かつ例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、基板4の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体6のためのいくつかの流れ制御要素30を含む、本発明による分配体1の実施形態を概略的かつ例示的に示す。図1では、分配体1と基板4を垂直方向に取り付けているが、水平方向に配置することも可能である。
【0056】
(流れ)分配体1は、ポリプロピレン等のプラスチックで作製された処理槽17の中で、処理流体6、すなわち流体処理溶液に浸漬される。処理流体6、すなわち流体処理溶液は、水性でも非水性でもよい。この処理槽17の中には、導電性の表面を有し、電極12に接続される基板4と、別の電極11に接続される対向電極体10とがあり、電極11の極性は、電極12とは逆である。対向電極体10は板として具現化されており、貫通孔を有しない。対向電極体10、基板4、及び流れ分配体1は空間的に分離しており、基板4と流れ分配体1の間隔が約20mmであるのに対し、流量分布本体1と対向電極10の間隔は約40mmである。本事例では基板4が金属基板であるが、他の例示的な実施形態では、ウェハ等の半導体基板、又は導体板を使用してもよい。基板4の表面に構造15を部分的に適用するために、基板4には、処理溶液6によって悪化しない又はわずかしか悪化しない適切な刻印が備わっていた。本明細書の文脈において「わずか」とは、マスキングを、例えば、フォトレジストを処理溶液によってアブレーションすることができ、この処理は非常にゆっくりと進行するが、一般的な処理時間ではマスキングの残りが基板4上に残ることを意味するものとする。
【0057】
別の電極11はアノードとして具現化されており、一方、電極12はカソードとして機能する。もちろん、他の実施形態では、電極12がアノードである場合、別の電極11がカソードを表すこともある。図示の実施例では、ガルバニック反応によって、基板4上に金属が堆積する。電解液は処理液6として使用される。対向電極体10と基板4を配置することによって2つの電極11,12により生じる電場は、常に流れ分配体1を通って延びている。したがって、対向電極体10及び基板4に対して流れ分配体1を適切に位置決めすることにより、基板4の領域に、特に強い流入流13を有しかつこれらの位置で反応が生じる電場を有する電解液が、接近する可能性がある。
【0058】
流れ分配体1は前面2を有し、前面2は基板4に対してできるだけ面平行となるように位置合わせ
される。
【0059】
後面3は、前面2の反対側に位置する。前面と後面の間には、中空空間、すなわち液体流路7が存在し、液体流路7は処理溶液6で満たされてもよい。このために、入口5、すなわち入口開口部は、流れ分配体1の前面2と後面3の間に位置する側方領域に配置され、側方領域には、ポンプサイクルのケーシングに接続するためのねじ山が備わっている。流れ分配体1自体はポリプロピレンから作製されている。
【0060】
前面2と基板4の表面とによって形成される対流チャンバは、処理槽17の壁及び別の壁16によってさらに制限される。別の壁16は、目的とする逆流14を、接続流路9を通して生じさせ、同時に電流の電界線分布に好ましい影響を及ぼす。図示の例示的実施形態では、これらの壁もポリプロピレンで作製されている。言うまでもなく、このような壁は、別の壁16が基板4と前面2の間に配置されるのと同様に、後面3と対向電極体10の間に配置されてもよい。図示の例では、別の壁16は、処理槽17と同様に、ポリプロピレン等のプラスチックで作製されている。
【0061】
流れ分配体1には直径1mmの穿孔が設けられており、この穿孔は液体流路7の出口8、すなわち出口開口部で終了し、各穿孔は前面2において同一の直径を有する。穿孔は、円筒形状のほか、円錐形状であってもよい。出口開口部8の分布は、基板4上に作成される構造15とほぼ一致する。すなわち、出口開口部8は、構造15を示している基板4の表面の一部と整列する。このようにして、出口開口部8から来る流入流13は、電気化学反応に関与する基板4の表面の一部に直接衝突する。出口開口部8は円形であるが、適切な流速に達することができる限り、楕円形若しくは長方形、又は他の幾何学的形状で具現化することもできる。また、出口開口部8は、例えば、線状又は柱状の幾何学的形状が達成されるように、別の次元よりも空間次元において著しく大きくてもよい。線又は柱は、流れ分配体1の全長又は全幅のそれぞれにわたって延在してもよい。
【0062】
処理溶液6は、前面2と後面3との間に位置する中空空間を出て、出口開口部8を高流速で通って、基板4に向かう流入流13を形成する。金属被覆は、局所的な表面領域において構造15が適用される場所で起こり、流れの方向はその位置で逆転する。ここで、流れの指向性が弱くまるため、流速は低下し、形成された逆流14が接続流路9を通って流れ分配体1の後面3に誘導される。接続流路9は、出口開口部8に隣接して配置され、それにより、基板4上に作成される構造15を形成し、また、構造15の表面とは対照的に、約2mmだけオフセットされる。図示の実施例において、接続流路9は別々の管であり、流れ分配体1の対応する開口部に使用される。
【0063】
接続流路9の直径は5mmである。接続流路9と出口開口部8のサイズ関係が異なるため、接続流路9内では液圧と流速がかなり低下する。流れ分配体1の後面3に到達した処理溶液6は、処理槽17の排水口18及びポンプ(図示せず)によって、入口開口部5の中に再び注入される。
【0064】
硬直した流れベクトルを回避し、その代わりに基板4の反応表面領域でできるだけ均一な対流を達成するために、流れ分配体1及び基板4は、両方向に最大1mmまで互いに平行に相対移動し、この場合、両物体は、それぞれ流入流13又は逆流14に対して平行に移動する。
【0065】
本発明によれば、処理流体6内の基板4の化学及び/又は電解表面処理用の分配システム40が提示される。分配システム40は、分配体1と基板ホルダ(図示せず)を備える。基板ホルダは、分配体1の出口列20に対して少なくとも1つの基板4を保持するように構成される。
【0066】
本発明によれば、分配体1は、前面2と、後面3と、少なくとも1つの入口5と、出口列20と、流れ制御アレイ21とを備える。前面2は、基板4の表面処理のために、基板4を向く。後面3は、前面2に対向して配置される。
【0067】
入口5は、分配体1内への処理流体6の入口である。出口列20はいくつかの出口8で構成される。出口8は、分配体1から基板4に向かう処理流体6の出口である。流れ制御アレイ21は、処理流体6の流れの出口列20の上流側に配置され、いくつかの流れ制御要素30で構成される。
【0068】
出口列20の上流側にいくつかの流れ制御要素30を配置することによって、噴射孔に向かう電解液の流れを平衡化することができる。HSP内の液体の流れ分布を水平及び垂直方向に均一にすることができる。流れ分布が均一だと、電解液の全体的な流速を低下させることなく、基板4上のめっき処理及びめっき結果が均一になる。
【0069】
好ましくは、分配体1は、ちょうど2種又は少なくとも2種の異なる種類の流れ制御要素30、すなわち、(断面の)サイズ、形状及び/又は間隔の異なる流れ制御要素30を備える。より好ましくは、分配体1は、その(断面の)サイズが異なる2種の流れ制御要素30、すなわち、より大きな流れ制御要素30のグループと、より小さな流れ制御要素30のグループを備える。より大きな流れ制御要素30は入口5寄りに配置され、より小さな流れ制御要素30は処理流体6の出口列20寄りに配置される。
【0070】
出口列20の上流側にいくつかの流れ制御要素30を配置すると、特に層流域が排除されることによって、噴射孔に向かう電解液の流れが平衡化する。したがって、流れ制御要素30は、出口列20に向かう処理流体6が乱流を生じさせるパターンで配置される。特に、流れ制御要素30は、処理流体6のレイノルズ数が少なくとも5000となるパターンで配置される。
【0071】
パターンは、(流体の流れ方向から見て)流れ制御要素30の第1の列と、少なくとも流れ制御要素30の第2の列を含むことができる。第1の列は、第1のサイズ及び第1の形状を有し、並びに/或いは相対的に第1の間隔で配置される。第2の列は、第2のサイズ及び第2の形状を有し、並びに/或いは相対的に第2の間隔で配置される。列は、流体の流れ方向に対して垂直方向に延在し、流体の流れ方向から見ると、同じ種類(サイズ、形状、及び/又は間隔)のいくつかの流れ制御要素30を有する。第1のサイズ及び/又は間隔は、第2のサイズ及び/又は間隔よりも大きくてもよい。隣接する流れ制御部材は、相対的にずれており、互いに整列しない。
【0072】
図2a~2fは、流れ制御要素30の側面図又は断面図を示す。図2aに示す実施例において、少なくともいくつかの流れ制御要素30は、その長さ方向に沿ってサイズが変化する断面積を有する。縦断面は二重円錐状である。
【0073】
図2bに示す実施例において、少なくともいくつかの流れ制御要素30は、その長さ方向に沿って一定の断面積を有し、(分配体1の断面から見ると)連続している。流れ制御要素が連続しているとは、これらの流れ制御要素が前面2と後面3の間に延在し、前面2及び後面3に接していることを意味する。これらの流れ制御要素は柱状又は棒状である。
【0074】
図2c~図2fに示す実施例において、少なくともいくつかの流れ制御要素30は不連続であり、前面2及び後面3と接するが、前面2と後面3の間に延在しない。これらの流れ制御要素は、前面2に配置される第1の構成要素31と、後面3に配置される第2の構成要素32を備えるが、第1及び第2の構成要素31、32は互いに分離し、互いに交わらず、また接触もしない。第1及び第2の構成要素31、32は三角形状又は半球状である。第1及び第2の構成要素31、32、特にそれらの中心軸Xは、別の構成要素を向き、また互いに位置合わせすることができる(図2c参照)。また、第1及び第2の構成要素、特にそれらの中心軸Xは、相対的にずらすことができる(図2d~2f参照)。
【0075】
図2a~2eに示す実施例において、少なくともいくつかの流れ制御要素30は塊状である。図2fに示す実施例において、少なくともいくつかの流れ制御要素30は、流体が流れ制御要素30を通って流れることを許容する貫通孔33を備える。換言すれば、流れ制御要素30は完全に塊状というわけではない。
【0076】
図3は、基板4の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体6の分配方法を示す。基板4の化学及び/又は電解表面処理用の処理流体6の分配方法は、以下のステップ、すなわち、
・ステップ1.上記の分配体1を提供するステップと、
・ステップ2.分配体1の少なくとも1つの入口5から分配体1の流れ制御アレイ21を通って分配体1の出口8へ、そして基板4へ向けて、処理流体6を流すステップと、
を含む。
【0077】
本発明の実施形態は、種々の主題を参照して説明されていることに留意されたい。特に、いくつかの実施形態については方法タイプのクレームを参照して説明し、他の実施形態については装置タイプのクレームを参照して説明する。しかしながら、当業者は、特に明記されていない限り、上記の及び以下の説明から、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組合せに加えて、異なる主題に関する特徴間の任意の組合せも、本出願で開示されていると考えられることを理解するであろう。しかし、全ての特徴を組み合わせることで、特徴を単純に合計したよりも多い相乗効果を提供することができる。
【0078】
本発明を図面及び前記記載において詳細に図示及び説明してきたが、そのような図示及び説明は説明的又は例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、本開示、及び従属クレームを検討することで、請求された発明を実施する際に、当業者によって理解され、達成されることができる。
【0079】
特許請求の範囲において、単語「comprising(備える)」は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数形を排除するものではない。単一の装置が、特許請求の範囲に列挙された特定の項目の機能を果たす場合もある。特定の数値が相互に異なる従属請求項に単に列挙されているからといって、これらの数値の組み合わせを有利に使用することができないわけではない。特許請求の範囲のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図2(f)】
図3