(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/14 20060101AFI20230731BHJP
B60N 2/10 20060101ALI20230731BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B60N2/14
B60N2/10
B60N2/06
(21)【出願番号】P 2019231192
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板東 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】北島 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】村林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】中川 茂
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-052827(JP,A)
【文献】特開2009-262803(JP,A)
【文献】特開2011-225100(JP,A)
【文献】特開2011-057050(JP,A)
【文献】特開平11-129797(JP,A)
【文献】特開2006-076482(JP,A)
【文献】特開2019-043353(JP,A)
【文献】特開2005-289246(JP,A)
【文献】米国特許第04846529(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102016123240(DE,A1)
【文献】特開2007-216854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A61G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体を車両前向きの着座位置と
車両横のドア開口部側を向く乗降位置間で回転させる回転機構を備える車両用シート装置であって、
前記回転機構は、回転不能な固定部材と前記シート本体を支持する回転部材間に設置された四節リンク機構を備えており、
前記四節リンク機構を構成する一対のリンクの回動中心側が前記固定部材に連結されて、前記一対のリンクの回動自由端側が前記回転部材に連結されており、
前記一対のリンクは、前記ドア開口部側が車両中央側よりも低くなるように傾斜しており、
前記四節リンク機構を用いて前記シート本体を着座位置から乗降位置まで回転させる過程で、前記シート本体の回転中心が車両前後方向に移動し、さらに、前記シート本体の前側が後側よりも低くなるように前記シート本体
が傾斜
する車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用シート装置であって、
前記四節リンク機構の一対のリンクの回動中心側と前記固定部材とを連結する固定側連結軸と、前記一対のリンクの回動自由端側と前記回転部材とを連結する回転側連結軸とが等しい角度で傾斜している車両用シート装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用シート装置であって、
前記四節リンク機構は、前記固定部材上で固定側連結軸を中心に回動可能な前部リンクと、前部リンクの後方で別の固定側連結軸を中心に回動可能な後部リンクとを備え、前記前部リンクの回動自由端にある回転側連結軸と前記後部リンクの回動自由端にある回転側連結軸とが前記回転部材を介して連結されており、
外力により前記回転部材が前記着座位置から乗降位置まで回転する際、前記前部リンクの回動自由端にある回転側連結軸は、車両中央側の位置から車両横の前記ドア開口部に近づくように前記固定側連結軸を中心に円弧運動し、これにより前記前部リンクの回転側連結軸は、その円弧運動の初期で車両後方に移動し、その後の前記円弧運動で車両前方に移動し、
前記後部リンクの回動自由端にある回転側連結軸は、前記前部リンクの回転側連結軸が車両後方に移動する際、前記回転部材を介して後方に力を受けて車両後方に移動するように円弧運動し、その後に前記前部リンクの回転側連結軸が車両前方に移動する際、前記回転部材を介して前方に力を受けて車両前方に移動するように円弧運動する車両用シート装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用シート装置であって、
前記前部リンクの固定側連結軸、及び回転側連結軸と、前記後部リンクの回転側連結軸とが平面視において一直線上にある状態から前記前部リンクの回転側連結軸が前記ドア開口部に近づくように円弧運動することで、前記前部リンクの回転側連結軸と前記後部リンクの回転側連結軸とが共に車両前方に移動する車両用シート装置。
【請求項5】
請求項3に記載された車両用シート装置であって、
前記前部リンクの固定側連結軸、及び回転側連結軸と、前記後部リンクの回転側連結軸とが一直線上にある状態から前記前部リンクの回転側連結軸が前記ドア開口部に近づくように円弧運動することで、前記回転部材上の前記シート本体はそのシート本体の前側が後側よりも低くなるように傾斜する車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート本体を車両前向きの着座位置とドア開口部側を向く乗降位置間で回転させる回転機構を備える車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関する車両用シート装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両用シート装置100は、
図11に示すように、シート本体103と、シート本体103を車両前向きの着座位置とドア開口部側を向く乗降位置間で回転させる回転機構105とを備えている。回転機構105は、車両フロアFに固定された円盤状のロアプレート105dと、ロアプレート105dに重ねられて同軸の状態で回転可能に構成された円盤状のアッパープレート105uとを備えている。そして、アッパープレート105u上にシート本体103が設置されている。
【0003】
ロアプレート105dとアッパープレート105uとは、ドア開口部側が低くなるように傾斜している。これにより、ロアプレート105dとアッパープレート105uとの働きでシート本体103がドア開口部側の乗降位置まで回転すると、シート本体は回転過程で前側が低くなるように傾斜する。これにより、車両用シート装置100の乗降性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記車両用シート装置100の回転機構105は、回転中心が定位置である。このため、シート本体103を着座位置と乗降位置間で回転させる際、シート本体103と車両ボディの支柱、あるいはセンターコンソール等との干渉を避けるためには、比較的広いスペースが必要とされる。また、比較的狭いスペースで、シート本体103を回転させる場合、前後スライド機構等によりシート本体103を前後に移動させながら支柱、あるいはセンターコンソール等との干渉を避ける必要がある。したがって、この場合には、前記回転機構105の他に前後スライド機構等が必要になる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、乗降位置で前側が低くなるように傾斜可能に構成されたシート本体をコンパクトなスペース内で回転させることができる機構を簡素化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、シート本体を車両前向きの着座位置と車両横のドア開口部側を向く乗降位置間で回転させる回転機構を備える車両用シート装置であって、前記回転機構は、回転不能な固定部材と前記シート本体を支持する回転部材間に設置された四節リンク機構を備えており、前記四節リンク機構を構成する一対のリンクの回動中心側が前記固定部材に連結されて、前記一対のリンクの回動自由端側が前記回転部材に連結されており、前記一対のリンクは、前記ドア開口部側が車両中央側よりも低くなるように傾斜しており、前記四節リンク機構を用いて前記シート本体を着座位置から乗降位置まで回転させる過程で、前記シート本体の回転中心が車両前後方向に移動し、さらに、前記シート本体の前側が後側よりも低くなるように前記シート本体が傾斜する。
【0008】
本発明によると、回転機構の四節リンク機構は、シート本体の回転中心を車両前後方向に移動させながらそのシート本体を回転させる。このため、回転機構の単独動作で、例えば、車両ボディの支柱やセンターコンソール等を回避した状態でシート本体を回転させることが可能になる。即ち、従来のように、回転中心軸を定位置に保持した状態でシート本体を回転させる回転機構と、前後スライド機構とを別々に設ける車両用シート装置と比較して、機構を簡素化できる。さらに、回転機構の四節リンク機構の働きでシート本体を着座位置から乗降位置まで回転させる際に、前側が低くなるように前記シート本体を傾斜させるチルト動作を行うことができる。
【0010】
第2の発明によると、四節リンク機構の一対のリンクの回動中心側と前記固定部材とを連結する固定側連結軸と、前記一対のリンクの回動自由端側と前記回転部材とを連結する回転側連結軸とが等しい角度で傾斜している。
【0011】
第3の発明によると、四節リンク機構は、前記固定部材上で固定側連結軸を中心に回動可能な前部リンクと、前部リンクの後方で別の固定側連結軸を中心に回動可能な後部リンクとを備え、前記前部リンクの回動自由端にある回転側連結軸と前記後部リンクの回動自由端にある回転側連結軸とが前記回転部材を介して連結されており、外力により前記回転部材が前記着座位置から乗降位置まで回転する際、前記前部リンクの回動自由端にある回転側連結軸は、車両中央側の位置から車両横の前記ドア開口部に近づくように前記固定側連結軸を中心に円弧運動し、これにより前記前部リンクの回転側連結軸は、その円弧運動の初期で車両後方に移動し、その後の前記円弧運動で車両前方に移動し、前記後部リンクの回動自由端にある回転側連結軸は、前記前部リンクの回転側連結軸が車両後方に移動する際、前記回転部材を介して後方に力を受けて車両後方に移動するように円弧運動し、その後に前記前部リンクの回転側連結軸が車両前方に移動する際、前記回転部材を介して前方に力を受けて車両前方に移動するように円弧運動する。
即ち、シート本体を支持する回転部材は、着座位置から乗降位置まで回動する回動初期に、四節リンク機構の前部リンクと後部リンクとの働きでドア開口部に近づきつつ、車両後方に移動する。そして、この後、シート本体と回転部材(シート本体等)がドア開口部に近づきつつ回転し、車両前方に移動する。この結果、シート本体がセンターコンソール等と干渉しなくなる。
【0012】
第4の発明によると、前部リンクの固定側連結軸、及び回転側連結軸と、後部リンクの回転側連結軸とが平面視において一直線上にある状態から前記前部リンクの回転側連結軸が前記ドア開口部に近づくように円弧運動することで、前記前部リンクの回転側連結軸と前記後部リンクの回転側連結軸とが共に車両前方に移動する。
【0013】
第5の発明によると、前部リンクの固定側連結軸、及び回転側連結軸と、後部リンクの回転側連結軸とが一直線上にある状態から前記前部リンクの回転側連結軸が前記ドア開口部に近づくように円弧運動することで、前記回転部材上の前記シート本体はそのシート本体の前側が後側よりも低くなるように傾斜する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、乗降位置で前側が低くなるように傾斜可能なシート本体をコンパクトなスペース内で回転させる機構を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両用シート装置を備える車両のドア開口部を表す模式側面図である。
【
図2】前記車両用シート装置においてシート本体が車両前向きの着座位置にある状態の側面図である。
【
図3】前記車両用シート装置のシート本体が着座位置にある状態を後方から見た縦断面図(
図5のIII-III矢視断面図)である。
【
図4】前記車両用シート装置のシート本体が着座位置にある状態を後方から見た縦断面図(
図5のIV-IV矢視断面図)である。
【
図5】前記車両用シート装置の回転機構(四節リンク機構)等の動作を表す平面図である。
【
図6】前記車両用シート装置の回転機構(四節リンク機構)等の動作を表す平面図である。
【
図7】前記車両用シート装置の回転機構(四節リンク機構)等の動作を表す平面図である。
【
図8】前記車両用シート装置の回転機構(四節リンク機構)等の動作を表す平面図である。
【
図9】前記車両用シート装置のシート本体が乗降位置にある状態を後方から見た縦断面図(
図8のIX-IX矢視断面図)である。
【
図10】前記車両用シート装置のシート本体が乗降位置にある状態を後方から見た縦断面図(
図8のX-X矢視断面図)である。
【
図11】従来の車両用シート装置を表す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
以下、
図1~
図10に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の説明を行なう。本実施形態に係る車両用シート装置10は、車両の車室内の右側に設置されるシート装置である。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、車両用シート装置10を備える車両の前後左右及び上下に対応している。
【0017】
<車両用シート装置10の概要について>
車両用シート装置10は、
図1~
図4に示すように、乗員が着座するシート本体20と、シート本体20を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構30(
図2等参照)と、その前後スライド機構30上でシート本体20を回転させる回転機構40とを備えている。また、車両用シート装置10は、回転機構40の回転をロックする回転ロック装置(図示省略)を備えている。
【0018】
<前後スライド機構30について>
前後スライド機構30は、
図2~
図4に示すように、車両フロアF上に固定されて車両前後方向に延びる左右一対のロアレール32と、左右一対のロアレール32に沿って前後スライドする左右の一対のアッパレール33とを備えている。そして、左右の一対のアッパレール33が前後スライドベース35の下面に固定されている。ここで、アッパレール33は、多段式ロック機構(図示省略)の働きにより、ロアレール32に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。
【0019】
<回転機構40について>
回転機構40は、シート本体20を車両前向きの着座位置と右側のドア開口部D(
図1参照)を向く乗降位置との間で回転中心を前後方向に移動させながら回転させる機構である。回転機構40は、
図2~
図4に示すように、シート本体20を支持する回転テーブル45と、前後スライド機構30の前後スライドベース35上で回転テーブル45を前傾させながら回転させられるように支持する四節リンク機構40rとを備えている。四節リンク機構40rは、
図2~
図4等に示すように、前部リンク41と後部リンク42とから構成されている。そして、四節リンク機構40rの前部リンク41と後部リンク42とは、ドア開口部D側、即ち、右側が低くなるように傾斜した状態で前後スライドベース35と回転テーブル45とに連結されている。
【0020】
四節リンク機構40rの前部リンク41の回動中心側は、
図5に示すように、前後スライドベース35の前部の幅方向右側部に下部連結軸41dを介して回動可能な状態で連結されている。ここで、前後スライドベース35は、
図4に示すように、前部リンク41が連結される部分が傾斜部35kとなっており、その傾斜部35kが右側(ドア開口部D側)で低くなるように傾斜している。そして、下部連結軸41dは、前記傾斜部35kに対して直角な状態で、前後スライドベース35に連結されている。即ち、下部連結軸41dは、前後スライドベース35上で右側に傾いた状態で立設されている。
【0021】
前部リンク41の先端側、即ち、回動自由端側は、
図5に示すように、回転テーブル45の略中央部に上部連結軸41uを介して回動可能な状態で連結されている。ここで、回転テーブル45は、
図4に示すように、前部リンク41が連結される部分が傾斜部45kとなっており、その傾斜部45kが前後スライドベース35の傾斜部35kと等しい角度で右側が低くなるように傾斜している。そして、上部連結軸41uは、前記傾斜部45kに対して直角な状態で、回転テーブル45に連結されている。即ち、上部連結軸41uは、下部連結軸41dと等しい傾斜角度で回転テーブル45の下側に設けられている。
【0022】
四節リンク機構40rの後部リンク42の回動中心側は、
図5に示すように、前後スライドベース35の後部の幅方向中央部に下部連結軸42dを介して回動可能な状態で連結されている。ここで、前後スライドベース35は、
図3に示すように、後部リンク42が連結される部分が傾斜部35kとなっている。そして、下部連結軸42dは、前記傾斜部35kに対して直角な状態で、前後スライドベース35に連結されている。即ち、下部連結軸42dは、前部リンク41の下部連結軸41dと等しい傾斜角度で前後スライドベース35上に立設されている。
【0023】
後部リンク42の先端側、即ち、回動自由端側は、
図5に示すように、回転テーブル45の後右角部に上部連結軸42uを介して回動可能な状態で連結されている。ここで、回転テーブル45は、
図3に示すように、後部リンク42が連結される部分が傾斜部45kとなっている。そして、上部連結軸42uは、前記傾斜部45kに対して直角な状態で、回転テーブル45に連結されている。即ち、上部連結軸42uは、前部リンク41の上部連結軸41uと等しい傾斜角度で回転テーブル45の下側に設けられている。
【0024】
前部リンク41と後部リンク42とは、
図2~
図4に示すように、回転中心側と回動自由端側の高さ寸法差が前後スライドベース35と回転テーブル45間の隙間寸法と等しい値になるように設定されている。
【0025】
<回転機構40の動作について>
上記構成により、着座位置(
図5参照)にあるシート本体20に対して右回転方向に外力が加わると、四節リンク機構40rの前部リンク41の先端側(回動自由端側)が回転テーブル45を介して右方向に外力を受ける。これにより、前部リンク41は、下部連結軸41dを中心に
図5に示す位置から左回動する。即ち、前部リンク41の先端側に連結された上部連結軸41uは、ドア開口部Dに近づくように円弧運動する。
【0026】
そして、円弧運動の初期、即ち、着座位置(
図5参照)から前部リンク41がθ1°左回動するまでは、
図6に示すように、上部連結軸41uと、この上部連結軸41uに連結された回転テーブル45とは、ドア開口部D側(右側)に移動しつつ後退する。また、前部リンク41に連結された上部連結軸41uの後退により、後部リンク42の先端側に連結された上部連結軸42uが回転テーブル45を介して後方向に力を受ける。これにより、後部リンク42は、下部連結軸42dを中心に若干右回動する。この結果、シート本体20及び回転テーブル45(シート本体20等)は、
図6に示すように、ドア開口部D側(右側)に移動しつつ後退する(白矢印参照)。
【0027】
そして、前部リンク41が着座位置からθ1°左回動した状態(
図6参照)から引き続きシート本体20に対して右回転方向に外力が加えられると、
図7に示すように、シート本体20等は右側に移動しつつ右方向に回転し、前部リンク41は角度θ1の位置から左回動する。そして、前部リンク41は角度θ1の位置から角度θ2だけ左回動した状態で、前部リンク41の下部連結軸41d、上部連結軸41uと、後部リンク42の上部連結軸42uとが平面視において一直線上に保持される。この状態で、回転テーブル45は角度略θ2だけ右側を向いて、その回転テーブル45の後右角部が前後スライドベース35の後端縁から後方に突出する。この位置が回転テーブル45の後退限位置である。
【0028】
後退限位置においてシート本体20に対し、さらに右回転方向に外力が加えられると、
図8に示すように、前部リンク41と後部リンク42とが共に左回動してシート本体20等は前方に移動しつつ、右回転するようになる。即ち、シート本体20等は、回転中心を前方に移動させながら右方向に回転するようになる。そして、前部リンク41が後退限位置から角度θ3だけ回動した状態で(
図8参照)、シート本体20等は乗降位置に到達する。
【0029】
また、上記したように、四節リンク機構40rの前部リンク41と後部リンク42とが、ドア開口部D側(右側)が低くなるように傾斜した状態で前後スライドベース35と回転テーブル45とに連結されている。このため、前部リンク41と後部リンク42とが後退限位置から左回動して、シート本体20等が回転中心を前方に移動させながら右方向に回転すると、シート本体20等は、
図9、
図10に示すように、前側が低くなるように傾斜するようになる。
【0030】
<車両用シート装置10の取り扱いについて>
車両用シート装置10のシート本体20が車両前向きの着座位置にある状態では、前記回転ロック装置がロック動作して、シート本体20は回転不能に保持されている。この状態では、シート本体20は前後スライド機構30により前後スライドのみが可能になる。即ち、前後スライド機構30のスライドロックを解除して、シート本体20に対して前後方向に力を加えることで、前後スライド機構30の働きによりシート本体20の前後位置調整が可能になる。
【0031】
次に、シート本体20をドア開口部Dの方向に回動させる場合には、前後スライド機構30のスライドロックが働いている状態で前記回転ロック装置のロック動作を解除する。これにより、シート本体20に対して右回転方向に力が加えられると、シート本体20は回転機構40(四節リンク機構40r)の働きにより右方向に回転するようになる。即ち、先ず、四節リンク機構40rの前部リンク41が着座位置から角度(θ1+θ2)°だけ左回動して、後部リンク42が同じく着座位置から後退限位置まで右回動することで、シート本体20及び回転テーブル45(シート本体20等)は、ドア開口部D側(右側)に移動しつつ右回転し、後退限位置まで後退する(
図6、
図7参照)。
【0032】
次に、前部リンク41と後部リンク42とが後退限位置から共に左回動することで、シート本体20等は、
図8に示すように、前方に移動しつつ、右回転するようになる。即ち、シート本体20等は、回転中心を前方に移動させながら右方向に回転するようになる。また、シート本体20等が回転中心を前方に移動させながら右方向に回転すると、前部リンク41と後部リンク42との傾きにより、シート本体20等は、
図9、
図10に示すように、前側が低くなるように傾斜する。そして、シート本体20等が乗降位置まで回転した段階で前記回転ロック装置がロック動作する。
【0033】
また、シート本体20を車両前向きの着座位置まで戻す場合には、前記回転ロック装置のロック動作を解除した状態で、シート本体20に対して左回転方向に力を加える。これにより、シート本体20等は四節リンク機構40rの働きにより、等しい軌跡で着座位置まで戻される。
【0034】
<本実施形態で使用された用語と本発明の用語との対応>
本実施形態における前後スライドベース35が本発明の固定部材に相当し、回転テーブル45が本発明の回転部材に相当する。また、下部連結軸41d,42dが本発明の固定側連結軸に相当し、上部連結軸41u,42uが本発明の回転側連結軸に相当する。
【0035】
<本実施形態に係る車両用シート装置10の長所について>
本発明によると、回転機構40は、回転中心を移動させながらシート本体20を回転させる。このため、回転機構40の単独動作で、例えば、車両ボディの支柱やセンターコンソール等を回避した状態でシート本体を回転させることが可能になる。即ち、従来のように、回転中心軸を定位置に保持した状態でシート本体を回転させる回転機構と、前後スライド機構とを別々に設ける車両用シート装置と比較して、機構を簡素化できる。さらに、回転機構40の働きでシート本体20を着座位置から乗降位置まで回転させる際に、前側が低くなるようにシート本体20を傾斜させるチルト動作を行うことができる。
【0036】
また、シート本体20を支持する回転テーブル45(回転部材)は、着座位置から乗降位置まで回動する回動初期に、四節リンク機構40rの前部リンク41と後部リンク42との働きでドア開口部Dに近づきつつ、後退する。そして、この後、シート本体20と回転テーブル45(シート本体20等)がドア開口部Dに近づきつつ回転し、前方に移動する。この結果、シート本体20が車両のセンターコンソール等と干渉しなくなる。
【0037】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、前後スライド機構30の前後スライドベース35上に回転機構40の四節リンク機構40rを設ける例を示した。しかし、車両フロアF上に四節リンク機構40rを設け、回転テーブル45上に前後スライド機構30とシート本体20を設ける構成でも可能である。また、本実施形態では、シート本体20を手動で回転させる例を示した。しかし、例えば、四節リンク機構40rをモータの回転力を利用して回動させることで、シート本体20を回転させることも可能である。また、本実施形態では、車両の右側に設けられたドア開口部Dの方向に回動可能な回転機構40を例示したが、回転機構40を左側に設けられたドア開口部Dの方向に回動可能な構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10・・・車両用シート装置
20・・・シート本体
35・・・前後スライドベース(固定部材)
40・・・回転機構
40r・・四節リンク機構
41・・・前部リンク
41d・・下部連結軸(固定側連結軸)
41u・・上部連結軸(回転側連結軸)
42・・・後部リンク
42d・・下部連結軸(固定側連結軸)
42u・・上部連結軸(回転側連結軸)
45・・・回転テーブル(回転部材)