(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】方向性送信の匿名収集
(51)【国際特許分類】
H04W 64/00 20090101AFI20230731BHJP
H04W 74/08 20090101ALI20230731BHJP
G01S 5/08 20060101ALI20230731BHJP
G01S 3/46 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H04W64/00 130
H04W64/00 160
H04W74/08
G01S5/08
G01S3/46
(21)【出願番号】P 2022545009
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2020060801
(87)【国際公開番号】W WO2021156662
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519095016
【氏名又は名称】ディーヨーク ロケイション テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】シュッパック、エラン
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0084386(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0048770(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0312278(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0012971(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0235004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04B 7/24-7/26
G01S 5/08
G01S 3/46
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コミュニケーションの方法であって:
無線ネットワークの第1の局において、複数のアンテナを有する第2の局によってシングルキャリア変調方式を使用して前記無線ネットワークを介して送信されたビーコンを検出するステップと;
前記ビーコンに応答して、マルチキャリア変調方式を使用して、前記第1の局から前記第2の局へ前記無線ネットワークを介して送信要求(RTS)フレームを送信するステップと;
前記RTSフレームに応答して、前記マルチキャリア変調方式を使用して、前記複数のアンテナを介して前記第2の局によって、前記無線ネットワークを介して送信される送信可能(CTS)フレームを、前記第1の局で受信するステップと;
受信した前記CTSフレームに基づいて、前記第2の局から前記第1の局への送信角度を推定するステップと;そして
推定された前記第2の局からの前記送信角度に基づいて前記第1の局の位置座標を検出するステップと;
を有することを特徴とするコミュニケーションの方法。
【請求項2】
前記シングルキャリア変調方式は、相補コードキーイング(CCK)方式であり、一方、前記マルチキャリア変調方式は、直交周波数分割多重(OFDM)方式である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビーコンを検出するステップは、前記ビーコンから前記第2の局の媒体アクセス制御(MAC)アドレスを抽出するステップを有し、前記RTSフレームを送信するステップは、前記MACアドレスを受信機アドレス(RA)として前記RTSフレームに挿入するステップを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の局は、前記無線ネットワーク内のアクセスポイント(AP)を含み、前記第2の局の前記MACアドレスは、前記APの基本サービスセット識別子(BSSID)を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記CTSフレームを受信した後、前記第1の局が少なくとも100ミリ秒の間、それ以上のフレームを前記第2の局に送信しない、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CTSフレームを受信するステップは、前記第2の局の前記複数のアンテナからそれぞれ送信された複数の信号を、前記複数の信号間の事前定義された周期的遅延で受信するステップを有し、そして前記
送信角度を推定するステップは、前記周期的遅延を使用して前記複数の信号間の位相遅延を測定し、そして測定された前記位相遅延を使用して前記
送信角度を検出するステップを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の局は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)内の移動局であり、前記第2の局は、WLAN内の固定アクセスポイント(AP)である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記位置座標を検出するステップは、複数の前記APから前記移動局へのそれぞれの
送信角度を推定することによって前記移動局の前記位置座標を計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記RTSフレームを送信するステップと、前記CTSフレームを受信するステップは、前記移動局と前記APとの間に関連付けを確立することなく、前記APとの間で前記RTSフレーム送信し、および前記CTSフレームを受信するステップを有する、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記RTSフレームを送信しなかった第3の局において、前記第2の局から前記CTSフレームを受信し、受信した前記CTSフレームに基づき前記第2の局から前記第3の局への送信角度を推定するステップを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コミュニケーションの方法であって:
無線ネットワーク内の第1の局において、複数のアンテナを有する第2の局によって前記無線ネットワークを介して送信されたビーコンを検出するステップと;
前記ビーコンに応答して、マルチキャリア変調方式を使用して、前記第1の局から前記第2の局へ前記無線ネットワークを介して送信要求(RTS)フレームを送信するステップと;
前記RTSフレームに応答して、前記マルチキャリア変調方式を使用して、前記複数のアンテナを介して前記第2の局によって、前記無線ネットワークを介して送信される送信可能(CTS)フレームを、前記第1の局で受信するステップと;そして
受信した前記CTSフレームに基づいて、前記第2の局から前記第1の局への送信角度を推定するステップと;
を有し、
前記ビーコンを検出するステップは、前記ビーコンから前記第2の局の媒体アクセス制御(MAC)アドレスを抽出するステップを有し、前記RTSフレームを送信するステップは、前記MACアドレスを受信機アドレス(RA)として前記RTSフレームに挿入するステップを有し、
前記RTSフレームを送信するステップは、前記第2の局の前記MACアドレスを符号化するスプーフィングされたアドレスを生成し、そして前記スプーフィングされたアドレスを送信機アドレス(TA)として前記RTSフレームに挿入し、それによって前記第2の局に対し、前記スプーフィングされたアドレスを前記受信機アドレス(RA)として前記CTSフレームに挿入するようにさせる、ステップを有する、
ことを特徴とするコミュニケーションの方法。
【請求項12】
前記CTSフレームを受信するステップは、前記第2の局が前記CTSフレームを送信したことを識別するために、前記CTSフレームの前記受信機アドレス(RA)を復号するステップを有する、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
通信用の装置であって:
複数のアンテナを有する局によってシングルキャリア変調方式を使用して無線ネットワークを介して送信されるビーコンを検出するように構成される送受信機と;そして
前記ビーコンに応答して前記送受信機を駆動し、マルチキャリア変調方式を使用して前記無線ネットワークを介して送信要求(RTS)フレームを前記局に送信し、そして前記局から前記送受信機への
送信角度を推計し、そして
前記局からの送信角度に基づいて
前記装置の位置座標を検出するために、前記RTSフレームに応答して、前記マルチキャリア変調方式を使用して、前記複数のアンテナを介して前記局によって送信され、前記送受信機によって受信される送信可能(CTS)フレームを処理する、ように構成されるプロセッサと:
を有することを特徴とする、通信用の装置。
【請求項14】
前記シングルキャリア変調方式は、相補コードキーイング(CCK)方式であり、一方、前記マルチキャリア変調方式は、直交周波数分割多重(OFDM)方式である、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記局の媒体アクセス制御(MAC)アドレスを前記ビーコンから抽出し、前記MACアドレスを前記RTSフレームに受信機アドレス(RA)として挿入するように構成される、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記局は、前記無線ネットワーク内のアクセスポイント(AP)を含み、前記
局のMACアドレスは、前記APの基本サービスセット識別子(BSSID)を有する、ことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記CTSフレームを受信した後、前記プロセッサは、前記局に対し、少なくとも100ミリ秒の間、それ以上のフレームを送信しない、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記CTSフレームは、前記局の前記複数のアンテナからそれぞれ送信された、複数の信号間の所定の周期的遅延を伴う複数の信号を有し、そして前記プロセッサは、前記周期的遅延を使用して前記複数の信号間の位相遅延を測定し、そして測定された前記位相遅延を使用して
送信角度を検出するように構成される、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記送受信機が無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)内の移動局で動作するように構成され、前記局が前記WLAN内の固定アクセスポイント(AP)である、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサは、複数の前記APから前記移動局へのそれぞれの
送信角度を推定することによって、前記移動局の位置座標を検出するように構成される、ことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記移動局は、前記移動局と前記APとの間に関連付けを確立することなく、前記APとの間でRTSおよびCTSフレームを送受信するように構成される、ことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項22】
プログラム命令が格納されている非一過性コンピュータ可読媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令は、プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサに対し、複数のアンテナを備えた局によってシングルキャリア変調方式を使用して無線ネットワークを介して送信されたビーコンを検出し、そして前記ビーコンに応答して、マルチキャリア変調方式を使用して前記無線ネットワークを介して送信要求(RTS)フレームを前記局に送信し、そして、前記局からの
送信角度を推定し、および前記局からの推定された送信角度に基づいて位置座標を検出するため、前記RTSフレームに応答して、前記マルチキャリア変調方式を使用して、前記複数のアンテナを介して、前記無線ネットワーク上で送信された、送信クリア(CTS)フレームを受信し、そして処理するようにさせる、ことを特徴とするコンピュータソフトウェア製品。
【請求項23】
通信用の装置であって:
複数のアンテナを有する局によって無線ネットワークを介して送信されたビーコンを検出するように構成される送受信機と;そして
前記ビーコンに応答して前記送受信機を駆動し、マルチキャリア変調方式を使用して前記無線ネットワークを介して送信要求(RTS)フレームを前記局に送信し、そして前記局から前記送受信機への
送信角度を推計するために、前記RTSフレームに応答して、前記マルチキャリア変調方式を使用して、前記複数のアンテナを介して前記局によって送信され、前記送受信機によって受信された送信可能(CTS)フレームを処理する、ように構成されるプロセッサと:
を有し、
前記プロセッサは、前記ビーコンから前記局の媒体アクセス制御(MAC)アドレスを抽出し、そして前記MACアドレスを受信機アドレス(RA)として前記RTSフレームに挿入するように構成され、
そして前記プロセッサは、前記局のMACアドレスを符号化するスプーフィングされたアドレスを生成し、そして前記スプーフィングされたアドレスを送信機アドレス(TA)として前記RTSフレームに挿入し、それによって前記局に対し、前記スプーフィングされたアドレスを前記受信機アドレス(RA)として前記CTSフレームに挿入させる、ように構成される、
ことを特徴とする、通信用の装置。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記局が前記CTSフレームを送信したことを識別するために、前記CTSフレームの前記RAを復号するように構成される、ことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、無線通信システム、特に無線ネットワーク信号に基づく位置特定のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動無線送受信機の位置を見検出するための様々な技術が当技術分野で知られている。たとえば、現在、ほぼすべての携帯電話に全地球測位システム(GPS)受信機が搭載されており、静止衛星から受信した信号から位置座標を取得する。ただし、GPSは弱い衛星信号に依存しているため、屋内や混雑した都市環境では、たとえあったとしても、うまく機能しない。セルラーネットワークは、携帯電話と複数のセルラーアンテナの間で送受信される信号に基づいて電話の位置を三角測量することもできるが、この手法は不正確で信頼性がない。
【0003】
既存の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)インフラストラクチャに基づいて、屋内位置決めのための多くの方法が提案されている。そのようなアプローチの1つは、たとえば、SIGCOMM ‘15(ロンドン、英国、2015年8月17~21日)で公開されたKotaru他著、「SpotFi:WiFiを使用したデシメートルレベルの位置決め」で説明されている。著者によると、SpotFiは、アクセスポイントから受信したマルチパス要素の到来角(AoA)を計算し、フィルタリングと推定の手法を使用して、位置決めターゲットとアクセスポイント間の直接経路のAoAを識別する。
【0004】
別の例として、米国特許出願公開第2009/0243932号(特許文献1)は、モバイルデバイスの位置を決定するための方法を記載している。この方法は、複数の場所が既知の間で信号を送信し、場所が未知のモバイルデバイスなどのデバイスにおいて信号を受信することを含む。信号は、異なる周波数の複数のトーンが含み、結果的に残留位相差のセットをもたらすことができる。モバイルデバイスの位置は、既知の位置と、送信されたトーン間の周波数および位相差を使用して決定することができる。一実施形態では、直交周波数分割多重(OFDM)信号をアクセスポイントとモバイルデバイスとの間で使用して、モバイルデバイスの位置を決定することができる。
【0005】
米国特許第9,814,051号(特許文献2)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれるが、無線送信機の少なくとも第1および第2のアンテナからそれぞれ送信される少なくとも第1および第2の信号を所与の場所で受信することを含む信号処理の方法を記載している。少なくとも第1および第2の信号は、送信された信号間の事前定義された周期的遅延を伴うマルチキャリア符号化方式を使用して同一のデータを符号化する。受信した第1信号と第2信号は、第1信号と第2信号の間の位相遅延の測定値を導出するために、周期的遅延を使用して処理される。位相遅延の測定に基づいて、無線アクセスポイントから特定の場所への第1信号と第2信号の出発角度が推定される。
【0006】
RTS/CTS(送信要求/送信可能)メカニズムは、IEEE 802.11メディアアクセス制御(MAC)標準に従って、キャリア検出と衝突回避の目的でWLANにおいて使用される。WLAN内の局は、ネットワーク割り当てベクトル(NAV)を維持して、無線メディアがビジーであると見なされる時間を示し、たとえば、IEEE802.11-2012標準のセクション9.3.2.4で説明されているように、RTS/CTSメカニズムを使用してNAVを更新する。発信局は、WLANを介してRTSフレームを送信する。受信機アドレス(RA)は、フレームの送信先の局のMACアドレスを示し、送信機アドレス(TA)は、フレームを送信する局のMACアドレスを示す。RTSフレームを受信すると、受信局はCTSフレームを送信する。このフレームでは、RAがRTSフレームのTA値に設定される。RTSまたはCTSフレームを受信した局は、NAV設定を更新し、NAV値で示される期間は送信を控える。この期間中、発信局は競合することなく1つまたは複数のデータフレームをWLAN経由で送信できる。
【0007】
米国特許第8,504,063号(特許文献3)は、第1のデバイスが複数のアンテナでのビームフォーミング操作を利用して第2のデバイスに信号を指向性送信できる方法およびシステムを記載している。第1のデバイスは、第2のデバイスから信号を受信して、第2のデバイスとの匿名の指向性ピアツーピア無線通信リンクを確立することができる。送信された信号は、送信要求(RTS)信号を含み得、受信された信号は、送信可能(CTS)信号を含み得る。送信された信号は、前文またはフレーム構造の他の部分に埋め込まれ得る第1のデバイスに対応する関連識別(ID)を含み得る。リンクが確立されると、たとえばプロファイル情報などのユーザ情報やメッセージが、あるデバイスから別のデバイスに送信される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2009/0243932号
【文献】米国特許第9,814,051号
【文献】米国特許第8,504,063号
【発明の概要】
【0009】
以下に記載される本発明の実施形態は、位置検出のための改善された方法およびシステムを提供する。
したがって、本発明の実施形態によれば、無線ネットワークの第1の局において、複数のアンテナを有する第2の局によって無線ネットワークを介して送信されたビーコンを検出するステップを有する、コミュニケーションの方法が提供される。ビーコンに応答して、マルチキャリア変調方式を使用して、第1の局から第2の局へ無線ネットワークを介して送信要求(RTS)フレームが送信される。第1の局は、RTSフレームに応答して、マルチキャリア変調方式を使用して、複数のアンテナを介して第2の局によって、無線ネットワークを介して送信される送信可能(CTS)フレームを受信すし、そして受信したCTSフレームに基づいて、第2の局から第1の局への送信角度を推定する。
【0010】
開示された実施形態では、ビーコンを検出するステップは、第1の局において、シングルキャリア変調方式を使用して、第2の局によって送信された信号をビーコンとして識別するステップを有する。一実施形態では、シングルキャリア変調方式は、相補コードキーイング(CCK)方式であり、一方、マルチキャリア変調方式は、直交周波数分割多重(OFDM)方式である。
【0011】
いくつかの実施形態では、ビーコンを検出するステップは、ビーコンから第2の局の媒体アクセス制御(MAC)アドレスを抽出するステップを有し、RTSフレームを送信するステップは、MACアドレスを受信機アドレス(RA)としてRTSフレームに挿入するステップを有する。開示された実施形態では、RTSフレームを送信するステップは、第2の局のMACアドレスを符号化するスプーフィングされたアドレスを生成し、スプーフィングされたアドレスを送信機アドレス(TA)としてRTSフレームに挿入し、それによって第2の局に対し、スプーフィングされたアドレスを受信機アドレス(RA)としてCTSフレームに挿入するようにさせる。次に、CTSフレームを受信するステップは、第2の局がCTSフレームを送信したことを識別するために、CTSフレームの受信機アドレス(RA)を復号するステップを有する。一実施形態では、第2の局は、無線ネットワーク内のアクセスポイント(AP)を含み、第2の局のMACアドレスは、APの基本サービスセット識別子(BSSID)を有する。
【0012】
通常、CTSフレームを受信した後、第1の局が少なくとも100ミリ秒の間、それ以上のフレームを第2の局に送信しない。
【0013】
開示された実施形態では、CTSフレームを受信するステップは、第2の局の複数のアンテナからそれぞれ送信された複数の信号を、複数の信号間の事前定義された周期的遅延で受信するステップを有し、そして出発角度を推定するステップは、周期的遅延を使用して複数の信号間の位相遅延を測定し、そして測定された位相遅延を使用して出発角度を顕出するステップを有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の局は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)内の移動局であり、第2の局は、WLAN内の固定アクセスポイント(AP)である。一実施形態では、方法は、複数のAPから移動局へのそれぞれの出発角度を推定することによって移動局の位置座標を検出するステップを有する。追加的または代替的に、RTSフレームを送信するステップと、CTSフレームを受信するステップは、移動局とAPとの間に関連付けを確立することなく、APとの間でRTSフレーム送信し、およびCTSフレームを受信するステップを有する。
【0015】
一実施形態では、RTSフレームを送信しなかった第3の局において、第2の局からCTSフレームを受信し、受信したCTSフレームに基づき第2の局から第3の局への送信角度を推定するステップを有する。
【0016】
本発明の実施形態によればまた、通信用の装置であって:複数のアンテナを有する局によって無線ネットワークを介して送信されるビーコンを検出するように構成される送受信機と;そしてビーコンに応答して送受信機を駆動し、マルチキャリア変調方式を使用して無線ネットワークを介して送信要求(RTS)フレームを局に送信し、そして局から送受信機への出発角度を推計するために、RTSフレームに応答して、マルチキャリア変調方式を使用して、複数のアンテナを介して局によって送信され、送受信機によって受信される送信可能(CTS)フレームを処理する、ように構成されるプロセッサと:を有することを特徴とする、通信用の装置が提供される。
【0017】
本発明の実施形態によれば、追加的に、プログラム命令が格納されている非一過性コンピュータ可読媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、命令は、プロセッサによって読み取られると、プロセッサに対し、複数のアンテナを備えた局によって無線ネットワークを介して送信されたビーコンを検出し、そしてビーコンに応答して、マルチキャリア変調方式を使用して無線ネットワークを介して送信要求(RTS)フレームを局に送信し、そして、局からの出発角度を推定するため、マルチキャリア変調方式を使用して、複数のアンテナを介して、RTSフレームに応答して、無線ネットワークを介して、送信クリア(CTS)フレームを受信し、そして処理するようにさせる、ことを特徴とするコンピュータソフトウェア製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明から、以下の図面と合わせて、より完全に理解されるであろう。
【
図1】本発明の一実施形態による、無線位置検出のためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、送信機から受信機への無線信号の出発角度を導出する際に使用される座標フレームを概略的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、モバイル通信装置の位置を検出するための方法を示す、
図1のシステムの構成要素の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、位置検出のための指向性送信の匿名収集の方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
IEEE 802.11標準に従って動作するWLANでは、アクセスポイント(AP)は、ビーコンフレーム(一般に単に「ビーコン」と呼ばれる)を定期的に送信して、その存在をアナウンスし、サービスセットのメンバーを同期する。ビーコンには、送信APの基本サービスセット識別子(BSSID)が含まれ、APの機能に関する情報が含まれる。
【0020】
IEEE802.11nなどのIEEE802.11ファミリの標準の高度なメンバーでは、APは、マルチキャリア変調方式(具体的にはOFDM)を使用して、複数のアンテナを介してビーコンを含むダウンリンク信号を送信する。 APは、異なるアンテナによって送信されるそれぞれの信号間に事前定義された周期的遅延を導入する。上記の米国特許第9,814,051号(特許文献2)は、受信機が異なるアンテナからの信号間の位相遅延を推定する際にこの周期的遅延をどのように使用できるか、および受信機が信号の出発角度を検出する際にこの位相遅延をどのように使用できるかを記載している。受信者へのAP(たとえば、第13欄、11行-18欄、45行参照)。これらの推定手法は、マルチアンテナOFDMビーコンにも適用できる(同、第15欄、1-18行に記載されている)。このアプローチの利点の1つは、アンテナが1つしかない移動局でも、移動局がAPのBSSIDとの関連付けを確立しなくても、APから移動局への出発角度を見つけることができることである。
【0021】
ただし、IEEE802.11bなどのIEEE802.11ファミリの以前のメンバーは、OFDMまたはマルチアンテナ伝送をサポートしていない。IEEE 802.11bに従って、APは、シングルキャリア変調方式(相補コードキーイング(CCK))を使用して、約2.4GHzの帯域でビーコンを送信する。従来の局との下位互換性を維持するために、IEEE802.11gやIEEE802.11nなどのより高度な機能を備えた多くのAPは、引き続きこの方法でビーコンを送信する。ビーコンは通常、APの複数のアンテナの中の単一のアンテナから全方向に送信される。したがって、これらのビーコンは、APから移動局への出発角度を見つけるために必要な位相情報を移動局に提供しない。
【0022】
802.11gまたは802.11n機能を備えた移動局がAPに関連付けられた後、APは複数のアンテナを介してOFDM信号を移動局に送信する。 (IEEE 802.11nに従って動作するAPは、2.4GHz帯域または約5GHzの帯域でマルチアンテナ信号を送信できる。2.4GHz帯域で動作する802.11nAPは、「802.11ng」APと呼ばれることもある。)ただし、この関連付けプロセスには時間がかかり、移動局が持っていない可能性のある資格情報を提示する必要がある。移動局が複数の異なるAPからの出発角度を推定することによってその位置を見つける、上記の米国特許第9,814,051号に記載されているようなアプリケーションは、より速い方法を必要とし、802.11ngAPなどのAPにマルチアンテナOFDM信号の送信を開始するように促す。これらの必要性は、移動車両などで移動局が移動しているときに特に深刻である。
【0023】
本明細書で記載される本発明の実施形態は、移動局とAPとの間のいかなる種類の関連付けも必要とせずに、APがそれらの複数のアンテナを介してマルチキャリア信号を送信するように誘導する際に移動局によって使用され得る技術を提供することによってこの必要性に対処する。これらの手法は、上記のRTS/CTSメカニズムを利用する。このメカニズムは通常、APのハードウェアロジックに実装されており、WLAN内の局間のあらゆる種類の関連付けから独立している。したがって、移動局と複数の異なるアクセスポイントの間で順番に迅速に実行できる。
【0024】
実際、802.11規格では、RTSフレームの受信者が短い制限時間内に応答する必要がある。このため、RTS/CTSメカニズムは通常、ハードウェアロジックのAPによって実装され、RTSフレームの送信機アドレス(TA)の認証は一切含まれない。本発明のいくつかの実施形態は、以下に説明するように、TAのスプーフィングにおいても、RTSフレームが向けられるAPのMACアドレスを符号化する際にも、この特徴を利用する。
【0025】
RTS/CTSは通常、衝突回避の目的で使用され、その直後に、RTSフレームを送信した局による1つ以上のデータフレームの送信が続く。しかしながら、本実施形態では、RTSフレームを送信する局は、次に受信するCTSフレームを方向情報のソースとして使用し、通常、RTSフレームが送信された局に対しそれ以上のフレームを、それ以上ではないにしても、少なくとも100ミリ秒の期間送信しない。RTS/CTSメカニズムのこの新しいアプリケーションは、APから特定の移動局への出発角度を見つけるのに特に役立つ。しかし、それは、802.11 WLANの局の間だけでなく、無線ネットワークの他の種類の局の間でも、他のマルチアンテナ方向探知技術を使用して局間の角度と方向を見つける場合に適用できる。
【0026】
以下に説明する特定の実施形態では、WLAN内の移動局などの無線ネットワーク内の第1の局は、APなどの複数のアンテナを有する第2の局によって無線ネットワークを介して送信されるビーコンを検出する。ビーコンは、上で説明したように、CCKなどのシングルキャリア変調方式を使用して送信される。ビーコンに応答して、第1の局は、OFDMなどのマルチキャリア変調方式を使用して、RTSフレームを第2の局に送信する。RTSフレームに応答して、2番目の局はマルチキャリア変調方式を使用して複数のアンテナを介してCTSフレームを送信する。次に、受信したCTSフレームに基づいて、第2の局から第1の局への送信角度、例えば出発角度を推定することができる。
【0027】
このアプローチには、APの近くにある複数の位置検出移動局に同時にサービスを提供できるという追加の利点がある。この種の状況では、1つの移動局がRTSフレームを送信する。これにより、残りの移動局は独自のRTSフレームを送信しなくなる。これらすべての移動局のほとんどは、APからCTSフレームを受信するため、それら独自の、APからの出発角度を検出することができる。
【0028】
(システムの説明)
図1は、本発明の実施形態による、無線通信および位置検出のためのシステム20の概略図である。例として、
図1は、ショッピングモールや通りなど、複数のアクセスポイント22、24、26、…が、多くの場合、互いに独立した異なるWLAN所有者によって展開される典型的な環境を示している。(表記「…」は、本説明において所与のタイプのアイテムを列挙する際に使用され、所与のタイプのアイテムの図のインスタンスがそのようなアイテムのより大きなグループの一部である可能性があることを示す。)アクセスポイントによって送信される信号はシステム20によってカバーされるエリア内を自由に動き回るユーザ32によって操作される移動局28、30、…の形の受信機によって受信される。図の実施形態では、局28、30、…は、スマートフォンとして示されている。しかし、ラップトップおよびタブレットコンピュータ、ならびに専用の無線タグなどの他の種類のモバイル送受信機は、同様の方法で使用でき、以下に説明するように、アクセスポイント22、24、26、…の出発角度を同様に検出することができる。
【0029】
図1に示すように、システム20内のアクセスポイント22、24、26、…のそれぞれは、2つまたは3つのアンテナ34を有すると想定される。本発明の原理はより大きな数のアンテナをも有しうる固定送受信機にも適用できる。移動局28、30、…はそれぞれ、無線送受信機37に接続された単一の全方向性アンテナ36を有すると想定されている。しかし、角度を検出するための本明細書に記載の技術は、マルチアンテナ局によって同様に実施することができる。送受信機37は、典型的には、物理層(PHY)およびMACインターフェースを含む、当技術分野で知られている、適切なアナログおよびデジタルインターフェース回路を含む。
【0030】
各移動局28、30、…は、それぞれのアクセスポイント22、24、26、…からの信号の出発角度を推定し、そして各アクセスポイントに関する識別子(BSSIDなど)を抽出するために、アンテナ36によってアンテナ34から受信された信号を処理するそれぞれのプロセッサ39を備える。出発角度は、アクセスポイントと移動局が共通の平面に近接していると仮定して、2次元で計算することも、3次元座標系で計算することもできる。これらの出発角度は、アクセスポイントの座標フレーム内のアクセスポイントと移動局間の方向の角度(
図1でαとマークされている)を検出するために使用される。以下でさらに説明するように、移動局は、必ずしもアクセスポイントと関連付けなくても、これらの機能を実行することができる。
【0031】
プロセッサ39は通常、送受信機37の適切なハードウェアベースの機能を呼び出しながら、適切なソフトウェアの制御下で本明細書に記載されている機能を実行する、組み込み型の多目的マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを備えている。このソフトウェアは、光、磁気、または電子メモリ媒体などの非一過性コンピュータ可読媒体に保管されうる。代替的または追加的に、プロセッサ39の機能の少なくともいくつかは、プログラム可能なまたはハードワイヤード論理で実装され得る。通常、プロセッサ39は、移動局28、30、…内で他のコンピューティングおよび制御機能も実行するが、これらの機能は、本発明の範囲内ではない。
【0032】
本実施形態では、1つまたは複数のアクセスポイント22、24、26、…は、レガシープロトコルに従ってビーコンを送信する。たとえば、前述のように、802.11gまたは802.11ngアクセスポイントはIEEE 802.11bと互換性のあるビーコンを送信できる。これにより、ビーコンは2.4GHz帯域の単一のキャリアを介してCCKを使用して送信される。ビーコンは、送信アクセスポイントのBSSIDを提供する。そのようなビーコンを受信すると、移動局28などの移動局は、アクセスポイントとのRTS/CTS交換を開始する。移動局は、交換においてOFDM信号を使用してRTSフレームを送信する。この交換により、アクセスポイントはRTSフレームと同じ帯域でOFDM信号を送信する。この帯域から、移動局とアクセスポイントの間に必ずしも関連付けを作成しなくても、出発角度を見つけることができる。この機能は、
図4を参照して以下でさらに説明される。
【0033】
同時に、移動局28、30、…は、インターネット通信の目的で、1つまたは複数のアクセスポイント22、24、26、…に関連付けることができる。代替的または追加的に、移動局は、セルラーネットワークまたは他の接続を介してインターネットにアクセスすることができる。いずれにせよ、移動局28、30、…は、ネットワーク38を介して収集した出発角度データおよびアクセスポイント識別をマッピングサーバ40に通信する。この情報は、移動局のプロセッサ39においてバックグラウンドで実行されている適切なアプリケーションプログラム(「アプリ」)によって自律的かつ自動的に収集および報告され得る。サーバ40は、上記の米国特許第9,814,051号(特許文献2)に記載されているように、例えば三角測量によって、移動局のそれぞれの位置座標を見つけるために、移動局によって提供されたデータを処理することができる。
【0034】
サーバ40は、通常、プログラム可能なプロセッサ42およびメモリ44を備える汎用コンピュータを含む。本明細書で説明されるサーバ40の機能は、通常、プロセッサ42上で実行されるソフトウェアに実装され、光学、磁気、または電子メモリメディアなどの有形の非一過性コンピュータ可読媒体に格納され得る。
【0035】
図2は、本発明の実施形態による、アクセスポイント24と移動局28との間で送信される無線信号の角度を導出する際に使用される座標フレームを概略的に示す図である。アクセスポイントと移動局のこの特定のペアは、純粋に便宜上選択されており、同様の原則が任意のペアに適用される。アクセスポイント24は2つのアンテナ34(Tx1およびTx2とラベル付けされている)を有するものとして示されているが、同じ幾何学的原理が、線形配列に配置された3つ以上のアンテナを有するアクセスポイントに適用される。
【0036】
アンテナ34は、アンテナのベースを通過する線として配列の軸を定義する。アンテナは、配列の軸に沿って既知のアンテナ間距離 d だけ離れている。 (配列の軸は、アンテナ34を通る線である。
図2に垂直の破線で示されている。)たとえば、無線アクセスポイントでは、距離 d は半波長になるように設計されている。たとえば、2.4GHzの標準WLAN送信周波数で λ/ 2 = 6.25cmであり、ここで、 λ は無線信号の波長である。
図2に示すように、移動局28のアンテナ34からアンテナ36への信号の出発角度 θ は、配列の軸の法線に対して取られる。アクセスポイント24から移動局28までの距離がdよりかなり大きいと仮定すると、Tx2からのパス長と比較して、Tx1からアンテナ36(Rxと呼ばれる)までのパス長は d*sinθ の差がある。
【0037】
例として、Tx2からRxまでのパスの長さが6.0000m、θ=30°であるとすると、Tx1からRxまでのわずかに長いパスは6.03125mになる。この経路差は、90°の位相差に変換される:Δφ= dsin(π/6)=λ/2 * 1/2 = λ/4。位相差は、角度や伝送の波長(または周波数)によって異なる。アクセスポイント24がIEEE802.11n規格に従ってOFDM信号を送信する場合、上記の米国特許第9,814,051号に記載のように、例えば、移動局28のプロセッサ39は、アンテナ34によって送信される信号間の周期的遅延に基づいて、位相差Δφを測定することができる。。あるいは、プロセッサ39は、位相差を見つける際にアンテナ34から受信された信号の他の特徴を検出して利用することができる。
【0038】
図3は、本発明の実施形態による、移動局30の位置を見つけるための方法を示す、
図1のシステムの構成要素の概略図である。この方法は、アクセスポイント22、24、および26のそれぞれの位置座標(x
i、y
iとラベル付けされている)およびBSSIDが、図の(X、Y)軸によって示される基準フレームにおいて、サーバ40によってすでにマッピングされていることを前提としている。マップには、各アクセスポイントのそれぞれの指向角度(φ
i)、この場合、各アクセスポイントのアンテナ配列の軸の法線の方向も示されている。
図3の方法では、2次元の基準フレームで出発角度を使用する(上記で説明したように、アクセスポイントと移動局が共通の平面に近接していると仮定する)。あるいは、この方法は、必要な変更を加えて、3次元に拡張することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、マップは、他の移動局および/または他の入力データによって以前に行われた出発角度の測定に基づいて構築される。この場合の移動局は、アクセスポイントのそれぞれの識別子とともに、それらの位置および推定出発角度をサーバ40に報告し、サーバはそれに応じてマップを構築する。サーバ40は、アクセスポイントのオペレータによる協力を必要とせずに、このアクセスポイントマップを構築することができる。代替的または追加的に、マップは、ネットワークオペレータによって提供される情報および/または専用の機器を使用して行われる物理的測定値を組み込むことができる。
【0040】
図3の実施形態では、移動局30は、アクセスポイント22、24、および26のそれぞれからマルチアンテナ信号を受信する。前述のように、移動局30は、1つまたは複数のアクセスポイントとのRTS/CTS交換を開始することができる。アクセスポイントにそのような信号を送信するように誘導するため。移動局は、ここで説明する手法とそれぞれのBSSIDを使用して、図でθ
1、θ
2、およびθ
3とラベル付けされた各アクセスポイントのそれぞれの出発角度(AoD)を抽出する。移動局30は、これらの検出をネットワーク38(
図1)を介してサーバ40に報告し、サーバ40は対応する位置座標を返す。サーバは、アクセスポイントの位置座標および指向角度(x
i、y
i、φ
i)を返すことができ、その場合、移動局30は、これらの座標および測定された出発角に基づいて、自身の位置(x
s、y
s)を三角測量することができる。代替的または追加的に、移動局30は、それが推定した出発角度の値をサーバ40に伝達し、次に、サーバ40は、位置座標を計算して、移動局30に返す。
【0041】
移動局30の位置座標は、三角測量のプロセスによって計算される。出発角度の測定値は、マップの固定基準フレーム内で、アクセスポイントのそれぞれの位置座標(x
i、y
i)から角度α
iで伸びる射線を定義する。これらの角度は、それぞれの指向角度(φ
i)と各アクセスポイントからの測定された出発角度(θ
i)によって与えられる式 φ
i=θ
i+α
i によって定義される。
図3に示すように、移動局30の位置座標(x
s、y
s)は、これらの射線の交点に対応する。
【0042】
(アクセスポイントによるマルチアンテナ送信の誘導)
図4は、本発明の実施形態による、位置検出の目的のための指向性送信の匿名収集のための方法を概略的に示すフローチャートである。この方法は、前の図に示され、上で説明されたように、システム20の要素を参照して、具体性および明確さのために、以下に説明される。
【0043】
あるいは、RTS/CTS機能をサポートする他の種類のネットワーク内の局間の送信角度を推定する際に、必要な変更を加えて、この方法の原理を適用することもできる。ネットワークは、IEEE 802.11ファミリのプロトコルに従って、またはRTS/CTSまたはクリアチャネル評価のための同等の方法をサポートする他の無線プロトコルに従って動作する場合がある。この方法を実施する局は、移動式または固定式のいずれかであり得る。例えば、固定局は、移動局の位置を見つける際に本方法を適用することができる。
【0044】
この例では、移動局28は、ビーコン受信ステップ50でアクセスポイント22、24、26、…からビーコンを受信する。各ビーコンには、ビーコンを送信するアクセスポイントのBSSIDの形式のMACアドレスが含まれる。一部のビーコンは、マルチアンテナOFDM信号として送信される場合がある。そのような場合、移動局28は、RTS/CTS交換に頼ることなく出発角度を導出することができるであろう。ただし、この例では、IEEE 802.11bとの互換性のために、1つまたは複数のビーコンが2.4GHz帯域のCCK信号などの全方向性のシングルキャリア信号として送信されると想定している。
【0045】
移動局28は、RTS送信ステップ52で、全方向性ビーコンを送信したアクセスポイント、たとえばアクセスポイント22を選択し、選択したアクセスポイントにRTSフレームを送信する。移動局は、適切なOFDMスキームを使用してRTSフレームを送信する。移動局は、RTSフレームの受信機アドレス(RA)を、アクセスポイントから受信したビーコンによって示されるように、アクセスポイント22のBSSIDに設定する。移動局は、独自のMACアドレスを送信機アドレス(TA)としてRTSフレームに挿入できる。しかし、本実施形態では、移動局は、アクセスポイント22のBSSIDを一意に符号化するスプーフィングされた値にTAを設定する。例えば、移動局28は、BSSIDと同じ標準長の事前定義されたシードとBSSIDとの間のXORを計算することができる。結果は、有効なTAの長さ(ビット単位)を持つアクセスポイント22に固有の値になる。
【0046】
このRTSフレームを受信すると、アクセスポイント22はCTSフレームを送信することで応答し、RTSフレームのTAがCTSフレームのRAとして挿入される。アクセスポイント22は、CTSフレームをマルチアンテナ信号として、同じ帯域で、RTSフレームと同じ変調方式を使用して、すなわち、OFDMを使用して送信する。移動局28は、CTS受信ステップ54で、CTSフレームを受信する。アクセスポイント22のBSSIDを符号化するようにRTSフレームのTAがスプーフィングされたと仮定すると、移動局は、CTSフレームのRAをデコードして、アクセスポイントのBSSIDを回復する(たとえば、以前にエンコードに使用されたものと同じシードを使用してRAのXORを計算することによって)。移動局28は、アクセスポイント22からのCTSフレーム内のアンテナ34から送信されるそれぞれの信号間の位相遅延を測定し、したがって、角度抽出ステップ56で、アクセスポイントからの出発角度を推定する。
【0047】
ステップ52および54でのスプーフィングされたTAの使用は、特に、アクセスポイントのアドレスがCTSフレームに明示的に埋め込まれていなくても、CTSフレームを送信するアクセスポイントを論理的に識別するという点で有利である。このアプローチにより、移動局28は、それが開始した各RTS/ CTS交換の状態を追跡する必要なしに、ステートレスプロセスとして本方法を実施することができる。また、移動局は複数のアクセスポイントの出発角度をすばやく連続して収集できるため、消費電力を削減し、送受信機37(
図1)のリソースを他の通信タスクに解放する。さらに、移動局30などの他の移動局が同じシードで同じ位置検出アプリケーションを使用すると仮定すると、これらの他の移動局はまた、アクセスポイント22によって送信されたCTSフレームを受信およびデコードすることができ、したがって、アクセスポイントに対する独自の出発角度を検出することができる。(前述のように、ステップ52で送信されたRTSフレームを検出すると、これらの他の移動局は、チャネルの詰まりを防ぐために、独自のRTSフレームの送信を控える。)
【0048】
CTSフレームを受信した後、移動局28は、通常、少なくとも100ミリ秒間、アクセスポイント22にそれ以上のデータフレームを送信せず、むしろ、非送信ステップ58で、そのリソースを位置検出および他のタスクに充てる。移動局28は、十分性チェックステップ60で、移動局の位置を検出するために十分な数の出発角度の測定値を収集したかどうかをチェックする(またはサーバ40にチェックするように要求する)。(移動局28は、2.4GHz帯域と5GHz帯域の両方で、さまざまなアクセスポイントから送信されたOFDM信号を受信して、そして両方の帯域の信号の発信角度を測定することができる。)測定数がまだ十分でない場合、
図4のプロセスはビーコンを受信し、他のアクセスポイントとのRTS/CTS交換を開始するためステップ50に戻る。十分な数の測定値が収集されると、移動局28(またはサーバ40)は、位置計算ステップ62で、移動局の位置座標の計算において、固定アクセスポイントの既知の位置とともに角度測定値を組み合わせる。
【0049】
上記の実施形態は例として引用されており、本発明は、本明細書で特に示され、説明されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだときに当業者に想起される、先行技術に開示されていないその変形および修正を含む。