(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】液流式布帛処理装置及び処理済み布帛の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06B 3/10 20060101AFI20230731BHJP
D06B 15/02 20060101ALI20230731BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
D06B3/10 B
D06B15/02
D06P5/00 Z
(21)【出願番号】P 2023525759
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2022021441
(87)【国際公開番号】W WO2022255197
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2021091073
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正志
(72)【発明者】
【氏名】白石 健二
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-249797(JP,A)
【文献】特開昭52-103581(JP,A)
【文献】実開昭54-32375(JP,U)
【文献】特開昭50-154599(JP,A)
【文献】特開昭62-78253(JP,A)
【文献】特開2010-248673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
D06P 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛に対して、処理液による処理を行った後に洗浄液による洗浄を行う液流式布帛処理装置であって、
処理液を滞留させる本体
部を有する処理槽と、
前記
本体部に繋がれていて、前記本体部に加えて布帛が循環可能な循環経路を形成する移送
部と、
前記循環経路にて、布帛の移動方向を変える転向手段と、
前記処理槽に処理液を供給する処理液供給系統と、
前記処理槽に洗浄液を供給する洗浄液供給系統と
、
前記処理槽
における処理液の滞留部分と前記転向手段との間に設けられた押圧体であって、
洗浄運転時に循環移動する布帛を押圧することで布帛に含まれる処理液を布帛より分離する押圧体
と、を
備える、液流式布帛処理装置。
【請求項2】
前記洗浄液供給系統は、前記循環経路の前記押圧体よりも前記循環移動の方向における下流側の位置に、未使用の洗浄液を供給する未使用洗浄液供給部を含む、請求項1に記載の液流式布帛処理装置。
【請求項3】
前記押圧体は、
近接及び離反するように移動する一対の
部材を有する、請求項
1に記載の液流式布帛処理装置。
【請求項4】
前記押圧体における前記一対の部材は、処理液による処理中は互いに離反し、洗浄液による洗浄中は互いに近接する、請求項3に記載の液流式布帛処理装置。
【請求項5】
前記押圧体における前記一対の部材は、前記布帛よりも上方と下方とに位置し、少なくとも下方側の前記部材が、上方側の前記部材に対して近接及び離反するように移動する、請求項4に記載の液流式布帛処理装置。
【請求項6】
前記押圧体における前記一対の部材のうち少なくとも一方はローラーである、請求項5に記載の液流式布帛処理装置。
【請求項7】
前記押圧体における前記一対の部材に含まれる前記ローラーのうちの少なくとも一つは、駆動手段により回転数を制御可能であり、布帛の移動速度と同期させた速度で回転する、請求項6に記載の液流式布帛処理装置。
【請求項8】
前記一対の部材で絞った液が、前記処理槽内の他の液と混ざることを抑制しつつ排出する手段を有する、請求項4に記載の液流式布帛処理装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の液流式布帛処理装置を用い、処理液による処理を行った後に洗浄液による洗浄を行う、処理済み布帛の製造方法であって、
前記押圧体は、洗浄運転時に循環移動する布帛を押圧することで布帛に含まれる処理液を布帛より分離する、処理済み布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2021-091073号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、布帛に対して処理液による染色等の処理を行った後に洗浄液による洗浄を行う液流式布帛処理装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、布帛に対して染色を行うための液流式布帛処理装置が知られている(特許文献1参照)。この液流式布帛処理装置を用いて布帛の染色を行う場合には、まず、水に染料等を添加した処理液を作り、この処理液を布帛に含浸させて一定時間の高温状態に置き、布帛へ染料を染着させる。また、布帛に染料を染着させた後、布帛に残存した処理液等を布帛から除去するために、洗浄液にて洗浄運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記液流式布帛処理装置の洗浄運転では、装置内の処理液の排出と未使用洗浄液の供給とを繰り返すことがある。具体的に、装置内の処理液を一定量排出した後、未使用洗浄液を供給して一定時間布帛を循環させ、布帛内の残処理液と供給した未使用洗浄液とを混合して布帛内の残処理液を希釈した後、再び装置内の処理液を一定量排出するといった手順を繰り返して洗浄を行うことがある。
【0006】
しかしながら、布帛自身の吸水性により処理液の排出が阻害されることによって、処理液の排出効率が低下することがあり、装置内の残処理液を十分に希釈するために、処理液の排出と未使用洗浄液の供給を繰り返すために多量の未使用洗浄液が必要であった。
【0007】
本発明は、処理後の洗浄に用いる洗浄液を節約できる液流式布帛処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液流式布帛処理装置は、
布帛に対して、処理液による処理を行った後に洗浄液による洗浄を行う液流式布帛処理装置であって、
管状の処理槽であって、第一端部、該第一端部と反対側に位置する第二端部、及び前記第一端部と前記第二端部との間に配置され且つ処理液を滞留させる本体部、を有する処理槽と、
前記第一端部と前記第二端部とを繋いで前記本体部に加えて布帛が循環可能な循環経路を形成する移送管と、
前記処理槽に処理液を供給する処理液供給系統と、
前記処理槽に洗浄液を供給する洗浄液供給系統と、を備え、
前記第一端部には、布帛を前記移送管に通すべく布帛の移動方向を変える転向手段が設けられ、
前記処理槽は、処理液の滞留部分と前記転向手段との間に設けられた押圧体であって、循環移動する布帛を押圧することで布帛に含まれる処理液を布帛より分離する押圧体を含む。
【0009】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記洗浄液供給系統は、前記循環経路の前記押圧体よりも前記循環移動の方向における下流側の位置に、未使用の洗浄液を供給する未使用洗浄液供給部を含んでもよい。
【0010】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記押圧体は、布帛を前記循環移動の方向と交差する方向において、前記布帛を両側から挟む一対のローラーであってもよい。
【0011】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記一対のローラーは、少なくとも一方のローラーが他方のローラーに対して、近接及び離反するように移動してもよい。
【0012】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記一対のローラーのうち移動するローラーは、前記本体部に回動支持されたアームにより支持されていてもよい。
【0013】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記一対のローラーは、端部に拡径部を有してもよい。
【0014】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記押圧体は、前記循環移動の方向に交差して一方向に移動することで布帛を押圧するローラーであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る液流式布帛処理装置の模式図である。
【
図2】
図2は、前記液流式布帛処理装置の要部拡大図である。
【
図3】
図3は、変形例に係る液流式布帛処理装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る液流式布帛処理装置について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。液流式布帛処理装置1(以下、単に「布帛処理装置1」とも称する)は、布帛Cに対して、処理液による処理を行った後に洗浄液による洗浄を行う布帛処理装置である。本実施形態の布帛処理装置1は、所謂、染色機であり、処理液による処理として、染色液による染色を行う。なお、染色の代わり、又は、染色に加えて、精錬や晒し等の染色の前処理や、仕上げ処理(例えば、防炎処理)加工などの後処理を行ってもよい。また、この布帛処理装置1は、洗浄液による洗浄として、未使用洗浄液による水洗いを行うが、水に洗浄剤を溶かした洗浄液による洗浄を行ってもよい。また、処理内容によっては、洗浄液が水以外の液体であってもよい。
【0017】
布帛処理装置1は、
図1に示すように、第一端部21、第一端部21と反対側の第二端部22、及び第一端部21と第二端部22との間に配置され且つ処理液を滞留させる本体部23、を有する処理槽2を備える。また、布帛処理装置1は、第一端部21と第二端部22とを繋いで本体部23とともに布帛Cが循環可能な循環経路Rを形成する移送管3と、処理槽2に洗浄液を供給する洗浄液供給系統4と、を備える。本実施形態において布帛Cが循環移動する方向は、
図1における反時計回り方向である。また、布帛処理装置1は、処理槽2に処理液を供給する処理液供給系統8も備える。処理槽2は、処理液の滞留部分6と転向手段5との間に循環移動する布帛Cを押圧することで布帛Cに含まれる処理液を布帛Cより分離する押圧体7を含む。
【0018】
処理槽2は、水平方向に長尺な槽(管状の槽)であり、内部を密閉状態とできる。本実施形態の布帛処理装置1では、処理槽2において、第一端部21と本体部23と第二端部22とが連続し、内部空間が連通している。なお、以下では、水平方向において第一端部21側の端(
図1の左側の端)を一端、第二端部22側の端(
図1の右側の端)を他端と称する。
【0019】
本体部23は、他端から一端側に向けて先下りにわずかに傾斜した円筒状の胴部231と、胴部231から第一端部21に向かうにつれて縮径する縮径部232と、を有する。この縮径部232は、胴部231から一端側に向けて先上がりに傾斜した状態で、胴部231の一端に連結されている。なお、本体部23の一部を縮径させることは必須ではなく、胴部231と同径の円筒状体が胴部231の一端に連結されていてもよい。
【0020】
また、本体部23には、下方に開口した排出口233が設けられている。本実施形態の布帛処理装置1では、本体部23(具体的には、縮径部232)に、下方に突出した下方突出部234が設けられており、下方突出部234に排出口233が配置されている。さらに、実施形態の布帛処理装置1では、本体部23(具体的には、縮径部232)に、上方に突出した上方突出部235が設けられている。
【0021】
第一端部21は、移送管3の一端側の端部が接続される部位であり、処理槽2から移送管3に布帛Cが送り込まれる部位である。具体的に、第一端部21は、縮径部232から連続して伸びる円筒状の第一端部本体211と、第一端部本体211の下部から下方に延び且つ移送管3が接続される接続部212と、を有する。
【0022】
第一端部21には、布帛Cを移送管3に通すべく布帛Cの移動方向を変える転向手段5が設けられている。転向手段5は、布帛Cを移送及び誘導するための部材である。
【0023】
本実施形態の布帛処理装置1では、第一端部21に、転向手段5としてリール214が配置されている。具体的に、第一端部本体211の内部には、リール214が配置されている。このリール214は、循環移動する布帛Cが当接する複数の棒状体が周方向に一定間隔で配置されて構成されており、処理槽2における布帛Cの進行方向(
図1における左右方向)及び上下方向と直交する軸周りで回転する。このリール214は、例えば、
図2に示すように、電動モータ215によって回転駆動される。
【0024】
第一端部本体211は、一端に開閉扉213を有する。この開閉扉213は、処理槽2の一端を開放させた状態(開口状態)と、封止した状態(閉塞状態)とに切り替え可能である。
【0025】
第二端部22は、移送管3の他端側の端部が接続される部位であり、移送管3から処理槽2に布帛Cが送り込まれる部位である。この第二端部22は、処理槽2の他端を閉塞する。
【0026】
移送管3は、処理槽2の第一端部21と第二端部22とを接続して(繋いで)、該処理槽2と共に布帛Cが循環する循環経路Rを形成する。具体的に、移送管3は、処理槽2の下方で水平方向に延びる主管部30と、主管部30の一端から接続部212に向けて先上がりの傾斜方向に延びる第一起立部31と、主管部30の他端から上方に向けて第二端部22内まで延びる第二起立部32と、を有する略U字状の配管である。
【0027】
洗浄液供給系統4は、循環経路Rの押圧体7よりも布帛Cの循環移動の方向における下流側の位置に、未使用洗浄液を供給する新液供給部40を含む。新液供給部40は、例えば、接続部212の内部に設けられたノズルである。このノズルは、洗浄液を接続部212内の中央斜め下方に向けて高速で吐出させる。本実施形態の布帛処理装置1では、ノズルは、接続部212の中心周りの略全周から、接続部212の下端の中央に向けて高速で洗浄液を吐出させる。
【0028】
押圧体7は、
図2に示すように、例えば、布帛Cを循環移動の方向と交差する方向において、布帛Cを両側から挟む一対のローラー70である。即ち、押圧体7は、所謂、マングル式のローラーである。本実施形態の布帛処理装置1では、押圧体7は、処理液による処理の後、洗浄液による洗浄中に布帛Cを押圧する。押圧体7は、例えば、処理液の滞留部分6と転向手段5との間の略中央位置に配置されている。
【0029】
本実施形態の布帛処理装置1では、一対のローラー70は、布帛Cの循環移動の方向に直交する方向に並んでいる。また、一対のローラー70は、それぞれ、布帛Cの循環移動の方向に交差する方向、詳しくは、前記循環移動の方向に直交する方向と循環移動の方向の両方に直交する方向に延びる回転軸を中心に回転する。また、一対のローラー70は、端部(循環移動の方向に交差する方向における端部)に拡径部700を有する。一対のローラー70のうち、一方のローラー71が布帛Cよりも下方に位置し、他方のローラー72は布帛Cよりも上方に位置する。本実施形態の拡径部700は、一方のローラー71の両端部に設けられた鍔状の部位である。
【0030】
また、一対のローラー70は、少なくとも一方のローラー71が他方のローラー72に対して、近接及び離反するように移動する。本実施形態の布帛処理装置1では、一対のローラー70は、処理液による処理中に互いに離反する位置となり、洗浄液による洗浄中に互いに近接する位置となる。具体的に、一方のローラー71(例えば、下方に位置する一方のローラー71)が、他方のローラー72に対して、近接及び離反するように移動する。なお、両方のローラー71、72が、互いに近接及び離反するように移動してもよい。
【0031】
一対のローラー70のうち移動するローラー71は、従動回転が可能なローラーである。また、移動するローラー71は、本体部23に回動支持されている。さらに、移動するローラー71は、
図2に示すように移動できるアーム73により支持されている。このローラー71は、例えば、下方位置と上方位置との間で、布帛Cの循環移動の方向に交差する方向に延びる回転軸を中心に円弧状に移動する。また、ローラー71の少なくとも一部(例えば、ローラー71の略下半分)は、下方突出部234に配置されている。
【0032】
このローラー71の移動には、例えば、エアシリンダー74が用いられている(
図1参照)。また、エアシリンダー74は、長手方向が本体部23(本実施形態では、縮径部232)の延びる方向と平行に配置されている。さらに、エアシリンダー74は、本体部23の側方に、本体部23の奥行き方向に偏った位置に配置されている。エアシリンダー74は、例えば、一端がエアシリンダー74に接続され、且つ、他端がアーム73に接続されたリンク75を介して、移動するローラー71に接続されている。
【0033】
リンク75の一端は、回動軸を介してエアシリンダー74の先端部に連結されている。また、リンク75の他端は、回動軸を介してアーム73に接続されている。リンク75の一端を含む部分は、本体部23の外部で、本体部23の側方に配置されている。また、アーム73とリンク75とを連結する回動軸は、水平方向に延び、本体部23を貫通している。この回動軸は、他方のローラー72の回転中心と平行に延びている。また、この回動軸は、例えば、一本の棒状体で構成されている。具体的に、この棒状体は、水平方向において、移動するローラー71の一端と並ぶ位置から、移動するローラー71の他端と並ぶ位置まで連続して延びている。
【0034】
具体的に、エアシリンダー74の伸縮運動を、アーム73及びリンク75を介してローラー71に伝達して、ローラー71を移動させるとともに、エアシリンダーの押し出し力をローラー71に伝達して、ローラー71を布帛Cに押し付ける。なお、エアシリンダー74は、布帛処理装置1の図示しない制御盤にて駆動され、スイッチ操作または自動制御にて駆動可能である。また、エアシリンダー74へ供給する空気圧力は、減圧弁で調整可能な構造とする。
【0035】
本実施形態の布帛処理装置1では、アーム73の回動範囲の下方に、本体部23の排出口233が配置されている。そのため、一対のローラー70で圧搾した排液(布帛Cから分離した残処理液)を速やかに本体部23外に排出できる。
【0036】
一対のローラー70のうち他方のローラー72は、本体部23に位置が固定された駆動及び布帛の移動に応じた従動回転が可能なローラーである。このローラー72の駆動には、モータ動力が用いられ、例えば、その回転力をモータからローラー72へベルトやチェーンを介して伝達する。モータは、例えば、布帛処理装置1の制御盤にて駆動され、その回転数及びトルクは、スイッチ操作または自動制御にて変更可能である。なお、本実施形態の布帛処理装置1では、一対のローラー70は、布帛Cの循環移動の速度と同期させた速度で回転することで、洗浄による布帛Cへのダメージを軽減できる。またローラー72の少なくとも一部(例えば、ローラー72の略上半分)は、上方突出部235に配置されている。
【0037】
以上の布帛処理装置1では、装置内を環状のロープのような状態で循環する布帛Cを、駆動及び従動回転が可能な固定のローラー72と、従動回転が可能な移動するローラー71にて押圧(圧搾)し、布帛Cの表面に付着した残処理液と、布帛C内に吸収されている残処理液を布帛Cより分離し、本体部23において下方に開口した排出口233から装置外へ排出する。その後、圧搾により処理液を分離した布帛Cへ未使用洗浄液のみを供給して水洗いを行う。本実施形態の布帛処理装置1では、本体部23(具体的には、縮径部232)の下方突出部234に排出口233が配置されているため、下方突出部234に一時的に排液を溜めることにより、布帛Cから分離した残処理液が処理槽2内の他の液と混ざらないようにできる。
【0038】
ところで、液流式の布帛処理装置においては、布帛の形状と装置の構造上、以下に挙げた機構による洗浄の効率の向上が困難であるという課題があった。具体的に、液流式の布帛処理装置では、洗浄を行う布帛(処理液による処理後の布帛)の装填形状が非定常であることから、糸染色機で採用可能な「染色後の被染物に空気圧力を加える機構を利用して洗浄の効率を高めること」が困難である。また、液流式の布帛処理装置は、処理槽と移送管とからなる循環経路に布帛が装填された構造であり、製品染色機のように円筒型内槽に被染物が収まる構造とは異なるため、製品染色機で採用可能な「被染物に均一に遠心力を与える機構を利用して洗浄の効率を高めること」が困難である。
【0039】
これに対して、本実施形態の布帛処理装置1によれば、布帛に対して処理(例えば、染色)を行った後に、押圧体7で布帛Cを押圧して処理液を布帛Cから分離することで、洗浄、つまり、布帛Cに含まれる処理液を流し去ることに用いる洗浄液(例えば、水洗いに使用する未使用洗浄液)の量を減らすことができる。これにより、洗浄の効率を向上できる。
【0040】
本実施形態の布帛処理装置1では、循環移動する布帛Cは、押圧体7で押圧され、含む処理液の量を減らした後に、未使用洗浄液で洗浄されるため、効率よく布帛Cの洗浄を行うことができる。
【0041】
また、本実施形態の布帛処理装置1では、一対のローラー70が回転しながら布帛Cを挟み込むことによって、固定的な部材に布帛Cが擦れる構成と比べて布帛Cへのダメージを軽減できる。具体的に、布帛Cの厚みが不均一であっても(例えば、布帛Cの一部にミシン目(布帛Cが重ね合わされて縫合された部分)が形成されていても)、それに応じて移動するアーム(例えば、エアシリンダーで動かされるアーム)73と共に移動するローラー71が、布帛Cを固定的ではなくやわらかに押さえるため、布帛Cにおける厚みが部分的に厚い部位に強い力がかかることを回避できる。
【0042】
さらに、本実施形態の布帛処理装置1では、処理液による処理中に、一対のローラー70を互いに離反する位置とすることで、一対のローラー70が循環経路Rから離れた位置に退避させられることにより布帛Cの邪魔にならないため、布帛Cはスムーズに循環移動できる。
【0043】
本実施形態の布帛処理装置1では、移動するローラー71がアーム73により支持されているため、例えば一対のローラー70を共に平行移動させる構造に比べると、このローラー71周りの構造を単純化できる。また、アーム73を回動支持するための軸が通る貫通穴等を本体部23に設けておき、アーム73を移動させるための機構(エアシリンダー等)は本体部23の外部に設けることができるので、布帛Cを押圧するための押圧体7の機構を、本体部23の内部において単純化できる。
【0044】
また、本実施形態の布帛処理装置1では、一方のローラー71の拡径部700により、一対のローラー70が布帛Cを挟んだ状態において、布帛は一対のローラー70から幅方向(一対のローラー70の長手方向)に外れにくい。
【0045】
なお、本発明の布帛処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0046】
上記実施形態の布帛処理装置1では、押圧体7は、処理液による処理の後、洗浄液による洗浄中に布帛Cを押圧していたが、処理液による処理の後、洗浄液による洗浄の開始前に布帛Cを押圧してもよい。この構成においても、洗浄の前に押圧体7で布帛Cを押圧して処理液を布帛から分離することで、洗浄に用いる洗浄液の量を減らすことができる。
【0047】
また、押圧体7は、上記実施形態では一対のローラー70であったが、布帛Cを両側から挟む固定されたバーとローラーとで構成されてもよいし、布帛Cを両側から挟む一対のバーで構成されてもよい。
【0048】
さらに、一対のローラー70のうち移動するローラー71は、上記実施形態ではアーム73により円弧状に移動していたが、アーム73と異なる部材による移動、例えば、スライド移動(例えば、循環移動の方向に直交する方向へのスライド移動)を行ってもよい。
【0049】
なお、一対のローラー70のうち、一方のローラー71が移動するローラーであり、他方のローラー72が固定されたローラーであったが、両方のローラー71、72が本体部23に対して移動するローラーであってもよいし、両方のローラー71、72が固定されたローラーであってもよい。
【0050】
また、一対のローラー70は、布帛Cの循環移動の方向に直交する方向に並んでいたが、ローラー71、72が互いに循環移動の方向においてずれた位置に配置されていてもよく、この場合、一対のローラー70は、布帛CがS字に蛇行するように配置されていてもよい。
【0051】
なお、移動するローラー71は、エアシリンダー74以外の駆動部により移動してもよい。また、ローラー71を支持する構成は上記構成に限らない。例えば、アーム73とリンク75とを連結する回動軸は、複数の棒状体から構成されていてもよい。具体的に、この回動軸は、二本の棒状体で構成されていてもよく、この場合、移動するローラー71の一端と並ぶ位置から、移動するローラー71の他端と並ぶ位置まで途切れていてもよい。
【0052】
押圧体7は、一つのローラー71で構成されてもよい。例えば、
図3に示すように、押圧体7は、布帛Cの循環移動の方向に交差して一方向に移動することで布帛Cを押圧するローラー71であってもよい。この場合、押圧体7の構成がより単純なものとなる。
【0053】
また、処理槽2の形状は、上述の形状と異なる形状であってもよい。例えば、処理槽2は、下方突出部234及び上方突出部235の少なくとも一方を備えていなくてもよい。また、処理槽2は、排出口233を備えていなくてもよい。
【0054】
本発明の液流式布帛処理装置は、
布帛に対して、処理液による処理を行った後に洗浄液による洗浄を行う液流式布帛処理装置であって、
管状の処理槽であって、第一端部、該第一端部と反対側に位置する第二端部、及び前記第一端部と前記第二端部との間に配置され且つ処理液を滞留させる本体部、を有する処理槽と、
前記第一端部と前記第二端部とを繋いで前記本体部に加えて布帛が循環可能な循環経路を形成する移送管と、
前記処理槽に処理液を供給する処理液供給系統と、
前記処理槽に洗浄液を供給する洗浄液供給系統と、を備え、
前記第一端部には、布帛を前記移送管に通すべく布帛の移動方向を変える転向手段が設けられ、
前記処理槽は、処理液の滞留部分と前記転向手段との間に設けられた押圧体であって、循環移動する布帛を押圧することで布帛に含まれる処理液を布帛より分離する押圧体を含む。
【0055】
かかる構成によれば、布帛に対して処理を行った後に、押圧体で布帛を押圧して処理液を布帛から分離することで、洗浄液の量を減らすことができる。
【0056】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記洗浄液供給系統は、前記循環経路の前記押圧体よりも前記循環移動の方向における下流側の位置に、未使用の洗浄液を供給する未使用洗浄液供給部を含んでもよい。
【0057】
かかる構成によれば、循環移動する布帛は、押圧体で押圧された後に、未使用洗浄液で洗浄されるため、効率よく布帛の洗浄を行うことができる。
【0058】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記押圧体は、布帛を前記循環移動の方向と交差する方向において、前記布帛を両側から挟む一対のローラーであってもよい。
【0059】
かかる構成によれば、一対のローラーが回転しながら布帛を挟み込むことによって、布帛へのダメージを軽減できる。
【0060】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記一対のローラーは、少なくとも一方のローラーが他方のローラーに対して、近接及び離反するように移動してもよい。
【0061】
かかる構成によれば、処理液による処理中に、一対のローラーを離反する位置とすることで、一対のローラーが布帛の邪魔にならないため、布帛はスムーズに循環移動できる。
【0062】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記一対のローラーのうち移動するローラーは、前記本体部に回動支持されたアームにより支持されていてもよい。
【0063】
かかる構成によれば、移動するローラー周りの構造を単純化できる。
【0064】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記一対のローラーは、端部に拡径部を有してもよい。
【0065】
かかる構成によれば、一対のローラーが布帛を挟んだ状態において、布帛は一対のローラーから外れにくい。
【0066】
また、前記液流式布帛処理装置では、
前記押圧体は、前記循環移動の方向に交差して一方向に移動することで布帛を押圧するローラーであってもよい。
【0067】
かかる構成によれば、押圧体7の構成がより単純なものとなる。
【符号の説明】
【0068】
1…液流式布帛処理装置(布帛処理装置)、2…処理槽、3…移送管、4…洗浄液供給系統、5…転向手段、6…滞留部分、7…押圧体、8…処理液供給系統、21…第一端部、22…第二端部、23…本体部、30…主管部、31…第一起立部、32…第二起立部、40…新液供給部、70、71、72…ローラー、73…アーム、74…エアシリンダー、75…リンク、211…第一端部本体、212…接続部、213…開閉扉、214…リール、215…電動モータ、231…胴部、232…縮径部、233…排出口、234…下方突出部、235…上方突出部、700…拡径部、C…布帛、R…循環経路