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特許7321435N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を含むアトピー又は痒み症治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を含むアトピー又は痒み症治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20230731BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230731BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/405
A61P1/02
A61P11/02
A61P15/00
A61P15/02
A61P17/00
A61P17/04
A61P27/02
A61P29/00
A61P37/08
A61K8/44
A61K8/49
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020546261
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2018014483
(87)【国際公開番号】W WO2019103506
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158599
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0145159
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513029921
【氏名又は名称】ステムディーアール インク.
【氏名又は名称原語表記】STEMDR INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】516331627
【氏名又は名称】インダストリアル コーオペレーション ファウンデーション チョンブク ナショナル ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】513201538
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ミョン-クァン
(72)【発明者】
【氏名】イ,グァンホ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-534369(JP,A)
【文献】特開2001-213754(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0063827(US,A1)
【文献】国際公開第2004/039368(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/006225(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/055947(WO,A1)
【文献】新化粧品ハンドブック,2006年10月30日,p.519-520
【文献】International Journal of Toxicology,2017年05月28日,Vol.36 (Supplement I),17S-56S,DOI:10.1177/1091581816686048
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P,A61Q,A23L
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-アセチルアミノ酸、N-アシルアミノ酸又はその薬剤学的に許容可能な塩を有効成分として含むアトピー又は痒み症の予防又は治療用の薬剤学的組成物であって、
前記N-アセチルアミノ酸は、N-アセチルL-アラニン(N-acetyl L-alanine)、N-アセチルL-トレオニン(N-acetyl L-threonine)、N-アセチルL-アルギニン(N-acetyl L-arginine)及びN-アセチルL-トリプトファン(N-acetyl L-tryptophan)から構成された群から選ばれる1つ又は2つ以上のアミノ酸であり、
前記N-アシルアミノ酸は、N-アシルL-トリプトファン(N-acyl L-tryptophan)又はN-アシルL-アラニン(N-acyl L-alanine)であり、
前記組成物の剤形は、皮膚外用剤、エアゾール、スプレー、及び点眼剤から構成された群から選ばれることを特徴とする薬剤学的組成物。
【請求項2】
前記痒み症は、外陰部掻痒症、膣掻痒症、発作性掻痒症、冬季掻痒症、肛門掻痒症、陰嚢掻痒症、水因性掻痒症、頭皮掻痒症、鼻腔内痒み症、口腔内痒み症及び眼球内痒み症から構成された群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項3】
N-アセチルアミノ酸、N-アシルアミノ酸又はその化粧品学的に許容可能な塩を有効成分として含む、アトピー又は痒み症の予防又は改善用の化粧料組成物であって、
前記N-アセチルアミノ酸は、N-アセチルL-アラニン(N-acetyl L-alanine)、N-アセチルL-トレオニン(N-acetyl L-threonine)、N-アセチルL-アルギニン(N-acetyl L-arginine)及びN-アセチルL-トリプトファン(N-acetyl L-tryptophan)から構成された群から選ばれる1つ又は2つ以上のアミノ酸であり、
前記N-アシルアミノ酸は、N-アシルL-トリプトファン(N-acyl L-tryptophan)又はN-アシルL-アラニン(N-acyl L-alanine)であることを特徴とする化粧料組成物。
【請求項4】
前記化粧料組成物の剤形は、クリーム、ローション、スキン、エッセンス又はミストであることを特徴とする、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
請求項の化粧料組成物を含むマスクパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を有効成分として含むアトピー、痒み症又は痒み症を伴うアトピーの予防又は治療若しくは皮膚保湿又は皮膚鎮静用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
痒み症(掻痒症、pruritus)とは、皮膚を掻いたり擦ったりしたい欲求を引き起こす不快な感覚と定義され(Andersen HH et al.,Human surrogate models of histaminergic and non-histaminergic itch,Acta Dermato-Venereologica.95(7):7717.(2015))、皮膚疾患と全身疾患に多く見られる症状であるにも拘わらず、その特性は十分に知られていない状態である。
【0003】
痒み症は世界人口の4%である約2億8千万人が悩んでいると知られており、乾癬(psoriasis)人口(2~3%)よりも有病率が高い(Vos,T et al.,Years lived with disability(YLDs)for 1160 sequelae of289 diseases and injuries 19902010:a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2010,Lancet.380(9859):216396.(2012))。
【0004】
痒み症は、物理的、機械的、化学的因子をはじめとする色々な刺激によって誘発されるか、さらに増加し得る。また、炎症媒介物質は様々な炎症性皮膚疾患から痒み症を誘発する。しかし、全種類の痒み症が媒介物質と関連しているわけではなく、機械的刺激又は電気的刺激、そして乾燥皮膚による痒み症は媒介物質に関係なく現れることもある。
【0005】
国家健康情報ポータル医学情報(http://health.mw.go.kr)によれば、痒み症を誘発する媒介物質にはヒスタミン、セロトニン(Serotonin)、プロスタグランジンE(Prostaglandin E)、タキキニン(Tachykinin)、サイトカイン(Cytokines)、プロテアーゼ(Protease)、オピオイドペプチド(opioid peptides)、血小板活性因子(platelet-activating factor)などがあると知られている。
【0006】
痒み症に対する治療法として今のところ、抗ヒスタミン剤、ステロイド、抗生剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、麻酔剤、生菌剤、免疫抑制剤、UVなどの光線治療などの様々な治療法があるが、その治療効果が一時的であるか、制限的に痒み症の種類によって特異性を示す問題があり、副腎皮質ホルモン剤及びコルチコステロイド(corticosteroid)製剤は副作用を考慮して急性又は深刻な場合に限って短期間使用しなければならないという問題がある。
【0007】
一方、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)は、アトピー体質の人に生じる湿疹様皮膚病変である。内因性湿疹、ベニエ痒疹とも呼ばれ、遺伝的な傾向があるが、原因は不明である。普通の湿疹や皮膚炎とは違い、特異な症状と経過を示す。小児湿疹の70~80%がアトピー性皮膚炎である。年齢によって症状の変遷があり、通常3期に分ける。1.幼児期(2か月~3歳頃):顔、特に頬に発赤・滲出・落屑が生じ、とてもかゆい。症状が悪化すると頭にも同様の変化及びかさぶたができ、全身の皮膚も発赤・落屑する。皮膚全体がザラザラになり、青白色になる。生後2~3ケ月頃に生じ、1歳まではよく治るが、繰り返される場合もある。一般に冬に悪化する傾向がある。2.小児期(4歳~10歳頃):4歳~5歳頃から四肢(特に、肘と膝関節の屈側部)に丘疹・痒疹が生じ、融合して苔癬化する。3.思春期(12歳以後):四肢の他に顔や胸、襟首なども苔蘚化する。小児喘息を合併することもあり、家族内喘息やアトピー性皮膚炎患者が生じることが多い。経過が長く、よく治らない病気なので、気長に忍耐をもって治療することが重要である。しかし、年を取るにつれて病症が軽くなる。症状がひどい時は軟膏(抗ヒスタミン軟膏、ビタミンA・ビタミンD軟膏)を使用し、止痒剤も共に内服する(斗山百科、http://www.doopedia.co.kr/)。
【0008】
前記痒み症とアトピー性皮膚炎はその原因が不明な場合が多く、ステロイドを含む様々な治療剤の存在にもかかわらず、その治療効果は一時的又は制限的であるという問題があり、またステロイド製剤は誤・乱用による副作用の問題がある。
【0009】
したがって、様々な原因による痒み症及び/又はアトピー性皮膚炎に効果的でありながらも安全な新しい治療法の開発が切実に望まれる。
【0010】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解増進のためのものに過ぎず、この技術分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に該当することを認めるものと理解してはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、様々な原因による痒み症及び/又はアトピーに対して副作用の心配無しで安全に処方できる物質を見出そうと努力した。その結果、アミノ酸類に該当するN-アセチル又はN-アシルアミノ酸が痒み症及び/又はアトピーに非常に効果的であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0012】
したがって、本発明の目的は、アトピーの予防、改善又は治療用の組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、痒み症の予防、改善又は治療用の組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、アトピー及び痒み症の予防、改善又は治療用の組成物を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、皮膚保湿用又は皮膚鎮静用の組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一様態によれば、本発明は、N-アセチルアミノ酸、N-アシルアミノ酸又はその塩を有効成分として含むアトピーの予防、改善又は治療用の組成物を提供する。
【0018】
本発明の他の態様によれば、本発明は、N-アセチルアミノ酸、N-アシルアミノ酸又はその塩を有効成分として含む痒み症の予防、改善又は治療用の組成物を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、N-アセチルアミノ酸、N-アシルアミノ酸又はその塩を有効成分として含むアトピー及び痒み症の予防、改善又は治療用の組成物を提供する。
【0020】
本発明者らは様々な原因による痒み症及び/又はアトピーに対して副作用の心配無しで安全に処方できる物質を見出そうと努力した結果、種々のN-アセチル又はN-アシルアミノ酸が痒み症及び/又はアトピーに非常に効果的であることを確認した。
【0021】
本明細書において、用語“アトピー(atopy)”の予防、改善又は治療活性は、アトピー性疾患(atopic disease)又はアトピー性症候群(atopic syndrome)の予防、改善又は治療の活性を意味する。前記アトピー性疾患又はアトピー性症候群は、アレルギー抗原に対する接触又はそれと直接接触しなくても身体が極度に敏感になるアレルギー反応による疾患又は症候群を総称する意味であり、例えば、アトピー性アレルギー(atopic allergy)、アトピー性湿疹(atopic eczema)、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、又は喘息などを含むが、これに限定されない。
【0022】
本発明の実施例によれば、本発明の組成物は、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)でアトピー性皮膚炎を誘発させた動物モデルbalb/cマウスを対象にしたインビボ(in vivo)実験においてアトピー性皮膚炎治療効能を示し(実施例4)、アトピー性皮膚炎で増加するIgE(immunoglobulin E)のレベルを有意に減少させ(実施例5)、アトピー性皮膚炎の病変と関連したTh2免疫調節サイトカインであるIL(interleukin)-4及びインターフェロンガンマ(interferon γ)の発現を有意に減少させた(実施例6)。
【0023】
本明細書で用語“痒み症”又は“掻痒症”は、特に制限されず、発作性痒み症、冬季痒み症、肛門痒み症、外陰痒み症、陰嚢痒み症、水因性痒み症、頭皮痒み症、鼻痒み症、喉痒み症、口腔内痒み症及び眼球痒み症;胆汁痒み症、慢性腎不全症、悪性腫瘍、鉄欠乏性貧血、真性赤血球増加症、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、糖尿病及び後天性免疫欠乏症などの内科疾患に伴う痒み症;及び慢性単純苔蘚、掻痒性発疹、抜毛癖、神経性引っ掻き傷、皮膚を犯す行動障害及び寄生虫症妄想などの精神皮膚疾患に伴う痒み症を含む意味と解釈される。
【0024】
発作性痒み症は、発作的に発生する痒み症であり、慢性単純苔蘚や皮膚炎などに見られる。
【0025】
冬季痒み症は、70歳以上の老人の約50%以上で発生し、疥癬、扁平苔蘚などの掻痒性皮膚疾患や全身的疾患による痒み症と鑑別しなければならない。女性の場合、閉経後症候群の症状として現れ得る。老化した皮膚の水分含有量の減少と漸進的な皮脂分泌の減少による皮膚乾燥が主な原因であり、微細な亀裂と鱗屑が主に上肢と脛骨部でよく生じる。
【0026】
肛門痒み症は、肛門周辺の皮膚を掻きたい不快な感覚であり、心因性要因が関与する場合が多い。年齢に関係なく生じ得るが、中年以後にさらに生じる。しかし、全ての肛門痒み症の原因が心因性であるわけではなく、肛門周囲の汚染と刺激が原因になる場合もある。裂肛、痔核、痔瘻、慢性下痢のような大腸肛門疾患と、辛い食べ物、そして薬剤などによってさらに刺激が増すことがある。ブドウ状球菌、連鎖状球菌、かび、カンジダ、単純疱疹ウイルスなどのいろいろな感染疾患が痒み症を誘発させ得る。このうち、カンジダ感染が最も多く、感染時に亀裂ができ、表皮が水膨れになったような形態を示す。乾癬、脂漏皮膚炎、扁平苔蘚などの皮膚疾患が肛門部位にある時にも激しい痒み症を起こすことがあり、他の部位でも病変が観察できる。肛門の神経皮膚炎は激しい痒みによって出血するまで患部を掻き、他の部位の慢性単純苔蘚と同じ所見を見せることがある。
【0027】
外陰痒み症の最もありふれた原因はカンジダ感染である。その他の原因としてトリコモナス膣炎、パッド、避姙薬、膣洗浄液、コンドームなどによる接触皮膚炎などが挙げられる。中年以後には硬化萎縮苔蘚が原因となることが多い。フォックス-フォアダイス病(Fox-Fordyce disease)においても激しい痒み症が生じ得る。しかし、一時的な外陰痒み症は、摩擦、発汗、又は妊娠時の外陰の充血などによって生じることもある。
【0028】
陰嚢痒み症と関連して、成人の陰嚢は、成人の頭皮のように、感染には免疫があるが、局所慢性単純苔蘚がよく発生する部位であり、原因は心因性要因が作用する場合が多く、苔蘚化がひどく見られ、集中的に治療しても数年間持続する場合もある。
【0029】
水因性痒み症は、水に露出されて数分内に又は水への露出を中断した後に、針で刺すような激しい不快感が感じられ、約1時間持続する。接触した水の温度とは関係がなく、皮膚に特別な変化は観察されない。一部の患者では周辺温度の変化によって発生することもある。患者の約1/3が家族歴を示し、普通、慢性的で、治療によく反応しない。皮膚と血液でヒスタミン濃度の増加を示すが、抗ヒスタミン剤によって症状が緩和されないことからして、ヒスタミンが唯一の媒介物質ではないと考えられている。真性赤血球増加症に見られる症状と類似しているので、それとの見分けが必要である。
【0030】
頭皮痒み症は、頭皮の明確な病変無しに独立した症状として現れることがあり、中年又は老人に見られるが、原因はよく知られていない。痒み症が非常にひどく、発作的に現れるが、疲労又はストレス時に一層悪化する。鑑別疾患には疱疹皮膚炎、慢性単純苔蘚、脂漏皮膚炎、乾癬などがある。
【0031】
胆汁性肝硬変症がある患者は、激しい全身性痒み症を伴う。痒み症は血漿胆汁酸濃度の増加と関連しており、臨床的に痒み症を誘発させる濃度の胆汁酸を水疱性皮膚病変に直接塗布すると、激しい痒み症を誘発させることがある。
【0032】
血液透析治療を受けている慢性腎不全患者の約20~50%で痒み症が発生する。痒み症は局所的又は全身的に現れ、たいてい血液透析中に症状が激しくなるが、血液透析によって一時的な症状緩和が起きることもある。血中ヒスタミン、尿素、クレアチン(creatinine)の濃度と痒み症の程度との間には直接的な関連がないことが報告されている。患者の一部では皮膚乾燥症を伴うが、ほとんどが正常皮膚を有し、保湿剤の使用が症状を緩和又は減少させることはない。
【0033】
悪性腫瘍と関連して、中年又は老年において特別な原因無しで全身的痒み症が発生する場合、悪性腫瘍に対する広範囲な検査が必要である。ホジキン(リンパ節の腫脹を招く代表疾患)患者の15~25%で痒み症が持続して現れ、時には焼き付くような痛みとひりつく現象が伴うこともあるが、その原因は知られていない。白血病でも全身的痒み症が現れることがある。
【0034】
鉄欠乏症も痒み症の原因になり得る。真性赤血球増加症と鉄欠乏症がある患者たちに鉄分剤を経口投与した結果、痒み症が減少したという報告がある。
【0035】
真性赤血球増加症患者の約50%が水と接触して数分以内に激しい痒み症を経験し、このような症状が約15~60分程度持続する。普通、入浴後に発生することから入浴痒み症(bath itch)と呼ばれる。皮膚には特別な変化が現れず、水の温度に関係なく発生する。ただし、血清と小便にヒスタミンが増加している。血小板凝集がヒスタミンを含む様々な痒み症媒介物質の誘発する原因として考えられている。
【0036】
甲状腺機能亢進症において激しい全身的痒み症が現れることがある。皮膚血流量の増加が、皮膚表面温度を増加させ、痒み症に対する閾値を下げる原因となる。甲状腺機能低下症では粘液水腫時に皮膚がひどく乾燥して全身的痒み症が現れることがある。また、両疾患ともに粘膜皮膚カンジダ症による性器部位の痒み症が生じ得る。
【0037】
一部の糖尿患者において粘膜皮膚カンジダ症による肛門性器部位の痒み症が現れることがある。しかし、一部の患者は全身的痒み症が現れることもある。
【0038】
後天性免疫欠乏症の主な症状の一つが痒み症である。後天性免疫欠乏症患者の痒み症の原因には、疥癬、痢症、カンジダ症、脂漏皮膚炎、そして腎不全、胆汁うっ滞などの全身疾患がある。また、特徴的に激しい痒み症を起こす全身の丘疹又は色素性発疹が発生することもある。
【0039】
慢性単純苔蘚は皮膚を続けて擦ったり掻いて革のように厚くなる疾患である。正常の皮膚に痒み症が発生して二次的に慢性単純苔蘚が生じることがある。一般に30~50代にしばしば発生し、男子よりも女子に多く発生する。
【0040】
痒み発疹は激しい痒み症を伴う多発性結節が特徴である疾患であり、よく治療されず、長期間持続する特徴がある。原因はよく知られておらず、貧血、肝疾患、HIV疾患、妊娠、腎不全、精神的なストレスなどが原因になり得る。
【0041】
抜毛癖は、異常欲求によって髪の毛を抜く神経症である。精神的、社会的ストレスが原因であるが、家庭内でのストレス、学校生活でのストレス、兄弟間の競合意識、引っ越し、親の入院、親子関係などが問題になり得る。小児から成人に至るほぼ全年齢層で発生する。
【0042】
神経性引っ掻き傷は、反復的で強迫的に自身の皮膚を指先でつまんで剥がしたり、しゃくったり、掻いたりして皮膚病変が発生する疾患である。患者は自身の行動によってその病変が生じたことを認めるが、その行動を抑えることができない。あらゆる年齢で発生し得るが、中年女性に多く発生し、心理的なストレスによって現れることもある。痒み症、昆虫刺傷などの皮膚病変がある部位に発生することもある。神経性引っ掻き傷は、うつ病、強迫症、不安症にも関連している。このような症状は、性格が強迫的で頑固であり、統制的で、失敗に対する恐怖がある完壁主義タイプの人に多く発生する。
【0043】
人工皮膚炎は同情心を誘発したり責任を回避するために自身の皮膚を人工的に傷つけて発生する皮膚炎である。皮膚病変は、機械的な方法或いは化学薬品、腐食剤などによって発生する。その他に、爪、鋭い道具、熱い金属なども原因になる。患者は心理的な欲求を満たすために自身の身体に傷をつける。女性の方に多く発生し、全年齢層に現れ得る。大多数の患者は乳児的で依存的であり、衝動調節能力が低い人格障害を有している。
【0044】
皮膚を犯す行動障害は、長期間繰り返される強迫的な行動による自傷行為であり、色々な身体損傷を発生させる。自身に加える裂傷は自殺目的で行われ、時には思春期に勇敢さを誇るために試みられることもある。
【0045】
寄生虫症妄想は、患者自身の皮膚に寄生虫が寄生するという確固たる執着がある疾患である。人格や思考能力の損傷無しで慢性的に身体に関連した妄想だけを主な症状とする単一症状の健康心配症である。患者たちは、小さな表皮のかけらなどを小さな函、ティッシュペーパー、テープの間に入れてきて検査してほしいと言う。これらの患者のうち、寄生虫感染を経験した後に発病したケースは2~3%と見なされている。
【0046】
その他、鼻炎などの鼻関連疾患に伴う鼻痒み症、結膜炎などの眼科疾患に伴う眼球痒み症、歯科的原因による口腔内痒み症などがあり得る。
【0047】
本発明の実施例によれば、本発明の組成物は、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)で痒み症を誘発させた動物モデルbalb/cマウスを対象にしたインビボ(in vivo)実験で痒み症の顕著な抑制作用を示した(実施例8)。
【0048】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、痒み症を伴うアトピーの予防、改善又は治療のための用途に用いられる。
【0049】
TSLP(Thymic stromal lymphopoietin)は抗原提示細胞の活性化によるT細胞の成熟において重要な役割をすると知られており、CD11c+骨髄樹状細胞(myeloid dendritic cell)を誘導してTh2炎症反応を起こすものと知られている(Ziegler SF et al.,Thymic stromal lymphopoietin in normal and pathogenic T cell development and function.Nat Immunol 2006;7:709-14)。このようなTSLPはアトピー患者の病変部で増加しており、アトピー性皮膚炎の重症度と関連していると知られている(Sano Y et al.,Thymic stromal lymphopoietin expression is increased in the horny layer of patients with atopic dermatitis.Clin Exp Immunol 2013;171:330-7)。
【0050】
また、アトピー性皮膚炎は、他の炎症疾患と違い、痒みを伴うことを特徴とするが、前記TSLPは、前記皮膚炎の重症度との連関性の他にも、アトピー性皮膚炎における痒みの原因であるということが明らかになった(Wilson SR et al.,The epithelial cell-derived atopic dermatitis cytokine TSLP activates neurons to induce itch.Cell.2013;155(2):285-95)。
【0051】
したがって、本発明の組成物は、痒みを伴うアトピーの予防、改善又は治療に効果的に利用され得る。
【0052】
本発明の好ましい具現例によれば、前記N-アセチルアミノ酸は、N-アセチルアラニン(N-acetyl alanine)、N-アセチルトレオニン(N-acetyl threonine)、N-アセチルアルギニン(N-acetyl arginine)及びN-アセチルトリプトファン(N-acetyl tryptophan)から構成された群から選ばれる1つ又は2つ以上のアミノ酸である。
【0053】
本発明の好ましい具現例によれば、前記N-アセチルアミノ酸は、N-アセチルL-アラニン(N-acetyl L-alanine)、N-アセチルL-トレオニン(N-acetyl L-threonine)、N-アセチルL-アルギニン(N-acetyl L-arginine)及びN-アセチルL-トリプトファン(N-acetyl L-tryptophan)から構成された群から選ばれる1つ又は2つ以上のアミノ酸である。
【0054】
本発明の好ましい具現例によれば、前記N-アシルアミノ酸は、N-アシルトリプトファン(N-acyl tryptophan)又はN-アシルアラニン(N-acyl alanine)である。
【0055】
本発明の好ましい具現例によれば、前記N-アシルアミノ酸は、N-アシルL-トリプトファン(N-acyl L-tryptophan)又はN-アシルL-アラニン(N-acyl L-alanine)である。
【0056】
本明細書で用語“アシル”又は“アシル基”は特に制限されず、カルボキシ酸のカルボキシ基であるOHを除いて残された原子団であり、一般にRCOで表す。Rは1つ又はそれ以上の置換基であり、前記COに結合可能な置換基であれば制限されない。前記Rが芳香族原子団の場合は、特に“アロイル”と称する場合もあるが、これもアシル基の一種である。前記アシルの例には、ホルミル(HCO-)、アセチル(CHCO-)、プロピオニル(CCO-)、ブチリル(CCO-)、バレリル(CCO-)又はペンタノイル(CH(CHCO-)、パルミトイル(C1531CO-)、ステアロイル(C1733CO-)、オレオイル(C1731CO-)、オキサリル(-CO-CO-)、マロニル(-COCHCO-)、スクシニル(-CO(CHCO-)、ベンゾイル(CCO-)、トルオイル(CH-C-CO-)、サリシロイル(HO-C-CO-)、シンナモイル(CCH=CHCO-)、ナフトイル(C10CO-)、フタロイル(CO-C-CO-)、フロイル
【0057】
【化1】
、ウンデカノイル(CH(CHCO-)、ドコセン酸(docosenoic acid)からOH基が除去されたドコセノイルを含むが、これに制限されない。
【0058】
前記N-アシルL-トリプトファン(N-acyl L-tryptophan)は、制限されないが、好ましくは、N-プロピオニルL-トリプトファン(N-propionyl L-tryptophan)、N-ブチリルL-トリプトファン(N-butyryl L-tryptophan)、N-ペンタノイルL-トリプトファン(N-pentanoyl L-tryptophan)、N-ウンデカノイルL-トリプトファン(N-undecanoyl L-tryptophan)、N-パルミトイルL-トリプトファン(N-palmitoyl L-tryptophan)、N-(Z)-ドコス-13-エノイルL-トリプトファン(N-(Z)-docos-13-enoyl L-tryptophan)、N-ステアリルL-トリプトファン(N-stearyl L-tryptophan)及びN-オレオイルL-トリプトファン(N-oleoyl L-tryptophan)から構成された群から選ばれる1つ又は2つ以上のアミノ酸である。
【0059】
前記N-アシルL-アラニン(N-acyl L-alanine)は、制限されないが、好ましくは、N-アセチルγ-グルタミルL-アラニン(N-acetyl γ-glutammyl alanine)又はN-パルミトイルL-アラニン(N-palmitoyl L-alanine)である。
【0060】
一方、本明細書で用語“有効成分として含む”とは、N-アセチル又はN-アシルアミノ酸の効能又は活性を達成するのに十分な量を含むことを意味する。本発明の一具体例において、本発明の組成物内でN-アセチル又はN-アシルアミノ酸は例えば、0.001mg/kg以上、好ましくは0.1mg/kg以上、より好ましくは1mg/kg以上、より好ましくは10mg/kg以上含まれる。N-アセチル又はN-アシルアミノ酸は過量投与しても人体に副作用がほとんどないので、本発明の組成物中に含まれるN-アセチルアミノ酸の量的上限は当業者が適切な範囲内で選択して実施することができる。
【0061】
本発明の組成物において有効成分として用いられる前記N-アセチル又はN-アシルアミノ酸は、その化合物自体だけでなく、その薬剤学的、食品学的又は化粧品学的に許容可能な塩、水和物、溶媒化物又はプロドラッグを含む意味で解釈される。
【0062】
本明細書で用語“薬剤学的に許容可能な塩”、“食品学的に許容可能な塩”又は“化粧品学的に許容可能な塩”とは、化合物が投与される有機体に深刻な刺激を誘発しなく、化合物の生物学的活性と物性を損ねない、化合物の剤形を意味する。前記薬剤学的、食品学的又は化粧品学的に許容可能な塩は、本発明の化合物を、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、カプリン酸、イソブタン酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、グルコン酸、ベンゾ酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸などのような有機カーボン酸と反応させて得ることができる。また、本発明の化合物を塩基と反応させ、アンモニウム塩、ナトリウム又はカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム又はマグネシウム塩などのアルカリ土金属塩などの塩、ジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどの有機塩基の塩、及びアルギニン、リシンなどのアミノ酸塩を形成することによって得ることもでき、これに制限されない。
【0063】
用語“薬剤学的に許容可能な水和物”、“食品学的に許容可能な水和物”又は“化粧品学的に許容可能な水和物”とは、所望する薬理学的効果を有する前記N-アセチル又はN-アシルアミノ酸の水和物を指す。用語“薬剤学的に許容可能な溶媒化物”、“食品学的に許容可能な溶媒化物”又は“化粧品学的に許容可能な溶媒化物”とは、希望する薬理学的効果を有する前記N-アセチル又はN-アシルアミノ酸の化合物の溶媒化物を指す。前記水和物及び溶媒化物も上記の酸を用いて製造することができ、広い範囲で前記薬剤学的、食品学的又は化粧品学的に許容可能な塩に含まれる。
【0064】
用語“薬剤学的に許容可能なプロドラッグ”、“食品学的に許容可能なプロドラッグ”又は“化粧品学的に許容可能なプロドラッグ”とは、前記N-アセチル又はN-アシルアミノ酸の薬理学的効果を発揮する前に生物転換をすべき前記N-アセチル又はN-アシルアミノ酸の誘導体を指す。このようなプロドラッグは、化学的安定性、患者受容性、生物学的利用性、器官選択性又は調製の便宜を改善するために、作用期間の長期化及び副作用の減少のために製造される。本発明のプロドラッグの製造は、前記N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を用いて当業界の通常の方法(例:Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Chemistry,5th ed.,1:172-178 and 949-982(1995))によって容易に製造され得る。
【0065】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は薬剤学的組成物である。
【0066】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適切な薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0067】
本発明の薬剤学的組成物は経口又は非経口で投与でき、非経口投与の場合には、鼻腔投与、点眼投与、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などで投与できる。
【0068】
本発明の薬剤学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様であり、通常の熟練した医師は、所望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は0.001~100mg/kgである。
【0069】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明に属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって、単位容量の形態で製造されてもよく、或いは多用量容器内に内入して製造されてもよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であり得、分散剤又は安定化剤をさらに含んでもよい。
【0070】
本発明の薬剤学的組成物は、皮膚外用剤、エアゾール、スプレー、点眼剤、経口剤及び注射剤形態の剤形で製造され得る。
【0071】
本発明の薬剤学的組成物は人間用又は動物用に使用され得る。
【0072】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は食品組成物である。
【0073】
本発明に係る食品組成物は、機能性食品として利用したり、或いは各種食品に添加し得る。本発明の組成物を添加できる食品には、例えば、飲料類、アルコール飲料類、菓子類、ダイエットバー、乳製品、肉類、チョコレート、ピザ、パン類、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0074】
本発明の食品組成物は、有効成分としてN-アセチル又はN-アシルアミノ酸だけでなく、食品製造時に通常添加される成分を含むことができ、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、営養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えばぶどう糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤[タウマチン、ステビア抽出物(例えばレバウジオシドA、グリチルリチンなど])及び合成香味剤(サッカリン、アスパルタムなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤と飲料類として製造される場合には、N-アセチル又はN-アシルアミノ酸の他に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ぶどう糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、及び各種植物抽出液などをさらに含めることができる。
【0075】
本発明は、N-アセチル又はN-アシルアミノ酸又はその食品学的に許容可能な塩を有効成分として含む食品組成物として健康機能食品を提供する。健康機能食品とは、N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を飲料、茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加したり、カプセル化、粉末化、懸濁液などにして製造した食品であり、これを摂取すると健康上特定の効果を示すものを指すが、一般薬品とは違い、食品を原料とするので、薬品の長期服用時に生じ得る副作用などがない長所がある。このようにして得られる本発明の健康機能食品は、日常的に摂取することが可能なので非常に有用である。このような健康機能食品におけるN-アセチル又はN-アシルアミノ酸の添加量は、対象の健康機能食品の種類によって変わり、一律的に規定することはできないが、食品本来の味を損ねない範囲で添加すればよく、対象の食品に対して通常0.01~50重量%、好ましくは0.1~20重量%の範囲である。また、丸剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤タイプの健康機能食品では通常0.1~100重量%、好ましくは0.5~80重量%の範囲で添加すればよい。一具体例において、本発明の健康機能食品は、丸剤、錠剤、カプセル剤又は飲料の形態であり得る。
【0076】
本発明の食品組成物は、人間用食品、動物用飼料又は飼料の添加剤などとして使用することができる。
【0077】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は化粧料組成物である。
【0078】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、N-アセチルアミノ酸、N-アシルアミノ酸又はその化粧品学的に許容可能な塩を有効成分として含む皮膚保湿用又は皮膚鎮静用の化粧料組成物を提供する。
【0079】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の前記化粧料組成物は、皮膚乾燥、浮腫み、紅斑、炎症、痂皮、擦過傷及び苔蘚化から構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上の皮膚状態を改善するものである。
【0080】
本発明の組成物が化粧料組成物として製造される場合、本発明の組成物は、上述したN-アセチル又はN-アシルアミノ酸だけでなく、化粧料組成物に通常用いられる成分を含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤、そして担体を含む。また、本発明の組成物は、上述したN-アセチル又はN-アシルアミノ酸の他に、その作用(アトピー及び/又は痒み症の改善や皮膚保湿及び/又は皮膚鎮静の作用)を損ねない限度で、従来から使用されてきたアトピー改善剤又は痒み症改善剤若しくは皮膚保湿又は鎮静剤を共に混合して使用することができる。
【0081】
前記担体として、精製水、一価アルコール類(エタノール又はプロピルアルコール)、多価アルコール類(グリセロール、1,3-ブチレングリコール又はプロピレングリコール)、高級脂肪酸類(パルミチン酸又はリノレン酸)、油脂類(小麦胚芽油、椿油、ホホバ油、オリーブ油、スクアレン、ひまわり油、マカデミアナッツ油、アボカド油、大豆水添レシチン又は脂肪酸グリセリド)などを使用することができるが、これに限定されない。また、必要によって、界面活性剤、殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消炎剤及び清涼剤を添加することができる。
【0082】
界面活性剤は、ポリオキシエチレン、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン、オレイルエーテル、モノオレイン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン、グリセリルモノステアレート、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン、ソルビタン、蔗糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリン、ポリオキシエチレン還元ラノリン、POE、グリセリルピログルタミン酸、イソステアリン酸、ジエステル、N-アセチルグルタミン及びイソステアリルエステルからなる群から選択的に含むことができる。
【0083】
殺菌剤は、ヒノキチオール、トリクロサン、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン(azulene)、サリチル酸及びジンクピリチオンからなる群から選択的に含むことができる。
【0084】
酸化防止剤は、ブチルヒドロキシアニソール、沒食子酸、沒食子酸プロピル及びエリソルビン酸のいずれを使用してもよい。
【0085】
紫外線吸収剤は、ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、メラニン、パラアミノベンゾ酸エチル、パラジメチルアミノベンゾ酸2-エチルヘキシルエステル、シノキセート、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシルエステル、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸及び金属酸化物微粒子のいずれを使用してもよい。
【0086】
消炎剤としてはグリチルリチン酸ジカリウム又はアラントインを使用することができ、清涼剤としてはトウガラシチンキ又は1-メントールを使用することができる。
【0087】
前記組成物の剤形は、N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を有効成分として配合できる任意の剤形であり、アトピー又は痒み症改善用化粧品や皮膚保湿又は鎮静用化粧品の形態には、トニックウォーター、シャンプー、リンス、ヘアーコンディショナー、ヘアスプレー、粉末、ゲル、クリーム、エッセンス、ローション、ゾルゲル、エマルジョン、オイル、ワックス、スプレー、ミストなどの様々な形態で製造され得るが、これらに制限されない。また、N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を含むマスクパックの形態で製造されてもよい。
【発明の効果】
【0088】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである。
【0089】
(i)本発明は、人体への副作用がほとんどないN-アセチル又はN-アシルアミノ酸を用いたアトピーの予防、改善又は治療用の組成物を提供する。
【0090】
(ii)また、本発明は、N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を用いた痒み症の予防、改善又は治療用の組成物を提供する。
【0091】
(iii)本発明の組成物は、様々な原因による痒み症及び/又はアトピーを副作用の心配無しに安全で効果的に改善又は治療するために有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1A】Balb/cマウスに2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を反復的に塗布してアトピー性皮膚炎様皮膚病変を誘導する過程及び薬物投与過程を示す図である。
図1B】NC/Ngaマウスに2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を反復的に塗布してアトピー性皮膚炎病変を誘導する過程及び薬物投与過程を示す図である。
図2A】Balb/cアトピー皮膚炎誘発マウスに20余種のN-アセチルL-アミノ酸を皮膚炎誘発部位に塗布した後、臨床皮膚点数(SCORAD)を測定して比較した結果である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群)。
図2B】Balb/cアトピー皮膚炎誘発のための2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理後29日目の対照群、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群、及び2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)とN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-トレオニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トリプトファンを7日間処理したマウスの背中皮膚の写真である。
図3A】NC/Ngaアトピー皮膚炎誘発マウスにN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-トレオニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トリプトファンを皮膚炎誘発部位に塗布した後、臨床皮膚点数(SCORAD)を測定して比較した結果である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群)。
図3B】NC/Ngaアトピー皮膚炎誘発のための2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理後22日目の対照群、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群、及び2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)とN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-トレオニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トリプトファンを7日間処理したマウスの背中皮膚の写真である。
図3C】NC/Ngaアトピー皮膚炎誘発のための2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理後22日目の対照群、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群、及び2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)とN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-トレオニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トリプトファンを7日間処理したマウスの背中皮膚を5μLに切った切片を、ヘマトキシリン/エオシン(hematoxylin/eosin)で染色した組織写真である。
図4A】Balb/cマウスにアトピー皮膚炎誘発のための2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理後29日目の対照群、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群、及び2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)とN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-トレオニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トリプトファンを7日間処理したマウスの血清サンプルのうち、総血清IgEの量をELISAで測定した結果を示す図である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB))。
図4B】NC/Ngaマウスにアトピー皮膚炎誘発のための2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理後29日目の対照群、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群、及び2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)とN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-トレオニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トリプトファンを7日間処理したマウスの血清サンプルのうち、総血清IgEの量をELISAで測定した結果を示す図である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB))。
図5A】Balb/cマウスにアトピー皮膚炎誘発のための2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理後29日目の対照群、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群、及び2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)とN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-トレオニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トリプトファンを7日間処理したマウス群の皮膚組織内IL4及びインターフェロンγ mRNA量を示す図である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB))。
図5B】NC/Ngaマウスにアトピー皮膚炎誘発のための2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理後29日目の対照群、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群、及び2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)とN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-トレオニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トリプトファンを7日間処理したマウス群の皮膚組織内IL4及びインターフェロンγ mRNA量を示す図である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB))。
図6】NC/NgaマウスにDNFBによるアトピー皮膚炎誘導時に、それぞれ0.1%濃度で、L型N-アセチルアラニン、N-アセチルトリプトファンとDL型及びD型のN-アセチルアラニン、N-アセチルトリプトファンのアトピー皮膚炎緩和効果を比較した図である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB))。
図7】NC/NgaマウスにDNFBによる痒み症誘導時に、それぞれ0.1%濃度で、L型のN-アセチルアラニン、N-アセチルトレオニン、N-アセチルアルギニン、N-アセチルトリプトファンとDL型及びD型のN-アセチルアラニン、N-アセチルトリプトファンの痒み症緩和効果を比較した図である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB))。
図8】NC/Ngaアトピー皮膚炎誘発マウスに数種のN-アシルL-トリプトファン、N-アセチルγ-グルタミルアラニン、及びN-パルミトイルL-アラニンを皮膚炎誘発部位に塗布した後、臨床皮膚点数(SCORAD)を測定して比較した結果である(*P<0.05対2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)処理群)。
図9】N-アセチルγ-グルタミルアラニンをGenescript社(USA)に依頼して合成した化合物のMSデータである。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【実施例
【0094】
<実施例1>実験動物及び試薬
7週齢balb/c雄マウスと7週齢NC/Nga雄マウスをオリエントバイオ社(京畿道城南、韓国)から購入し、特定病原菌のない状態で維持した。マウスを25±1℃の温度及び40±5%の相対湿度に冷暖房装置をした動物部屋に収容し、蒸留水及び実験食餌を供給した。動物処置及び維持は実験動物管理原則(the Principles of Laboratory Animal Care(NIH公開番号第85-23号、1985年改正))及び全北大学校動物福祉に対する倫理委員会が発行したガイドライン(KHUASP(SE)-15-021)を遵守した。全ての手続きは米国国立保健院(NIH)ガイドラインに従って行った。
【0095】
<実施例2>アトピー皮膚炎誘発
balb/cマウスにアトピー様皮膚炎を誘発させるために、アセトン/オリーブオイル(3:1)中の0.35%2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)(Sigma,USA)100μLを、剃毛したマウスの背中皮膚に塗布してDNFB感作を誘導し、6日目、9日目、12日目、15日目、18日目、21日目、24日目、27日目に0.25%DNFB 100μLを剃毛した背中皮膚に塗布して皮膚炎を誘発した。対照マウスを同一体積のビークルで処理した(図1A)。
【0096】
balb/cマウスを用いた場合に比べてよりアトピーモデルに近いモデルを作るために、NC/Ngaマウスにアトピーを誘発させた。具体的に、アセトン/オリーブオイル(3:1)中の0.35%2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)100μLを剃毛したマウスの背中皮膚に塗布してDNFB感作を誘導し、4日から20日目までに2日に1回ずつ0.15%DNFB溶液100μLを剃毛した背中皮膚に塗布して皮膚炎を誘発した。対照マウスを同一体積のビークルで処理した(図1B)。
【0097】
<実施例3>薬物処理
N-アセチル又はN-アシルアミノ酸を0.1%になるようにそれぞれリン酸緩衝等張液(phosphate buffered saline)に溶解させ、これらの溶液200μLを、Balb/cを用いたアトピー皮膚炎モデルでは22日から28日まで、NC/Ngaマウスを用いたアトピー皮膚炎モデルでは15日から21日まで毎日マウス皮膚などに塗布した。N-アセチル又はN-アシルアミノ酸とDNFBを同時に処理するときは、DNFBとN-アセチル又はN-アシルアミノ酸との直接反応を避けるために12時間の間隔をおいてそれぞれ処理した。非処理グループ及び2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)グループは、同一体積のリン酸緩衝等張液で処理した(図1)。本実施例に使用されたN-アセチルアミノ酸はSigma-Aldrich(USA)、MP scientific(USA)、TCI tokyo chemical industry(Japan)、Santacruz(USA)社などの製品を購入し、精製無しで使用した。
【0098】
<実施例4>皮膚鎮静効果及びアトピー皮膚炎程度の評価
皮膚鎮静の程度及びアトピー皮膚炎の程度は、定立された既存のSCORAD(SCORing Atopic Dermatitis)(Oranje et al.,2007)を用いて巨視的に評価した。浮腫、紅斑、痂皮、乾燥、擦過傷及び苔蘚化などの各症状の程度を0から3までに等級化した(0は症状無し;1は軽症;2は中等度;3は重症)。合計皮膚炎点数は、全ての個別点数の和と決定した(表1)。一方、評価は、前記マウスのグループ配分を目撃しなかった研究者によって行われた。表1によれば、20種類のN-アセチル-L-アミノ酸のうち、N-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トレオニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどが有意に皮膚鎮静及びアトピー皮膚炎の治療効果を示した。
【0099】
【表1】
また、図2Aによれば、Balb/cマウスを用いたアトピー皮膚炎モデルにおいて、20種類のN-アセチル-L-アミノ酸のうち、N-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トレオニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどが有意にアトピー皮膚炎治療効果を示した(図2A)。外見上、皮膚炎の程度も、N-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トレオニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどをアトピー誘発マウスに処理した場合に顕著に低下した(図2B)。
【0100】
図3によれば、Balb/cマウスを用いたアトピー皮膚炎モデルで効果を示したN-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トレオニン及びN-アセチルL-トリプトファンのうち、NC/Ngaマウスを用いたアトピー皮膚炎モデルではN-アセチルL-アラニン及びN-アセチルトリプトファンなどがアトピー皮膚炎の治療効果を示した(図3A)。特に、遺伝的にアトピー皮膚炎がよく生じるマウス種NC/Ngaはアトピー皮膚炎モデルとして広く用いられているが、このモデルにおいてL-アラニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどが顕著な効果を示した(図3B)。NC/Ngaマウスに実施例2のアトピー皮膚炎を誘発したマウス及び薬物処理マウスの背中皮膚を摘出し、Accustain formalin-free fixative溶液で組織を固定した後、パラフィンブロック(paraffin block)を作製した。5μm厚に薄く切った後、ヘマトキシリン/エオシン(hematoxylin/eosin)染色を施し、表皮及び真皮層の厚さ変化を観察した。アトピー皮膚炎誘発によって厚くなった皮膚及び真皮の厚さが、N-アセチルL-アラニンとN-アセチルL-トリプトファンの処理によって顕著に低下した(図3C)。
【0101】
<実施例5>血清IgE測定
試験物質処理終了後、マウスを犠牲させ、心臓から血液を採取した。この血液から血清を分離してIgEを測定した。具体的に、IgE ELISAキット(BD Biosciences,San Diego,CA)を用いて、抗体を緩衝溶液に希釈して96ウェルプレートに付着して4℃で一晩静置し、マニュアルに従って実験を進行した。IgEのタンパク質量はマイクロプレートリーダー(microplate reader)により450nmで吸光度を測定した。図4によれば、N-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トレオニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどをBalb/cマウス種におけるアトピー誘発マウスに処理した場合、有意に血清IgEの減少を誘導し(図4A)、N-アセチルL-アラニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどをNC/Ngaマウス種におけるアトピー誘発マウスに処理した場合、有意に血清IgEの減少を誘導した(図4B)。血清IgEの濃度はアトピー皮膚炎の重症度を示す指標であるので、図4の結果は、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トレオニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどがアトピー皮膚炎に治療効果があることを示している。
【0102】
<実施例6>定量的リアルタイムPCRによるIL4及びインターフェロンγの測定
アトピー誘発皮膚組織から500μLのTrizol(Life Technologies,USA)を用いて製造者のプロトコルに従って全RNAを分離した後、Superscript III逆転写酵素(Life Technologies,USA)を用いてcDNAを合成した後、分析しようとするIL4とインターフェロンγのプライマーと反応させてリアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCRはStepOne Plus PCRサイクラー(Applied Biosystems)上でSybrグリーン(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて行った。mRNA発現データは△△CT方法を用いて分析したが、遺伝子検出のためにβ-アクチンに正規化した。リアルタイムPCRに必要な検証されたプライマーはQuagen(USA)から購入した。図5によれば、N-アセチルシステイン、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トレオニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどをBalb/cアトピー誘発マウスに処理した場合、皮膚組織内のIL4及びインターフェロンγを有意に減少させ(図5A)、N-アセチルL-アラニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどをNC/Ngaアトピー誘発マウスに処理した場合、皮膚組織内のIL4及びインターフェロンγを有意に減少させた。IL4はTh2反応を誘導し、インターフェロンγはTh1反応を誘導するものと知られている。したがって、図4の結果は、N-アセチルL-アラニン、N-アセチルL-アルギニン、N-アセチルL-トレオニン及びN-アセチルL-トリプトファンなどがアトピー皮膚炎に活性化されたTh2及びTh1反応を抑制して治療効果があることを示している。
【0103】
<実施例7>N-アセチルアミノ酸作用の立体特異性(stereo-specificity)
L型、LD型及びD型のN-アセチルアラニン及びN-アセチルトリプトファンなどのアトピー性皮膚炎による効果を調べるために、NC/Ngaアトピー皮膚炎モデルから皮膚炎治療効果を測定した結果、LD型及びD型のN-アセチルアラニン及びN-アセチルトリプトファンの効果は見られず、L型だけが顕著な効果を示した(図6)。これらの物質に対する痒み症抑制作用は立体特異的であることを示している。
【0104】
<実施例8>痒み症抑制試験
L型、LD型及びD型のN-アセチルアラニン、N-アセチルアルギニン、N-アセチルトレオニン及びN-アセチルトリプトファンなどがアトピー性接触性皮膚炎による痒み症を抑制するかどうかを調べるために、生理食塩水に溶解させた0.1%2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)溶液と0.1%N-アセチルアミノ酸液20μLを、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)の最終処理(27日目)の10分後に1回にわたって右耳に塗り(陰性対照群は生理食塩水を塗った。)、その後、1時間痒み症を測定した。図7は、DNFBによる痒み症誘導時に、それぞれ0.1%濃度でL型のN-アセチルアラニン、N-アセチルトレオニン、N-アセチルアルギニン、N-アセチルトリプトファン及びDL型とD型のN-アセチルアラニン、N-アセチルトリプトファンの痒み症緩和効果を比較したものである。L型のN-アセチルアラニン、N-アセチルトレオニン、N-アセチルアルギニン、N-アセチルトリプトファンは痒み症を顕著に抑制したが、DL型及びD型のN-アセチルアラニン、N-アセチルトリプトファンは効果がほとんどなかった。これらの物質に対する痒み症抑制作用は立体特異的であることを示している。
【0105】
<実施例9>トリプトファンアシル誘導体の合成
N-アセチル基以外のN-アシルトリプトファン化合物の効果を測定するために下記の反応式を用いてN-プロピオニルトリプトファン、N-プチリルトリプトファン、N-ペンタノイルトリプトファン、N-ウンデカノイルトリプトファン、N-パルミトイルトリプトファン、N-(Z)-ドコス-13-エノイルトリプトファン、N-ステアロイルトリプトファン、N-オレオイルトリプトファンを合成した。本実施例に使用された試薬はSigma-Aldrich(USA)、TCI(Japan)、Alfa Aesar(USA)、Acros(USA)、Hanawa(Japan)社などの製品を購入し、精製無しで使用した。合成した化合物の純度と反応の進行過程はTLC(Thin layer chromatography)で確認し、PLCシリカゲル60 F254、0.5mm(Merck)を使用した。TLC上で分離された物質の確認のためにUVランプ(254nm、365nm)を使用した。分離は、シリカゲルカラムカートリッジ(4g~120g、RediSep(登録商標)Rf)を使用してPLC2020(Gilson)としてMPLC(Medium Pressure Liquid Chromatography)用いるか、或いはAgilent 5 Prep-C18 100x21.2mmカラムを使用してYL9100 Semi-prep HPLCシステム(YL9101S Vacuum Degasser、YL9111S Binary Pump、YL9120S UV/Vis Detector;ヨンリン機器)としてHPLC(High Performance Liquid Chromatography)用いた。生成物の質量分析は、Agilent 6130 Quadrupole LC/MSで糾明した。生成物の構造分析のためのNMRスペクトルは、Bruker ultra-shield 300MHz NMR分光計とBruker ultra-shield 500MHz NMR分光計で測定した。NMR溶媒はCambridge Isotope Laboratories社のchloroform-dとdimethylsulfoxide-dを使用し、TMS(tetramethylsilane)を内部標準物質としてppm単位で表示した。
(反応式)
【0106】
【化2】
<実施例9-1>N-プロピオニルトリプトファンの製造
まず、メチルプロピオニル-L-トリプトファネートを製造するために、プロピオン酸(propionic acid)(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステルヒドロクロリド(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めてブライン(brine)で洗浄し、1N HClで洗浄後に再びブラインで洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮後にMPLC(Medium pressure liquid chromatography)上でn-ヘキサン及びエチルアセテートを用いて精製した。収得率は74%で、メチルプロピオニル-L-トリプトファネートの性質は次の通りであった。。1HNMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.19 (s, 1H), 7.61 - 7.53 (m, 1H), 7.39 (dt, J = 8.2, 0.9 Hz, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.2, 7.0, 1.2 Hz, 1H), 7.16 - 7.07 (m, 1H), 7.00 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.04 - 5.88 (m, 1H), 5.00 (dt, J = 7.9, 5.3 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.44 - 3.29 (m, 2H), 2.21 (qd, J = 7.6, 1.2 Hz, 2H), 1.14 (t, J = 7.6 Hz, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C15H18N2O3 274.1, found m/z 275.1 (M + H+)。
【0107】
メチルプロピオニル-L-トリプトファネートからN-プロピオニルトリプトファンを製造するために、メチルプロピオニル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH1に調整した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮した。収得率は92%で、N-プロピオニルトリプトファンの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.82 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.35 - 7.27 (m, 1H), 7.13 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.06 (ddd, J = 8.1, 6.9, 1.2 Hz, 1H), 6.98 (ddd, J = 8.0, 6.9, 1.1 Hz, 1H), 4.46 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 3.15 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.01 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 2.08 (qd, J = 7.5, 3.1 Hz, 2H), 0.94 (d, J = 7.6 Hz, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C14H16N2O3260.1, found m/z 261.1 (M + H+)。
【0108】
<実施例9-2>N-ブチリルトリプトファンの製造
まず、メチルブチリル-L-トリプトファネートを製造するために、ブチル酸(butyric acid)(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステルヒドロクロリド(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めてブラインで洗浄し、1N HClで洗浄後に再びブラインで洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮後にMPLC(Medium pressure liquid chromatography)上でn-ヘキサン及びエチルアセテートを用いて精製した。収得率は83%で、メチルブチリル-L-トリプトファネートの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.15 (s, 1H), 7.61 - 7.51 (m, 1H), 7.39 (dt, J = 8.1, 0.9 Hz, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.1, 7.0, 1.1 Hz, 1H), 7.15 (ddd, J = 8.0, 7.0, 1.0 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.98 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.01 (dt, J = 7.9, 5.3 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.39 - 3.29 (m, 2H), 2.16 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.70 - 1.58 (m, 3H), 0.93 (t, J = 7.4 Hz, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C16H20N2O3288.2, found m/z 289.2 (M + H+)。
【0109】
メチルブチリル-L-トリプトファネートからN-ブチリルトリプトファンを製造するために、メチルブチリル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH1に調整した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮した。収得率は94%で、N-ブチリルトリプトファンの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.30 (s, 1H), 7.60 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.38 (dt, J = 8.2, 0.9 Hz, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.1, 7.0, 1.2 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 8.0, 7.1, 1.0 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.08 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.95 (dd, J = 7.6, 5.4 Hz, 1H), 3.44 - 3.32 (m, 2H), 2.11 - 2.08 (m, 2H), 1.58 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 0.87 (t, J = 7.4 Hz, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C15H18N2O3274.1, found m/z 275.1 (M + H+)。
【0110】
<実施例9-3>N-ペンタノイルトリプトファンの製造
まず、メチルペンタノイル-L-トリプトファネートを製造するために、ペンタノン酸(pentanoic acid)(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステルヒドロクロリド(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めてブラインで洗浄し、1N HClで洗浄後に再びブラインで洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮後にMPLC(Medium pressure liquid chromatography)上でn-ヘキサン及びエチルアセテートを用いて精製した。収得率は85%で、メチルペンタノイル-L-トリプトファネートの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.14 (s, 1H), 7.56 (dt, J = 8.0, 1.0 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 8.1, 0.9 Hz, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.2, 7.0, 1.2 Hz, 1H), 7.15 (ddd, J = 8.0, 7.1, 1.0 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.97 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.00 (dt, J = 7.9, 5.4 Hz, 1H), 3.46 - 3.23 (m, 2H), 2.32 - 2.09 (m, 2H), 1.61 - 1.54 (m, 2H), 1.51 - 1.19 (m, 2H), 0.90 (t, J = 7.3 Hz, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C17H22N2O3302.2, found m/z 303.2 (M + H+)。
【0111】
メチルペンタノイル-L-トリプトファネートからN-ペンタノイルトリプトファンを製造するために、メチルペンタノイル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH1に調整した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮した。収得率は90%で、N-ペンタノイルトリプトファンの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.29 (s, 1H), 7.62 - 7.51 (m, 1H), 7.44 - 7.32 (m, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.2, 7.0, 1.1 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 8.0, 7.0, 1.0 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.07 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 4.99 (dt, J = 7.7, 5.4 Hz, 1H), 3.44 - 3.30 (m, 2H), 2.18 - 2.13 (m, 2H), 1.54 (p, J = 7.6 Hz, 2H), 1.28 (dt, J = 9.0, 7.2 Hz, 3H), 0.87 (t, J = 7.3 Hz, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C16H20N2O3288.2, found m/z 289.2 (M + H+)。
【0112】
<実施例9-4>N-ウンデカノイルトリプトファンの製造
まず、メチルウンデカノイル-L-トリプトファネートを製造するために、ウンデカノン酸(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステルヒドロクロリド(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めてブラインで洗浄し、1N HClで洗浄後に再びブラインで洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮後にMPLC(Medium pressure liquid chromatography)上でn-ヘキサン及びエチルアセテートを用いて精製した。収得率は91%で、メチルウンデカノイル-L-トリプトファネートの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.12 (s, 1H), 7.61 - 7.52 (m, 1H), 7.39 (dt, J = 8.1, 0.9 Hz, 1H), 7.25 - 7.21 (m, 1H), 7.22 - 7.12 (m, 1H), 7.01 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.97 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.88 - 5.78 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.43 - 3.27 (m, 2H), 2.23 - 2.14 (m, 3H), 2.11 - 2.01 (m, 2H), 1.60 (s, 5H), 1.38 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 1.28 (d, J = 2.1 Hz, 9H). LC-MS (ESI), calcd for C23H34N2O3386.2, found m/z 387.2(M + H+)。
【0113】
メチルウンデカノイル-L-トリプトファネートからN-ウンデカノイルトリプトファンを製造するために、メチルウンデカノイル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH1に調整した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮した。収得率は88%で、N-ウンデカノイルトリプトファンの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.30 - 8.27 (m, 1H), 7.60 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.25 - 7.20 (m, 1H), 7.18 - 7.11 (m, 1H), 7.05 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.06 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 5.91 - 5.75 (m, 1H), 5.06 - 4.96 (m, 2H), 3.44 - 3.30 (m, 2H), 2.16 - 2.11 (m, 2H), 2.05 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.54 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 1.41 - 1.36 (m, 2H), 1.30 - 1.22 (m, 11H). LC-MS (ESI), calcd for C22H32N2O3372.2, found m/z 373.2 (M + H+)。
【0114】
<実施例9-5>N-パルミトイルトリプトファンの製造
まず、メチルパルミトイル-L-トリプトファネートを製造するために、パルミトイン酸(palmitoic acid)(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステルヒドロクロリド(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めてブラインで洗浄し、1N HClで洗浄後に再びブラインで洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮後にMPLC(Medium pressure liquid chromatography)上でn-ヘキサン及びエチルアセテートを用いて精製した。収得率は84%で、メチルパルミトイル-L-トリプトファネートの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.11 (s, 1H), 7.56 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.51 - 7.33 (m, 1H), 7.19 - 7.06 (m, 1H), 7.01 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.99 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.00 (dt, J = 8.0, 5.3 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.39 - 3.29 (m, 2H), 2.38 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 2.19 - 2.15 (m, 2H), 1.67 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 0.91 (s, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C28H44N2O3456.2, found m/z 457.2 (M + H+)。
【0115】
メチルパルミトイル-L-トリプトファネートからN-パルミトイルトリプトファンを製造するためにメチルパルミトイル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH1に調整した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮した。収得率は89%で、N-パルミトイルトリプトファンの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.19 (s, 1H), 7.60 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.27 - 7.21 (m, 1H), 7.18 -7.12 (m, 1H), 7.08 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 4.99 (dd, J = 9.2, 3.8 Hz, 1H), 3.44 - 3.34 (m, 2H), 2.38 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 2.14 (d, J = 11.8 Hz, 2H), 1.65 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 1.28 (m, 24 H), 0.91 (s, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C27H42N2O3 442.2, found m/z 443.2 (M + H+)。
【0116】
<実施例9-6>N-(Z)-ドコス-13-エノイル-L-トリプトファンの製造
まず、メチル(Z)-ドコス-13-エノイル-L-トリプトファネートを製造するために、(Z)-ドコス-13-エン酸((Z)-docos-13-enoic acid)(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステルヒドロクロリド(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めてブラインで洗浄し、1N HClで洗浄後に再びブラインで洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮後にMPLC(Medium pressure liquid chromatography)上でn-ヘキサン及びエチルアセテートを用いて精製した。収得率は74%で、メチル(Z)-ドコス-13-エノイル-L-トリプトファネートの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.16 (s, 1H), 7.56 (dd, J = 8.0, 1.1 Hz, 1H), 7.39 (dt, J = 8.2, 0.9 Hz, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.2, 7.0, 1.1 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 7.9, 7.0, 1.0 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.98 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.43 - 5.31 (m, 2H), 5.00 (dt, J = 7.9, 5.3 Hz, 1H),3.72 (s,3H) ,3.39 - 3.29 (m, 2H), 2.20 - 2.13 (m, 2H), 2.04 (q, J = 6.7 Hz, 4H), 1.61 (q, J = 10.0, 7.5 Hz, 2H), 1.35 - 1.24 (m, 28H), 0.91 (t, J = 6.9 Hz, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C34H54N2O353/.4, found m/z 539.4 (M + H+)。
【0117】
メチル(Z)-ドコス-13-エノイル-L-トリプトファネートからN-(Z)-ドコス-13-エノイルトリプトファンを製造するために、メチル(Z)-ドコス-13-エノイル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH1に調整した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮した。収得率は92%で、N-(Z)-ドコス-13-エノイルトリプトファンの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.24 (s, 1H), 7.60 (dd, J = 8.0, 1.0 Hz, 1H), 7.42 - 7.37 (m, 1H), 7.19 - 7.11 (m, 1H), 7.07 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.38 (td, J = 4.4, 2.1 Hz, 2H), 4.95 (dt, J = 7.5, 5.5 Hz, 1H), 3.44 - 3.33 (m, 2H), 2.14 (dd, J = 8.6, 6.8 Hz, 2H), 2.09 - 1.97 (m, 4H), 1.55 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.28 (dd, J = 19.4, 13.4 Hz, 30H), 0.90 (t, J = 6.9 Hz, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C33H52N2O3524.4, found m/z 525.4 (M + H+)。
【0118】
<実施例9-7>N-ステアロイル-L-トリプトファンの製造
まず、メチルステアロイル-L-トリプトファネートを製造するために、ステアロン酸(stearoic acid)(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステルヒドロクロリド(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めてブラインで洗浄し、1N HClで洗浄後に再びブラインで洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮後にMPLC(Medium pressure liquid chromatography)上でn-ヘキサン及びエチルアセテートを用いて精製した。収得率は80%で、メチルステアロイル-L-トリプトファネートの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.09 (d, J = 15.2 Hz, 1H), 7.56 (dd, J = 7.9, 1.0 Hz, 1H), 7.39 (dt, J = 8.2, 0.9 Hz, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.1, 7.0, 1.2 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 7.9, 7.0, 1.0 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.00 (dt, J = 7.9, 5.3 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.39 - 3.28 (m, 2H), 2.37 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.19 - 2.11 (m, 2H), 1.66 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.59 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 0.91 (s, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C30H48N2O3484.4, found m/z 485.4 (M + H+)。
【0119】
メチルステアロイル-L-トリプトファネートからN-ステアロイルトリプトファンを製造するために、メチルステアロイル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH1に調整した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮した。収得率は84%で、N-ステアロイルトリプトファンの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.27 - 8.17 (m, 1H), 7.60 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.23 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.15 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.01 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 4.98 (dt, J = 7.5, 5.5 Hz, 1H), 3.46 - 3.34 (m, 2H), 2.37 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.17 - 2.12 (m, 2H), 1.68 - 1.63 (m, 2H), 1.56 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.29 (s, 24H), 0.91 (s, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C29H46N2O2470.4, found m/z 471.4 (M + H+)。
【0120】
<実施例9-8>N-オレオイル-L-トリプトファンの製造
まず、メチルオレオイル-L-トリプトファネートを製造するために、オレオン酸(oleoic acid)(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステルヒドロクロリド(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めてブラインで洗浄し、1N HClで洗浄後に再びブラインで洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮後にMPLC(Medium pressure liquid chromatography)上でn-ヘキサン及びエチルアセテートを用いて精製した。収得率は73%で、メチルオレオイル-L-トリプトファネートの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.18 (s, 1H), 7.56 (dd, J = 7.9, 1.0 Hz, 1H), 7.39 (dt, J = 8.1, 0.9 Hz, 1H), 7.29 (s, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.2, 7.1, 1.2 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 8.0, 7.0, 1.0 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.99 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.37 (qd, J = 4.1, 2.1 Hz, 2H), 5.00 (dt, J = 8.0, 5.3 Hz, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.39 - 3.28 (m, 2H), 2.20 - 2.13 (m, 2H), 2.08 - 1.99 (m, 5H), 1.60 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.34 - 1.28 (m, 24H), 0.92 - 0.89 (m, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C30H46N2O3482.4, found m/z 483.4 (M + H+)。
【0121】
メチルオレオイル-L-トリプトファネートからN-オレオイルトリプトファンを製造するために、メチルオレオイル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH1に調整した後、エチルアセテートで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥させ、濃縮した。収得率は86%で、N-オレオイルトリプトファンの性質は次の通りであった。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.22 (s, 1H), 7.61 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.40 (dt, J = 8.1, 0.9 Hz, 1H), 7.23 (ddd, J = 8.1, 6.9, 1.2 Hz, 1H), 7.15 (ddd, J = 8.0, 7.1, 1.0 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.37 (qd, J = 5.3, 4.6, 2.3 Hz, 2H), 4.95 (dt, J = 7.3, 5.6 Hz, 1H), 3.45 - 3.33 (m, 2H), 2.17 - 2.10 (m, 2H), 1.59 - 1.51 (m, 2H), 1.38 - 1.26 (m, 26H), 0.91 (d, J = 6.8 Hz, 3H). C29H44N2O2468.3, found m/z 469.3 (M + H+)。
【0122】
<実施例10>N-アセチルγ-グルタミルアラニンの製造
N-アセチルγ-グルタミルアラニンはGenescript社(USA)に依頼して合成した。この化合物のMSデータは、図9の通りてある。
【0123】
<実施例11>トリプトファンアシル誘導体及びアラニンアシル誘導体の皮膚鎮静効果及びアトピー皮膚炎程度の評価
実施例9で合成したトリプトファンアシル誘導体と実施例10で合成したアラニンアシル誘導体及びN-パルミトイルアラニン(Santacruz(米国)から購入)を対象に実施例4の方法で皮膚鎮静効果及び皮膚炎程度を評価した(表2)
【0124】
【表2】
表2及び図8によれば、N-アシル-L-トリプトファン、及びN-アシル-L-アラニンが有意に皮膚鎮静及びアトピー皮膚炎治療効果を示した。
【0125】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好ましい具現例に過ぎず、これに本発明の範囲が制限されない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項及びその等価物によって定義されると言えよう。
【0126】
(課題固有番号)2017R1A2A1A17069822
(部処名)科学技術情報通信部
(研究管理専門機関)韓国研究財団
(研究事業名)跳躍研究支援事業後続研究支援
(研究課題名)Leukotriene誘導体基盤アトピー皮膚炎治療候補物質開発
(寄与率)1/2
(主管機関)全北大学校
(研究期間)2017.09.01~2019.02.28
(課題固有番号)2017R1A5A2015061
(部処名)科学技術情報通信部
(研究管理専門機関)韓国研究財団
(研究事業名)先導研究センター支援事業
(研究課題名)代謝炎症研究センター
(寄与率)1/2
(主管機関)全北大学校
(研究期間)2017.09.01~2019.02.28

図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9