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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
B62D1/19
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023086613
(22)【出願日】2023-05-26
【審査請求日】2023-05-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 憲二
(72)【発明者】
【氏名】市成 浩典
(72)【発明者】
【氏名】岡田 千明
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓未
(72)【発明者】
【氏名】近藤 旭
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-195576(JP,U)
【文献】特開2019-116121(JP,A)
【文献】特開2015-199450(JP,A)
【文献】特開2020-093652(JP,A)
【文献】特開2012-091615(JP,A)
【文献】実開昭63-022279(JP,U)
【文献】国際公開第2017/141954(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0049620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラム側ブラケットの切り欠きに被せて装着されたカプセルと車体側ブラケットとをボルト及びナットで締めて固定されるステアリング装置において、
カプセルは、コラム側ブラケット及び車体側ブラケットに挟まれる板金製の第1部材と、コラム側ブラケットに下方からあてがわれる板金製の第2部材とから構成され、
第1部材は、ボルトが通る第1開口をコラム側ブラケットの切り欠きの範囲に位置させた状態で、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲で下方に向けた爪と、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲の外でコラム側ブラケットに向けて突出させた押圧部とを第1開口の周りに設け、
第2部材は、ボルトが通る第2開口をコラム側ブラケットの切り欠きの範囲に位置させた状態で、第1部材の爪に対応する爪受け部を第2開口の周りに設け、
第1部材及び第2部材がコラム側ブラケットを挟んで第1部材の爪を第2部材の爪受け部にかしめ、第1部材及び第2部材を一体化させた状態で、第1部材からの押圧部の突出量とコラム側ブラケットの厚みとの合計より低い筒部を、第1開口及び第2開口に連通する位置で第1部材及び第2部材の間に介在させた
ステアリングコラム装置。
【請求項2】
コラム側ブラケットの切り欠きに被せて装着されたカプセルと車体側ブラケットとをボルト及びナットで締めて固定されるステアリング装置において、
カプセルは、コラム側ブラケット及び車体側ブラケットに挟まれる板金製の第1部材と、コラム側ブラケットに下方からあてがわれる板金製の第2部材とから構成され、
第1部材は、ボルトが通る第1開口をコラム側ブラケットの切り欠きの範囲に位置させた状態で、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲で下方に向けた爪を第1開口の周りに設け、
第2部材は、ボルトが通る第2開口をコラム側ブラケットの切り欠きの範囲に位置させた状態で、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲の外でコラム側ブラケットに向けて突出させた押圧部を第2開口の周りに設け、第1部材の爪に対応するする爪受け部を第2開口の周りに設け、
第1部材及び第2部材がコラム側ブラケットを挟んで第1部材の爪を第2部材の爪受け部にかしめ、第1部材及び第2部材を一体化させた状態で、第2部材からの押圧部の突出量とコラム側ブラケットの厚みとの合計より低い筒部を、第1開口及び第2開口に連通する位置で第1部材及び第2部材の間に介在させた
ステアリングコラム装置。
【請求項3】
筒部は、第1部材又は第2部材の一方から他方に向け突出させたバーリング加工により、第1部材又は第2部材の一方と一体に形成された
請求項1又は2いずれか記載のステアリング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両事故に際して発生する二次衝突(運転手の衝突)を受けたステアリングが速やかに車体から離脱し、運転手の受ける衝撃を緩和するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置は、車両事故に際して発生する二次衝突(運転手の衝突)を受けたステアリングが速やかに車体から離脱し、運転手の受ける衝撃を緩和する目的で、コラム側ブラケットの切り欠きに被せて装着されたカプセルと車体側ブラケットとをボルト及びナットで締めて固定される(特許文献1)。運転手の受ける衝撃を緩和するステアリング装置は、ステアリングが二次衝突を受けると、ボルト及びナットで車体側ブラケットに固定されたカプセルからコラム側ブラケットが分離し、装置全体が車体から離脱させられる。
【0003】
特許文献1が開示するステアリング装置のカプセルは、コラム側ブラケットに設けられた切り欠きを囲む部分(取付座)を挟み込む第1の部分及び第2の部分を連結部により連結した構成である(特許文献1・[請求項1])。ステアリング装置が車体から離脱する基に足りる二次衝突の荷重、すなわち離脱荷重は、カプセルを貫通して締め付けられるボルトに対するナットの締め付けトルクに応じて決定される(特許文献1・[0079])。離脱荷重は、ボルトに対するナットの締め付けトルクにより決定される摩擦力を超える大きさで設定される設計値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-093652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転手の受ける衝撃を緩和するステアリング装置は、ステアリングが二次衝突を受けると速やかに車体から離脱させるため、離脱荷重が正しく設定される必要があり、ナットが規定通りの締め付けトルクでボルトに締め付けられなければならない。ところが、作業者の技量差や部材の個体差から、ボルトに対してナットを締め付けたとしても締め付けトルクにばらつきが生じ、離脱荷重が正しく設定されないことがあった。
【0006】
運転手の受ける衝撃を緩和するステアリング装置の離脱荷重が正しく設定されない原因は、ステアリング装置を車体に固定するボルト及びナットが、締め付けトルクに応じて離脱荷重を決定することにある。そこで、運転手の受ける衝撃を緩和するステアリング装置の離脱荷重を正しく設定するため、車体に対する取付手段であるボルト及びナットから独立して、離脱荷重が設定できる構造又は構成について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果開発したものが、コラム側ブラケットの切り欠きに被せて装着されたカプセルと車体側ブラケットとをボルト及びナットで締めて固定されるステアリング装置において、カプセルは、コラム側ブラケット及び車体側ブラケットに挟まれる板金製の第1部材と、コラム側ブラケットに下方からあてがわれる板金製の第2部材とから構成され、第1部材は、ボルトが通る第1開口をコラム側ブラケットの切り欠きの範囲に位置させた状態で、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲で下方に向けた爪と、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲の外でコラム側ブラケットに向けて突出させた押圧部とを第1開口の周りに設け、第2部材は、ボルトが通る第2開口をコラム側ブラケットの切り欠きの範囲に位置させた状態で、第1部材の爪に対応する第2開口の周りの位置に爪受け部を設け、第1部材及び第2部材がコラム側ブラケットを挟んで第1部材の爪を第2部材の爪受け部にかしめ、第1部材及び第2部材を一体化させた状態で、第1部材からの押圧部の突出量とコラム側ブラケットの厚みとの合計より低い筒部を、第1開口及び第2開口に連通する位置で第1部材及び第2部材の間に介在させたステアリングコラム装置である。
【0008】
第1部材に押圧部を設けたステアリング装置は、第1部材及び第2部材から構成されるカプセルがコラム側ブラケットの切り欠きに被せて装着され、従来同様、カプセルと車体側ブラケットとをボルト及びナットで締めて固定される。カプセルがコラム側ブラケットに装着される際、第1部材の押圧部がコラム側ブラケットの上面に押し付けられて塑性変形する。塑性変形した押圧部は、コラム側ブラケットの上面に一定の力で押し続けられる。こうして、ステアリング装置の離脱荷重は、コラム側ブラケットの上面に押しつけられる押圧部の摩擦力の大小に応じて決定される。
【0009】
第1部材に押圧部を設けたステアリング装置における第1部材の爪は、第1部材及び第2部材がコラム側ブラケットを挟んだ状態で、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲で第2部材の爪受け部にかしめ、第1部材及び第2部材を一体化させる。一体化した第1部材及び第2部材は、コラム側ブラケットの切り欠きに装着させたカプセルを構成する。第1部材及び第2部材は、第1部材の爪を第2部材の爪受け部にかしめている限り、分離せず、コラム側ブラケットの切り欠きに対するカプセルの装着状態を安定に維持させる。
【0010】
第1部材に押圧部を設けたステアリング装置における第1部材の押圧部は、第1部材及び第2部材を一体化させると、コラムブラケットの上面に押し付けられて塑性変形し、コラム側ブラケットの上面に一定の力で押し続けられる部位である。第1部材の押圧部は、板金部材である第1部材の一部を切り起こして塑性変形させた板バネ部分が例示される。この場合、押圧部をコラム側ブラケットの上面に押し続ける一定の力は、塑性変形させる前の第1部材からの押圧部の突出量とコラム側ブラケットの厚みとの合計から筒部の高さを差し引いた長さに応じた塑性変形量から特定される。
【0011】
第1部材に押圧部を設けたステアリング装置における第2部材の爪受け部は、第2部材に対する第1部材の爪をかしめる位置を決定することから、第1部材及び第2部材の位置関係を特定する。筒部は、第1開口及び第2開口に連通する位置で第1部材及び第2部材の間に介在する部材又は部位である。筒部は、第1部材及び第2部材と別の部材でもよいし、第1部材又は第2部材のいずれかと一体の部位でもよい。
【0012】
押圧部は、第2部材に設けてもよい。本発明は、コラム側ブラケットの切り欠きに被せて装着されたカプセルと車体側ブラケットとをボルト及びナットで締めて固定されるステアリング装置において、カプセルは、コラム側ブラケット及び車体側ブラケットに挟まれる板金製の第1部材と、コラム側ブラケットに下方からあてがわれる板金製の第2部材とから構成され、第1部材は、ボルトが通る第1開口をコラム側ブラケットの切り欠きの範囲に位置させた状態で、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲で下方に向けた爪を第1開口の周りに設け、第2部材は、ボルトが通る第2開口をコラム側ブラケットの切り欠きの範囲に位置させた状態で、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲の外でコラム側ブラケットに向けて突出させた押圧部を第2開口の周りに設け、第1部材の爪に対応する第2開口の周りの位置に爪受け部を設け、第1部材及び第2部材がコラム側ブラケットを挟んで第1部材の爪を第2部材の爪受け部にかしめ、第1部材及び第2部材を一体化させた状態で、第2部材からの押圧部の突出量とコラム側ブラケットの厚みとの合計より低い筒部を、第1開口及び第2開口に連通する位置で第1部材及び第2部材の間に介在させたステアリグコラム装置としても構成できる。
【0013】
第2部材に押圧部を設けたステアリング装置は、第1部材及び第2部材から構成されるカプセルがコラム側ブラケットの切り欠きに被せて装着され、従来同様、カプセルと車体側ブラケットとをボルト及びナットで締めて固定される。カプセルがコラム側ブラケットに装着される際、第2部材の押圧部がコラム側ブラケットの下面に押し付けられて塑性変形する。塑性変形した押圧部は、コラム側ブラケットの下面に一定の力で押し続けられる。こうして、ステアリング装置の離脱荷重は、コラム側ブラケットの下面に押しつけられる押圧部の摩擦力の大小に応じて決定される。
【0014】
第2部材に押圧部を設けたステアリング装置における第1部材の爪は、第1部材及び第2部材がコラム側ブラケットを挟んだ状態で、コラム側ブラケットの切り欠きの範囲で第2部材の爪受け部にかしめ、第1部材及び第2部材を一体化させる。一体化した第1部材及び第2部材は、コラム側ブラケットの切り欠きに装着させたカプセルを構成する。第1部材及び第2部材は、第1部材の爪を第2部材の爪受け部にかしめている限り、分離せず、コラム側ブラケットの切り欠きに対するカプセルの装着状態を安定に維持させる。
【0015】
第2部材に押圧部を設けたステアリング装置における第2部材の押圧部は、第1部材及び第2部材を一体化させると、コラムブラケットの下面に押し付けられて塑性変形し、コラム側ブラケットの下面に一定の力で押し続けられる部位である。第2部材の押圧部は、板金部材である第2部材の一部を切り起こして塑性変形させた板バネ部分が例示される。この場合、押圧部をコラム側ブラケットの下面に押し続ける一定の力は、塑性変形させる前の第2部材からの押圧部の突出量とコラム側ブラケットの厚みとの合計から筒部の高さを差し引いた長さに応じた塑性変形量から特定される。
【0016】
第2部材に押圧部を設けたステアリング装置における第2部材の爪受け部は、第2部材に対する第1部材の爪をかしめる位置を決定することから、第1部材及び第2部材の位置関係を特定する。筒部は、第1開口及び第2開口に連通する位置で第1部材及び第2部材の間に介在する部材又は部位である。筒部は、第1部材及び第2部材と別の部材でもよいし、第1部材又は第2部材のいずれかと一体の部位でもよい。
【0017】
第1部材又は第2部材のいずれかと一体の部位である筒部は、押圧部が第1部材又は第2部材のいずれに設けられたかを問わず、第1部材又は第2部材の一方から他方に向け突出させたバーリング加工により、第1部材又は第2部材の一方と一体に形成されるとよい。バーリング加工により筒部が一体の部位として形成された第1部材又は第2部材は、塑性変形された第1部材又は第2部材と筒部との境界である根元に形成される開口が第1開口又は第2開口となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のステアリング装置は、車体にステアリング装置を固定する際のナットの締め付けトルクと関係なく、カプセルの第1部材又は第2部材の押圧部がコラム側ブラケットに押し付けられて発生する一定の力に応じて離脱荷重が決定される。押圧部をコラム側ブラケットの上面又は下面に押し続ける一定の力は、押圧部が新たに塑性変形しない限り、永続的に一定であるから、離脱荷重も一定で安定する。また、押圧部をコラム側ブラケットの上面又は下面に押し続ける一定の力の大きさは、筒部の高さに基づいて決定される。このため、本発明のステアリング装置は、離脱荷重を筒部の高さを変更して、増減調整も容易である。
【0019】
筒部は、バーリング加工により第1部材又は第2部材の一方と一体に形成された部位とすれば、筒部、第1開口、第2開口の位置関係が一義的に決定される。これにより、第1部材の爪を第2部材の爪受け部にかしめると、筒部に対して第1開口及び第2開口を揃えて第1部材及び第2部材が組み付けたカプセルを構成できる。バーリング加工により形成される第1開口又は第2開口は、筒部に連続する部分が裾広がりで大きくなりがちなので、ナットを締め付ける場合、ボルトに座金を嵌めてナットを締め付けるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用したステアリング装置の一例を表す斜視図である。
図2】車体側ブラケットに対する本例のステアリング装置の取付関係を表す斜視図である。
図3】本例のステアリング装置の右側面図である。
図4】本例のカプセルを装着したコラム側ブラケットを表す斜視図である。
図5】本例のカプセルを構成する第1部材及び第2部材を表す斜視図である。
図6】本例のカプセルを装着したコラム側ブラケットにおける片方のカプセル付近を表す部分平面図である。
図7】本例のカプセルを装着したコラム側ブラケットにおける片方のカプセル付近を表す部分底面図である。
図8】本例のカプセルの装着手順1において、上下反転させたコラム側ブラケットにおける片方のカプセル付近を表す部分斜視図である。
図9図8中A-A線でコラム側ブラケットのみ切除した右側面図である。
図10】本例のカプセルの装着手順2において、上下反転させたコラム側ブラケットにおける片方のカプセル付近を表す部分斜視図である。
図11図10中B-B線でコラム側ブラケットのみ切除した右側面図である。
図12】本例のカプセルの装着手順3において、上下反転させたコラム側ブラケットにおける片方のカプセル付近を表す部分斜視図である。
図13図12中C-C線でコラム側ブラケットのみ切除した右側面図である。
図14】押圧部を第2部材に設けた別例1のカプセルを構成する第1部材及び第2部材を表す斜視図である。
図15】押圧部及び筒部を第2部材に設けた別例2のカプセルを構成する第1部材及び第2部材を表す斜視図である。
図16】筒部を別体とした別例3のカプセルを構成する第1部材、筒部及び第2部材を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明のステアリング装置1は、コラム側ブラケット12に装着するカプセル2に特徴があり、車体側ブラケット15に対する取り付け方は従来に同じである。具体的には、図1及び図2に見られるように、前縁及び後縁に上向きの補強リブを設けた平板状の車体側ブラケット15から降ろしたボルト13を、前縁及び後縁に下向きの補強リブを設けた平板状のコラム側ブラケット12に装着したカプセル2に貫通させ、ナット14をボルト13に締め付けてステアリング装置1を車体側ブラケット15に取り付ける。ボルト13及びナット14は、車体側ブラケット15に対するステアリング装置1の取付手段に過ぎない。
【0022】
本例のカプセル2は、図2及び図3に見られるように、コラム側ブラケット12の上面に押圧部33を押し当てた状態でコラム側ブラケット12及び車体側ブラケット15に挟まれる板金製の第1部材3と、コラム側ブラケットに下方からあてがわれ、全面をコラム側ブラケット12に接面させる板金製の第2部材4とから構成される。コラム側ブラケット12は、図4に見られるように、カプセル2が装着された状態で供給されてもよい。
【0023】
第1部材3は、図5及び図6に見られるように、角部を切り欠いた平面視略正方形の板金部材で、ボルト13が通る第1開口311をコラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲に位置させた状態で、コラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲で下方に向けた爪32と、コラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲の外でコラム側ブラケット12に向けて突出させた押圧部33とを第1開口311の周りに設けている。
【0024】
筒部31は、第1部材3の平面視中心から第2部材4が位置する下方に向けて突出させたバーリング加工により第1部材3と一体に形成されている。筒部31は、コラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲に収まる大きさで長径を前後方向、短径を左右方向に揃えた水平断面俵形の筒体で、第1部材3及び第2部材4を一体化させた状態で、第1開口311及び第2開口411に連通する位置で第1部材3及び第2部材4の間に介在させられる。第1開口311は筒部31の内部空間として構成される(図示では筒部31下端の開口を指示)。
【0025】
爪32は、第1開口311を挟む前後に2つ設けられる。本例の爪32は、押圧部33を設けた部分に対して折り曲げの逃げを挟んで前後に突出する広幅な折り曲げ部322から、折り曲げ部322に対する段差となる左右の肩部321に挟まれて前後に突出する細幅な部分で、折り曲げ部322を下方に折り曲げることにより、肩部321と共に下方を向いている。爪32は、第2部材4の爪受け部42にかしめることができればよく、長さ及び幅が自由である。
【0026】
爪32は、筒部31の下端より下方に突出しているが、肩部321は、筒部31の下端より若干上方に位置し、筒部31より先に第2部材4に接触しないように設定される。これにより、筒部31は、隙間を発生させることなく、常に第2部材4に密着できる。これは、筒部31が第2部材4に密着することで決定される押圧部33の変形量が一定となり、押圧部33の変形量により決定されるステアリング装置1の離脱荷重を安定させる効果をもたらす。肩部321は、筒部33が第2部材4に密着した後、爪32をかしめる際は第2部材4に当接し、爪32だけが塑性変形し、かしめられるようにする。
【0027】
押圧部33は、第1開口311を挟む左右に2つ設けられる。本例の押圧部33は、筒部31が設けられる本体部分との間に溝331を挟んで前後に延びる梁の部分である。押圧部33は、第1部材がプレス成形により全体が形作られる際、下方に突出するように湾曲させられる。溝331は、前後端に押圧部33の塑性変形の逃げが設けられ、一定の幅を有する。これにより、筒部31が設けられる本体部分と擦れあうことなく押圧部33を塑性変形させることができる。この結果、押圧部33の変形量に応じたコラム側ブラケットに押しつけ付けられる一定の力のばらつきがなくなり、ステアリング装置1の離脱荷重を安定させる効果が得られる。
【0028】
第2部材4は、図5及び図7に見られるように、角部を切り欠いた平面視略正方形の板金部材で、コラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲に収まる大きさで長径を前後方向、短径を左右方向に揃えた平面視俵形の第2開口411をコラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲に位置させた状態で、第1部材3の爪32に対応して、第2開口411の周りとなる前縁及び後縁それぞれの左右中央に、平面視略方形の切り欠きである爪受け部42を2つ設けている。
【0029】
本例のカプセル2をコラム側ブラケット12に装着する手順を説明する。本例のコラム側ブラケット12は、上下反転させた状態で第1部材3及び第2部材4を組み付け、一体化する。まず、装着手順1において、図8及び図9に見られるように、上下反転させた第1部材3を固定治具6に載せ、第1部材3の前後の爪32と筒部31とが切り欠き121の範囲に位置するように、同じく上下反転させたコラム側ブラケット12を第1部材3に上方からあてがう。第1部材3は、左右の押圧部33を切り欠き121を挟む部分に上方から当接させている。
【0030】
そして、装着手順1において、上下反転させた第2部材4を、切り欠き121を通した上方に突出する爪32が爪受け部42に差し込まれるように、コラム側ブラケット12の下面に接面させる。第1部材3及び第2部材4は、第1部材3の爪32を第2部材4の爪受け部42に差し込ませると、相対的な位置関係が特定される。これにより、第1開口311に挿入されたボルト13は、確実に筒部31、第2開口411を通る。また、装着手順1において、押圧部33を塑性変形させる前の第1部材3は、切り欠き121を通して覗く第2部材4に対して、筒部31が離れた状態にある(図8参照)。
【0031】
装着手順1の第1部材3及び第2部材4は、相対的な位置関係が特定されているが、コラム側ブラケット12に固定されておらず、切り欠き121に対する位置関係が特定されない。本例は、コラム側ブラケット12の切り欠き121を、左右方向に延びる上辺から後方に広がる平面視台形状とすることにより、第1部材3の前方の爪32の折り曲げ部322の表面を切り欠き121の前縁に揃えて、切り欠き121に対する第1部材3及び第2部材の位置関係を特定している。このため、爪32の折り曲げ部322は、切り欠き121の前縁より幅を狭くして差し込み、両者の位置関係の特定をしやすくしている。
【0032】
次に、装着手順2において、図10及び図11に見られるように、第2部材4に上方から加圧すると、第2部材4と接面しているコラム側ブラケット12を介して第1部材が加圧される。これにより、第1部材3の押圧部33が塑性変形して、第2部材4及びコラム側ブラケット12が、第2部材4が第1部材3の筒部31が密着するまで、一体に押し下げられる。押圧部33の変形量は、筒部31が第2部材4に密着するまでに制限されている。爪32の左右にある肩部321は、筒部31より若干低いので、筒部31が第2部材4に密着することを妨げない。
【0033】
押圧部33を塑性変形させる加圧力(図9中、下向きの太枠矢印参照)は、押圧部33において反力(図9中、上向き破線枠矢印参照)を発生させている。反力は、加圧力を加えている限り発生している。そこで、装着手順3において、図12及び図13に見られるように、加圧力を加えた状態のまま、爪32を爪受け部42にかしめると、押圧部33をコラム側ブラケット12の上面(図12及び図13では下面)に押し続ける一定の力が残存する。こうして押圧部33がコラム側ブラケット12の上面(図12及び図13では下面)に押し続けられる一定の力が摩擦力を発生させ、ステアリング装置1の離脱荷重を決定する。
【0034】
第1部材3及び第2部材4は、加圧力が加えられた状態で爪32を爪受け部42にかしめるため、押圧部33に一定の力が残存し、コラム側ブラケット12にそれぞれが押し続けられる。このため、爪受け部42にかしめた爪32にも負荷が加わり続けるので、かしめた状態が緩むことがない。このため、第1部材3及び第2部材4は、安定して組み付け状態が継続する。これは、押圧部33がコラム側ブラケット12の上面に押し続けられる状態が崩される虞のないことを意味する。こうして、押圧部33がコラム側ブラケット12の上面に押し続けられる状態が安定することから、ステアリング装置1の離脱荷重が一定に保たれる。
【0035】
本発明のカプセル2は、図14に見られる別例1のように、筒部31及び爪32を設けた第1部材3と、押圧部43及び爪受け部42を設けた第2部材4とから構成することもできる。別例1の第1部材3は、ボルト13が通る第1開口311の周りに、コラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲で下方に向けた爪32を設けた板金部材である。筒部31は、バーリング加工により第1部材3と一体に形成され、筒部31の内部空間として第1開口311が構成される。爪32は、広幅な折り曲げ部322から肩部321に挟まれて突出する。
【0036】
別例1の第2部材4は、第2開口411の前後に、第1部材3の爪32に対応する爪受け部42を2つ設けられ、第2開口411との間に溝部431を挟んだ左右に、前後に延びる梁である押圧部43が2つ設けられた板金部材である。溝431は、前後端に押圧部33の塑性変形の逃げが設けられ、一定の幅を有する。これにより、押圧部43は、第2開口411が設けられる本体部分と擦れあうことなく塑性変形でき、コラム側ブラケット12に押し付けられる押圧部43によるステアリング装置1の離脱荷重を一定にできる。
【0037】
本発明のカプセル2は、図15に見られる別例2のように、爪32を設けた第1部材3と、筒部41、押圧部43及び爪受け部42を設けた第2部材4とから構成することもできる。別例2の第1部材3は、ボルト13が通る第1開口311の前後に、コラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲で下方に向けた爪32を2つ設けた板金部材である。爪32は、広幅な折り曲げ部322から肩部321に挟まれて突出する。
【0038】
別例2の第2部材4は、筒体である筒部41がバーリング加工により一体に形成され、筒部41との間に溝部431を挟んだ左右に、前後に延びる梁である押圧部43が2つ設けられた板金部材である。第2開口411は筒部41の内部空間として構成される(図示では筒部41上端の開口を指示)。溝431は、前後端に押圧部43の塑性変形の逃げが設けられ、一定の幅を有する。これにより、押圧部43は、第2開口411が設けられる本体部分と擦れあうことなく塑性変形でき、コラム側ブラケット12に押し付けられる押圧部によるステアリング装置1の離脱荷重を一定にできる。
【0039】
本発明のカプセル2は、図16に見られる別例3のように、爪32及び押圧部33を設けた第1部材3と、爪受け部42を設けた第2部材4と、別体の筒部5とから構成することもできる。別例3の第1部材3は、ボルト13が通る第1開口311の前後に、下方に向けた爪32が2つ設けられ、第1開口311との間に溝部331を挟んだ左右に、前後に延びる梁である押圧部33が2つ設けられた板金部材である。爪32は、広幅な折り曲げ部322から肩部321に挟まれて突出する。溝331は、前後端に押圧部33の塑性変形の逃げが設けられ、一定の幅を有する。これにより、押圧部33は、第2開口311が設けられる本体部分と擦れあうことなく塑性変形でき、コラム側ブラケット12に押し付けられる押圧部33によるステアリング装置1の離脱荷重を一定にできる。
【0040】
別例3の第2部材4は、第2開口411を前後に挟んで、第1部材3の爪32に対応する爪受け部42を2つ設けた板金部材である。筒部5は、コラム側ブラケット12の切り欠き121に収まる大きさの金属製又は樹脂製の筒体で、第1部材3及び第2部材4を組み付けてコラム側ブラケット12にカプセル2として装着する際、第1部材3及び第2部材4の間に挟み込む。
【符号の説明】
【0041】
1 ステアリング装置
11 ステアリングコラム
12 コラム側ブラケット
121 切り欠き
13 ボルト
14 ナット
15 車体側ブラケット
2 カプセル
3 第1部材
31 筒部
311 第1開口
32 爪
321 肩部
322 折り曲げ部
33 押圧部
331 溝
4 第2部材
41 筒部
411 第2開口
42 爪受け部
43 押圧部
431 溝
5 筒部

【要約】
【課題】車体に対する取付手段であるボルト及びナットから独立して、ステアリング装置の離脱荷重を設定する。
【解決手段】カプセル2を構成する第1部材3は、ボルト13が通る第1開口311をコラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲に位置させた状態で、コラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲で下方に向けた爪32と、コラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲の外でコラム側ブラケット12に向けて突出させた押圧部33とを第1開口311の周りに設け、カプセル2を構成する第2部材4は、ボルト13が通る第2開口411をコラム側ブラケット12の切り欠き121の範囲に位置させた状態で、第1部材3の爪32に対応する爪受け部42を第2開口411の周りに設け、第1部材3及び第2部材4を一体化させた状態で、第1部材3からの押圧部33の突出量とコラム側ブラケット12の厚みとの合計より低い筒部31を第1部材3及び第2部材4の間に介在させる。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16