(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/00 20160101AFI20230731BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20230731BHJP
A61K 31/7032 20060101ALI20230731BHJP
A61K 31/718 20060101ALI20230731BHJP
A61K 36/8998 20060101ALI20230731BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230731BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
A23L33/00
A61K31/7016
A61K31/7032
A61K31/718
A61K36/8998
A61P3/04
A61K127:00
(21)【出願番号】P 2016243331
(22)【出願日】2016-12-15
【審査請求日】2019-12-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】山下 繭香
(72)【発明者】
【氏名】森川 琢海
(72)【発明者】
【氏名】北村 整一
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】平塚 政宏
【審判官】磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-126723(JP,A)
【文献】特許第5906511(JP,B1)
【文献】特開2004-65018(JP,A)
【文献】国際公開第2005/092124(WO,A1)
【文献】特開2006-306852(JP,A)
【文献】特開2008-86217(JP,A)
【文献】特許第5986285(JP,B1)
【文献】特開2013-63940(JP,A)
【文献】伊波匡彦 他、”沖縄産薬草を原料とした生理活性を有する健康補助食品の開発”、南方資源利用技術研究会誌、その他、2002.10.01発行、Vol.18、No.1、p.25-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦の緑葉
の乾燥粉末とでんぷん加工物とを含有する経口用組成物であって、分散度が30%以上70%以下であ
り、30メッシュのふるいを通過し、250メッシュのふるいを通過しない粉末状である組成物であって、でんぷん加工物が難消化性デキストリン、マルトース、及びマルチトールから選ばれる少なくとも一種であり、抗肥満用、
栄養改善用、
体重減少抑制用、低たんぱく質血症予防若しくは改善用、又は、低カルシウム血症予防若しくは改善用である組成物(ただし、大豆又はその抽出物及び黒糖を含有する健康食品を除き、食物繊維を含有する粉末状の食品素材を造粒するに際して、造粒工程前または造粒工程中に食品素材にキシロオリゴ糖を添加して造粒されてなる食物繊維含有食品を除き、グアバ葉抽出物及びマルチトールを含有するものを除く。)。
ただし、分散度は、常温、湿度10~70%、風速1m/sの条件において、水分量を30質量%未満とし、30メッシュのふるいを通過し、250メッシュのふるいを通過しない組成物の粉末について、
下方にスライドシャッターを有する内径10.44mmの円筒型容器を、水平面から85cmの高さに固定し、
この状態で、該容器内に収容した組成物の粉末2gを自然落下させることによって測定され、
この時に前記円筒型容器の直下における前記水平面上に、
開口部が下向きとなるように戴置した外径97.55mm、高さ18.10mmのシャーレの蓋上に回収される前記粉末の質量xから、
下記式にて表される。
分散度=x/2×100(%)。
【請求項2】
以下の(1)又は(2)である、請求項
1に記載の組成物。
(1)低たんぱく質食条件下で摂取した場合の体重減少抑制用、低たんぱく質血症予防若しくは改善用、又は、低カルシウム血症予防若しくは改善用に用いられる。
(2)抗肥満用と、
低栄養状態下での栄養改善用、低たんぱく質食条件下で摂取した場合の体重減少抑制用、低たんぱく質血症予防若しくは改善用、及び、低カルシウム血症予防若しくは改善用から選ばれる何れか1以上との両立に用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑葉加工物及びでんぷん加工物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑葉加工物を含む組成物は、青汁等の健康食品として知られている。近年の健康志向や食生活の乱れにより、野菜を摂取する重要性が注目されており、緑葉加工物を含む組成物は、手軽に一定量の野菜を摂取できる手段の一つとして知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、緑葉加工物を含有する組成物を含めて健康食品に対する需要者のニーズは近年多様化しており、更なる機能を求める要求、特に健康維持の観点における新たな機能を求める要求がますます強くなっている。
しかしながら、従来の緑葉加工物を含む組成物は、この要求に十分にこたえるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、緑葉加工物を含む組成物について、健康維持に関して更なる作用強化が得られる構成について鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、緑葉加工物に加えてでんぷん加工物を含有したときの噴流性(フラッシング)が特定範囲である組成物は栄養状態改善又は抗肥満に優れた効果を奏するのみならず、その両方を同時に満足することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は上記の知見に基づくものであり、緑葉加工物とでんぷん加工物とを含有する経口用組成物であって、分散度が30%以上70%以下である組成物を提供するものである。ただし、分散度は、下方にスライドシャッターを有する内径10.44mmの円筒型容器の底面が水平面から85cmの高さになるように固定し、この状態で、該容器内に収容した組成物2gを自然落下させることによって測定され、この時に前記円筒型容器の直下における前記水平面上に、開口部が下向きとなるように載置した外径97.55mm、高さ18.10mmのシャーレの蓋上に回収される前記粉末の質量xgから、下記式にて表される。
分散度=x/2×100(%)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、栄養状態改善又は抗肥満効果に優れるのみならず、その両方を同時に満足する組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、分散度を測定する方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の組成物について、その好ましい実施形態に基づいて説明する。本実施形態の組成物は経口用組成物である。
本実施形態の組成物は、緑葉加工物を含む。緑葉加工物における緑葉は、飲食品用途に適した緑色植物の葉であれば特に限定されず、例えば、大麦、小麦、えん麦、ライ麦といった麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきびのようなイネ科植物;ヨモギのようなキク科植物;アシタバ、パセリ、セロリ、ボタンボウフウのようなセリ科植物;クワなどのクワ科植物;ドクダミのようなドクダミ科植物;シソのようなシソ科植物;小松菜、ケール、キャベツ、ブロッコリーのようなアブラナ科植物;アスパラガスのようなユリ科植物;モロヘイヤのようなシナノキ科植物;甘藷のようなヒルガオ科植物などが挙げられ、好ましくは青汁などの食品素材として利用可能な二条大麦、六条大麦、裸大麦などの大麦、ヨモギ、アシタバ、ボタンボウフウ、クワ、ケール、甘藷である。緑葉としては、これらの1種又は2種以上の組み合わせを使用できる。緑葉は、植物体の葉の部分だけではなく、葉とともに茎その他の部分を含んでもよい。
【0010】
緑葉は、大麦である場合、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されることが好ましい。
【0011】
緑葉は、収穫後、直ちに処理されることが好ましい。処理までに時間を要する場合、緑葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵される。
【0012】
本実施形態の組成物では、緑葉として、該緑葉から得られる各種の加工物を用いることができる。そのような加工物としては、例えば、緑葉の乾燥粉末、緑葉の細片化物及びその乾燥粉末、緑葉の搾汁及びその乾燥粉末、緑葉のエキス及びその乾燥粉末等が挙げられる。
【0013】
例えば、緑葉を乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、緑葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組合せてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
【0014】
ブランチング処理とは、緑葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。ブランチング処理は、80~100℃、好ましくは90~100℃の熱水または水蒸気中で、緑葉を60~180秒間、好ましくは90~120秒間処理することが好ましい。また、ブランチング処理として熱水処理を行う場合、熱水中に炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を溶解させておくことで、緑葉の緑色をより鮮やかにすることができるため、好ましい。また、蒸煮処理としては、常圧または加圧下において、緑葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20~40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限しないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、緑葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ緑葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2~5回繰り返すことが好ましい。
【0015】
殺菌処理とは、通常、温度・圧力・電磁波・薬剤等を用いて物理的・化学的に微生物細胞を殺滅させる処理である。乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
【0016】
乾燥処理としては、緑葉の水分含量が10質量%以下、特に5質量%以下となるように乾燥する処理であることが好ましい。この乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、好ましくは40℃~140℃、より好ましくは80~130℃にて加温により緑葉が変色しない温度及び時間で行われうる。
【0017】
粉砕処理としては、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用いて当業者が通常使用する任意の方法により粉砕する処理が挙げられる。粉砕された緑葉は必要に応じて篩にかけられる。
【0018】
具体的な乾燥粉末化の方法としては、例えば、大麦の緑葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004-000210号公報を参照)。また例えば、緑葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002-065204号公報、特許第3428956号公報を参照)も挙げられる。また例えば、緑葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003-033151号公報、特許第3277181号公報を参照)も挙げられる。
【0019】
緑葉を細片化する方法としては、スライス、破砕、細断等、当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、大麦の緑葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、大麦の緑葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、緑葉は、細片の80質量%以上が好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.1mm以下、最も好ましくは0.05mmとなるように細片化され、流動性を有するようになる。
【0020】
緑葉を搾汁する方法としては、緑葉又はその細片化物を圧搾するか、又は、大麦の緑葉の細片化物を遠心又はろ過する方法を挙げることができる。代表的な例としては、ミキサー、ジューサー等の機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過等の手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。具体的には、特開平08-245408号公報、特開平09-047252号公報、特開平5-7471号公報、特開平4-341153号公報などに記載の方法が挙げられ、これらの公知の方法を当業者が適宜選択して実施できる。
【0021】
緑葉のエキスを得る方法としては、緑葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法を挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
【0022】
緑葉の加工物のうち、特に、緑葉の乾燥粉末(粉砕末ともいう)を用いることが、栄養状態改善及び抗肥満の効果をより一層得やすい点等から好ましい。
【0023】
緑葉加工物は、特に、粒径が30~250メッシュの何れかのふるいを通過する粉末とすることが、緑葉粉末とでんぷん加工物との均一な混合が容易であるため好ましい。同様の観点から、緑葉粉末は90質量%以上が200メッシュを通過することがより好ましい。
【0024】
上記の栄養改善及び抗肥満の効果を一層高める点から、組成物の固形分中、緑葉加工物の含有量は、乾燥質量で、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が特に好ましく、5質量%以上がとりわけ好ましく、10質量%以上が最も好ましい。また同様の観点から、上限値としては、99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が特に好ましく、75質量%以下がとりわけ好ましく、50質量%以下が最も好ましい。
【0025】
組成物は、でんぷん加工物を含有する。でんぷん加工物はでんぷんの酵素分解や酸分解により得られる分解物又はその還元体が好ましい。ここでいう酵素としてはアミラーゼやグルコアミラーゼなどが挙げられ、酸としては塩酸などの鉱酸が挙げられる。でんぷん加工物のでんぷんとしては、コーン、ワキシーコーン、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ、サゴ、小麦、米、もち米等の各種の植物由来のでんぷんが挙げられる。でんぷん加工物はαグルコースの重合体であり、その結合様式としては、代表的なものとしてα1-4グリコシド結合が挙げられるが、α1-6グリコシド結合、α1-3グリコシド結合、α1-2グリコシド結合を含んでいてもよい。好ましいでんぷん加工物は、αグルコースがグリコシド結合により2個以上結合してなる小糖(オリゴ糖)若しくは多糖又はそれらの還元体であり、例えば該小糖のほか、糖アルコール、デキストリン、難消化性デキストリン、焙焼デキストリン、その他のデンプン誘導体が挙げられる。でんぷん加工物は賦形剤として使用できるものが特に好ましく、例えば、小糖としてはαグルコースが2個以上20個以下連結した糖として、マルトース(麦芽糖)、マルトトリオース、マルトテトラオース等が挙げられ;糖アルコールとしてはこれら小糖の還元体としてマルチトール(還元麦芽糖)、マルトトリイトール等が挙げられ;デキストリンとしては、マルトデキストリン、アクロデキストリン、エリスロデキストリン、アミロデキストリンが挙げられ;焙焼デキストリンとしては、デンプンに塩酸等の鉱酸を添加又は非添加で110~200℃程度で加熱したものが挙げられ;難消化性デキストリンとしては、焙焼デキストリンをα-アミラーゼで加水分解処理し、さらに必要に応じて、グルコα-アミラーゼ処理、イオン交換樹脂クロマトグラフィー処理などの精製処理などを施して得られたもの、例えば、「パインファイバー」(登録商標)(松谷化学工業株式会社製)、「ファイバーソル」(松谷化学工業株式会社製)等が挙げられ;前記のでんぷん誘導体としては酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等が挙げられる。でんぷん加工物はこれらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。とりわけ、でんぷん加工物としては、難消化性デキストリン、マルトース、及びマルチトールから選ばれる少なくとも一種であることが、好ましい。またでんぷん加工物は粉末状であることが好ましい。
【0026】
本実施形態の組成物は、緑葉加工物及びでんぷん加工物を含み、更に、特定の分散度を有することを別の特徴としている。本発明者は、緑葉加工物を含有する組成物の構成と、その機能性との関係を鋭意検討した結果、でんぷん加工物を含有したときの噴流性(フラッシング性)が特定範囲であると、低栄養状態の場合の栄養改善効果や、高栄養状態における抗肥満効果優れたものとなるだけでなく、両方を同時に満足することを見出した。
本実施形態において、この噴流性(フラッシング性)は下記の方法による分散度として測定される。
図1に基づき分散度の測定方法を説明する。
【0027】
図1に示す通り円筒型容器21aをその下端が水平面24から85cmの高さになるように、スタンドとクレンメを用いて固定する。円筒型容器21aは、その中心軸方向Xが、水平面24と垂直になるように固定されている。円筒型容器21aは、内径が10.44mmであり、またその端面は円筒の中心軸方向Xと垂直な平面に形成されている。円筒型容器21aの外径は14.06mmであり、円筒型容器21aの厚さはほぼ一定である。円筒型容器21aは、その下方に板状のスライドシャッター21bを有している。このスライドシャッター21bは円筒型容器21aの下方の開口部を開閉可能なものであり、
図1に示す閉塞状態においては、シャッター21bの上面が円筒型容器21aの下端面と密着状態で当接して容器21a内の組成物の落下を防いでいる。
【0028】
図1に示すように、円筒型容器21aの下方にシャーレの蓋22を設置している。シャーレの蓋22は有底の円筒状をしており、高さ18.10mm、外径97.55mmである。シャーレの蓋22はその円形蓋面の中心を、円筒型容器21aの中心軸Xの延長線が通るように、円筒型容器21aの直下における水平面24上に、開口部が下方となるように(つまり円形の蓋面が上方となるように)設置される。
【0029】
図1に示すように、以上の状態において、円筒型容器21a内に2gの検体20を収容する。その後、スライドシャッター21bをスライドさせることにより、検体20を水平面24上に自然落下させる。シャーレの蓋上に落ちた検体の質量をxとし、以下の式で分散度を求める。
分散度=x/2×100(%)
【0030】
分散度は、上記の方法にて10回測定したときの平均値である。湿度(RH)が10%以上70%以下で、温度が1℃以上30℃以下の条件で測定することが好ましい。分散度は室内に置いて測定され、好ましくは風速が1m/s以下の条件下で測定する。
【0031】
組成物は粉末状の場合は、そのまま分散度の測定に供することができる。但し、粉末の水分量が30質量%以上である場合には、湿度(RH)が40%以上60%以下の状態で30℃~50℃で乾燥させて、水分量を30質量%未満としてから分散度を測定することが好ましい。
ここでいう粉末状としては例えば95質量%以上が30メッシュのふるいを通過するものであることが好ましい。
【0032】
一方、組成物が、30メッシュを通過しない固体状、例えば顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、飴状、タブレット状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等である場合にはこれを粉砕して30メッシュを通過する粉末状とした後に、上記水分量を満たした場合に分散度の試験に供することが好ましい。この場合の粉砕処理としては、乾式粉砕が挙げられ、具体的な乾式粉砕の方法としては、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミルなどを用いる粉砕を行うことが好ましい。
【0033】
一方、組成物が、固体状以外の形状、例えば、シロップ状、液状、ゲル状、ゼリー状、ペースト状、クリーム状である場合には、上述した乾燥処理を施して水分量を上記上限以下とし、必要に応じて上記と同様の乾式粉砕を施して30メッシュを通過する粉末状とした後、分散度の試験に供することが好ましい。この場合の乾燥処理としては、噴霧乾燥、凍結乾燥を用いて水分量1質量%以下まで乾燥させる処理が挙げられる。
【0034】
また組成物がハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状又はカプレット状である場合には、カプセルから取り出した内容物について、必要に応じて上記の乾燥処理及び/又は粉砕処理を行ったものを分散度の測定に供することが好ましい。
【0035】
本実施形態において分散度は30%以上70%以下であることにより栄養状態改善及び抗肥満の両方の作用が得られる。両作用を高める点から、分散度は、35%以上65%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。
【0036】
分散度が上記の範囲内である組成物は、でんぷん加工物の種類及び量を調整することにより得ることができる。でんぷん加工物の種類は上述した通りである。また、組成物中のでんぷん加工物の量としては、組成物の固形分中、乾燥質量として0.1質量%以上99.9質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上97質量%以下とすることがより好ましく、3質量%以上90質量%以下とすることが更に好ましく、5質量%以上75質量%以下とすることが更に一層好ましく、10質量%以上50質量%以下とすることが特に好ましい。
【0037】
本実施形態の組成物は、緑葉加工物及びでんぷん加工物以外に、その他の成分を含んでいてもよい。前記のその他の成分としては、例えば、ビタミン類、タンパク質、オリゴ糖、ミネラル類、乳製品、植物加工品、乳酸菌などの微生物、糖類、甘味料、クエン酸、酸味料、着色料、光沢剤のほか、タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウム等の製造用剤等を配合することができる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。本実施形態において、組成物に含まれる緑葉加工物及びでんぷん加工物以外の成分は、固形分中、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることが特に好ましい。
【0038】
本実施形態の組成物は、上述した各種の形態とすることができる。また、本実施形態の組成物としては、青汁、スムージーなどの飲食用組成物として用いることが好ましく、青汁用の飲食用組成物として用いることが特に好ましい。青汁用の飲食用組成物とは、緑葉を各種加工物として含む飲料であり、青汁用の飲食用組成物としては、この飲料、及びこの飲料を得るために液体に分散又は溶解させる固体が挙げられる。特に、組成物は、粉末状又は顆粒状であって、水と混合した混合物を経口摂取する形態であると、腐敗を防ぎ長期保存に適するとともに、この飲食用組成物が水と混合した時に色が鮮やかであることから好ましい。また組成物が固体状の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用する等経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト、ホットケーキミックス等に添加して使用してもよい。また、サプリメント、健康食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品、及び医薬品として用いても良いことは言うまでもない。
【0039】
本実施形態の組成物は後述する実施例に記載の通り、緑葉加工物及びでんぷん加工物を含み前述した範囲の分散度を満たすことにより、栄養状態改善効果と抗肥満効果の両方を奏することができる。具体的には、低たんぱくや低カルシウム等の低栄養状態下で、本実施形態の組成物を経口摂取することで、血液中のたんぱく質量及びカルシウム量を維持又は増加させることができ、低たんぱく状態及び低カルシウム状態などの低栄養状態が改善される。また低たんぱくや低カルシウム等の低栄養状態下で本実施形態の組成物を経口摂取することで体重低減を抑制できる。また、飽食状態や栄養過多状態において、本実施形態の組成物を経口摂取することで体重増加を抑制でき、肥満の予防又は低減を実現できる。従って、本実施形態の組成物は、これを摂取することで食生活の乱れによる栄養不良又は栄養過多に伴う体重の増減を抑制することができ、体調管理及び健康維持に効果を奏する。例えば、本実施形態の組成物はこれを経口摂取することで、老衰や偏食、極端なダイエットに伴う低たんぱく症や低カルシウム症などの低栄養状態の予防及び改善を図ることができるほか、健康を維持しながら容易に体重制限を図ることができる。特に高齢者は食欲低下や食事摂取量の減少、偏った食事等のために低タンパク質症や低カルシウム症になりやすく、そのような症状の抑制や改善に本実施形態の組成物を用いることができる。さらに、従来であればダイエットにより食生活を制限して低栄養状態で健康食品を摂取した場合、その栄養不足は改善されないものであった。しかし、本実施形態の組成物によれば栄養状態改善と肥満の防止又は改善とを両立させることができるので、健康維持を図りながらダイエットすることが容易となる。また、本発明の組成物は栄養状態改善と肥満の防止又は改善作用を両立しているため、ダイエット中でも十分量摂取することが可能であり、緑葉による野菜不足改善効果が期待できる。本実施形態の組成物は、抗肥満用、栄養改善用、低たんぱく質血症予防又は改善用、低カルシウム血症予防又は改善用及び野菜不足改善用から選ばれる1又は2以上の用途に使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1~5及び比較例1~6]
緑葉加工物として、下記の製造例1で製造した大麦緑葉の乾燥粉末を用いた。またでんぷん加工物として、難消化性デキストリン、マルトース又はマルチトールを用いた。これらのでんぷん加工物はいずれも粉末状であった。
比較例1のサンプルとして、緑葉の乾燥粉末を用いた。
また、緑葉乾燥粉末と難消化性デキストリンとを含む混合物を、比較例2及び3並びに実施例1~3のサンプルとし、緑葉乾燥粉末とマルチトールとを含む混合物を実施例4のサンプルとした。また緑葉乾燥粉末とマルトースとを含む混合物を実施例5のサンプルとした。更に比較例4のサンプルとして、難消化性デキストリンを用いた。比較例5のサンプルとしてマルチトールを用いた。比較例6のサンプルとしてマルトースを用いた。実施例1~5及び比較例1~6の組成物はいずれも粉末状であり、30メッシュのふるいを通過し、250メッシュのふるいを通過しないものであり、上記の方法で測定した水分量が30質量%未満であるものであった。比較例2及び3並びに実施例1~5の組成物の緑葉乾燥粉末とでんぷん加工物(難消化性デキストリン、マルチトール又はマルトース)の配合は、上記の方法で測定した分散度が下記表1の値となる比率とした。分散度は常温(1~30℃)、湿度(RH)10~70%、風速1m/sの条件で測定した。
【0042】
(製造例1)
原料として、出穂前に刈り取った大麦の茎を含む緑葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5~10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した緑葉を、90~100℃の熱湯で90秒間~120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた緑葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間~180分間、80℃~130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した緑葉を約1mmの大きさに粗粉砕処理した。得られた大麦の緑葉を、200メッシュ区分を90質量%以上が通過するように微粉砕処理し、緑葉の乾燥粉末試料を得た。緑葉の粉末試料は、200メッシュを通過するものが90質量%以上であった。
【0043】
実施例1~5及び比較例1~6の粉末状サンプルを、下記の動物試験1に供した。
[動物試験1:飽食状態での体重増減]
雄性KK-Ayマウス(21~25週齢)を2日以上の馴化期間を設けた後、試験0日目に体重を測定し、また12群に群分けした。12群は、コントロール群1群と実施例1~5及び比較例1~6の組成物それぞれの摂取群とした。なお、馴化期間では、MF粉末飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を自由摂取させた。試験0日目から3日間、コントロール群にはMF粉末飼料を摂取させ、他の9群それぞれには対応する組成物(被験物質)3質量%及びMF粉末飼料97質量%の混合物を摂取させた。試験3日目の午後に再度体重を測定し、△g1=試験3日目の体重―試験0日目の体重を求めた。結果を表1に示す。また体重変動g1に基づき、体重増加抑制効果が高いと評価したものを◎、体重増加抑制効果がやや高いと評価したものを〇、体重増加抑制効果が低いと評価したものを×にてそれぞれ表1に示す。
【0044】
【0045】
表1に示す通り、緑葉加工物及びでんぷん加工物を含有し、分散度が30%以上70%以下である各実施例の組成物は、緑葉加工物及びでんぷん加工物のいずれか一方を非含有であるか、両方含有していても分散度が本発明の範囲外である比較例1~6の組成物に比べて、栄養制限なしの飽食条件下において摂取した場合の体重増加抑制に優れていた。
【0046】
更に、実施例1~5及び比較例1~6の粉末状サンプルを、下記の動物試験2に供した。
[動物試験2:低栄養状態での体重増減、血中たんぱく質濃度、Ca濃度]
雄性C57BL/6J(DIO)マウス(11~14週齢)について上記と同様の馴化期間を2日以上設けた後、試験0日目に体重を測定し、また10群に群分けした。10群は、コントロール群1群と実施例1~5及び比較例1~6の組成物それぞれの摂取群とした。試験0日目から3日間、コントロール群には下記の表2の組成の試験飼料(低タンパク食)を摂取させ、他の9群それぞれには対応する組成物(被験物質)3.5質量%と前記試験飼料96.5質量%の混合物を摂取させた。試験3日目の午後に体重を測定し、△g2=試験3日目の体重―試験0日目の体重を求めた。また尾静脈より採血し血清を採取し、血清中のタンパク濃度及び血清中のカルシウム濃度を市販のキットを用いて測定した。これらの結果を表3に示す。
また表3には、体重変動g2に基づき、体重減少抑制効果を高いと評価したものを◎、やや高いと評価したものを〇、低いと評価したものを×にてそれぞれ示す。
また血清タンパク質濃度に基づき、血清タンパク質減少抑制効果が高いと評価したものを◎、やや高いと評価したものを〇、低いと評価したものを×にてそれぞれ示す。
また血清Ca濃度に基づき、血清Ca減少抑制効果が高いと評価したものを◎、やや高いと評価したものを〇、低いと評価したものを×にてそれぞれ示す。
なお、表3には、表1に示した各実施例及び各比較例の粉末状組成物の構成成分及び分散度を再度示している。
【0047】
【0048】
【0049】
表3に示すように、各実施例の組成物は、各比較例の組成物に比べて、低たんぱく質食条件下で摂取した場合の体重減少抑制効果に優れていた。また各実施例の組成物は、低たんぱく質食条件下における血清たんぱく質量及び血清カルシウム量が、各比較例の組成物よりも高かった。
【0050】
以上のことから、本発明の組成物が、栄養状態改善及び抗肥満の両方の作用に優れていることが判る。
【符号の説明】
【0051】
検体 20
円筒型容器 21a
スライドシャッター 21b
シャーレの蓋 22