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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】使い捨て吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
A61F13/56 213
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019019653
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020124423
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-11-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391047503
【氏名又は名称】白十字株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 輝昌
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-224098(JP,A)
【文献】特開2018-051080(JP,A)
【文献】特開2012-050575(JP,A)
【文献】特開2003-047629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0032933(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1404807(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面側に位置する表面シートと、外面側に位置する裏面シートと、これら表面シートと裏面シートの間に位置する吸収体とを有し、背側腰回り部、脚回り部、及び腹側腰回り部が所定方向に沿って順次一体的に形成された吸収性物品本体と、
前記背側腰回り部の両側部に配置されたテープファスナとを備え、
前記テープファスナは、着用者の腰回り側に位置する腰側テープファスナと、着用者の脚回り側に位置する脚側テープファスナとを有し、
前記腰側テープファスナ及び前記脚側テープファスナは、前記吸収性物品本体に位置する基端部と、前記吸収性物品本体から前記所定方向と交差する方向に延出する延出部とをそれぞれ備え、
前記延出部の内面側は、前記腹側腰回り部の外面側に係合可能にそれぞれ形成され、
前記脚側テープファスナの少なくとも前記延出部の外面側は、前記腰側テープファスナの前記延出部の内面側と係合可能に形成され、
前記腰側テープファスナの外面側は、前記脚側テープファスナの前記延出部の内面側と係合不能に形成されており、
前記脚側テープファスナと前記腰側テープファスナとを識別可能とする識別部を備え
前記識別部は、前記脚側テープファスナの延出部に形成される図柄部であり、
前記図柄部は、前記腰側テープファスナに向かう方向とは反対の方向に傾斜し、前記脚側テープファスナを前記腰側テープファスナの方向に向かって斜めに装着させるような目印表示である
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品
【請求項2】
腰側テープファスナは、図柄を備えず、
図柄部は、脚側テープファスナの延出部全体に形成されている
ことを特徴とする請求項記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
腰側テープファスナの外面側と図柄部とは、互いに触覚が異なる部材で形成されている
ことを特徴とする請求項または記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
腰側テープファスナ及び脚側テープファスナの少なくとも延出部は、それぞれ不織布により形成され、
図柄部は、前記脚側テープファスナの延出部に貼り合せられた図柄シートにより形成され、
前記図柄シートを含む前記脚側テープファスナの延出部の目付は、前記腰側テープファスナの延出部の目付より大きく、かつ、前記腰側テープファスナの延出部の目付の1.5倍より小さく設定されている
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の使い捨て吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大人用或いは失禁用の使い捨て吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の使い捨て吸収性物品としては、背側腰回り部の両側部に延出する第1テープファスナと第2テープファスナとを脚回り側と腰回り側とに備えるとともに、第1テープファスナを腹側腰回り部の外面のターゲットテープに止着するときに第1テープファスナを前端部の方向へ誘導する第1案内テープを第1テープファスナの肌非当接面に備えるものが知られている。そして、第1案内テープは、第1テープファスナの内端部と外端部との間に延び、第1テープファスナの内端部から外端部に向かって第2テープファスナに次第に近づくように、第1及び第2テープファスナの離間寸法を二分する横方向仮想線に対して傾斜している。これにより、第1案内テープに従い第1テープファスナを前端部の方向に向かって止着することで脚回りのフィット性を向上し、漏れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-68281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
腰回りの両側部にそれぞれ2つずつのテープファスナを備える構成では、ターゲットテープに対し、第1テープファスナを先に止着する場合と第2テープファスナを止着する場合とがある。しかしながら、上述の特許文献1に記載された発明では、第1及び第2テープファスナの装着手順が分からない。腰回り側を固定する第2テープファスナを先に止着した後、脚回り側を固定する第1テープファスナを止着すると、第1テープファスナで脚回りをフィットするように止着させた際に、先に固定していた腰回りのフィット性が悪くなってしまうことがある。その場合、再度第2テープファスナを止着し直すことが必要になり、装着の手間が増えて煩雑となる。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、装着手順が容易に判り、装着の手間を省き、装着時のフィット性を向上させることができる使い捨て吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された使い捨て吸収性物品は、内面側に位置する表面シートと、外面側に位置する裏面シートと、これら表面シートと裏面シートの間に位置する吸収体とを有し、背側腰回り部、脚回り部、及び腹側腰回り部が所定方向に沿って順次一体的に形成された吸収性物品本体と、前記背側腰回り部の両側部に配置されたテープファスナとを備え、前記テープファスナは、着用者の腰回り側に位置する腰側テープファスナと、着用者の脚回り側に位置する脚側テープファスナとを有し、前記腰側テープファスナ及び前記脚側テープファスナは、前記吸収性物品本体に位置する基端部と、前記吸収性物品本体から前記所定方向と交差する方向に延出する延出部とをそれぞれ備え、前記延出部の内面側は、前記腹側腰回り部の外面側に係合可能にそれぞれ形成され、前記脚側テープファスナの少なくとも前記延出部の外面側は、前記腰側テープファスナの前記延出部の内面側と係合可能に形成され、前記腰側テープファスナの外面側は、前記脚側テープファスナの前記延出部の内面側と係合不能に形成されており、前記脚側テープファスナと前記腰側テープファスナとを識別可能とする識別部を備えているものである。
【0007】
請求項2に記載された使い捨て吸収性物品は、請求項1記載の使い捨て吸収性物品において、識別部は、脚側テープファスナの延出部に形成され、この脚側テープファスナと腰側テープファスナとを識別可能な色彩を有する図柄部であるものである。
【0008】
請求項3に記載された使い捨て吸収性物品は、請求項2記載の使い捨て吸収性物品において、腰側テープファスナは、図柄を備えず、図柄部は、脚側テープファスナの延出部全体に形成されているものである。
【0009】
請求項4に記載された使い捨て吸収性物品は、請求項2または3記載の使い捨て吸収性物品において、腰側テープファスナの外面側と図柄部とは、互いに触覚が異なる部材で形成されているものである。
【0010】
請求項5に記載された使い捨て吸収性物品は、請求項2ないし4いずれか一記載の使い捨て吸収性物品において、腰側テープファスナ及び脚側テープファスナの少なくとも延出部は、それぞれ不織布により形成され、図柄部は、前記脚側テープファスナの延出部に貼り合せられた図柄シートにより形成され、前記図柄シートを含む前記脚側テープファスナの延出部の目付は、前記腰側テープファスナの延出部の目付より大きく、かつ、前記腰側テープファスナの延出部の目付の1.5倍より小さく設定されているものである
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、識別部によって脚側テープファスナと腰側テープファスナとの腹側腰回り部の外面側への装着手順が容易に判るとともに、脚側テープファスナから止着することでフィット性を向上させることができ、テープファスナを何度も係合し直して止着する手間が省ける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る使い捨て吸収性物品の展開図である。
図2】(a)は同上使い捨て吸収性物品の腰側テープファスナを折り畳んだ状態のI-I相当位置の断面図、(b)は同上腰側テープファスナを開いた状態のI-I相当位置の断面図である。
図3】(a)は同上使い捨て吸収性物品の脚側テープファスナを折り畳んだ状態のII-II相当位置の断面図、(b)は同上脚側テープファスナを開いた状態のII-II相当位置の断面図である。
図4】(a)は同上使い捨て吸収性物品の識別部の一例を示す説明図、(b)は同上識別部の他の例を示す説明図、(c)は同上識別部のさらに他の例を示す説明図、(d)は同上脚側テープファスナを腹側腰回り部に係合した状態での(c)の識別部を示す説明図、(e)は同上識別部のさらに他の例を示す説明図である。
図5】同上使い捨て吸収性物品の装着状態を示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る使い捨て吸収性物品の装着状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1において、1は使い捨て吸収性物品を示す。使い捨て吸収性物品1は、例えば大人用或いは失禁用等の使い捨ておむつ等である。
【0015】
使い捨て吸収性物品1は、展開状態にて所定方向である長手方向及びその交差方向である幅方向を有する吸収物品本体(おむつ本体)2を備えている。吸収物品本体2は、背側腰回り部3と、股下部となる脚回り部4と、腹側腰回り部5とが長手方向に沿って順次一体に形成されている。また、吸収物品本体2は、内面側、つまり着用者の肌側に位置する表面シート7と、外面側、つまり着用者の非肌側に位置する裏面シート8と、これら表面シート7と裏面シート8の間に位置する吸収体9とを有している。すなわち、吸収性物品本体2は、表面シート7と吸収体9と裏面シート8とが断面方向に順次積層されている。
【0016】
そして、吸収物品本体2は、図1に示す展開状態から、表面シート7が内側になるように背側腰回り部3と腹側腰回り部5とを対向させた状態で、背側腰回り部3の両側部に配置されたテープファスナ10を、腹側腰回り部5に配置されたターゲットファスナ11に係合させることによって、図5に示すように、上部に一つの腰回り開口部12が形成され、下部に一対の脚回り開口部13が形成されたパンツタイプ形状となり、着用者の腰回りにおける腹部、股下及び背部に亘って身体に沿って装着される。すなわち、使い捨て吸収性物品1を着用した状態では、背側腰回り部3が着用者の背部に対応して配置され、脚回り部4が着用者の股下に対応して配置され、腹側腰回り部5が着用者の腹部に対応して配置される。
【0017】
図1に示す表面シート7は、尿等の排泄液を透過可能な液透過性(透液性)のシートである。表面シート7は、本実施の形態では長方形状に形成されている。表面シート7は、例えばPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)等からなる不織布である。表面シート7は、幅方向両側部に、着用者の脚回りからの排泄液の漏出を防止するための疎水性のサイドシート15(立体ギャザ)を備えていてもよい。サイドシート15は、本実施の形態において、背側腰回り部3から脚回り部4及び腹側腰回り部5に亘り連なって配置されている。また、本実施の形態において、サイドシート15は、背側腰回り部3及び腹側腰回り部5において、幅方向に突出している。すなわち、本実施の形態において、サイドシート15を含む表面シート7は、背側腰回り部3において、最も幅広に形成され、背側腰回り部3から脚回り部4に向かい徐々に幅狭となるとともに、脚回り部4から腹側腰回り部5に向かい徐々に幅広となって形成されている。すなわち、サイドシート15を含む表面シート7は、長手方向の略中央部(脚回り部4)において幅方向の内側に括れた形状となっている。また、表面シート7と裏面シート8との間には、レッグギャザを形成する弾性体16が配置されていてもよい。弾性体16は、本実施の形態において、吸収体9の両側方にて背側腰回り部3から脚回り部4及び腹側腰回り部5に亘り直線状に連なっている。なお、サイドシート15は必須の構成ではなく、表面シート7自体が、長手方向の略中央部(脚回り部4)において幅方向の内側に括れた形状となっていてもよい。
【0018】
裏面シート8は、排泄液を透過させない疎水性或いは液不透過性(不透液性)のシートである。裏面シート8は、例えばPE等のフィルム状のものでもよいが、本実施の形態では、例えばフィルムの外面側に不織布を貼り合せたものである。裏面シート8は、表面シート7と同様の形状に形成されている。本実施の形態の裏面シート8は、例えば背側腰回り部3と腹側腰回り部5との両側に位置して幅方向に突出する台形状の部分が形成され、この部分は不織布のみで構成されている。したがって、本実施形態において、表面シート7と裏面シート8とは、サイドシート15の不織布と裏面シート8の不織布とでテープファスナ10を挟んでいる。また、裏面シート8は、表面シート7とともに吸収体9を挟んだ状態で、表面シート7に対して例えば接着剤等にて接合されている。
【0019】
吸収体9は、背側腰回り部3から脚回り部4及び腹側腰回り部5に亘り、幅方向の略中央部に配置されている。吸収体9は、長手方向の略中央部(脚回り部4)が幅方向の内側へ向かって円弧状に切り欠かれて括れた形状に形成されている。吸収体9は、例えばパルプ等の吸収性繊維、高吸水性ポリマ(SAP)、ティッシュ等の吸水性材料にて形成され、排泄液を十分に吸収可能である。そして、着用者の排泄液は、表面シート7を透過して吸収体9に吸収され、吸収された排泄液が着用者の衣服側である裏面側へ漏出しないように裏面シート8にて保持される。
【0020】
テープファスナ10は、背側腰回り部3の両側部に一対ずつ設定されている。テープファスナ10は、吸収性物品本体2に固定される基端部20と、吸収性物品本体2から幅方向に延出する先端部である延出部21とを一体的に備えている。テープファスナ10は、吸収性物品本体2の幅方向に長手状に形成されている。本実施の形態において、テープファスナ10は、長方形状に形成されている。そして、テープファスナ10は、着用者の腰回り側を固定する腰側テープファスナ10aと、着用者の脚回り側を固定する脚側テープファスナ10bとを有する。すなわち、テープファスナ10は、吸収性物品本体2の両側部において、それぞれ吸収性物品本体2の長手方向に離れて複数ずつ設定されている。
【0021】
テープファスナ10の基端部20は、本実施の形態において、吸収性物品本体2のサイドシート15と裏面シート8との間に位置している。テープファスナ10が吸収性物品本体2から取れないようにするため、基端部20の略全体が吸収性物品本体2に接合されることが好ましいが、接合は必ずしも基端部20のサイドシート15側及び裏面シート8側全体が接合されている必要はなく、サイドシート15側のみに接合、或いは裏面シート8側のみに接合されていてもよい。また、基端部20は、サイドシート15及び/または裏面シート8に対し、ストライプ状の間欠に接合されていてもよい。また、基端部20は、サイドシート15と裏面シート8との間ではなく、サイドシート15の表面側或いは裏面シート8の裏面側に接合されていてもよい。基端部20の接合方法としては、例えばホットメルト、熱融着、超音波接着等が用いられる。
【0022】
また、テープファスナ10の延出部21は、ターゲットファスナ11と係合可能である。本実施の形態において、テープファスナ10の延出部21には、内面側に面ファスナ23が配置されている。面ファスナ23は、本実施の形態ではフック部材であり、ループ部材であるターゲットファスナ11と係合可能となっている。また、面ファスナ23により、テープファスナ10の延出部21は、折り畳んだ状態で表面シート7またはサイドシート15に対して係合可能となっている(図2(a)及び図3(a))。
【0023】
テープファスナ10の延出部21には、好ましくは、面ファスナ23の側外方に摘み部25が形成されている。つまり、面ファスナ23は、テープファスナ10の延出部21全体に配置されていてもよいが、好ましくはテープファスナ10の延出部21の先端部よりも基端部20寄りの位置までの範囲に配置される。本実施の形態において、面ファスナ23は、テープファスナ10の延出部21の延出方向に対して交差する方向に沿って帯状に配置されている。摘み部25の先端部の角部分には、好ましくは切欠部26が形成されている。
【0024】
また、テープファスナ10の延出部21には、識別部である図柄部28が配置されている。図柄部28は、腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとを識別させることで、ターゲットファスナ11に対し、テープファスナ10を脚側テープファスナ10b、腰側テープファスナ10aの順に止着することを示すものである。
【0025】
図柄部28は、腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとの少なくともいずれか一方に形成されていればよい。本実施の形態において、図柄部28は、脚側テープファスナ10bの延出部21にのみ形成されており、腰側テープファスナ10aには図柄が形成されていない。ここで、図柄が形成されていないとは、あえて付加した文字、印等の色彩がなく例えば白色のものをいう。一般的な不織布等の部材を製造する際に必要となるエンボスは本発明における「図柄」には該当しないものとする。
【0026】
また、本実施の形態において、図柄部28は、脚側テープファスナ10bの延出部21の外面に形成されており、折り畳み状態で外側に位置して視認しやすくなっているが、延出部21の内面側から視認できてもよく、内面にも図柄部28を設けても構わない。
【0027】
図柄部28は、脚側テープファスナ10bと腰側テープファスナ10aとを識別可能な色彩を有し、脚側テープファスナ10bと腰側テープファスナ10aとを視覚により識別可能となっている。図柄部28の色彩は、腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとを識別可能であれば何色でも構わないが、例えば白以外の色とする。具体的に、図柄部28は、腰側テープファスナ10aと反対色とする、或いは腰側テープファスナ10aを白色とし、図柄部28を青色等とする。
【0028】
図柄部28は、色の違いだけではなく、脚側テープファスナ10bを腰側テープファスナ10aよりも先にターゲットファスナ11に止着させることを示唆する文字等の表示であっってもよい。例えば図柄部28としては、装着順が1番目であることを示す「1」を円で囲んだ丸数字(図4(a))や、装着順が先であることを示す「さき」等の文字(図4(b))を用いてもよい。
【0029】
また、図柄部28は、脚側テープファスナ10bを腰側テープファスナ10aの方向に向かって斜めに装着させるような目印表示であってもよい。例えば、図柄部28を腰側テープファスナ10aに向かう方向とは反対の方向に傾斜した文字列として、腰側テープファスナ10a方向に向かって装着した際に正しく読めるようにしてもよいし、図柄部28を水平状態では×に見え(図4(c))、装着状態で+に見えるマークとしてもよい(図4(d))。
【0030】
これら図4(a)ないし図4(d)に示す図柄部28の場合には、図柄のある部分、或いは図柄そのものが図柄部28となっているが、例えば図4(e)に示すように、延出部21全体を青色にして白抜きの文字や印を入れてもよい。この場合、青色部分と白抜きの文字や印を含めて図柄部28となっており、図柄部28が延出部21全体に形成されていることになる。ここで、延出部21全体とは、脚側テープファスナ10bの延出部21の形状が図柄部28によって判別できる状態をいう。そのため、脚側テープファスナ10bの延出部21の形状が図柄部28によって判別できるものであれば、文字表示、目印表示等で一部に色彩を有しない構成であっても、延出部21全体に形成された図柄部28に含むものとする。
【0031】
延出部21全体に図柄部28が形成されている場合、摘み部25の端部を識別しやすくするために、図柄部28は、基端部20に形成されていないことが好ましい。すなわち、少なくとも吸収性物品本体2の幅方向の基端部20の内側縁部側には配設されていないことが好ましい。
【0032】
図柄部28を形成する方法としては、例えば予め印刷された不織布等を使用してテープファスナ10(脚側テープファスナ10b)自体を形成する方法、白色のテープファスナ10(脚側テープファスナ10b)に直接印刷する方法、或いは白色のテープファスナ10(脚側テープファスナ10b)に色彩のあるシートを貼り付ける方法でもよい。本実施の形態において、図柄部28は、図柄が印刷された図柄シート30が貼り付けられて形成されている。図柄シート30は、例えばホットメルト接着剤、熱、超音波等により接合されることで、脚側テープファスナ10bの剛性が高くなっている。
【0033】
また、テープファスナ10(腰側テープファスナ10a及び脚側テープファスナ10b)は、織布、不織布、フィルム等の素材から適宜形成されている。例えば、腰側テープファスナ10a及び脚側テープファスナ10bを不織布により形成する場合には、使用時に引っ張ったときに破断してしまわないような強度とする目付、具体的には50~200g/m2程度の目付が必要である。このとき、腰側テープファスナ10aを形成する不織布と脚側テープファスナ10bを形成する不織布との目付は、大きな差が生じないようにすることで、製造時に不具合を生じさせないようにすることが好ましい。
【0034】
一方、使い捨て吸収性物品1の装着時には、脚側テープファスナ10bが腰側テープファスナ10aよりも先に引っ張られてターゲットファスナ11に止着されるため、脚側テープファスナ10bの目付が、腰側テープファスナ10aの目付よりも大きく、脚側テープファスナ10bの引っ張り強度が腰側テープファスナ10aの引っ張り強度よりも強い方が好ましい。この引っ張り強度は、50N/5cm幅以上、好ましくは100N/5cm幅以上とする。
【0035】
例えば腰側テープファスナ10aを形成する不織布と、脚側テープファスナ10bを形成する不織布とは、同じ目付でもよいが、脚側テープファスナ10bに図柄シート30を貼り付けて図柄部28を形成する場合には、図柄シート30の目付を考慮し、図柄シート30を含む脚側テープファスナ10bの延出部21が厚くなりすぎて製造時に不具合が生じないように、また、脚側テープファスナ10bを折り畳んだ際に折り畳み状態が維持できずに開いてしまわないようにすることが好ましい。
【0036】
また、図柄シート30の目付も、腰側テープファスナ10aを形成する不織布の目付以下とすることが好ましい。
【0037】
これらを考慮し、腰側テープファスナ10aの延出部21の不織布の目付をW1、図柄シート30を含む脚側テープファスナ10bの延出部21を形成する不織布の目付をW2とすると、W1<W2<1.5×W1の関係となることが好ましい。
【0038】
また、図柄シート30は、腰側テープファスナ10aの外面と脚側テープファスナ10bの外面(図柄部28)とを触覚により識別できるようにするために、腰側テープファスナ10aの外面と触感が異なる部材により形成されていてもよい。触感が異なる部材とは、原料が異なる部材としてもよいし、原料は同じで性質が異なる部材としてもよい。触感を異ならせるためには、様々な手段を用いることができるが、例えば腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとで所定厚み(例えば0.2mm)以上の凹凸の差をつける。例えば、腰側テープファスナ10aを平滑な部材とし、脚側テープファスナ10bに断面で0.2mm以上の高さの差を有する凹凸状の図柄シート30を配置する。
【0039】
ターゲットファスナ11は、テープファスナ10が係合されるファスナ部材である。本実施の形態の場合、テープファスナ10の延出部21に配置される面ファスナ23がフック部材であるため、ターゲットファスナ11はループ部材である。なお、ターゲットファスナ11は、必須の構成ではなく、腹側腰回り部5の外面を構成する裏面シート8自体、或いは裏面シート8の外面にテープファスナ10(腰側テープファスナ10a及び脚側テープファスナ10b)と係合される不織布等が貼り合わせられていてもよい。
【0040】
そして、使い捨て吸収性物品1を装着する際には、吸収性物品本体2の脚回り部4を着用者の股下に位置させるとともに背側腰回り部3を背中側に位置させかつ腹側腰回り部5を腹側に位置させる。その後、吸収性物品本体2の表面シート7を着用者の身体に接触させ、背側腰回り部3の両側部にあるテープファスナ10を折り畳み状態から解除し、図5に示すように、脚側テープファスナ10b、腰側テープファスナ10aの順に腹側腰回り部5の外面側のターゲットファスナ11に係合させて着用する。
【0041】
このように、テープファスナ10を腹側腰回り部5の外面側(ターゲットファスナ11)に係合させる際に、本実施の形態の使い捨て吸収性物品1は、脚側テープファスナ10bと腰側テープファスナ10aとを識別可能とする識別部である図柄部28を備えていることで、図柄部28によって脚側テープファスナ10bと腰側テープファスナ10aとの腹側腰回り部5の外面側(ターゲットファスナ11)への装着手順が容易に判るとともに、腹側腰回り部5の外面側(ターゲットファスナ11)に対し脚側テープファスナ10bから止着することでフィット性を向上させることができ、テープファスナ10を何度も係合し直して止着する手間が省ける。
【0042】
図柄部28は、脚側テープファスナ10bと腰側テープファスナ10aとを識別可能な色彩を有し、脚側テープファスナ10bの延出部21に形成されているので、使い捨て吸収性物品1の装着時に、図柄部28が脚側テープファスナ10bを腰側テープファスナ10aよりも先に腹側腰回り部5の外面側(ターゲットファスナ11)に止着するための目印になり、テープファスナ10の装着手順がより容易に判る。
【0043】
切欠部26は、延出部21を吸収性物品本体2側に折り畳んだ状態であっても図柄部28と吸収性物品本体2との色彩の差異によって延出部21の端部であることが認識し易くなり、テープファスナ10を摘み易くなる。
【0044】
脚側テープファスナ10bの延出部21全体に図柄部28を設けることで、延出部21が認識しやすくなる。また、腰側テープファスナ10aには図柄が形成されていないので、腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとをより識別しやすくなる。
【0045】
腰側テープファスナ10aの外面側と脚側テープファスナ10bの外面側の図柄部28とが、互いに触覚が異なる部材で形成されているため、脚側テープファスナ10bと腰側テープファスナ10aとを図柄部28の視覚に加えて触覚でも識別可能なので、暗い場所での装着時等でも腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとの識別が可能で、装着手順を知らせることができる。
【0046】
図柄シート30を脚側テープファスナ10bに貼り付けて図柄部28を形成し、図柄シート30を含む脚側テープファスナ10bの延出部21の目付を、腰側テープファスナ10aの延出部21の目付より大きく、かつ、腰側テープファスナ10aの延出部21の目付の1.5倍より小さく設定することで、脚側テープファスナ10bの目付が大きくなり過ぎないので、装着時の違和感を軽減できる。また、腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bの目付が大きく変わらないのでどちらのテープファスナを使用する際も使い勝手が悪くなることを防止できる。さらに、脚側テープファスナ10bは腰側テープファスナ10aより目付が大きく、かつ、図柄シート30が貼り合わされているので、脚側テープファスナ10bの引っ張り強度を腰側テープファスナ10aの引っ張り強度より容易に強くすることができる。
【0047】
具体的に、本発明の実施例として、腰側テープファスナ10aを形成する不織布の目付を80g/m2、脚側テープファスナ10bを形成する不織布の目付を70g/m2、図柄シート30とする図柄入りループファスナの目付を43g/m2とした。このとき、腰側テープファスナ10aの目付W1は80g/m2、図柄シート30を含む脚側テープファスナ10bの目付は113g/m2となる。すなわち、図柄シート30を含む脚側テープファスナ10bの目付W2は、腰側テープファスナ10aの目付に対して1.41倍となり、上記の関係(W1<W2<1.5×W1)を満たす。このとき、使い捨て吸収性物品1の製造時にテープファスナ10を折り返す工程においてテープファスナ10をきれいに折り畳むことができた。
【0048】
これに対し、比較例として、腰側テープファスナ及び脚側テープファスナのそれぞれを形成する不織布の目付を70g/m2、図柄シートとする図柄入りループファスナの目付けを43g/m2とした。このとき、腰側テープファスナの目付W1は70g/m2、図柄シートを脚側テープファスナの目付W2は113g/m2となり、脚側テープファスナの目付が腰側テープファスナの目付に対して1.61倍となって、上記の関係(W1<W2<1.5×W1)を満たさない。このとき、使い捨て吸収性物品の製造時にテープファスナを折り返す工程においてきれいに折り畳むことができず不具合が生じた。したがって、腰側テープファスナと脚側テープファスナとの目付の差が大きすぎ、上記の関係を満たさない場合には、製造に影響があると考えられる。
【0049】
次に、第2の実施の形態について図6を参照しながら詳細に説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
第2の実施の形態の使い捨て吸収性物品1は、脚側テープファスナ10bの少なくとも延出部21の外面側が、腰側テープファスナ10aの延出部21の内面側と係合可能に形成されている。すなわち、腰側テープファスナ10aの延出部21の内面側には、面ファスナ23が配置されているため、脚側テープファスナ10bの少なくとも延出部21の外面側には、面ファスナ23が係合可能な面ファスナ32が配置されている。例えば、面ファスナ23がフック部材であった場合、面ファスナ32はループ部材である。
【0051】
脚側テープファスナ10bの延出部21の外面に形成された図柄部28は、面ファスナ32を介して識別可能となっている。すなわち、脚側テープファスナ10bの外面に図柄部28が形成され、図柄部28の外面側に面ファスナ32が配置される。図柄部28は、面ファスナ32があっても視認可能に配置されている。図柄部28と面ファスナ32とは、一体でもよいし、互いに別体のシートを貼り合せてもよい。
【0052】
また、本実施の形態の使い捨て吸収性物品1は、腰側テープファスナ10aの外面側が、脚側テープファスナ10bの延出部21の内面側と係合不能に形成されているものである。すなわち、腰側テープファスナ10aの特に延出部21の外面側は、脚側テープファスナ10bの延出部21の内面側に配置された面ファスナ23と係合されないように形成されている。
【0053】
そして、使い捨て吸収性物品1を装着する際、図6に示すように、脚側テープファスナ10bから腹側腰回り部5の外面側(ターゲットファスナ11)に止着し、次に腰側テープファスナ10aを腹側腰回り部5の外面側(ターゲットファスナ11)に止着する正しい順番で装着した場合には、脚側テープファスナ10bと腰側テープファスナ10aとが仮に重なったとしても腰側テープファスナ10aは脚側テープファスナ10bの延出部21の外面に係合できる。
【0054】
しかしながら、腰側テープファスナ10aから腹側腰回り部5の外面側(ターゲットファスナ11)に止着し、次に脚側テープファスナ10bを腹側腰回り部5の外面側(ターゲットファスナ11)に止着する順番で装着した場合には、腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとが重なると、脚側テープファスナ10bは腰側テープファスナ10aの延出部21の外面に係合できない。したがって、後から止着しようとする脚側テープファスナ10bが先に止着した腰側テープファスナ10aに重ねて係合できないことによって、テープファスナ10の装着手順が正しくないことが判り、テープファスナ10の装着手順が明確になる。
【0055】
なお、上記各実施の形態において、腰側テープファスナ10aの外面と図柄部28とを互いに触覚が異なる部材で形成する場合には、性質が異なればよいので、原料は同じでも異なってもよい。例えば腰側テープファスナ10aをPPフィルムとし、脚側テープファスナ10bをPP不織布とする等としてもよい。また、腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとを同じ部材として、腰側テープファスナ10a及び/または脚側テープファスナ10bの延出部21に材質の異なる部材を貼り付けてもよい。貼り付ける部材としては、例えば腰側テープファスナ10aの延出部21の外面には凹凸の無い平坦な不織布やフィルム等を貼り合せ、脚側テープファスナ10bの延出部21の外面には凹凸のあるシートを貼り付ける等としてよい。これらの場合でも、脚側テープファスナ10bと腰側テープファスナ10aとを図柄部28の視覚に加えて触覚でも識別可能となる。
【0056】
また、識別部は、図柄部28に限られず、腰側テープファスナ10aのみに形成されていてもよいし、腰側テープファスナ10aと脚側テープファスナ10bとの双方に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 使い捨て吸収性物品
2 吸収性物品本体
3 背側腰回り部
4 脚回り部
5 腹側腰回り部
7 表面シート
8 裏面シート
9 吸収体
10 テープファスナ
10a 腰側テープファスナ
10b 脚側テープファスナ
20 基端部
21 延出部
28 識別部である図柄部
30 図柄シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6