(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】業務用手洗い装置
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20230731BHJP
A47K 10/48 20060101ALI20230731BHJP
E03C 1/046 20060101ALI20230731BHJP
E03C 1/05 20060101ALI20230731BHJP
A47K 1/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A47K7/00 A
A47K10/48 Z
E03C1/046
E03C1/05
A47K1/00 K
(21)【出願番号】P 2019170207
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】596164744
【氏名又は名称】▲高▼橋金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣川 載泰
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 昌洋
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-64676(JP,A)
【文献】特開2007-115029(JP,A)
【文献】特開2018-186841(JP,A)
【文献】特開2011-36648(JP,A)
【文献】特表2013-543757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0323397(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253336(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0364672(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234858(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00
A47K 10/48
E03C 1/00-1/10
A47K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 装置利用者を特定するための個人認証部と、
b) 洗浄対象が所定の位置に存在することを検出する対象センサと、
c) 前記対象センサによる検出が継続している間の所定の洗浄時間だけ、洗浄液を前記位置を含む領域に放出する洗浄部と、
d) 前記所定の洗浄時間が経過した後、前記対象センサによる検出が継続している間の所定の乾燥時間だけ、乾燥用気体を前記位置を含む領域に放出する乾燥部と、
e) 前記洗浄部における洗浄時間のデータと、前記乾燥部における乾燥時間のデータを、前記装置利用者に結びつけて所定のデータ保存部に保存するデータ記録部と
を備えることを特徴とする業務用手洗い装置。
【請求項2】
更に、前記
データ保存部に保存されたデータを外部に送信するデータ送信部を有する請求項1に記載の業務用手洗い装置。
【請求項3】
更に、装置利用者を撮影するカメラを備え、前記データ記録部は、前記個人認証部で装置利用者を特定した際に該カメラで撮影された画像のデータを前記洗浄時間
のデータ及び前記乾燥時間
のデータと共に前記データ保存部に保存する請求項1又は2に記載の業務用手洗い装置。
【請求項4】
前記カメラは、洗浄対象である装置利用者の手を含む部分を前記洗浄時間及び前記乾燥時間の間、動画で撮影し、該動画のデータを前記データ保存部に保存する請求項3に記載の業務用手洗い装置。
【請求項5】
更に、装置利用者の体温を測定するための温度検知機構を備え、装置利用者を特定した際に該温度検知機構により測定された装置利用者の体温を前記洗浄時間
のデータ及び前記乾燥時間
のデータと共に前記データ保存部に保存する請求項1~4のいずれかに記載の業務用手洗い装置。
【請求項6】
更に、本業務用手洗い装置の周辺環境や本業務用手洗い装置の種々のパラメータを測定する環境センサを備え、前記データ記録部は、該環境センサによる測定データも前記データ保存部に保存する請求項1~5のいずれかに記載の業務用手洗い装置。
【請求項7】
更に、外部の携帯情報端末と通信が可能な携帯通信部を備える請求項1~6のいずれかに記載の業務用手洗い装置。
【請求項8】
更に、表示装置と、前記個人認証部で認証した装置利用者に対応した情報を該表示装置に表示する表示制御装置を備える請求項1~7のいずれかに記載の業務用手洗い装置。
【請求項9】
独立の床上設置型である請求項1~8のいずれかに記載の業務用手洗い装置。
【請求項10】
既存手洗い装置への後付け型である請求項1~8のいずれかに記載の業務用手洗い装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品工場、学校、介護施設等で従業員が所定のルールに従って手を洗うための業務用の手洗い装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場等では、作業者が調理室や処理室に入る前に所定の時間、所定の方法で手を洗うことが求められる。このため、調理室の入口には業務用の手洗い装置が配置される。
このような業務用手洗い装置の一つとして、本件出願人は、洗浄対象(手)を出し入れする開口を有し該洗浄対象を収容できると共に使用した洗浄液を排出させる排出口を有するシンクと、該シンク内へ洗浄液を吐出する洗浄手段と、該シンク内へ送気する送気手段と、を備える洗浄装置であって、pH6~7の高濃度次亜塩素酸水へ希釈水を混合したpH4~6の希釈次亜塩素酸水を前記洗浄液として吐出することを特徴とする洗浄装置を提案した(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の洗浄装置では、赤外線センサー等によりシンク内に洗浄対象である手指等が挿入されたことが検知されるとポンプが作動し、洗浄ノズルからシンク内に挿入された手指へ希釈次亜塩素酸水が噴出されて洗浄モードが開始される。そして、予め設定した洗浄時間(例えば16~18秒)が経過するとポンプが停止し、洗浄モードが終了する。続いて、前記センサーによりシンク内から手指が抜かれていないことを確認した後、ブロワーを稼働させ、手指に付着している希釈次亜塩素酸水を水切・乾燥させる乾燥モードが開始される。乾燥モードにおいても、予め設定した乾燥時間(例えば30秒)が経過すると、ブロワーが停止する。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品工場等では多数の従業員が作業に従事するが、前記のような作業前の手洗いは、各従業員毎に管理し、記録に残しておくことが求められる。また、複数の工程を有する工場では、洗浄時間が短くてよい工程もあるし、より長い洗浄時間が求められる工程もある。しかし、従来の装置では、このような従業員毎、作業毎の管理を行うことができなかった。
【0006】
本発明は、作業員毎にきめ細かな管理を行い、記録を残しておくことのできる業務用手洗い装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために成された本発明に係る業務用手洗い装置は、
a) 装置利用者を特定するための個人認証部と、
b) 洗浄対象が所定の位置に存在することを検出する対象センサと、
c) 前記対象センサによる検出が継続している間の所定の洗浄時間だけ、洗浄液を前記位置を含む領域に放出する洗浄部と、
d) 前記所定の洗浄時間が経過した後、前記対象センサによる検出が継続している間の所定の乾燥時間だけ、乾燥用気体を前記位置を含む領域に放出する乾燥部と、
e) 前記洗浄部における洗浄時間のデータと、前記乾燥部における乾燥時間のデータを、前記装置利用者に結びつけて所定のデータ保存部に保存するデータ記録部と
を備えることを特徴とする。
【0008】
なお、本発明に係る業務用手洗い装置において、「所定の乾燥時間」はゼロである場合を含む。すなわち、洗浄後、乾燥しないという使い方も可能である。
【0009】
本発明に係る業務用手洗い装置は、更に、前記保存部に保存されたデータを外部に送信するデータ送信部を有することができる。
【0010】
本発明に係る業務用手洗い装置は、更に、装置利用者を撮影するカメラを備え、前記データ記録部は、前記個人認証部で装置利用者を特定した際に該カメラで撮影された画像のデータを前記洗浄時間データ及び前記乾燥時間データと共に前記データ保存部に保存するようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る業務用手洗い装置は、更に、装置利用者の体温を測定するための赤外線カメラ或いは温度センサー等の温度検知機構を備え、装置利用者を特定した際に該温度検知機構により測定された装置利用者の体温を前記洗浄時間データ及び前記乾燥時間データと共に前記データ保存部に保存するようにしてもよい。
【0012】
前記カメラは、装置利用者の顔を含む部分を撮影するようにしてもよいし、洗浄対象である手を含む部分を撮影するようにしてもよい。また、手を含む部分を撮影する場合には、前記洗浄時間及び前記乾燥時間の間、その動作を動画で撮影し、動画データを前記データ保存部に保存するようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る業務用手洗い装置は、更に、該装置の周辺環境や該装置の種々のパラメータを測定する環境センサを備え、前記データ記録部は、該環境センサによる測定データも前記データ保存部に保存するようにしてもよい。
【0014】
この環境センサは、外気温センサ、外気湿度センサ、外気空気清浄度(浮遊粒子数)センサ、外気オゾン濃度センサ、該装置の洗浄液温度センサ、該洗浄液が次亜塩素酸である場合にはその有効塩素濃度センサ等とすることができる。
【0015】
本発明に係る業務用手洗い装置は、更に、外部の携帯情報端末と通信が可能な携帯通信部を備えることができる。外部の携帯情報端末に、本業務用手洗い装置と通信可能なソフトウェア(アプリ)をインストールしておけば、該携帯情報端末を保有する装置利用者に様々なサービスを提供することができる。例えば、装置利用者が本業務用手洗い装置で手洗いを実行すると、個人認証部で特定された装置利用者に予め対応付けされた携帯情報端末に、手洗いを実行したことを送信する。その装置利用者の携帯情報端末アプリは、その手洗い実行時刻から予め設定された時間が経過した時点で、次の手洗い時間が到来したことを、アラームやバイブレーションで装置利用者に通知する、という使い方をすることができる。
【0016】
本発明に係る業務用手洗い装置は、更に、表示装置と、前記個人認証部で認証した装置利用者に対応した情報(文字情報、画像情報、動画情報等)を該表示装置に表示する表示制御装置を備えるようにしてもよい。
【0017】
本発明に係る業務用手洗い装置は、独立の床上設置型、及び、既存手洗い装置への後付け型のいずれのタイプであってもよい。前者(床上設置型)の場合、前記洗浄部及び前記乾燥部は筐体内に設けられており、該筐体の上部には洗浄対象を挿入することのできる開口が設けられている。後者(後付け型)の場合、前記洗浄部及び前記乾燥部は既存のシンクに設置されている蛇口の近くに設置され、固定される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る業務用手洗い装置では、作業員(装置利用者)毎にきめ細かな管理を行い、記録を残しておくことができる。このため、食品工場等の衛生管理がより厳格となり、食中毒等の発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例において用いる業務用手洗い装置の2種の例の外観斜視図であり、(a)は床上設置型、(b)は後付け型。
【
図2】床上設置型業務用手洗い装置の内部構造を示す概略構成図。
【
図3】実施例の業務用手洗い装置の第1の使用例を示すシステム図。
【
図4】実施例の業務用手洗い装置の第2の使用例を示すシステム図。
【
図5】実施例の業務用手洗い装置の第3の使用例を示すシステム図。
【
図6】実施例の業務用手洗い装置の第4の使用例を示すシステム図。
【
図7】実施例の業務用手洗い装置の第5の使用例を示すシステム図。
【
図8】実施例の業務用手洗い装置の第6の使用例を示すシステム図。
【
図9】実施例の業務用手洗い装置の第7の使用例を示すシステム図。
【
図10】実施例の業務用手洗い装置の第8の使用例を示すシステム図。
【
図11】実施例の業務用手洗い装置の第9の使用例を示すシステム図。
【
図12】実施例の業務用手洗い装置の第10の使用例を示すシステム図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の実施例を説明する。本発明は業務用手洗い装置に関するものであるが、業務用手洗い装置には大別して2つの種類がある。一つは独立の床上設置型であり、もう一つは既存の手洗い装置への後付け型である。床上設置型の業務用手洗い装置10は
図1(a)に示すように、床上に独立して設置されるものであり、本体11の上部に洗浄対象物である装置利用者の手を入れるための開口12が設けられている。後付け型の業務用手洗い装置20は
図1(b)に示すように、既存の手洗い装置21の蛇口のところに次亜塩素酸水の放出器22及び乾燥風の放出器(図示せず)が取り付けられたものである。
【0021】
以下、床上設置型の業務用手洗い装置(
図1(a))を用いた様々なシステムを紹介するが、これらのいずれについても、業務用手洗い装置は後付け型のもの(
図1(b))に置き換えることができる。
【0022】
図2に、床上設置型の業務用手洗い装置10の内部構造を示す。本体11の上部には前記開口12が設けられており、その開口12の側壁には洗浄対象物(装置利用者の手)が開口12内に挿入されたことを検出する対象センサ16が設けられている。また、開口12の側壁には、洗浄対象物に向けて希釈次亜塩素酸水を放出する洗浄液ノズル12aと、同じく洗浄対象物に向けて乾燥空気を放出する乾燥風ノズル12bが設けられている。洗浄液ノズル12aは洗浄装置13に接続されており、乾燥風ノズル12bは乾燥装置14に接続されている。洗浄装置13では、本業務用手洗い装置10内のタンクに保持されている高濃度次亜塩素酸水(HClO)に上水道からの水(H
2O)を混合して、洗浄液ノズル12aから放出する。乾燥装置14では、外部の空気を、フィルタ(F)を介してファンで吸引し、内部のオゾン生成器(O
3)で生成したオゾンを添加して乾燥風ノズル12bから放出する。
【0023】
本体11内にはその他に、本業務用手洗い装置10全体の動作を制御するための、コンピュータやメモリ等を備えた制御装置17が設けられており、そのメモリ18の一部が本発明のデータ保存部として動作する。また、制御装置17のコンピュータが、本制御装置用に準備されたソフトウェアにより、洗浄部、乾燥部及びデータ記録部として動作する。
【0024】
本体11の上部には、装置利用者の個人認証を行うための個人認証装置15が設けられている。本業務用手洗い装置10にはその他に様々な外部装置を付加することができるが、それらについては後述する。
【0025】
本実施例の業務用手洗い装置10では、装置利用者が本装置を使って手を洗おうとするとき、まず個人認証装置15により装置利用者の個人認証を行う。個人認証装置15の例としては、IDカード読み取り装置、リストバンド読み取り装置、NFC(Near Field Communication、近距離無線通信)、カメラを使用した顔認証装置、虹彩認証装置、網膜認証装置、手のひら認証装置、指紋認証装置、装置利用者の被服や帽子等に記載されているバーコードを読み取るバーコード読み取り装置、同QRコード読み取り装置、同数字・文字認識装置、装置利用者が所持するカードを用いる接触型電界通信装置、同RFID読み取り装置等を挙げることができる。個人認証装置15により取得された装置利用者の特定情報(ID値)は、本業務用手洗い装置10の制御装置17を介してメモリ18のデータ保存部に記録される。
【0026】
個人認証が完了すると、制御装置17はその旨を通知装置(図示せず)で装置利用者に知らせる。通知装置としては、音を発するブザー、光を発するLED、文字や画像等を表示する表示装置を用いることができる。これにより、装置利用者は本業務用手洗い装置10を利用することができるようになる。装置利用者が本体11の開口12に手を挿入すると、対象センサ16がそれを検出し、制御装置17に信号を送る。制御装置17は高濃度次亜塩素酸水タンクのポンプ(P)と水タンクのポンプ(P)を起動し、高濃度次亜塩素酸水と水を所定の比率で混合して希釈次亜塩素酸水洗浄液(以下、これを洗浄液と呼ぶ。)を生成し、所定の洗浄時間だけ洗浄液ノズル12aから放出する。この所定洗浄時間は装置利用者(認証された個人)毎に定めることもできるし、装置利用者にかかわらず一定とすることもできる。装置利用者は予め定められたマニュアルに従って、その所定洗浄時間の間、手指を動かしてきれいに洗浄・殺菌しなければならない。
【0027】
この所定洗浄時間の間に対象センサ16が洗浄対象を検出しなくなると、制御装置17は洗浄水の放出を停止する。この時点で前記通知装置により、装置利用者に通知をするようにしてもよい。
【0028】
対象センサ16が洗浄対象を検出しており、かつ、所定洗浄時間が経過した時点で、制御装置17は洗浄水の放出を停止し、次に、外気導入ファン及びオゾン生成器を起動して(オゾン生成器を起動させるか起動させないかは任意に設定することができる。)、オゾン添加空気(以下、これを乾燥風と呼ぶ。)を所定の乾燥時間だけ乾燥風ノズル12bから放出する。ここでも、所定乾燥時間は装置利用者(認証された個人)毎に定めることもできるし、装置利用者にかかわらず一定とすることもできる。制御装置17は、対象センサ16が洗浄対象を検出していない場合は、乾燥風の放出は行わない。装置利用者はここでも予め定められたマニュアルに従って、その所定乾燥時間の間、手指を動かして完全に乾燥し、オゾン殺菌しなければならない。
【0029】
この所定乾燥時間の間に対象センサ16が洗浄対象を検出しなくなると、制御装置17は乾燥風の放出を停止する。この時点で前記同様、前記通知装置により装置利用者に通知をするようにしてもよい。
【0030】
以上のようにして、所定の洗浄時間だけ洗浄がなされたこと、及び所定の乾燥時間だけ乾燥がなされたことの事実のデータは、制御装置17により、前記の個人認証データに結びつけて、データ保存部18に保存される。また、前記のように洗浄が途中で終わった場合には、洗浄が途中で終わったという事実のデータと共に、(前記所定洗浄時間よりも短い)実際の洗浄時間のデータがデータ保存部18に保存される。同様に、乾燥が途中で終わった場合も、乾燥が途中で終わったという事実のデータと共に、(前記所定乾燥時間よりも短い)実際の乾燥時間のデータがデータ保存部18に保存される。
【0031】
こうして、本実施例の業務用手洗い装置10では、作業員毎にきめ細かな管理を行い、記録を残しておくことができる。
【0032】
こうしてデータ保存部18に保存された装置利用者毎の記録(以下、手洗い記録と呼ぶ。)は、工場等の衛生管理、作業管理、作業計画等、様々なことに利用することができる。それらの例を以下にいくつか紹介する。
【0033】
図3は、本業務用手洗い装置10に、保存データを外部に送信するデータ送信部19(
図2)を設け、データ保存部18に保存されている手洗い記録を該データ送信部19からWiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等により管理者の携帯情報端末(スマートフォン、タブレット等)に送信するというシステムの構成図である。管理者は、こうして送信されてきた手洗い記録を携帯情報端末31で見て、いずれかの装置利用者(作業者)の手洗い行動に問題がある場合には、その作業者に注意を促す等の管理作業を行う。また、その携帯情報端末31からクラウド(所定のインターネットサーバー)32を経由して、或いはWiFi等で直接、工場等に設置された管理コンピュータ33に手洗い記録を送り、より長期的な管理に役立てるようにしてもよい。さらに又、本業務用手洗い装置10を直接、管理コンピュータ33に接続し、データ保存部18の手洗い記録を継続して管理コンピュータ33に送るようにしてもよい。
【0034】
管理コンピュータ33では、送られてきた手洗い記録を所定の記録領域に記録するとともに、そのデータの解析及びそれに基く管理を行う。例えば、作業者別の日々の記録を週間、月間等でまとめ、手洗い回数の少ない作業者や手洗い時間帯(本業務用手洗い装置10の利用時間帯)に偏りのある作業者、日による回数のバラツキが多い作業者等を抽出し、それらの作業者に注意を促すという管理を行うことができる。また、大規模な工場や事業所では、作業グループ別にデータを抽出し、グループ毎の管理状況やグループ別の改善進捗状況をチェックすることができる。さらには、作業者別データを抽出した場合に、急に手洗い回数が増加した作業者については、トイレの回数増加による体調不良の可能性もあるため、その作業者の健康に注意を向けることができる。
【0035】
管理コンピュータ33に集積された手洗い記録は、さらに、別に実施する衛生検査・菌検査結果と対比したデータ分析に用いることもできる。例えば、個人別の手洗いと衛生状態の傾向の把握、そのデータを活用し現場に適した衛生管理手法の構築支援、ビッグデータの分析による衛生状態の変化の把握と今後の傾向予測等が考えられる。
【0036】
このような手洗い記録を集積しておけば、万が一、食中毒等の事故が発生した場合、そのときの作業者別や作業グループ別の手洗い記録を解析することにより、その原因究明がより迅速に行えるようになる。また、取り扱い食材記録や入退室記録(トイレ)等と突き合わせることにより、高リスク作業者をリストアップすることも可能となる。
【0037】
図4は、WiFiではなく電話回線(4G又は5G)35を用いて、クラウド32を経由して、或いは直接、管理コンピュータ33に、手洗い記録を送るシステムの概略構成図である。このシステムでは管理者を置く必要がないため、小規模な工場、事業所等への適用に適している。
【0038】
図5は、本業務用手洗い装置10に、装置利用者を撮影するカメラ36を取り付けたシステムの概略構成図である。このカメラ36により撮影された画像のデータは前記無線又は有線で管理コンピュータ33に送られる。管理コンピュータ33はこの画像を解析することにより、装置利用者(作業者)が所定のマスクや帽子を着用しているかどうかを確認する。その他、服装の状況(汚れ等)をチェックするようにしてもよい。
【0039】
装置利用者(作業者)が本業務用手洗い装置10を利用する際に、個人認証を行った後、このカメラ36の前に両手をかざして表(手のひら)と裏(手の甲)をカメラ36に撮影させる、ということをマニュアル化しておいてもよい。この場合、この画像データも管理コンピュータ33に送られ、該装置利用者の個人認証データに結びつけて記録される。管理者は、この画像に基き、作業者に次のような問題が無いかをチェックすることができる。
・爪は伸びていないか
・手荒れしていないか
・ケガをしていないか
・その他、手に異常がないか
(手袋着用現場の場合)
・手袋を着用しているか
・手袋が破れていないか
【0040】
このカメラ36を、装置利用者全体の方に向けるのではなく、本業務用手洗い装置10の開口12の方に向けて設置してもよい。これにより、手洗い動作を撮影することができ、装置利用者(作業者)が所定のマニュアルどおりに手や指をきちんと洗っているかどうかをチェックすることができる。
【0041】
また、カメラ36を赤外線カメラ又は温度センサー等の温度検知機構とすることにより、装置利用者(作業者)の体温を検出することができ、それにより当該作業者の健康管理、作業管理に役立てることができる。
【0042】
本業務用手洗い装置10に、周辺の環境の様々なパラメータを測定するセンサを取り付け、それらセンサからのデータを手洗い記録と一緒に保存しておくようにしてもよい。例えば
図6に示すように、周辺の温度を測定する環境温度センサ37を本業務用手洗い装置10の近辺に取り付け、制御装置17はその環境温度センサ37からの温度データを手洗い記録と共にデータ保存部18に記録しておく。これらのデータが管理コンピュータ33に送られ、集積されると、何らかのトラブルや異常が発生した時に、過去に遡って原因調査を行うことができる。また、継続的なデータ収集により、将来の異常発生予測が可能になる。なお、外部パラメータとしては、外気温の他に、湿度、空気清浄度(浮遊粒子数)、水道水温等を挙げることができる。
【0043】
また、本業務用手洗い装置10内に、有効塩素濃度やオゾン濃度のセンサを設け、それらのデータを併せて記録しておくようにしてもよい。
【0044】
本業務用手洗い装置10では、前記WiFiや電話回線等を介して作業者が所持する携帯情報端末(スマートフォン、タブレット等)に様々な通知を行い、或いは、情報を提供してもよい。
図7はそのようなシステムの一例を示す概略構成図である。このシステムでは、作業者が所持する携帯情報端末38に予め専用ソフトウェア(専用アプリ)をインストールしておいてもらう。この携帯情報端末38はもちろん、当該作業者の本業務用手洗い装置10に関する個人認証データ(ID)と結びつけられている。この作業者(装置利用者)が本業務用手洗い装置10で手洗いを実行すると、その事実を示すデータが本業務用手洗い装置10から当該作業者の携帯情報端末38に送信される。該携帯情報端末38にインストールされた専用アプリでは、このデータを受信した後、予め設定された時間が経過したら、該携帯情報端末38の画面表示やブザー、バイブレーション等のアラーム機能により当該作業者に次の手洗い時刻が到来したことを通知する。当該作業者が本業務用手洗い装置10で手洗いを実行するまで、このアラームは所定時間毎に繰り返される。
【0045】
このようなシステムを、前記管理コンピュータ33と結びつけてもよい。
図8はそのようなシステムの概略構成図である。このシステムでは、管理コンピュータ33に予め作業者のデータベースを構築しておく。このデータベースには、
・作業者別手洗いメニュー(この作業者は何時に、何分洗浄すべきであるとのデータ)
・最近の手洗い状況(要注意作業者には注意喚起をするためのデータ)
・個人の手荒れ状況やアレルギー情報(手荒れし易い作業者については回数を減らす等の適切な措置をするためのデータ)
等を入れておくことができる。
【0046】
このシステムにおいて、作業者(装置利用者)が本業務用手洗い装置10を利用した(手洗いを実行した)後、制御装置17はその作業者個人認証データ(ID)を管理コンピュータ33に送信する。管理コンピュータ33の管理ソフトウェアは、前記データベースからその作業者の手洗いメニュー(時間等)のデータを抽出し、その作業者の携帯情報端末38に書き込む。該携帯情報端末38の専用アプリは、その作業者の業務内容等に適した手洗い間隔、手洗い時間、回数等を当該作業者に指示し、手洗いを実行させる。
【0047】
このような作業者への手洗いの通知・指示は、上記のように携帯情報端末38を用いる他、工場や作業所等に設置したスピーカー等を用いて行うこともできる。
図9はその一例であり、工場や作業所等に設置したスピーカー39や表示装置40に管理コンピュータ33を接続し、前記のような作業者への通知を音声又は画面表示で行う。作業者に外国人が含まれている場合は、この音声や画面表示は当該作業者の理解可能な言語で行うようにする。表示装置40の場合、当該作業者が本業務用手洗い装置10を用いて手洗いを行うまで表示が継続され、手洗いが実行されると表示が消去されるようにするとよい。
【0048】
本業務用手洗い装置10自体に表示装置を設けてもよい。その例を
図10に示す。この業務用手洗い装置10では、本体の上部正面に表示装置41が設けられ、そこに、個人認証装置15により認証された個人(作業者)毎に適した表示がなされる。例えば、洗浄前には「前回の手洗いは短かったので注意してください」等の表示を、洗浄及び乾燥の一連の手洗い作業が終了した時点では「次は○○時に手洗いをしてください」等の表示をすることができる。
【0049】
本業務用手洗い装置10に設ける表示装置は、さらに大きなものとして、よりきめ細かい情報或いは画像を作業者に伝えるようにしてもよい。その例を
図11に示す。この業務用手洗い装置10では、本体の上部に大型の表示装置42が固定され、ここに、現在手洗いを行っている作業者(すなわち、個人認証された装置利用者)に合わせて、その手洗い時間内での時間経過に伴う細かい手洗い方法を指導する画像や動画を表示する。例えば、手洗い開始○○秒後に手のひらを、開始〇〇秒後に指の間を、開始〇〇秒後に手首を等の指導表示を行う。これにより、初心者である作業者に対してもわかりやすい指導を行うことができる。
【0050】
このような個別作業者への表示は、作業者が所持する携帯情報端末38を用いて行うようにしてもよい。
【0051】
複数の工場や作業所を運営する大規模な企業では、上記のようなシステムをさらに複合化することができる。例えば
図12に示すように、複数の工場51、52、53のそれぞれに設置されている業務用手洗い装置10及び上記のようなその関連システム(管理コンピュータ33や携帯情報端末38等)で保存されている手洗い記録のデータを、クラウド32或いは当該企業の専用回線を介して当該企業の本社55の中央管理サーバー56に集約することができる。こうすることにより、例えば各工場51、52、53の欠勤者数、早退者数、その他、社員の健康状態に関する情報を収集し、対応する工場(例えば、工場51)に対して注意喚起と手洗い回数の増加を指示することができる。また、企業本社55が、或る地域でノロ注意報が発令されたとの情報を得た場合、中央管理サーバー56から、その地域に含まれる、或いはその地域に近い、工場51の管理コンピュータ33に注意喚起を行う。当該管理コンピュータ33は予め定められたマニュアルにしたが、全作業者の手洗い回数を増やしたり、手洗い時間を長くする等の措置を講ずることができる。
【符号の説明】
【0052】
10、20…業務用手洗い装置
11…本体
12…開口
12a…洗浄液ノズル
12b…乾燥風ノズル
13…洗浄装置
14…乾燥装置
15…個人認証装置
16…対象センサ
17…制御装置
18…データ保存部
19…データ送信部
31…携帯情報端末
32…クラウド
33…管理コンピュータ
36…カメラ
37…環境温度センサ
38…携帯情報端末
39…スピーカー
40、41、42…表示装置
51、52、53…工場
55…企業本社
56…中央管理サーバー