IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 安立計器株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-接触式温度計 図1
  • 特許-接触式温度計 図2
  • 特許-接触式温度計 図3
  • 特許-接触式温度計 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】接触式温度計
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/143 20210101AFI20230731BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20230731BHJP
【FI】
G01K1/143
G01K7/02 Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019183509
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021060235
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年1月22日発行のマグネット内蔵温度センサ MGシリーズのチラシにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000117814
【氏名又は名称】安立計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 生至郎
(72)【発明者】
【氏名】原 悠季
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-077735(JP,U)
【文献】特開2014-178221(JP,A)
【文献】特開2001-311637(JP,A)
【文献】実開昭59-011702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の温度を検出する検出部とその検出部の周囲に配置された保護部とが被検出体に直に接触するように本体の先端に配置された接触式温度計において、
前記保護部は、被検出体に接触する接触面と前記本体に接合される接合面とを有する凸体を成し、金属よりも熱伝導率の低い耐熱部材とこの耐熱部材を覆う金属からなる被覆部材とを備え、前記被覆部材が前記保護部の全ての面を覆うとともに、前記保護部の辺のうちの前記接合面を囲う辺を除いた辺に隙間が形成されることを特徴とする接触式温度計。
【請求項2】
前記被覆部材は少なくとも前記接触面を構成する第一被覆板と、この第一被覆板とは別体の第二被覆板とから構成される請求項に記載の接触式温度計。
【請求項3】
被検出体の温度を検出する検出部とその検出部の周囲に配置された保護部とが被検出体に直に接触するように本体の先端に配置された接触式温度計において、
前記保護部は、被検出体に接触する接触面と前記本体に接合される接合面とを有する凸体を成し、金属よりも熱伝導率の低い耐熱部材とこの耐熱部材を覆う金属からなる被覆部材とを備え、前記被覆部材は少なくとも前記接触面を構成する第一被覆板と、この第一被覆板とは別体の第二被覆板とから構成されることを特徴とする接触式温度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式温度計に関し、より詳細には、被検出体に直に接触してその被検出体の温度を検出する接触式温度計に関する。
【背景技術】
【0002】
接触式温度計には、被検出体に直に接触して検出部や被検出体を保護する保護部(ガード部材ともいう)を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-309825号公報
【文献】特開2014-178221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、検出部の周囲に配置された保護部が被検出体に直に接触したときに被検出体の熱が保護部を介して伝熱することで、検出部が接触する部位の温度の低下が生じて測定精度が低下するという問題がある。
【0005】
これに関して、保護部に金属よりも熱伝導率の低い部材を用いて、測定精度の低下を回避する対策が考えられる。金属よりも熱伝導率の低い部材としては、ポリイミド樹脂やフッ素樹脂などの樹脂、ガラスやジルコニアなどのセラミックス(非金属無機材料)が例示される。
【0006】
しかし、金属よりも熱伝導率の低い部材のうちの樹脂は高い温度(例えば、260℃以上の高い温度)の場合に、変質したり、融解したりするおそれがあり、保護部には適さない。一方、セラミックスはそのような高い温度環境下でも変質や融解が無いが、急激な温度変化による熱衝撃破壊により破損するおそれがある。このように、測定精度の低下を回避しようと金属よりも熱伝導率の低い部材で保護部を構成すると、保護部の交換頻度が高くなるという別の問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、測定精度の低下を回避しつつ、保護部の交換頻度を低減する接触式温度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の接触式温度計は、被検出体の温度を検出する検出部とその検出部の周囲に配置された保護部とが被検出体に直に接触するように本体の先端に配置された接触式温度計において、前記保護部は、被検出体に接触する接触面と前記本体に接合される接合面とを有する凸体を成し、金属よりも熱伝導率の低い耐熱部材とこの耐熱部材を覆う金属からなる被覆部材とを備え、前記被覆部材が前記保護部の全ての面を覆うとともに、前記保護部の辺のうちの前記接合面を囲う辺を除いた辺に隙間が形成されることを特徴とする。
また、本発明の接触式温度計は、被検出体の温度を検出する検出部とその検出部の周囲に配置された保護部とが被検出体に直に接触するように本体の先端に配置された接触式温度計において、前記保護部は、被検出体に接触する接触面と前記本体に接合される接合面とを有する凸体を成し、金属よりも熱伝導率の低い耐熱部材とこの耐熱部材を覆う金属からなる被覆部材とを備え、前記被覆部材は少なくとも前記接触面を構成する第一被覆板と、この第一被覆板とは別体の第二被覆板とから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保護部を熱伝導率の低い耐熱部材で構成することで、保護部が被検出体に直に接触したときに検出部が接触する部位の温度の低下を抑制して測定精度の低下を回避することができる。さらに、本発明によれば、耐熱部材に生じる熱衝撃に対する対策として耐熱部材を金属からなる被覆部材で覆うことで、保護部の交換頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】接触式温度計の実施形態を例示する斜視図である。
図2図1の耐熱部材を例示する斜視図である。
図3図1の被覆部材の第一被覆板を例示する斜視図である。
図4図1の被覆部材の第二被覆板を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、接触式温度計の実施形態について、図面を参照して説明する。図中ではX方向、Y方向を水平面において互いに直交する方向とし、Z方向を鉛直方向とする。また、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0012】
以下、本開示において高温とは、アメリカ保険業者安全試験所が策定する製品安全規格において規定されるエンジニアプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックなどの樹脂が変質あるいは変形する温度が例示される。より具体的に、高温とは260℃~300℃以上の温度とする。
【0013】
図1に例示するように、実施形態の接触式温度計10は、図示しない被検出体の温度を測定する装置である。接触式温度計10は、先端に配置された頭部11と頭部11の末端に配置された把持部12と把持部12の末端から導出されて図示しない温度測定装置に接続される信号線13とを備え、頭部11が本体14とこの本体14の先端に配置された検出部15と検出部15の周囲に配置された保護部16とからなる。
【0014】
本体14は、ステンレス、フッ素樹脂、ガラスクロス積層板、フェルノール樹脂、又はポリイミド系樹脂など、用途に合わせて様々な材質で形成される。フェルノール樹脂や、ポリイミド系樹脂などの熱伝導率が低い材質を用いると、本体14を介した把持部12への伝熱を抑制するには有利になる。なお、本体14は検出部15および保護部16により直に被検出体に接触することがない。
【0015】
検出部15はZ方向に見て本体14の中央に配置されており、被検出体に直に接触して、接触した被検出体の温度を検出する。検出部15は接触板17、連結部材18、および、温度検出素子19を有して構成される。
【0016】
接触板17は金属などの熱伝導体から形成され、Y方向に延在し、被検出体に押圧されて被検出体から伝熱される板であり、被検出体に面接触する接触面とその反対の側の当接面とを有する。接触板17はY方向の両端部のそれぞれに接合された連結部材18が保護部16に向かって突出し、連結部材18が保護部16に形成された連結孔21に挿入された状態で保護部16に対して連結される。接触板17は被検出体の側に押圧されたときに、被検出体との密着性を高めるためZ方向先端の側に向かって凸に湾曲するように形成される。この実施形態において接触板17は自身の弾性力により被検出体との密着性を高める構成にしたが、被検出体に押圧されたときの接触板17と被検出体との密着性を高めるために、接触板17を先端の側に向かって弾性的に付勢する付勢部材を設けてもよい。接触板17と保護部16との連結構造は上記の構造に限定されない。
【0017】
温度検出素子19は接触板17の当接面に感温部(測温接点ともいう)が接合される。温度検出素子19としては、+極にクロメル、-極にアルメルを用いたタイプK、+極にクロメル、-極にコンスタンタンを用いたタイプE、+極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量30%)、-極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量6%)を用いたタイプBなどの様々な種類がある熱電対、あるいは、白金、ニッケル、銅、ニッケルおよび鉄の合金、および、タングステンなどの様々な種類がある測温抵抗体が例示される。
【0018】
保護部16はZ方向に見て本体14のX方向の両端部のそれぞれに配置されており、検出部15の接触板17のX方向の両側方に配置される。保護部16の数、配置はこれに限定されずに、四つの保護部16がZ方向に見て本体14の四隅に配置される構成にしてもよい。また、Z方向に見て環状を成す一つの保護部16が検出部15を囲うように配置される構成にしてもよい。
【0019】
保護部16はZ方向の先端に被検出体と直に接触する接触面16aと、末端に本体14に接合される接合面16bとを有する凸体を成す。本実施形態の保護部16は直方体を成す。本開示において、凸体とは凸である立体であり、全ての面の境界が直線である直方体や錐台を含む凸多面体に加えて、曲面を有する半円柱や半球を含むものとする。接触面16aは接触板17の接触面よりも末端側に配置され、接触面が被検出体に押し付けられて末端側に引っ込んだ状態で被検出体に直に接触する。保護部16の形状は接触面16aおよび接合面16bを有する凸体であればよく、特に限定されるものではない。また、接触面16aはXY平面と平行な面が望ましいが、円筒面で構成することも可能である。
【0020】
保護部16は耐熱部材20と被覆部材30とを備え、被覆部材30が耐熱部材20を覆って構成される。本開示において被覆部材30が耐熱部材20を覆う構成は、被覆部材30が耐熱部材20の外面の全ての面を覆う構成に限定されず、耐熱部材20の外面のうちの外部に対して露出した面のみを覆う構成を含むものとする。また、面を覆った状態は面の全域を覆った状態に限定されずに、面の大部分の領域が覆われて、残りの一部の領域が覆われていない状態も含むものとする。
【0021】
図2に例示するように、耐熱部材20は金属よりも熱伝導率の低いセラミックスからなる。耐熱部材20は、ステンレス鋼よりも熱伝導率の低いセラミックスからなることが望ましく、熱伝導率が15W/m・kより低いセラミックスからなることがより望ましい。本実施形態の耐熱部材20は直方体を成し、Z方向の先端側の先端面20a、末端側の末端面20b、X方向の二つの側面20c、Y方向の二つの側面20dから構成される。耐熱部材20は連結孔21、締結孔22、および、収納部23を有する。セラミックスとしては、本開示における高温の環境下において断熱性が高いものが好ましく、ガラスやファインセラミックスが例示される。耐熱部材20としては、複数のガラス繊維織物や不織布をZ方向に積層して形成された直方体や、ジルコニア、コーディエライトなどのファインセラミックスで形成された直方体が例示される。
【0022】
連結孔21は耐熱部材20の側面20cのうちの検出部15に対向する面に形成され、連結部材18が挿入される孔である。このように、接触板17と連結部材18を介して直に接触する連結孔21を耐熱部材20のみに形成して、連結部材18が耐熱部材20以外の部材に対して非接触の構造とすることが望ましい。この構造により、接触板17の熱が連結部材18を介して伝熱することで生じる測定精度の低下の回避には有利になる。
【0023】
締結孔22は耐熱部材20をZ方向に貫通する貫通孔であり、その内部にナットが埋設される。耐熱部材20は、被覆部材30により被覆された後に、この締結孔22と本体14に形成された貫通孔とを連通させて、本体14の末端側からボルトをねじ込み、埋設されたナットに螺合させて本体14に締結される。なお、締結孔22の内周面にネジ山を形成して、本体14の末端側からネジをねじ込む構成にしてもよい。
【0024】
収納部23はZ方向視で末端面20bの中央に配置されて、末端面20bを末端側から先端側に向かって窪ませて形成され、その内部に磁石24が収納される。収納部23に磁石24を収納することで、被検出体が磁性体の場合に磁力により接触板17を密着させることが可能となる。なお、被検出体が磁性体でない場合は磁石24を収納しなくてもよく、収納部23を形成しなくてもよい。
【0025】
耐熱部材20は角が面取りされた状態が好ましい。また、耐熱部材20は先端面20aと被覆部材30との接触面積が狭いことが好ましく、例えば、先端面20aの周囲の角の面取りの幅を他の角の面取りの幅よりも広くするとよい。また、先端面20aに窪みを形成して接触面積を狭くしてもよい。
【0026】
図3図4に例示するように、被覆部材30は金属からなる部材であり、第一被覆板31と第二被覆板32とからなる。被覆部材30を構成する金属としては、本開示における高温の環境下において耐熱性があるものが好ましく、ステンレス鋼やニッケル基の合金が例示される。被覆部材30を構成する金属板の板厚は検出部15の接触板17の板厚の1倍~6倍の厚さが望ましい。被覆部材30を構成する金属板の板厚は検出部15の接触板17の板厚の1倍より薄いと破損し易く保護部16として機能しなくなり、6倍より厚いと被検出体からの伝熱量が多くなり測定精度が低下する。
【0027】
第一被覆板31は一枚の金属板からなり、その金属板が折り曲げられた状態で、耐熱部材20の先端面20aとその先端面20aのY方向両側に隣接する二つの側面20dとの三面を覆う部材である。第一被覆板31は先端面被覆片33、側面被覆片34、第一固定片35a、および、第二固定片35bを有する。
【0028】
先端面被覆片33は先端面20aを被覆する部位であり、先端面20aに対向する側の反対側の面が保護部16の接触面16aとなる。側面被覆片34は先端面被覆片33のY方向両端のそれぞれに隣接し、先端面被覆片33に対して折り曲げられた状態で側面20dを被覆する部位である。また、側面被覆片34は先端面被覆片33と側面被覆片34との境界には貫通孔である隙間36が形成される。
【0029】
第一固定片35aは側面被覆片34のY方向外端に隣接し、側面被覆片34に対して折り曲げられた状態で末端面20bに対して引っ掛かる部位である。第一固定片35aと側面被覆片34との境界には貫通孔である隙間36が形成される。第二固定片35bは先端面被覆片33のX方向両端のそれぞれに隣接し、先端面被覆片33に対して折り曲げられた状態で側面20cに引っ掛かる部位である。第一固定片35aおよび第二固定片35bのそれぞれは末端面20bや側面20cを覆う必要はなく、それぞれの面に対して引っ掛かれればよい。第一固定片35aおよび第二固定片35bのそれぞれは後述する第二被覆板32との接触面積が狭いことが好ましく、接触面積を狭くすることで第一被覆板31から第二被覆板32への伝熱量を低減するには有利になる。
【0030】
隙間36は第一被覆板31の折り曲げ箇所である先端面被覆片33および側面被覆片34の境界と、側面被覆片34および第一固定片35aの境界とのそれぞれに形成される。隙間36は第一被覆板31の曲げ加工時において塑性変形の逃げ穴として機能するとともに、測定時において熱膨張による歪みの逃げ穴として機能する。隙間36としては、第一被覆板31を構成する金属板の板厚方向(図中ではZ方向)に貫通し、幅方向(図中ではY方向)に延在する長孔状の貫通孔が例示される。隙間36は曲げ加工時と測定時との両方で逃げ穴として機能すればその形状が特に限定されるものではない。
【0031】
第二被覆板32は一枚の金属板からなり、その金属板が折り曲げられた状態で、耐熱部材20の末端面20bとその末端面20bのX方向両側に隣接する二つの側面20cとの三面を覆う部材である。第二被覆板32は末端面被覆片37、側面被覆片38a、38b、および、締結用貫通孔39を有する。
【0032】
末端面被覆片37は末端面20bを被覆する部位であり、末端面20bに対向する側の反対側の面が保護部16の接合面16bとなる。側面被覆片38aは末端面被覆片37のX方向の一端に隣接し、末端面被覆片37に対して折り曲げられた状態で検出部15に対向する側の反対側の側面20cを被覆する部位である。
【0033】
側面被覆片38bは末端面被覆片37のX方向の他端に隣接し、末端面被覆片37に対して折り曲げられた状態で検出部15に対向する側面20cを被覆する部位である。側面被覆片38bはX方向視で側面20cに形成された連結孔21を塞がない形状を成す。実施形態では、側面被覆片38aの形状がX方向視で長方形であるのに対して、側面被覆片38bの形状がX方向視で台形である。側面被覆片38bの形状は台形に限定されずに、側面被覆片38aの形状と同様の長方形に連結孔21を塞がないように連結孔21の孔径よりも大きい孔径の貫通孔を形成した形状でもよい。
【0034】
締結用貫通孔39は末端面被覆片37を貫通する貫通孔であり、耐熱部材20を本体14に締結するボルトやネジの軸が挿通可能に形成される。
【0035】
図1に例示するように、第一被覆板31は各片が折り曲げられた状態で耐熱部材20の先端面20aと両方の側面20dとの三面を覆うとともに、第一固定片35aが末端面20bに引っ掛かり、第二固定片35bが両方の側面20cに引っ掛かる。これにより、第一被覆板31は耐熱部材20に対して固定される。
【0036】
第二被覆板32は各片が折り曲げられた状態で第一被覆板31が固定された状態の耐熱部材20の末端面20bと両方の側面20cとの三面を覆い、耐熱部材20とともに共締めされて固定される。第二被覆板32は耐熱部材20とともに第一固定片35aと第二固定片35bとを覆うことで、それらの固定片の引っ掛かりが解除されることを防止する。
【0037】
耐熱部材20を被覆部材30で覆った状態において、第一被覆板31の先端面被覆片33および側面被覆片34のそれぞれと第二被覆板32の側面被覆片38a、38bとの間は離間して隙間40が形成される。この隙間40は耐熱部材20の側面20cと第二被覆板32の側面被覆片38a、38bとの間に第一被覆板31の第二固定片35bが介在することで生じる隙間である。つまり、被覆部材30は保護部16の全ての面を覆うとともに、保護部16の辺(角ともいう)のうちの接合面16bを囲う辺を除いた辺に隙間36、40が形成される。
【0038】
以上のように、本実施形態の接触式温度計10は、被検出体や検出部15を保護する保護部16が金属よりも熱伝導率の低い耐熱部材20とこの耐熱部材20を覆う金属からなる被覆部材30とを備える。それ故、被覆部材30が高温の被検出体に直に接触することで、耐熱部材20の内部の急激な温度分布を緩和して、耐熱部材20の熱衝撃破壊を抑制することができる。
【0039】
また、仮に耐熱部材20に熱衝撃による亀裂、あるいは、崩壊や剥離などの損耗が生じても、耐熱部材20を覆う被覆部材30により耐熱部材20の破損片の飛び散りや外形の変形を防ぐことができる。
【0040】
つまり、保護部16を熱伝導率の低い耐熱部材20で構成することで、保護部16が被検出体に直に接触したときに検出部15が接触する部位の温度の低下を抑制して測定精度の低下を回避することができる。これに加えて、上述したとおり、耐熱部材20に生じる熱衝撃に対する対策として耐熱部材20を被覆部材30で覆うことで、保護部16の交換頻度を低減することができる。
【0041】
測定精度被覆部材30は保護部16の全ての面を覆うとともに、保護部16の辺のうちの接合面16bを囲う辺を除いた辺に隙間36、40が形成されることが望ましい。この構成によれば、被覆部材30を薄くして被検出体からの伝熱量を少なくして測定精度の低下を回避しつつ、辺に形成された隙間36、40により薄くすることで生じる熱膨張による歪みが逃げ、保護部16の保護部16の外形の変形を抑制することができる。なお、測定精度が実施形態に比して低下するが、被覆部材30の板厚を熱膨張による変形を抑制可能な厚さにして全ての辺に隙間が無い箱状に構成してもよい。
【0042】
また、被覆部材30は耐熱部材20の先端面20aとその先端面20aのY方向両側に隣接する二つの側面20dとの三面を覆う第一被覆板31と、耐熱部材20の末端面20bとその末端面20bのX方向両側に隣接する二つの側面20cとの三面を覆う第二被覆板32とから構成されることが望ましい。このように、被覆部材30を少なくとも接触面16aを構成する第一被覆板31とこの第一被覆板31とは別体の第二被覆板32で構成することで、被検出体からの伝熱量を低減するには有利になる。なお、測定精度が実施形態に比して低下するが、被覆部材30を一枚の金属板で構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 接触式温度計
14 本体
15 検出部
16 保護部
20 耐熱部材
30 被覆部材
図1
図2
図3
図4