(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】スライドレールユニット
(51)【国際特許分類】
A47B 88/40 20170101AFI20230731BHJP
【FI】
A47B88/40
(21)【出願番号】P 2019215395
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津村 優
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第04204067(DE,A1)
【文献】米国特許第04752143(US,A)
【文献】国際公開第2015/052047(WO,A1)
【文献】特開2003-038276(JP,A)
【文献】実開昭54-117332(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に形成される移動側レールと固定側レールが、少なくともボールリテーナにて保持される複数のボールを介して該長尺方向に相対移動可能に構成されるスライドレールを二体備え、二体のスライドレールのそれぞれの移動側レールが、移動側ブラケットに連結され、二体のスライドレールのそれぞれの固定側レールが、固定側ブラケットに連結されたスライドレールユニットであって、移動側ブラケットは、移動方向側視で一方側の移動側レールを水平方向に対して傾斜させ、他方側の移動側レールを、該一方側の移動側レールに対して鉛直面に対して対称位置に配置するように一対の移動側レールを一体的に連結するもので、固定側ブラケットは、移動方向側視で一方側の固定側レールを水平方向に対して傾斜させ、該他方側の固定側レールを、一方側の固定側レールに対して鉛直面に対して対称位置に配置するように一対の
固定側レールを一体的に連結することを特徴とするスライドレールユニット。
【請求項2】
移動側ブラケットの移動側レールを水平方向に対して傾斜させる角度と、固定側ブラケットの固定側レールを水平方向に対して傾斜させる角度を相違させていることを特徴とする請求項1に記載のスライドレールユニット。
【請求項3】
移動ブラケットに連結部材が着脱自在に取り付けられ、連結部材はスライドレールユニットでスライド移動させる物品に固定され、連結部材を移動ブラケットに取り付けることにより、スライドレールユニットと物品が連結されるものであって、連結部材は、連結部材の底側面側が少なくともいずれかの移動ブラケットの傾斜した移動側レールの取り付け面の対向側面に接触することを特徴とする請求項1、あるいは請求項2に記載のスライドレールユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品をスライド移動させるためのスライドレールに係わるもので、物品の下方側で、移動物品をスライド移動させ、かつ、移動物品の荷重を支持することができるスライドレールユニットの提供を課題とする。
【背景技術】
【0002】
固定側レールと移動側レールを複数のボールで支持し伸縮可能とされるスライドレールを用いて、引き出しなどの物品をスライド移動させることが一般的に行われている。
そして、このようなスライドレールは、通常、縦方向に長い扁平状の断面であって、該スライドレールを縦方向に使用し縦方向の荷重を支えながらスライド移動させることに適している。そのため、引き出しなどに使用する場合は、引き出し体の左右の側板にスライドレールを縦方向に設置し、引き出しを前後方向にスライド移動させている。
しかしながら、縦方向に設置したスライドレールは、横方向に揺れには弱いから、横揺れを防止するため、前記スライドレールに加えスライドレールを横方向に設置し、横揺れを防止するものがある。したがって、スライドレールは3本使用されることになる(特許文献1参照)。
【0003】
一方、引き出しなどの物品の下面にスライドレールを設置し、物品の荷重を支えながらスライド移動させるスライドレールを使用する方法があるが、この場合、荷重支えるため、スライドレールは縦方向に設置することになるため、高さ方向の厚みが厚くなる問題があった。また、該厚みを薄くするためスライドレールを横方向に設置すると、スライドレールに荷重がかかるとスライドレールは、荷重方向に大きく撓み物品を支えることができないことから、軽量物品を支えることにしか対応できなかった(特許文献2参照)。
【0004】
また、上記の問題を解決するために、スライドレールを斜めに設置するものがあるが、このようなスライドレールは、物品の左右で別体であるため設置が簡単ではなかった(特許文献3参照)。
そして、複数のボールで伸縮可能とされるこのようなスライドレールは、固定側レールと移動側レール間とボールとの間に、若干の隙間を設けて、スライドレールの伸縮に支障がないように施されている。そのため、スライドレールを取り付けた物品が、前記隙間の分だけ多少動き、いわゆるガタツキの原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2655581号公報
【文献】特開平02-011104号公報
【文献】特開2003-038276公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、移動物品をスライド移動させ、かつ、移動物品の荷重を支持し容易に設置可能で、移動物品の下方側に設置することに適したスライドレールユニットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、長尺に形成される移動側レールと固定側レールが、少なくともボールリテーナにて保持される複数のボールを介して該長尺方向に相対移動可能に構成されるスライドレールを二体備え、二体のスライドレールのそれぞれの移動側レールが、移動側ブラケットに連結され、二体のスライドレールのそれぞれの固定側レールが、固定側ブラケットに連結されたスライドレールユニットであって、移動側ブラケットは、移動方向側視で一方側の移動側レールを水平方向に対して傾斜させ、他方側の移動側レールを、該一方側の移動側レールに対して鉛直面に対して対称位置に配置するように一対の移動側レールを一体的に連結するもので、固定側ブラケットは、移動方向側視で一方側の固定側レールを水平方向に対して傾斜させ、該他方側の固定側レールを、一方側の固定側レールに対して鉛直面に対して対称位置に配置するように一対の固定側レールを一体的に連結する構成とした。
【0008】
第2の手段は、第1の手段に加え、移動側ブラケットの移動側レールを水平方向に対して傾斜させる角度と、固定側ブラケットの固定側レールを水平方向に対して傾斜させる角度を相違させる構成とした。
【0009】
第3の手段は、第1の手段、あるいは、第2の手段に加え、移動ブラケットに連結部材が着脱自在に取り付けられ、連結部材はスライドレールユニットでスライド移動させる物品に固定され、連結部材を移動ブラケットに取り付けることにより、スライドレールユニットと物品が連結されるものであって、連結部材は、連結部材の底側面側が少なくともいずれかの移動ブラケットの傾斜した移動側レールの取り付け面の対向側面に接触する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の手段として構成したところによると、移動側レールと固定側レールが水平方向に対して傾斜し、かつ、該水平方向に対する垂直方向で対称に二体のスライドレールがブラケットにて連結設置されているから、二体のスライドレールのそれぞれの移動側レールが移動側ブラケットにて一体的となり、また、それぞれの固定側レールが固定側ブラケットにて一体的となることから、二体のスライドレールを一本のスライドレールのように扱うことができるユニットにすることが可能であるから取り付けが簡単となる。
さらに、水平方向に対する垂直方向にスライドレールを設置した場合に比べ、垂直方向の厚みを抑えることが可能で、さらに、水平方向の横揺れに対しての剛性も向上させることができ、垂直荷重と水平荷重の双方に荷重に対応することができる。
特に、二体のスライドレールが一体的となるから、二体のスライドレールの一方側に荷重がかかることがなく二体のスライドレールに荷重を分散でき、かつ、二体のスライドレールが一体的であるからスライドレールの剛性が向上する。
また、スライドレールを水平方向に設置する場合に比べ、固定側レールに対して移動側レールが引き出された状態でもスライドレールの剛性を確保することができるからスライドレールのたわみを減少させることができる。
【0011】
本発明の第2の手段として構成したところによると、第1の手段として構成したところ、に加え、移動側ブラケットで二体のスライドレールの移動側レールを連結していることに加え、固定側ブラケットで二体のスライドレールの固定側ブラケットを連結しているから、移動側レールと固定側レールの水平方向に対する傾斜角度の相違状態を維持させることが可能で、移動側レールと固定側レールが水平方向に対して傾斜角度が相違しているから、固定側レールと移動側レール間とボールとの間に設けられた若干の隙間によるガタツキ分をあらかじめ動かした状態とすることができ、スライドレールのガタツキを抑えることが可能となる。
【0012】
本発明の第3の手段として構成したところによると、連結部材の底側面側が少なくともいずれかの移動ブラケットの傾斜した移動側レールの取り付け面の対向側面に接触するから、簡単な構成で連結部材の左右方向のガタツキを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】スライドレールユニットの最収縮状態の斜視図
【
図5】スライドレールユニットの移動方向側視となる正面図
【
図8】他のスライドレールを使用したスライドレールユニットの斜視図
【
図9】ダブルタイプのスライドレールを使用したスライドレールユニットの斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
移動物品をスライド移動させ、かつ、移動物品の荷重を支持し、垂直方向、水平方向のいずれの荷重に対しても対応可能で、さらに容易に設置可能で、ガタツキが少ない移動物品の下方側に設置することに適したスライドレールユニットを実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。尚、便宜的に
図4における左右方向、すなわちスライド方向を前後方向あるいは長尺方向、
図3、4における上下方向を高さ方向あるいは同じく上下方向とし、
図3における左右方向を水平方向あるいは同じく左右方向として説明する。
図1、
図2において、符号100は、本発明のスライドレールユニットを示し、スライドレールユニット100は、主に、右スライドレール10Aと左スライドレール20Aと移動側ブラケット3と固定側ブラケット4で構成されている。
【0016】
右スライドレール10Aは、アウターメンバー11と、インナーメンバー13と、アウターメンバー11とインナーメンバー13間に設けられたボールリテーナ15と、アウターメンバー11とインナーメンバー13間でボールリテーナ15に回転自在に保持されたボール17・・・より構成され、アウターメンバー11と、インナーメンバー13は、ボールリテーナ15とボール17・・・を介して相対移動可能に連結されている。
【0017】
左スライドレール20Aは、アウターメンバー21と、インナーメンバー23と、アウターメンバー21とインナーメンバー23間に設けられたボールリテーナ25と、アウターメンバー21とインナーメンバー23間でボールリテーナ25に回転自在に保持されたボール27・・・より構成され、アウターメンバー21と、インナーメンバー23は、ボールリテーナ25とボール27・・・を介して相対移動可能に連結されている。
【0018】
次にスライドレールの各部材について詳述するが、本実施例の右スライドレール10Aと左スライドレール20Aは同一形状であるから右スライドレール10Aのみを説明する。
アウターメンバー11は、
図1~3に示すように帯状金属板から前後方向に長尺に形成されるもので、基板111と、該基板111の短手側両端部を内向き円弧状に湾曲して形成された内面長手方向にボール摺動溝112、112を有する屈曲縁113、113より断面略C字形に形成されている。そして、基板111の前後端部に、基板111の一部を内方に折り曲げた、ボールリテーナ15のストッパー114、114が設けられている。
【0019】
インナーメンバー13は、アウターメンバー11内を行き来できるようにアウターメンバー11より短く形成され、本実施例においてはアウターメンバー11の約4分の1の長さに設定されている。そして、インナーメンバー13は、アウターメンバー11に挿入可能な大きさの帯状金属板よりなる基板131と、基板131の短手側の両端部を外向き円弧状に湾曲して形成された、外面長手方向にボール摺動溝132、132を有する屈曲縁133、133より、断面コ字形に形成されている。
【0020】
ボールリテーナ15は、帯状金属板にて、上記アウターメンバー11、インナーメンバー13間に挿入可能な大きさで、かつ、アウターメンバー11の3分2程度の長さとされ、基板151と、屈折縁152、152より断面コ字状に形成され、屈折縁152、152の長手方向数箇所にそれぞれ複数個のボール17・・・が回転自在に保持される。
以上のように、右スライドレールの各部材は構成される。
【0021】
次に移動側ブラケット3について詳述する。
移動側ブラケット3は、厚板の鋼板で形成され、
図3に示すように、
図3における水平方向に平行な移動側ブラケット基部30と、移動側ブラケット基部30の右端と連接する右アウターメンバー連結部31と、移動側ブラケット基部30の左端と連接する左アウターメンバー連結部32で形成される。
右アウターメンバー連結部31は、
図3における左側から右側に向かって上昇するように傾斜しており、傾斜角度は水平方向を基準として35度に設定されている。
そして、右アウターメンバー連結部31と左右対称に左アウターメンバー連結部32が形成されている。
このように、移動側ブラケット3は、右アウターメンバー連結部31と左アウターメンバー連結部がV字状に左右対称に配置された断面形状をしており、長さ方向は、アウターメンバー11、21とほぼ同じ長さに形成されている。
【0022】
次に固定側ブラケット4について詳述する。
固定側ブラケット4は、厚板の鋼板で形成され、
図3に示すように、
図3における水平方向に平行な固定側ブラケット基部40と、固定側ブラケット基部40の右端と連接する右インナーメンバー連結部41と、固定側ブラケット基部40の左端と連接する左インナーメンバー連結部42と、右インナーメンバー連結部41の右端と連接する右固定基材43と、右インナーメンバー連結部41の左端と連接する左固定基材44で形成される。
右インナーメンバー連結部41は、
図3における左側から右側に向かって上昇するように傾斜しており、傾斜角度は水平方向を基準として35.5度に設定されている。
そして、右固定基材43は、右インナーメンバー連結部41の上昇端から右インナーメンバー連結部41に対して直角に下方側に屈曲して形成され、さらに下方側で水平方向に屈曲する右固定部431を形成している。
そして、右インナーメンバー連結部41と左右対称に左インナーメンバー連結部42と連接する左固定基材44(左固定部441)が形成されている。
【0023】
このように、固定側ブラケット4は、右インナーメンバー連結部41と左インナーメンバー連結部42がV字状に左右対称に配置された断面形状をしており、さらに、右インナーメンバー連結部41と左インナーメンバー連結部42に連接する右固定基材43と左固定基材44でM字状の断面形状をしており、長さ方向は、インナーメンバー13、23とほぼ同じ長さに形成されている。
そして、固定側ブラケット基部40と右固定部431と左固定部441の下面は同じ高さに設定されて面一に形成され、それぞれにスライドレールユニット100を物品に固定するための貫通穴が設けられている。
【0024】
移動側ブラケット3の移動側ブラケット基部30には連結部材5が連結されている。
連結部材5は、物品側に取り付けられ、連結部材5を介して、物品をスライドレールユニット100に取り付けるものであって、連結部材5は、スライドレールユニット100(移動側ブラケット基部30)に着脱自在に連結固定される。
【0025】
次に移動側ブラケット基部30と連結部材5の連結部分について詳述する。
移動側ブラケット基部30のスライドレールユニットのスライド方向の一端部近傍に移動側ブラケット基部30の下面から上面側の上方に突出自在な位置決めピン部332を有する固定ピン33が設けられている。
固定ピン33は、段つき丸棒状に形成され、移動側ブラケット基部30の下面側に突出する操作部331と、ばね等の付勢部材によって移動側ブラケット基部30の上面から上方に突出する位置決めピン部332を有している。
そして、固定ピン33は、通常、移動側ブラケット基部30の上面に位置決めピン部332が突出しており、操作部331を手動で下方に引っ張ると、位置決めピン部332が移動側ブラケット基部30の上面から突出しないようになり、操作部331を離すと、前記不勢手段によって、移動側ブラケット基部30の上面から突出した状態に復帰する。
【0026】
さらに、移動側ブラケット基部30の上面には、固定ピン33より前記一端部の他方側に向かって離れて係合ピン34が固定されている。
係合ピン34は、移動側ブラケット基部30の上面から上方に向かって突出しており、移動側ブラケット基部30側が細い首部341とされ、首部341の上部の突出側が太い係合部342とされた段つき丸棒状に形成されている。
また、移動側ブラケット基部30の、前記一端部の他方側端部付近に、該係合ピン34と同形状のものが、前記と同じく移動側ブラケット基部30の上面から上方に向かって突出して固定されている。
【0027】
連結部材5は、合成樹脂材で一体的に形成されているものであって、横長長方形の断面でスライドレールの摺動方向に長い扁平状に形成されており、長尺方向の下面の両角部に、中心から外側に向かって上昇するテーパー状の当接底面51、51が形成されている。
そして、このテーパー状の当接底板51の傾斜角度は、右アウターメンバー連結部31と同じく水平方向を基準として35度に設定されている。
また、連結部材5には上下方向に貫通する複数の取り付け孔56・・・が設けられ、連結部材5の下面の取り付け孔56の周辺は凹状に形成されている。
【0028】
連結部材5の摺動方向の一端部付近には、前記位置決めピン部331に対応して、上下方向に貫通する固定孔52が設けられ、固定孔52の前方には下面が前方方向に上昇する傾斜面を有する案内片521が設けられ、摺動方向の中心部には、前記係合部342が挿入可能な挿入孔53が設けられ、挿入孔53とスライドレールの前記一端部の他方側に連接して、首部341が通過可能で、係合部342が通過できない係合孔54が設けられている。
係合孔54の上方は、挿入孔53の同じ左右幅で挿入孔53と連接したスライド溝孔531が形成されている。係合孔54の幅がスライド溝孔531より狭いため、係合孔54の周辺には、係合片541が形成されることとなる。係合片541は、係合ピン34の首部341とほぼ同じ高さの厚みで、係合片541の上面に係合ピン34の係合部342の下面が接触する程度に設定され、前側の上面に前方に下がるように傾斜面が設けられている。
【0029】
以上のように構成されたスライドレールユニット100の各部材は次のように組み立てられる。
まず、移動側ブラケット3の右アウターメンバー連結部31の下面にアウターメンバー11の基板111の屈曲縁113側と反対側の面を面接触させ溶接固定する。
同様に、左アウターメンバー連結部32の下面にアウターメンバー21の基板211の屈曲縁213側反対側の面を面接触させアウターメンバー11と対称に溶接固定する。
この状態で、アウターメンバー11とアウターメンバー12は右アウターメンバー連結部31と左アウターメンバー連結部32に面接触しているので、スライドレールの伸長方向側から見る移動方向側視で、それぞれの傾斜角度が水平方向を基準として35度のV字状に配置されることとなる。
【0030】
次に、ボールリテーナ15の屈曲縁152、152間にインナーメンバー13のボール摺動溝132、132が配置されるようにインナーメンバー13をセットし、ボールリテーナ15の屈曲縁152、152に形成された複数のボール保持孔に該ボール保持孔の外側からボール17・・・を挿入しながら、ボール17・・・、インナーメンバー13とともに、アウターメンバー11のボール摺動溝112、112間にアウターメンバー11の端面からボールリテーナ15をスライド挿入する。
そして、ボールリテーナ15の挿入後、アウターメンバー11の基板111の両端部が屈曲縁113側に折り曲げられることによりストッパー114、114が形成され、ボールリテーナ15が、ストッパー114、114によってアウターレール11から抜けることがないように施される。
尚、ボールリテーナ15の両端部は、インナーメンバー13側に切り起こされており、インナーメンバー13がボールリテーナ15から抜け落ちないように施されている。
そして、この状態でインナーメンバー13は、アウターレール11内を長尺方向にボール17・・・を転動させながら、かつ、ボール17・・・の転動によりボールリテーナ15をスライド移動させながら、スライド移動することが可能となる。
【0031】
同様に、ボールリテーナ25の屈折縁252、252間にインナーメンバー23のボール摺動溝232、232が配置されるようにインナーメンバー23をセットし、ボールリテーナ25の屈折縁252、252に形成された複数のボール保持孔に該保持孔の外側からボール27・・・を挿入しながら、ボール27、インナーメンバー23とともに、アウターメンバー21のボール摺動溝212、212間にアウターメンバー21の端面からボールリテーナ25をスライド挿入する。
そして、ボールリテーナ25の挿入後、アウターメンバー21の基板211の両端部が屈曲縁213側に折り曲げられることによりストッパー214、214が形成され、ボールリテーナ25が、ストッパー214、214によってアウターレール21から抜けることがないように施される。
尚、ボールリテーナ25の両端部は、インナーメンバー23側に切り起こされており、インナーメンバー23がボールリテーナ25から抜け落ちないように施されている。
そして、この状態で、インナーメンバー23は、アウターレール21内を長尺方向にボール27・・・を転動させながら、かつ、ボール27・・・の転動によりボールリテーナ25をスライド移動させながら、スライド移動することが可能となる。
【0032】
次に、インナーメンバー13の基板131と、インナーメンバーの基板231には基板の厚み方向に貫通する螺孔134、134、234、234が設けられている。
そして、固定側ブラケット4の右インナーメンバー連結部41と左インナーメンバー連結部42には、該螺孔134、234に対応して、貫通孔411、411、421、421が設けられており、固定側ブラケット4の右インナーメンバー連結部41の上面をインナーメンバー13の基板131に面接触させ、右インナーメンバー連結部41の下側から、ねじにて貫通孔411、411を貫通し螺孔134、134にねじ止めし、固定側ブラケット4とインナーメンバー13を固定する。
同様に、固定側ブラケット4の左インナーメンバー連結部42の上面をインナーメンバー23の基板231に面接触させ、左インナーメンバー連結部42の下側から、ねじにて貫通孔421、421を貫通し螺孔234、234にねじ止めする。
この状態で、インナーメンバー13とインナーメンバー23は、固定側ブラケット4にて一体的に固定される。
【0033】
このように、インナーメンバー13とインナーメンバー23は、右インナーメンバー連結部41と左インナーメンバー連結部42に面接触しているので、伸長側視で、それぞれの傾斜角度が水平方向を基準として35.5度のV字状に左右対称に配置されることとなる。
そのため、移動方向側視(
図5)で、アウターメンバー11(21)は、移動側ブラケット3により、水平に対して35度傾いており、インナーメンバー13(23)は固定側ブラケットにより水平に対して35.5度傾いていることから、
図5に示すように、アウターメンバー11(21)の基板111(211)に対して、インナーメンバー13(23)の基板131(231)が0.5度傾いた状態となっている。
したがって、インナーメンバー13(23)は、アウターメンバー11(21)のボール摺動溝112、112(212、212)間で、ボール摺動溝112、112(212、212)とボール17・・・(27・・・)とボール摺動溝132、132間のクリアランスを利用してアウターメンバー11(21)に対して0.5度捩れた状態となっており、該クリアランスによるガタツキが該捩れによって除去された状態となっている。
【0034】
このように、二体のスライドレールをV字状に配置し、二体のスライドレールのそれぞれの移動側レールであるアウターメンバーを移動側ブラケットでV字型配置に連結し一体的とし、二体のスライドレールのそれぞれの固定側レールであるインナーメンバーを固定側ブラケットでV字型配置に連結し一体的としているから、アウターメンバーとインナーメンバーのそれぞれの角度は、ブラケットの角度に合わせて一定にできるようになり、アウターメンバー11(21)とインナーメンバー13(23)が捩れた状態を形成することが可能性であるから、インナーメンバー13(23)とアウターメンバー11(21)間のガタツキを減少させることが可能となる。
【0035】
以上のように各部材が組み立てられスライドレールユニット100は完成する。
そして、固定側ブラケット4を筐体などの非移動部材に、前記固定孔を利用してねじ止め固定した上で、移動側ブラケット3を長尺方向にスライド移動させると、移動側ブラケット3に固定されたアウターメンバー11と21が一体的にスライド移動する。
そして、移動側ブラケット3に移動物品を固定させると、移動物品は非移動部材に対してスライド移動可能となる。
前述のとおり、スライドレールユニット100のアウターメンバー11(21)とインナーメンバー13(23)間のガタツキは減少されているから、移動物品も静止状態やスライド移動時のガタツキを少なくできる。
【0036】
また、前記実施例のように、アウターメンバー11(21)よりインナーメンバー13(23)が短く、固定側ブラケット4とインナーメンバー13(23)が連結されている場合、アウターメンバー11(21)のインナーメンバー13(23)に支持されている部分以外は、アウターメンバー11(21)と移動側ブラケット3の剛性にて荷重を支持する必要がある。
そして、本件発明は、二体のスライドレールをV字状に、かつ一体的に配置しているから、ガタツキを少なくすることに加え、スライドレールが水平に配置されている場合に比べ剛性が増し、上下方向の撓みが少なく、耐荷重が増し、また、スライドレールを垂直に配置している場合に比べ、スライドレールユニットの高さが低く、かつ左右方向の横揺れが少ないため、前記のように、アウターメンバー11(21)よりインナーメンバー13(23)が短く、固定側ブラケット4とインナーメンバー13(23)が連結されている場合でも使用可能となる。
【0037】
尚、移動物品は次のように移動側ブラケット3に着脱自在に連結される。
まず、二体の連結部材5を、取り付け孔56・・・を使用して、物品の所定の位置に連結部材5の下面からねじにて物品に固定する。尚、ねじ頭は、取り付け孔56・・・の周辺の凹状部に収められるので、連結部材5の下面からねじ頭が突出することはない。
次に、移動側ブラケット3の前後に設けられた係合ピン34、34に連結部材5、5の挿入孔53を合わせ、係合ピン34の係合部342がスライド溝孔531側に移動するように物品ごと連結部材5、5をスライド移動させる。
【0038】
移動させると、係合部342の下面が、係合片541の前面の傾斜面に沿い、傾斜面を押し下げながら連結部材5(物品)が移動するので、連結部材5が移動側ブラケット基部30に引き付けられるようにスライド移動していく。
そのため、移動部材5の当接底面51、51の少なくともいずれか一方が、移動側ブラケット3の右アウターメンバー連結部31、あるいは、左アウターメンバー連結部32に接触し、移動部材5は該接触により、下方側への移動が阻止され、連結部材5と移動側ブラケット3は、ガタツクことなく固定できる。
【0039】
そして、係合部342の下面が前記傾斜面を通過すると、係合部342の下面が係合片541の上面に接触した状態でスライド移動する。その時、移動側ブラケット3の固定ピン33の位置決めピン部332に、連結部材5の案内片521の傾斜面が接触する。接触すると、位置決めピン部332は、案内片521の傾斜面に沿って、ばねを押し下げながら、押し下げられていく。そして、位置決めピン部332に、連結部材5の固定孔52が達すると、位置決めピン部332は、ばねの付勢力によって固定孔52に挿入する。
【0040】
この状態で、連結部材5(物品)は、移動側ブラケット3に対して、位置決めピン部332と固定孔52によって前後のスライド移動が規制され、係合部342に係合片541が当接することによって、連結部材5の上方向の移動が規制され、連結部材5が移動側ブラケット基部30に引き付けられている状態となっているから、連結部材5の下面が移動側ブラケット基部30の上面に接触し下方向の移動が規制される。さらに、連結部材5のテーパー状の当接底面51、51が、移動側ブラケット3のV字状に配置された右アウターメンバー連結部31と左アウターメンバー連結部32のうち少なくとも一方側に当接し、左右方向の揺れが規制される。
【0041】
連結部材5(物品)を移動側ブラケット3から取り外すには、固定ピン33の操作部331を下に引き、位置決めピン部332を固定孔52から係脱させ、連結部材5(物品)を前記の連結部材5の取り付け時とは反対の方向にスライド移動させることにより容易に取り外すことができる。
【0042】
以上のように、移動側ブラケット3の右アウターメンバー連結部31と左アウターメンバー連結部32は、V字状に配置されており、水平より起立した状態となっているから、連結部材5の
図5の左右方向の揺れに対して、底側面側で揺れを抑えることができるので、より効果的に連結部材5(物品)の揺れを防止することができる。
さらに、移動側ブラケット3のV字状に配置された右アウターメンバー連結部31と左アウターメンバー連結部32を利用して、連結部材5の左右方向の揺れを防止できるから部品点数を減らすことができ、コストを抑えることが可能となる。
【0043】
前記実施例では、インナーメンバー13、23が固定側レールとされ、固定側レールに対して、アウターメンバー11、21が移動側レールとされ、移動側レールがスライド移動するが、スライドレール単体でみると、アウターメンバー内をインナーメンバーが摺動するものである。
そして、アウターメンバー11、21を固定側レール、インナーメンバー13、23を移動側レールとしてもよい。この場合、スライドレールの撓みについては、問題となりにくいが、ガタツキについては、アウターメンバーは、インナーメンバーに対して0.5度捩れた状態でV字状に、かつ一体的に配置しているから、捩れによって除去された状態にできる。
実施例において、アウターメンバーとインナーメンバーの捩れ角度は、0.5度に設定しているが、該捩れ角度は、捩れさせる前のスライドレールのガタツキ度合い、捩れさせたスライドレールのスライド移動のスムーズさなどを加味して設定されるものである。通常は、0.5度を基準として0.2度~0.8度の範囲で設定するとよい。
【0044】
また、本件発明は、前記実施例スライドレール以外でも実施可能である。
図8に示すのは、アウターメンバー11(21)と、アウターメンバー11(21)に対してボールとボールリテーナを介して摺動可能に保持されるアウターメンバー11(21)と略同じ長さのインナーメンバー13a(23a)で構成されるスライドレールを使用したスライドレールユニットである。
該スライドレールであっても、インナーメンバー13a、23aは、固定側ブラケット4、4AにV字状に配置され、アウターメンバー11、21は、移動側ブラケット3にV字状に配置される。
そして、前記実施例と同様にインナーメンバー11(21)は、アウターメンバー11(21)に対して0.5度捩れた状態でV字状に、かつ一体的に配置しているから、ガタツキが該捩れによって除去された状態となっている。該スライドレールも、前記実施例のようにアウターメンバー11、21を固定側、インナーメンバー13a、23aを移動側としてもよい。
【0045】
また、
図8に示すスライドレールユニットは、固定側ブラケット4に加え、インナーメンバー13a、23aの収縮側端を固定側ブラケット4と同形の固定側ブラケット4Aで連結固定して、スライドレールの補強としているが、スライドレールをV字状に、かつ、一体的に配置しており剛性高いことから、固定側ブラケット4Aを省くことも可能である。
【0046】
図9に示すのは、スライドレールが、固定側ブラケット4、4AにV字状に配置される固定側アウターメンバー101(201)と該アウターメンバーにボールとボールリテーナを介して摺動可能に保持されるインナーメンバー103(203)と、該インナーメンバー103(203)に背中合わせに一体的に固定されるインナーメンバー103a(203a)と、インナーメンバー103a(203a)にボールとボールリテーナを介して摺動可能に保持され、移動側ブラケット3にV字状に配置される移動側アウターメンバー11(21)からなるダブルタイプスライドレールである。
ダブルタイプスライドレールは最収縮状態からの摺動量を大きくできる特徴があり、このダブルタイプスライドレールにおいても、二体のダブルタイプスライドレールを、固定側ブラケット4、4A、移動側ブラケット3に沿ってV字状に、かつ一体的に配置しているから、ガタツキを少なくすることに加え、スライドレールが水平に配置されている場合に比べ剛性が増し、上下方向の撓みが少なく、耐荷重が増し、また、スライドレールを垂直に配置している場合に比べ、スライドレールユニットの高さが低く、かつ左右方向の横揺れが少ない。
【0047】
また、
図9に示すスライドレールユニットは、前記と同じく固定側ブラケット4に加え、アウターメンバー101、201の収縮側端を固定側ブラケット4と同形の固定側ブラケット4Aで連結固定して、スライドレールの補強としているが、スライドレールをV字状に、かつ、一体的に配置しており剛性高いことから、固定側ブラケット4Aを省くことも可能である。
そして、ダブルタイプスライドレールの場合であっても、固定側のアウターメンバー101、201は、アウターメンバー11、21に対して0.5度捩れた状態でV字状に、かつ一体的に配置しているから、ガタツキが該捩れによって除去された状態となっている。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明は、耐荷重に優れ、横揺れや撓みを抑えるばかりか、ユニット化され扱いやすいスライドレールユニットであるため、引き出し式の収納庫や、引き出し式の収納を備えた家具や、スライド移動可能な家具用天板や、上下方向を含めたスライド移動可能な掲示板や黒板や仕切り板やスライド移動可能な自動車用のアームレストや、ATMなど様々の物品に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
100 スライドレールユニット
10A 右スライドレール
11 アウターメンバー
13 インナーメンバー
15 ボールリテーナ
17 ボール
20A 左スライドレール
21 アウターメンバー
23 インナーメンバー
27 ボール
3 移動側ブラケット
30 移動側ブラケット基部
31 右アウターメンバー連結部
32 左アウターメンバー連結部
33 固定ピン
34 係合ピン
4 固定側ブラケット
40 固定側ブラケット基部
41 右インナーメンバー連結部
42 左インナーメンバー連結部
5 連結部材
51 当接底面
52 固定孔
53 挿入孔
54 係合孔
55 押さえ片