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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】装飾材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 1/06 20060101AFI20230731BHJP
   B27D 5/00 20060101ALI20230731BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230731BHJP
【FI】
B27M1/06
B27D5/00
B23K26/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021003334
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108382
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2022-10-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514052760
【氏名又は名称】大和ツキ板産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 美寛
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193149(JP,A)
【文献】特開2001-233000(JP,A)
【文献】特開2008-265344(JP,A)
【文献】特開平03-142084(JP,A)
【文献】国際公開第2021/157231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 1/06
B27D 5/00
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材の表側に金属材を積層して前記下地材よりも薄い金属層を形成し、当該金属層の表側に可燃物からなる表面材を積層して前記下地材よりも薄い表面層を形成した板材を用意し、
前記板材の前記表面層に向けて曲線を描くようにレーザー光を照射して当該表面層の一部のみを焼失させることによって前記板材の表面に前記金属層の一部を露出させて模様を形成することを特徴とする装飾材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の装飾材の製造方法において、
木製の薄板が前記可燃物として前記金属層に積層されたものを前記板材として用意し、
前記薄板に前記レーザー光を照射して前記薄板の一部のみ焼失させることを特徴とする装飾材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装飾材の製造方法において、
前記板材の前記表面層の同一部分に前記レーザー光を複数回照射して当該表面層の一部のみを焼失させることを特徴とする装飾材の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の装飾材の製造方法において、
前記金属層の厚みを前記表面層の厚みよりも薄くしておくことを特徴とする装飾材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層に可燃物からなる表面層が積層された装飾材の製造方法に関し、表面層の一部をレーザー光によって除去する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築材や家具の部材等として、天然木を薄くスライスした突板を下地材に接着してなる天然木化粧合板が広く用いられている。この天然木化粧合板の表面には天然木特有の美しい木目が現れるので、多くの場合、その木目をそのままにして突板を部屋の壁材として利用したり、天然木化粧合板を用いて家具を製作することが行われている。
【0003】
また、特許文献1には、木質繊維板の表面に適宜厚さの木材単板からなる化粧層を設け、その化粧層の表面にレーザー光を照射することにより、化粧層を貫通して木質繊維板に達する深さの凹模様を形成した装飾材が開示されている。この装飾材では、凹模様の底面に、木質繊維の溶融による梨地状の粗面が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-127102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように天然木化粧合板はそのまま利用される場合が多いが、特許文献1に開示されているように、ユーザの多様な要求等に応じて、レーザー光の照射による加工が施されたものが利用される場合もある。レーザー光を照射することによって細かな凹模様を精密に形成できるので、突板の用途の拡大にも繋げることができる。
【0006】
ところが、特許文献1では、化粧層及び木質繊維板の両方が木材からなるものなので、化粧層をレーザー光で焼失させたとしても、装飾材の表面には木材の組み合わせによる模様が形成されるだけである。化粧層と木質繊維板とで異種木材を用いれば、模様がはっきりとしたものになると思われるが、ユーザの要求によっては、模様を形成している部分と地を形成している部分とのコントラストがよりはっきりとしたものを望む場合があり、この場合には、特許文献1の木材のみを用いた装飾材では不十分であった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、模様を形成している部分と地を形成している部分とのコントラストがはっきりとした装飾材を得ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面は、下地材の表側に金属材を積層して前記下地材よりも薄い金属層を形成し、当該金属層の表側に可燃物からなる表面材を積層して前記下地材よりも薄い表面層を形成した板材を用意し、前記板材の前記表面層に向けて曲線を描くようにレーザー光を照射して当該表面層の一部のみを焼失させることによって前記板材の表面に前記金属層の一部を露出させて模様を形成するものである。
【0009】
この構成によれば、表面層にレーザー光を照射すると、表面層は、レーザー光の走査軌跡に対応した部分が焼失する。表面層が焼失した部分では、金属層が板材の表面に露出する。この金属層と表面層との一方が地、他方が模様となることで、板材の表面には、金属と、金属とは異なる可燃物との組み合わせによって模様が形成される。このように異種材で模様が形成されるので、模様を形成する部分と地を形成する部分とのコントラストがはっきりする。また、表面層の一部が焼失していることで板材の表面に露出した金属層の表面と表面層との高さは異なることになり、このことによっても模様を形成する部分と地を形成する部分とのコントラストがはっきりする。
【0010】
本開示の第2の側面では、木製の薄板が前記可燃物として前記金属層に積層されたものを前記板材として用意し、前記薄板に前記レーザー光を照射して前記薄板の一部のみ焼失させるものである。
【0011】
この構成によれば、突板の表面層を構成している木製の薄板の一部のみがレーザー光の照射によって焼失することで、金属と木材とのコントラストの相違によってきれいな模様を形成することができる。
【0012】
本開示の第3の側面では、前記板材の前記表面層の同一部分に前記レーザー光を複数回照射して当該表面層の一部のみを焼失させるものである。
【0013】
この構成によれば、比較的弱い出力のレーザー光を用いて表面層を複数回に分けて焼失させることができるので、金属層が高温にならないようにして金属層の変色を抑制できる。
【0014】
本開示の第4の側面では、前記金属層の厚みを前記表面層の厚みよりも薄くしておくものであり、これにより、比較的高コストとなる金属材の使用量を減らしながら、コントラストがはっきりとした模様を形成できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本開示によれば、表面層にレーザー光を照射して当該表面層の一部のみを焼失させることによって板材の表面に金属層の一部を露出させるようにしたので、模様を形成している部分と地を形成している部分とのコントラストがはっきりとした装飾材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る製造方法によって製造された装飾材の斜視図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】装飾材の写真を示す図である。
図5】レーザー加工装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る製造方法によって製造された装飾材1の斜視図である。装飾材1は、例えば建材、家具の部材として使用されるものである。建材としては、屋内の壁材、天井材、床材等を挙げることができ、また、柱や梁等に貼り付けて使用される部材であってもよい。装飾材1を使用した家具としては、例えば机、収納家具、棚板等を挙げることができ、これら家具の一部にのみ装飾材1を使用してもよい。また、装飾材1は、それ単独で使用することもでき、例えば図1に示すように所定の大きさにして壁に飾ってもよいし、棚や台、机の上に置いて飾ってもよい。
【0019】
装飾材1は、下地材2と、金属層3と、表面層4とを備えた板材である。図2にも示すように、金属層3の厚みは表面層4の厚みよりも薄く設定されている。下地材2は、例えば、木製であってもよいし、樹脂製であってもよいし、アルミニウム材が貼り付けてある不燃材であってもよい。木製の下地材2としては、例えばベニア板を多層接着して一体化したベニア合板を挙げることができ、特に用途が定められていない普通合板であってもよいし、建築物の構造用に用いられる構造用合板であってもよい。下地材2は、多層構造であってもよい。
【0020】
金属層3は、下地材2に金属材を積層することによって形成された層である。金属材は接着剤等によって下地材2に接着して一体化することができる。金属材と下地材2との接着に用いる接着剤としては、従来から周知の接着剤を使用することができる。
【0021】
金属材としては、例えばアルミニウム合金、ステンレス、チタン、ベリリウム銅、りん青銅、黄銅、銅等からなる薄い部材を挙げることができる。金属材の厚みは、例えば0.01mm以上0.8mm以下の範囲で設定することができ、金属材を金属箔、金属フィルム、金属シート等と呼ぶこともできる。金属材の厚みは、後述するレーザー光の照射によって溶融しないように設定しておく。また、金属材の種類は、上述した種類以外であってもよいが、後述するレーザー光の照射によって溶融したり、変色しないものが好ましい。
【0022】
金属材の厚みは、金属材の種類によって変えることができる。例を挙げると、ステンレスを用いた場合の金属材の厚みは0.075mm、チタン、ベリリウム銅、りん青銅、銅を用いた場合の金属材の厚みは0.08mm、黄銅を用いた場合の金属材の厚みは0.1mmに設定することができるが、この値に限られるものではない。金属層3の表面は鏡面に仕上げられていてもよいし、艶消しの表面に仕上げられていてもよい。
【0023】
尚、金属材は、上述した金属以外の金属、例えば鉄、金、銀等であってもよいし、また金属メッキされた部材であってもよく、金属メッキによって金属層を形成することができる。さらに、複数種の金属材を積層することによって金属層を形成してもよい。金属層3を形成することで、火災時に延焼し難い建材とすることができ、耐火材としての使用も考えられる。
【0024】
表面層4は、金属層3に可燃物からなる表面材を積層して形成された層である。表面材は、接着剤等によって金属層3に接着して一体化することができる。表面材と金属層3との接着に用いる接着剤としては、表面材の種類に応じて従来から周知の接着剤を使用することができる。表面層4は、化粧層と呼ぶこともでき、この場合、表面材は表面化粧材である。可燃物とは、後述するレーザー光の照射によって燃える物であり、天然物であってもよいし、人工物であってもよい。
【0025】
表面材としては、例えば木製の薄板、布、樹脂製シート、樹脂製フィルム、紙、皮革、ゴム製シート等を挙げることができる。表面材は、これら複数種の材料が積層された積層材であってもよい。木製の薄板を表面材として用いた場合には、装飾材1は、天然木化粧合板となり、また非木製の下地材2の表面を木製化した部材となる。
【0026】
木製の薄板としては、例えば木材を薄くスライスした突板を挙げることができ、突板の厚さは0.1mm以上2.0mm以下の範囲で設定することができる。突板の厚さは、木材の種類によって変えることができる。突板を構成する木材としては、特に限定されるものではないが、例えばナラ、タモ、ホワイトオーク、レッドオーク、チーク、カバ桜、栓、ハードメープル、カーリーメープル、米松、ケヤキ、モアビ、米杉、地杉、スプルース、ブビンガ、カリン、米桧、地桧、ブナ、ツガ、シカモア、サテンシカモア、ホンジュラスマホガニー、アメリカンチェリー、ポプラ、トチ、アフリカンマホガニー、ホワイトアッシュ、メラピー(マンガシロ)、ニレ、シルバーハート、マコレ、ローズ、ニヤトー、カエデ、サペリ、アユース、コシッポ、桐、黒檀、紫檀、ゼブラ、タマラック、タウン、チューリップウッド、カンボジア松、クルミ、ソノケ、ペアーツリー、マドローナバール、パープルウッド、ウォールナット、アフロモシア(アサメラ)シルバーオーク、モビンギ、パウロッサ、ユーラシアンチーク、パドック、タガヤ、ペルポック、キハダ、レッドシザー、ミンズ、竹、エメラルドウッド、メジロカバ、サイプレス、モミ、ピンクラワン、ウエンジ、アニグレ、パイン、地松(肥松)、サワラ、クス、シナ、バーズアイメープル、ヒバ、アガジス、ゼルコバ、ホワイトバーチ、ユーカリ、アメリカンレッドウッド、台桧、チェスナット(栗)、唐松、アルダー、ヨーロピアンオーク、ホワイトチェリー、バースウッド、ゴム、オクメ、レオ、梨、アサダ、オリーブアッシュ、シルキーオーク、オバンコール、フレンチチェリー、オリーブウォールナット、シルバーチェリー、シラリ、ジャーマニーオーク、アメリカンオーク、バンゼルローズ、ムテンエ、ハックベリー、チンチャン、アレキサンドリア、サテンウォールナット、ジュピターウッド、ペアウッド、赤杉、アカシア、イロコ、コブシ、スクピラ、赤松、米ヒバ、その他にも人工ツキ板等を挙げることができる。1つの装飾材1に複数種の突板が接着されていてもよい。突板の表面には、例えば塗料等が塗布されていてもよい。
【0027】
表面材を布とする場合には、例えばジーンズ等の綿、麻、羊毛、各種合成繊維等からなる布を用いることができる。布は、織り布であってもよいし、不織布であってもよい。布の厚みは突板の場合と同程度にすることができる。布は染色されていてもよい。
【0028】
また、表面材を樹脂製シート、樹脂製フィルムとする場合には、例えばポリエステル、塩化ビニル等からなるシート、フィルムを用いることができる。樹脂製シート、樹脂製フィルムの厚みは突板の場合と同程度にすることができる。樹脂製シート、樹脂製フィルムは、着色されていてもよい。
【0029】
また、表面材を紙とする場合には、例えば洋紙、和紙、ボール紙、半紙、障子紙を用いることができる。紙の厚みは突板の場合と同程度にすることができる。紙は、着色されていてもよい。
【0030】
また、表面材を皮革とする場合には、例えば各種天然皮革、人工皮革等を用いることができる。皮革の厚みは突板の場合と同程度にすることができる。皮革は、着色されていてもよい。また、表面材をゴムとする場合には、例えば天然ゴム、合成ゴム等を用いることができる。ゴムの厚みは突板の場合と同程度にすることができる。ゴムは、着色されていてもよい。
【0031】
図1に示すように、装飾材1には、レーザー光の照射によって形成された模様Aが形成されている。具体的には、表面層4にレーザー光を照射して当該表面層4の一部のみを焼失させることによって装飾材1の表面に金属層3の一部を露出させている。図1に示す例では、模様Aが円形である例を示しており、この例では、レーザー光を円形に走査して表面層4の一部を円形に焼くことで当該表面層4の一部を除去しており、このことで表面層4には、当該表面層4を貫通する円形の孔4aが形成される。模様Aの形状に応じて孔4aの形状は変わる。模様Aとしては、例えば各種図形、文字、記号、イラスト、絵、幾何学模様、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0032】
表面層4の一部が除去された跡に金属層3の表面が現れる。表面層4の一部が除去された跡に現れた金属層3の表面が装飾材1の表面に露出する。従って、装飾材1の表面には、表面層4と金属層3とが共に存在することになり、この例では金属材からなる円形の模様Aが装飾材1の表面に形成される。装飾材1の表面における模様A以外の部分は地となる部分であり、地は表面層4、即ち木材で形成される。地を形成している部分が木材であるのに対し、模様Aを形成している部分が金属であることから、模様Aは金属特有の光沢を有する一方、地は木目を有しており、模様Aを形成している部分と地を形成している部分とのコントラストがはっきりとする。また、両者のテクスチャの相違も明確である。さらに、表面層4の一部が焼失しているので、装飾材1の表面に露出した金属層3の表面と表面層4との高さは異なることになり、このことによっても模様Aを形成する部分と地を形成する部分とのコントラストがはっきりする。尚、模様Aは、1つ設けてもよいし、複数設けてもよい。また、模様Aの大きさは任意に設定することができる。また、表面層4に複数の孔4aを形成し、これら複数の孔4aによって1つの模様Aを構成してもよい。複数の孔4aによって1つの模様Aを構成する場合、全ての孔4aの大きさや形状が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
表面層4のレーザー光による焼失範囲が広くなると、装飾材1の表面における表面層4の占める割合が小さくなる。例えば、装飾材1の表面における表面層4の占める割合が半分よりも小さくなると、金属層3を地とし、残っている表面層4の形状を模様とすることもできる。この場合も模様Aを形成している部分と地を形成している部分とのコントラストがはっきりとする。
【0034】
(装飾材の製造方法)
図3は、実施形態に係る製造方法の手順の一例を示すフローチャートであり、また、図4は、実施形態に係る製造方法により製造された装飾材1の写真を示す図である。本実施形態に係る製造方法では、図5に示す構成のレーザー加工装置10を使用する。
【0035】
レーザー加工装置10は、従来から周知のものを用いることができ、例えば、制御部11、データ入力部12、走査部13及びレーザー光出力部14を備えている。制御部11は、CPU(中央演算処理装置)やROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ等で構成されている。データ入力部12は、例えばキーボードやマウス、模様データを読み込み可能な各種手段で構成されている。模様データをデータ入力部12で読み込む場合には、例えばJPEG形式やBMP形式等で模様データを作成しておき、この模様データをデータ入力部12で読み込むことができる。また、キーボード等によって文字や記号を入力し、それらを模様データとすることもできる。
【0036】
データ入力部12から入力された模様データは制御部11で取得される。制御部11は、模様データに基づいてXY平面上で所定の解像度に基づいてレーザー光を照射する部分と、照射しない部分とを判別する。例えば、解像度が0.5mm/1ドットであるとすると、X方向及びY方向の両方向で、それぞれ0.5mmごとに、レーザー光を照射する部分と、レーザー光を照射しない部分とに分ける。
【0037】
走査部13には、レーザー光の出射部(図示せず)が取り付けられている。走査部13は、この出射部をX方向及びY方向の両方へ走査させることが可能に構成されており、例えばX方向の駆動用アクチュエータとY方向の駆動用アクチュエータ(リニアモータ等)とを備えている。出射部の位置座標はロータリエンコーダ等によって制御部11が取得可能になっている。走査速度は、例えば8000cm/min等に設定することが可能であるが、これに限られるものではなく、例えば500cm/min~10000cm/minの範囲で設定することが可能である。また、加速度は10m/m等に設定することが可能であるが、これに限られるものではなく、例えば1m/m~20m/mの範囲で設定することが可能である。
【0038】
レーザー光出力部14は、上記範囲の走査速度で表面層4を焼失させることが可能な強度のレーザー光を生成する部分である。レーザー光出力部14で生成するレーザー光の強度(出力ともいう)は、表面層4の材質や厚さによって調整可能である。また、レーザー光を1度だけ照射して表面層4に孔4aを形成可能な強度であってもよいし、レーザー光を表面層4の同一部分に複数回照射することによって表面層4に孔4aを形成可能な強度であってもよい。
【0039】
制御部11は、表面層4上で、レーザー光を照射する部分と、レーザー光を照射しない部分とに判別した後、レーザー光を照射する部分にのみレーザー光を照射するように、走査部13及びレーザー光出力部14を制御する。この制御手法は、従来から用いられている手法を適用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0040】
次に、図3に示すフローチャートに基づいて装飾材1の製造方法の手順について説明する。ステップS1では、素材を準備する。素材は、下地材2、金属材、表面材である。ステップS2では、金属材を下地材2に対して接着剤により接着し、金属層3を形成する。また、ステップS3では、金属層3に可燃物からなる表面材を積層して表面層4を形成する。その後、下地材2、金属材及び表面材を厚み方向にプレス(ホットプレス)して圧着し、3層構造の板材を得る。
【0041】
上記のようにして用意した板材の表面層4を研磨する。研磨後、ステップS6に進み、表面層4を塗装する。塗装時には、表面層4にウレタンシーラーを塗布した後、UVサンディングを塗布し、その後、塗面研磨を行ってから再度ウレタンシーラーを塗布した後、UVフラットを塗布する。この塗装工程は一例であり、これに限られるものではない。
【0042】
その後、ステップS7に進み、塗装後の板材をレーザー加工装置10にセットする。その後、レーザー加工装置10のスタートボタン(図示せず)を操作すると、制御部11が走査部13を制御するとともに、レーザー光出力部14を制御して表面層4にレーザー光を照射する。これにより、当該表面層4の一部のみが焼失し、これにより前記板材の表面に金属層3の一部が露出する。このとき、表面層4の同一部分にレーザー光を複数回照射して当該表面層4の一部のみを焼失させてもよい。同一部分にレーザー光を照射する回数としては、例えば、2回以上5回以下とすることができる。ステップS7では、レーザー光の一部が金属層3に達することがあるが、金属層3は不燃材であるとともに、金属層3が溶融しないような強度のレーザー光としておくことで、金属層3の損傷は回避される。
【0043】
次いで、ステップS8に進み、表面層4が燃えたことによってできたススを濡れたウエス等で拭き取る。これにより、金属層3の一部がきれいに露出して模様Aが形成される。
【0044】
図4では、木目が現れている部分が表面層4であり、白く見える部分が金属層3である。金属層3の光沢の影響によって写真では白く見える。尚、図示しないが、表面層4が、布、樹脂製シート、樹脂製フィルム、紙、皮革、ゴム製シートのいずれであっても、レーザー光の強度、走査速度、走査回数を適切に設定することで、模様Aを形成することができる。
【0045】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、表面層4にレーザー光を照射して当該表面層4の一部のみを焼失させることによって金属層3の一部を露出させて装飾材1の表面に模様Aを形成できる。金属層3があることで、模様Aを形成している部分と、地を形成している部分とのコントラストがはっきりとした装飾材1を得ることができる。
【0046】
また、表面層4の同一部分にレーザー光を複数回照射して当該表面層4の一部のみを焼失させる場合には、比較的弱い出力のレーザー光を用いて表面層4を複数回に分けて焼失させることができるので、金属層3が高温にならないようにして金属層3の変色や損傷を抑制できる。
【0047】
さらに、金属層3の厚みを表面層4の厚みよりも薄くしておくことにより、比較的高コストとなる金属材の使用量を減らしながら、コントラストがはっきりとした模様を形成できる。
【0048】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明に係る装飾材の製造方法によれば、例えば突板を使用した装飾材で利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 装飾材
2 下地材
3 金属層
4 表面層
4a 孔
A 模様
図1
図2
図3
図4
図5