(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】抗がん用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20230731BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20230731BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230731BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20230731BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230731BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230731BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230731BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K38/20
C12N15/113 Z
C07K14/55
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P15/00
(21)【出願番号】P 2021515225
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 KR2019012178
(87)【国際公開番号】W WO2020060247
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0112506
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520095603
【氏名又は名称】オートテリック バイオ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ フン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ウイ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョン ミン
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0216401(US,A1)
【文献】Proceedings of the American Association for Cancer Research Annual Meeting,2004年,Vol. 45,pp.683
【文献】Proceedings of the American Association for Cancer Research Annual Meeting,2009年,Vol.50,pp.200
【文献】Journal of Clinical Oncology,Vol. 27,No.15,Supp. SUPPL.1,pp.4619
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 38/20
C12N 15/113
C07K 14/55
A61P 35/00
A61P 43/00
A61P 11/00
A61P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラベデルセンとIL-2を含む、乳
癌または肺癌を治療するための抗がん用配合組成物。
【請求項2】
トラベデルセンとIL-2を含む、三重陰性(triple negative)乳癌を治療するための抗がん用配合組成物。
【請求項3】
前記トラベデルセンとIL-2は、同時に投与されるか、順次投与されるか、個別に投与されることを特徴とする請求項1または2に記載の抗がん用配合組成物。
【請求項4】
トラベデルセンを含む、IL-2と併用投与するための、乳
癌または肺癌治療用の抗がん組成物。
【請求項5】
トラベデルセンを含む、IL-2と併用投与するための、三重陰性(triple negative)乳癌治療用の抗がん組成物。
【請求項6】
IL-2を含む、トラベデルセンと併用投与するための、乳
癌または肺癌治療用の抗がん組成物。
【請求項7】
IL-2を含む、トラベデルセンと併用投与するための、三重陰性(triple negative)乳癌治療用の抗がん組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん用配合組成物に関するものである。より具体的には、本発明は、トラベデルセン(trabedersen)とIL-2(interleukin-2)を含む抗がん用配合組成物及びその併用投与に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存の細胞毒性の抗がん剤は、がん細胞だけではなく、正常細胞まで攻撃する問題があったので、このような問題を改善するために標的治療の抗がん剤が抗がん治療剤の開発の主流になった。標的治療の抗がん剤は、発がん過程の中で、特定の標的因子のみを選択的に攻撃して、正常の細胞は攻撃しないので、患者に与えられる苦痛は、既存の細胞毒性の抗がん剤より少ないことが知られている。
【0003】
しかし、これらの標的治療の抗がん剤も投与後、耐性が生じる欠点が発見された。これらの標的治療の抗がん剤の欠点を克服しながら抗がん治療を通じた生存期間を延長させるために、免疫抗がん剤が抗癌治療剤の開発の核心として浮上している。
【0004】
本発明は、治療時の副作用を減らしながら、抗がん効果は増進された抗がん剤及びその併用投与を提供するためのものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Schlingensiepen KH et al, Cancer Sci. 2011; 102 : 1193-200
【発明の概要】
【0006】
発明の詳細な説明
技術的課題
本発明は、TGF-β2阻害剤であるトラベデルセンとIL-2の併用投与によって抗癌効果を増進させるためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、TGF-β阻害剤とサイトカインを含む抗がん用配合組成物を提供する。
具体的には、本発明は、TGF-β阻害剤であるトラベデルセン(trabedersen)とインターロイキン(IL)-2を含む抗がん用配合組成物を提供する。
【0008】
腫瘍でのTGF-βの発現は、包括的な免疫抑制機能を遂行する。TGF-βは、免疫抗がん剤の薬物に対する抵抗性を現すバイオマーカーである。
【0009】
PD-1とPD-L1などの免疫チェックポイント(immune checkpoint)は包括的免疫抑制の一部の役割を担当しており、したがってTGF-βを除去していない状態で、PD-1とPD-L1などの免疫チェックポイントに対する阻害剤を免疫抗がん剤として使用して、免疫機能を回復しようとする試みは、部分的にのみ作動するだけで、免疫系の細胞死滅機能を完全に復旧できない。
【0010】
トラベデルセン(trabedersen)は、人間のTGF-βを標的として特別に考案された合成18-mer phosphorothioateアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、TGF-β過剰発現と腫瘍進行の相関関係を見せるデータに基づいて開発された。TGF-β過剰発現と腫瘍進行の相関関係は、多数のin-vitroおよびin-vivo非臨床モデルで評価されたことがある(Schlingensiepen KH et al、Cancer Sci.2011; 102:1193-200)。
【0011】
サイトカイン(cytokine)の一種であるIL-2(インターロイキン-2)は、免疫系を刺激して免疫細胞の規模を広範囲に増やしてくれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る抗がん剤配合組成物は、投与時に副作用を減らしながら、抗がん効果を相乗的に増進させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、様々な癌細胞株に対するTGF-β1mRNAとTGF-β2mRNAの相対的な定性分析の結果を図示したものである。
【
図2】
図2は、様々な癌細胞株に対するTGF-β1mRNAの定量分析の結果を図示したものである。
【
図3】
図3は、様々な癌細胞株に対するTGF-β2mRNAの定量分析の結果を図示したものである。
【
図4】
図4乃至
図8は、EZCYTOXを利用したトラベデルセンの単独処理による乳癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、直腸癌(colorectal cancer)細胞株での成長抑制分析の結果をそれぞれ示したものである。
【
図5】
図4乃至
図8は、EZCYTOXを利用したトラベデルセンの単独処理による乳癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、直腸癌(colorectal cancer)細胞株での成長抑制分析の結果をそれぞれ示したものである。
【
図6】
図4乃至
図8は、EZCYTOXを利用したトラベデルセンの単独処理による乳癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、直腸癌(colorectal cancer)細胞株での成長抑制分析の結果をそれぞれ示したものである。
【
図7】
図4乃至
図8は、EZCYTOXを利用したトラベデルセンの単独処理による乳癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、直腸癌(colorectal cancer)細胞株での成長抑制分析の結果をそれぞれ示したものである。
【
図8】
図4乃至
図8は、EZCYTOXを利用したトラベデルセンの単独処理による乳癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、直腸癌(colorectal cancer)細胞株での成長抑制分析の結果をそれぞれ示したものである。
【
図9】
図9乃至
図13は、IL-2を持って活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅効果を示したものである。
【
図10】
図9乃至
図13は、IL-2を持って活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅効果を示したものである。
【
図11】
図9乃至
図13は、IL-2を持って活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅効果を示したものである。
【
図12】
図9乃至
図13は、IL-2を持って活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅効果を示したものである。
【
図13】
図9乃至
図13は、IL-2を持って活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅効果を示したものである。
【
図14】
図14及び
図15は、ヒトPBMCをもってヒト化させた(humanize)免疫不全マウス(NSG mouse)でIL-2およびトラベデルセンの併用によるin vivo抗癌効果を示したものである。
【
図15】
図14及び
図15は、ヒトPBMCをもってヒト化させた(humanize)免疫不全マウス(NSG mouse)でIL-2およびトラベデルセンの併用によるin vivo抗癌効果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明を実施するための最善の形態
本発明は、トラベデルセンとIL-2を含む抗がん用配合組成物に関するものである。本発明に係る組成物は、特に固形癌(例えば、乳癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌または大腸がんなど)の治療に有用である。
【0015】
本発明の組成物の投与時、トラベデルセンとIL-2は、順次または同時投与されるか、個別に投与される方法で併用投与されることができる。したがって、本発明の組成物の投与時に、各成分は、生体内での治療的有効量で同時に存在してお互いに相乗効果を現すことになる。
【0016】
本発明の他の側面では、本発明は、トラベデルセンを含有し、IL-2と併用投与するための抗がん用組成物に関するものである。このような本発明に係る組成物は、特に固形癌(例えば、乳癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌または大腸がんなど)の治療に有用である。
【0017】
本発明の別の側面では、本発明は、IL-2を含有し、トラベデルセンと併用投与するための抗がん用組成物に関するものである。本発明に係る組成物は、特に固形癌(例えば、乳癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌または大腸がんなど)の治療に有用である。
【0018】
以下では、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものだけであり、本発明の思想や範囲がこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明に係る組成物の抗癌効果を確認するために、マウス固形がんのモデルでTGF-β2阻害剤であるトラベデルセンとIL-2の併用によるin-vitro抗癌効果の実験を実施した。たとえば、さまざまな固形がん細胞株でTGF-βmRNA発現量を確認し、これらでトラベデルセンの単独処理、及びIL-2をもって免疫細胞を活性化(activation)させたPBMC(末梢血単核球:peripheral blood mononuclear cell)とトラベデルセンの併用処理での癌細胞の死滅効果を確認した。また、ヒトPBMCを入れヒト化させた免疫不全マウスでトラベデルセンとIL-2の併用による人の癌細胞(xenograft model)の成長抑制効果を確認した。
【実施例】
【0020】
実験例1:様々な癌を対象としたTGF-β2mRNA level定量及び相対的な定性分析
1)TGF-β2mRNA発現解析
下記の表1のような細胞株を使用して実験した。
【0021】
【0022】
上の表1の各細胞株1x107個でRNA prep kit(Qiagen)を使用してRNAを精製(preparation)し、その後精製されたRNA 1μgを鋳型とし、37℃で1時間cDNAを合成した。
【0023】
TGF-β2特異的プライマー(specific primer)F(ATCGATGGCACCTCCACATATG)とR(GCGAAGGCAGCAATTATGCTG)を利用して、cDNA 10μlに対してのPCRを行った(Denaturation 95℃ 1min、Annealing 57℃ 1min、Extension 72℃ 1min、35cycle及びFinal Extension 72℃ 5min)。その後GAPDH(Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)に対してのPCRの結果と対比して、TGF-β1とTGF-β2のband intensityを利用したTGF-β1とTGF-β2のmRNA発現を確認した。
【0024】
図1乃至
図3は、TGF-β1またはTGF-β2mRNAの相対的な定性分析及び定量分析の結果を図示したものである。
実験の結果、相対的に皮膚癌細胞、肺癌細胞、乳癌細胞でTGF-βmRNAが多く発現することがわかった。
【0025】
実験例2:様々な固形がん細胞株におけるトラベデルセンの単独処理による細胞死滅効果
様々な固形がん細胞株でトラベデルセンの単独処理による細胞死滅効果を確認した。
【0026】
1)細胞培養
上記表1のように、細胞のタイプに応じて、RPMI1640(10%FBS、Antibiotic-Antimycotic、HEPES)、DMEM(10%FBS、Antibiotic-Antimycotic)などの培地を用いており、細胞は37℃、CO25%の環境で培養した。
【0027】
2)トラベデルセン形質注入(transfection)
表1に記載された各細胞株を下記表2に示すように播種(seeding)した後37℃、5%CO2の条件で24時間培養し、トラベデルセンを形質注入する:
具体的な形質注入の方法は、以下の通りである:
【0028】
トラベデルセンを最終的に製造される培養液(すなわち、以下で説明する培養液A、培養液Bと細胞培養液を含んでいる培養液)で20nM、40nM、80nMおよび160nMの各濃度になるように無血清培養液(Serum free media)(培養液A:RPMI 1640またはDMEM)で希釈する。
【0029】
リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を、以下の表2のような実験条件になるように、所定の量を無血清培養液(培養液B:RPMI 1640またはDMEM)に添加する。
【0030】
培養液Aと培養液Bをそれぞれ5分間、常温で反応させた後、12 well plateに基づいて、培養液A 50μlと培養液B 50μlを(1:1体積比)混合し、再び常温で20分間反応させる。
【0031】
上記 “1)細胞培養”段階で準備された細胞の培養液を新しい10%FBS培養液に交換した後、反応が終了した培養液AおよびBの混合物を細胞培養液に加える。
【0032】
【0033】
3)細胞毒性分析(Cytotoxicity Assay)
細胞毒性分析のために、トラベデルセンの形質注入をしてから2日目にEZCYTOX(株式会社デイルラボサービス)を利用して、O.D 450nm値で細胞の活性度を測定し、Annexin VとPI染色を通じてFACS(Fluorescence activated cell sorter)を利用して細胞死滅(Apoptosis)/壊死(Necrosis)分析を行った。
【0034】
図4乃至
図8は、トラベデルセンの単独処理による癌細胞株での成長抑制をEZCYTOXにて分析した結果である。トラベデルセンの投与によって癌細胞株の活性が抑制されることが分かる。ただし、Capan-2およびSK-MEL-28の細胞株では、細胞死滅が大きくないものと観測される。
【0035】
実験例3:乳癌細胞株でのIL-2にて活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅の効果試験
1)IL-2活性化
末梢血のPBMC(末梢血単核球:peripheral blood mononuclear cell)をficoll-plaque plus(GE healthcareから購入)を用いて分離した後、10%FBS、IL-2(20ng/ml)が添加された培養液で4x106/mlの濃度で培養し、5日目にCD4+/CD8+T cellでCD69(T cell activation marker)の発現をFACSを用いて確認した。
【0036】
2)IL-2およびトラベデルセンの併用投与の分析
上記したように、末梢血のPBMCをficoll-plaque plus(GE healthcare)を用いて分離した後、10%FBS、IL-2(20ng/ml)が添加された培養液で4x106/mlの濃度で培養する。培養3日目に癌細胞にトラベデルセンを形質注入(transfection)した後、24時間後に、ターゲット癌細胞の培養液を、10%FBS培養液に交換して、IL-2培養5日目のPBMCを癌細胞株(seeding):Effector (免疫効果細胞)= 1:10の割合(細胞数の割合)で10%FBS RPMI media 2mlに入れた後、plateに添加し、培養する。
【0037】
非活性化PBMCは別にficollを用いて分離して、対照群として使用する。また、どのようなPBMCも入れていない細胞株も対照群として使用する。トラベデルセンは形質注入時、培養液での濃度を変えて(つまり、0nM、10nM、40nMの濃度のそれぞれに対して)実験した。
24時間後にPI染色を通じて細胞毒性(cytotoxicity)の結果を分析した。
【0038】
実験例4:膵臓癌細胞株でのIL-2にて活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅の効果試験
実験例3と同様の方法で膵臓癌細胞株(AsPC-1)に対して実験を実施した。
【0039】
実験例5:黒色腫細胞株でのIL-2にて活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅の効果試験
実験例3と同様の方法で黒色腫細胞株(Hs 294T)に対して実験を実施した。
【0040】
実験例6:肺癌細胞株でのIL-2にて活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅の効果試験
実験例3と同様の方法で肺がん細胞株(A549)に対して実験を実施した。
【0041】
実験例7:直腸癌細胞株でのIL-2にて活性化させたヒトPBMCとトラベデルセンの併用による細胞死滅の効果試験
実験例3と同様の方法で直腸癌細胞株(HT29、DLD-1、LS174T)に対して実験を実施した。
【0042】
実験例3乃至7の実験結果を
図9乃至
図13に示した。示されているように、トラベデルセンとIL-2の併用投与群(IL-2 activated PBMC)がトラベデルセンの単独投与群(non-activated PBMCおよびDMEMまたはRPMI)またはIL-2の単独投与群(IL-2 activated PBMC 、トラベデルセン0nM)に比べて、細胞死滅の効果が大幅に増加するということが分かる。
【0043】
実験例8:(in vivo試験)三重陰性乳がん細胞株での、ヒトPBMCにてヒト化させた免疫不全マウス(NSG mouse)でのIL-2とトラベデルセンの併用による癌の成長抑制の効果試験
NSG(NOD / SCID / Gamma)免疫不全マウスにヒトPBMCを注入してヒト化させたマウスでは、ヒト三重陰性乳がん(TNBC:triple negative breast cancer)細胞株であるMDA-MB-231の成長がトラベデルセンを単独で投与した場合に、IL-2を単独で投与した場合に、及びトラベデルセンとIL-2を併用投与した場合に、それぞれどのような影響を受けるかを確認するための実験を実施した。
【0044】
実験方法
凍結乾燥された粉末の形態のトラベデルセン(TBD)と液剤の形態の遺伝子組換えヒトIL-2(rhIL-2、JWクレアゼン、韓国; Cat.No. JW-H031-0025)を準備した。トラベデルセンの保管条件は、2~8℃であり、遺伝子組換えヒトIL-2の保管条件は、-80℃である。
【0045】
トラベデルセンを滅菌生理食塩水に溶解して使用した。遺伝子組換えヒトIL-2は、濃度25μg/250μl(2x108IU/mg)の溶液を投与直前に希釈して使用した。
NSGマウスを各6匹ずつ10個の群に分けた後、下記表3の用量で腹腔内投与した(IP)。
【0046】
【0047】
ゼノグラフト(異種移植)モデルの製作
MDA-MB-231細胞を、37℃、5%CO2培養環境下で増殖させる。10%FBSを含むRPMI 1640(L-グルタミン、25mM HEPESを含む)培地を使用し、細胞が25Tフラスコ表面の70~80%を占めたとき、1:5の割合で継代培養した。
【0048】
腫瘍移植の日に、上記培養された腫瘍細胞をPBSに懸濁させて1×107cells/100μlとなるようにした。1×107cells/mouseとなるように100μlずつマウスの右脇腹(flank)の部位に皮下移植した。
【0049】
ヒト-PBMC(Hu-PBMC)NSGマウスモデルの製作
ヒトPBMCを37℃の水槽(water bath)で解凍(thawing)して、20%FBSを含むRPMI 1640(DNAse Iを含む)を利用して2回洗浄(washing)して、37℃、5%CO2培養環境下で30分間安定化した。
【0050】
培養30分後、PBMCをPBSで5×107~10×107 cells/mlの濃度に希釈した後、マウス1匹あたり1×107 cells/匹の用量で投与した(癌細胞の投与後3日目にPBMC投与)。
【0051】
投薬方法
上記のようにPBMCを投与したマウスに対し、PBMC投与後2日目(がん細胞移植後5日目)にトラベデルセンを表3の用量で1回/2日間隔で計8回腹腔内投与し、PBMC投与後4日目(がん細胞移植後7日目)にIL-2を表3の用量で1回/1日間隔で4日投薬後3日休薬期を一つのサイクル基準にして総2サイクルの腹腔内投与をした。
【0052】
接種、PBMC投与、トラベデルセン投与とIL-2投与のスケジュールは以下の通りである。
【0053】
【0054】
腫瘍体積(Tumor Volume)測定
トラベデルセンおよび/またはIL-2を投与した後から1回/2日で腫瘍体積を測定した。つまり、腫瘍体積は腫瘍接種(Day0)後5日目から1回/2日で測定した。腫瘍体積は、キャリパー(Caliper:CD-15CPX、digimatic caliper、Mitutoyo、Japan)を用いて、注入された部分に生じた癌細胞の塊の大きさを測定し、体積を下記数学式で計算した。
【0055】
【0056】
上記式で、Wは短軸の長さであり、Lは長軸の長さである。
上記実験の結果、トラベデルセンのみを単独で投与するか、IL-2のみを単独で投与することに対し、トラベデルセンとIL-2の併用投与時、癌細胞の成長抑制の効果が相乗的に発揮され、作用することがわかった(
図14及び
図15を参照)。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の抗がん配合組成物は、抗がん投与に使用することができる。