(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】下向きに曲げる翼部を動かすメカニズム
(51)【国際特許分類】
E05D 3/18 20060101AFI20230731BHJP
E05F 1/12 20060101ALI20230731BHJP
E05F 1/14 20060101ALI20230731BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20230731BHJP
E05F 5/10 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
E05D3/18 B
E05F1/12
E05F1/14 A
E05F5/02 E
E05F5/10
(21)【出願番号】P 2021523190
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2019079077
(87)【国際公開番号】W WO2020089040
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】102018000009883
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】511084533
【氏名又は名称】エッフェジー ブレヴェッティ ソシエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】EFFEGI BREVETTI S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Cava Trombetta 17/25,I-20090 Segrate(Milano),Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァネッティ,アントーニオ
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509814(JP,A)
【文献】特表2008-506054(JP,A)
【文献】特表2007-522363(JP,A)
【文献】国際公開第2011/129154(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/050749(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/224505(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00-15/58
E05F 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具(1)の側板(4)に配置されるように設計された、下向きに曲げる開放動作によって家具翼部を動かすメカニズム(100)であって、
前記メカニズムは、2つのハーフシェル(11、12)から構成されるボックス(10)内に収容されており、かつ複数のレバー(L1、L2、L3)を有するヒンジ(C)を備えており、
前記複数のレバーは、翼部(6)を移動させるために、1つのレバーが、他のレバー、ボックス(10)および翼部(6)に対して関節連結されており、
前記レバーのうちの1つのレバー(L1)は、ボックス(10)内に形成されたトラック(B)内を摺動することができ、
前記レバーのうちの別のレバー(L2)は、ボックス(10)に設けられた支点(P1)を中心として回転することができ、リニアスライダ(30)の前面(31)において、レバー(L2)の一方の端部(22)と共に動作し、
リニアスライダ(30)の背面(32)は、ロッカーレバー(34)の一方の端部(33)に作用し、ロッカーレバー(34)の他方の端部(35)は、ばね(42)の動きを受ける第2リニアスライダ(40)に作用し、
前記リニアスライダ(30)に取り付けられる2つのダンパにおいて、ダンパ(50)は、開放動作中の翼部(6)の下降動作の最終段階を制動し、ダンパ(60)は、閉鎖動作中の翼部(6)の上昇動作の最終段階を制動する、メカニズム。
【請求項2】
前記ヒンジ(C)は、5つの点(P1、P2、P3、P4、P5)を有し、3つのレバー(L1、L2、L3)から構成されるヒンジであり、
レバー(L1、L2)は、中間支点(P2)において互いに関節連結されており、
レバー(L2)の前記端部(22)と反対側の端部は、支点(P3)において、レバー(L3)の一方の端部に関節連結されており、レバー(L3)の他方の端部は、支点(P4)において、翼部(6)に固定された取り付け具(20)に関節連結されており、
レバー(L1)は、ボックス(10)内に形成された前記トラック(B)内でレバー(L1)の端部のピン(27)と共に摺動し、他方の端部は、支点(P5)において、翼部(6)に固定された前記取り付け具(20)に関節連結される、請求項1に記載のメカニズム。
【請求項3】
前記リニアスライダ(30)の前記前面(31)および前記背面(32)がカム形状を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のメカニズム。
【請求項4】
前記ばね(42)は、移動接触部(43)に作用するねじ(44)によって予め荷重を加えられ得る圧縮ばねである、請求項1~3のいずれか1項に記載のメカニズム。
【請求項5】
前記ダンパ(50)は、前記ボックス(10)に対して点(P7)を中心に旋回する小レバー(51)の端部によって作動し、小レバー(51)の他端に対しては、翼部の開放動作中に引っ込められる前記リニアスライダ(30)の突起(52)が作用する、請求項4に記載のメカニズム。
【請求項6】
前記ダンパ(60)は、前記ボックス(10)の前記ハーフシェル(11、12)の内部に設けられたストッパ(62)によって作動し、前記ダンパ(60)のステム(61)は、前記リニアスライダ(30)が前進し、翼部(6)が閉鎖する間に、ストッパ(62)に対して衝突する、請求項4または5に記載のメカニズム。
【請求項7】
前記ボックス(10)に形成された前記トラック(B)は、線形または曲線形である、請求項1~6のいずれか1項に記載のメカニズム。
【請求項8】
前記ヒンジ(C)のレバー(L3、L1)の、前記翼部(6)との関節である点(P4、P5)は、前記翼部(6)に固定可能な取り付け具(20)に設けられている、請求項2~7のいずれか1項に記載のメカニズム。
【請求項9】
前記レバー(L2)は、前記翼部が激しく閉鎖された場合に、前記翼部が前記家具の上部棚(3)に衝突しないように、前記翼部(6)の閉鎖動作中に、前記翼部が前記スライダ(30)に設けられたピン(28)に対して接触していくビーク状突起(70)を有する、請求項2~7のいずれか1項に記載のメカニズム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の主題は、家具の翼部、特に下向きに曲げる(折り畳む:folding)開放動作を伴う翼部を動かすメカニズムである。
【0002】
本発明は、具体的には、下向きに曲げる翼部を作動させるメカニズムに関し、当該メカニズムは、ばねアセンブリを作動させるレバー機構を備える。前記ばねアセンブリは、翼部を開くときに負荷がかかり、翼部を閉じるときに開放されるものであり、翼部の上昇段階を補助する推力を発揮する。
【0003】
市販されている上記の目的のためのメカニズムは完全に満足のいくものではない。というのも、開閉の際に翼部がゆるやかに動くことを可能にしない、あるいは翼部の開閉動作の終わりに衝撃を引き起こすからである。
【0004】
さらに、ほとんどの場合、これらの既知のメカニズムはかなり複雑な設計であり、したがって高価である。
【0005】
少なくとも1つの水平軸を中心に振り子運動する家具の蓋(leaves)を持ち上げるシステムは、(i)家具の固定部分に接続され得る支持体と、(ii)家具の蓋に前記支持体をつなぐ、第1レバーおよび第2レバーを備える関節状レバーシステムと、(iii)前記レバーシステムの回転トルクを生み出すために当該関節状レバーシステムに機能的に接続された弾性作動手段と、を備える。前記持ち上げるシステムは、少なくとも、前記蓋を開ける方向の振り子運動の一部に沿って回転トルクを増加させるために、前記弾性作動手段と協同する手段をさらに備える。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消することである。
【0007】
特に、本発明の目的の1つは、使用者の最小限の労力で、開放動作と閉鎖動作の両方における翼部の緩やかな動きを可能にする、下向きに曲げる開放動作によって翼部を動かすメカニズムを提供することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、開閉動作の終わりに翼部がたたきつけられるのを抑制するメカニズムを提供することである。
【0009】
本発明のまたさらにもう1つの目的は、製造が簡単で安価であるメカニズムを提供することである。
【0010】
本発明のこれらの目的、および他の目的は、添付の独立請求項1の特徴を有する、下向きに曲げる翼部を動かすメカニズムによって達成される。
【0011】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0012】
実質的に、家具の一方の面に配置されるように設計された、下向きに曲げる開放動作によって家具翼部を動かすメカニズムは、2つのハーフシェル(half-shell)から構成されるボックス内に収容され、複数のレバーを有するヒンジを備えている。前記複数のレバーは翼部を移動させるために、1つのレバーが、他のレバー、ボックスおよび翼部に対して関節結合されている。前記レバーのうちの1つのレバーは、前記ボックス内に形成されたトラック内を摺動することができる。前記レバーのうちの別のレバーは、ボックスに設けられた支点を中心として回転することができ、リニアスライダの前面において、レバーの一方の端部と共に動作する。前記リニアスライダの背面は、ロッカーレバーの一方の端部に作用し、当該ロッカーレバーの他方の端部は、ばねの動きを受ける第2リニアスライダに作用する。前記リニアスライダに取り付けられる2つのダンパにおいて、ダンパ(50)は開放動作中の翼部(6)の下降動作の最終段階を制動し、ダンパ(60)は、閉鎖中の翼部(6)の上昇動作の最終段階を制動する。
【0013】
本発明のさらなる特徴は、添付の図面に描かれた実施形態の1つを参照する以下の詳細な説明により、より具体的になるだろう。ただし、実施形態はこの例に限定されるものではない。
【0014】
図1は、一方の側に本発明に係る動作メカニズムが設けられた、下向きに曲げる開放動作を伴う翼部を有する家具の概略軸測投影図である。
【0015】
図2は
図1の家具の内側の図であり、メカニズム収容ボックスの蓋が取り外され、翼部が開閉中の中間位置にある。
【0016】
【0017】
図4~7は、開閉サイクルにおける翼部の様々な位置を示す、
図2と同様の拡大図よりも小さい縮尺の図である。
【0018】
図1は、家具、例えば台所家具を示しており、全体が参照番号(1)で示されている。当該家具は、下壁または棚(2)と、上壁または棚(3)と、2つの側壁又は側部(4)と、後壁というべき部分(5)と、持ち上げられた位置では家具の内部区画(7)を閉鎖する下向きに曲げる開放動作を伴うタイプの前翼部(6)とからなる、を示す。
【0019】
本発明に係る前記動作メカニズムは、全体として参照番号(100)で示され、家具の側板(side)(4)に取り付けられている。
図1では、メカニズム(100)は、側板(4)の内部に取り付けられ、美観上の理由から、キャップまたは被覆カウンターショルダー(covering counter-shoulder)によって覆われている。メカニズム(100)は、いずれの場合にも、側板(4)の内部に収容することができる。
【0020】
次に、
図2および
図3を参照すると、メカニズム(100)の構造が図示されている。メカニズム(100)の構成要素は、2つのハーフシェル(11および12)から構成されるボックス(10)内に取り付けられる。2つのハーフシェル(11および12)は、以下ではそれぞれベースおよびカバーと呼ばれる。メカニズム(100)は、5つの点(P1、P2、P3、P4、P5)を有するヒンジと、翼部の内側に形成された台座(21)に収容された取り付け具(20)とによって、翼部(6)を動かす。
図1では、この台座(21)は、翼部(6)の両側に示されている。その結果、この台座(21)は、家具(1)の右側または左側、あるいは両側に、メカニズム(100)の取り付け具(20)を取り付けることができる。
【0021】
ヒンジ(C)は、3つのレバー(L1、L2、L3)から構成される。
【0022】
レバー(L1およびL2)は、中間ゾーンに配置された支点(P2)において互いに関節連結されている。レバー(L2)の一端は、レバー(L3)の一端である支点P3において関節連結されており、レバー(L3)の他端は、支点(P4)において取り付け具(20)に関節連結されている。そして、取り付け具(20)は、翼部に固定される。また、レバー(L1)の一端は、支点P5において、翼部(6)に固定された取り付け具(20)に関節状に結合されており、一方、レバー(L1)の他端は、ボックス(10)内に形成されたトラックB内を摺動するピン(27)を保持している。
【0023】
レバー(L2)は、ボックス(10)にもつながれた支点(P1)において関節を成している。
【0024】
支点(P3)に対向するレバー(L2)の端部には、ハーフシェル(11)と(12)との間のボックス(10)内に収容されたスライダ(30)のカム形状(cam profile)(31)に作用するロール(22)がついている。
【0025】
このように構成されたヒンジ(C)は、翼部(6)が動く間、支点(P1)を中心に回転し、ボックス(10)の2つのハーフシェル(11、12)内に形成されたトラック(B)内を摺動するように強制される。
【0026】
トラック(B)は、添付図面では線形として示されている。しかしながら、トラック(B)は、湾曲した形状を有してもよい。実際、支点(P1)の位置およびトラック(B)の形状を変化させることにより、例えばトラック(B)の厚さ(thickness)に基づいて翼部(6)の異なる回転を得ることができる。
【0027】
ここで、前記メカニズムの機能を説明し、各場面において、当該メカニズムを構成する本質的な要素を紹介する。
【0028】
図4~
図7を参照すると、図面にあるように、翼部(6)の下降中、スライダ(30)の前方カム形状(31)に作用するレバーL2のローラー(22)は、前方カム形状(31)を左に直線的に押す。
【0029】
スライダ(30)の後部、すなわちヒンジ(C)から遠位側にある部分も、カム形状(32)を有する。カム形状(32)は、ローラー(33)に作用する。当該ローラー(33)は、点P6においてボックス(10)に対してヒンジ止めされたロッカーレバー(34)の一端に設けられている。ロッカーレバー(34)の他端(35)は、スライダ(40)が備えるローラー(41)を介してスライダ(40)に作用する。
【0030】
スライダ(40)は直線的に移動し、ストライカ(43)に隣接するばね(42)の作用を受けている。ストライカ(43)の位置は、ばねの圧縮および圧縮の結果としてのばねが展開する力を変えるために、ねじ(44)によって調節可能である。その結果、一定の動作範囲内であれば、高さや重量の異なる翼部に適応することができる。
【0031】
翼部(6)に自重が作用して下方に降下する場合、ばね(42)は縮むことになり、その落下に抵抗し、降下速度を減少させる。
【0032】
翼部(6)の落下の最終段階も、スライダ(30)と一体のダンパ(50)の作用によって緩衝される。ダンパ(50)は、小レバー(51)によって操作される。小レバー(51)は、その中間点の1つ(P7)においてボックス(10)にヒンジ止めされている。スライダ(30)が後方に動く間、スライダ(30)は、その後方突起(52)が小レバー(51)の一方の端部に当たる。小レバー(51)は、支点(P7)の周りを回転し、小レバー(51)の他方の端部によってダンパ(50)を圧縮する。これにより、クッション効果を得る。ダンパ(50)の減衰力は、小レバー(51)のレバーアームを変化させることによって変化させることができる。
【0033】
翼部を閉じる間には、反対の効果が得られる。
【0034】
実際、翼部(6)が上昇すると、それまで圧縮されていたばね(42)は、ロッカーレバー(34)に推進力を及ぼす。ロッカーレバー(34)は、右に移動するスライダ(30)を介して、その推進力を翼部に伝達する。これにより、翼部を閉じるために翼部に印加される、持ち上げる力を低減することができる。翼部(6)が完全閉鎖に対して約22°の角度に達すると(
図5)、ばね42の力は翼部の重量が生み出す力を超え、翼部を自動的に閉鎖させる。
【0035】
この閉鎖段階の間、スライダ(30)によって一緒に運ばれる第2のダンパ(60)が干渉する。その結果、第2のダンパ(60)は、閉鎖動作中であってもクッション効果を有する。特に、スライダ(30)が前方(図面において右向き)にスライドすると、スライダ(30)は、ダンパ(60)を一緒に引っ張り、ダンパ(60)のステム(stem)(61)が、ボックス(10)のハーフシェル(11および12)に設けられたストッパ(62)に衝突して、ダンパ(60)を圧縮する。
【0036】
スライダ(30)は、スライダ(30)の中に設けられたスロット(36)によって誘導される。スロット(36)には、ボックス(10)と一体のピン(37)が挿入されている。
【0037】
レバー(L2)は、翼部の閉鎖動作中に(
図5)、スライダ(30)に設けられたピン(28)に対して接触していくビーク状突起(70)を有する。このことは、翼部(6)が激しく閉じられた際に、翼部(6)が家具の一部の上部棚(3)に衝突しないことを意味する。
【0038】
開示されたものから、本発明による下向きに曲げることにより翼部を動かすメカニズムの利点は明らかである。このメカニズムは、開閉時の翼部の緩やかな動きと、開閉の最終段階における翼部の衝撃を和らげることの両方を可能にする。
【0039】
当然のことながら、本発明は、添付の図面において前述され図示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明自体の範囲から逸脱することなく、当業者の手の届く範囲内で多数の詳細な変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】一方の側に本発明に係る動作メカニズムが設けられた、下向きに曲げる開放動作を伴う翼部を有す家具の概略軸測投影図である。
【
図2】
図1の家具の内側の図であり、メカニズム収容ボックスの蓋が取り外され、翼部が開閉中の中間位置にある。
【
図4】開閉サイクルにおける翼部の様々な位置を示す、
図2の拡大図よりも小さい縮尺の図である。
【
図5】開閉サイクルにおける翼部の様々な位置を示す、
図2の拡大図よりも小さい縮尺の図である。
【
図6】開閉サイクルにおける翼部の様々な位置を示す、
図2の拡大図よりも小さい縮尺の図である。
【
図7】開閉サイクルにおける翼部の様々な位置を示す、
図2の拡大図よりも小さい縮尺の図である。