(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 1/02 20060101AFI20230731BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230731BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230731BHJP
C12N 11/10 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
A01N1/02
G01N1/28 J
G01N33/48 Q
C12N11/10
(21)【出願番号】P 2022540543
(86)(22)【出願日】2021-02-20
(86)【国際出願番号】 KR2021002159
(87)【国際公開番号】W WO2021221279
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052920
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518425449
【氏名又は名称】バイオダイン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIODYNE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】24-4,Achasan-ro 5-gil,Seongdong-gu,Seoul 04793, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】イム、ウク ビン
【審査官】新留 豊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0088814(US,A1)
【文献】特表2010-518870(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0116689(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第511430(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
G01N 33/48-33/98
G01N 1/00- 1/44
A01N 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノール水溶液30~60重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、コール酸0.01~0.05重量部、1Nの酢酸水溶液0.05~0.1重量部、ゼラチンと光硬化性タンパク質のうち少なくとも1つの物質5~20重量部を含んでなる、細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアル内に収められた検体(例えば、人体の剥離細胞(exfoliative cells)が安全に遠距離まで搬送できるように検体を安定的に保持する技術に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、バイアル内に収められる検体保存用の液をゼリー状態に切り換えてその漏れを効果的に防ぐことにより、そのバイアル内の検体の変形を防ぐ技術である。
【背景技術】
【0003】
一般に、人体から検体(剥離細胞)を取得した後、その剥離細胞を人間ドック・健診センターにおいて細胞診検査のスライドに塗抹し、その後に剥離細胞の状態を観察し、かつ診断することができる。
【0004】
ここで、人間ドック・健診センターへの訪問が困難な患者の場合には、自ら自分の剥離細胞(検体)を採取し、その後、人間ドック・健診センターまでその剥離細胞が損なわれていない状態で搬送しなければならない。そのために、密閉容器であるバイアル内に検体の保護のための細胞固定溶液を検体とともに入れて人間ドック・健診センターまで搬送することができる。
【0005】
検体の変形を防ぐために、バイアル内に充填される細胞固定溶液は、一般に、水溶液からなる。バイアルを搬送する過程において、バイアルの胴体と蓋体との間の隙間から細胞固定溶液が漏れてしまうことが頻繁に起こり、それにより、検体の変形が起きてしまう可能性がある。
【0006】
このような従来の技術における不都合を解消できる技術の実現が求められている。
一方、本発明と関わる先行文献は、次の通りである。
(1)特許文献1(1992年11月4日)「Cell preservative solution」
(2)特許文献2(2006年4月27日)「Enhanced cell preservative solution and methods for using same」
(3)特許文献3(2003年10月14日)「Normothermic、hypothermic and cryopreservation maintenance and storage of cells、tissues and organs in cell-based media」
(4)特許文献4(2010年6月3日)「Fixation of a biological material」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第0511430号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0088814号明細書
【文献】米国特許第6,632,666号明細書
【文献】特開2010-518870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の事情に鑑みて案出されたものであり、本発明は、バイアル内に収められた検体が安全に遠距離まで搬送できるように検体を安定的に保持することのできる細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物は、メタノール水溶液30~60重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、コール酸(cholic acid)0.01~0.05重量部、1Nの酢酸(acetic acid)水溶液0.05~0.1重量部、ゼラチンと光硬化性タンパク質(gelatin methacryloly)のうち少なくとも1つの物質5~20重量部を含んでいてもよい。
【0010】
また、本発明に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物は、エタノール水溶液40~50重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、2価アルコール類添加剤0.2~1重量部、ゼラチンと光硬化性タンパク質のうち少なくとも1つの物質5~20重量部を含んでいてもよい。
【0011】
さらに、本発明に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物は、メタノール水溶液30~60重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、コール酸0.01~0.05重量部、1Nの酢酸水溶液0.05~0.1重量部、セルロース天然高分子1~100重量部を含んでいてもよい。
【0012】
さらにまた、本発明に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物は、エタノール水溶液40~50重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、2価アルコール類添加剤0.2~1重量部、セルロース天然高分子1~100重量部を含んでいてもよい。
【0013】
さらにまた、本発明に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物は、メタノール水溶液30~60重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、コール酸0.01~0.05重量部、1Nの酢酸水溶液0.05~0.1重量部、アクリルビーズ合成高分子1~100重量部を含んでいてもよい。
【0014】
さらにまた、本発明に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物は、エタノール水溶液40~50重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、2価アルコール類添加剤0.2~1重量部、アクリルビーズ合成高分子1~100重量部を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、選択溶液と選択物質を混合(mixing)することで、バイアルの内側に充填される細胞固定溶液のゼリー化が行われることから、その細胞固定溶液のゼリー化が簡便であるというメリットを示す。
【0016】
また、本発明は、細胞固定溶液のゼリー化により、遠距離搬送の際におけるバイアルからの細胞固定溶液の漏れを防ぐことができるというメリットを示す。
さらに、本発明は、細胞固定溶液が充填されたバイアルの内部に検体を投入する過程が簡便であるというメリットをも示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】検体を収めて搬送するバイアルの例示図である。
【
図2】ゼリー化攪拌器にバイアルが搭載された状態の例示図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物を用いたゼリー化過程を示す手順図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物を用いたゼリー化過程を示す手順図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、検体を収めて搬送する密閉容器であるバイアルの例示図である。
図1を参照すると、バイアル10は、一方の端部が開口された中空状の胴体12と、その胴体12の開口部を開閉する蓋体11と、を備えていてもよい。
【0019】
そのとき、バイアル10に細胞固定溶液を収めた状態で光や酸素に晒されると、アルコール成分が酸化されてしまう現象が起こり兼ねないため、酸化防止剤入りレジンにて射出してバイアル10を作製してもよい。また、バイアル10に光遮断染料を加えて半透明に作製してもよい。
【0020】
なお、細胞固定溶液を収める容器として不透明なポーチ状の梱包材を採用することにより、酸素や光への暴露を遮断してもよい。
一方、検体を採取した刷毛先(図示せず)をバイアル10の内側に収める過程において、細胞固定溶液に浸されていない検体部分が損なわれてしまう虞がある。よって、バイアル10は、刷毛先を完全に収められるほどのサイズに作製されることが好ましい。なお、検体を採取した刷毛先をバイアル10の内側に収めた状態で、そのバイアル10に細胞固定溶液をいっぱいに充填することが好ましい。
【0021】
従来には、水溶液タイプの細胞固定溶液を検体とともにバイアル10に充填する場合、長距離搬送時の漏れに伴う検体の変形といった不都合が生じていた。本発明は、このような不都合を解消するために、その細胞固定溶液をゼリー化できる組成物を提供する。すなわち、細胞固定溶液がゼリー化されれば、漏れや蒸発の可能性が低いことから、検体の本来の状態を保持することができる。
【0022】
本発明の第1の実施形態に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物は、メタノール水溶液30~60重量部、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)0.1~0.2重量部、コール酸(cholic acid)0.01~0.05重量部、1Nの酢酸(acetic acid)水溶液0.05~0.1重量部、ゼラチンと光硬化性タンパク質(gelatin methacryloly)のうち少なくとも1つの物質5~20重量部を含んでいてもよい。
【0023】
このような本発明の第1の実施形態に対して各構成比に応じた物性について実験を行った。その際に、個別の構成要素ごとにその混合組成比率を異ならせながら、当該構成要素が組成物全体の物性に及ぼす影響について実験を行った。
【0024】
表1は、本発明の第1の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、メタノール水溶液に対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0025】
【0026】
表2は、本発明の第1の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、EDTAに対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0027】
【0028】
表3は、本発明の第1の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、コール酸に対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0029】
【0030】
表4は、本発明の第1の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、1N(1ノルマル濃度)の酢酸水溶液に対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0031】
【0032】
表5は、本発明の第1の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、ゼラチンに対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0033】
【0034】
表1~表5において、実施例(A1~A5、B1~B5、C1~C5)では、ゼリー化済みの細胞固定手段の固定能が良好であった。それに対し、比較例(a1~a5、b1~b5)では、バイアル10の内側に検体を固定する能力が強すぎるか、あるいは弱すぎた。それにより、比較例では、バイアル10から検体を取り出して検査する過程(例えば、再溶解)において不都合(例えば、検体の変形)が生じた。
【0035】
本発明の第1の実施形態に関連して、表1~表5の場合よりもさらに多くの実験が行われたが、説明のしやすさのために省略した。
一方、本発明の第1の実施形態において、ゼラチンと光硬化性タンパク質(gelatin methacryloly)のうち少なくとも1つの物質5~20重量部に対しては、セルロース天然高分子(例えば、mecellose、hecellose)1~100重量部またはアクリルビーズ(acryl bead)合成高分子(例えば、methyl methacrylate-co-ethylene glycol dimethacrylate;MMA)1~100重量部に置き換えてもよい。
【0036】
ここで、セルロース天然高分子1~100重量部に対しても、表1~表5のように、残りの構成の混合割合を固定した状態で、1重量部の未満範囲と100重量部の超え範囲を比較例として実験を行ったところ、1~100重量部から外れている領域においては、検体固定能が不良であった。
【0037】
そして、アクリルビーズ合成高分子1~100重量部に対しても、表1~表5のように、残りの構成の混合割合を固定した状態で、1重量部の未満範囲と100重量部の超え範囲を比較例として実験を行ったところ、1~100重量部から外れている領域においては、検体固定能が不良であった。
【0038】
本発明の第2の実施形態に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物は、エタノール水溶液40~50重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、2価アルコール類添加剤0.2~1重量部、ゼラチンと光硬化性タンパク質のうち少なくとも1つの物質5~20重量部を含んでいてもよい。
【0039】
このような本発明の第2の実施形態に対して、各構成比に応じた物性に対して実験を行った。その際に、個別の構成要素ごとにその混合組成比率を異ならせながら、当該構成要素が組成物全体の物性に及ぼす影響について実験を行った。
【0040】
表6は、本発明の第2の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、エタノール水溶液に対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0041】
【0042】
表7は、本発明の第2の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、EDTAに対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0043】
【0044】
表8は、本発明の第2の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、2価アルコール類添加剤に対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0045】
【0046】
表9は、本発明の第2の実施形態において、各構成の混合割合を固定した状態で、ゼラチンに対してのみ混合割合を異ならせて設定した実験条件を示すものである。
【0047】
【0048】
表6~表9において、実施例(A6~A9、B6~B9、C6~C9)では、ゼリー化済みの細胞固定手段の固定能が良好であった。それに対し、比較例(a6~a9、b6~b9)では、バイアル10の内側に検体を固定する能力が強すぎるか、あるいは、弱すぎた。それにより、バイアル10から検体を取り出して検査する過程(例えば、再溶解)において不都合(例えば、検体の変形)が生じた。
【0049】
本発明の第2の実施形態に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物を取得するためにも、表6~表9の場合よりもさらに多くの実験が行われたが、説明のしやすさのために省略した。
【0050】
他方で、本発明の第2の実施形態において、ゼラチンと光硬化性タンパク質(gelatin methacryloly)のうち少なくとも1つの物質5~20重量部に対しては、セルロース天然高分子(例えば、mecellose、hecellose)1~100重量部またはアクリルビーズ(acryl bead)合成高分子(例えば、methyl methacrylate-co-ethylene glycol dimethacrylate;MMA)1~100重量部に置き換えてもよい。
【0051】
ここで、セルロース天然高分子1~100重量部に対しても、表6~表9のように、残りの構成の混合割合を固定した状態で、1重量部の未満範囲と100重量部の超え範囲を比較例として実験を行ったところ、1~100重量部から外れている領域においては、検体固定能が不良であった。
【0052】
そして、アクリルビーズ合成高分子1~100重量部に対しても、表6~表9のように、残りの構成の混合割合を固定した状態で、1重量部の未満範囲と100重量部の超え範囲を比較例として実験を行ったところ、1~100重量部から外れている領域においては、検体固定能が不良であった。
【0053】
図2は、ゼリー化攪拌器にバイアルが搭載された状態の例示図である。
図2を参照すると、本発明において、細胞固定手段をゼリー化するための方法として、ゼリー化攪拌器20を備えていてもよい。
【0054】
まず、ゼリー化攪拌器20のテーブル部材21にバイアル10を据え置きする。その状態で、ゼリー化攪拌器20を操作すれば、テーブル部材21を注入部材22の下部に位置させ、注入部材22から下の方向にゼリー組成物を投下することにより、バイアル10内にゼリー組成物が充填される。
【0055】
また、ゼリー化攪拌器20を操作して、テーブル部材21を
図2の矢印の方向に往復運動させることにより、バイアル10内のゼリー組成物が上手に混ざるようにしてもよい。
以下、
図3と
図4に基づいて、本発明におけるゼリー組成物のゼリー化過程について詳しく説明する。
【0056】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物を用いたゼリー化過程を示す手順図である。
ステップ(S110):まず、メタノール水溶液30~60重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、コール酸(cholic acid)0.01~0.05重量部、1Nの酢酸水溶液0.05~0.1重量部を含む第1の溶液と、エタノール水溶液40~50重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、2価アルコール類添加剤0.2~1重量部を含む第2の溶液とのうちから選ばれたどちらか一方の溶液(以下、「選択溶液」と称する。)をバイアル10に投入する。
【0057】
そのとき、バイアル10は、ゼリー化攪拌器20のテーブル部材21に据え置きされた状態で、注入部材22の鉛直下部に配置されることが好ましい。
ステップ(S120):次いで、ゼラチンと光硬化性タンパク質のうち少なくとも1つの物質5~20重量部、セルロース天然高分子物質1~100重量部、アクリルビーズ合成高分子物質1~100重量部のうちから選ばれたいずれか1種の物質(以下、「選択物質」と称する。)をバイアル10の内側に投入する。
【0058】
ステップ(S130):次いで、1~40℃の温度において、バイアル10内の選択溶液と選択物質とを混合することにより、細胞固定手段をゼリー化する。そのとき、バイアル10を据え置きしたテーブル部材21が
図2の矢印の方向に左右に往復運動するようにゼリー化攪拌器20を調整することにより、バイアル10の選択溶液と選択物質とが上手に混合されるように構成することが好ましい。
【0059】
ここで、ゼリー化する間にバイアル10周辺の温度が1℃未満と低すぎる場合、ゼラチン、光硬化性タンパク質、セルロース天然高分子物質、アクリルビーズ合成高分子はバイアル10内において溶解されないため、細胞固定手段のゲル化もしくはゼリー化が不十分になる。
【0060】
そして、ゼリー化する間にバイアル10周辺の温度が40℃を超えて高すぎる場合、沸点の低いアルコール系成分が蒸発されるため、組成物全体の物性変化を招いて細胞固定手段の検体固定能が強過ぎるか、あるいは弱すぎることになる。
【0061】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る細胞固定用のアルコール系ゼリー組成物を用いたゼリー化過程を示す手順図である。
ステップ(S210):まず、メタノール水溶液30~60重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、コール酸0.01~0.05重量部、1Nの酢酸水溶液0.05~0.1重量部を含む第1の溶液と、エタノール水溶液40~50重量部、EDTA 0.1~0.2重量部、2価アルコール類添加剤0.2~1重量部を含む第2の溶液とのうちから選ばれたどちらか一方の溶液(以下、「選択溶液」と称する。)をバイアル10に投入する。
【0062】
そのとき、バイアル10は、ゼリー化攪拌器20のテーブル部材21に据え置きされた状態で、注入部材22の鉛直下部に配置されることが好ましい。
ステップ(S220):次いで、選択溶液が充填された状態のバイアル10の内側に検体を投入する。
【0063】
ステップ(S230):次いで、1~40℃の温度において、ゼラチンと光硬化性タンパク質のうち少なくとも1つの物質5~20重量部、セルロース天然高分子物質1~100重量部、アクリルビーズ合成高分子物質1~100重量部のうちから選ばれたいずれか1種の物質(以下、「選択物質」と称する。)を選択溶液と検体が投入された状態のバイアル10の内側に投入して細胞固定手段としての選択溶液と選択物質をゼリー化する。
【0064】
そのとき、バイアル10を据え置きしたテーブル部材21が
図2の矢印の方向に左右に往復運動するようにゼリー化攪拌器20を調整することにより、バイアル10の選択溶液と選択物質とが上手に混合される。
【0065】
ここでも、ゼリー化する間にバイアル10周辺の温度が1℃未満と低すぎる場合、ゼラチン、光硬化性タンパク質、セルロース天然高分子物質、アクリルビーズ合成高分子はバイアル10内において溶解されないため、細胞固定手段のゲル化もしくはゼリー化が不十分になる。
【0066】
そして、ゼリー化する間にバイアル10周辺の温度が40℃を超えて高すぎる場合、沸点の低いアルコール系成分が蒸発されるため、組成物全体の物性変化を招いて細胞固定手段の検体固定能が強過ぎたり弱すぎたりする。