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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】蓋付き容器および蓋ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47J 41/00 20060101AFI20230731BHJP
   B65D 51/22 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A47J41/00 304C
B65D51/22 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023000742
(22)【出願日】2023-01-05
【審査請求日】2023-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519344914
【氏名又は名称】浙江和莎科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】朱 海峰
(72)【発明者】
【氏名】楊 懿
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077476(JP,A)
【文献】特開2013-237487(JP,A)
【文献】特開2017-007710(JP,A)
【文献】特開2021-191686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 41/00
B65D 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有する容器体と、前記容器体の前記開口に取り付けられる蓋ユニットとを備える蓋付き容器であって、
前記蓋ユニットは、
前記容器体に対して着脱自在に取り付けられる蓋体と、
前記蓋体の内側に取り付けられ、通気孔を有する中栓と、
前記中栓の前記通気孔と前記蓋体との間に設けられ、前記通気孔を開閉する弁部と、
を備え、
前記蓋体は、
蓋部と、
前記蓋部の裏面から下方に筒状に延出し前記容器体に螺合によって取り付けられる蓋螺合部と、
前記蓋部の裏面の中央から下方に延出する嵌合支持部と、
を有し、
前記中栓は、
前記容器体の前記開口を塞ぐ中栓本体と、
前記中栓本体と前記開口との間を封止するシール部と、
前記中栓本体から上方に筒状に延出し前記嵌合支持部と嵌合する嵌合筒部と、
を有し、
前記通気孔は、上下方向にみて前記中栓本体における前記嵌合筒部の筒内と重なる位置に設けられ、
前記弁部は、前記嵌合支持部の先端に設けられ、
前記容器体の前記開口に前記蓋体を取り付けると、前記蓋体の前記容器体への係合機構による係合動作によって前記弁部と前記通気孔とが互いに密着し、
前記容器体の前記開口に前記蓋体が取り付けられた状態から前記蓋体を取り外す第1段階では、前記蓋体の前記容器体への前記係合機構による係合解除動作によって前記蓋体と前記中栓とが離間して前記弁部と前記通気孔との密着が外れ、
前記第1段階からさらに前記蓋体を取り外す第2段階では、前記蓋体と前記中栓とが共に前記容器体から離間する、蓋付き容器。
【請求項2】
前記蓋体は、前記容器体に螺合によって着脱自在に取り付けられ、
前記中栓は、前記蓋体に嵌合によって着脱自在に取り付けられ、
前記中栓の前記蓋体に対する嵌合は、前記蓋体の前記容器体に対する螺合の回転中心の軸周りに沿った一定範囲の回転を許容する、請求項1記載の蓋付き容器。
【請求項3】
前記中栓は、前記通気孔を有し前記弁部と接する弾性リング部材を有する、請求項1記載の蓋付き容器。
【請求項4】
前記弁部は、前記通気孔に緩嵌する凸部を有する、請求項1記載の蓋付き容器。
【請求項5】
上部に開口を有する容器体の前記開口に取り付けられる蓋ユニットであって、
前記容器体に対して着脱自在に取り付けられる蓋体と、
前記蓋体の内側に取り付けられ、通気孔を有する中栓と、
前記中栓の前記通気孔と前記蓋体との間に設けられ、前記通気孔を開閉する弁部と、
を備え、
前記蓋体は、
蓋部と、
前記蓋部の裏面から下方に筒状に延出し前記容器体に螺合によって取り付けられる蓋螺合部と、
前記蓋部の裏面の中央から下方に延出する嵌合支持部と、
を有し、
前記中栓は、
前記容器体の前記開口を塞ぐ中栓本体と、
前記中栓本体と前記開口との間を封止するシール部と、
前記中栓本体から上方に筒状に延出し前記嵌合支持部と嵌合する嵌合筒部と、
を有し、
前記通気孔は、上下方向にみて前記中栓本体における前記嵌合筒部の筒内と重なる位置に設けられ、
前記弁部は、前記嵌合支持部の先端に設けられ、
前記容器体の前記開口に前記蓋体を取り付けると、前記蓋体の前記容器体への係合機構による係合動作によって前記弁部と前記通気孔とが互いに密着し、
前記容器体の前記開口に前記蓋体が取り付けられた状態から前記蓋体を取り外す第1段階では、前記蓋体の前記容器体への前記係合機構による係合解除動作によって前記蓋体と前記中栓とが離間して前記弁部と前記通気孔との密着が外れ、
前記第1段階からさらに前記蓋体を取り外す第2段階では、前記蓋体と前記中栓とが共に前記容器体から離間する、蓋ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体と蓋ユニットとを備えた蓋付き容器および蓋ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓋付き容器は、例えばステンレスによって筒型に設けられた容器と、容器の開口に着脱自在に設けられる蓋と、を備えている。蓋付き容器には、スープ、ごはん、おかずなど、暖かいものを入れる場合が多い。密閉性の高い蓋付き容器においては、蓋を閉めた状態で入れたものの温度が低くなると容器の内圧が下がり、蓋を外しにくくなることがある。
【0003】
特許文献1には、蓋体を容易に且つ安全に取り外すことを可能とした蓋付き容器が開示される。この蓋付き容器の蓋体は、開口部を覆う外蓋と、開口部から容器本体の内側に嵌め込まれる内蓋と、記内蓋の外周部に取り付けられた状態で、容器本体と内蓋との間を密閉するシール部材と、外蓋の内側中央部に位置して、内蓋の内側に嵌め込まれる中栓と、中栓の底面中央部に位置して、内蓋の中央部に設けられた通気孔を閉塞する栓体とを有する。
【0004】
特許文献2には、上蓋と下蓋とを一体に取り外すことができると共に、容器本体内が減圧状態となっても確実且つ容易に解除することができ、衛生的で保温性能が高い蓋付き容器が開示される。この蓋付き容器は、開口部を有する容器本体と、容器本体と螺合する下蓋と、下蓋に装着される上蓋とからなる蓋付き容器において、下蓋が、中央部に設けられる内外を連通する空気孔と、下部に設けられる容器本体の内面に当接する弾性パッキンとを備え、上蓋が、空気孔に対向する位置に弾性閉塞部を有する空気孔閉塞パッキンを備え、下蓋の内壁または上蓋の外壁の一方には突状の係合部が設けられ、他方には係合部を収容して上蓋の開状態を保持する開状態収納部および閉状態を保持する閉状態収納部を有する溝部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-186014号公報
【文献】特開2014-091568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓋を開ける際に容器体を通気して内部を常圧に戻す弁機構を備えた蓋付き容器においては、使い勝手がよく、確実な弁動作とともに構造の簡素化によるメンテナンスの容易性が求められる。
【0007】
本発明は、容器体の内部が減圧状態であっても容易に蓋を開くことができるとともに、使い勝手がよく、さらには弁機構の構造の簡素化を図ることができる蓋付き容器および蓋ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上部に開口を有する容器体と、容器体の開口に取り付けられる蓋ユニットとを備える蓋付き容器であって、蓋ユニットは、容器体に対して着脱自在に取り付けられる蓋体と、蓋体の内側に取り付けられ、通気孔を有する中栓と、中栓の通気孔と蓋体との間に設けられ、通気孔を開閉する弁部と、を備え、容器体の開口に蓋体を取り付けると、蓋体の容器体への係合機構による係合動作によって弁部と通気孔とが互いに密着し、容器体の開口に蓋体が取り付けられた状態から蓋体を取り外す第1段階では、蓋体の容器体への係合機構による係合解除動作によって蓋体と中栓とが離間して弁部と通気孔との密着が外れ、第1段階からさらに蓋体を取り外す第2段階では、蓋体と中栓とが共に容器体から離間する、蓋付き容器である。
【0009】
このような構成によれば、中栓が蓋体の内側に取り付けられているため、蓋体の着脱と一緒に中栓も着脱可能となる。蓋体を容器体へ取り付ける係合機構による係合動作によって弁部と通気孔とが互いに密着し、蓋体を容器体から外す係合機構による係合解除動作によって弁部と通気孔との密着が外れる。この弁部と通気孔との密着および非密着による弁動作が蓋体と容器体との係合動作および係合解除動作で行われるため、蓋体の容器体への取り付けおよび取り外しのための係合機構が、弁動作を行うための機構と兼用されることになる。また、蓋体を取り外す第1段階で通気孔からの通気が行われて容器体の内部が常圧となり、その後の第2段階で蓋体と中栓とを一緒に外すことができる。
【0010】
上記蓋付き容器において、蓋体は、容器体に螺合によって着脱自在に取り付けられ、中栓は、蓋体に嵌合によって着脱自在に取り付けられ、中栓の蓋体に対する嵌合は、蓋体の容器体に対する螺合の回転中心の軸周りに沿った一定範囲の回転を許容する構成でもよい。このように、中栓の蓋体に対する嵌合が、蓋体の軸周りに沿った一定範囲の回転を許容していることで、蓋体を外す際にこの一定範囲において中栓を残したまま蓋体のみを回転させることができ、これにより中栓と蓋体とが離間して通気孔と弁部との密着が外れることになる。
【0011】
上記蓋付き容器において、蓋体は、蓋部と、蓋部の裏面から下方に筒状に延出し容器体に螺合によって取り付けられる蓋螺合部と、蓋部の裏面の中央から下方に延出する嵌合支持部と、を有し、中栓は、容器体の開口を塞ぐ中栓本体と、中栓本体と開口との間を封止するシール部と、中栓本体から上方に筒状に延出し嵌合支持部と嵌合する嵌合筒部と、を有し、通気孔は、上下方向にみて中栓本体における嵌合筒部の筒内と重なる位置に設けられ、弁部は、嵌合支持部の先端に設けられる構成でもよい。これにより、蓋体は容器体に螺合によって着脱され、この螺合による着脱によって中栓も一緒に着脱される。また、蓋体の容器体への螺合の動作によって弁部と通気孔との密着および非密着の弁動作が行われ、蓋体の螺合の機構が弁動作の機構と兼用される。
【0012】
上記蓋付き容器において、中栓は、通気孔を有し弁部と接する弾性部材を有する構成でもよい。これにより、弾性部材の弾性変形によって通気孔と弁部との密着性が高まる。
【0013】
上記蓋付き容器において、弁部は、通気孔に緩嵌する凸部を有する構成でもよい。これにより、弁部の凸部が通気孔に緩嵌して、蓋体と中栓との相対的な位置合わせが確実に行われる。
【0014】
本発明の他の一態様は、上部に開口を有する容器体の開口に取り付けられる蓋ユニットであって、容器体に対して着脱自在に取り付けられる蓋体と、蓋体の内側に取り付けられ、通気孔を有する中栓と、中栓の通気孔と蓋体との間に設けられ、通気孔を開閉する弁部と、を備え、容器体の開口に蓋体を取り付けると、蓋体の容器体への係合動作によって弁部と通気孔とが互いに密着し、容器体の開口に蓋体が取り付けられた状態から蓋体を取り外す第1段階では、蓋体の容器体への係合解除動作によって蓋体と中栓とが離間して弁部と通気孔との密着が外れ、第1段階からさらに蓋体を取り外す第2段階では、蓋体と中栓とが共に容器体から離間する、蓋ユニットである。
【0015】
このような構成によれば、中栓が蓋体の内側に取り付けられているため、蓋体の着脱と一緒に中栓も着脱可能となる。蓋体を容器体へ取り付ける係合機構による係合動作によって弁部と通気孔とが互いに密着し、蓋体を容器体から外す係合機構による係合解除動作によって弁部と通気孔との密着が外れる。この弁部と通気孔との密着および非密着による弁動作が蓋体と容器体との係合動作および係合解除動作で行われるため、蓋体の容器体への取り付けおよび取り外しのための係合機構が、弁動作を行うための機構と兼用されることになる。また、蓋体を取り外す第1段階で通気孔からの通気が行われて容器体の内部が常圧となり、その後の第2段階で蓋体と中栓とを一緒に外すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器体の内部が減圧状態であっても容易に蓋を開くことができるとともに、蓋体と中栓とを一緒に着脱できて使い勝手がよく、さらには弁機構の構造の簡素化を図ることができる蓋付き容器および蓋ユニットを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る蓋付き容器を例示する斜視図である。
図2】本実施形態に係る蓋付き容器の構成を例示する断面図である。
図3】本実施形態に係る蓋ユニットの構成を例示する分解斜視図(その1)である。
図4】本実施形態に係る蓋ユニットの構成を例示する分解斜視図(その2)である。
図5】本実施形態に係る蓋ユニットの構成を例示する分解断面図である。
図6】蓋ユニットを容器体に取り付けた状態を例示する断面図である。
図7】蓋ユニットを開けた第1段階の状態を例示する断面図である。
図8】蓋ユニットを開けた第2段階の状態を例示する断面図である。
図9】蓋ユニットを外した状態を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0019】
(蓋付き容器の構成)
図1は、本実施形態に係る蓋付き容器を例示する斜視図である。
本実施形態に係る蓋付き容器1は、容器体10と、容器体10に取り付けられる蓋ユニット20と、を備える。容器体10は、例えばステンレスによる二重構造(例えば、真空断熱構造)であって底10bが閉じ、上部が開口10hした筒型に設けられる。なお、本実施形態では、容器体10の開口10hが設けられた側を「上」、容器体10の底10bの側を「下」ということにする。
【0020】
図2は、本実施形態に係る蓋付き容器の構成を例示する断面図である。
図2に示すように、蓋ユニット20は、容器体10に螺合によって着脱自在に取り付けられる。容器体10の上部の開口10hの内周には雄ねじ部10aが設けられる。蓋ユニット20には雄ねじ部10aに対応した雌ねじ部212aが設けられ、雌ねじ部212aが雄ねじ部10aに螺合することで蓋ユニット20が容器体10に取り付けられる。
【0021】
(蓋ユニットの構成)
図3は、本実施形態に係る蓋ユニットの構成を例示する分解斜視図(その1)である。図3には、蓋ユニット20を下からみた分解斜視図が示される。
図4は、本実施形態に係る蓋ユニットの構成を例示する分解斜視図(その2)である。図4には、蓋ユニット20を上からみた分解斜視図が示される。
図5は、本実施形態に係る蓋ユニットの構成を例示する分解断面図である。
【0022】
図3図5に示すように。蓋ユニット20は、容器体10に対して着脱自在に取り付けられる蓋体21と、蓋体21の内側に取り付けられ、通気孔30hを有する中栓22と、中栓22の通気孔30hと蓋体21との間に設けられ、通気孔30hを開閉する弁部30と、を備える。
【0023】
蓋体21は、開口10hを覆う蓋部211と、蓋部211の裏面から下方に筒状に延出する蓋螺合部212と、蓋部211の裏面の中央から下方に延出する嵌合支持部213と、を有する。蓋螺合部212は蓋部211の裏面に固定される。蓋螺合部212は蓋体21と一体成形されていてもよい。蓋螺合部212の外周面には容器体10と螺合される雌ねじ部212aが設けられる。なお、蓋螺合部212の容器体10への螺合は、容器体10の上部外周と、蓋螺合部212における容器体10の上部外周との対向面(蓋螺合部212の内周)との間で行われてもよい。また、蓋螺合部212を設けず、蓋部211の内周と容器体10の外周との間で蓋体21を容器体10に螺合するようにしてもよい。
【0024】
蓋体21の裏面の中央から下方に延出する嵌合支持部213は、中栓22を蓋体21に嵌合するための支持部材である。中栓22は、容器体10の開口10hを塞ぐ中栓本体221と、中栓本体221と開口10hとの間を封止するシール部222と、中栓本体221から上方に筒状に延出する嵌合筒部223と、を有する。嵌合筒部223を嵌合支持部213に嵌合することで中栓22が蓋体21に取り付けられる。
【0025】
嵌合筒部223は中栓本体221の中央部分を上下方向に貫くように設けられる。中栓本体221は嵌合筒部223から放射状に例えばドーム型に広がる形状に設けられ、容器体10の開口10hを覆うように配置される。中栓本体221の周縁にはシール部222が取り付けられる。シール部222は、例えばシリコーンゴムやエラストマーなどの弾性部材からなる。中栓本体221が開口10hを覆うように取り付けられると、シール部222が容器体10の段部10dに当接して中栓本体221の縁と開口10hとの間を密閉する。
【0026】
嵌合筒部223の下方には通気孔30hが設けられる。通気孔30hは、上下方向にみて中栓本体221における嵌合筒部223の筒内と重なる位置に設けられる。本実施形態では、通気孔30hを有する弾性リング部材225が設けられる。弾性リング部材225は、例えばシリコーンゴムやエラストマーなどの弾性部材からなる。後述する弁部30と弾性リング部材225との密着および非密着によって通気孔30hの弁機構が構成される。
【0027】
弁部30は、嵌合支持部213の先端(下端)に設けられる。嵌合支持部213の下面213aが弾性リング部材225と密着すると弁部30によって通気孔30hが塞がれる状態(閉状態)となる。一方、嵌合支持部213の下面213aが弾性リング部材225と非密着になっていると弁部30による通気孔30hを塞ぐ力が弱くなり開状態となる。
【0028】
弁部30は、通気孔30hに緩嵌する(通気孔30hを塞がない程度に緩く嵌まる)凸部31を有することが好ましい。例えば、凸部31を先端側からみた場合、外周の一部は通気孔30hと接し、他部は通気孔30hと接しない(通気孔30hとの間に隙間が生じる)ようになっているとよい。これにより、中栓22を蓋体21に嵌合した際、凸部31と通気孔30hとの間に適度が隙間を設けつつ、蓋体21と中栓22との相対的な位置合わせを確実に行うことができる。
【0029】
図3図5に示すように、蓋ユニット20は、中栓22および蓋体21に分離可能である。蓋体21における蓋螺合部212と嵌合支持部213とはそれぞれ蓋部211に接続(接着、溶着、嵌合、螺合)される。中栓22に取り付けられたシール部222および弾性リング部材225は中栓本体221から取り外すことができる。これにより、シール部222および弾性リング部材225のメンテナンス性(洗浄や交換など)が向上する。
【0030】
(蓋ユニットの組み立て)
蓋ユニット20を組み立てるには、先ず、中栓本体221の縁にシール部222を取り付け、嵌合筒部223の下部に弾性リング部材225を取り付ける。弾性リング部材225は、嵌合筒部223の下部の内周に設けられた凸部223aに嵌め込まれる。これにより、弾性リング部材225の中央孔が通気孔30hとなる。
【0031】
次に、蓋体21に中栓22を嵌合する。すなわち、蓋体21の嵌合支持部213に中栓22の嵌合筒部223を嵌め込む。蓋体21の下方から嵌合筒部223を嵌合支持部213に嵌め込むことで、中栓22が蓋体21と嵌合する。嵌合筒部223には係合片223dが設けられる。一方、嵌合支持部213には突起部213dが設けられる。係合片223dはバネ性を有しているため、嵌合筒部223を嵌合支持部213に嵌め込む途中で係合片223dが突起部213dを乗り越えると、係合片223dと突起部213dとの引っ掛かりによって嵌め込みが完了する。
【0032】
中栓22は蓋体21に対して上下方向の差し込み動作によって蓋体21と嵌合する。中栓22は係合片223dと突起部213dとの引っ掛かりで嵌合しているため、中栓22を蓋体21に対して引っ張り、係合片223dが突起部213dを下方に乗り越えると、中栓22を蓋体21から取り外すことができる。
【0033】
嵌合支持部213の外周面には、周方向の一定範囲に凹部214が設けられる。凹部214の周方向の範囲は、例えば約60°の範囲である。一方、嵌合筒部223の内周面に上下方向に延在する凸部224が設けられる。凸部224の周方向の幅は凹部214の周方向の範囲よりも狭い。中栓22を蓋体21に嵌合すると、嵌合支持部213の凹部214に嵌合筒部の凸部224が係合する。この際、凹部214の周方向の範囲が凸部224の周方向の幅よりも広いため、中栓22は蓋体21に対して回転可能に嵌合する状態となる。つまり、中栓22の蓋体21に対する嵌合は、蓋体21の容器体10に対する螺合の回転中心の軸周りに沿った一定範囲の回転を許容するものである。
【0034】
中栓22の蓋体21に対する回転可能な角度は、凸部224が凹部214の範囲で移動可能な角度である。例えば、凹部214の範囲が周方向の角度で62°、凸部224の幅が周方向の角度で2°の場合、中栓22は蓋体21に対して60°の範囲で回転可能に嵌合される。
【0035】
また、中栓22を蓋体21に嵌合すると、中栓22は蓋体21に対して上下方向に僅かに移動可能である。すなわち、中栓22を蓋体21に嵌め込む際、係合片223dが突起部213dを乗り越えることで嵌合が行われる。この位置からさらに中栓22を押し込むと、嵌合支持部213の下面213aが弾性リング部材225に当接する。つまり、中栓22は、係合片223dが突起部213dを乗り越えた位置から、嵌合支持部213の下面213aが弾性リング部材225に当接する位置まで上下方向に移動可能に嵌合される。
【0036】
なお、蓋部211の裏面に台座部221aを設けておいてもよい。中栓22を蓋体21に嵌め込み、ある程度押し込んだ際、嵌合筒部223の上面223cが台座部221aに当接するように設定しておく。これにより、中栓22を押し込んだ際に嵌合支持部213の下面213aが弾性リング部材225を押し潰し過ぎないようにストッパとしての役目を果たす。また、嵌合筒部223の上面223cが台座部221aに当接することで中栓22を蓋体21に嵌合した際の安定性を得ることができる。
【0037】
(蓋ユニットの容器体への取り付け)
図6は、蓋ユニットを容器体に取り付けた状態を例示する断面図である。
先に説明したように、蓋ユニット20は、蓋体21に中栓22を嵌合した状態となっている。この蓋ユニット20を容器体10に取り付けるには、蓋ユニット20の蓋螺合部212に設けられた雌ねじ部212aを容器体10の開口10hに設けられた雄ねじ部10aと螺合する。
【0038】
この状態で蓋ユニット20を容器体10の開口10hに螺合していくと、やがて中栓本体221の縁に設けられたシール部222が容器体10の段部10dに当接し、中栓本体221と開口10hとの間が密閉される。なお、蓋螺合部212に押圧片212bを設けておき、蓋ユニット20の容器体10への螺合の際、押圧片212bが中栓本体221の縁の上からシール部222を押圧するようにしてもよい。これにより、シール部222による密閉力を高めることができる。また、蓋螺合部212の下端面でシール部222を押圧するようにしてもよい。
【0039】
蓋ユニット20において、蓋体21と中栓22とは回転方向の一定範囲で移動可能に嵌合している。シール部222が段部10dに当接して密着していくと、その密着による抵抗で中栓22の回転が抵抗を受ける。この状態で蓋体21をさらに回転させると、中栓22と蓋体21との間で回転方向の相対位置のずれ(以下、このずれを「蓋回転ずれ」ともいう。)が生じる。この蓋ユニット20を閉める方向での蓋回転ずれの発生によって、蓋体21が中栓22を上から押圧する状態となる。すなわち、この蓋回転ずれによって、螺合による中栓22の下方への移動量よりも蓋体21の下方への移動量のほうが大きくなり、その結果、蓋体21が中栓22を上から押圧することになる。
【0040】
また、この蓋体21が中栓22を上から押圧する動作によって、嵌合支持部213の下面213aが弾性リング部材225に密着し、弁部30による通気孔30hの密閉が行われる。
【0041】
蓋ユニット20を閉める方向での蓋回転ずれは、嵌合筒部223の凸部224が嵌合支持部213の凹部214の一方端に当接する位置で規制される。この位置からさらに蓋ユニット20を閉めていくと、蓋体21は中栓22と一緒に回転することになる。そして、シール部222がある程度潰れる程度まで蓋ユニット20を締め込むことで、蓋ユニット20の取り付けが完了する。蓋ユニット20が取り付けられた状態では、シール部222の段部10dへの密着によって中栓本体221と開口10hとの間の密閉性が確保され、弁部30の通気孔30hへの密着によって通気孔30hの密閉性が確保される。
【0042】
(蓋ユニットの容器体からの取り外し)
次に、蓋ユニット20の容器体10からの取り外しについて説明する。
図7は、蓋ユニットを開けた第1段階の状態を例示する断面図である。
図8は、蓋ユニットを開けた第2段階の状態を例示する断面図である。
図9は、蓋ユニットを外した状態を例示する断面図である。
容器体10に蓋ユニット20を取り付けた状態では、シール部222によって中栓22と開口10hとの間の密閉性が維持され、弁部30によって通気孔30hの密閉性が維持される。容器体10に収容する物が例えば暖かいもの(スープ、ごはん、おかずなど)であり、それが冷めた場合や、容器体10の内外の温度差によって容器体10の内圧が外圧に対して低くなる場合がある。この状態で蓋ユニット20を外すと、次のような動作となる。
【0043】
図7には、蓋ユニット20が閉められた状態から蓋体21を開け始めて一定の範囲までの回転させた状態(第1段階)が示される。第1段階の開動作の範囲は、蓋ユニット20が閉められた状態から開ける方向での蓋回転ずれが発生し、嵌合筒部223の凸部224が嵌合支持部213の凹部214の他方端に当接する位置、すなわち蓋ユニット20を開ける方向での蓋回転ずれが止まるまでの範囲である。
【0044】
蓋ユニット20を開け始めた第1段階において、中栓22に対して蓋体21が相対的に上方に移動することから、通気孔30hに対する弁部30の密着力が弱まる。容器体10の内部は外部に対して減圧状態(負圧)になっているため、中栓22はその負圧によって開口10hを塞いだまま引っ張られており、蓋体21のみが上方に移動することになる。これにより、蓋体21と中栓22とが離間し、嵌合支持部213の下面213aと弾性リング部材225との間に隙間が発生する。これが弁部30の開動作となり、通気孔30hが開いて容器体10の内圧が常圧となる。蓋ユニット20を開ける第1段階においては、弁部30と通気孔30hとは離間するが、段部10dとシール部222とは密着したままの状態である。これにより、蓋ユニット20を開ける際の内容物の漏れを最小限にして、通気をスムーズに行うことができる。
【0045】
図8には、蓋体21を第1段階からさらに開いた第2段階の状態が示される。第2段階の開動作の範囲は、第1段階以降において蓋体21と中栓22とが一緒に外れる範囲である。第2段階においては、嵌合筒部223の凸部224が嵌合支持部213の凹部214の他方端に当接したまま蓋体21を開く方向に回転させるため、蓋回転ずれを起こすことなく蓋体21とともに中栓22も外れていく。蓋ユニット20を開ける第2段階においては、弁部30と通気孔30hとは離間するとともに、段部10dとシール部222とも離間する状態となる。これにより、中栓22は開口10hから外れることになる。
【0046】
図9には、蓋ユニット20が完全に外れた状態が示される。先の第2段階の開動作において蓋体21と中栓22とが一緒に外れるため、そのまま螺合の開動作(外す動作)を続けることで、蓋ユニット20を容器体10から外すことができる。蓋体21と中栓22とが一緒に外れることから使い勝手がよく、蓋ユニット20を外すことで容器体10の開口10hを広く開けて、容器体10に入れたもの(スープ、ごはん、おかずなど)を容易に取り出すことができる。
【0047】
また、例えば弁部30の先端に凸部31が設けられている場合、凸部31が通気孔30hに緩嵌していることから、中栓22を蓋体21に嵌合した際、蓋体21と中栓22との相対的な位置合わせが確実に行われ、中栓22の上下左右へのがたつきを抑制することができる。また、蓋体21を開け閉めする際、通気孔30hに緩嵌している凸部31がガイドとなって蓋体21の上下の動作を安定化させることができる。また、蓋体21を繰り返し開け閉めする際の強度を高めることができる。
【0048】
(第1段階の開動作の他の機構例)
ここで、図7に示す第1段階の開動作の他の機構例について説明する。
第1段階の開動作の他の例においては、嵌合支持部213の凹部214を構成する面のうち上側の面に傾斜面214sを設けておく(図3図5参照)。傾斜面214sは嵌合支持部213の周方向に傾斜した面である。
【0049】
一方、中栓22を蓋体21に嵌合した際、凸部224の上端面224a(図4図5参照)が凹部214の傾斜面214sに当接するように設定しておく。これにより、上端面224aと傾斜面214sとの当接位置によって蓋体21と中栓22との上下方向の距離が変化することになる。
【0050】
このような傾斜面214sおよび上端面224aを設けた構成において第1段階の開動作を行うと、蓋ユニット20を開ける方向での蓋回転ずれが生じる際、嵌合筒部223の凸部224が嵌合支持部213の凹部214の他方端に当接するまでの間、上端面224aと傾斜面214sとの当接位置が変化して、蓋体21が上方に押圧される。すなわち、蓋回転ずれの発生により蓋体21の回転位置に応じて上端面224aと傾斜面214sとの相対的な位置が変化し、蓋体21を開ける方向に回転するにしたがい、蓋体21が中栓22に対して押し上げられ、蓋体21と中栓22とが徐々に離間していくことになる。これにより、嵌合支持部213の下面213aと弾性リング部材225との間に隙間が発生し(弁部30の開動作)、通気孔30hが開いて容器体10の内圧が常圧となる。
【0051】
また、凸部224の上端面224aと凹部214の傾斜面214sとの当接による機構は、蓋体21を閉める動作において作用する。蓋体21を閉める際には開ける際とは反対方向の蓋回転ずれが発生する。この蓋回転ずれの発生により蓋体21の回転位置に応じて上端面224aと傾斜面214sとの相対的な位置が変化し、蓋体21を閉める方向に回転するにしたがい、蓋体21が中栓22の方向に下げられ、蓋体21と中栓22とが徐々に接近していくことになる。これにより、嵌合支持部213の下面213aと弾性リング部材225とが密着して、弁部30の閉動作が行われる。
【0052】
凸部224の上端面224aと凹部214の傾斜面214sとの当接による機構は、蓋体21と容器体10との係合機構(例えば、雄ねじ部10aと雌ねじ部212aとの螺合機構)による係合動作および係合解除動作での弁部30の弁動作を補う役目を成す。この機構において、凹部214は嵌合支持部213の側面を上下方向に一定の深さで切り欠き、上側の面を傾斜させるだけであり、この傾斜面214sに凸部224の上端面224aと当接させるといった簡単な機構で実現することができる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、蓋体21を容器体10へ取り付ける係合機構による係合動作によって弁部30と通気孔30hとが互いに密着し、蓋体21を容器体10から外す係合機構による係合解除動作によって弁部30と通気孔30hとの密着が外れるようになる。この弁部30と通気孔30hとの密着および非密着による弁動作が蓋体21と容器体10との係合動作(例えば、螺合による取り付け動作)および係合解除動作(例えば、螺合による取り外し動作)で行われるため、蓋体21の容器体10への取り付けおよび取り外しのための機構(例えば、雄ねじ部10aと雌ねじ部212aとの螺合機構)が、弁動作を行うための機構と兼用されることになる。また、蓋体21を取り外す第1段階での蓋回転ずれによって通気孔30hが開き、通気が行われて容器体10の内部が常圧となり、その後の第2段階では蓋回転ずれなく蓋体21と中栓22とを一緒に外して、開口10hを広く開けることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、容器体10の内部が外部に対して減圧状態であっても容易に蓋ユニット20を開くことができるとともに、蓋体21と中栓22とを一緒に着脱できて使い勝手がよく、さらには蓋ユニット20の容器体10への係合のための機構が弁機構の動作の機構と兼用されることから、弁機構の構造の簡素化を図ることが可能になる。
【0055】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、本実施形態では通気孔30hを有する弾性リング部材225を設け、弾性リング部材225に弁部30を密着させる構成を示したが、弾性リング部材225を設けず、中栓本体221に設けた通気孔30hに弁部30を密着させる構成でもよい。また、蓋体21と容器体10との係合機構として螺合を例としたが、螺合以外の嵌合であっても適用可能である。また、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る蓋付き容器1および蓋ユニット20は、スープや食べ物以外でも、液体、粉体、固体、クリーム状のものなど、各種の容器としても好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…蓋付き容器
10…容器体
10a…雄ねじ部
10b…底
10d…段部
10h…開口
20…蓋ユニット
21…蓋体
22…中栓
30…弁部
30h…通気孔
31…凸部
211…蓋部
212…蓋螺合部
212a…雌ねじ部
212b…押圧片
213…嵌合支持部
213a…下面
213d…突起部
214…凹部
214s…傾斜面
221…中栓本体
221a…台座部
222…シール部
223…嵌合筒部
223a…凸部
223c…上面
223d…係合片
224…凸部
224a…上端面
225…弾性リング部材
【要約】
【課題】容器体が減圧状態であっても容易に蓋を開くことができ、弁機構の構造の簡素化を図ることができる蓋付き容器および蓋ユニットを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、上部に開口を有する容器体と、容器体の開口に取り付けられる蓋ユニットとを備える蓋付き容器であって、蓋ユニットは、容器体に対して着脱自在に取り付けられる蓋体と、蓋体の内側に取り付けられ、通気孔を有する中栓と、中栓の通気孔と蓋体との間に設けられ、通気孔を開閉する弁部と、を備え、容器体の開口に蓋体を取り付けると、蓋体の容器体への係合動作によって弁部と通気孔とが互いに密着し、容器体の開口に蓋体が取り付けられた状態から蓋体を取り外す第1段階では、蓋体の容器体への係合解除動作によって蓋体と中栓とが離間して弁部と通気孔との密着が外れ、第1段階からさらに蓋体を取り外す第2段階では、蓋体と中栓とが共に容器体から離間する蓋付き容器である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9