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特許7321637ノズルメンテナンス方法、ノズル検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ノズルメンテナンス方法、ノズル検査装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
H05K13/08 Z
H05K13/08 Q
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019011876
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020120058
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 聖也
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-183164(JP,A)
【文献】特開2013-002910(JP,A)
【文献】特開2000-055834(JP,A)
【文献】特開2007-035872(JP,A)
【文献】特開2003-249797(JP,A)
【文献】特開2018-137288(JP,A)
【文献】特開平10-013093(JP,A)
【文献】特開2006-310816(JP,A)
【文献】特開2006-220640(JP,A)
【文献】特開2018-128401(JP,A)
【文献】特開2004-340583(JP,A)
【文献】特開2013-117548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装ヘッドに装着されたノズルに貫通して設けられた吸着孔に負圧を与えることで前記ノズルにより吸着した部品を前記実装ヘッドにより基板に実装する部品実装機で用いられる前記ノズルにX線を照射しつつ前記ノズルを撮像することでノズルX線画像を取得するX線撮像を実行する工程と、
前記吸着孔の内側の異物の有無を前記ノズルX線画像に基づき判定するX線検査を実行する工程と
を備えたノズルメンテナンス方法。
【請求項2】
前記X線検査では、前記ノズルと同一種類であって異物が付着していない良品ノズルにX線を照射しつつ前記良品ノズルを撮像することで取得された良品X線画像と、前記ノズルX線画像との比較に基づき、前記吸着孔の内側の異物の有無を判定する請求項1に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項3】
前記ノズルX線画像の取得の前に予め前記良品X線画像を取得する請求項2に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項4】
前記ノズルの表面で反射される前記X線と異なる波長の照明を前記ノズルに照射して前記ノズルの外観画像を撮像する外観撮像を実行する工程と、
前記ノズルにおける異常の有無を前記外観画像に基づき判定する外観検査を実行する工程と
を、前記X線撮像の前に実行し、
前記外観検査で異常がないと判定された前記ノズルに対して、前記X線撮像および前記X線検査を実行する請求項1ないし3のいずれか一項に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項5】
前記外観撮像では、前記ノズルの二次元画像を前記外観画像として撮像する請求項4に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項6】
前記外観撮像では、前記吸着孔の開口から前記吸着孔の内側に前記照明を照射しつつ前記吸着孔の内側を撮像することで、前記二次元画像を撮像し、
前記外観検査では、前記ノズルの前記吸着孔の内側における異物の有無を前記二次元画像に基づき判定することで、前記ノズルにおける異常の有無を判定する請求項5に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項7】
前記外観撮像では、前記ノズルの三次元画像を前記外観画像として撮像する請求項4に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項8】
前記外観撮像では、前記ノズルをノズルホルダーにより保持することで前記ノズルの姿勢を固定した状態で、所定の方向から前記ノズルを撮像する請求項4ないし7のいずれか一項に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項9】
前記ノズルホルダーは、互いに異なる複数の姿勢のそれぞれで前記ノズルを保持可能であり、
前記外観撮像では、前記ノズルホルダーにより前記ノズルの姿勢を前記複数の姿勢の間で変更しつつ、前記各姿勢で前記ノズルを撮像する請求項8に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項10】
前記部品実装機は、前記基板を搬送する基板搬送部と、前記部品を供給する部品供給部とをさらに有し、
前記実装ヘッドは、前記部品供給部により供給された前記部品を前記ノズルにより吸着することで、前記基板搬送部に支持される前記基板に実装し、
前記基板搬送部が前記ノズルホルダーを搬入すると、前記実装ヘッドが前記ノズルを前記ノズルホルダーに移載し、前記基板搬送部が前記ノズルの移載された前記ノズルホルダーを搬出する請求項8または9に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項11】
前記部品実装機は、前記ノズルを保管するノズル保管部をさらに有し、前記実装ヘッドは、前記ノズルホルダーに前記ノズルを移載すると、前記ノズル保管部で保管された前記ノズルを装着する請求項10に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項12】
前記部品実装機での前記ノズルの使用状態に応じて、前記X線撮像および前記X線検査を開始するタイミングを決定する請求項1ないし11のいずれか一項に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項13】
前記部品実装機で使用中の前記ノズルが前記部品を吸着する際に前記ノズルに生じる負圧の変化に応じて、前記X線撮像および前記X線検査を開始するタイミングを決定する請求項12に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項14】
前記X線検査において前記吸着孔の内側に異物が確認された前記ノズルを洗浄するノズル洗浄を実行する工程をさらに備えた請求項1ないし13のいずれか一項に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項15】
前記X線撮像では、複数のノズルを撮像した前記ノズルX線画像を取得し、
前記X線検査では、前記複数のノズルのそれぞれについて、前記吸着孔の内側の異物の有無を判定し、
前記ノズル洗浄では、前記複数のノズルのうち、前記X線検査において前記吸着孔の内側に異物が確認された前記ノズルを選択的に洗浄する請求項14に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項16】
前記X線撮像では、複数のノズルを撮像した前記ノズルX線画像を取得し、
前記X線検査では、前記複数のノズルのそれぞれについて、前記吸着孔の内側の異物の有無を判定し、
前記複数のノズルのうちの一部について前記X線検査において前記吸着孔の内側に異物が確認されると、前記ノズル洗浄では、前記複数のノズルの全てを洗浄する請求項14に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項17】
前記ノズルを洗浄するノズル洗浄を実行する工程をさらに備え、
前記X線撮像および前記X線検査は、前記ノズル洗浄が実行された前記ノズルに対して実行され、
前記X線検査において前記吸着孔の内側に異物が確認されると、前記ノズルの異常を作業者に報知する請求項1ないし13のいずれか一項に記載のノズルメンテナンス方法。
【請求項18】
実装ヘッドに装着されたノズルに貫通して設けられた吸着孔に負圧を与えることで前記ノズルにより吸着した部品を前記実装ヘッドにより基板に実装する部品実装機で用いられる前記ノズルにX線を照射しつつ前記ノズルを撮像することでノズルX線画像を取得する撮像部と、
前記吸着孔の内側の異物の有無を前記ノズルX線画像に基づき判定する判定部と
を備えたノズル検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルにより吸着した部品を基板に実装する部品実装機で用いられるノズルをメンテナンスする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装機では、部品の保持のためにノズルが用いられる。このノズルには吸着孔が貫通して形成されており、吸着孔に与えられた負圧を利用してノズルに部品を吸着することで、部品がノズルに保持される。ところで、ノズルの使用に伴って、半田ペースト等の異物がノズルの吸着孔の内側に付着すると、ノズルの吸着孔に十分な負圧が発生せず、ノズルにより部品を保持することが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-183164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、特許文献1では、ノズルを撮像した画像に基づき、ノズルの吸着孔の内側に付着した異物を検知することで、ノズルが使用に適するか否かを判定している。しかしながら、特許文献1に示される手法で撮像した画像により、ノズルの吸着孔の内側の状態を十分に捉えることは必ずしも容易ではなく、異物の有無を的確に判定できない場合があった。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、部品吸着に用いられるノズルの吸着孔の内側における異物の有無を的確に判定することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るノズルメンテナンス方法は、実装ヘッドに装着されたノズルに貫通して設けられた吸着孔に負圧を与えることでノズルにより吸着した部品を実装ヘッドにより基板に実装する部品実装機で用いられるノズルにX線を照射しつつノズルを撮像することでノズルX線画像を取得するX線撮像を実行する工程と、吸着孔の内側の異物の有無をノズルX線画像に基づき判定するX線検査を実行する工程とを備える。
【0007】
本発明に係るノズル検査装置は、実装ヘッドに装着されたノズルに貫通して設けられた吸着孔に負圧を与えることでノズルにより吸着した部品を実装ヘッドにより基板に実装する部品実装機で用いられるノズルにX線を照射しつつノズルを撮像することでノズルX線画像を取得する撮像部と、吸着孔の内側の異物の有無をノズルX線画像に基づき判定する判定部とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(ノズルメンテナンス方法、ノズル検査装置)では、ノズルにX線を照射しつつノズルを撮像することでノズルX線画像が取得される。そして、吸着孔の内側の異物の有無がノズルX線画像に基づき判定される。したがって、部品吸着に用いられるノズルの吸着孔の内側における異物の有無を的確に判定することが可能となっている。
【0009】
また、X線検査では、ノズルと同一種類であって異物が付着していない良品ノズルにX線を照射しつつ良品ノズルを撮像することで取得された良品X線画像と、ノズルX線画像との比較に基づき、吸着孔の内側の異物の有無を判定するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、良品ノズルにX線を照射しつつ良品ノズルを撮像した良品X線画像に基づき、部品吸着に用いられるノズルの吸着孔の内側における異物の有無を的確に判定することができる。
【0010】
また、ノズルX線画像の取得の前に予め良品X線画像を取得するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。これによって、ノズルX線画像の取得後、速やかに異物の有無の判定を実行できる。
【0011】
また、ノズルの表面で反射されるX線と異なる波長の照明をノズルに照射してノズルの外観画像を撮像する外観撮像を実行する工程と、ノズルにおける異常の有無を外観画像に基づき判定する外観検査を実行する工程とを、X線撮像の前に実行し、外観検査で異常がないと判定されたノズルに対して、X線撮像およびX線検査を実行するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、ノズルの外観画像に基づく判定の結果、異常が確認されたノズルは、X線撮像およびX線検査の対象から外される。したがって、X線を用いたノズルの検査の実行頻度を抑えることができる。
【0012】
また、外観撮像では、ノズルの二次元画像を外観画像として撮像するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、比較的容易に取得可能な二次元画像に基づき、ノズルの外観検査を実行できる。
【0013】
また、外観撮像では、吸着孔の開口から吸着孔の内側に照明を照射しつつ吸着孔の内側を撮像することで、二次元画像を撮像し、外観検査では、ノズルの吸着孔の内側における異物の有無を二次元画像に基づき判定することで、ノズルにおける異常の有無を判定するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、ノズルの外観画像に基づく判定の結果、吸着孔の内側に異物が確認されたノズルは、X線撮像およびX線検査の対象から外される。したがって、X線を用いたノズルの検査の実行頻度を抑えることができる。
【0014】
また、外観撮像では、ノズルの三次元画像を外観画像として撮像するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、ノズルの立体的形状に基づき、ノズルの異常の有無を的確に判定することができる。
【0015】
また、外観撮像では、ノズルをノズルホルダーにより保持することでノズルの姿勢を固定した状態で、所定の方向からノズルを撮像するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、ノズルホルダーによってノズルの姿勢を安定させつつ、適切なノズルの外観画像を撮像することができる。
【0016】
また、ノズルホルダーは、互いに異なる複数の姿勢のそれぞれでノズルを保持可能であり、外観撮像では、ノズルホルダーによりノズルの姿勢を複数の姿勢の間で変更しつつ、各姿勢でノズルを撮像するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、複数の角度からノズルを撮像して得られた外観画像に基づき、ノズルの異常の有無を的確に判定することができる。
【0017】
また、部品実装機は、基板を搬送する基板搬送部と、部品を供給する部品供給部とをさらに有し、実装ヘッドは、部品供給部により供給された部品をノズルにより吸着することで、基板搬送部に支持される基板に実装し、基板搬送部がノズルホルダーを搬入すると、実装ヘッドがノズルをノズルホルダーに移載し、基板搬送部がノズルの移載されたノズルホルダーを搬出するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、検査対象となるノズルの部品実装機からの搬出に、基板搬送用の基板搬送部を用いることができる。よって、ノズルの搬出に要する機構を別途設ける必要が無く、部品実装機の構成の複雑化を抑制することができる。
【0018】
また、部品実装機は、ノズルを保管するノズル保管部をさらに有し、実装ヘッドは、ノズルホルダーにノズルを移載すると、ノズル保管部で保管されたノズルを装着するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、検査対象となるノズルが実装ヘッドから外されると、ノズル保管部に保管されていた別のノズルが実装ヘッドに装着される。したがって、部品実装の中断時間を短く抑えつつ、ノズルの検査を実行することができる。
【0019】
また、部品実装機でのノズルの使用状態に応じて、X線撮像およびX線検査を開始するタイミングを決定するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、ノズルの使用状態に応じた適切なタイミングで、X線撮像およびX線検査を開始できる。
【0020】
また、部品実装機で使用中のノズルが部品を吸着する際にノズルに生じる負圧の変化に応じて、X線撮像およびX線検査を開始するタイミングを決定するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、ノズルの吸着孔の内側に異物が付着したことでノズルに生じる負圧が変化すると、このノズルに対してX線撮像およびX線検査を速やかに開始することができる。
【0021】
また、X線検査において吸着孔の内側に異物が確認されたノズルを洗浄するノズル洗浄を実行する工程をさらに備えるように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、X線検査において吸着孔の内側に異物が確認されると、この異物をノズルから速やかに取り除くことができる。
【0022】
また、X線撮像では、複数のノズルを撮像したノズルX線画像を取得し、X線検査では、複数のノズルのそれぞれについて、吸着孔の内側の異物の有無を判定し、ノズル洗浄では、複数のノズルのうち、X線検査において吸着孔の内側に異物が確認されたノズルを選択的に洗浄するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、ノズル洗浄が必要なノズルに対して選択的にノズル洗浄を実行することができる。
【0023】
また、X線撮像では、複数のノズルを撮像したノズルX線画像を取得し、X線検査では、複数のノズルのそれぞれについて、吸着孔の内側の異物の有無を判定し、複数のノズルのうちの一部についてX線検査において吸着孔の内側に異物が確認されると、ノズル洗浄では、複数のノズルの全てを洗浄するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、複数のノズルのうちから、異物が付着したノズルのみを選択する作業を省略することができ、ノズル洗浄を速やかに開始することができる。
【0024】
また、ノズルを洗浄するノズル洗浄を実行する工程をさらに備え、X線撮像およびX線検査は、ノズル洗浄が実行されたノズルに対して実行され、X線検査において吸着孔の内側に異物が確認されると、ノズルの異常を作業者に報知するように、ノズルメンテナンス方法を構成しても良い。かかる構成では、ノズル洗浄を行ったにも拘わらずノズルの吸着孔に異物が付着したままである場合には、作業者にこれを報知することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、部品吸着に用いられるノズルの吸着孔の内側における異物の有無を的確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るノズルメンテナンス方法を実行する基板生産システムの一例を示すブロック図。
図2】部品実装機を模式的に示す平面図。
図3】外観検査機を模式的に例示するブロック図。
図4】X線検査機を模式的に例示するブロック図。
図5図1の基板生産システムで実行されるノズルメンテナンスの第1例を示すフローチャート。
図6図1の基板生産システムで実行されるノズルメンテナンスの第2例を示すフローチャート。
図7】ノズルの外観撮像・検査の変形例で使用されるノズルホルダーの構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明に係るノズルメンテナンス方法を実行する基板生産システムの一例を示すブロック図である。図1および以下に示す図では、XYZ直交座標を適宜示す。ここで、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0028】
基板生産システム1は、基板に部品を実装する基板生産を実行するシステムであり、システム全体を制御する制御装置10を備える。この制御装置10は、例えばパーソナルコンピューターであり、基板生産システム1で実行される動作の制御の他、UI(User Interface)を介した作業者への報知を実行する。
【0029】
また、基板生産システム1は、基板生産に使用されるノズルN(図3図4)のメンテナンスを行うメンテナンスユニット11を備える。このメンテナンスユニット11は、洗浄機2、X線検査機4および外観検査機6を有する。洗浄機2は、ノズルNに対して超音波洗浄を実行し、X線検査機4および外観検査機6は、洗浄機2でのノズルNの洗浄の要否を判定するための検査を実行する。メンテナンスユニット11は、洗浄機2とX線検査機4との間に配置された一対のコンベア12と、X線検査機4と外観検査機6との間に配置された一対のコンベア13とを有し、コンベア12は、洗浄機2とX線検査機4との間でノズルNを搬送し、コンベア13は、X線検査機4と外観検査機6との間でノズルNを搬送する。つまり、洗浄機2、X線検査機4および外観検査機6の間では、コンベア12、13を介してノズルホルダー9を搬送することができる。
【0030】
さらに、基板生産システム1は、ノズルNを用いて部品を基板に実装する部品実装機8を備える。図2は部品実装機を模式的に示す平面図である。部品実装機8は、装置全体を統括的に制御する実装制御部81を備える。実装制御部81は、演算部811、駆動制御部812、負圧制御部813および通信部814を有する。演算部811は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)で構成されたプロセッサーであり、部品実装機8における演算機能を担う。駆動制御部812は部品実装機8の駆動系を制御し、負圧制御部813はノズルNに与える負圧を制御する。また、通信部814は外部の装置(洗浄機2、X線検査機4、外観検査機6、制御装置10)と通信を行う。
【0031】
部品実装機8は、基板BをX方向(基板搬送方向)に搬送する基板搬送部82を備える。この基板搬送部82は、X方向に並列に配置された一対のコンベア821を有し、コンベア821によって基板BをX方向に搬送する。これらコンベア821の間隔は、X方向に直交するY方向(幅方向)に変更可能であり、基板搬送部82は、搬送する基板Bの幅に応じてコンベア821の間隔を調整する。この基板搬送部82は、基板搬送方向であるX方向の上流側から所定の実装作業位置822に基板Bを搬入するとともに、実装作業位置822で部品Cが実装された基板Bを実装作業位置822からX方向の下流側に搬出する。
【0032】
基板搬送部82のY方向の両側それぞれでは2つの部品供給部83がX方向に並んでおり、各部品供給部83では、複数のテープフィーダー831がX方向に並ぶ。部品供給部83では、X方向に並ぶ複数の部品供給位置832が設けられており、各部品供給位置832に供給すべき部品Cを供給するテープフィーダー831が、各部品供給位置832に対応付けられて着脱可能に装着される。各テープフィーダー831に対しては、集積回路、トランジスター、コンデンサー等の小片状の部品Cを所定間隔おきに収容したキャリアテープが巻き付けられた部品供給リールが配置されており、各テープフィーダー831は部品供給リールから引き出されたキャリアテープを間欠的に送り出すことで、その先端部の部品供給位置832に部品Cを供給する。
【0033】
また、部品実装機8では、Y方向に延設された一対のY軸レール841と、Y方向に延設されたY軸ボールネジ842と、Y軸ボールネジ842を回転駆動するY軸モーター843とが設けられている。そして、X方向に延設されたX軸ビーム844が一対のY軸レール841にY方向に移動可能に支持された状態で、Y軸ボールネジ842のナットに固定されている。X軸ビーム844には、X方向に延設されたX軸ボールネジ845と、X軸ボールネジ845を回転駆動するX軸モーター846とが取り付けられており、ヘッドユニット85がX軸ビーム844にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ845のナットに固定されている。したがって、駆動制御部812は、Y軸モーター843によりY軸ボールネジ842を回転させてヘッドユニット85をY方向に移動させたり、X軸モーター846によりX軸ボールネジ845を回転させてヘッドユニット85をX方向に移動させたりすることができる。
【0034】
ヘッドユニット85は、X方向に直線状に並ぶ複数の実装ヘッド851を有する。各実装ヘッド851は、互いに独立してZ方向およびR方向へ可動である。ここで、R方向はZ方向に平行な回転軸を中心に回転する方向である。したがって、駆動制御部812は、Z軸モーター(不図示)により実装ヘッド851をZ方向に昇降させたり、R軸モーター(不図示)により実装ヘッド851をR方向に回転させたりすることができる。
【0035】
ヘッドユニット85が有する各実装ヘッド851は、その下端に着脱可能に装着されたノズルNにより、基板Bへの部品Cの実装を行う。つまり、実装ヘッド851は、その下端のノズルNを部品供給位置832の上方に位置させつつノズルNを下降させることで、テープフィーダー831が部品供給位置832に供給する部品CにノズルNを当接させる。そして、実装ヘッド851は、ノズルN内に負圧を与えてノズルNにより部品Cを吸着すると、ノズルNを上昇させる。実装ヘッド851は、こうして部品供給位置832からピックアップした部品CをノズルNによって吸着・保持しつつ、実装作業位置822の基板Bの上方へ移動する。そして、実装ヘッド851は、ノズルNを下降させて部品Cを基板Bに接触させると、ノズルNの負圧を解除して、部品Cを基板Bに載置する。この間、ノズルNへ与える負圧は、負圧制御部813により制御される。このように、部品実装機8では、部品Cを供給する部品供給部83と実装作業位置822との間を移動する実装ヘッド851を用いて、部品供給部83から実装作業位置822の基板Bに部品Cを移載する部品実装が実行される。
【0036】
また、部品実装機8は、実装ヘッド851に装着されるノズルNを変更するノズルチェンジャー86を有する。このノズルチェンジャー86は、複数のノズル保管孔861を有し、各ノズル保管孔861は、実装ヘッド851に装着されるノズルNの姿勢である起立姿勢でノズルNを保管する。ノズルNがその下端に装着されていない実装ヘッド851は、ノズル保管孔861に保管されたノズルNの上方に移動してから下降することで、その下端にノズルNを装着することができる。また、ノズルNがその下端に装着された実装ヘッド851は、空のノズル保管孔861の上方に移動してから下降することでノズル保管孔861にノズルNを挿入してから、ノズルNの装着を解除して、その下端からノズル保管孔861にノズルNを外すことができる。
【0037】
図3は外観検査機を模式的に例示するブロック図である。図3の外観検査機6は、X方向に並列に配置された一対のコンベア61、検査ヘッド62、ヘッド駆動機構63および外観検査制御部64を備え、ノズルNの外観画像に基づきノズルNを検査する。
【0038】
ノズルNには、吸着孔Nhが貫通しており、上述の部品実装機8の実装ヘッド851は、ノズルNの吸着孔Nhに負圧を与えることで、ノズルNにより部品Cを吸着する。このノズルNは、ノズルホルダー9により保持された状態で、外観検査機6に搬入される。ノズルホルダー9は、ノズル保持孔91が開口した保持プレート92を有し、保持プレート92は、ノズル保持孔91に押し込まれたノズルNを起立姿勢で保持する。こうしてノズルホルダー9により保持されたノズルNの吸着孔Nhは、Z方向に平行となり、ノズルNの上端および下端のそれぞれで開口する。
【0039】
コンベア61は、ノズルNを保持するノズルホルダー9をX方向に搬送する。具体的には、コンベア61は、ノズルホルダー9を外観検査機6内の検査位置に搬入し、ノズルホルダー9を検査位置で保持する。こうして、起立姿勢でノズルNを保持するノズルホルダー9が検査位置に固定される。そして、ノズルホルダー9に保持されるノズルNの外観検査が終了すると、コンベア61は、ノズルホルダー9を検査位置から外観検査機6の外へ搬出する。
【0040】
検査ヘッド62は、撮像視野V内を上方から撮像する撮像カメラ621を有しており、検査位置のノズルホルダー9に保持されたノズルNを撮像視野Vに収めて撮像カメラ621によって撮像する。さらに、検査ヘッド62は、撮像視野Vに対して可視光を照射する照明624を有する。そして、ノズルNに対して撮像カメラ621を上方から対向させた状態で、照明624から可視光をノズルNに照射しつつ、ノズルNで反射された光を撮像カメラ621により撮像する。これによって、起立姿勢のノズルNの外観を上方から撮像することができる。
【0041】
ヘッド駆動機構63は、検査ヘッド62を支持しつつ、モーターによって水平方向および鉛直方向へ検査ヘッド62を駆動する。このヘッド駆動機構63の駆動によって、検査ヘッド62はノズルNの上方に移動して、ノズルNを撮像することができる。
【0042】
外観検査制御部64は、CPUやRAMで構成されたプロセッサーである演算部641を有しており、演算部641が装置各部の制御を統括することで、検査が実行される。この外観検査制御部64は、照明624を制御する照明制御部642、撮像カメラ621を制御する撮像制御部643、コンベア61およびヘッド駆動機構63を制御する駆動制御部644、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶部645および外部の装置(洗浄機2、X線検査機4、部品実装機8、制御装置10)と通信を行う通信部646を有する。
【0043】
コンベア61が検査位置にノズルホルダー9を搬入すると、演算部641は、駆動制御部644によりヘッド駆動機構63を制御して、ノズルホルダー9に保持されるノズルNの上方へ検査ヘッド62を移動させる。これによって、撮像カメラ621の撮像視野V内にノズルNが収まる。続いて、演算部641は、撮像視野V内のノズルNへ照明624から可視光を照射しつつノズルNで反射された光を撮像カメラ621により撮像する。こうして、起立姿勢のノズルNを上方から撮像した二次元画像がノズルNの実測外観画像Iamとして取得される。
【0044】
この実測外観画像Iamは、記憶部645に保存される。また、記憶部645には、ノズルホルダー9に保持された検査対象のノズルNと同一種類であって、異常を有さない良品ノズルを予め撮像する外観事前撮像により取得された良品外観画像Iagが保存されている。この外観事前撮像は、検査位置のノズルホルダー9により起立姿勢で保持された良品ノズルを上方から撮像し、良品外観画像Iagと実測外観画像Iamとは同一の撮像条件で取得される。
【0045】
そして、演算部641は、実測外観画像Iamと良品外観画像Iagとを比較した結果に基づき、実測外観画像Iamが示すノズルNに異常があるか否かを判定する。具体的には、ノズルNの欠損やノズルNに付着した異物が、異常として判定される。特に、演算部641は、ノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無を判定することができる。つまり、実測外観画像Iamおよび良品外観画像Iagのそれぞれは、ノズルNの吸着孔Nhの内側を上方から撮像している。そこで、演算部641は、実測外観画像Iamおよび良品外観画像Iagのそれぞれに含まれる吸着孔Nhの内側の画像を比較することで、ノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無を判定する。
【0046】
図4はX線検査機を模式的に例示するブロック図である。図4のX線検査機4は、X方向に並列に配置された一対のコンベア41、X線照射ユニット421、X線カメラ422およびX線検査制御部44を備え、ノズルNのX線画像に基づきノズルNを検査する。
【0047】
コンベア41は、ノズルNを保持するノズルホルダー9をX方向に搬送する。具体的には、コンベア41は、ノズルホルダー9をX線検査機4内の検査位置に搬入し、ノズルホルダー9を検査位置で保持する。こうして、起立姿勢でノズルNを保持するノズルホルダー9が検査位置に固定される。そして、ノズルホルダー9に保持されるノズルNのX線検査が終了すると、コンベア41は、ノズルホルダー9を検査位置からX線検査機4の外へ搬出する。
【0048】
X線照射ユニット421は、検査位置のノズルホルダー9に保持されるノズルNに上方から対向する。一方、X線カメラ422は、検査位置のノズルホルダー9に保持されるノズルNに下方から対向する。つまり、X線照射ユニット421とX線カメラ422とは、検査位置のノズルホルダー9に保持されるノズルNをZ方向から挟む。そして、X線照射ユニット421がノズルNにX線を照射し、X線カメラ422がノズルNを透過したX線を撮像する。これによって、起立姿勢のノズルNのX線画像を下方から撮像することができる。
【0049】
X線検査制御部44は、CPUやRAMで構成されたプロセッサーである演算部441を有しており、演算部441が装置各部の制御を統括することで、検査が実行される。このX線検査制御部44は、X線照射ユニット421を制御するX線制御部442、X線カメラ422を制御する撮像制御部443、コンベア41を制御する駆動制御部444、HDD等で構成された記憶部445および外部の装置(洗浄機2、外観検査機6、部品実装機8、制御装置10)と通信を行う通信部446を有する。
【0050】
コンベア41が検査位置にノズルホルダー9を搬入すると、演算部441は、X線照射ユニット421からノズルNへX線を照射しつつノズルNを透過したX線をX線カメラ422により撮像する。こうして、起立姿勢のノズルNを下方から撮像したX線画像がノズルNの実測X線画像Ixmとして取得される。
【0051】
この実測X線画像Ixmは、記憶部445に保存される。また、記憶部445には、ノズルホルダー9に保持された検査対象のノズルNと同一種類であって、異常を有さない良品ノズルを予め撮像するX線事前撮像により取得された良品X線画像Ixgが保存されている。このX線事前撮像は、検査位置のノズルホルダー9により起立姿勢で保持された良品ノズルを下方から撮像し、良品X線画像Ixgと実測X線画像Ixmは同一の撮像条件で取得される。
【0052】
そして、演算部441は、実測X線画像Ixmと良品X線画像Ixgとを比較した結果に基づき、実測X線画像Ixmが示すノズルNに異常があるか否かを判定する。具体的には、ノズルNに付着した異物が、異常として判定される。特に、演算部441は、ノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無を判定することができる。つまり、実測X線画像Ixmおよび良品X線画像Ixgのそれぞれは、ノズルNのX線画像を撮像している。そこで、演算部441は、実測X線画像Ixmおよび良品X線画像Ixgのそれぞれに含まれる吸着孔Nhの内側の画像を比較することで、ノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無を判定する。かかるX線検査は、樹脂製のノズルNとX線の透過率が異なる異物を検知することができ、特にノズルNに付着した半田ペースト等を的確に検知することができる。
【0053】
図5図1の基板生産システムで実行されるノズルメンテナンスの第1例を示すフローチャートである。部品実装機8での部品実装が開始されると、制御装置10は、部品実装機8で使用中のノズルNの検査が必要であるかを、所定の検査実行基準に基づき判断する(ステップS101)。具体的には、部品実装機8では、ノズルNが部品Cを吸着する際にノズルNに生じる負圧の値が負圧制御部813により監視されており、負圧の値(絶対値)が所定の閾値(ゼロより大きい値)以下となると、検査実行基準が満たされたと判断される。なお、検査実行基準は、ノズルNに生じる負圧の値に限られず、例えばノズルNを使用して生産した基板の累積枚数あるいはノズルNの累積使用時間等が所定値を越えると、検査実行基準が満たされたと判断する。つまり、これらの検査実行基準のうちのいずれかが満たされると、ステップS101で「YES」と判断される。
【0054】
検査実行基準が満たされて、ノズル検査が必要と判断されると(ステップS101で「YES」)、制御装置10は、部品実装機8にノズルホルダー9を準備するように、作業者に報知する(ステップS102)。かかる報知を受けた作業者は、部品実装機8の基板搬送部82にノズルホルダー9を載置する。これによって、部品Cが実装された基板Bが実装作業位置822から搬出されるのに伴って、ノズルホルダー9が実装作業位置822に搬入される。
【0055】
そして、部品実装機8の実装ヘッド851は、実装作業位置822に搬入されたノズルホルダー9に、検査対象となるノズルNを載置する(ステップS103)。具体的には、実装ヘッド851は、ノズルホルダー9のノズル保持孔91の上方に移動してから下降することでノズル保持孔91にノズルNを挿入してから、ノズルNの装着を解除して、ノズル保持孔91にノズルNを載置することができる。
【0056】
部品実装機8は、ノズルホルダー9へのノズルNの載置が完了すると、その旨を制御装置10に通知するとともに、ノズルホルダー9を搬出する。通知を受けた制御装置10は、ノズルNを保持するノズルホルダー9を外観検査機6に運搬するように、作業者に報知する(ステップS104)。かかる報知を受けた作業者は、ノズルホルダー9を外観検査機6まで運搬して、コンベア61上に載置する。
【0057】
一方、部品実装機8では、実装ヘッド851がノズルホルダー9にノズルNを移載すると、ノズルチェンジャー86の上方に移動して、ノズルチェンジャー86に保管されたノズルNをその下端に装着する。そして、実装ヘッド851は、ノズルホルダー9の搬出後に、実装作業位置822に搬入された基板Bに対する部品実装を、新たに下端に装着したノズルNにより実行する。
【0058】
外観検査機6は、コンベア61上に載置されたノズルホルダー9を搬入して(ステップS105)、上述の要領で、ノズルNの実測外観画像Iamを撮像して(ステップS106)、この実測外観画像Iamと良品外観画像Iagとの比較に基づきノズルNの外観を検査する(ステップS107)。そして、ノズルNの外観に異常がある場合(ステップS107で「YES」の場合)には、ノズルホルダー9は洗浄機2まで搬送され、洗浄機2がノズルホルダー9により保持されるノズルNに超音波洗浄を実行する(ステップS111)。ノズルNの洗浄が完了すると、制御装置10は、ノズルNを保持するノズルホルダー9を洗浄機2から部品実装機8に運搬するように、作業者に報知する(ステップS112)。
【0059】
一方、ノズルNの外観に異常がない場合(ステップS107で「NO」の場合)には、外観検査機6からX線検査機4にノズルホルダー9が搬送される(ステップS108)。そして、X線検査機4は、上述の要領で、ノズルNの実測X線画像Ixmを撮像して(ステップS109)、この実測X線画像Ixmと良品X線画像Ixgとの比較に基づきノズルNの吸着孔Nhの内側を検査する(ステップS110)。
【0060】
ノズルNの吸着孔Nhの内側に異物がある場合(ステップS110で「YES」の場合)には、ノズルホルダー9は洗浄機2まで搬送されて、ノズルNに対して超音波洗浄が実行されてから(ステップS111)、ステップS112でノズルホルダー9の運搬の報知が実行される。一方、ノズルNの内側に異物がない場合(ステップS110で「NO」の場合)には、ステップS111を省略して、ステップS112が実行される。
【0061】
以上に説明したノズルメンテナンスの第1例では、ノズルNにX線を照射しつつノズルNを撮像することで実測X線画像Ixmが取得される(ステップS109)。そして、吸着孔Nhの内側の異物の有無が実測X線画像Ixmに基づき判定される(ステップS110)。したがって、部品吸着に用いられるノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無を的確に判定することが可能となっている。
【0062】
また、ノズルNと同一種類であって異物が付着していない良品ノズルにX線を照射しつつ良品ノズルを撮像するX線事前撮像が実行されており、X線検査(ステップS110)では、X線事前撮像により取得された良品外観画像Iagと実測X線画像Ixmとの比較に基づき、吸着孔Nhの内側の異物の有無が判定される。かかる構成では、部品吸着に用いられるノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無を、良品X線画像Ixgとの比較に基づき的確に判定することができる。
【0063】
特に、X線事前撮像はX線撮像(ステップS109)より前に予め実行されており、実測X線画像Ixmの取得の前に予め良品X線画像Ixgが取得されている。これによって、実測X線画像Ixmの取得後、速やかに異物の有無の判定を実行できる。
【0064】
また、ノズルNの表面で反射されるX線と異なる波長の可視光(照明)をノズルNに照射してノズルNの実測外観画像Iamを撮像する外観撮像(ステップS106)と、ノズルNにおける異常の有無を実測外観画像Iamに基づき判定する外観検査(ステップS107)とが、X線撮像(ステップS109)の前に実行される。そして、外観検査(ステップS107)で異常がない(NO)と判定されたノズルNに対して、X線撮像(ステップS109)およびX線検査(ステップS110)が実行される。かかる構成では、ノズルNの実測外観画像Iamに基づく判定の結果、異常が確認されたノズルNは、X線撮像(ステップS109)およびX線検査(ステップS110)の対象から外される。したがって、X線を用いたノズルNの検査の実行頻度を抑えることができる。
【0065】
また、外観撮像(ステップS106)では、ノズルNの二次元画像が実測外観画像Iamとして撮像される。かかる構成では、比較的容易に取得可能な二次元画像に基づき、ノズルNの外観検査を実行できる。
【0066】
特に、外観撮像(ステップS106)では、吸着孔Nhの開口から吸着孔Nhの内側に可視光(照明)を照射しつつ吸着孔Nhの内側を撮像することで、二次元画像が撮像される。そして、外観検査(ステップS107)では、ノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無を二次元画像に基づき判定することで、ノズルNにおける異常の有無が判定される。かかる構成では、ノズルNの外観画像(ステップS106)に基づく判定の結果、吸着孔Nhの内側に異物が確認されたノズルは、X線撮像(ステップS109)およびX線検査(ステップS110)の対象から外される。したがって、X線を用いたノズルNの検査の実行頻度を抑えることができる。
【0067】
また、外観撮像(ステップS106)では、ノズルNをノズルホルダー9により保持することでノズルNの姿勢を通常姿勢に固定した状態で、所定の方向(上方)からノズルNが撮像される。かかる構成では、ノズルホルダー9によってノズルNの姿勢を安定させつつ、適切なノズルNの実測外観画像Iamを撮像することができる。
【0068】
また、部品実装機8では、基板搬送部82がノズルホルダー9を搬入すると、実装ヘッド851がノズルNをノズルホルダー9に移載し、基板搬送部82がノズルNの移載されたノズルホルダー9を搬出する。かかる構成では、検査対象となるノズルNの部品実装機8からの搬出に、基板搬送用の基板搬送部82を転用することができる。よって、ノズルNの搬出に要する機構を別途設ける必要が無く、部品実装機8の構成の複雑化を抑制することができる。
【0069】
また、部品実装機8でのノズルNの使用状態(ノズルNを使用して生産した基板の枚数、ノズルNの累積使用時間)に応じて、X線撮像(ステップS109)およびX線検査(ステップS110)を開始するタイミングが決定される(ステップS101)。かかる構成では、ノズルNの使用状態に応じた適切なタイミングで、X線撮像(ステップS109)およびX線検査(ステップS110)を開始できる。
【0070】
また、部品実装機8で使用中のノズルNが部品Cを吸着する際にノズルNに生じる負圧の変化に応じて、X線撮像(ステップS109)およびX線検査(ステップS110)を開始するタイミングが決定される(ステップS101)。かかる構成では、ノズルNの吸着孔Nhの内側に異物が付着したことでノズルNに生じる負圧が変化すると、このノズルNに対してX線撮像(ステップS109)およびX線検査(ステップS110)を速やかに開始することができる。
【0071】
また、X線検査(ステップS110)において吸着孔Nhの内側に異物が確認されたノズルNを洗浄するノズル洗浄を実行する工程(ステップS111)が設けられている。かかる構成では、X線検査(ステップS110)において吸着孔Nhの内側に異物が確認されると、この異物をノズルNから速やかに取り除くことができる(ステップS111)。
【0072】
また、部品実装機8は、ノズルNを保管するノズルチェンジャー86有する。そして、実装ヘッド851は、ノズルホルダー9にノズルNを移載すると、ノズルチェンジャー86で保管されていたノズルNを装着する。かかる構成では、検査対象となるノズルNが実装ヘッド851からノズルチェンジャー86に外されると、ノズルチェンジャー86に保管されていた別のノズルNが実装ヘッド851に装着されて、部品実装に使用される。したがって、部品実装の中断時間を短く抑えつつ、ノズルNの検査を実行することができる。
【0073】
図6図1の基板生産システムで実行されるノズルメンテナンスの第2例を示すフローチャートである。以下では、図6の第2例と図5の第1例とが異なる部分を中心に説明することとし、これらで共通する部分については適宜説明を省略する。ただし、共通する構成によって同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0074】
図6の第2例においても、図5の第1例と同様に、ステップS101~S104が実行される。ただし、図6の第2例では、ステップS104において、制御装置10は、ノズルNを保持するノズルホルダー9を洗浄機2に運搬するように、作業者に報知する。したがって、作業者は、ノズルホルダー9を洗浄機2まで運搬する。ステップS201では、洗浄機2がノズルホルダー9により保持されるノズルNに超音波洗浄を実行する。ノズルNの洗浄が完了すると、ノズルNを保持するノズルホルダー9は、洗浄機2からX線検査機4に搬送される(ステップS202)。
【0075】
そして、X線検査機4は、上述の要領で、ノズルNの実測X線画像Ixmを撮像して(ステップS203)、この実測X線画像Ixmと良品X線画像Ixgとの比較に基づきノズルNの吸着孔Nhの内側を検査する(ステップS204)。
【0076】
ノズルNの吸着孔Nhの内側に異物がある場合(ステップS204で「YES」の場合)には、その旨がX線検査機4から制御装置10に通知され、制御装置10は、洗浄後のノズルNの吸着孔Nh内に異物が残っていることを、作業者に報知する(ステップS205)。一方、ノズルNの吸着孔Nhの内側に異物がない場合(ステップS204で「NO」の場合)には、制御装置10は、ノズルNを保持するノズルホルダー9をX線検査機4から部品実装機8に運搬するように、作業者に報知する(ステップS206)。
【0077】
かかるノズルメンテナンスの第2例においても、ノズルNにX線を照射しつつノズルNを撮像することで実測X線画像Ixmが取得される(ステップS203)。そして、吸着孔Nhの内側の異物の有無が実測X線画像Ixmに基づき判定される(ステップS204)。したがって、部品吸着に用いられるノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無を的確に判定することが可能となっている。
【0078】
また、ノズルメンテナンスの第2例によれば、X線撮像(ステップS203)およびX線検査(ステップS204)は、ノズル洗浄(ステップS201)が実行されたノズルNに対して実行される。そして、X線検査(ステップS204)において吸着孔Nhの内側に異物が確認されると(ステップS204で「YES」)、ノズルNの異常が作業者に報知される(ステップS205)。かかる構成では、ノズル洗浄を行ったにも拘わらずノズルNの吸着孔Nhに異物が付着したままである場合には、作業者にこれを報知することができる。
【0079】
このように上述の実施形態では、図5および図6のそれぞれに示すノズルメンテナンスが本発明の「ノズルメンテナンス方法」の一例に相当し、X線検査機4が本発明の「ノズル検査装置」の一例に相当し、照明624が射出する可視光が本発明の「照明」の一例に相当し、部品実装機8が本発明の「部品実装機」の一例に相当し、基板搬送部82が本発明の「基板搬送部」の一例に相当し、部品供給部83が本発明の「部品供給部」の一例に相当し、実装ヘッド851が本発明の「実装ヘッド」の一例に相当し、ノズルチェンジャー86が本発明の「ノズル保管部」の一例に相当し、ノズルホルダー9が本発明の「ノズルホルダー」の一例に相当し、ノズルNが本発明の「ノズル」の一例に相当し、吸着孔Nhが本発明の「吸着孔」の一例に相当し、部品Cが本発明の「部品」の一例に相当し、基板Bが本発明の「基板」の一例に相当し、実測X線画像Ixmが本発明の「ノズルX線画像」の一例に相当し、良品X線画像Ixgが本発明の「良品X線画像」の一例に相当し、ステップS109、S203が本発明の「X線撮像」の一例に相当し、ステップS110、ステップS204が本発明の「X線検査」の一例に相当し、実測外観画像Iamが本発明の「外観画像」あるいは「二次元画像」の一例に相当し、ステップS106が本発明の「外観撮像」の一例に相当し、ステップS107が本発明の「外観検査」の一例に相当する。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、図5のノズルメンテナンスの第1例において、ノズルNの外観撮像および外観検査(ステップS106、S107)での具体的な内容を変形しても良い。
【0081】
図7はノズルの外観撮像・検査の変形例で使用されるノズルホルダーの構成を模式的に示す図である。このノズルホルダー9は、水平方向に平行な回転軸Aを中心に保持プレート92を回転可能に支持する支持フレーム93と、支持フレーム93に取り付けられたモーター94とを有する。そして、保持プレート92がモーター94からの駆動力を受けて回転軸Aを中心に回転することで、保持プレート92に保持されたノズルNの姿勢が変更される。具体的には、上記の通常姿勢と、回転軸Aを中心に当該通常姿勢を180度回転させた反転姿勢との間で、ノズルNの姿勢を切り換えることができる。
【0082】
かかるノズルホルダー9を用いたノズルメンテナンスによれば、ステップS106で、通常姿勢および反転姿勢の間でノズルNの姿勢を変更しつつ、各姿勢のノズルNを撮像することで、実測外観画像Iamが撮像される。これによって、ノズルNの平面視と低面視それぞれについて、実測外観画像Iamが取得される。そして、ステップS107では、こうして取得された実測外観画像Iamに基づき、ノズルNの外観が検査される。
【0083】
つまり、この変形例では、ノズルホルダー9は、互いに異なる複数の姿勢(通常姿勢、反転姿勢)のそれぞれでノズルNを保持可能である。そして、外観撮像(ステップS106)では、ノズルホルダー9によりノズルNの姿勢を複数の姿勢(通常姿勢、反転姿勢)の間で変更しつつ、各姿勢でノズルNを撮像する。かかる構成では、複数の角度からノズルNを撮像して得られた実測外観画像Iamに基づき、ノズルNの異常の有無を的確に判定することができる。
【0084】
また、ステップS106(外観撮像)で撮像される実測外観画像Iamは二次元画像ではなく、三次元画像でも良い。かかる構成では、ノズルNの立体的形状に基づき、ノズルの異常(例えばノズルNへの異物の付着や、ノズルNの欠損等)の有無を的確に判定することができる。
【0085】
あるいは、図5のノズルメンテナンスの第1例において、ステップS105~S107を省略して、ステップS104の次に、ステップS108以後を実行するように構成しても良い。つまり、ノズルNの外観に基づくノズルNの異物判定は省略しても構わない。
【0086】
また、ステップS109、S110を複数のノズルNに同時に行うように、図5および図6のノズルメンテナンスの第1例および第2例を変形しても良い。この変形例によれば、X線撮像(ステップS109、S203)では、複数のノズルNを撮像した実測X線画像Ixmが取得される。そして、X線検査(ステップS110、S204)では、実測X線画像Ixmに示される複数のノズルNそれぞれの画像に基づき、各ノズルNの吸着孔Nhの内側における異物の有無が判定される。
【0087】
特に、X線検査(ステップS110)の結果に応じてノズル洗浄(ステップS111)を実行するノズルメンテナンスの第1例では、ノズル洗浄の実行態様に、次のような変形がさらに可能である。
【0088】
一の変形例によれば、ノズル洗浄(ステップS111)では、複数のノズルNのうち、X線検査(ステップS110)において吸着孔Nhの内側に異物が確認されたノズルNのみが選択的に洗浄される。かかる構成では、ノズル洗浄が必要なノズルNに対して選択的にノズル洗浄を実行することができる。
【0089】
別の変形例によれば、ノズル洗浄(ステップS111)では、複数のノズルNの全てを洗浄する。かかる構成では、複数のノズルNのうちから、異物が付着したノズルNのみを選択する作業を省略することができ、ノズル洗浄を速やかに開始することができる。
【0090】
また、X線撮像(ステップS109、S203)で撮像されるノズルNの姿勢は起立姿勢に限られず、起立姿勢と異なる姿勢でも良い。
【0091】
また、X線検査(ステップS110、S204)において、実測X線画像Ixmに基づきノズルNの異常の有無を判定するにあたって、良品X線画像Ixgを併用することは必ずしも必要ではない。つまり、実測X線画像Ixmのみに基づいて、ノズルNの異常の有無を判定しても良い。外観検査(ステップS107)についても同様である。
【0092】
また、部品実装機8から外観検査機6あるいは洗浄機2へのノズルホルダー9の運搬は、作業者によらず、コンベアあるいはAGV(無人搬送車)により実行しても良い。
【0093】
また、洗浄機2、X線検査機4および外観検査機6の間のノズルホルダー9の運搬は、作業者により、あるいはAGVにより実行しても良い。
【符号の説明】
【0094】
4…X線検査機(ノズル検査装置)
624…照明
8…部品実装機
82…基板搬送部
83…部品供給部
851…実装ヘッド
86…ノズルチェンジャー(ノズル保管部)
9…ノズルホルダー
B…基板
C…部品
N…ノズル
Nh…吸着孔
Ixm…実測X線画像(ノズルX線画像)
Ixg…良品X線画像
Iam…実測外観画像(外観画像、二次元画像、三次元画像)
S106…外観撮像
S107…外観検査
S109、S203…X線撮像
S110、S204…X線検査
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7