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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
G01C21/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019088079
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020183895
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英人
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-145262(JP,A)
【文献】特開2006-047123(JP,A)
【文献】特開2002-310682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声情報を入力する音声入力手段と、
前記音声情報に対して音声認識処理を行って、前記音声情報から所定の移動経路の特定に用いられる経路生成情報を抽出する音声認識手段と、
前記音声認識手段によって抽出された前記経路生成情報に基づいて前記移動経路を特定する移動経路特定手段と、
前記移動経路特定手段によって特定された前記移動経路に含まれる複数の区間について正確度の高低を判定する正確度判定手段と、
前記移動経路の中で、前記正確度判定手段によって正確度が高いと判定された第1の区間を表示対象区間に設定する表示区間設定手段と、
前記表示区間設定手段によって特定された前記表示対象区間を周辺の地図画像とともに表示する地図表示手段と、
移動方向前方を撮像するカメラと、
前記カメラの撮像によって得られた画像の中から前記経路生成情報に対応する部分画像の有無を識別する画像認識手段と、
を備え、前記正確度判定手段は、前記経路生成情報で示される特徴が含まれる前記区間について前記正確度が高いと判定し、この区間に続く次の区間について前記経路生成情報で示される特徴が含まれることが確認できない場合にはこの区間について前記正確度が低いと判定するとともに、これらの判定における前記特徴が前記区間に含まれるか否かの判定を、道路および周辺施設に関する情報が含まれる地図データと前記画像認識手段の認識結果とに基づいて行うことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示区間設定手段は、前記第1の区間と、この第1の区間と連続するとともにこの第1の区間よりも正確度が低い第2の区間とを含む前記表示対象区間を設定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記地図表示手段は、前記第1の区間と前記第2の区間を異なる表示態様で表示することを特徴とする請求項に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記移動経路特定手段は、前記地図データに基づいて、前記経路生成情報に対応する前記移動経路を特定することを特徴とする請求項2または3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
現在位置が前記移動経路に沿って移動するにしたがって、前記移動経路特定手段、前記正確度判定手段、前記表示区間設定手段および前記地図表示手段による各動作が、繰り返し実施されることを特徴とする請求項2~のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
現在位置が前記第2の区間に進入した後に、この第2の区間の正誤判定を行う正誤判定手段をさらに備え、
前記移動経路特定手段は、前記正誤判定手段によって前記第2の区間が誤っている旨の判定がなされたときに、前記第1の区間と連続する新しい第2の区間と、現在位置からこの新しい第2の区間に至る復帰経路とを特定し、
前記表示区間設定手段は、前記新しい第2の区間と前記復帰経路とが含まれる前記表示対象区間を設定することを特徴とする請求項2~のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行経路を案内するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間の発する言葉である経路説明情報に含まれる経路関連語どうしの関連関係を解析し、実際の地図データ上の道路の配置と照合することで、目的地のおおよその地図データ上の位置を推定し、推定した目的地と経路を提示するようにしたナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-145262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示されたナビゲーション装置では、目的地までの経路に示す経路説明情報に含まれる経路関連語を、所定の場所を表す場所語と、距離を表す距離語と、方向を表す方向語の3つに分類しているが、特にこの中で距離語としての「ちょっと」、「もうすぐ」、「しばらく」、「ずっと」などの表現から距離を推定しているため、提示する目的地と経路の正確度が低いという問題があった。特に、「ちょっと」等の表現は、その用語を使用する利用者ごとに使い方があいまいであり、距離を対応させることは難しい。例えば、特許文献1では「しばらく」が4.0~7.0km、「ずっと」が10.0~20.0kmとしているが、この範囲の距離を意識してこれらの用語を使っている利用者はまれであるといえる。このようなあいまいな表現や、不正確な場所の指定などが目的地までの経路上に複数含まれる場合には、目的地までの正確な走行経路を設定することはほとんど困難になる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、正確度が低い経路の提示を抑制することができるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明のナビゲーション装置は、音声情報を入力する音声入力手段と、音声情報に対して音声認識処理を行って、音声情報から所定の移動経路の特定に用いられる経路生成情報を抽出する音声認識手段と、音声認識手段によって抽出された経路生成情報に基づいて移動経路を特定する移動経路特定手段と、移動経路特定手段によって特定された移動経路に含まれる複数の区間について正確度の高低を判定する正確度判定手段と、移動経路の中で、正確度判定手段によって正確度が高いと判定された第1の区間を表示対象区間に設定する表示区間設定手段と、表示区間設定手段によって特定された表示対象区間を周辺の地図画像とともに表示する地図表示手段と、移動方向前方を撮像するカメラと、カメラの撮像によって得られた画像の中から経路生成情報に対応する部分画像の有無を識別する画像認識手段とを備え、正確度判定手段は、経路生成情報で示される特徴が含まれる区間について正確度が高いと判定し、この区間に続く次の区間について経路生成情報で示される特徴が含まれることが確認できない場合にはこの区間について正確度が低いと判定するとともに、これらの判定における特徴が区間に含まれるか否かの判定を、道路および周辺施設に関する情報が含まれる地図データと画像認識手段の認識結果とに基づいて行う
【0007】
音声情報に対して音声認識処理を行って特定された移動経路について、移動経路に含まれる各区間について正確度を判定することで正確度が高い区間を抽出することができ、正確度が低い移動経路を表示(提示)することを抑制することができる。
【0008】
また、上述した表示区間設定手段は、第1の区間と、この第1の区間と連続するとともにこの第1の区間よりも正確度が低い第2の区間とを含む表示対象区間を設定することが望ましい。これにより、正確度が高い移動経路に沿った移動を案内することが可能となる。
【0009】
また、上述した地図表示手段は、第1の区間と第2の区間を異なる表示態様で表示することが望ましい。これにより、その時点で判明している正確度の高低を利用者が把握することができる。
【0010】
また、上述した移動経路特定手段は、道路および周辺施設に関する情報が含まれる地図データに基づいて、経路生成情報に対応する移動経路を特定することが望ましい。これにより、交差点や信号機、周辺施設などを目印とした音声情報を指示するだけで移動経路を設定することが可能となる。
【0011】
また、上述した移動経路特定手段、画像認識手段の識別結果に基づいて、経路生成情報に対応する移動経路を特定することにより、道路周辺の地図データに含まれない特徴が含まれる音声情報を指示した場合であっても移動経路を設定することが可能となる。
【0012】
また、現在位置が移動経路に沿って移動するにしたがって、移動経路特定手段、正確度判定手段、表示区間設定手段および地図表示手段による各動作が、繰り返し実施されることが望ましい。これにより、現在位置の移動に伴って、周辺の実状に合わせて移動経路の設定内容を変更することが可能となる。
【0013】
また、現在位置が第2の区間に進入した後に、この第2の区間の正誤判定を行う正誤判定手段をさらに備え、移動経路特定手段は、正誤判定手段によって第2の区間が誤っている旨の判定がなされたときに、第1の区間と連続する新しい第2の区間と、現在位置からこの新しい第2の区間に至る復帰経路とを特定し、表示区間設定手段は、新しい第2の区間と復帰経路とが含まれる表示対象区間を設定することが望ましい。これにより、音声情報の入力内容の不正確さ等に起因して誤った移動経路を設定した場合であっても、最初の地点に戻ることなく途中から別の経路に誘導することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態のナビゲーション装置の構成を示す図である。
図2】音声で指示された車両の走行経路を特定して表示する動作手順を示す流れ図である。
図3】音声で指示された車両の走行経路を表示した後に目的地に到達するまでの走行経路の表示の具体例を示す図である。
図4】音声で指示された車両の走行経路を表示した後に目的地に到達するまでの走行経路の表示の具体例を示す図である。
図5】音声で指示された車両の走行経路を表示した後に目的地に到達するまでの走行経路の表示の具体例を示す図である。
図6】「3つ目の交差点」の位置を誤判定する具体例を示す図である。
図7】「コンビニの看板」を誤判定する具体例を示す図である。
図8】「白い建物」を誤判定する具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態のナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一実施形態のナビゲーション装置の構成を示す図である。図1に示すナビゲーション装置は、ナビゲーションコントローラ1、地図データ記憶装置3、操作部4、車両位置検出部5、表示装置6、マイクロホン7、カメラ8を含んで構成されている。このナビゲーション装置は、車両に搭載されている。
【0017】
ナビゲーションコントローラ1は、CPU、ROM、RAM等を用いて所定の動作プログラムを実行することにより、自車位置周辺の地図画像表示動作や入力音声に基づいた走行経路の特定や表示に関する動作などの各種機能を実現する。ナビゲーションコントローラ1の詳細構成については後述する。
【0018】
地図データ記憶装置3は、地図表示や走行経路の特定などに必要な地図データが格納されている記憶媒体およびその読み取り装置である。この地図データ記憶装置3には、経度および緯度で適当な大きさに区切られた矩形形状の図葉を単位とした地図データが格納されている。各図葉の地図データは、図葉番号を指定することにより特定され、読み出すことが可能となる。地図データ記憶装置3は、ハードディスク装置や半導体メモリによって、あるいは、DVDとその読み取り装置によって実現される。また、地図データ記憶装置3を通信装置に置き換えて、外部の地図配信サーバ(図示せず)から地図データを取得するようにしてもよい。
【0019】
操作部4は、利用者の指示(操作)を受け付けるためのものであり、各種の操作ボタンや操作つまみ類を備えている。また、操作部4は、表示装置6の画面に取り付けられたタッチパネルを含んでおり、画面上の一部を直接利用者が指等で指し示すことにより、操作指示を行うことができるようになっている。
【0020】
車両位置検出部5は、例えば、GPS受信機、方位センサ、距離センサなどを備えており、所定のタイミングで車両位置(経度、緯度)の検出を行い、検出結果を出力する。
【0021】
表示装置6は、例えばLCD(液晶表示装置)によって構成されており、ナビゲーションコントローラ1から出力される映像信号に基づいて自車位置周辺の地図画像や、特定した移動経路などを表示する。
【0022】
マイクロホン7は、音声入力に際して利用者の音声を集音するためのものである。例えば、車室内の所定位置にマイクロホン7が設置されており、利用者(自車両の搭乗者)が発する音声を集音することにより、マイクロホン7を用いた音声情報の入力が行われる。
【0023】
カメラ8は、自車両の進行方向前方を撮像する。専用のカメラを備える場合の他、ドライブレコーダのカメラを用いるようにしてもよい。
【0024】
次に、ナビゲーションコントローラ1の詳細構成について説明する。図1に示すナビゲーションコントローラ1は、地図バッファ10、地図読出制御部12、地図描画部14、車両位置計算部20、音声認識部30、画像認識部31、経路特定部32、表示区間設定部33、正確度判定部34、表示区間描画部35、正誤判定部36、入力処理部50、表示処理部60を含んで構成されている。
【0025】
地図バッファ10は、地図データ記憶装置3から読み出された地図データを一時的に格納する。地図読出制御部12は、車両位置計算部20により算出される車両位置や利用者が操作部4を操作して指定した位置に応じて、所定範囲の地図データの読み出し要求を地図データ記憶装置3に出力する。地図描画部14は、地図バッファ10に格納された地図データに基づいて、表示装置6に地図画像を表示するために必要な描画処理を行って地図画像描画データを作成する。
【0026】
車両位置計算部20は、車両位置検出部5から出力される検出データに基づいて自車位置を計算するとともに、計算した自車位置が地図データの道路上にない場合には、自車位置を修正するマップマッチング処理を行う。
【0027】
音声認識部30は、マイクロホン7を用いて入力された音声情報に対して音声認識処理を行って、この音声情報から自車両の走行経路の特定に用いられる経路生成情報を抽出する。
【0028】
画像認識部31は、カメラ8の撮像によって得られた画像の中から経路生成情報に対応する部分画像の有無を識別し、部分画像が存在する場合にはその内容を判別する画像認識処理を行う。
【0029】
経路特定部32は、音声認識部30によって抽出された経路生成情報に基づいて、入力された音声情報に対応する走行経路を特定する。走行経路の特定は、走行開始前は経路生成情報を地図データと比較することにより行われ、走行開始後は経路生成情報を地図データと画像認識部31による画像認識結果の両方と比較することにより行われる。
【0030】
正確度判定部34は、経路特定部32によって特定された走行経路に含まれる複数の区間について正確度の高低を判定する。例えば、走行経路を分岐位置で複数の区間に分割したときに、この正確度判定は、各区間に経路生成情報で示される特徴が含まれるか否かを地図データや画像認識部31による認識結果に基づいて判定することにより行われる。具体的には、音声情報で示された経路生成情報で示される特徴が含まれる区間については正確度が高く、この区間に続く次の区間について経路生成情報で示される特徴が含まれるか否かがその時点で確認できない場合にはこの区間については正確度が低くなる。
【0031】
表示区間設定部33は、経路特定部32によって特定された走行経路の中で、正確度判定部34によって正確度が高いと判定された第1の区間と、この第1の区間と連続するとともにこの第1の区間よりも正確度が低い第2の区間とを含む表示対象区間を設定する。
【0032】
表示区間描画部35は、表示区間設定部33によって特定された表示対象区間を示す表示対象区間画像を描画する。
【0033】
正誤判定部36は、現在位置(車両の自車位置)が第2の区間に進入した後に、この第2の区間の正誤判定を行う。
【0034】
入力処理部50は、操作部4から入力される各種の操作指示に対応する動作を行うための命令をナビゲーションコントローラ1内の各部に向けて出力する。
【0035】
表示処理部60は、地図描画部14によって作成される地図画像描画データが入力されており、この描画データに基づいて所定範囲の地図画像を表示装置6の画面に表示する。また、表示区間描画部35によって作成された表示対象区間画像を示す描画データが入力されると、この表示対象区間画像を地図画像に重ねて表示装置6の画面に表示する。
【0036】
上述したマイクロホン7が音声入力手段に、音声認識部30が音声認識手段に、経路特定部32が移動経路特定手段に、正確度判定部34が正確度判定手段に、表示区間設定部33が表示区間設定手段に、地図描画部14、表示区間描画部35、表示処理部60、表示装置6が地図表示手段に、画像認識部31が画像認識手段に、正誤判定部36が正誤判定手段にそれぞれ対応する。
【0037】
本実施形態のナビゲーション装置はこのような構成を有しており、次に、その動作を説明する。
【0038】
図2は、音声で指示された車両の走行経路を特定して表示する動作手順を示す流れ図である。例えば、走行開始前に音声で指示された走行経路を表示し、この走行経路にしたがって走行を開始する場合の動作手順が示されている。例えば、助手席や後部座席の搭乗者が音声で走行経路を指示し、この指示に応じて表示された走行経路に沿って運転者が自車両を運転する場合などが考えられる。
【0039】
音声認識部30は、音声入力の開始が指示されたか否かを判定する(ステップ100)。例えば、操作部4を用いて走行経路の音声入力の開始を指示することができ、この指示がなされたか否かが判定される。指示がない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、音声入力の開始が指示された場合にはステップ100の判定において肯定判断が行われる。次に、音声認識部30によって、マイクロホン7で集音した音声情報を取り込むことにより、音声情報の入力が行われる(ステップ102)。また、音声認識部30は、この入力された音声情報に対して音声認識処理を行い、経路生成情報を抽出する(ステップ104)。
【0040】
例えば、「3つ目の交差点を右折、コンビニの看板が見えたら次の信号を左折、まっすぐ進むと左側に白い建物がある」という音声情報が入力された場合を考えると、「3つ目の交差点を右折」、「コンビニの看板が見えたら」、「次の信号を左折」、「まっすぐ進む」、「左側に白い建物」が経路生成情報として抽出される。
【0041】
次に、経路特定部32は、抽出された経路生成情報に基づいて、入力された音声情報に対応する走行経路を特定する(ステップ106)。上述した例では、現在位置から「3つ目の交差点」までを第1の区間とし、「3つ目の交差点を右折」した後を第2の区間として特定する。なお、この第2の区間は、「コンビニの看板が見えてから次の信号」まで続くが、現在位置においては「コンビニの看板」が見えないため、この時点では第2の区間全体や、第2の区間に続く第3の区間などを特定することはできない。したがって、経路特定部32は、走行経路として、第1の区間と、第2の区間(の一部)を特定する。
【0042】
次に、正確度判定部34は、経路特定部32によって特定された走行経路に含まれる複数の区間(上述した例では、第1の区間と第2の区間)について正確度の高低を判定する(ステップ108)。上述した例では、現在位置から「3つ目の交差点」までの第1の区間は、正確度は高いといえる。これに対し、「3つ目の交差点を右折」した後の第2の区間は、現在位置においては「コンビニの看板」が見えないため、この第2の区間が正しいか否かは確認できず、第1の区間よりも正確度は低いといえる。
【0043】
次に、表示区間設定部33は、特定された走行経路の中から表示対象区間を設定する(ステップ110)。上述した例では、走行経路として、正確度の高い第1の区間と、第1の区間よりは正確度が低い第2の区間とが特定されており、これら第1の区間と第2の区間とが表示対象区間として設定される。
【0044】
次に、表示区間描画部35は、設定された表示対象区間の道路を、周囲の地図画像から識別可能な表示態様(例えば、目立つ色)となるように描画する。また、表示処理部60は、この描画によって生成された表示対象区間画像の描画データが入力されると、周辺の地図画像にこの表示対象区間画像を重ねて、表示装置6の画面に表示する(ステップ112)。
【0045】
その後、経路特定部32は、自車両が走行を開始したか否かを、車両位置計算部20によって計算された自車位置に基づいて判定する(ステップ114)。走行を開始するまで否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、自車両が走行を開始するとステップ114の判定において肯定判断が行われる。
【0046】
次に、カメラ8で自車両の前方が撮像され(ステップ116)、画像認識部31は、撮像された画像の中から経路生成情報に対応する部分画像を抽出し、その内容を判別する画像認識処理を行う(ステップ118)。
【0047】
次に、経路特定部32は、目的地に到着したか否かを判定する(ステップ120)。上述した例「3つ目の交差点を右折、コンビニの看板が見えたら次の信号を左折、まっすぐ進むと左側に白い建物がある」の場合には、最後の「白い建物」が目的地であり、この目的地に到着していない場合には否定判断が行われ、ステップ106に戻って走行経路特定動作以降が繰り返される。目的地に到着した場合にはステップ120の判定において肯定判断が行われ、一連の動作が終了する。
【0048】
図3図5は、音声で指示された車両の走行経路を表示した後に目的地に到達するまでの走行経路の表示の具体例を示す図である。上述した入力音声「3つ目の交差点を右折、コンビニの看板が見えたら次の信号を左折、まっすぐ進むと左側に白い建物がある」に対応する表示例が示されている。また、実際の表示では、表示画面内における自車位置が固定されて周辺の地図画像が自車位置の進行に伴ってスクロールされるが、車両の走行位置と表示対象となる走行経路との関係をわかりやすくするために、地図画像をスクロールせずに自車位置(自車位置マークG)を移動させている。
【0049】
図3(A)は、音声入力を行う利用者(発話者)が意図している現在の自車位置から目的地である「白い建物」までの走行経路を示している。
【0050】
音声「3つ目の交差点を右折、コンビニの看板が見えたら次の信号を左折、まっすぐ進むと左側に白い建物がある」が入力されると、現在位置から「3つ目の交差点」までを第1の区間R1とし、「3つ目の交差点を右折」した後を第2の区間R2とした走行経路が特定され、これらを表示対象区間とした描画が行われ、周辺の地図画像とともに表示される(図3(B))。
【0051】
運転者は、表示された走行経路に沿って自車両の走行位置を進めていき、表示された走行経路に沿って3つ目の交差点C1を右折する。右折後に自車両の走行中の道路が新たな第1の区間R1となるが、右折直後では、次の経路生成情報としての「コンビニの看板」が見えていないため、この新たな第1の区間R1につながる第2の区間R2は表示されない(図4(A))。
【0052】
その後、運転者は、表示された移動経路に沿って自車両の走行位置を進めていくと、左にコンビニエンスストアの看板F1が見えてくる。この看板F1が見えてきたことは、画像認識部31による画像認識処理によって確認することができる。看板F1が見えた時点で、次の信号S1を左折した第2の区間R2が特定され、この信号S1に至るまでの第1の区間とこの第2の区間を表示対象区間とした描画が行われ、周辺の地図画像とともに表示される(図4(B))。
【0053】
運転者は、表示された走行経路に沿って自車両の走行位置を進めていき、表示された走行経路に沿ってコンビニ看板の次の信号S1を左折する。左折後に自車両の走行中の道路が新たな第1の区間R1となる(図5(A))。
【0054】
その後、運転者は、表示された移動経路に沿って自車両の走行位置を進めていくと、左に白い建物W1が見えてくる。この白い建物W1が今回の目的地であり、この白い建物W1の位置に目的地マークPが表示されるとともに、第1の経路R1がこの目的地マークPまで延長される(図5(B))。このように表示される走行経路に沿って運転者は目的地としての「白い建物」まで走行することができる。
【0055】
このように、本実施形態のナビゲーション装置では、音声情報に対して音声認識処理を行って特定された走行経路について、走行経路に含まれる各区間について正確度を判定することで正確度が高い区間を抽出することができ、正確度が低い移動経路を表示することを抑制することができる(図5(B))。
【0056】
また、正確度が高い第1の区間と、この第1の区間と連続するとともにこの第1の区間よりも正確度が低い第2の区間とを含む表示対象区間を設定している。特に、第1の区間は、現在位置から次の分岐までの区間としている。これにより、正確度が高い走行経路に沿って自車両の走行を案内することが可能となる。
【0057】
また、道路および周辺施設に関する情報が含まれる地図データに基づいて、音声情報から抽出された経路生成情報に対応する移動経路を特定しており、交差点や信号機、周辺施設などを目印とした音声情報を指示するだけで移動経路を設定することが可能となる。
【0058】
また、カメラによって撮像された画像に対して画像認識を行った結果を用いて、音声情報から抽出された経路生成情報に対応する移動経路を特定しており、道路周辺の地図データに含まれない特徴が含まれる音声情報を指示した場合であっても移動経路を設定することが可能となる。
【0059】
また、現在位置(自車位置)が走行経路に沿って移動するにしたがって、移動経路特定、正確度判定、表示対象区間設定・描画・表示の各動作が、繰り返し実施されるため、現在位置の移動に伴って、周辺の実状に合わせて移動経路の設定内容を変更することが可能となる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、表示対象区間に含まれる第1の区間と第2の区間のそれぞれを互いに異なる表示態様で表示するようにしてもよい。例えば、色、形状(例えば、第1の区間を実線、第2の区間を破線)、輝度、点灯/点滅などの状態を異ならせるようにしてもよい。これにより、その時点で判明している正確度の高低を利用者が把握することが容易となる。
【0061】
また、上述した実施形態では、音声情報に含まれる各経路生成情報が正しく抽出された場合について説明したが、実際には、これらの抽出内容が正しいとは限らない。例えば、上述した入力音声「3つ目の交差点を右折、コンビニの看板が見えたら次の信号を左折、まっすぐ進むと左側に白い建物がある」について考えると、「3つ目の交差点」、「コンビニの看板」、「白い建物」を誤判定する場合が考えられる。
【0062】
図6は、「3つ目の交差点」の位置を誤判定する具体例を示す図である。音声入力を行った発話者が十字路のみを交差点としてカウントしている場合には、発話者が意図している「3つ目の交差点」はC14となる。しかし、経路特定部32が十字路だけでなく丁字路も含めて交差点としてカウントしている場合には、走行経路を設定する際の「3つ目の交差点」はC13となる。したがって、交差点C13で右折する走行経路を設定して表示対象区間画像を描画、表示した場合には、発話者の意図に対して誤った走行案内を行うことになる。
【0063】
図7は、「コンビニの看板」を誤判定する具体例を示す図である。図7にはカメラ8で撮像された画像が示されており、この画像内にコンビニエンスストアの3つの看板F11、F12、F13が含まれているものとする。音声情報には、コンビニの看板について特別な指定はないため、最初に現れる看板F11を、音声情報に含まれる「コンビニの看板」と判断する。しかし実際には、発話者が2番目の看板F12や3番目の看板F13を念頭に置いて上記の音声を発したのであれば、「次の信号」の位置を誤って判定してしまうおそれがある。
【0064】
図8は、「白い建物」を誤判定する具体例を示す図である。図8にはカメラ8で撮像された画像が示されており、この画像内に左側に2つの白い建物W11、W12が含まれているものとする。音声情報には、白い建物について特別な指定はないため、左折後にまっすぐ進んで最初に現れる左側の白い建物W11を、音声情報に含まれる「白い建物」と判断する。しかし実際には、発話者が2番目の白い建物W12を念頭に置いて上記の音声を発したのであれば、目的地の位置を誤って判定してしまうおそれがある。
【0065】
このような誤判定の可能性を考慮して、上述したナビゲーション装置には正誤判定部36が備わっている。正誤判定部36は、自車位置が、走行中の第1の区間R1から第2の区間R2に進入した後に、この第2の区間R2が正しかったか否かを判定しており、経路特定部32は、第2の区間R2が誤っている旨の判定がなされたときに、新しい第2の区間R2’と、その時点における自車位置からこの新しい第2の区間R2’に至る復帰経路(例えば経路探索処理を行ってコスト最小の復帰経路が決定される)とを設定する。そして、これら新しい第2の区間R2’と復帰経路とが含まれる表示対象区間が表示区間設定部33によって設定され、復帰経路が含まれる表示対象区間画像が地図画像上に表示される。
【0066】
図6に示す例では、交差点C13で右折して進入した第2の経路R2が誤りであった場合に、次の候補としての第2の経路R2’が設定されるとともに、この第2の経路R2’に復帰するための復帰経路Bが設定される。例えば、発話者がカウントの対象としている交差点が十字路のみであることを想定して、3つ目の交差点C14を特定し、この交差点C14で右折して進入する第2の経路R2’や復帰経路Bが設定される。誤った第2の経路R2に沿って自車両を運転中の運転者は、表示された復帰経路Bに沿って自車両を運転して、正しい第2の区間R2’に車両を進めることができる。図7に示す看板の誤検出についても同様であり、最初に現れる看板F11に基づいて次の信号で左折した後の走行経路(第2の区間R2)が誤りであった場合には、次の看板F12に基づいて次の信号で左折した後の新たな走行経路(第2の区間R2’)と復帰経路とを設定すればよい。
【0067】
ところで、これらの新たな第2の経路R2’は、最初に進入した第2の区間R2が誤りであることがわかった後に設定してもよいが、この第2の区間R2に進入する前であって第1の区間R1を走行中に予め用意しておくことが望ましい。例えば、図6に示す例では、自車両が最初の右折候補である交差点C13に至る前に、他の右折候補である交差点C14を抽出しておくことが望ましい。他の右折候補は、2つ以上であってもよい。
【0068】
このように、音声情報の入力内容の不正確さ等に起因して誤った走行経路を設定した場合であっても、最初の地点に戻ることなく途中から別の経路に誘導することが可能となる。なお、最初に進入した第2の区間R2が誤りであることは、その後の経路生成情報の有無(例えば、図6に示す第2の区間R2に進入した後にコンビニの看板が見つからない場合など)に応じて自動判定することもできるが、最も簡単には、走行中の道路が音声で指示された道路とは異なることを認識した運転者や他の搭乗者が操作部4を操作し、この操作内容に応じて判定するようにしてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、車両に搭載されたナビゲーション装置に本発明を適用したが、スマートホン等の携帯端末装置に本発明を適用してもよい。例えば、スマートホンの所有者が周囲の人に道を尋ね、スマートホンの画面上に目的地までの移動経路を表示させ、この移動経路に沿って歩く場合などが考えられる。
【0070】
また、上述した実施形態では、カメラ8で撮像された画像に対して画像認識を行うようにしたが、地図データに含まれる特徴のみが含まれるように音声情報を入力する場合も考えられる。この場合には、カメラ8と画像認識部31は省略するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
上述したように、本発明によれば、音声情報に対して音声認識処理を行って特定された移動経路について、移動経路に含まれる各区間について正確度を判定することで正確度が高い区間を抽出することができ、正確度が低い移動経路を表示(提示)することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 ナビゲーションコントローラ
3 地図データ記憶装置
4 操作部
5 車両位置検出部
6 表示装置
7 マイクロホン
8 カメラ
10 地図バッファ
12 地図読出制御部
14 地図描画部
20 車両位置計算部
30 音声認識部
31 画像認識部
32 経路特定部
33 表示区間設定部
34 正確度判定部
35 表示区間描画部
36 正誤判定部
50 入力処理部
60 表示処理部
図1
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図8