(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】台車載せ降ろし機構を備える鉄道車両用トラバーサ
(51)【国際特許分類】
B61J 1/10 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
B61J1/10 B
(21)【出願番号】P 2019166784
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖田 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】水落 雅貴
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-092662(JP,U)
【文献】特開平02-296548(JP,A)
【文献】特開2009-234523(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103068696(CN,A)
【文献】国際公開第2012/029339(WO,A1)
【文献】特開2005-088602(JP,A)
【文献】特開平09-301171(JP,A)
【文献】特開2017-185905(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01253119(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00- 1/54
B60S 13/02
B61F 5/00
B61J 1/00- 3/12
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両又は車両台車を搭載するための基台と、該基台に設けられたレールと、を有する鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記基台には、その両側面に立ち上げられる側壁部を有し、
該側壁部には、前記車両台車を保持するための少なくとも一対の引き込み
機構が設けられ、
該引き込み
機構は、引き込みアームと、該引き込みアームが前記基台の端部から突出・収納可能に進退するための直動機構が備えられ、
該直動機構は、側壁部に設けられたリニアガイドレール上を移動可能な直動ベースと、該直動ベースを進退するループチェーンを有し、
前記引き込みアームには、
その先端部分が内側に折れる構造の水平回動機構と、
該先端部分を鉛直方向上下に位置調整させるための上下位置調整機構と、
その先端が前記車両台車に設けられた穴に挿入される保持機構と、を備えていること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記引き込みアームの前記水平回動機構は、前記引き込みアームの前記先端部分が内側に折れることができるようにピン構造により回転支持され、前記先端部分は前記引き込みアームに対して内側に折れた姿勢で固定可能な構成であり、
前記先端部分は、先端位置を調整する調整機構を備えること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記引き込みアームの前記上下位置調整機構は、前記引き込みアームを回動可能に支持する回動支持部よりなること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用トラバーサに、自走機構を備えない車両台車を載せ降ろしする機構を備える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両の分解検査、修繕等を行うためには、鉄道車両における車体と台車とを分離する必要がある。そこで、本線レール上を走行する車両台車から、施設内に敷設したレール上を走行するための仮台車に交換した上で、鉄道車両の分解検査、修繕等を行うための場所に入場する。そして、分解検査、修繕終了後に再び仮台車から車両台車に交換する作業が行われる。この際、交換を終えて、不要となった仮台車を返送ラインへ移送、または必要となった仮台車を移送する手段として、鉄道車両用トラバーサが用いられる。
【0003】
鉄道車両用トラバーサは、鉄道車両の作業場に向けて敷かれる移動レールの上を移動させ、該当するレール上に待機する鉄道車両と対面する位置で停止させる。そして、鉄道車両又は車両台車を鉄道車両用トラバーサの上に移動させる。この時に、該当するレールの高さから鉄道車両用トラバーサの上に引き込む為にトングレールと呼ばれる先端が先細る形状に形成された部材を用いる。したがって、鉄道車両又は車両台車を、敷設されているレールから鉄道車両用トラバーサの上に移動させるためには、トングレールによって形成された斜面を移動させる必要がある。このようなトングレールを用いない場合には、ピットを掘って高さを調節するケースもある。
【0004】
特許文献1には、鉄道車両用トラバーサに関する技術が開示されている。ワークを搭載し移動レール上を走行可能に形成された基台と、基台の側端部に収納可能に装着されたトングレールとを備え、移動レールと直交する方向に敷設され、鉄道車両が待機するレール上のワークを、トングレールを経由して基台上に搭載し、移送する鉄道車両用トラバーサである。トングレールは先端部が略水平方向に回動可能に形成され、かつ、先端部は使用時においてレールの上端と当接し、上下方向で先細り状に形成されている。
【0005】
特許文献2には、車両台車のトラバース方法及び車両台車用トラバーサに関する技術が開示されている。床面に設けられたレール上の車両台車を、トラバーサに設けられた伸縮アームの把持部で把持し、レール上に車両台車を走行させながらトラバーサの本体フレーム内に引き込む。そして、トラバーサに設けられた昇降装置で車両台車をレール上から持ち上げるとともに、トラバーサを床面の高さでレールと直交する方向に走行させる。これによって、車両台車を床面に設けられた複数の平行なレール間でトラバースすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-185905号公報
【文献】特開平9-301171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、トラバーサに設けられたトングレールを用いて鉄道車両をトラバーサに積み込むことが可能ではあるが、トングレール上の斜面を鉄道車両が移動する必要がある。鉄道車両は自走手段を備えた仮台車に乗せ替えられている状態なので、トラバーサに積み込むことは可能であるが、車両台車は自走手段を備えていないため、別途牽引車やウインチなどを用いてトングレール部を登坂させる必要がある。しかし、牽引車やウインチをトラバーサとは別に用意して、トラバーサに車両台車を積み込む毎に運用することは非効率である。また、牽引車やウインチを用意できない場合には、人手によって車両台車をトラバーサに積み込むこととなり、安全面において望ましくなかった。
【0008】
一方、特許文献2に開示される技術では、車両台車のみを持ち上げる構成であるため、車両台車自身が自走手段を備えていなくとも移送可能ではあるが、鉄道車両を移動させることはできない。しかしながら、鉄道車両を移動するためのトラバーサと、車両台車を移動させるための移動装置は、レイアウト上同じ場所に配置することが困難であり、可能であれば鉄道車両も車両台車も同じトラバーサによって移動させることが望ましい。
【0009】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、鉄道車両と、自走できない車両台車を載せ降ろしが可能な、台車載せ降ろし機構を備える鉄道車両用トラバーサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両用トラバーサは、以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)鉄道車両又は車両台車を搭載するための基台と、該基台に設けられたレールと、を有する鉄道車両用トラバーサにおいて、前記基台には、その両側面に立ち上げられる側壁部を有し、該側壁部には、前記車両台車を保持するための少なくとも一対の引き込みアームが設けられ、該引き込みアームが前記基台の端部から突出・収納可能に進退するための直動機構が備えられ、前記引き込みアームには、その先端部分が内側に折れる構造の水平回動機構と、該先端部分を鉛直方向上下に位置調整させるための上下位置調整機構と、を備えていること、を特徴とする。
【0012】
上記(1)に記載の態様により、鉄道車両用トラバーサによって鉄道車両だけでなく、自走手段を備えない車両台車を搬送することが可能となる。トラバーサに備えるトングレールを、既設のレール上に配置して車両台車の側面を一対の引き込みアームによって把持し、直動機構を用いて引き込みアームを移動させることで基台の上に車両台車を引き込むことが可能となる。鉄道車両は仮台車に乗せられて自走可能な状態であるが、車両台車は自走手段を備えていない。このため、鉄道車両用トラバーサに載せて搬送できることで作業の効率化を図ることが可能である。
【0013】
(2)(1)に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、前記引き込みアームの前記水平回動機構は、前記引き込みアームの前記先端部分が内側に折れることができるようにピン構造により回転支持され、前記先端部分は前記引き込みアームに対して内側に折れた姿勢で固定可能な構成であり、前記先端部分は、先端位置を調整する調整機構を備えること、が好ましい。
【0014】
上記(2)に記載の態様により、引き込みアームの先端を車両台車に固定し易くなる。車両台車の側面には構造的に穴があったり引っかけるためのブラケットが設けられたりしている場合が多く、引き込みアームの先端部分を内側に折り曲げることで、車両台車へのアクセスと車両台車への固定がし易くなる。車両台車はそれなりの重量があるため、安全面からもきちんと固定されることが望ましい。先端部分が内側に曲がる機構を採用することで、引き込みアームと車両台車の固定がし易くなり、作業性も向上する。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、前記引き込みアームの前記上下位置調整機構は、前記引き込みアームを回動可能に支持する回動支持部よりなること、が好ましい。
【0016】
上記(3)に記載の態様により、引き込みアームの角度を変更することで、その先端部分の高さを自在に変更できるので、複数種類の車両台車に引き込みアームを対応させて、固定することが可能である。これにより、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】本実施形態の、引き込み機構の側面図である。
【
図5】本実施形態の、引き込みアーム先端の側面拡大図である。
【
図6】本実施形態の、引き込み機構の上面視図である。
【
図7】本実施形態の、引き込みアーム先端の平面拡大図である。
【
図8】本実施形態の、車両台車に対して保持部材を挿入した状態の模式図である。
【
図9】本実施形態の、基台部の上に車両台車を引き込んだ状態の模式図である。
【
図10】本実施形態の、車両台車をトラバーサの中央辺りまで移動させた状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、本実施形態の、トラバーサの側面図を示す。
図2に、本実施形態の、トラバーサの平面図を示す。
図3に、本実施形態の、トラバーサの正面図を示す。トラバーサ100は、基台部101、側壁部102、及び屋根部103よりなり、基台部101の端部側に設けられた端部開口105から鉄道車両10又は車両台車20を搬入できる。
【0019】
基台部101は、略矩形状に形成された枠体に床板が接合された台車本体であって、横行用車輪109が下部に複数備えられている。横行用車輪109は整備場の敷地内に敷設された横行用レール150の上を走行するために設けられ、図示しないモータが接続されることでトラバーサ100を自走させることができる。基台部101には、2本の移動レール107が平行に配置される。この移動レール107の上に鉄道車両10又は車両台車20を載せる。この際、鉄道車両10は仮台車に交換されて自走することができる一方で、車両台車20は自走手段を備えていない。
【0020】
移動レール107の延長線上には、トングレール108が配置される。トングレール108は高さ方向の厚みが先端にいくに従って徐々に先細り状に形成されており、図示しない既設のレールに重なるように配置される。したがって、トングレール108が斜面を形成する形となる。
【0021】
基台部101の両端からは側壁部102が垂直に立ち上げられている。鉄道車両10が基台部101に載せられた場合には、その両脇に側壁部102が配置される形となる。つまり、移動レール107と側壁部102は平行に配置される位置関係になる。また、側壁部102の上部端には屋根部103が設けられている。屋根部103は、
図3に示す様に、鉄道車両10がトラバーサ100内に納められるような高さに、トラバーサ100を全体的に覆うように設けられている。
【0022】
図4に、引き込み機構の側面図を示す。
図5に、引き込みアーム先端の側面拡大図を示す。
図6に、引き込み機構の上面視図を示す。
図7に、引き込みアーム先端の平面拡大図を示す。トラバーサ100には、車両台車20をトラバーサ100内部に引き込むための2対の引き込み機構120が備えられ、引き込み機構120は側壁部102に取り付けられている。
【0023】
引き込み機構120は引き込みアーム121と直動機構122よりなり、トラバーサ100の両側に設けられる端部開口105から引き込みアーム121が突出・収納可能に進退する事ができる。したがって、引き込みアーム121が前進端にいる場合にはトラバーサ100の両端から突出するような状態となる。なお、本実施形態では引き込み機構120が2対設けられているが、どちらか1対だけをトラバーサ100に有する構成でも良い。
【0024】
直動機構122は、直動ベース126に保持される支持部125と、側壁部102に2条設けられたリニアガイドレール123と、リニアガイドレール123の上部に配置されるループチェーン127等を備える。ループチェーン127は両端に備えられるスプロケット127aに巻き掛けられており、スプロケット127aが
図6に示す様に端部に設けられたモータ124によって回転されることで、ループチェーン127が回転する構成となっている。
【0025】
引き込みアーム121は、直動ベース126に対して回動可能に支持部125を回転中心として保持されており、上下位置調整機構として機能する。引き込みアーム121の一方の端部には保持機構121aが設けられ、他方の端部にはカウンターウェイト121bが設けられている。カウンターウェイト121bは、引き込みアーム121の逆端に設けられる保持機構121aとの重量バランスを取るために配置されている。この支持部125によって引き込みアーム121が回転可能に支持されているので、所定の角度を引き込みアーム121が回動し、任意の角度で保持できる構成となっている。この構造によって引き込みアーム121の先端に設けられた保持機構121aを任意の高さに手動で調整することが可能となっている。
【0026】
直動ベース126は側壁部102に2条設けられたリニアガイドレール123に保持されており、リニアガイドレール123上を移動可能な構成になっている。直動ベース126は、その上に設けられたループチェーン127が接続され、ループチェーン127はチェーンガイド128によってガイドされている。このループチェーン127が駆動することで、直動ベース126に取り付けられた引き込みアーム121を第1ポジションP1から第2ポジションP2までの間を任意に移動させることができる。モータ124の動作は図示しない操作パネル等によって行われる。
【0027】
引き込みアーム121の端部に設けられた保持機構121aは、ピン支持構造部121cにより、
図7に示す様に90度内側に折れる構造になっている。保持機構121aは内側に折れた状態で、繋止部材121dを用いてその姿勢を維持することができる。内側に折れた状態の保持機構121aの先端は、スライド機構によって前進し、車両台車20に設けられた穴に挿入される。保持機構121aに備えられたスライド機構が、保持機構121aの先端位置調整する調整機構として機能し、その位置を任意に調整ができ、固定することができる。
【0028】
なお、車両台車20に穴が設けられていない場合には、別途、車両台車20に取り付けられたブラケットに治具などを取り付けて、保持機構121aと車両台車20を接続することになる。これは、鉄道車両10をトラバーサ100内に引き込む際には、鉄道車両10と引き込みアーム121の端部に設けられた保持機構121aが干渉しないようにするための配慮でもある。そして、引き込みアーム121を使用せず鉄道車両10をトラバーサ100に搭載する場合に、引き込みアーム121の端部に設けられた保持機構121aが干渉しないために、内側に折れる機構を備える。
【0029】
本実施形態の鉄道車両用のトラバーサ100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0030】
まず、本実施形態の効果として、鉄道車両用のトラバーサ100に自走手段を持たない車両台車20を搭載することが可能となる点が挙げられる。鉄道車両10又は車両台車20を搭載するための基台部101と、基台部101に設けられた移動レール107と、を有する鉄道車両用のトラバーサ100において、基台部101には、その両側面に立ち上げられる側壁部102を有し、側壁部102には、車両台車20を保持するための少なくとも一対の引き込みアーム121が設けられている。
【0031】
また、引き込みアーム121が基台部101の端部から突出・収納可能に進退するための直動機構122が備えられ、引き込みアーム121には、その先端部分の保持機構121aが内側に折れる構造の水平回動機構と、保持機構121aが鉛直方向上下に回動するための上下回動機構と、を備え、基台部101の端部には、移動レール107を延長し、先細り状に形成されるトングレール108を備えている。
【0032】
トラバーサ100がこのような構成を有するために、図示しない自走手段を備えた鉄道車両10だけではなく、自走手段を備えていない本台車である車両台車20を搭載することができる。課題に示した通り、可能であれば鉄道車両用のトラバーサ100を用いて車両台車20を搬送したいため、引き込み機構120を搭載することでそれを実現できることは、作業効率を上げる上でも有益である。
【0033】
次に、実際に車両台車20をどのように引き込み機構120により引き込むかについて
図8乃至
図10を用いて説明する。
図8に、車両台車に対して保持部材を挿入した様子を示す。
図9に、基台部の上に車両台車を引き込んだ様子を示す。
図10に、車両台車をトラバーサの中央辺りまで移動させた様子を示す。まず、直動ベース126を移動端まで移動させ、引き込みアーム121の角度を調整する。引き込みアーム121は支持部125に回動可能に保持されているので、ロックを解除して手動で引き込みアーム121の端部に設けられた保持機構121aの高さを調整する。
図5にも、角度調整の様子を示している。
【0034】
その後、
図7に示す様に保持機構121aを90度内側に曲げて、車両台車20と保持機構121aの先端部分を連結する。連結する手法は車両台車20の側梁に設けられている図示しない穴を用いることを想定しており、保持機構121aの先端を側梁の穴に挿入することで、車両台車20を引き込みアーム121によって牽引できる状態とする。保持機構121aにはスライド機構が備えられていて、保持機構121aが90度内側に曲げられた状態で、内側方向に前進させることが可能である。
【0035】
保持機構121aの高さは前述したように支持部125によって引き込みアーム121の角度変更を行うことで、手動で変更が可能なので、車両台車20の側梁に設けられた穴に対して、微調整をしながら挿入することができる。なお、車両台車20に適切な穴が無い場合には、車両台車20側に治具を取り付けて保持機構121aで保持可能にする事が好ましい。車両台車20の台車枠には突起や穴が設けられる事が多いため、そうした突起や穴を利用すれば、保持機構121aでの固定が可能となる。こうした高さを調整する機能を持っていることで複数種類の車両台車20に対応することができる。
【0036】
保持機構121aと車両台車20の固定が完了したところで、モータ124を稼働させることで直動ベース126を移動させる。すると、
図9及び
図10に示す様に引き込みアーム121に引っ張られて車両台車20がトングレール108の上に乗り、基台部101の上に設けられた移動レール107の上を搬送される。ループチェーン127の稼働によって車両台車20が基台部101の上を移動し、
図6に示す様にトラバーサ100の内部まで引き込むことが可能であり、トラバーサ100の上には車両台車20が4台ほど載せられる。なお、引き込み機構120はトラバーサ100の両側に設けられているため、端部開口105のどちらからも車両台車20を引き込み可能である。
【0037】
この作業は、モータ124を逆回転させて動作させればループチェーン127は逆方向に回り、車両台車20をトラバーサ100から降ろす作業にも使うことができる。その手順も、前述とは逆の手順で行えば良い。こうして、トラバーサ100に対して自走手段を備えた鉄道車両10だけでなく、自走手段を備えない車両台車20も搭載ができ、自走手段を備えない車両台車20に関しては、引き込み機構120を用いて作業ができるために、安全に行うことができる。
【0038】
ピットを掘らず、トングレール108を利用して鉄道車両10や車両台車20をトラバーサ100に搭載したい場合には、どうしても基台部101と既設のレールとの間に高低差を生じてしまう。そして、こうした引き込み機構120を備えていない場合には、課題にも書いた通り、牽引車やウインチなどの牽引設備を別途用意して、自走手段を備えない車両台車20をトラバーサ100に搭載する作業をする必要がある他、このような牽引設備を用意できない場合には人手で行われる場合がある。そうなると、何れの手段を用いるにせよ、複数の人手を要することになり非効率である。
【0039】
しかし、引き込み機構120を備えることで、操作パネルを操作して電動のモータ124を動作させることでトラバーサ100内に車両台車20を引き込み、或いはトラバーサ100内に搭載した車両台車20を降ろすことができる。この結果、短時間に効率的に作業を行うことができる。引き込みアーム121と車両台車20を接続する作業は、人手で行われる必要があるが、トラバーサ100への載せ降ろしは操作パネルでの操作で可能である。このため、載せ降ろしの際に車両台車20に作業者が近づく必要がなく、万が一、車両台車20が引き込みアーム121から外れるような事があった場合にも、作業者がそれに巻き込まれることが無くなるので、安全性の向上に繋がることになる。
【0040】
また、特許文献2に示されるような台車専用のトラバーサを用意する方法を採ると、台車専用のトラバーサと、鉄道車両用のトラバーサは別の場所に配置する必要があって、配置レイアウト上の制約が大きくなり、大きなスペースを必要とすることにもなる。トラバーサ100に鉄道車両10だけでなく、車両台車20も搭載できる構成にすることで、スペース的な効率化を図ることも可能となる。
【0041】
以上、本発明に係る鉄道車両用のトラバーサ100に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、引き込み機構120の直動機構122にはリニアガイドレール123とループチェーン127を用いているが、他の直動機構を用いることを妨げない。また、トングレール108は必要に応じて、跳ね上げ状態として収納ができる構成にしたり、分解・組み立て可能な構成としたりして、トラバーサ100の移動をスムーズに行える構成にすることを妨げない。
【0042】
また、トングレール108を備えないトラバーサ100にも適用が可能である。例えばピットを掘って、既設のレールとトラバーサ100内に設けられた移動レール107との高低差が無い状態で移動させる形の場合でも、車両台車20には一定の質量があるので、作業者が手作業で移動させる場合には、リスクが考えられる。トングレール108を備えないので、トングレール108によって形成される斜面は無くなるが、停止させる時には慣性力が作用していることで、作業者がそれに巻き込まれるおそれがある。しかし、本発明を適用させることで、そうしたリスクを無くすことができる。
【0043】
また、本実施形態では、仮台車に乗せられて自走手段を備えている鉄道車両10と、自走手段を持たない車両台車20の搬送をする前提で説明しているが、鉄道車両10が車両台車20を履いた状態、すなわち自走手段を持たない状態の鉄道車両10を、引き込み機構120を用いてトラバーサ100に搭載する構成とすることを妨げない。この場合、リニアガイドレール123やループチェーン127の耐荷重の向上や、モータ124の能力向上などが必要であるが、本実施形態と同様の構成で実現が可能である。また、仮台車単体についてもトラバーサ100に搭載することを妨げない。
【符号の説明】
【0044】
10 鉄道車両
20 車両台車
100 トラバーサ
101 基台部
102 側壁部
103 屋根部
120 引き込み機構
121 引き込みアーム
121 保持機構
122 直動機構
123 リニアガイドレール
124 モータ