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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】防水ケーブル、防水ケーブル製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20230731BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20230731BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20230731BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/12
B29C33/42
B29C45/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019208934
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021079624
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】浅野 貴生
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-297852(JP,A)
【文献】特開2002-225067(JP,A)
【文献】特開平01-220465(JP,A)
【文献】特開平08-118411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケーブルと、
その先端が前記第1のケーブルの先端に接続される第2のケーブルと、
接続箇所を被覆する第1樹脂部材と、
前記第1樹脂部材を被覆する第2樹脂部材と、
前記第2樹脂部材を被覆する第3樹脂部材を含み、
前記第2樹脂部材には、前記第2樹脂部材を貫通しない凹部が形成され
前記第3樹脂部材には、前記凹部に連通した孔が形成され
防水ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の防水ケーブルであって、
前記凹部は、前記金型ピンと符合するサイズである
防水ケーブル。
【請求項3】
請求項1に記載の防水ケーブルであって、
前記第1樹脂部材に、前記第2樹脂部材を形成する2次成型用金型と接触する位置決め凸部が形成され、
前記金型ピンの長さが前記第3樹脂部材の厚みと前記位置決め凸部の高さの合計未満とされている
防水ケーブル。
【請求項4】
請求項3に記載の防水ケーブルであって、
前記凹部は、前記位置決め凸部とは異なる箇所に形成されている
防水ケーブル。
【請求項5】
請求項1に記載の防水ケーブルであって、
前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材の材質を同じ材質とし、前記第3樹脂部材を前記第1樹脂部材および前記第2樹脂部材よりも柔らかい材質とした
防水ケーブル。
【請求項6】
インサート成形により2つのケーブルの接続箇所を被覆する第1樹脂部材を形成する1次成型ステップと、
インサート成形により前記第1樹脂部材を被覆する第2樹脂部材を形成する2次成型ステップと、
インサート成形により前記第2樹脂部材を被覆する第3樹脂部材を形成する3次成型ステップを含み、
前記2次成型ステップにおいて、
前記3次成型ステップにおいて前記第2樹脂部材を固定する金型ピンを前記第2樹脂部材に挿しこむための凹部であって、前記第2樹脂部材を貫通しない凹部が形成される
防水ケーブル製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の防水ケーブル製造方法であって、
前記凹部は、前記金型ピンと符合するサイズである
防水ケーブル製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の防水ケーブル製造方法であって、
前記1次成型ステップにおいて、
前記第1樹脂部材に、前記第2樹脂部材を形成する2次成型用金型と接触する位置決め凸部が形成され、
前記金型ピンの長さが前記第3樹脂部材の厚みと前記位置決め凸部の高さの合計未満とされている
防水ケーブル製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の防水ケーブル製造方法であって、
前記凹部は、前記位置決め凸部とは異なる箇所に形成されている
防水ケーブル製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の防水ケーブル製造方法であって、
前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材の材質を同じ材質とし、
前記第3樹脂部材を前記第1樹脂部材および前記第2樹脂部材よりも柔らかい材質とした
防水ケーブル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水ケーブル、防水ケーブル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルの接続部のモールド構造およびモールド方法の従来技術として、例えば特許文献1がある。特許文献1は、ケーブルの導体同士を接続した接続部を絶縁・保護するモールド部の構造であって、位置決め用の基体片の表面に、位置決め用の一対もしくは複数対の側壁片が一体形成されてなる中子が用いられており、この中子の側壁片の間に導体の接続部が挿入され、その接続部が基体片上に配置され、ケーブルの電線が平面的に見て重なることなく間隔を隔てて配置された状態で、導体の接続部及び中子が樹脂にてモールドされ、基体片の裏面には、中子をモールド部に対して位置決めするための板状の位置決め片が一体形成されていることによって特徴づけられる。
【0003】
ケーブルのジョイント部の防水処理方法の従来技術として、例えば特許文献2がある。特許文献2のジョイント部の防水処理方法は、配線間のジョイント部を防水処理する方法において、ジョイント部から所定の位置に位置決め部を形成する第1のモールド工程と、該第1のモールド工程の後、位置決め部を基準としてジョイント部を位置決めし、該ジョイント部周囲をさらに樹脂で被覆する第2のモールド工程とを有することを特徴とする。上記請求項1記載のジョイント部の防水処理方法によれば、第1のモールド工程では、ジョイント部から所定の位置に位置決め部が形成される。第2のモールド工程では、まず前工程で得られた位置決め部を固定して位置決めすることで、該位置決め部より所定位置に位置するジョイント部を正確に位置決めすることができる。このように正確にジョイント部を位置決めした状態でジョイント部周囲を樹脂によって被覆することで、ジョイント部周囲に適切な厚みをもって防水層を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4926340号公報
【文献】特開2001-297852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のモールド構造は、中子を用いて防水性の確保、位置決めなどを行っているが、部品管理が手間であり、製造が容易でないという課題がある。また特許文献2の防水処理方法は2次成型までで防水性を確保しようとする方法であるため、例えば位置決め用に金型ピンが用いられた場合に、金型ピン用に設けられた穴から水が内部に侵入する可能性があり、防水性が不十分となる場合がある。
【0006】
そこで本発明は、製造が容易かつ防水性が向上する防水ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防水ケーブルは、第1のケーブルと、第2のケーブルと、第1樹脂部材と、第2樹脂部材と、第3樹脂部材を含む。
【0008】
第2のケーブルは、その先端が第1のケーブルの先端に接続される。第1樹脂部材は、接続箇所を被覆し、インサート成形により形成される。第2樹脂部材は、第1樹脂部材を被覆し、インサート成形により形成される。第3樹脂部材は、第2樹脂部材を被覆し、インサート成形により形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防水ケーブルによれば、製造が容易かつ防水性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1のケーブルと第2のケーブルの接続箇所を示す斜視図。
図2】インサート成形により接続箇所に形成された第1樹脂部材の斜視図。
図3】インサート成形により接続箇所に形成された第2樹脂部材の斜視図。
図4】インサート成形により接続箇所に形成された第3樹脂部材の斜視図。
図5】防水ケーブルの平面図。
図6図5の6-6切断線における断面図。
図7図5の7-7切断線における断面図。
図8図5の8-8切断線における断面図。
図9図5の9-9切断線における断面図。
図10】実施例1の防水ケーブル製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0012】
<防水ケーブル1>
実施例1の防水ケーブル1は、ケーブル同士の接続箇所を防水するための樹脂層を3層備えることを特徴とする。例えば図1図4に示すように、防水ケーブル1は第1のケーブル91の各芯線の先端911と、第2のケーブル92の各芯線の先端921とを接続する接続箇所を防水するための樹脂層を3層備える。
【0013】
図1に示す接続箇所は、典型的には、ケーブルの分岐箇所に設けられる。これ以外にも、単にケーブルとケーブルのジョイント部分であってもよい。ケーブル同士の接続部分の反対側は、プラグなどにより接続されていてもよいし、機器に配線されていてもよいし、用途は様々である。
【0014】
本実施例では、第1のケーブル91の先端において複数の芯線を分岐させ、第2のケーブル92の各芯線に接続している。先端911と先端921の接続は例えば半田付けにより行うことができる。本実施例では、第2のケーブル92の各芯線は芯線の延伸方向と垂直な方向に一列に配列されている。
【0015】
図2に示すように、第1樹脂部材11は、上記の接続箇所を被覆し、インサート成形により形成される。本実施例では、第2のケーブル92の各芯線は芯線の延伸方向と垂直な方向に一列に配列されているため、第1樹脂部材11は、全ての芯線を覆うように扁平な略直方体形状となっている。
【0016】
第1樹脂部材11には、後述する第2樹脂部材12を形成するための2次成型用金型の内側面と接触する位置決め凸部111が形成される。本実施例では、位置決め凸部111は、第1樹脂部材11の第1のケーブル91、第2のケーブル92が貫通していない4つの面(上面、右側面、左側面、底面)に少なくとも1つずつ形成される。同図の例では、位置決め凸部111は、第1樹脂部材11の上面と底面に4つずつ形成され、第1樹脂部材11の右側面と左側面の中央に1つずつ形成されている。
【0017】
これらの位置決め凸部111の各先端が2次成型用金型の内側面と接触することにより、第1樹脂部材11の位置決めがなされる。具体的には、図7図9の断面図に示すように、第2樹脂部材12は、2次成型用金型の内側面と位置決め凸部111によって生じる空隙に充填されて形成される。従って、図3に示すように位置決め凸部111の各先端と第2樹脂部材12の対応する各面とが同一平面内に位置することになる。従って、位置決め凸部111により、第1樹脂部材11の位置決め凸部111を除く部分が確実に第2樹脂部材12に被覆されることになる。これにより、芯線や半田の一部が製造誤差などによって、第1樹脂部材11の外側にはみ出した場合であっても、はみ出した部分は第2樹脂部材12によりコーティングされて防水される。
【0018】
図3に示すように、第2樹脂部材12には、3次成型時に第2樹脂部材12を固定する金型ピンを挿しこむための凹部121が形成される。凹部121は、防水性を確保するために、第2樹脂部材12を貫通しないように、第2樹脂部材12上に窪みとして形成されている。凹部121は、位置決め凸部111とは異なる箇所に形成されることが必要である。凹部121により、第2樹脂部材12は第3樹脂部材13に対して正しく位置決めされ、第2樹脂部材12全体が第3樹脂部材13に確実に被覆される。
【0019】
図7図9に示すように第3樹脂部材13の厚みと凹部121の深さの合計が金型ピンの長さと等しくなるように、第3樹脂部材13の厚み、凹部121の深さ、金型ピンの長さを決定すればよい。
【0020】
また、金型ピンの長さ(図9におけるL)が第3樹脂部材13の厚みと位置決め凸部111の高さの合計(図8におけるL)未満になっていれば、凹部121は第2樹脂部材12を貫通しないため、この条件を満たすようにすればよい。
【0021】
図4に示すように、第3樹脂部材13形成後、金型ピンを抜き取ることにより、第3樹脂部材13に孔131が形成される。
【0022】
例えば、第1樹脂部材11と第2樹脂部材12の材質を同じ材質とし、第3樹脂部材13を第1樹脂部材11および第2樹脂部材12よりも柔らかい材質として、各樹脂部材を形成してもよい。
【0023】
<防水ケーブル1の製造方法>
図10に、本実施例の防水ケーブル1の製造方法を示す。同図に示すように、1次成型ステップとして、インサート成形により2つのケーブル91、92の接続箇所を被覆する第1樹脂部材11を形成する(S1)。上述したように、1次成型ステップにおいて、第1樹脂部材11に、第2樹脂部材12を形成する2次成型用金型と接触する位置決め凸部111を形成すれば好適である。次に、2次成型ステップとして、インサート成形により第1樹脂部材11を被覆する第2樹脂部材12(第1樹脂部材11と同じ材質とすれば好適である)を形成する(S2)。上述したように、2次成型ステップにおいて、3次成型ステップにおいて第2樹脂部材12を固定する金型ピンを第2樹脂部材12に挿しこむための、第2樹脂部材12を貫通しない凹部121を形成すれば好適である。次に、3次成型ステップとして、インサート成形により第2樹脂部材12を被覆する第3樹脂部材13(第1、第2樹脂部材11、12よりも柔らかい材質とすれば好適である)を形成する(S3)。
【0024】
<効果>
一般的に、芯線の偏心をゼロに抑えることは困難である。また露出箇所の制御も困難である。そこで本実施例では、芯線の偏心を押さえるための1次成型ステップを行い第1樹脂部材11を形成した。これにより、仮に1次成型ステップにおいて芯線が第1樹脂部材11から露出していたとしても、続く2次成型ステップによる第2樹脂部材12によって防水性が担保される。1次成型ステップにおいて、2次成型用金型と接触する位置決め凸部111を設けておくことで第1樹脂部材11自体が偏らないようにすることができる。また3次成型ステップにおいて、第2樹脂部材12が成型圧で動かないように金型ピンで固定するが、金型ピンの挿通位置を前述の位置決め凸部111と異なる位置とすることで、金型ピンによる孔131からの水の侵入を防ぐことができる。また、1次成型ステップと2次成型ステップにおいて同一の樹脂材料を用いることで合わせ面の密着性が増し、第1樹脂部材11と第2樹脂部材12の合わせ面からの水の侵入を防ぐことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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