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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/18 20060101AFI20230731BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230731BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230731BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20230731BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20230731BHJP
   G03G 5/04 20060101ALI20230731BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
G03G21/18 114
G03G15/00 651
G03G21/00 318
G03G9/093
G03G9/087
G03G5/04
G03G5/147
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018213923
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079911
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-11-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 駿介
(72)【発明者】
【氏名】三井 良浩
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖数
(72)【発明者】
【氏名】萩原 慎一
(72)【発明者】
【氏名】井加田 洸輔
(72)【発明者】
【氏名】野中 克之
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/093519(WO,A1)
【文献】特開2016-021041(JP,A)
【文献】特開2014-170122(JP,A)
【文献】特開2013-137449(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107961(WO,A1)
【文献】特開2015-125187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/18
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 9/093
G03G 9/087
G03G 5/04
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって、
潜像が形成される周面を有する回転可能な感光体と、
前記感光体上の前記潜像を現像するために前記感光体へ現像剤を供給する現像装置と、
前記感光体の前記周面に当接して当該周面をクリーニングする板状弾性体と、
を備え、
前記感光体は、前記周面に、前記周面の周方向に延びる溝が回転軸方向に複数並ぶように形成されており、
前記現像装置から前記感光体へと供給される前記現像剤は、
トナー粒子、及び、前記トナー粒子の表面を被覆する、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体、を有するトナーを含有し、
前記板状弾性体の前記感光体に対する侵入量をδ(mm)とし、
前記トナー粒子の表面における前記有機ケイ素重合体の固着率をα(%)としたときに、
前記固着率は95%以上97%以下であり、且つ、下記式(2)を満たすことを特徴とするプロセスカートリッジ。
R-SiO3/2 (1)
(前記Rは、炭素数が1以上、6以下の炭化水素基を示す。)
δ≦0.02×α-0.4 (2)
【請求項2】
前記トナーは、無機微粒子を外添剤として用いない、請求項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記Rは、炭素数が1以上、6以下のアルキル基である、請求項1又は2に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
前記溝の前記周面の母線方向における幅が、0.5μm以上40μm以下の範囲内であり、
前記溝の本数が、前記周面の母線方向の幅1000μmあたり20本以上1000本以下であり、
前記感光体の前記周面の弾性変形率が、50%以上65%以下であり、
前記感光体の前記周面のユニバーサル硬さ値(HU)が、150N/mm以上210N/mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項5】
前記溝の、幅0.5μm以上40μm以下の範囲内の本数を前記周面の母線方向の幅1000μmあたりi本(20≦i≦1000)とし、
前記i本の溝の、幅0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝の幅をそれぞれW~W[μm]としたときに、下記関係式(a)を満足する請求項に記載のプロセスカートリッジ。
【数1】
【請求項6】
前記感光体の前記周面の十点平均面粗さ(Rz)が、0.3μm以上1.3μm以下であり、
前記十点平均面粗さ(Rz)と、前記周面の最大表面粗さ(Rmax)との差(Rmax-Rz)が、0.3μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項7】
前記板状弾性体を支持する板状支持体と、
前記感光体を回転可能に支持するとともに、前記板状支持体が固定される枠体と、
をさらに備え、
前記板状弾性体は、一端が前記板状支持体に固定され、自由端である他端が前記周面に当接し、
前記板状支持体は、一端が前記枠体に固定され、自由端である他端に前記板状弾性体が固定され、
前記板状支持体の前記一端から前記板状弾性体の前記他端へ延びる方向が、前記他端が前記周面と当接する部分における前記感光体の回転方向とは逆方向である、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項8】
使用時の姿勢において、前記感光体は、前記板状弾性体が当接する部分において、前記周面が上方から下方に向かう方向に移動するように回転する、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
装置本体と、
前記装置本体に対して着脱可能な、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジと、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式の画像形成装置に挿抜可能なプロセスカートリッジに搭載される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置において、装置の小型化が求められている。感光体ドラムや中間転写ベルトの駆動に要する電力を小さくすることができれば、駆動装置の小型化により装置の小型化が実現できる。
中間転写ベルト方式による一成分接触現像方式の画像形成装置においては、感光体ドラムに対して現像部材である現像ローラ、トナー封止部材、中間転写ベルト、帯電部材などが常時または間欠当接している。また、転写工程の後に感光体ドラム上に残留するトナーを除去するために、クリーニング装置が設けられている。クリーニング装置としては、構成の単純さ及びトナーの除去能力の観点から、弾性体で構成されたクリーニングブレードを感光体ドラムの回転方向に対してカウンター方向で感光体ドラムに当接させるカウンター方式の構成が広く用いられている。
カウンター方式のブレードクリーニングでは、クリーニングブレードが感光体ドラムに対して強く当接され摺擦される。このために、感光体ドラムで発生するトルクの多くはクリーニング装置で費やしている。したがって、この部分の低トルク化が画像形成装置の小型に対して大きく寄与している。
ブレードクリーニングにおけるトルクを低減したものとして、特許文献1では、感光体ドラム周面上に略周方向に延びる複数の溝を形成し、感光体ドラムとクリーニングブレードとの接触面積を小さくする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4027407号公報
【文献】特開2017-134386号公報
【文献】特開2016-38591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては次のような問題があった。感光体ドラムとクリーニングブレードの当接部(以下、「クリーニングニップ」という)に、一般的なトナーの外添剤である無機シリカが介在しており、前記無機シリカは研磨作用を有している。このため、長期の使用においては、シリカの有している研磨作用により、トルク低減を図るべく感光体ドラムの周面に形成された溝が優先的に研磨されてしまう可能性がある。その結果、感光体ドラムとクリーニングブレードとの接触面積が増加してしまい感光体ドラムの駆動トルクが増加することで消費電力が大きくなってしまう可能性がある。
本発明の目的は、長期にわたる使用において低トルクを実現し、消費電力の低減が可能なプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、
本発明のプロセスカートリッジは、
画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって、
潜像が形成される周面を有する回転可能な感光体と、
前記感光体上の前記潜像を現像するために前記感光体へ現像剤を供給する現像装置と、
前記感光体の前記周面に当接して当該周面をクリーニングする板状弾性体と、
を備え、
前記感光体は、前記周面に、前記周面の周方向に延びる溝が回転軸方向に複数並ぶように形成されており、
前記現像装置から前記感光体へと供給される前記現像剤は、
トナー粒子、及び、前記トナー粒子の表面を被覆する、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体、を有するトナーを含有し、
前記板状弾性体の前記感光体に対する侵入量をδ(mm)とし、
前記トナー粒子の表面における前記有機ケイ素重合体の固着率をα(%)としたときに、
前記固着率は95%以上97%以下であり、且つ、下記式(2)を満たすことを特徴とするプロセスカートリッジ。
R-SiO3/2 (1)
(前記Rは、炭素数が1以上、6以下の炭化水素基を示す。)
δ≦0.02×α-0.4 (2)
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
装置本体と、
前記装置本体に対して着脱可能な、本発明のプロセスカートリッジと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プロセスカートリッジにおいて長期にわたる使用において低トルクを実現し、消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る画像形成装置の概略断面図
図2】本発明の実施例に係るプロセスカートリッジの概略断面図
図3】本発明の実施例における感光体ドラム表面を研磨する研磨装置の概略図
図4】本発明の実施例における侵入量、設定角の概略説明図
図5】本発明の実施例における有機ケイ素化合物を含む表層の表層厚さの概念図
図6】本発明の実施例における固着率と侵入量の関係を示すグラフ
図7】本発明の実施例における感光体ドラムの周面の形態例を示す模式図
図8】本発明の実施例における表面改質装置を示す概略図
図9】本発明の実施例で使用した表面改質装置の処理室を示す概略図
図10】本発明の実施例で使用した表面改質装置の撹拌羽根を示す概略図
図11】本発明の実施例で使用した表面改質装置の回転体を示す概略図
図12】本発明の実施例で使用した表面改質装置の回転体を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
なお、本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0010】
[実施例]
<1-1>画像形成装置の全体的な概略構成
本発明の実施例に係る電子写真画像形成装置(画像形成装置)の全体構成について説明
する。図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式を利用した複写機、プリンタなどが挙げられ、ここではレーザプリンタに適用した場合について説明する。本実施例の画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザプリンタである。画像形成装置100は、画像情報にしたがって、記録材(たとえば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置100に接続された画像読み取り装置、或いは、画像形成装置本体100Aに通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器から、画像形成装置本体100に入力される。
【0011】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。本実施例では、第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。
尚、本実施例では、第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
【0012】
本実施例では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、すなわち、感光体ドラム1を有する。静電潜像を担持する像担持体としての感光体ドラム1は、駆動手段(不図示)により回転駆動される。画像形成装置100には、画像情報に基づきレーザを照射して感光体ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段としてのスキャナユニット(露光装置)30が配置されている。また、画像形成装置100には、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム1上のトナー像を記録材12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト31が配置されている。中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト31は、すべての感光体ドラム1に当接し、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。
【0013】
中間転写ベルト31の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ32が並設されている。そして、一次転写ローラ32に、一次転写バイアス印加手段(不図示)としての一次転写バイアス電源から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト31上に転写(一次転写)される。
【0014】
また、中間転写ベルト31の外周面側において二次転写手段としての二次転写ローラ33が配置されている。そして、二次転写ローラ33に、二次転写バイアス印加手段(不図示)としての二次転写バイアス電源から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト31上のトナー像が記録材12に転写(二次転写)される。例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト31上に各色のトナー像が順次に重ね合わせて一次転写される。その後、中間転写ベルト31の移動と同期がとられて記録材12が二次転写部へと搬送される。そして、記録材12を介して中間転写ベルト31に当接している二次転写ローラ33の作用によって、中間転写ベルト31上の4色トナー像は、一括して記録材12上に二次転写される。
【0015】
二次転写ローラ33で記録材12に転写されず、中間転写ベルト31上に残留したトナー10は中間転写体用クリーニング装置35に搬送され、除去される。
トナー像が転写された記録材12は、定着装置34に搬送される。定着装置34におい
て記録材12に熱および圧力を加えることで、記録材12にトナー像が定着される。
【0016】
本実施例では、感光体ドラム1と、感光体ドラム1に作用するプロセス手段としての後述する帯電ローラ2、現像ローラ4、クリーニングブレード8等とは、一体化され、即ち、一体的にカートリッジ化されて、プロセスカートリッジ7を形成している。
【0017】
<1-2>プロセスカートリッジの概略構成
本実施例の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。図2は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見た本実施例のプロセスカートリッジ7の断面(主断面)図である。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置100の装置本体に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。本実施例では、各色用のプロセスカートリッジ7はすべて同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー10が収容されている。本実施例では、プロセスカートリッジ7全体が画像形成装置100に対して着脱可能な構成とされている場合について説明するが、かかる構成に限定されない。例えば、プロセスカートリッジ7のうち後述する現像装置3が単独で(後述する感光体ユニット13と分離して)画像形成装置に着脱可能な構成としても良い。
尚、本実施例では、収容しているトナー10の種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一である。
【0018】
プロセスカートリッジ7は、現像ローラ4等を備えた現像装置3と、感光体ドラム1を備えた感光体ユニット13とを有する。
【0019】
現像装置3は、現像ローラ4と、トナー供給ローラ5と、トナー搬送部材22と、それらを回転可能に支持する現像枠体18と、を備える。現像枠体18は、現像ローラ4とトナー供給ローラ5が配置された現像室18aと、トナー10を収容するトナー収容室(現像剤収容室)18aと、を備える。現像室18aとトナー収容室18bは、開口部18cを介して連通している。
【0020】
トナー収容室18bには、このトナー10を現像室18aに搬送するためのトナー搬送部材22が設けられており、図中矢印Gの方向へ回転することによってトナー10を現像室18aへと搬送している。
現像室18aには、感光体ドラム1と接触して図示矢印D方向に回転するトナー担持体(現像剤担持体)としての現像ローラ4が設けられている。本実施例では、現像ローラ4と感光体ドラム1とは、対向部(接触部)において互いの表面が同一方向に移動するように、すなわち、回転方向が互いに逆になるように、それぞれ回転する。
また、現像室18aの内部には、トナー収容室18bから搬送されたトナー10を現像ローラ4に供給するトナー供給部材としてのトナー供給ローラ(以下、「供給ローラ」という)5が配置されている。また、現像室18aの内部には、供給ローラ5によって供給された現像ローラ4上のトナー10のコート量規制及び電荷付与を行うトナー量規制部材6が配置されている。
【0021】
現像ローラ4、供給ローラ5、トナー量規制部材6には高圧電源からそれぞれ独立した電圧が印加される。供給ローラ5によって現像ローラ4に供給されたトナー10は、現像ローラ4と規制部材6との間での摺擦により摩擦帯電され、電荷を付与されると同時に層厚が規制される。規制された現像ローラ4上のトナー10は、現像ローラ4の回転により、感光体ドラム1との対向部に搬送され、感光体ドラム1上(感光体上)の静電潜像をトナー像(現像剤像)として現像、可視化する。
【0022】
一方、感光体ユニット13は、感光体ドラム1等の感光体ユニット13における各種要素を支持する枠体としてのクリーニング枠体9を有する。クリーニング枠体9には、軸受(不図示)を介して感光体ドラム1が回転可能に取り付けられている。感光体ドラム1は、画像形成装置100の装置本体に設けられた駆動モータの駆動力を受けることによって、図示矢印A方向に回転駆動される。
【0023】
また、感光体ユニット13には、感光体ドラム1の周面上に接触するように、帯電ローラ2、板状弾性体としてのクリーニングブレード8が配置されている。帯電ローラ2の芯金には高圧電源(不図示)から電圧が印加されており、感光体ドラム1の表面を所定の電圧に帯電させる。クリーニングブレード8は、一端が板状支持体である金属板金8aに固定されており、自由端である他端が感光体ドラム1に当接し、感光体ドラム1との当接部(以下、「クリーニングニップ」という)を形成する。
金属板金8aは、クリーニング枠体9に固定されている。金属板金8aは、一端がクリーニング枠体9に固定され、自由端である他端にクリーニングブレード8が固定されている。金属板金8aは、L字に折り曲げられた一方の板部がクリーニング枠体9にビス等の締結具によって固定されており、他方の板部が一方の板部に対して略直交する方向に延びており、その先端にクリーニングブレード8が固定されている(図2参照)。金属板金8a(他方の板部)とクリーニングブレード8は、金属板金8aの固定端(一方の板部)から略同じ方向に一体的に延びている。その延びる方向は、感光体ドラム1周面においてクリーニングブレード8の先端(他端)が当接する部分における感光体ドラム1の回転方向に対して対向する方向(逆方向)となる。金属板金8a及びクリーニングブレード8が延びる方向は、下方から上方に向かう方向である。感光体ドラム1の回転方向は、感光体ドラム1周面においてクリーニングブレード8の先端(他端)が当接する部分が上方から下方に向かう方向に移動する方向になる。
なお、図2のプロセスカートリッジ7の姿勢は、画像形成装置本体に装着された状態(使用時)での姿勢であり、本明細書においてプロセスカートリッジの各部材の位置関係や方向等について記載する場合はこの姿勢における位置関係や方向等を示している。すなわち、図2における紙面の上下方向が鉛直方向に対応し、紙面の左右方向が水平方向に対応する。なお、この配置構成の設定は、画像形成装置が、通常の設置状態として、水平面に設置されることを前提とした設定である。
クリーニングブレード8が感光体ドラム1周面と摺擦することにより、転写工程で残留したトナー10や微粒子を感光体ドラム1から掻き取り、残留トナー等が帯電ローラ2を汚染したり感光体ドラム1と連れ周ることによる画像問題の発生を防止する。また、クリーニングブレード8は、帯電工程で感光体ドラム1の表面に付着する放電生成物を除去し、感光体ドラム1の摩擦性の増大などを防止している。クリーニングブレード8で感光体ドラム1表面から除去されたトナー10は、クリーニング枠体9において、クリーニングブレード8の下方に設けられた廃トナー収容室9aへ落下、収容される。
【0024】
ここで、本出願の発明者は、プロセスカートリッジが有するクリーニング装置において、長期にわたる使用において低トルクを実現するためには、次の点が重要であることを見出した。すなわち、低摩擦性を備えた粒子をクリーニングニップに介在させ、かつ十分な圧力を加えてとどめることである。
すなわち、トナー粒子の表面が特定の有機ケイ素重合体で被覆されていることにより、表面自由エネルギーを小さくすることが可能となるため、低摩擦性が発揮できる。
低摩擦性を備えたトナー粒子は、感光体ドラム1の周面に形成された溝を保つことができ、長期の使用においても、感光体ドラム1とクリーニングブレード8との接触面積を小さい状態でとどめることが可能となる。これにより、長期にわたる使用において低トルクを実現し、消費電力の低減を図ることができる。以下、本実施例のプロセスカートリッジのより具体的な構成について詳述する。
【0025】
<1-3>クリーニングブレードの説明
本実施例で用いるクリーニングブレード8は、特開2017-134386号公報の実施例記載の方法を用いて作製した。クリーニングブレード8は、ウレタンゴム、シリコンゴムなどのゴム部材を板状の金属の支持体としての金属板金8aに固定したものを用いる。そして、感光体ドラム1と当接する先端部分のダイナミック硬度Hを0.1(mN/μm)≦H≦0.4(mN/μm)とする。先端部分のダイナミック硬度Hは、0.4より大きいと、表面の硬度が大き過ぎるため、エッジ欠けが発生する場合がある。また、ダイナミック硬度Hが0.1未満では、表面近傍の内部の硬度が大きくても、当接幅(当接部の面積)が広くなりすぎてピーク圧(当接部の単位面積あたりの当接圧(当接圧を当接部の面積で割った圧))が下がり、クリーニング性能が低下する場合がある。このような特徴を備えるクリーニングブレード8は、ウレタンゴムを表層硬化したものがよい。表面を硬化したクリーニングブレード8は、感光体ドラム1に当接させたときの変形量が小さく、感光体ドラム1とのニップ幅が広がらないので、当接圧の最大値は高く、高いすり抜け抑止性能を示しつつ、トルクの上昇を抑えることができる。
【0026】
(クリーニングブレードの硬度の測定方法)
島津製作所製「島津ダイナミック超微小硬度計 DUH-W211S」)を用い、特開2017-134386号公報に開示されている方法で、クリーニングブレード8の感光体ドラム1との当接エッジ近傍の硬度を測定した。圧子としては、115°三角すい圧子を用い、以下の計算式よりダイナミック硬度を求めた。
ダイナミック硬度H=α×P/D
ここで、P:荷重(mN)、D:圧子の試料への押し込み深さ(μm)、α:圧子形状による定数である。
なお、測定条件は以下の通りである。
α :3.8584
P :1.0mN
負荷速度:0.03mN/sec
保持時間:5秒
測定環境:温度23℃、相対湿度55%
測定サンプルのエージング:温度23℃、相対湿度55%の環境下で6時間以上放置
【0027】
<1-4>感光体ドラムの説明
本実施例における感光体ドラム1は、特許第4027407号公報に記載の製造方法により作製した。感光体ドラム1は、円筒状で導電性を有する金属支持体と、支持体の下引き層としての導電層と、下引き層上に形成される感光層(電荷発生層、電荷輸送層)と、感光層上に形成される保護層からなっている。
【0028】
(感光体ドラムの粗面化処理)
本実施例の感光体ドラム1は、クリーニングブレード8との接触面積を低減させ、感光体ドラム1の駆動トルクを小さくするために、感光体ドラム1の表面を研磨する粗面化処理を行っている。特許第4027407号公報によれば、感光体ドラム1の周面に該周面の略周方向に延びる幅が0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝が長手方向(母線方向)に複数並ぶように形成されている。
図7に、感光体ドラム1の周面1aに形成される溝1bの状態の例を示す。図7に示すように、各溝1bは、それぞれ感光体ドラム1の周面1a上においてその周方向に延びる環状の溝であり、周面1aの母線方向において互いに間隔を空けて並ぶように形成されている。すなわち、周面1aは、溝1bが形成されていない平坦部1cと、溝1bと、が母線方向に交互に形成された構成となっている。なお、周面1aにおいて溝1bが形成される領域は、少なくとも、クリーニングブレード8が当接する領域を含んでいればよく、必ずしも、周面1aの長手方向の全域に渡って形成する必要はない。したがって、ここで説
明する周面1aに対する溝1bの本数の比率等に関する記載は、あくまで、周面1aにおいて、溝1b及び平坦部1cが設けられる領域範囲にのみ着目した記載である。例えば、周面1aの長手方向両端などのクリーニングブレード8との接触がない領域、すなわち、溝1bが設けられない(設ける必要がない)領域における、溝1bの本数の比率等は、本発明を特定するための事項には含まれず、ここでの議論の対象外である。
上記公報では、この溝1bの本数が周面1aの母線方向の幅1000μmあたり20本以上1000本以下であることが望ましいとしている。(以下、幅が0.5μm以上、40μm以下の範囲内にある溝1bの、周面1aの母線方向の幅1000μmあたりの本数を、「溝密度」ともいう。つまり、上記の場合、溝密度は20以上1000以下である。)
なお、上記公報でも述べているように、溝1bは、図7に示すように周方向と同じ方向に延びるように形成される構成に限定されない。例えば、溝1bが周方向に対して10°の角度をもたせて形成される構成でもよい。また、溝1bが周方向に対して±30°の角度をもたせて形成された構成とし、角度の異なる溝1bが互いに交差するように構成してもよい。本実施例において、「略周方向」とは、完全に周方向である場合とほぼ周方向である場合とを含み、ほぼ周方向とは、具体的には、周方向に対して±60°未満の方向である。
【0029】
溝密度が20より小さいと、通紙枚数の増加によりクリーニングブレード8のエッジ部に欠けが生じ、クリーニング不良となり、出力画像上に黒いスジ状の画像が生じやすくなり、また、トナーなどの融着が生じ、出力画像上に白い点状の画像が生じやすくなる。
また、溝密度が1000を超えると、文字再現性が低下し、小文字(例えば3ポイント以下の文字)画像が再現されにくく、かすれてしまう場合や、特に低湿環境下においてトナーがクリーニングブレードをすり抜けるというクリーニング不良が発生する場合がある。
また、幅が40μmを超える溝は、ハーフトーン画像上で濃淡ムラや白いキズ画像を生じさせやすく、また、白地画像上に黒いキズ画像を生じさせやすい。そのため、感光体ドラム1の周面に形成された溝のうち幅が40μmを超える溝の割合は、感光体ドラム1の周面に形成された溝すべてに対して20本数%以下であることが好ましい。
【0030】
また、本発明の実施例における感光体ドラム1の周面1aにおいて略周方向に延びる溝1bと溝1bとの間の部分(平坦部1c。図7参照)の長手方向の幅は、0.5μm以上40μm以下であることが好ましい。
平坦部1cの幅が40μmを超えると、クリーニングブレードを有するクリーニング手段を搭載する電子写真装置に用いた場合、感光体ドラムとクリーニングブレードとの間のトルクが上昇しやすく、クリーニング不良が発生しやすい。
また、感光体ドラムの周面1aに、感光体ドラムの回転軸方向に複数並ぶように形成された、周面の周方向に延びる、溝1bの、幅0.5μm以上40μm以下の範囲内の本数を周面1aの母線方向の幅1000μmあたりi本(20≦i≦1000)とし(つまり溝密度がi)、該i本の溝1bの幅0.5μm以上40μm以下の範囲内の幅をそれぞれW~W[μm]としたときに、下記関係式(a)を満足することが好ましい。
【0031】
【数1】
【0032】
上記関係式(a)は、i本の溝の、幅0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝の幅の合計(以下「ΣWn」ともいう。)が200μm以上800μm以下であることを意
味する。
溝の幅の合計が800μmを超えると、クリーニングブレードを有するクリーニング手段を搭載する電子写真装置に用いた場合、電子写真感光体とクリーニングブレードとの間でのトナーすり抜けによるクリーニング不良が発生しやすい。一方、溝の幅の合計が200μmより小さいと、電子写真感光体とクリーニングブレードとの間のトルクが上昇しやすく、ブレードのビビリ(による鳴き)や捲れによるクリーニング不良が発生しやすい。
【0033】
本実施例において、感光体ドラムの周面に形成された溝の幅および溝密度ならびに平坦部の幅は、(株)菱化システム製の非接触3次元表面測定機マイクロマップ557Nを用いて以下のようにして測定した。
まず、マイクロマップの光学顕微鏡部に5倍の二光束干渉対物レンズを装着し、電子写真感光体をレンズ下に固定し、表面形状画像をWaveモードでCCDカメラを用いて干渉像を垂直走査させて3次元画像を得る。得られる画像の範囲は1.6mm×1.2mmである。
次に、得られた3次元画像を解析し、データとして単位長さ1000μmあたりの溝の数、溝の幅が得られる。このデータを基に、溝の幅、溝の数の解析が可能となる。
なお、本発明においては、溝は幅が0.5μm以上のものをカウントし、電子写真感光体の母線方向の3箇所で、それぞれの箇所での円周方向について各4箇所の計12箇所を測定箇所とした。
【0034】
また、溝の幅、溝の数に関しては、マイクロマップ以外にも、市販のレーザ顕微鏡(超深度形状測定顕微鏡VK-8550、VK-9000((株)キーエンス製)、走査型共焦点レーザ顕微鏡OLS3000(オリンパス(株)製)、リアルカラーコンフォーカル顕微鏡オプリテクスC130(レーザーテック(株)製))、デジタルマイクロスコープVHX-100、VH-8000((株)キーエンス製))などにより、電子写真感光体の周面の画像を得て、それを基に画像処理ソフト(例えばWinROOF(三谷商事(株)製))を用い、溝の幅、溝の数を求めることが可能である。また、3次元非接触形状測定装置(NewView5032(ザイゴ(株)製))などを用いればマイクロマップと同様に測定することが可能である。
【0035】
また、JIS規格1982を基準とした場合において、感光体ドラム1の周面の十点平均面粗さRzは、0.3μm以上1.3μm以下であることが好ましい。0.3μmより小さいと、画像流れ解消の効果が薄くなる場合があり、1.3μmを超えると、文字再現性が低下し、小文字(例えば3ポイント以下の文字)画像が再現されにくく、つぶれてしまう場合があるためである。
【0036】
また、本発明の実施例においては、JIS規格1982を基準とした場合、電子写真感光体の周面の最大表面粗さRmaxと十点平均面粗さRzとの差(Rmax-Rz)は0.0μm以上0.3μm以下であることが好ましく、0.0μm以上0.2μm以下であることがより好ましい。0.3μmを超えると、ハーフトーン画像上で濃淡ムラを生じる場合がある。
本発明の実施例において、電子写真感光体の周面の十点平均面粗さRzおよび最大表面粗さRmaxは、JIS規格1982を基準とし、(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器サーフコーダSE3500型を用い、以下の条件で測定した。
検出器:R2μm
0.7mNのダイヤモンド針
フィルタ:2CR
カットオフ値:0.8mm
測定長さ:2.5mm
送り速さ:0.1mm
なお、本発明においては、電子写真感光体の母線方向の3箇所で、それぞれの箇所での円周方向について各4箇所の計12箇所を測定箇所とした。
【0037】
以上を踏まえ、本発明の実施例においても特許第4027407号公報に記載と同様の粗面化処理を行った。
図3は、感光体ドラム1の表面を研磨する研磨装置の概略図である。研磨シート40の研磨面が感光体ドラム1の表面に押し当てられるように、感光体ドラム1とバックアップローラ41との間で研磨シート40を挟持する状態となるように、夫々配置される。かかる配置において、感光体ドラム1とバックアップローラ41は、研磨シート40を挟持するニップ部においてそれぞれが同じ方向に移動するように、それぞれ逆方向に回転される。また、研磨シート40は、上記ニップ部において、感光体ドラム1とバックアップローラ41の移動方向と同じ方向に移動するように、不図示の巻き取り機構によって巻き取られる。
【0038】
研磨条件としては、研磨シート40として理研コランダム社製の研磨シート(商品名:GC♯3000、基層シート厚:75μm)を用いた。また、バックアップローラ41としては硬度20°のウレタンローラ(外径:50mm)を用いた。研磨シート40を介しての感光体ドラム1に対するバックアップローラ41の侵入量:2.5mm、シート送り量:400mm/sとして、研磨シート40の送り方向と感光体ドラム1の回転方向を同一として、30秒間研磨した。
【0039】
研磨した後の感光体ドラム1の表面粗さは、表面粗さ測定機(商品名:SE700、SMB-9、(株)小坂研究所製)を用いて、下記の条件で測定した。
感光体ドラム1の長手方向に、塗布上端から30、110、185mmの位置において測定した、また、120°手前に回転させた後、同様にして塗布上端から30、110、185mmの位置において測定した。更に、120°手前に回転させた後、同様にして測定し、計9点の測定を行い、計9点の測定を行い、その平均値は、JISB0601-2001規格で、Rz=0.45μmであった。測定条件は、測定長さ:2.5mm、カットオフ値:0.8mm、送り速さ:0.1mm/s、フィルタ特性:2CR、レベリング:直線(全域)とした。
また、その他のパラメータは以下の通りである。
(Rmax-Rz):0.2μm
周面の母線方向の幅1000μmあたりの、幅0.5μm以上40μm以下の範囲内の溝の本数:400本
「ΣWn」:350μm
【0040】
この粗面化処理により、クリーニングブレード8との接触面積を低減できる感光体ドラム1の周面の略周方向に複数の溝のある感光体ドラム1を作製することができる。
【0041】
(感光体ドラム周面の弾性変形率及びユニバーサル硬さ値(HU))
本実施例においては、感光体ドラムの周面のユニバーサル硬さ値(HU)は150N/mm以上であることが好ましく、より好ましくは、160N/mm以上である。感光体ドラムの周面が摩耗しにくく、傷も発生しにくいという観点から、本実施例においては、電子写真感光体の周面のユニバーサル硬さ値(HU)は210N/mm以下であるが、さらには200N/mm以下であることがより好ましい。
例えば、ユニバーサル硬さ値(HU)は150N/mm以上210N/mm以下であることが好ましい。
また、本実施例においては、感光体ドラムの周面の弾性変形率は50%以上65%以下であることが好ましい。
【0042】
ユニバーサル硬さ値(HU)が大きすぎると、また、弾性変形率が小さすぎると、感光体ドラムの表面の弾性力が不足しているため、感光体ドラムの周面とクリーニングブレードとの間に挟まれた紙粉やトナーが感光体ドラムの周面を擦ることによって、感光体ドラムの表面に傷が発生しやすくなり、それにともなって摩耗も発生しやすくなる。また、ユニバーサル硬さ値(HU)が大きすぎると、たとえ弾性変形率が高くても弾性変形量は小さくなってしまうため、結果として感光体ドラムの表面の局部に大きな圧力がかかり、よって電子写真感光体の表面に深い傷が発生しやすくなる。
【0043】
また、ユニバーサル硬さ値(HU)が上記範囲にあっても弾性変形率が小さすぎると、塑性変形量が相対的に大きくなってしまうため、電子写真感光体の表面に細かい傷が発生しやすくなり、また、摩耗も発生しやすくなる。これは、弾性変形率が小さすぎるだけでなくユニバーサル硬さ値(HU)も小さすぎる場合、特に顕著になる。
【0044】
本実施例において、電子写真感光体の周面のユニバーサル硬さ値(HU)および弾性変形率は、25℃/50%RH環境下、微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定した値である。このフィシャースコープH100Vは、測定対象(電子写真感光体の周面)に圧子を当接し、この圧子に連続的に荷重をかけ、荷重下での押し込み深さを直読することにより連続的硬さが求められる装置である。
圧子として対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用い、電子写真感光体の周面に圧子を押し当て、圧子に連続的にかける荷重の最終(最終荷重)は6mNとし、圧子に最終荷重6mNをかけた状態を保持する時間(保持時間)は0.1秒とした。また、測定点は273点とした。
ユニバーサル硬さ値(HU)は、圧子に最終荷重6mNをかけたときの圧子の押し込み深さから下記式により求めることができる。なお、下記式中、HUはユニバーサル硬さ値(HU)を意味し、Ffは最終荷重を意味し、Sfは最終荷重をかけたときの圧子の押し込まれた部分の表面積を意味し、hfは最終荷重をかけたときの圧子の押し込み深さを意味する。
(式)HU=Ff[N]/Sf[mm
=(6×10-3)/〔26.43×(hf×10-3
【0045】
上述のユニバーサル硬さ値(HU)および弾性変形率の具体的な測定手法は、特許第4027407号公報に記載された手法と同様である。
また、周面のユニバーサル硬さ値(HU)および弾性変形率が上記範囲にある感光体ドラムを得るための感光体ドラム表面層の具体的な形成手法についても、特許第4027407号公報に記載された手法と同様である。すなわち、感光体の表面層を、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化重合(架橋を伴う重合)させることによって形成することが、特には、連鎖重合性官能基を同一分子内に2つ以上有する正孔輸送性化合物を硬化重合させることによって形成することが有効である。また、逐次重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を用いる場合には、該化合物としては、逐次重合性官能基を同一分子内に3つ以上有する正孔輸送性化合物が好ましい。
なお、本発明で用いた感光体ドラム周面の弾性変形率が、60%であり、ユニバーサル硬さ値(HU)は、180N/mmである。
【0046】
<1-5>感光体ドラムに対する侵入量と設定角の説明
本実施例の感光体ドラム1に対するクリーニングブレード8の侵入量δと設定角θについて説明する。図4は、本実施例における侵入量δ、設定角θを示す概略図である。
図4に示すように、感光体ドラム1の軸線に垂直な断面において、感光体ドラム1の回転中心軸を原点とし、クリーニングブレード8(金属板金8a)の延びる方向に平行な方向をX軸、該X軸に垂直な方向をY軸とした座標を基準として各配置関係を考える。
上記座標系において、感光体ドラム1の回転方向は時計回りであり、クリーニングブレ
ード8は、第3象限に位置し、X軸方向において離れた位置から感光体ドラム1に向かってアプローチする配置となる。図4に示すように、クリーニングブレード8と感光体ドラム1とを、両者の変形を考慮せずに仮想的に配置すると、クリーニングブレード8の先端部が仮想感光体ドラム1´と重なる。実際の当接状態では、クリーニングブレード8の先端が感光体ドラム1の周面に沿うように撓み変形し、クリーニングブレード8において感光体ドラム1周面と対向する側の面の先端側が、感光体ドラム1周面と当接する状態となる。このクリーニングブレード8における感光体ドラム1との当接面の先端部(該当接面と先端面との間の角部)を先端Pとする。なお、本実施例ではクリーニングブレード8の先端部が断面矩形に構成されているため、上記角部が先端Pとなるが、例えば、角部が丸形の断面構成においては、先端Pが角部と必ずしも一致しない。すなわち、実際の当接状態における上記当接面の先端側の境界端が先端Pとなる。先端Pを通り、クリーニングブレード8における感光体ドラム1との当接面に対してY軸方向に下した直線と、仮想感光体ドラム1´との交点を交点Qとし、先端Pと交点Qとの距離を侵入量δとする。また、交点Qを接点とした仮想感光体ドラム1´の接線とクリーニングブレード8における感光体ドラム1との当接面とが成す角を設定角θとする。
【0047】
<1-6>トナー
本発明のトナーは、トナー粒子、及び、該トナー粒子の表面を被覆する、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体、を有するトナーである。
トナー粒子の表面が、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体で被覆されている場合、トナー粒子の最表面に存在する層である表層を有する。すなわち、トナー粒子は、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体を含有する表層を有する。
該表層は従来のトナー粒子に比べてとても硬い。そのため、定着性の観点からトナー粒子表面の一部に表層が形成されていない部分を設けることも好ましい。
ただし、有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合(以下、表層の厚み2.5nm以下の割合ともいう)が、20.0%以下であることが好ましい。この条件は、トナー粒子の表面のうち少なくとも80.0%以上が、2.5nm以上の有機ケイ素重合体を含有する表層で構成されていることを近似している。すなわち、本条件を満たすと、有機ケイ素重合体を含有する表層が十分にトナー粒子の表面を被覆することとなる。より好ましくは10.0%以下である。測定は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により規定できるが、詳細は後述する。
【0048】
(式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体)
トナーは、トナー粒子、及び、該トナー粒子の表面を被覆する、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体を有する。
R-SiO3/2 (1)
(該Rは、炭素数が1以上、6以下の炭化水素基を示す。)
【0049】
式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体において、Si原子の4個の原子価のうち1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。
有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。
【0050】
さらに、トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の29Si-NMRの測定で得られるチャートにおいて、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であることが好ましい。詳細な測定法は後述するが、これはトナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体の中でR-SiO3/2で表される部分構造を、20%以上有していることに近似している。
【0051】
前述の通り、Si原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のSi原子と結合することが、-SiO3/2の構造の意味である。もし、そのうち酸素1つがシラノール基であったとすると、その有機ケイ素重合体の構造はR-SiO2/2-OHで表現される。さらに、酸素2つがシラノール基であれば、その構造はR-SiO1/2(-OH)となる。これら構造を比較すると、より多くの酸素原子がSi原子と架橋構造を形成するほうが、SiOで表わされるシリカ構造に近い。そのため-SiO3/2骨格が多いほど、トナー粒子表面の表面自由エネルギーを低くすることができるため、環境安定性及び耐部材汚染に優れた効果がある。
【0052】
また、式(1)で示される構造による耐久性と、式(1)中のRの疎水性及び帯電性により、表層よりも内部に存在する、染み出しやすい低分子量(Mw1000以下)の樹脂及びガラス転移温度の低い(Tg40℃以下)樹脂のブリードが抑えられる。場合によっては離型剤のブリードも抑えられる。
【0053】
式(1)で示される構造のピーク面積の割合は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
【0054】
式(1)で示される構造において、Rは、炭素数が1以上、6以下の炭化水素基である。これにより帯電量が安定しやすい。特に環境安定性に優れている、炭素数が1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基であることが好ましい。
【0055】
本発明の実施例において、上記Rは、炭素数が1以上、3以下の脂肪族炭化水素基であることが、帯電性及びカブリ防止のさらなる向上のためにより好ましい。帯電性が良好であると、転写性が良く転写残トナーが少ないためドラム、帯電部材及び転写部材の汚染が良化する。
炭素数が1以上3以下の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、又はプロピル基、又はビニル基が好ましく例示できる。環境安定性と保存安定性の観点から、より好ましくは、Rはメチル基である。
【0056】
有機ケイ素重合体の製造例としては、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法は、液体原料を出発原料に用いて加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経てゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機-無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することができる。
【0057】
該式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解及び縮重合によって生成されることが好ましい。
該有機ケイ素重合体でトナー粒子の表面を被覆することによって、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーを得ることができる。
【0058】
さらに、ゾルゲル法は、液体から出発し、その液体をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によってトナー粒子の表面に析出させやすくなる。上記微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機金属化合物の種類及び量などによって調整することができる。
【0059】
該有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で示される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重
合物であることが好ましい。
【0060】
【化1】

(式(Z)中、Rは、炭素数1以上6以下の炭化水素基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
【0061】
の炭化水素基(好ましくはアルキル基)により疎水性を向上することができ、環境安定性に優れたトナー粒子を得ることができる。また、炭化水素基として芳香族炭化水素基であるアリール基、例えばフェニル基を用いることもできる。Rの疎水性が大きい場合、様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みてRは炭素数1以上3以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0062】
、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合して架橋構造を形成し、耐部材汚染及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点から、炭素数1以上3以下のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。また、R、R及びRの加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
【0063】
本発明の実施例に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のRを除く一分子中に3つの反応基(R、R及びR)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
【0064】
上記式(Z)としては以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシ
シラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
【0065】
また、本発明の効果を損なわない程度に、式(Z)で示される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、以下を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)。例えば以下のようなものが挙げられる。
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン。
【0066】
さらに、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は0.5質量%以上10.5質量%以下であることが好ましい。
有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上であることで、表層の表面自由エネルギーを更に小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を抑制することができる。10.5質量%以下であることで、チャージアップを発生し難くすることができる。有機ケイ素重合体の含有量は有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
【0067】
表層とトナー粒子は、隙間なく接していることが好ましい。これにより、トナー粒子の表層よりも内部の樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生が抑えられ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。表層には上記の有機ケイ素重合体の他に、スチレン-アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂や各種添加剤などを含有させてもよい。
【0068】
(結着樹脂について)
トナー粒子は、結着樹脂を含有してもよい。結着樹脂は特段限定されず、従来公知のものを用いることができる。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましい。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチ
レン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これら結着樹脂は単独又は混合して使用できる。
【0069】
結着樹脂がカルボキシ基を含有することが帯電性の観点で好ましく、カルボキシ基を含む重合性単量体を用いて製造された樹脂であることが好ましい。例えばα-エチルアクリル酸、クロトン酸などの(メタ)アクリル酸、およびα-アルキル誘導体あるいはβ-アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノアクリロイルオキシエチレンエステル、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノメタクリロイルオキシエチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステル誘導体など。
【0070】
ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0071】
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂としては末端などのカルボキシル基はキャップしないことが好ましい。
【0072】
高温時におけるトナーの粘度変化の改良を目的として結着樹脂が重合性官能基を有していてもよい。重合性官能基としては、ビニル基、イソシアナート基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0073】
(架橋剤)
結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
架橋剤の添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部以上15.000質量部以下であることが好ましい。
【0074】
(離型剤について)
トナー粒子は、離型剤を含有することが好ましい。トナー粒子に使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ-ン樹脂が挙げられる。なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
離型剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0075】
(着色剤について)
トナー粒子は、着色剤を含有してもよい。着色剤は特段限定されず、例えば以下に示す公知のものを使用することができる。
【0076】
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
【0077】
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。
パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
【0078】
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
【0079】
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
【0080】
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
【0081】
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
必要により、重合阻害のない物質により着色剤の表面処理を施してもよい。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
【0082】
(荷電制御剤について)
トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0083】
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
【0084】
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩のようなによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
【0085】
これら荷電制御剤は単独で又は2種類以上組み合わせて含有することができる。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0086】
(トナー粒子の製造方法について)
該トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。さらに、湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができる。
【0087】
ここでは懸濁重合法について説明する。懸濁重合法ではまず、結着樹脂を生成するための重合性単量体、着色剤などのその他の添加剤をボールミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する(重合性単量体組成物の調製工程)。このとき、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、可塑剤などを適宜加えることができる。懸濁重合法における重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。
スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
【0088】
次に、上記重合性単量体組成物を予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高せん断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズに形成する(造粒工程)。
【0089】
造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることが、トナー粒子の粒径制御、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるトナー粒子の合一を抑制するために好ましい。
分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することができるため、好適に用いられる。
【0090】
難水溶性無機化合物の分散安定剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、リンのいずれかが含まれているものが好ましく用いられる。より好ましくは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、リンのいずれかが含まれていることが望まれる。具体的には、以下のものが挙げられる。
リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイド。上記分散安定剤に有機系化合物、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセル
ロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上2.00質量部以下使用することが好ましい。
【0091】
さらに、これら分散安定剤の微細化のため、重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0092】
造粒工程の後、あるいは造粒工程を行いながら、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定して、重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体の重合を行い、トナー粒子分散液を得る(重合工程)。
【0093】
重合工程では容器内の温度分布が均一になる様に攪拌操作を行うことが好ましい。重合開始剤を添加する場合、任意のタイミングと所要時間で行うことができる。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、または反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧又は減圧下で行うことができる。
【0094】
懸濁重合法において使用する重合開始剤としては、一般的に油溶性開始剤が用いられる。例えば、以下のものが挙げられる。
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、クメンヒドロパーオキサイドのようなパーオキサイド系開始剤。
【0095】
重合開始剤は必要に応じて水溶性開始剤を併用してもよく、以下のものが挙げられる。過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素。
【0096】
これらの重合開始剤は単独又は複数を併用して使用でき、重合性単量体の重合度を制御するために、連鎖移動剤、重合禁止剤等をさらに添加し用いることも可能である。
【0097】
トナー粒子の粒径は、高精細かつ高解像の画像を得るという観点から重量平均粒径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。こうして得られたトナー粒子分散液は、トナー粒子と水系媒体を固液分離する濾過工程へと送られる。
【0098】
(トナー粒子の重量平均粒径D4の測定方法)
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出した。測定装置としては、
100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンターMultisizer3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いた。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールターMultisizer3Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いた。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行った。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)を使用した。
【0099】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定した。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定した。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTONIIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れた。
【0100】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定した。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行った。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去した。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れた。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加えた。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個の位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス社製)を準備した。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加した。(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させた。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整した。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させた。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続した。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節した。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整した。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行った。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出した。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0101】
得られたトナー粒子分散液からトナー粒子を得るための固液分離は、一般的な濾過方法で行うことができ、その後トナー粒子表面から除去しきれなかった異物を除去するため、リスラリーや洗浄水のかけ洗いなどによって更に洗浄を行うことが好ましい。十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してトナーケーキを得る。その後、公知の乾燥手段によ
り乾燥され、必要であれば分級により所定外の粒径を有する粒子群を分離してトナー粒子を得る。このとき分離された所定外の粒径を有する粒子群は最終的な収率を向上させるために再利用してもよい。
【0102】
トナー粒子の表面を、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体で被覆し、該有機ケイ素重合体を有する表層を形成する場合、水系媒体中で重合工程などを行いながら前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加して該表層を形成させることができる。
または、重合後のトナー粒子の分散液をコア粒子分散液として用いて、有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、該表層を形成させてもよい。さらに、混練粉砕法など水系媒体以外の場合には得られたトナー粒子を水系媒体に分散してコア粒子分散液として用いて、前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、該表層を形成させることもできる。
【0103】
(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分の調製法)
トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように調製した。
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とした。
【0104】
なお、外添剤などでトナー粒子の表面が処理されている場合は、下記方法によって外添剤を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に該ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
【0105】
(式(1)で示される構造の確認方法)
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)で示される構造の確認には以下の方法を用いる。
式(1)のRで表される炭化水素基は、13C-NMRにより確認した。
【0106】
13C-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
【0107】
当該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH)、エチル基(Si-C)、プロピル基(Si-C)、ブチル基(Si-C)、ペンチル基(Si-C11)、ヘキシル基(Si-C13)またはフェニル基(Si-C-)などに起因するシグナルの有無により、式(1)のRで表される炭化水素基を確認した。
【0108】
≪トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合の算出方法≫
トナー粒子のTHF不溶分の29Si-NMR(固体)測定を、以下の測定条件で行う。
【0109】
29Si-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:97.38MHz(29Si)
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
試料回転数:10kHz
コンタクト時間:10ms
遅延時間:2s
積算回数:2000~8000回
【0110】
上記測定後に、トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出する。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 (2)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2 (3)
X3構造:RmSi(O1/2 (4)
X4構造:Si(O1/2 (5)
【0111】
【化2】



【0112】
(式(2)、(3)及び(4)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している、炭素数1~6の炭化水素基などの有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。)
本発明の実施例においては、トナー粒子のTHF不溶分の29Si-NMRの測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であることが好ましい。
なお、上記式(1)で示される構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C-NMR及び29Si-NMRの測定結果と共にH-NMRの測定結果によって同定してもよい。
【0113】
(透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下の割合の測定方法)
本発明の実施例において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(JEOL製JEM-2800)(TEM)で1万~10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
結着樹脂と表層材料の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行うことができる。材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いる。
【0114】
当該測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から
円相当径Dtemを求め、その値がトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるものとする。
【0115】
上述のように、JEOL製JEM-2800を用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の暗視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIFQuantamを用い、ThreeWindow法によりマッピング像を取得して表層を確認する。
次いで、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割する(図5参照)。次に、該中心からトナー粒子の表層へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1~32)、分割軸の長さをRAn、表層の厚みをFRAnとする。
そして、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合を求める。平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算する。
【0116】
(透過型電子顕微鏡(TEM)写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem))
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径Dtemを下記式に従って求める。
[TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
【0117】
(有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み2.5nm以下の割合)
[有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合]=〔{有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である分割軸の数}/32〕×100
この計算をトナー粒子10個に対して行い、得られた10個の表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合の平均値を求め、トナー粒子の表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合とした。
【0118】
<有機ケイ素重合体の固着率の測定方法>
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50ml)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを含む水溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥する。乾燥品をスパチュラで解砕し、蛍光X線でケイ素の量を測定する。洗浄後のトナーと洗浄前のトナーの測定対象の元素
量比から固着率(%)を計算する。
【0119】
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中に水洗後のトナーと初期のトナーを約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
トナー中の定量方法としては、例えばケイ素量はトナー粒子100質量部に対して、例えば、シリカ(SiO)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を2.0質量部、5.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナーを、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体の含有量を求める。また、上記方法により算出した洗浄前のトナーのケイ素量に対して、洗浄後のトナーのケイ素量の比率を求め固着率(%)とした。
【0120】
<1-7>本発明の実施例におけるトナーの製造
以下、各材料の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
(水系媒体1の調製工程)
反応容器中のイオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0121】
(表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを3.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を70℃にした。その後、表層用有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
【0122】
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン 60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 20.0部
・n-ブチルアクリレート 20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) 0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) 7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0123】
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0124】
(重合工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行ってコア粒子を得た。スラリーの温度を55℃に冷却してpHを測定したところ、pH=5.0だった。55℃で撹拌を継続したまま、表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を20.0部添加してトナー粒子の表層形成を開始した。そのまま30分保持した後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持し、表層を形成させた。
【0125】
(洗浄、乾燥工程)
重合工程終了後、トナー粒子のスラリーを冷却し、トナー粒子のスラリーに塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナー粒子ケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナー粒子ケーキを得た。
得られたトナー粒子ケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行い、更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子1を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナー粒子ケーキの供給速度はトナー粒子ケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。
【0126】
トナー粒子1の断面TEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層にケイ素原子が存在すること、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が、20.0%以下であることを確認した。以降のいずれの実施例トナーにおいても、有機ケイ素重合体を含有する表層は同様のケイ素マッピングで表層にケイ素原子が存在すること、表層の厚み2.5nm以下である分割軸の数の割合が20.0%以下であることを確認した。本実施例においては、得られたトナー粒子に対し、シリカ微粒子を外添せずにそのまま実施例トナー(A)として用いた。
【0127】
本実施例において用いる実施例トナー(A)における、トナー粒子に対するトナー粒子の表面を被覆する、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体の固着率は30%以上であるとした。これは有機ケイ素重合体が存在していない表層の面積が増えることで、トナー同士の付着力が増加し、帯電性が変わってしまうためである。
【0128】
<1-8>実験
本実施例の測定方法により求められる固着率が95%~97%まで1%刻みになるように作製した実施例トナー(A)を用意した。また、比較例として、トナー粒子に流動性の担保と帯電性の改善のため無機ケイ素微粒子を外添した比較例トナー(B)を用意した。

本実施例トナー(A)の固着率はトナーの作製条件により変わる。本実施例においては、重合工程における加水分解液を添加するときの条件、及び、添加後の保持時間を変えることにより固着率違いのトナーを作製した。尚、スラリーにpH調整は塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液で行った。表1にはそれぞれの固着率違いのトナーを作製するための条件を示す。
【0129】
(表1)
本実施例トナー(A)の固着率違いの作製条件
【0130】
続いて、比較例トナー(B)の製造方法を以下に示す。
(水系媒体1の調製工程)
反応容器中のイオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 : 6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン:20.0部
・n-ブチルアクリレート :20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) : 0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 : 5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) : 7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。得られたスラリーの温度を冷却してトナー粒子のスラリーを得た。
(洗浄、乾燥工程)
該トナー粒子のスラリーに塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行い、更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子(b)を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。
(シリカ微粒子の外添)
トナー粒子(b)に対し、シリカ微粒子を特開2016-38591号公報の実施例に記載の方法に従って外添することで、比較例トナー(B)を得た。
すなわち、トナー粒子(b)に対して、シリカ微粒子(日本アエロジル(株)社製 RY200)を、外添後、200メッシュの篩を用いて、粗大粒子を除去することで、比較例トナー(B)を得た。
すなわち、トナー粒子(b)100部に対して、該シリカ微粒子1.8部(第1段目で1.0部、第2段目で0.8部)を、図8から図12に示すトナー処理装置(表面改質装置)101を用い、表2に示す条件で2段階の処理を行った。その後、200メッシュの篩を用いて、粗大粒子を除去することで、比較トナー(B)を得た。
【0131】
図8に示すように、トナー処理装置101は、処理室(処理槽)110、舞上げ手段としての撹拌羽根120、回転体130、駆動モータ150、及び制御部160で構成されている。処理室110は、トナー粒子及び外添剤を含む被処理物を収容するためのものである。撹拌羽根120は、処理室内における回転体130の下方となる処理室110の底部に回転可能に設けられている。回転体130は、撹拌羽根120よりも上方で回転可能に設けられている。図9に処理室110の概略図を示す。図9では、説明の便宜上、処理室110の内周面(内壁)110aを一部切断した状態を示している。処理室110は略平らな底部を持った円筒形の容器であり、底部の略中心に撹拌羽根120や回転体130を取り付けるための駆動軸111を備えている。図10(a)および(b)に舞上げ手段としての撹拌羽根120の概略図を示す(図10(a)に上面図、図10(b)に側面図を示す)。撹拌羽根120は、回転することで、トナー粒子及び外添剤を含む被処理物を処理室110内で舞上げ可能に構成されている。撹拌羽根120は、回転中心から外側(径方向の外向き(外径方向)、外径側)に向かって伸びる羽根部121を有し、羽根部121の先端が被処理物を舞上げるように跳ねあげられた形状をしている。撹拌羽根120は、処理室110の底部の駆動軸111に固定され、上方から見て(図10(a)に示す状態で)時計方向(矢印R方向)に回転する。撹拌羽根120の回転により、被処理物は処理室110内で撹拌羽根120と同じ方向に回転しながら上昇し、やがて重力によって下降してくる。このようにして被処理物は均一に混合される。図11、12に回転体130の概略図を示す。図11(a)は回転体130の上面図、図11(b)は側面図である。図12(a)は処理室110内に設置された回転体130を示す上面図、図12(b)
は回転体130の要部を示す斜視図、図12(c)は図12(b)のA-A断面を示す図である。回転体130は、処理室110内で撹拌羽根120よりも上方にあって、撹拌羽根120と同じ駆動軸111に固定され、撹拌羽根120と同じ方向(矢印R方向)に回転する。回転体130は、回転体本体131と、回転体130の回転により被処理物に衝突して該被処理物を処理する処理面133を備えた処理部132と、で構成されている。処理面133は、回転体本体131の外周面131aから外径方向に延び、かつ、処理面133のうち回転体本体131から離れた領域の方が、該領域より回転体本体131に近い領域より、回転体130の回転方向下流側に位置するように形成されている。すなわち図13(a)において、処理面133は、回転体130の半径方向に対して、回転体130の回転方向Rの方向に傾いて配置されている。回転体130の回転により、被処理物と処理面133が衝突することによって外添剤凝集物の解砕処理が行われる。
【0132】
以下、比較例トナー(B)の外添条件と固着率を示す。尚、比較例トナー(B)の固着率測定方法は本実施例記載の測定方法と同一の方法を用いた。
【0133】
(表2)
比較例トナー(B)の外添条件と固着率
【0134】
設定角θを20°とし、侵入量δを0.60mm~1.50mmまで0.1mm、及び、1.50mm~1.60mmまで0.02mm刻みで変化させた図2に示されるプロセスカートリッジ7を準備し、本実施例トナー(A)を充填した。
準備したプロセスカートリッジ7を、図1に示す画像形成装置より、低温低湿環境(15℃/10%Rh)で10000枚の1%印字率画像形成を行った。
プロセスカートリッジ7を取り付けることができ、感光体ドラム1を回転駆動できるトルク測定装置を用い、印字前、及び10000枚印字後の感光体駆動トルクを計測することで、印字前後での感光体駆動トルクの増加量を計測した。
【0135】
(判定基準)
本実施例における画像形成装置100は、単一のプロセスカートリッジ7における感光体ドラム1の駆動トルク変動範囲を、プロセスカートリッジ7新品時に対し-100%から+120%まで許容するものとする。
これは、感光体ドラム1の駆動トルク(以下、感光体駆動トルク)が新品時のターゲットに対して120%を超えてしまうと、画像形成装置に必要な電力量を超えてしまい、装置全体の駆動がかからなくなってしまうためである。
したがって、本実験においては印字前後での感光体駆動トルクの増加率が120%を超えているか否か(超えている:×、超えていない:〇)により判断を行う。表3に本実施例トナー(A)の印字前後の感光体駆動トルクの増加率の判定結果を示す。
また、表4には比較例トナー(B)の印字前後の感光体駆動トルクの増加率の判定結果を示す。また、本実施例トナー(A)の固着率α(%)を横軸に、各固着率α(%)に対して感光体駆動トルクの増加率が120%を超えていない侵入量δ(mm)の最大値を縦軸にしたグラフを作成し、図6に示す。
【0136】
(表3)
本実施例トナー(A)の判定結果
【0137】
(表4)
比較例トナー(B)の判定結果
【0138】
表3、表4及び図6に示すように、実施例トナー(A)を用いた場合には、固着率α(%)が高いほど侵入量δ(mm)が高くても感光体駆動トルクは増加率の許容範囲である120%を超えていないことが分かった。また、そのときの固着率α(%)と侵入量δ(mm)との関係は、δ≦0.02×α-0.4であった。
【0139】
これらの実験結果から、実施例トナー(A)を用いて、且つ、固着率α(%)と侵入量δ(mm)からなる関係がδ≦0.02×α-0.4である場合においては、感光体ドラム1による低トルク化効果を維持することができることが分かった。
【0140】
以上述べたように、本発明の実施例に係るプロセスカートリッジに収容されるトナーは、トナー粒子、及び、トナー粒子の表面を被覆する、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体、を有するトナーである。そして、かかるトナーにおけるトナー粒子に対する、トナー粒子の表面を被覆する式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体の固着率(%)をαとし、周面上に周方向に延びる溝が長手方向に複数並ぶように形成された感光体に対する板状弾性体の侵入量(mm)をδとしたときに、δ≦0.02×α-0.4の関係が成り立つように構成されている。かかる構成によれば、長期にわたる使用において低トルクを実現し、消費電力の低減が可能なプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することが可能である。
該トナーにおいて、トナー粒子に対するトナー粒子の表面を被覆する、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体の固着率は、30%以上100%以下であることが好ましく、60%以上100%以下であることがより好ましく、80%以上100%以下であることがさらに好ましく、90%以上100%以下であることが特に好ましい。
また、該トナーは、無機微粒子を外添剤として用いないことも好ましい態様である。
【符号の説明】
【0141】
1:感光体ドラム、1´:仮想感光体ドラム、2:帯電部材、3:現像装置、4:現像ローラ、5:トナー供給ローラ、6:トナー量規制部材、7:プロセスカートリッジ、8:クリーニングブレード、9:廃トナー収容室、10:トナー、12:記録材、13:感光体ユニット、18:トナー収容室、22:トナー搬送部材、30:スキャナユニット、31:中間転写ベルト、32:一次転写ローラ、33:二次転写ローラ、34:定着装置、35:中間転写体クリーニング装置、40:研磨シート、41:バックアップローラ、100:画像形成装置、101:トナー処理装置(表面改質装置)、110:処理室(処理槽)、110a:内周面(内壁)、111:駆動軸、120:撹拌羽根、121:羽根部、130:回転体、131:回転体本体、131a:外周面、132:処理部、133:処理面、133a:回転体本体に最も近い第1部位、133b:駆動軸の中心からの長さが内周面の半径の80%(0.8L)となる位置に位置する第2部位、150:駆動モータ、160:制御部、R:回転方向、θ:回転方向Rの下流側の角の大きさ、a:回転体本体に最も近い第1部位と、駆動軸からの長さが内周面の半径の80%となる位置に位置する第2部位とを結ぶ線、b:駆動軸を中心とし第2部位を通る円の第2部位における接線
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