(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】有機イメージセンサー及びカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサー
(51)【国際特許分類】
H04N 23/12 20230101AFI20230731BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20230731BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20230731BHJP
H04N 25/11 20230101ALI20230731BHJP
H04N 25/13 20230101ALI20230731BHJP
H04N 25/17 20230101ALI20230731BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20230731BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20230731BHJP
【FI】
H04N23/12
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H01L27/146 E
H01L31/10 A
H04N25/11
H04N25/13
H04N25/17
H04N25/70
H10K30/60
(21)【出願番号】P 2019015308
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0014579
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0123911
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 啓 滉
(72)【発明者】
【氏名】李 光 熙
(72)【発明者】
【氏名】尹 晟 榮
(72)【発明者】
【氏名】林 東 ソク
(72)【発明者】
【氏名】陳 勇 完
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-017325(JP,A)
【文献】特開2013-062503(JP,A)
【文献】特開2003-332551(JP,A)
【文献】特開2016-058559(JP,A)
【文献】特開2017-045987(JP,A)
【文献】特開2011-204802(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30- 5/33
H04N 9/01- 9/11
H04N 23/10-23/30
H04N 25/00-25/79
H01L 27/14-27/148
H01L 29/76
H01L 31/10
H10K 30/60
H10K 39/32-39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光を吸収するA物質及び第2光を吸収するB物質を含み、前記B物質の比率が前記A物質よりも大きい下部層と前記A物質の比率が前記B物質よりも大きい上部層とからなる有機光電変換層
と、
前記有機光電変換層の上部に形成された共通電極と、
前記有機光電変換層の下部に形成された画素電極と、を備え
、
前記有機光電変換層は、第1有機光電変換素子と第2有機光電変換素子とに区分され、
前記第1有機光電変換素子には、第1電圧が印加され、
前記第2有機光電変換素子には、第2電圧が印加されることを特徴とする有機イメージセンサー。
【請求項2】
前記A物質と前記B物質とは、含有量が各層において互いに3倍以上の差があることを特徴とする請求項1に記載の有機イメージセンサー。
【請求項3】
前記第2電圧は、前記第1電圧よりも大きいことを特徴とする請求項
1に記載の有機イメージセンサー。
【請求項4】
前記第1光又は前記第2光のいずれか一つは前記第1電圧が印加された前記第1有機光電変換素子で測定された信号により得られ、残りの一つは前記第2電圧が印加された前記第2有機光電変換素子の測定信号と前記第1電圧が印加された前記第1有機光電変換素子の測定信号との差の絶対値により得られることを特徴とする請求項
1に記載の有機イメージセンサー。
【請求項5】
半導体基板内に形成された多数の無機光電変換素子と、
前記半導体基板上に形成され、第1光を吸収するA物質及び第2光を吸収するB物質を含み、前記B物質の比率が前記A物質よりも大きい下部層と前記A物質の比率が前記B物質よりも大きい上部層とからなる有機光電変換層と、
前記有機光電変換層の上部に形成された共通電極と、
前記有機光電変換層の下部に形成された画素電極と、を備え、
前記有機光電変換層は、第1有機光電変換素子と第2有機光電変換素子と、に区分され、
前記無機光電変換素子は、前記第1有機光電変換素子及び前記第2有機光電変換素子によって吸収されない第3光を吸収
し、
前記第1有機光電変換素子には、第1電圧が印加され、
前記第2有機光電変換素子には、第2電圧が印加されることを特徴とするカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサー。
【請求項6】
前記A物質と前記B物質とは、含有量が各層において互いに3倍以上の差があることを特徴とする請求項
5に記載のカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサー。
【請求項7】
前記第2電圧は、前記第1電圧よりも大きいことを特徴とする請求項
5に記載のカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサー。
【請求項8】
前記第1光又は前記第2光のいずれか一つは前記第1電圧が印加された前記第1有機光電変換素子で測定された信号により得られ、残りの一つは前記第2電圧が印加された前記第2有機光電変換素子の測定信号と前記第1電圧が印加された前記第1有機光電変換素子の測定信号との差の絶対値により得られることを特徴とする請求項
5に記載のカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサー。
【請求項9】
前記無機光電変換素子が形成された半導体基板の上面と前記有機光電変換層の露出した下部面とは、前記第1有機光電変換素子と前記第2有機光電変換素子とを前記基板に形成された電荷蓄積部に連結するためのコンタクトが形成された層間絶縁膜に接触することを特徴とする請求項
5に記載のカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサー。
【請求項10】
前記共通電極の上部には、平坦化層及びマイクロレンズアレイ層のみが存在することを特徴とする請求項
5に記載のカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサー。
【請求項11】
第1光を吸収するA物質及び第2光を吸収するB物質を含み、前記B物質の比率が前記A物質よりも大きい下部層と前記A物質の比率が前記B物質よりも大きい上部層とからなる有機光電変換層と、
前記有機光電変換層の上部に形成された共通電極と
前記有機光電変換層の下部に形成された画素電極と、を備え、
前記画素電極には、互いに異なる2つの電圧が印加されることを特徴とする有機イメージセンサー。
【請求項12】
正常動作モードでは、前記互いに異なる2つの電圧の比率が同じであることを特徴とする請求項
11に記載の有機イメージセンサー。
【請求項13】
正常動作モード以外のモードでは、前記互いに異なる2つの電圧の比率が異なることを特徴とする請求項
11に記載の有機イメージセンサー。
【請求項14】
前記画素電極の下部面及び前記有機光電変換層の露出した下部面は層間絶縁膜に接触し、
前記層間絶縁膜の下部には
、第1有機光電変換素子
及び第2有機光電変換素子に蓄積された電荷を蓄積するための電荷蓄積部と
、前記第1光及び前記第2光以外の第3光を吸収するための無機光電変換素子とが形成された基板を更に含み、
前記層間絶縁膜内には、前記第1有機光電変換素子及び前記第2有機光電変換素子と前記電荷蓄積部とを連結するためのコンタクトが形成されることを特徴とする請求項
11に記載の有機イメージセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサーに関し、より詳しくは、有機イメージセンサー及びカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な有機-無機積層型イメージセンサーは、青色の有機フォトダイオードと赤色のシリコンフォトダイオードと緑色のシリコンフォトダイオードとからなるシリコンフォトダイオードが積層された形態に構成される。
【0003】
このとき、所望する赤色、緑色、青色(RGB、又はCMY)カラー信号を得るためにカラーフィルターを使用する。有機フォトダイオードとシリコンフォトダイオードとの間にカラーフィルターが存在する場合には、カラーフィルターの厚さ(約500~1000nm)によって工程が難しく複雑になる。また、有機フォトダイオードとシリコンフォトダイオードとの間の距離が数百ナノメートルに達し、光学的なクロストーク(optical crosstalk)が増加する。また、深さ方向に電極を形成し難くなる。
【0004】
有機フォトダイオードの上にカラーフィルターが存在する場合には、カラーフィルターがCMY(Cyan、Magenta、Yellow)カラーを透過しなければならず、CMYカラーフィルターは、微細パターンが難しく色純度が低く、製品に適用しにくい。
【0005】
また、カラーフィルターは、色素(pigment又はdye)のような有機物で構成され、スピンコーティング、UV露光、湿式エッチング過程を通じて製作されるため、パターンの大きさや厚さを1μm以下に減らすことに限界がある。従って、イメージセンサーの高解像度化及び工程容易性を妨害する要因として作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、有機イメージセンサー、及びカラーフィルターがなくても任意に特定のカラー信号を得られるようにする有機-無機積層イメージセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による有機イメージセンサーは、第1光を吸収するA物質及び第2光を吸収するB物質を含み、前記B物質の比率が前記A物質よりも大きい下部層と前記A物質の比率が前記B物質よりも大きい上部層とからなる有機光電変換層を備える。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるカラーフィルターがない有機-無機積層イメージセンサーは、半導体基板内に形成された多数の無機光電変換素子と、前記半導体基板上に形成され、第1光を吸収するA物質及び第2光を吸収するB物質を含み、前記B物質の比率が前記A物質よりも大きい下部層と前記A物質の比率が前記B物質よりも大きい上部層とからなる有機光電変換層と、前記有機光電変換層の上部に形成された共通電極と、前記有機光電変換層の下部に形成された画素電極と、を備え、前記有機光電変換層は、第1有機光電変換素子と第2有機光電変換素子と、に区分され、前記無機光電変換素子は、前記第1有機光電変換素子及び前記第2有機光電変換素子によって吸収されない第3光を吸収する。
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の態様による有機イメージセンサーは、第1光を吸収するA物質及び第2光を吸収するB物質を含み、前記B物質の比率が前記A物質よりも大きい下部層と前記A物質の比率が前記B物質よりも大きい上部層とからなる有機光電変換層と、前記有機光電変換層の上部に形成された共通電極と、前記有機光電変換層の下部に形成された画素電極と、を備え、前記画素電極には、互いに異なる2つの電圧が印加される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カラーフィルターがなくても印加電圧を制御して特定のカラー信号を得ることができ、有機フォトダイオードに印加される電圧を制御して周辺環境に応じたSNRを向上させることができるように画素の色の割合を自由に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態によるイメージセンサーの画素配列を示す概略図である。
【
図2】
図1のII-II’線に沿って切断した断面図である。
【
図3】一実施形態によるイメージセンサーの読み出し回路を示す概略図である。
【
図4】一実施形態によるイメージセンサーの動作原理を説明するための概略図である。
【
図5A】それぞれの可能な色の組み合わせ及び信号抽出の可能な方式を示す模式図である。
【
図5B】それぞれの可能な色の組み合わせ及び信号抽出の可能な方式を示す模式図である。
【
図5C】それぞれの可能な色の組み合わせ及び信号抽出の可能な方式を示す模式図である。
【
図6】印加電圧により画素の色の割合を異にして調整できることを示す図である。
【
図7A】BIDD Se:C
60をブレンディングして形成した有機光電変換層の印加電圧に応じた外部量子効率(EQE)を測定した結果、及びこれを利用して各波長別外部量子効率をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図7B】BIDD Se:C
60をブレンディングして形成した有機光電変換層の印加電圧に応じた外部量子効率(EQE)を測定した結果、及びこれを利用して各波長別外部量子効率をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図8A】SubPc:C
60をブレンディングして形成した有機光電変換層の印加電圧に応じた外部量子効率(EQE)を測定した結果、及びこれを利用して各波長別外部量子効率をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図8B】SubPc:C
60をブレンディングして形成した有機光電変換層の印加電圧に応じた外部量子効率(EQE)を測定した結果、及びこれを利用して各波長別外部量子効率をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施形態は、様々な異なる形態で具現され、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0014】
図1は、一実施形態によるイメージセンサーの画素配列を示す概略図であり、
図2は、
図1のII-II’線に沿って切断した断面図であり、
図3は、一実施形態によるイメージセンサーの読み出し回路を示す概略図であり、
図4は、一実施形態によるイメージセンサーの動作原理を説明するための概略図である。
【0015】
図1を参照すると、イメージセンサー1は、第3光(緑色光)を検出するための第1画素10Gがx-y方向に全体に配列された無機画素アレイ10と、第1光(青色光)を検出するための第2画素20B及び第2光(赤色光)を検出するための第3画素20Rがx-y方向に交互に配列された有機画素アレイ20とを含む。無機画素アレイ10と有機画素アレイ20とはz方向に積層された構造をなす。
【0016】
正常動作モード(normal operation mode)では、第2画素20Bと第3画素20Rとの数を同じに交互に配置する。この時、第2画素20Bには第1電圧V1が印加されて第1光(青色光)を検出し、第3画素20Rには第1電圧V1と異なる第2電圧V2が印加されて第2光(赤色光)を検出する。
【0017】
これらの具体的な動作は、
図1のII-II’線に沿って切断した断面図である
図2及び動作原理を説明するための
図3を参照して説明する。
【0018】
図2を参照すると、イメージセンサー1は、半導体基板100に形成され、第1画素10Gを構成するための無機光電変換素子110を含む。
【0019】
半導体基板100は、その全体が半導体層である基板に限定されず、光が照射される側の表面に半導体層が設けられた絶縁性基板であればよい。
【0020】
無機光電変換素子110は、半導体基板100がn型の場合、その上に形成されたpウェル層とpウェル層内に形成されたn層と、n層よりも不純物濃度が高い暗電流抑制用p層とで構成される。無機光電変換素子110の大部分の領域はn層で構成されて電荷が蓄積される。
【0021】
無機光電変換素子110に蓄積された電荷は、3つのトランジスタ構成又は4つのトランジスタ構成などのトランジスタからなる読み出し回路を利用してセンシングされる。
【0022】
無機光電変換素子110が形成された基板100上に層間絶縁膜140が形成され、その上に有機光電変換層170が形成される。
【0023】
有機光電変換層170は、上部の共通電極180と、下部の各画素別に形成された画素電極160との組み合わせにより、それぞれ第2画素20Bを構成するための第1有機光電変換素子OPD#1と、第3画素20Rを構成するための第2有機光電変換素子OPD#2とに区分される。
【0024】
共通電極180の上部には、入射光に対して透明な平坦層190が形成される。平坦層190上の各画素に対応する位置には、各画素に入射光を集光するためのマイクロレンズ195が形成される。
【0025】
各画素電極160は、層間絶縁膜140内に形成されたビアに充填されたコンタクト150を通じて電荷蓄積部120に連結される。
【0026】
無機光電変換素子110に蓄積された電荷及び電荷蓄積部120に蓄積された電荷は、3つのトランジスタ構成又は4つのトランジスタ構成などのトランジスタからなる読み出し回路を利用してセンシングされる。
【0027】
図3を参照すると、無機光電変換素子110に蓄積された電荷は、無機光電変換素子110に接続されたドレインと電源Vnに接続されるソースとを有するリセットトランジスタTr1、リセットトランジスタTr1のドレインに接続されたゲートと電源Vccに接続されたソースとを有する出力トランジスタTr2、及び出力トランジスタTr2のドレインに接続されたソースと信号出力ライン320に接続されたドレインとを有する行選択トランジスタTr3によって読み出される。
【0028】
電荷蓄積部120に蓄積された電荷は、電荷蓄積部120に接続されたドレインと電源Vnに接続されたソースとを有するリセットトランジスタTr4、リセットトランジスタTr4のドレインに接続されたゲートと電源Vccに接続されたソースとを有する出力トランジスタTr5、出力トランジスタTr5のドレインに接続されたソースと信号出力ライン310に接続されたドレインとを有する行選択トランジスタTr6によって読み出される。
【0029】
無機光電変換素子で発生して貯蔵された電荷は、出力トランジスタTr2を通じて電荷量に対応する信号に変換される。行選択トランジスタTr3がターンオンされるときに、信号は信号出力ライン320に出力される。信号が出力された後、無機光電変換素子110の電荷は、リセットトランジスタTr1によってリセットされる。必要によっては無機光電変換素子110とリセットトランジスタTr1のドレインとの間に伝達トランジスタ(図示せず)を更に含んでもよい。
【0030】
バイアス電圧が画素電極160と共通電極180との間に印加されるときに、電荷は、有機光電変換層170上に入射する光に対応して発生し、画素電極160に連結されたコンタクト150を通じて電荷蓄積部120に移動する。電荷蓄積部120に貯蔵された電荷は、出力トランジスタTr5を通じて電荷量に対応する信号に変換される。行選択トランジスタTr6がターンオンされるときに、信号は信号出力ライン310に出力される。信号が出力された後、電荷蓄積部120の電荷は、リセットトランジスタTr4によってリセットされる。必要によっては電荷蓄積部120とリセットトランジスタTr4のドレインとの間に伝達トランジスタ(図示せず)を更に含んでもよい。
【0031】
イメージセンサー1では、有機光電変換層170が互いに異なる印加電圧により互いに異なる光を検出する。
図2に示すように、有機光電変換層170を互いに異なる光吸収特性を有する物質Aと物質Bとのブレンディング比率が異なる層(170A、170B)に積層して形成することによって、印加電圧により互いに異なる光を検出する。
【0032】
例えば、下部層170Aは赤色光を吸収する電荷転送(charge transport)に優れた物質Bの比率が高い層であり、上部層170Bは青色光を吸収する電気的特性が低い物質Aの比率が高い層で構成される。これらの動作を、
図4を参照して説明すると、低電圧バイアスV1が印加されると、下部層170A及び上部層170Bの両方で電荷分離(charge separation)が起こり、青色光を吸収した電荷は電荷転送特性に優れた下部層170Aを通じて移動しながら電荷収集(charge collection)が起こる反面、赤色光を吸収した電荷は電荷転送特性が低い上部層170Bを通じて移動できなくなる。従って、低電圧バイアスV1では青色光が検出される。一方、高電圧バイアスV2が印加されると、電荷転送特性が低い上部層170Bを通じて赤色光を吸収した電荷が移動することになるため、青色及び赤色の信号の両方が検出される。従って、青色信号は第1有機光電変換素子OPD#1の信号で得られ、赤色信号は第2有機光電変換素子OPD#2の信号で第1有機光電変換素子OPD#1の信号を相殺して得られる。
【0033】
信号の選択性を高めるためには、下部層170AではB物質をA物質よりも3倍以上多いようにブレンディングし、上部層170BではA物質をB物質よりも3倍以上多いようにブレンディングする。
【0034】
有機光電変換層170で赤色光及び青色光を吸収する場合には、AとBとの物質の組み合わせとして、(ZnPc、C60)又は(CuPc、C60)を使用する。
【0035】
有機光電変換層170で赤色光及び緑色光を吸収する場合には、AとBとの物質の組み合わせとして、(BIDDSe、CuPc)又は(SubPc、CuPc)を使用する。この場合、無機光電変換素子110が青色光を吸収する。
【0036】
有機光電変換層170で青色光及び緑色光を吸収する場合には、AとBとの物質の組み合わせとして(BIDDSe、C60)、(SubPc、C60)、又は(DCV3T、C60)を使用する。この場合、無機光電変換素子110が赤色光を吸収する。
【0037】
イメージセンサー1では、有機光電変換層170に印加される電圧を異にしてRGB中の2つが互いに異なる色に対する選択性を有することになる。有機光電変換層170がRGBのうちの既に2つの互いに異なる色を吸収したため、残りの一つの色は無機光電変換素子110に選択的に伝達される。従って、イメージセンサー1は、カラーフィルターを別途形成する必要がなくなる。また、場合によっては無機光電変換素子110の残り一つの色に対する選択性を高めるために、無機光電変換素子110の形成の深さを感知するための色の波長に合わせて調節する。
【0038】
有機光電変換層170と無機光電変換素子110との間にカラーフィルターを形成する必要がなくなると、有機光電変換層170と無機光電変換素子110との間の距離を100nm以下に下げることができる。これは、有機光電変換層170と無機光電変換素子110との間にカラーフィルターが存在する場合の距離(例えば、500nm)対比で少なくとも1/5以下の距離である。このように有機光電変換層170と無機光電変換素子110との間の距離を100nm以下に下げると、光学的なクロストーク(optical crosstalk)を減少させることができる。また、絶縁層140内に形成されるコンタクト150を形成するためのビアを形成する深さが小さくなるため、ビア形成工程がより容易になる。また、カラーフィルター自体を形成しないため、カラーフィルターの微細パターン形成の難しさや薄膜化の難しさなどが基本的に解決される。
【0039】
図5A~
図5Cは、それぞれの可能な色の組み合わせ及び信号抽出の可能な方式を示す模式図である。
【0040】
図5Aは、有機光電変換層170で赤色及び青色を吸収する場合を示す図である。上側の図のように、第1有機光電変換素子OPD#1で青色光を検出し、第2有機光電変換素子OPD#2で青色光及び赤色光の両方を検出する場合には、第2有機光電変換素子OPD#2の信号で第1有機光電変換素子OPD#1の信号を相殺して赤色信号を得ることができる。下側の図ように、第2有機光電変換素子OPD#2で赤色光を検出し、第1有機光電変換素子OPD#1で青色光及び赤色光の両方を検出する場合には、第1有機光電変換素子OPD#1の信号で第2有機光電変換素子OPD#2の信号を相殺して青色信号を得ることができる。
【0041】
図5Bは、有機光電変換層170で緑色及び赤色を吸収する場合を示す図である。上側の図のように、第1有機光電変換素子OPD#1で緑色光を検出し、第2有機光電変換素子OPD#2で緑色光及び赤色光の両方を検出する場合には、第2有機光電変換素子OPD#2の信号で第1有機光電変換素子OPD#1の信号を相殺して赤色信号を得ることができる。下側の図のように、第2有機光電変換素子OPD#2で赤色光を検出し、第1有機光電変換素子OPD#1で緑色光及び赤色光の両方を検出する場合には、第1有機光電変換素子OPD#1の信号で第2有機光電変換素子OPD#2の信号を相殺して緑色信号を得ることができる。
【0042】
図5Cは、有機光電変換層170で青色及び緑色を吸収する場合を示す図である。上側の図のように、第1有機光電変換素子OPD#1で青色光を検出し、第2有機光電変換素子OPD#2で緑色光及び青色光の両方を検出する場合には、第2有機光電変換素子OPD#2の信号で第1有機光電変換素子OPD#1の信号を相殺して緑色信号を得ることができる。下側の図のように、第2有機光電変換素子OPD#2で緑色光を検出し、第1有機光電変換素子OPD#1で緑色光及び青色光の両方を検出する場合には、第1有機光電変換素子OPD#1の信号で第2有機光電変換素子OPD#2の信号を相殺して青色信号を得ることができる。
【0043】
図6は、印加電圧により画素の色の割合を異にして調整できることを示す図である。
【0044】
左側の図に示すように、正常動作モードでは、第1電圧V1が印加されて第1光(青色光)を検出する第2画素20Bと第2電圧V2が印加されて第2光(赤色光)を検出する第3画素20Rとの比率が同じである。
【0045】
しかし、画素の動作電圧を一部変更すると、同じイメージセンサーでも、第2画素20Bの比率を小さくするか(右側上段の図)又は第2画素の比率を大きくすることができる(右側下段の図)。
【0046】
図1~
図6を参照して説明した実施形態では、有機-無機積層構造について説明したが、有機光電変換層170が検出する第1光及び第2光以外の第3光の吸収を更に他の下部有機光電変換層(図示せず)で行うように変形して全ての光電変換素子を有機層で形成することもできる。
【0047】
また、
図1~
図6を参照して説明した実施形態では、有機光電変換層を含むことによってカラーフィルターがなくてもよいイメージセンサーについて説明したが、より精巧な色分離が必要な場合には、有機光電変換層により検出されない残りの光に対するカラーフィルターを無機光電変換素子110の上部に設置してイメージセンサーを完成することができる。
【0048】
以下、実験例を通して実施例の具体的な具現例を説明する。
【0049】
図7A及び
図7Bは、BIDD Se:C
60をブレンディングして形成した有機光電変換層の印加電圧に応じた外部量子効率(EQE)を測定した結果、及びこれを利用して各波長別外部量子効率をシミュレーションした結果を示すグラフであり、
図8A及び
図8Bは、SubPc:C
60をブレンディングして形成した有機光電変換層の印加電圧に応じた外部量子効率(EQE)を測定した結果、及びこれを利用して各波長別外部量子効率をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【0050】
実験例1
【0051】
BIDD Se:C
60を5:1にブレンディングして50nmの厚さに形成した下部層と、BIDD Se:C
60を1:5にブレンディングして50nmの厚さに形成した上部層とからなる有機光電変換層を形成した。次いで、印加電圧を0V、1V、2V、3V、5V、7V、10Vに異にしながら外部量子効率(EQE(%))を測定した。その結果を
図7Aに示す。
図7Aの結果から低電圧では緑色光が検出され、高電圧では緑色光及び青色光が共に検出されることが確認された。
【0052】
3Vの電圧で得られた外部量子効率から緑色光検出結果を導出し、10Vの電圧で得られた外部量子効率から3Vの電圧で得られた外部量子効率を1.4倍して相殺させた結果から青色光検出結果を導出し、有機光電変換層で検出されずにフィルタリングされて無機シリコンフォトダイオードで検出される赤色光検出結果をシミュレーションして共に示した結果を
図7Bに示す。このことから有機光電変換層を適用することにより、カラーフィルターがなくてもイメージセンサーを実現できることが確認された。
【0053】
実験例2
【0054】
SubPc:C
60を1:5.5にブレンディングして50nmの厚さに形成した下部層と、SubPc:C
60を3.5:1にブレンディングして50nmの厚さに形成した上部層とからなる有機光電変換層を形成した。次いで、印加電圧を0V、1V、2V、3V、5V、7V、10Vに異にしながら外部量子効率(EQE(%))を測定した。その結果を
図8Aに示す。
図8Aの結果から低電圧では緑色光が検出され、高電圧では緑色光及び青色光が共に検出されることが確認された。
【0055】
1Vの電圧で得られた外部量子効率から緑色光検出結果を導出し、10Vの電圧で得られた外部量子効率から1Vの電圧で得られた外部量子効率を1.7倍して相殺させた結果から青色光検出結果を導出し、有機光電変換層で検出されずにフィルタリングされて無機シリコンフォトダイオードで検出される赤色光検出結果をシミュレーションして共に示した結果を
図8Bに示す。このことから有機光電変換層を適用することにより、カラーフィルターがなくてもイメージセンサーを実現できることが確認された。
【0056】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 イメージセンサー
10 無機画素アレイ
10G 第1画素
20 有機画素アレイ
20B 第2画素
20R 第3画素
100 半導体基板
110 無機光電変換素子
120 電荷蓄積部
140 層間絶縁膜
150 コンタクト
160 画素電極
170 有機光電変換層
170A 有機光電変換層の下部層
170B 有機光電変換層の上部層
180 共通電極
190 平坦層
195 マイクロレンズ
310、320 信号出力ライン