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特許7321715トモシンセシス用ファントム及び測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】トモシンセシス用ファントム及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230731BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61B6/00 390A
A61B6/02 301H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019015581
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020121010
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0272535(US,A1)
【文献】特開2008-023038(JP,A)
【文献】特開2005-021675(JP,A)
【文献】米国特許第06493574(US,B1)
【文献】特開2005-253572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファントム本体と、
当該ファントム本体内部の異なる高さごと複数配置され、且つ、当該高さに応じて水平方向に一様にシフトされる複数の試料と
を備え、
前記複数の試料は、前記高さが高くなるほど、前記水平方向において、トモシンセシス撮影が実行される際のトモシンセシス軌道を含み且つ前記水平方向に直交する面から遠ざかるように配置される、トモシンセシス用ファントム。
【請求項2】
前記トモシンセシス用ファントムを支持台に載置する際に当該支持台に引っかかることで、前記支持台に対する前記トモシンセシス用ファントムの位置を決定するフックを更に備える、請求項1に記載のトモシンセシス用ファントム。
【請求項3】
ファントム本体内部に試料が配置されたトモシンセシス用ファントムをトモシンセシス撮影することで複数のX線画像データを収集し、
前記複数のX線画像データから前記試料を検出し、
前記トモシンセシス用ファントムに対して定義された前記試料の位置と、前記複数のX線画像データにおいて検出された前記試料の位置とに基づいて、前記複数のX線画像データの収集に用いられた撮影系の位置ずれを算出する
ことを含み、
前記トモシンセシス用ファントムは、ファントム本体と、当該ファントム本体内部の異なる高さごと複数配置され、且つ、当該高さに応じて水平方向に一様にシフトされる複数の試料とを備え、前記複数の試料は、前記高さが高くなるほど、前記水平方向において、トモシンセシス撮影が実行される際のトモシンセシス軌道を含み且つ前記水平方向に直交する面から遠ざかるように配置される、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、トモシンセシス用ファントム及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体における病変の有無や状態を検査するため、トモシンセシス撮影が使用されている。トモシンセシス撮影を実行する際、X線診断装置は、まず、被検体に対するX線の照射角度を変化させつつ、複数のX線画像データ(投影データ)を収集する。次に、X線診断装置は、収集した複数の投影データに基づく再構成処理によって複数の断層画像(スライス)を生成する。そして、医師等のユーザは、これら複数のスライスを観察して、被検体における病変の有無や状態を判断することができる。
【0003】
トモシンセシス撮影を用いた検査の精度を保つため、トモシンセシス装置の精度管理を行なうことが考えられる。例えば、病変を模した試料を埋め込んだファントムについてトモシンセシス撮影を実行し、収集されたスライスにおける画素値のプロファイルに応じて、トモシンセシス装置の精度管理を行なうことができる。ここで、トモシンセシス装置の精度管理は、各X線診断装置について定期的に行なう必要があるものであり、作業量は少ないことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-42929号公報
【文献】特開2017-77271号公報
【文献】特公昭62-15213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、トモシンセシス用ファントムを用いた検査を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のトモシンセシス用ファントムは、ファントム本体と、複数の試料とを備える。複数の試料は、ファントム本体内部の異なる高さに配置され、且つ、当該高さごとに水平方向の位置が異なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムを示す図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムを示す図である。
図3A図3Aは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムの使用例を示す図である。
図3B図3Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムの使用例を示す図である。
図3C図3Cは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムの使用例を示す図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムを示す図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムを示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムの使用例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムを示す図である。
図7A図7Aは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムを示す図である。
図7B図7Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムの使用例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、第2の実施形態に係るトモシンセシス用ファントムを示す図である。
図10A図10Aは、第3の実施形態に係る位置ずれ測定の例を示す図である。
図10B図10Bは、第3の実施形態に係る位置ずれ測定の例を示す図である。
図11図11は、第3の実施形態に係るX線診断装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態に係るトモシンセシス用ファントム及び測定方法を説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、図1のX線診断装置1において使用されるトモシンセシス用ファントムについて説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すX線診断装置1は、被検体の乳房P1に対するトモシンセシス撮影を実行可能なマンモグラフィ装置である。例えば、X線診断装置1は、乳房P1に対するトモシンセシス撮影を実行することで複数のスライスを収集し、収集した複数のスライスを医師等のユーザに提示する。
【0010】
まず、X線診断装置1の構成について説明する。例えば、X線診断装置1は、図1に示すように、基台101と、スタンド102とを有する。スタンド102は、基台101上に立設され、撮影台103と、圧迫板104と、X線管105と、X線絞り器106と、X線検出器107と、信号処理回路108とを支持する。ここで、スタンド102は、撮影台103と、圧迫板104と、X線検出器107及び信号処理回路108とを、上下方向へ移動可能に支持する。
【0011】
撮影台103は、被検体の乳房P1を支持する台であり、乳房P1が載せられる支持面を有する。なお、撮影台103は、支持台の一例である。圧迫板104は、撮影台103の上方に配置され、撮影台103に対して平行に対向するように設けられる。ここで、圧迫板104は、撮影台103に接離する方向へ移動可能に設けられる。例えば、圧迫板104は、撮影台103に接近する方向に移動することで、撮影台103上に支持されている乳房P1を圧迫する。圧迫板104によって圧迫された乳房P1は薄く押し広げられ、乳腺の重なりが減少する。
【0012】
X線管105は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管105は、X線高電圧装置111から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。ここで、X線管105は、乳房P1へのX線の照射角度を変化させるよう移動可能に構成される。例えば、トモシンセシス撮影を実行する際、X線管105は、図1に示すX方向に沿って移動しながら、乳房P1に対してX線を照射する。
【0013】
X線絞り器106は、X線管105と圧迫板104との間に配置され、X線管105が発生させたX線を制御する。例えば、X線絞り器106は、X線の照射範囲を絞り込むコリメータと、X線を調節するフィルタとを有する。
【0014】
X線絞り器106におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線管105が発生させたX線を絞り込んで乳房P1に照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管105のX線照射口付近に設けられる。
【0015】
X線絞り器106におけるフィルタは、被検体に対する被曝線量の低減とX線画像データの画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体に吸収されやすい軟線成分を低減したり、画像のコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、乳房P1へ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0016】
例えば、X線絞り器106は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路114による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器106は、処理回路114から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、乳房P1に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器106は、処理回路114から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、乳房P1に対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
【0017】
X線検出器107は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器107は、X線管105から照射されて乳房P1を透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を信号処理回路108へと出力する。なお、X線検出器107は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0018】
例えば、X線検出器107は、X線管105から照射されたX線パルスを検出し、検出したX線量に対応した検出信号を生成する。ここで、X線検出器107は、生成した検出信号を保持する。また、X線検出器107は、X線パルスの照射後に検出信号を信号処理回路108に対して出力する。そして、信号処理回路108は、X線検出器107から出力された検出信号に基づいてX線画像データを生成し、記憶回路112に格納する。なお、信号処理回路108が検出信号に基づいて生成したX線画像データについては、投影データとも記載する。
【0019】
また、図1に示すように、X線診断装置1は、入力インターフェース109と、昇降駆動装置110と、X線高電圧装置111と、記憶回路112と、ディスプレイ113と、処理回路114とを有する。
【0020】
入力インターフェース109は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路114に出力する。例えば、入力インターフェース109は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース109は、処理回路114と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース109は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置1本体とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路114へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース109の例に含まれる。
【0021】
昇降駆動装置110は、撮影台103及び圧迫板104に接続される。例えば、昇降駆動装置110は、撮影台103を上下方向へ昇降させる。また、例えば、昇降駆動装置110は、圧迫板104を上下方向(撮影台103に対して接離する方向)へ昇降させる。例えば、昇降駆動装置110は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、処理回路114による制御の下、駆動機構を動作させることにより、撮影台103及び圧迫板104の昇降を制御する。
【0022】
X線高電圧装置111は、処理回路114による制御の下、X線管105に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置111は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管105に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管105が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0023】
記憶回路112は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、記憶回路112は、信号処理回路108が生成した投影データや、処理回路114が再構成したスライスを記憶する。また、例えば、記憶回路112は、X線診断装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、記憶回路112は、X線診断装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0024】
ディスプレイ113は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ113は、入力インターフェース109を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。また、ディスプレイ113は、乳房P1について収集された各種の画像データを表示する。例えば、ディスプレイ113は、トモシンセシス撮影により収集された複数のスライスを順次表示させる。例えば、ディスプレイ113は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ113は、デスクトップ型でもよいし、X線診断装置1本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0025】
処理回路114は、制御機能114a及び表示制御機能114bを実行することで、X線診断装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路114は、制御機能114aに対応するプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより、入力インターフェース109を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路114の各種機能を制御する。
【0026】
また、制御機能114aは、撮影台103、圧迫板104、X線管105、X線絞り器106、X線検出器107、信号処理回路108、昇降駆動装置110及びX線高電圧装置111の動作を制御して、トモシンセシス撮影を実行する。以下では、トモシンセシス撮影時におけるX線管105の軌道をトモシンセシス軌道とも記載する。また、以下では、X線診断装置1の構成のうちトモシンセシス撮影に用いられる構成を、撮影系とも記載する。X線診断装置1の撮影系には、例えば、撮影台103、圧迫板104、X線管105、X線絞り器106、X線検出器107、信号処理回路108、昇降駆動装置110及びX線高電圧装置111が含まれる。
【0027】
具体的には、まず、制御機能114aは、昇降駆動装置110を制御することで、撮影台103及び圧迫板104を昇降させ、撮影台103と圧迫板104との間に被検体の乳房P1を配置する。また、制御機能114aは、X線管105を移動させて、トモシンセシス軌道における初期位置に配置する。次に、制御機能114aは、トモシンセシス軌道に沿ってX線管105を移動させつつ、X線高電圧装置111を制御することでX線管105に対して高電圧を供給させ、X線管105からX線を発生させる。また、制御機能114aは、X線絞り器106を制御することで、乳房P1に対して照射されるX線の照射範囲や線量の分布を制御する。また、制御機能114aは、信号処理回路108を制御することで、X線検出器107から出力された検出信号に基づく複数の投影データを生成させる。
【0028】
なお、図1においては、高さ方向(鉛直方向)をZ方向とする。また、図1においては、Z方向に直交し、且つ、トモシンセシス軌道に沿った方向をX方向とする。即ち、制御機能114aは、X線管105をX方向に沿って移動させながら、X線を発生させる。また、図1においては、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。図1に示す場合、+Y方向は、トモシンセシス撮影時において撮影台103及び圧迫板104に対して被検体が位置する方向に対応する。即ち、被検体は、+Y方向側から、撮影台103及び圧迫板104との間に乳房P1を差し込む。これにより、トモシンセシス撮影時においてX線管105をX方向に沿って移動させても、被検体とX線管105との接触(干渉)は生じないこととなる。また、図1に示すXY平面は、水平面に対応する。以下、水平面に対して平行な方向(即ち、高さ方向に対して垂直な方向)については、水平方向とも記載する。例えば、X方向及びY方向は、水平方向の一例である。
【0029】
次に、制御機能114aは、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して、対数変換処理やオフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なって、補正済みの投影データを生成する。そして、制御機能114aは、補正済みの投影データに基づいて、複数のスライスを再構成する。例えば、制御機能114aは、補正済みの投影データに対してFBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理を実行することによって、XY平面に対して平行な複数のスライスを再構成する。
【0030】
なお、制御機能114aは、MLO(Mediolateral-Oblique:内外斜位)画像やCC(Cranio-Caudal:頭尾)画像等のマンモグラフィ画像を収集することもできる。具体的には、制御機能114aは、撮影台103及び圧迫板104の位置をMLO方向やCC方向で固定し、乳房P1に対するX線照射角度を一定に保った状態でX線を照射することにより、MLO画像やCC画像等のマンモグラフィ画像を収集する。また、処理回路114は、表示制御機能114bに対応するプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより、制御機能114aにより収集された各種の画像データをディスプレイ113に表示する。
【0031】
図1に示すX線診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路112へ記憶されている。信号処理回路108及び処理回路114は、記憶回路112からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の信号処理回路108及び処理回路114は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0032】
なお、図1においては単一の処理回路114にて、制御機能114a及び表示制御機能114bが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路114を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路114が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0033】
次に、X線診断装置1において使用されるトモシンセシス用ファントムの例として、図2A及び図2Bに示すトモシンセシス用ファントム2について説明する。図2A及び図2Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム2を示す図である。図2Aに示すように、トモシンセシス用ファントム2は、複数のファントム(ファントム21、ファントム22、ファントム23、ファントム24、ファントム25、ファントム26及びファントム27)から構成される。これら複数のファントムは、ユーザが任意に並べ替えて重ねることができる。
【0034】
また、図2Bに示すように、ファントム21は、ファントム本体211と、ファントム本体211の内部に配置された試料212とを備える。ファントム本体211は、人体の性状を模して作製される。例えば、ファントム本体211は、被検体の乳房P1と同程度の放射線吸収率を有する素材により作製される。一例を挙げると、ファントム本体211は、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Polymethyl methacrylate)である。また、試料212は、病変を模して作製される。例えば、試料212は、被検体の乳房P1内に生じる病変(石灰化等)を模して作製される。一例を挙げると、試料212は、アルミニウム製のボールである。
【0035】
トモシンセシス用ファントム2においては、ファントム21のみ試料212を備える。
即ち、ファントム22、ファントム23、ファントム24、ファントム25、ファントム26及びファントム27は、試料212を備えない。ファントム22、ファントム23、ファントム24、ファントム25、ファントム26及びファントム27は、例えば、ファントム21におけるファントム本体211と同じ素材(例えば、PMMA)により、その全体が作製される。
【0036】
次に、トモシンセシス用ファントム2を用いたトモシンセシス装置の精度管理について、図3A図3B及び図3Cを用いて説明する。図3A図3B及び図3Cは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム2の使用例を示す図である。
【0037】
まず、ユーザは、図3Aに示すように、撮影台103と圧迫板104との間にトモシンセシス用ファントム2を配置する。具体的には、ユーザは、上からファントム22、ファントム21、ファントム23、ファントム24、ファントム25、ファントム26、ファントム27の順となるように、ファントムを重ねる。この場合、試料212は、ファントム22とファントム23との間に位置することとなる。
【0038】
次に、制御機能114aは、X線診断装置1の撮影系を制御し、図3Aに示す状態においてトモシンセシス撮影を実行する。具体的には、制御機能114aは、X方向に沿ったトモシンセシス軌道においてX線管105を移動させながら、X線管105からトモシンセシス用ファントム2に対してX線を照射させる。なお、図3Aにおいては、X線の照射範囲を点線で示す。図3Aに示す場合、X線管105から照射されるX線は、扇状に広がるファンビームである。また、以下では、図3Aの矢印に示すように、X線の照射範囲の中心線に沿った方向をX線の照射方向として説明する。
【0039】
図3Aに示すように、X線の照射方向はZ軸に対して傾いている。具体的には、X線の照射方向は、Z軸に対してY方向に傾いている。これは、被検体の乳房P1についてトモシンセシス撮影を実行する際、撮影台103及び圧迫板104の+Y方向側には被検体が位置していることを考慮したものである。即ち、X線の照射方向を-Y方向に傾けることによって、乳房P1を除いて被検体にはX線が照射されなくなり、被検体の被ばく量を低減することができる。
【0040】
トモシンセシス装置の精度管理を行なう際に被ばく量を考慮する必要はないものの、精度管理の信頼度を高めるためには、被検体に対する撮影時と撮影条件を揃えることが好ましい。また、精度管理を行なう際、臨床で撮影される条件と同程度の条件で撮影することを望まれていることがある。そこで、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム2についてトモシンセシス撮影を実行する際も臨床と同様の条件で撮影を行なう。
【0041】
次に、制御機能114aは、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して、対数変換処理やオフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なって、補正済みの投影データを生成する。次に、制御機能114aは、補正済みの投影データに基づいて、XY平面に平行なスライスを再構成する。例えば、制御機能114aは、XY平面に平行であり、且つ、図3Aのファントム21の高さに対応するスライスを再構成する。次に、制御機能114aは、再構成したスライスから試料212に対して測定を行なう。
【0042】
次に、ユーザは、図3Bに示すように、トモシンセシス用ファントム2における複数のファントムの配置を変更する。具体的には、ユーザは、上からファントム22、ファントム23、ファントム24、ファントム21、ファントム25、ファントム26、ファントム27の順となるように、ファントムを並べ替える。この場合、試料212は、ファントム24とファントム25との間に位置することとなる。即ち、図3Aに示す状態に対して、試料212の高さは低くなる。
【0043】
次に、制御機能114aは、X線診断装置1の撮影系を制御し、図3Bに示す状態においてトモシンセシス撮影を実行する。例えば、制御機能114aは、X方向に沿ったトモシンセシス軌道においてX線管105を移動させながら、X線管105からトモシンセシス用ファントム2に対してX線を照射させる。
【0044】
次に、制御機能114aは、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して補正処理を行ない、補正済みの投影データを生成する。次に、制御機能114aは、補正済みの投影データに基づいて、XY平面に平行なスライスを再構成する。例えば、制御機能114aは、XY平面に平行であり、且つ、図3Bのファントム21の高さに対応するスライスを再構成する。次に、制御機能114aは、再構成したスライスから試料212に対して測定を行なう。
【0045】
次に、ユーザは、図3Cに示すように、トモシンセシス用ファントム2における複数のファントムの配置を変更する。具体的には、ユーザは、上からファントム22、ファントム23、ファントム24、ファントム25、ファントム26、ファントム21、ファントム27の順となるように、ファントムを並べ替える。この場合、試料212は、ファントム26とファントム27との間に位置することとなる。即ち、図3Bに示す状態に対して、試料212の高さは更に低くなる。
【0046】
次に、制御機能114aは、X線診断装置1の撮影系を制御し、図3Cに示す状態においてトモシンセシス撮影を実行する。例えば、制御機能114aは、X方向に沿ったトモシンセシス軌道においてX線管105を移動させながら、X線管105からトモシンセシス用ファントム2に対してX線を照射させる。
【0047】
次に、制御機能114aは、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して補正処理を行ない、補正済みの投影データを生成する。次に、制御機能114aは、補正済みの投影データに基づいて、XY平面に平行なスライスを再構成する。例えば、制御機能114aは、XY平面に平行であり、且つ、図3Cのファントム21の高さに対応するスライスを再構成する。次に、制御機能114aは、再構成したスライスから試料212に対して測定を行なう。
【0048】
上述したように、制御機能114aは、試料212の高さを変更しながら、トモシンセシス用ファントム2についてトモシンセシス撮影を繰り返し実行し、収集したスライスにおいて試料212に対して測定を行なう。そして、制御機能114aは、試料212のX,Y座標に対してスライス方向にプロファイルを作成し、そのプロファイルに応じてX線診断装置1の精度管理を行なう。例えば、制御機能114aは、作成したプロファイルから半値半幅(Half Width at Walf Maximum:HWHM)を測定して評価し、X線診断装置1の精度管理を行なう。即ち、制御機能114aは、高さごとに生じる検出精度のばらつきを評価して、X線診断装置1の精度管理を行なう。
【0049】
しかしながら、トモシンセシス用ファントム2を用いてトモシンセシス装置の精度管理を行なう場合、トモシンセシス撮影を繰り返し実行する必要があり、時間を要する。また、トモシンセシス撮影を行なうごとにユーザがファントムの並べ替えをする必要があり、ユーザの作業量も多い。このため、トモシンセシス用ファントム2を用いてトモシンセシス装置の精度管理を実行することは容易でない。
【0050】
次に、図4Aに示すトモシンセシス用ファントム31について説明する。図4Aは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム31を示す図である。図4Aに示すように、トモシンセシス用ファントム31は、ファントム本体311を備える。ファントム本体311は、人体の性状を模して作製される。例えば、ファントム本体311は、被検体の乳房P1と同程度の放射線吸収率を有する素材(例えば、PMMA)により作製される。また、トモシンセシス用ファントム31は、ファントム本体311の内部に配置された複数の試料(試料312a、試料312b及び試料312c)を備える。これら複数の試料は、病変を模して作製される。例えば、試料312a、試料312b及び試料312cは、アルミニウム製のボールである。
【0051】
なお、図4Aに示すX’方向、Y’方向及びZ’方向は、使用時におけるトモシンセシス用ファントム31の向きを示す。即ち、トモシンセシス用ファントム31は、使用時において、X’方向が図1等に示したX方向に一致し、Y’方向がY方向に一致し、Z’方向がZ方向に一致するように配置される。換言すると、Z’方向は、高さ方向(鉛直方向)である。また、X’方向及びY’方向を含む平面は、水平面に対応する。例えば、X’方向及びY’方向は、水平方向の一例である。
【0052】
また、図4Aの右図に示す断面C11、断面C12及び断面C13は、それぞれ、トモシンセシス用ファントム31における断面を示す。断面C11、断面C12及び断面C13は、いずれも水平面に平行であり、且つ、高さが異なる断面を示す。具体的には、断面C11が最も高い位置の断面であり、断面C13が最も低い位置の断面である。図4Aに示すように、試料312aは断面C11上に位置する。また、試料312bは断面C12上に位置する。また、試料312cは断面C13上に位置する。即ち、試料312a、試料312b及び試料312cは、ファントム本体311の内部の異なる高さに配置されている。
【0053】
更に、試料312a、試料312b及び試料312cは、高さごとに水平方向の位置が異なるように配置されている。例えば、試料312bは、図4Aに示すように、試料312aより+Y’方向側に配置されている。また、試料312cは、試料312bより+Y’方向側に配置されている。即ち、図4Aに示す試料312a、試料312b及び試料312cは、Y’方向の位置が異なるように配置されている。なお、試料312a、試料312b及び試料312cは、Y’方向の位置に加えて、X’方向の位置が異なるように配置されてもよい。
【0054】
図4Aに示したトモシンセシス用ファントム31は、X’方向がX方向に一致し、Y’方向がY方向に一致し、Z’方向がZ方向に一致するように配置される。具体的には、トモシンセシス用ファントム31は、図4Bに示すように、撮影台103と圧迫板104との間に配置される。ここで、トモシンセシス用ファントム31における試料312a、試料312b及び試料312cの配置について、面A1及び面A2を用いて説明する。なお、図4Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム31を示す図である。
【0055】
図4Bの面A1は、トモシンセシス軌道を含み、且つ、水平方向に直交する面である。即ち、トモシンセシス軌道はX方向に沿って移動するX線管105の軌道であるから、図4Bに示す場合、トモシンセシス軌道を含む面とは、X線管105を含み且つX方向に対して平行な面である。また、水平方向とはXY平面上の方向であるから、図4Bに示す場合、水平方向に直交する面とは、XY平面に直交する面である。以上より、トモシンセシス軌道を含み且つ水平方向に直交する面A1は、図4Bに示すように一意に定まる。
【0056】
図4Bに示すように、面A1からの距離は、試料312a、試料312b、試料312cの順に大きくなっている。なお、図4Bに示す場合、面A1はXZ平面に平行な面であるから、面A1からの距離とは、Y方向の距離である。即ち、試料312a、試料312b及び試料312cは、配置される高さが高くなるほど、Y方向において、面A1から遠ざかるように配置されている。
【0057】
また、図4Bの面A2は、X線診断装置1によって被検体に対するトモシンセシス撮影が実行される際の被検体のコロナル面に対応する面である。即ち、トモシンセシス撮影を実行する際、被検体は、撮影台103及び圧迫板104の+Y方向側に位置するとともに、-Y方向を向くこととなる。このため、トモシンセシス撮影が実行される際の被検体のコロナル面は、撮影台103及び圧迫板104に対して+Y方向側に位置するとともに、Y方向に対して垂直な面となる。以上より、トモシンセシス撮影が実行される際の被検体のコロナル面に対応する面A2は、図4Bに示すように一意に定まる。
【0058】
図4Bに示すように、面A2からの距離は、試料312a、試料312b、試料312cの順に大きくなっている。なお、図4Bに示す場合、面A2はXZ平面に平行な面であるから、面A2からの距離とは、Y方向の距離である。即ち、試料312a、試料312b及び試料312cは、配置される高さが高くなるほど、Y方向において、面A2から遠ざかるように配置されている。
【0059】
次に、トモシンセシス用ファントム31を用いたトモシンセシス装置の精度管理について、図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム31の使用例を示す図である。まず、ユーザは、図5に示すように、撮影台103と圧迫板104との間にトモシンセシス用ファントム31を配置する。
【0060】
次に、制御機能114aは、X線診断装置1の撮影系を制御し、図5に示す状態においてトモシンセシス撮影を実行する。具体的には、制御機能114aは、X方向に沿ったトモシンセシス軌道においてX線管105を移動させながら、X線管105からトモシンセシス用ファントム31に対してX線を照射させる。なお、制御機能114aは、図5に示すように、X線の照射方向をZ軸に対して傾けた状態において、トモシンセシス撮影を実行する。
【0061】
次に、制御機能114aは、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して、対数変換処理やオフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なって、補正済みの投影データを生成する。次に、制御機能114aは、補正済みの投影データに基づいて、XY平面に平行なスライスを再構成する。例えば、制御機能114aは、XY平面に平行であり、且つ、試料312aの高さに対応するスライスB11、試料312bの高さに対応するスライスB12、及び、試料312cの高さに対応するスライスB13をそれぞれ再構成する。
【0062】
次に、制御機能114aは、再構成した複数のスライスから試料を検出する。例えば、制御機能114aは、スライスB11から試料312aを検出し、スライスB12から試料312bを検出し、スライスB13から試料312cを検出する。また、制御機能114aは、各スライスにおいて試料の測定を行なう。そして、制御機能114aは、各試料のX,Y座標に対してスライス方向にプロファイルを作成し、そのプロファイルに応じてX線診断装置1の精度管理を行なう。例えば、制御機能114aは、作成したプロファイルからHWHMを測定して評価し、X線診断装置1の精度管理を行なう。即ち、トモシンセシス用ファントム31によれば、制御機能114aは、高さごとに生じる検出精度のばらつきを評価して、X線診断装置1の精度管理を行なうことができる。
【0063】
ここで、X線の照射方向はZ軸に対してY方向に傾いており、且つ、試料312a、試料312b及び試料312cは、配置される高さが高くなるほど、Y方向において面A1又は面A2から遠ざかるように配置されている。即ち、試料312a、試料312b及び試料312cは、トモシンセシス撮影の際にトモシンセシス用ファントム31に対して照射されるX線の照射方向に基づいて配置されている。これにより、試料312a、試料312b及び試料312cは、それぞれX線検出器107上の異なる位置に投影されることとなる。
【0064】
即ち、試料312a、試料312b及び試料312cは、X線の照射方向に重ならないように配置されている。例えば、試料312a、試料312b及び試料312cは、X線の照射方向に交わる角度の直線に沿って配置される。このため、試料312a、試料312b及び試料312cは、収集される投影データにおいて重なることはない。以上より、トモシンセシス用ファントム31を用いる場合においても、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム2を用いる場合と同程度の信頼度で、トモシンセシス装置の精度管理を行なうことができる。即ち、トモシンセシス用ファントム31は、トモシンセシス装置の精度管理について信頼度を担保することができる。
【0065】
更に、トモシンセシス用ファントム31を用いてトモシンセシス装置の精度管理を行なう場合、トモシンセシス撮影を繰り返し実行する必要はない。また、トモシンセシス撮影を行なうごとにユーザがファントムの並べ替えをするといった作業が生じることもない。従って、トモシンセシス用ファントム31によれば、所要時間を短縮すると共にユーザの作業量を低減し、トモシンセシス装置の精度管理を容易にすることができる。即ち、トモシンセシス用ファントム31によれば、トモシンセシス用ファントムを用いた検査を容易にすることができる。
【0066】
なお、トモシンセシス用ファントム31は、図6に示すように、フック313を更に備えていてもよい。フック313は、トモシンセシス用ファントム31を撮影台103に載置する際に撮影台103に引っかかることで、撮影台103に対するトモシンセシス用ファントム31の位置を決定する。即ち、トモシンセシス用ファントム31がフック313を備えることによって、ユーザは、より容易にトモシンセシス用ファントム31を配置することができる。また、トモシンセシス用ファントム31がフック313を備えることによって、撮影台103に対するトモシンセシス用ファントム31の位置が正確に決定されるため、トモシンセシス装置の精度管理の信頼度を更に向上させることができる。なお、図6は、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム31を示す図である。
【0067】
また、図4B図5及び図6においては圧迫板104を図示したが、トモシンセシス用ファントム31についてトモシンセシス撮影を実行する際、圧迫板104は退避させておいてもよい。例えば、ファントム本体311の素材によっては、トモシンセシス用ファントム31の放射線吸収率が乳房P1よりも高い場合がある。この場合、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム31の撮影時に圧迫板104を退避させておくことで、トモシンセシス用ファントム31と乳房P1との間の放射線吸収率の差を補うことができる。
【0068】
また、トモシンセシス用ファントム31においては、高さごとに1つの試料が配置されるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図7Aのトモシンセシス用ファントム32に示すように、高さごとに複数の試料が配置される場合であってもよい。なお、図7Aは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム32を示す図である。
【0069】
図7Aに示すように、トモシンセシス用ファントム32は、ファントム本体321を備える。ファントム本体321は、例えば、PMMAにより作製される。また、トモシンセシス用ファントム32は、ファントム本体321の内部に配置された複数の試料(試料322a、試料322b、試料322c、試料322d、試料322e、試料322f、試料322g、試料322h、試料322i、試料322j、試料322k、試料322l、試料322m、試料322n、試料322o)を備える。これら複数の試料は、例えば、アルミニウム製のボールである。
【0070】
また、図7Aの右図に示す断面C21、断面C22及び断面C23は、それぞれ、トモシンセシス用ファントム32における断面を示す。断面C21、断面C22及び断面C23は、いずれも水平面に平行であり、且つ、高さが異なる断面である。具体的には、断面C21が最も高い位置の断面であり、断面C23が最も低い位置の断面である。図7Aに示すように、試料322a、試料322b、試料322c、試料322d及び試料322eは、断面C21上に位置する。また、試料322f、試料322g、試料322h、試料322i及び試料322jは、断面C22上に位置する。また、試料322k、試料322l、試料322m、試料322n及び試料322oは、断面C23上に位置する。即ち、図7Aに示す複数の試料は、ファントム本体321の内部の異なる高さに配置されている。
【0071】
更に、図7Aに示す複数の試料は、高さごとに水平方向の位置が異なるように配置されている。例えば、試料322fは、試料322aに対して、+Y’方向側に配置されている。同様に、試料322gは試料322bに対して、試料322hは試料322cに対して、試料322iは試料322dに対して、試料322jは試料322eに対して、+Y’方向側に配置されている。また、同様に、試料322kは試料322fに対して、試料322lは試料322gに対して、試料322mは試料322hに対して、試料322nは試料322iに対して、試料322oは試料322jに対して、+Y’方向側に配置されている。
【0072】
上述したように、試料322f、試料322g、試料322h、試料322i及び試料322jは、試料322a、試料322b、試料322c、試料322d及び試料322eに対して一様に、+Y’方向にシフトされている。また、試料322k、試料322l、試料322m、試料322n及び試料322oは、試料322f、試料322g、試料322h、試料322i及び試料322jに対して一様に、+Y’方向にシフトされている。即ち、図7Aに示す複数の試料は、高さに応じて+Y’方向に一様にシフトされている。
【0073】
次に、トモシンセシス用ファントム32を用いたトモシンセシス装置の精度管理について、図7Bを用いて説明する。図7Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム32の使用例を示す図である。まず、ユーザは、図7Bに示すように、撮影台103と圧迫板104との間にトモシンセシス用ファントム32を配置する。具体的には、トモシンセシス用ファントム32は、図7AのX’方向がX方向に一致し、Y’方向がY方向に一致し、Z’方向がZ方向に一致するように配置される。なお、トモシンセシス用ファントム32は、図7Bに示すように、フック323を備えていてもよい。この場合、フック323は、トモシンセシス用ファントム32を撮影台103に載置する際に撮影台103に引っかかることで、撮影台103に対するトモシンセシス用ファントム32の位置を決定する。
【0074】
次に、制御機能114aは、X線診断装置1の撮影系を制御し、図7Bに示す状態においてトモシンセシス撮影を実行する。具体的には、制御機能114aは、X方向に沿ったトモシンセシス軌道においてX線管105を移動させながら、X線管105からトモシンセシス用ファントム32に対してX線を照射させる。なお、制御機能114aは、図7Bに示すように、X線の照射方向をZ軸に対して傾けた状態において、トモシンセシス撮影を実行する。
【0075】
次に、制御機能114aは、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して、対数変換処理やオフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なって、補正済みの投影データを生成する。次に、制御機能114aは、補正済みの投影データに基づいて、XY平面に平行なスライスを再構成する。例えば、制御機能114aは、XY平面に平行であり、且つ、試料322a、試料322b、試料322c、試料322d及び試料322eの高さに対応するスライスB21を再構成する。また、制御機能114aは、XY平面に平行であり、且つ、試料322f、試料322g、試料322h、試料322i及び試料322jの高さに対応するスライスB22を再構成する。また、制御機能114aは、XY平面に平行であり、且つ、試料322k、試料322l、試料322m、試料322n及び試料322oの高さに対応するスライスB23を再構成する。
【0076】
次に、制御機能114aは、再構成した複数のスライスから試料を検出する。例えば、制御機能114aは、スライスB21から試料322a、試料322b、試料322c、試料322d及び試料322eをそれぞれ検出する。また、制御機能114aは、スライスB22から試料322f、試料322g、試料322h、試料322i及び試料322jをそれぞれ検出する。また、制御機能114aは、スライスB23から試料322k、試料322l、試料322m、試料322n及び試料322oをそれぞれ検出する。また、制御機能114aは、各スライスにおいて試料の測定を行なう。そして、制御機能114aは、各試料のX,Y座標に対してスライス方向にプロファイルを作成し、そのプロファイルに応じてX線診断装置1の精度管理を行なう。例えば、制御機能114aは、作成したプロファイルからHWHMを測定して評価し、X線診断装置1の精度管理を行なう。即ち、トモシンセシス用ファントム32によれば、制御機能114aは、高さごとに生じる検出精度のばらつきを評価して、X線診断装置1の精度管理を行なうことができる。
【0077】
ここで、X線の照射方向はZ軸に対してY方向に傾いており、且つ、トモシンセシス用ファントム32が備える複数の試料は、配置される高さが高くなるほど、Y方向において、図示しない面A1又は面A2から遠ざかるように配置されている。即ち、トモシンセシス用ファントム32が備える複数の試料は、トモシンセシス撮影の際にトモシンセシス用ファントム32に対して照射されるX線の照射方向に基づいて配置されている。これにより、トモシンセシス用ファントム32が備える複数の試料は、それぞれX線検出器107上の異なる位置に投影されることとなる。
【0078】
即ち、トモシンセシス用ファントム32が備える複数の試料は、X線の照射方向に重ならないように配置されており、収集される投影データにおいて重なることはない。以上より、トモシンセシス用ファントム32を用いる場合においても、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム2やトモシンセシス用ファントム31を用いる場合と同程度の信頼度で、トモシンセシス装置の精度管理を行なうことができる。即ち、トモシンセシス用ファントム32は、トモシンセシス装置の精度管理について信頼度を担保することができる。
【0079】
更に、トモシンセシス用ファントム32を用いてトモシンセシス装置の精度管理を行なう場合、トモシンセシス撮影を繰り返し実行する必要はない。また、トモシンセシス撮影を行なうごとにユーザがファントムの並べ替えをするといった作業が生じることもない。従って、トモシンセシス用ファントム32によれば、所要時間を短縮すると共にユーザの作業量を低減し、トモシンセシス装置の精度管理を容易にすることができる。
【0080】
更に、トモシンセシス用ファントム32においては、高さごとに試料が複数配置され、且つ、高さに応じて水平方向に一様にシフトされている。従って、制御機能114aは、各スライスにおいて各試料を適切に検出できたか否かに応じて、トモシンセシス撮影の検出精度を水平方向の位置ごとに評価することができる。即ち、トモシンセシス用ファントム32によれば、制御機能114aは、水平方向の位置に応じて生じる検出精度のばらつきを評価して、トモシンセシス装置の精度管理を行なうことができる。
【0081】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、マンモグラフィ装置であるX線診断装置1において使用されるトモシンセシス用ファントムについて説明した。これに対し、第2の実施形態では、マンモグラフィ装置以外のX線診断装置において使用されるトモシンセシス用ファントムについて説明する。
【0082】
以下では、マンモグラフィ装置以外のX線診断装置の例として、図8に示すX線診断装置4について説明する。X線診断装置4は、被検体P2に対するトモシンセシス撮影を実行可能なX線診断装置である。X線診断装置1は、被検体P2に対するトモシンセシス撮影を実行することで複数のスライスを収集し、収集した複数のスライスを医師等のユーザに提示する。なお、図8は、第2の実施形態に係るX線診断装置4の構成の一例を示すブロック図である。
【0083】
まず、X線診断装置4の構成について説明する。図8に示すように、X線診断装置4は、X線高電圧装置401と、X線管402と、X線絞り器403と、天板404と、Cアーム405と、X線検出器406と、記憶回路407と、ディスプレイ408と、入力インターフェース409と、処理回路410とを備える。
【0084】
X線高電圧装置401は、処理回路410による制御の下、X線管402に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置401は、変圧器及び整流器等の電気回路を有し、X線管402に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管402が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0085】
X線管402は、熱電子を発生する陰極と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極とを有する真空管である。X線管402は、X線高電圧装置401から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。ここで、X線管402は、被検体P2へのX線の照射角度を変化させるよう移動可能に構成される。例えば、トモシンセシス撮影を実行する際、X線管402は、Cアーム405の回転に伴って図1に示すX方向に沿って移動しながら、被検体P2に対してX線を照射する。
【0086】
X線絞り器403は、X線管402により発生されたX線の照射範囲を絞り込むコリメータと、X線管402から曝射されたX線を調節するフィルタとを有する。X線絞り器403におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータは、絞り羽根をスライドさせることで、X線管402が発生したX線を絞り込んで被検体P2に照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管402のX線照射口付近に設けられる。また、X線絞り器403におけるフィルタは、被検体P2に対する被曝線量の低減とX線画像データの画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体P2に吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像データのコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管402から被検体P2へ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0087】
例えば、X線絞り器403は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路410による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器403は、処理回路410から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、被検体P2に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器403は、処理回路410から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、被検体P2に対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
【0088】
天板404は、被検体P2を載せるベッドであり、図示しない寝台駆動装置の上に配置される。なお、天板404は、支持台の一例である。例えば、寝台駆動装置は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路410による制御の下、駆動機構を動作させることにより、天板404の移動・傾斜を制御する。例えば、寝台駆動装置は、処理回路410から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、天板404を移動させたり、傾斜させたりする。
【0089】
Cアーム405は、X線管402及びX線絞り器403と、X線検出器406とを、被検体P2を挟んで対向するように保持する。例えば、Cアーム405は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路410による制御の下、駆動機構を動作させることにより、回転したり移動したりする。例えば、Cアーム405は、処理回路410から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、X線管402及びX線絞り器403と、X線検出器406とを被検体P2に対して回転・移動させ、X線の照射位置や照射角度を制御する。なお、図8では、X線診断装置4がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
【0090】
X線検出器406は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器である。X線検出器406は、X線管402から照射されて被検体P2を透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路410へと出力する。なお、X線検出器406は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0091】
記憶回路407は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、記憶回路407は、処理回路410によって収集された投影データや、再構成されたスライスを記憶する。また、記憶回路407は、処理回路410によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。なお、記憶回路407は、X線診断装置4とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0092】
ディスプレイ408は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ408は、処理回路410による制御の下、操作者の指示を受け付けるためのGUIを表示する。また、ディスプレイ408は、被検体P2について収集された各種の画像データを表示する。例えば、ディスプレイ408は、トモシンセシス撮影により収集された複数のスライスを順次表示させる。例えば、ディスプレイ408は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。なお、ディスプレイ408はデスクトップ型でもよいし、処理回路410と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0093】
入力インターフェース409は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路410に出力する。例えば、入力インターフェース409は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース409は、処理回路410と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース409は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置4とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路410へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース409の例に含まれる。
【0094】
処理回路410は、制御機能410a及び表示制御機能410bを実行することで、X線診断装置4全体の動作を制御する。例えば、処理回路410は、制御機能410aに対応するプログラムを記憶回路407から読み出して実行することにより、入力インターフェース409を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路410の各種機能を制御する。
【0095】
また、制御機能410aは、X線高電圧装置401、X線管402、X線絞り器403、天板404、Cアーム405及びX線検出器406の動作を制御して、トモシンセシス撮影を実行する。以下、X線診断装置4の構成のうちトモシンセシス撮影に用いられる構成を、撮影系とも記載する。X線診断装置4の撮影系には、例えば、X線高電圧装置401、X線管402、X線絞り器403、天板404、Cアーム405及びX線検出器406が含まれる。
【0096】
例えば、制御機能410aは、まず、Cアーム405を回転・移動させることで、X線管402を、トモシンセシス軌道における初期位置に配置する。次に、制御機能410aは、Cアーム405を回転させることでトモシンセシス軌道に沿ってX線管402を移動させつつ、X線高電圧装置401を制御することでX線管402に対して高電圧を供給させ、X線管402からX線を発生させる。また、制御機能410aは、X線絞り器403を制御することで、被検体P2に対して照射されるX線の照射範囲や線量の分布を制御する。また、制御機能410aは、X線検出器107から出力された検出信号に基づいて、複数の投影データを生成する。
【0097】
なお、図8においては、高さ方向(鉛直方向)をZ方向とする。また、図8においては、Z方向に直交し、且つ、トモシンセシス軌道に沿った方向をX方向とする。即ち、制御機能410aは、X線管402を図8に示すX方向に沿って移動させながら、X線を発生させる。図8に示す場合、X方向は、天板404の長手方向に対応する。また、図8においては、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。図8に示す場合、Y方向は、天板404の短手方向に対応する。X方向及びY方向は、水平方向の一例である。
【0098】
次に、制御機能410aは、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して、対数変換処理やオフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なって、補正済みの投影データを生成する。そして、制御機能410aは、補正済みの投影データに基づいて、複数のスライスを再構成する。例えば、制御機能410aは、補正済みの投影データに対してFBP法による逆投影処理を実行することによって、XY平面に対して平行な複数のスライスを再構成する。また、処理回路114は、表示制御機能114bに対応するプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより、制御機能114aにより収集された各種の画像データをディスプレイ113に表示する。
【0099】
図8に示すX線診断装置4においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路407へ記憶されている。処理回路410は、記憶回路407からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路410は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0100】
なお、図8においては単一の処理回路410にて、制御機能410a及び表示制御機能410bが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路410を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路410が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0101】
次に、X線診断装置4において使用されるトモシンセシス用ファントムの例として、図9に示すトモシンセシス用ファントム33について説明する。図9は、第2の実施形態に係るトモシンセシス用ファントム33を示す図である。図9に示すように、トモシンセシス用ファントム33は、ファントム本体331を備える。ファントム本体331は、例えば、PMMAにより作製される。また、トモシンセシス用ファントム33は、ファントム本体331の内部に配置された複数の試料(試料332a、試料332b、試料332c、試料332d、試料332e、試料332f、試料332g、試料332h、試料332i、試料332j及び試料332k)を備える。これら複数の試料は、例えば、アルミニウム製のボールである。
【0102】
例えば、試料332a、試料332b及び試料332cは、トモシンセシス用ファントム33において水平面に平行な断面C31上に位置する。また、試料332d、試料332e、試料332f及び試料332gは、トモシンセシス用ファントム33において水平面に平行であり、且つ、断面C31より低い位置の断面C32上に位置する。また、試料332h、試料332i、試料332j及び試料332kは、トモシンセシス用ファントム33において水平面に平行であり、且つ、断面C32より低い位置の断面C33上に位置する。即ち、図9に示す複数の試料は、ファントム本体331の内部の異なる高さに配置されている。
【0103】
まず、ユーザは、図9に示すように、天板404の上にトモシンセシス用ファントム33を配置する。ここで、トモシンセシス用ファントム33は、図9に示すように、フック333を更に備えていてもよい。この場合、フック333は、トモシンセシス用ファントム33を天板404に載置する際に天板404に引っかかることで、天板404に対するトモシンセシス用ファントム33の位置を決定する。
【0104】
次に、制御機能410aは、X線診断装置4の撮影系を制御し、図9に示す状態においてトモシンセシス撮影を実行する。具体的には、制御機能410aは、X方向に沿ったトモシンセシス軌道においてX線管402を移動させながら、X線管402からトモシンセシス用ファントム33に対してX線を照射させる。
【0105】
次に、制御機能410aは、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して、対数変換処理やオフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なって、補正済みの投影データを生成する。次に、制御機能410aは、補正済みの投影データに基づいて、XY平面に平行なスライスを再構成する。例えば、制御機能410aは、XY平面に平行であり、且つ、試料332a、試料332b及び試料332cの高さに対応するスライスB31を再構成する。また、制御機能410aは、XY平面に平行であり、且つ、試料332d、試料332e、試料332f及び試料332gの高さに対応するスライスB32を再構成する。また、制御機能410aは、XY平面に平行であり、且つ、試料332h、試料332i、試料332j及び試料332kの高さに対応するスライスB33を再構成する。
【0106】
次に、制御機能410aは、再構成した複数のスライスから試料を検出する。例えば、制御機能410aは、スライスB31から試料332a、試料332b及び試料332cをそれぞれ検出する。また、制御機能410aは、スライスB32から試料332d、試料332e、試料332f及び試料332gをそれぞれ検出する。また、制御機能410aは、スライスB33から試料332h、試料332i、試料332j及び試料332kをそれぞれ検出する。また、制御機能410aは、各スライスにおいて試料の測定を行なう。そして、制御機能410aは、各試料のX,Y座標に対してスライス方向にプロファイルを作成し、そのプロファイルに応じてX線診断装置4の精度管理を行なう。例えば、制御機能410aは、作成したプロファイルからHWHMを測定して評価し、X線診断装置4の精度管理を行なう。即ち、制御機能410aは、高さごとに生じる検出精度のばらつきを評価して、X線診断装置4の精度管理を行なうことができる。
【0107】
ここで、トモシンセシス用ファントム32が備える複数の試料は、X線の照射方向に重ならないように配置されている。例えば、試料332a、試料332d及び試料332hは、X線の照射方向に交わる角度の直線に沿って配置される。また、試料332b、試料332e及び試料332iは、X線の照射方向に交わる角度の直線に沿って配置される。また、試料332b、試料332f及び試料332jは、X線の照射方向に交わる角度の直線に沿って配置される。また、試料332c、試料332g及び試料332kは、X線の照射方向に交わる角度の直線に沿って配置される。このため、トモシンセシス用ファントム33が備える複数の試料は、収集される投影データにおいて重なることはない。以上より、トモシンセシス用ファントム33は、トモシンセシス装置の精度管理について信頼度を担保することができる。
【0108】
更に、トモシンセシス用ファントム33を用いてトモシンセシス装置の精度管理を行なう場合、トモシンセシス撮影を繰り返し実行する必要はない。また、トモシンセシス撮影を行なうごとにユーザがファントムの並べ替えをするといった作業が生じることもない。従って、トモシンセシス用ファントム33によれば、所要時間を短縮すると共にユーザの作業量を低減し、トモシンセシス装置の精度管理を容易にすることができる。
【0109】
なお、図8及び図9においては、X方向が天板404の長手方向に対応するものとして説明した。即ち、図8及び図9においては、天板404の長手方向に沿ったトモシンセシス軌道において、トモシンセシス撮影を実行するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、他のトモシンセシス軌道においてトモシンセシス撮影を実行する場合にも適用が可能である。
【0110】
例えば、天板404の短手方向に沿ったトモシンセシス軌道においてトモシンセシス撮影を実行する場合、ユーザは、図9に示す状態からZ軸を回転軸として90°回転させた向きで、トモシンセシス用ファントム33を天板404の上に配置する。これにより、トモシンセシス用ファントム32が備える複数の試料は、X線の照射方向に重ならないように配置されることとなり、トモシンセシス装置の精度管理について信頼度を担保することができる。
【0111】
(第3の実施形態)
上述した第1~2の実施形態では、トモシンセシス用ファントムを用いて、トモシンセシス装置の精度管理を行なう場合について説明した。これに対し、第3の実施形態では、トモシンセシス用ファントムを用いて、X線診断装置における撮影系の位置ずれを測定する場合について説明する。なお、本実施形態では、トモシンセシス用ファントムの例として、図4Aに示したトモシンセシス用ファントム31について説明する。また、本実施形態では、X線診断装置の例として、図1に示したX線診断装置1について説明する。
【0112】
以下、トモシンセシス用ファントム31を用いた、X線診断装置1における撮影系の位置ずれの測定について、図10A及び図10Bを用いて説明する。図10A及び図10Bは、第3の実施形態に係る位置ずれ測定の例を示す図である。なお、図10A及び図10Bにおいて、トモシンセシス用ファントム31は、図示しない撮影台103と圧迫板104との間に配置される。ここで、トモシンセシス用ファントム31は、後述する位置ずれ測定の精度を向上させるため、水平計を更に備えてもよい。また、トモシンセシス用ファントム31が備える複数の試料(試料312a、試料312b及び試料312c)は、高さごとにY方向の位置が異なるように配置されている。なお、試料312a、試料312b及び試料312cは、X方向の位置については同じである。
【0113】
また、軌道T1は、トモシンセシス軌道を示す。図10A及び図10Bに示すように、軌道T1は、X方向に沿った軌道である。また、位置Xsは、軌道T1における初期位置を示す。また、位置Xeは、軌道T1における終端位置を示す。トモシンセシス撮影を実行する際、制御機能114aは、軌道T1に沿って、X線管105を位置Xsから位置Xeまで移動させつつ、X線を発生させる。
【0114】
図10Aは、X線管105が、軌道T1上の位置X1に位置する場合を示す。具体的には、制御機能114aは、まずはX線管105を位置Xsに配置し、X線を発生させながら位置X1まで移動させる。ここで、制御機能114aは、信号処理回路108を制御することで、X線検出器107から出力された検出信号に基づくX線画像データI1を生成させる。次に、制御機能114aは、図10Bに示すように、X線管105を位置X2まで移動させる。ここで、制御機能114aは、信号処理回路108を制御することで、X線検出器107から出力された検出信号に基づくX線画像データI2を生成させる。
【0115】
次に、制御機能114aは、X線画像データI1から、試料312a、試料312b及び試料312cを検出する。ここで、トモシンセシス用ファントム31に対する試料312a、試料312b及び試料312cの位置が定義されていれば、制御機能114aは、X線画像データI1から検出した試料312a、試料312b及び試料312cの位置に基づいて、X線画像データI1の撮影時におけるX線焦点の位置を算出することが可能である。
【0116】
なお、トモシンセシス用ファントム31に対する試料312a、試料312b及び試料312cの位置については、例えば、トモシンセシス用ファントム31の製造時における設計情報に基づいて定義することができる。別の例を挙げると、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム31を撮像した3次元画像データに基づいて、試料312a、試料312b及び試料312cの位置を定義することができる。ここで、3次元画像データの例としては、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置によって収集されたX線CT画像データが挙げられる。或いは、3次元画像データは、X線診断装置4がトモシンセシス用ファントム31を回転撮影することによって収集された3次元X線画像データであってもよい。制御機能114aは、3次元画像データから試料312a、試料312b及び試料312cをそれぞれ検出することにより、トモシンセシス用ファントム31に対する試料312a、試料312b及び試料312cの位置を定義することができる。
【0117】
具体的には、X線画像データI1においては、X線焦点に応じた位置に、試料312a、試料312b及び試料312cがそれぞれ投影される。即ち、試料312aは、X線焦点と試料312aとを結ぶ直線と、X線検出器107の検出面とが交差する位置に投影される。また、試料312bは、X線焦点と試料312bとを結ぶ直線と、X線検出器107の検出面とが交差する位置に投影される。また、試料312cは、X線焦点と試料312cとを結ぶ直線と、X線検出器107の検出面とが交差する位置に投影される。
【0118】
従って、制御機能114aは、X線画像データI1から検出した試料312aの位置とトモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312aの位置とを結ぶ直線L11、X線画像データI1から検出した試料312bの位置とトモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312bの位置とを結ぶ直線L12、及び、X線画像データI1から検出した試料312cの位置とトモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312cの位置とを結ぶ直線L13が交差する位置を、X線焦点の位置として算出することができる。なお、図10Aは、直線L11、直線L12及び直線L13が交差する位置が、位置X1に一致する場合を示す。即ち、図10Aは、算出されたX線焦点の位置と位置X1とが一致しており、撮影系の位置ずれがない場合を示す。
【0119】
次に、制御機能114aは、X線画像データI2から、試料312a、試料312b及び試料312cを検出する。次に、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312a、試料312b及び試料312cの位置と、X線画像データI2から検出した試料312a、試料312b及び試料312cの位置とに基づいて、X線画像データI2の撮影時におけるX線焦点の位置を算出する。具体的には、制御機能114aは、X線画像データI2から検出した試料312aの位置とトモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312aの位置とを結ぶ直線L21、X線画像データI2から検出した試料312bの位置とトモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312bの位置とを結ぶ直線L22、及び、X線画像データI2から検出した試料312cの位置とトモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312cの位置とを結ぶ直線L23が交差する位置を、X線焦点の位置として算出する。以下、制御機能114aが算出したX線焦点の位置を、位置X2’とする。
【0120】
ここで、図10Bに示すように、位置X2と位置X2’とは一致していない。即ち、図10Bは、撮影系の位置ずれが生じている場合を示す。より具体的には、図10Bは、X線管105が位置X2に位置することとなるよう機構系の制御を行なったものの、実際のX線管105の位置が位置X2’にずれてしまった場合を示す。即ち、制御機能114aは、機構系の制御情報と、実際に収集されたX線画像データとの不整合を、位置ずれとして測定することができる。
【0121】
また、表示制御機能114bは、制御機能114aによる位置ずれの測定結果をディスプレイ113に表示させる。例えば、表示制御機能114bは、制御機能114aにより測定された位置ずれが、許容範囲内であったか否かを示す情報をディスプレイ113に表示させる。ここで、位置ずれが許容範囲内でない場合、ユーザは、例えば、X線診断装置1の使用を回避したり、X線診断装置1についてメンテナンスの申請を行なったりすることができる。
【0122】
次に、X線診断装置1による処理の手順の一例を、図11を用いて説明する。図11は、第3の実施形態に係るX線診断装置1の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS101、ステップS102、ステップS103、ステップS104、ステップS105及びステップS106は、制御機能114aに対応するステップである。また、ステップS107は、表示制御機能114bに対応するステップである。
【0123】
まず、処理回路114は、トモシンセシス用ファントム31をトモシンセシス撮影することで、複数のX線画像データを収集する(ステップS101)。次に、処理回路114は、収集された複数のX線画像データのうちいずれかを取得し(ステップS102)、取得したX線画像データから、試料312a、試料312b及び試料312cを検出する(ステップS103)。
【0124】
次に、処理回路114は、トモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312a、試料312b及び試料312cの位置と、X線画像データから検出した試料312a、試料312b及び試料312cの位置とに基づいて、X線画像データの撮影時におけるX線焦点の位置を算出する(ステップS104)。次に、処理回路114は、機構系の制御情報に基づくX線焦点の位置と、算出したX線焦点の位置とのずれを、位置ずれとして算出する(ステップS105)。例えば、処理回路114は、図10Bに示した位置X2と位置X2’との間の距離を、位置ずれとして算出する。
【0125】
ここで、処理回路114は、ステップS101にて収集した複数のX線画像データの全てについて位置ずれを算出したか否かを判定する(ステップS106)。位置ずれを算出していないX線画像データがある場合(ステップS106否定)、処理回路114は、再度ステップS102に移行する。一方で、全てのX線画像データについて位置ずれを算出した場合(ステップS106肯定)、処理回路114は、位置ずれの測定結果をディスプレイ113に表示し(ステップS107)、処理を終了する。
【0126】
なお、図11においては、トモシンセシス撮影の後に位置ずれの算出を行なうものとして説明したが、トモシンセシス撮影と位置ずれの算出とは並行して行なってもよい。例えば、処理回路114は、トモシンセシス撮影においてX線画像データが収集されるごとに、新たに収集されたX線画像データに基づいて位置ずれを順次算出する。
【0127】
上述したように、第3の実施形態によれば、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム31をトモシンセシス撮影することで複数のX線画像データを収集する。また、制御機能114aは、収集した複数のX線画像データから試料312a、試料312b及び試料312cを検出する。また、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312a、試料312b及び試料312cの位置と、複数のX線画像データにおいて検出された試料312a、試料312b及び試料312cの位置とに基づいて、複数のX線画像データの収集に用いられた撮影系の位置ずれを算出する。従って、第3の実施形態に係るX線診断装置1は、トモシンセシス用ファントム31についてトモシンセシス撮影を実行することにより、撮影系の位置ずれを容易に測定することができる。即ち、トモシンセシス用ファントム31は、トモシンセシス用ファントムを用いた検査を容易にすることができる。ひいては、トモシンセシス用ファントム31は、撮影系の位置ずれに起因するトモシンセシス撮影の検出精度の低下を防ぎ、トモシンセシス撮影の検出精度を維持することができる。
【0128】
なお、図10Bにおいては、位置ずれの例として、軌道T1に沿った方向の位置ずれを示した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム31についてトモシンセシス撮影を実行することにより、図10BのY方向に生じる位置ずれを測定することも可能である。
【0129】
また、X線診断装置1における制御機能114aが位置ずれの測定を行なう場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能114aは、トモシンセシス用ファントム31をトモシンセシス撮影することで複数のX線画像データを収集し、収集した複数のX線画像データを、X線診断装置1とネットワークを介して接続された医用画像処理装置に送信する。次に、医用画像処理装置は、受信した複数のX線画像データから試料312a、試料312b及び試料312cを検出する。次に、医用画像処理装置は、トモシンセシス用ファントム31に対して定義された試料312a、試料312b及び試料312cの位置と、複数のX線画像データにおいて検出された試料312a、試料312b及び試料312cの位置とに基づいて、複数のX線画像データの収集に用いられた撮影系の位置ずれを算出する。次に、医用画像処理装置は、ネットワークを介して、位置ずれの測定結果をX線診断装置1に対して送信する。そして、表示制御機能114bは、医用画像処理装置から受信した位置ずれの測定結果を、ディスプレイ113に表示させることができる。
【0130】
また、トモシンセシス用ファントムの例としてトモシンセシス用ファントム31について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、トモシンセシス用ファントム31に代えて、トモシンセシス用ファントム2やトモシンセシス用ファントム32等を用いる場合であってもよい。即ち、上述した位置ずれの測定方法は、内部に試料が配置された任意のトモシンセシス用ファントムを用いて実行可能である。また、X線診断装置の例としてX線診断装置1について説明したが、上述した位置ずれの測定方法は、X線診断装置4においても同様に実行可能である。
【0131】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路112又は記憶回路407に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0132】
なお、図1及び図8においては、単一の記憶回路112又は記憶回路407が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の記憶回路112を分散して配置し、処理回路114は、個別の記憶回路112から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。同様に、複数の記憶回路407を分散して配置し、処理回路410は、個別の記憶回路112から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、記憶回路112又は記憶回路407にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0133】
また、処理回路114及び処理回路410は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路114は、記憶回路112から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線診断装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1に示す各機能を実現する。
【0134】
第1~第3の実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0135】
また、第1~第3の実施形態で説明した位置ずれの測定方法は、予め用意された処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0136】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、トモシンセシス用ファントムを用いた検査を容易にすることができる。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0138】
1 X線診断装置
103 撮影台
105 X線管
114 処理回路
114a 制御機能
114b 表示制御機能
2 トモシンセシス用ファントム
21 ファントム
211 ファントム本体
212 試料
31 トモシンセシス用ファントム
311 ファントム本体
312a~312c 試料
313 フック
32 トモシンセシス用ファントム
321 ファントム本体
322a~322o 試料
323 フック
33 トモシンセシス用ファントム
331 ファントム本体
332a~332k 試料
333 フック
4 X線診断装置
402 X線管
404 天板
410 処理回路
410a 制御機能
410b 表示制御機能
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11