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特許7321722ジャーナル軸受構造およびそれを備えた過給機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ジャーナル軸受構造およびそれを備えた過給機
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/10 20060101AFI20230731BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20230731BHJP
   F02B 39/14 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
F16C33/10 Z
F16C17/02 Z
F02B39/14 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019030839
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020133831
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】矢野 由祐
(72)【発明者】
【氏名】和田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 幸博
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092781(WO,A1)
【文献】特開2010-116944(JP,A)
【文献】特開2001-140888(JP,A)
【文献】特開2013-177900(JP,A)
【文献】実開平05-012635(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/10
F16C 17/02
F02B 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる円筒状に形成される第1内周面および第1外周面を有し、該第1内周面により回転軸を支持するジャーナル軸受と、
前記軸線に沿って延びる円筒状に形成される第2内周面を有し、該第2内周面により前記ジャーナル軸受の前記第1外周面を保持する軸受ハウジングと、を備え、
前記ジャーナル軸受は、前記第1内周面と前記第1外周面とを連通させる第1給油孔を有し、前記軸受ハウジングに圧入されることにより前記軸受ハウジングに固定されており、
前記軸受ハウジングは、前記第2内周面に向けて開口する第2給油孔を有し、
前記軸受ハウジングの前記第2内周面および前記ジャーナル軸受の前記第1外周面の少なくともいずれかには、前記軸線回りの周方向に延びるとともに前記第2給油孔から排出される潤滑油を前記第1給油孔へ導く給油溝が形成されているジャーナル軸受構造。
【請求項2】
前記給油溝は、前記軸受ハウジングの前記第2内周面に形成されている請求項1に記載のジャーナル軸受構造。
【請求項3】
前記給油溝は、前記ジャーナル軸受の前記第1外周面に形成されている請求項1に記載のジャーナル軸受構造。
【請求項4】
前記給油溝の前記軸線方向の幅は、前記第2給油孔の前記軸線方向の幅以下である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のジャーナル軸受構造。
【請求項5】
前記給油溝は、前記軸線回りの周方向の全周に形成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のジャーナル軸受構造。
【請求項6】
前記第1給油孔が配置される前記周方向の第1位置と、前記第2給油孔が配置される前記周方向の第2位置とが異なる位置である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のジャーナル軸受構造。
【請求項7】
前記第1給油孔の前記軸線方向の幅と前記第2給油孔の前記軸線方向の幅は等しい請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のジャーナル軸受構造。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のジャーナル軸受構造と、
前記ジャーナル軸受構造により支持される前記回転軸と、
前記回転軸に連結されるコンプレッサと、を備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャーナル軸受構造およびそれを備えた過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸の径方向の荷重(ラジアル荷重)を支持するジャーナル軸受構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、排気タービン過給機のタービンに一体に設けられた回転軸のラジアル荷重を一対のジャーナル軸受構造により支持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-145942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジャーナル軸受構造は、例えば、回転軸を支持するジャーナル軸受(ブッシュメタル)と軸受ハウジングにより構成され、軸受ハウジングにジャーナル軸受を圧入することによりジャーナル軸受が軸受ハウジングに保持される。また、例えば、ジャーナル軸受と軸受ハウジングには、ジャーナル軸受と回転軸との隙間に潤滑油を供給するために、それぞれ回転軸の軸線回りの周方向の同一位置に給油孔が設けられる。周方向の同一位置に給油孔が設けられるため、軸受ハウジングの給油孔に供給される潤滑油は、ジャーナル軸受の給油孔を介して、ジャーナル軸受と回転軸との隙間に供給される。
【0005】
しかしながら、例えば、回転軸とジャーナル軸受とが焼き付き、ジャーナル軸受が軸受ハウジングに圧入された状態が解除されてしまうと、軸受ハウジングの給油孔とジャーナル軸受の給油孔の周方向の位置が異なった位置となってしまう。この場合、軸受ハウジングの給油孔とジャーナル軸受の給油孔が連通しない状態となり、ジャーナル軸受と回転軸との隙間に潤滑油が供給されない状態となってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ジャーナル軸受の給油孔と軸受ハウジングの給油孔の周方向の位置が異なった状態となっても、ジャーナル軸受と回転軸との隙間に潤滑油を供給することが可能なジャーナル軸受構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造は、軸線に沿って延びる円筒状に形成される第1内周面および第1外周面を有し、該第1内周面により回転軸を支持するジャーナル軸受と、前記軸線に沿って延びる円筒状に形成される第2内周面を有し、該第2内周面により前記ジャーナル軸受の前記第1外周面を保持する軸受ハウジングと、を備え、前記ジャーナル軸受は、前記第1内周面と前記第1外周面とを連通させる第1給油孔を有し、前記軸受ハウジングは、前記第2内周面に向けて開口する第2給油孔を有し、前記軸受ハウジングの前記第2内周面および前記ジャーナル軸受の前記第1外周面の少なくともいずれかには、前記軸線回りの周方向に延びるとともに前記第2給油孔から排出される潤滑油を前記第1給油孔へ導く給油溝が形成されている。
【0008】
本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造によれば、軸受ハウジングの第2内周面およびジャーナル軸受の第1外周面の少なくともいずれかに給油溝が形成されている。そのため、ジャーナル軸受が軸受ハウジングに保持された状態が解除されて第1給油孔と第2給油孔の周方向の位置が異なった位置となっても、第2給油孔から排出される潤滑油が第1給油孔へ導かれる状態が維持される。よって、ジャーナル軸受の給油孔と軸受ハウジングの給油孔の周方向の位置が異なった状態となっても、ジャーナル軸受と回転軸との隙間に潤滑油を供給することが可能なジャーナル軸受構造を提供することができる。
【0009】
本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造において、前記給油溝は、前記軸受ハウジングの前記第2内周面に形成されていてもよい。給油溝が軸受ハウジング側に形成されるため、ジャーナル軸受が薄肉化して強度が低下することを抑制できる。
【0010】
本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造において、前記給油溝は、前記ジャーナル軸受の前記第1外周面に形成されていてもよい。給油溝がジャーナル軸受側に形成されるため、軸受ハウジング側に形成する場合に比べ、給油溝を形成する加工を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造において、前記給油溝の前記軸線方向の幅は、前記第2給油孔の前記軸線方向の幅以下であってもよい。給油溝の軸線方向の幅を第2給油孔の軸線方向の幅よりも広くすると、軸受ハウジングの第2内周面がジャーナル軸受の第1外周面を保持する領域が減少し、軸受ハウジングによるジャーナル軸受の保持力が低下してしまう。本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造では、給油溝の軸線方向の幅が第2給油孔の軸線方向の幅以下であるため、前述した不具合を抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造において、前記給油溝は、前記軸線回りの周方向の全周に形成されていてもよい。給油溝が周方向の全周に形成されるため、軸受ハウジングの給油孔とジャーナル軸受の給油孔の周方向の位置がどのような周方向の位置関係となった場合でも、給油溝により第2給油孔から第1給油孔へ潤滑油を確実に供給することができる。
【0013】
本発明の一態様に係るジャーナル軸受構造において、前記第1給油孔が配置される前記周方向の第1位置と、前記第2給油孔が配置される前記周方向の第2位置とが異なる位置であってもよい。第1給油孔と第2給油孔の周方向の位置が異なる位置であっても、給油溝を介して第2給油孔から第1給油孔へ潤滑油を供給することができる。そのため、例えば、軸受ハウジングにジャーナル軸受を取り付ける際に第1給油孔と第2給油孔の周方向の位置を一致させる必要がないため、取り付け作業が容易となる。また、ジャーナル軸受に設けられる第1給油孔の数よりも軸受ハウジングに設けられる第2給油孔の数を少なくしても給油溝を介して潤滑油が供給されるため、軸受ハウジングへ潤滑油を供給する給油系統を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ジャーナル軸受の給油孔と軸受ハウジングの給油孔の周方向の位置が異なった状態となっても、ジャーナル軸受と回転軸との隙間に潤滑油を供給することが可能なジャーナル軸受構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の排気タービン過給機の全体構成を示す縦断面図である。
図2図1に示すA部分の部分拡大図である。
図3図2に示すジャーナル軸受構造のI-I矢視断面である。
図4図1に示すA部分の部分拡大図である。
図5図4に示すジャーナル軸受構造のII-II矢視断面図である。
図6図1に示すA部分の部分拡大図である。
図7図6に示すジャーナル軸受構造のIII-III矢視断面図である。
図8図1に示すA部分の部分拡大図である。
図9図8に示すジャーナル軸受構造のIV-IV矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態の排気タービン過給機について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、排気タービン過給機11は、主に、タービン12と、コンプレッサ13と、回転軸14とにより構成され、これらがハウジング15内に収容されている。
【0017】
ハウジング15は、内部が中空に形成され、タービン12の構成を収容する第一空間部S1をなすタービンハウジング15Aと、コンプレッサ13の構成を収容する第二空間部S2をなすコンプレッサハウジング15Bと、回転軸14を収容する第三空間部S3をなす軸受ハウジング15Cとを有している。軸受ハウジング15Cの第三空間部S3は、タービンハウジング15Aの第一空間部S1とコンプレッサハウジング15Bの第二空間部S2との間に位置している。
【0018】
回転軸14は、タービン12側の端部がタービン側軸受であるジャーナル軸受21により回転自在に支持され、コンプレッサ13側の端部がコンプレッサ側軸受であるジャーナル軸受22により回転自在に支持され、且つ、スラスト軸受23により回転軸14が延在する軸方向への移動を規制されている。回転軸14は、軸方向における一端部にタービン12のタービンホイール24が固定されている。
【0019】
タービンホイール24は、タービンハウジング15Aの第一空間部S1に収容され、外周部に複数のタービン翼25が周方向に所定間隔で設けられている。また、回転軸14は、軸方向における他端部にねじ部37が形成されており、コンプレッサ13のコンプレッサ羽根車26のねじ穴38に締結されている。コンプレッサ羽根車26は、コンプレッサハウジング15Bの第二空間部S2に収容され、外周部に複数のブレード27が周方向に所定間隔で設けられている。
【0020】
タービンハウジング15Aは、タービン翼25に対して排気ガスの入口通路31と排気ガスの出口通路32が設けられている。そして、タービンハウジング15Aは、入口通路31から流入する排気ガス流が複数のタービン翼25に導かれることで、タービン12を駆動回転することができる。コンプレッサハウジング15Bは、コンプレッサ羽根車26に対して吸入口34と圧縮空気吐出口35が設けられている。コンプレッサ羽根車26により圧縮された空気は、圧縮空気吐出口35へ排出される。
【0021】
そのため、この排気タービン過給機11は、エンジン(図示せず)から排出された排ガスによりタービン12が駆動し、タービン12の回転が回転軸14に伝達されてコンプレッサ13が駆動し、このコンプレッサ13が燃焼用気体を圧縮してエンジンに供給する。従って、エンジンからの排気ガスは、排気ガスの入口通路31を通り、排気ガス流が複数のタービン翼25に導かれることで、複数のタービン翼25が固定されたタービンホイール24を介してタービン12が駆動回転する。
【0022】
そして、複数のタービン翼25を駆動した排気ガスは、出口通路32から外部に排出される。一方、タービン12により回転軸14が回転すると、一体のコンプレッサ羽根車26が回転し、吸入口34を通って空気が吸入される。吸入された空気は、コンプレッサ羽根車26で加圧されて圧縮空気となり、この圧縮空気は、圧縮空気吐出口35からエンジンに供給される。
【0023】
次に、本実施形態のジャーナル軸受構造100について図面を参照して説明する。本実施形態のジャーナル軸受構造100は、回転軸14を支持する軸受構造であり、ジャーナル軸受21と、軸受ハウジング15Cとを備える。以下では、ジャーナル軸受21について説明するが、ジャーナル軸受22の構造はジャーナル軸受21と同様であるため説明を省略する。
【0024】
図2および図4は、図1に示すA部分の部分拡大図であり、本実施形態のジャーナル軸受構造100を示す。図3は、図2に示すジャーナル軸受構造100のI-I矢視断面図である。図5は、図4に示すジャーナル軸受構造100のII-II矢視断面図である。図2から図5において、軸線Xは図1に示す回転軸14の中心軸であるが、回転軸14の図示を省略している。以下、図2および図3に示すジャーナル軸受構造100について主に説明し、図4および図5に示すジャーナル軸受構造100で同一の符号を持つ構成についての説明を省略する。
【0025】
図2および図3に示すジャーナル軸受構造100は、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が一致した状態を示す。一方、図4および図5に示すジャーナル軸受構造100は、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が異なった状態を示す。図2および図3に示すジャーナル軸受構造100は製造当初の状態を示し、図4および図5に示すジャーナル軸受構造100は使用によって回転軸14とジャーナル軸受21が焼き付き、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに圧入された状態が少なくとも一時的に解除された後の状態を示す。
【0026】
図2および図3に示すように、ジャーナル軸受21は、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成される内周面(第1内周面)21aと、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成される外周面(第1外周面)21bと、を有する円筒状部材である。ジャーナル軸受21は、内周面21aにより回転軸14を支持する。ジャーナル軸受21は、軸受ハウジング15Cに圧入されることにより軸受ハウジング15Cに取り付けられる。
【0027】
ジャーナル軸受21は、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成されるバックメタル21Aと、バックメタル21Aの内側に接合される軸受メタル21Bとを有する。バックメタル21Aは、鉄などの金属材料により形成される。軸受メタル21Bは、銅合金や白金などの金属材料により形成される。
【0028】
ジャーナル軸受21は、軸線Xに直交する径方向に延びるとともに内周面21aと外周面21bの双方に開口する給油孔(第1給油孔)21cを有する。給油孔21cは、内周面21aと外周面21bとを連通させ、軸受ハウジング15Cから供給される潤滑油を内周面21aと回転軸14との間の隙間に供給する。図3に示すように、ジャーナル軸受21には、3つの給油孔21cが軸線X回りの周方向に120°間隔で3か所に設けられている。給油孔21cは、1つのみ、180°間隔で2つ、90°間隔で4つなど、任意の個数を設けるようにしてもよい。
【0029】
ジャーナル軸受21の内周側の給油孔21cの周囲には、内周面21aを形成する軸受メタル21Bが設けられない凹所21dが形成されている。凹所21dは、周囲の内周面21aよりも外周面21b側に向けて凹んだ領域である。給油孔21cから流出する潤滑油は、凹所21dに一定量を保持した状態で、回転軸14の回転により、内周面21aと回転軸14との間に導かれる。凹所21dを設けることで、給油孔21cから排出される潤滑油を円滑に内周面21aと回転軸14との間に導くことができる。
【0030】
図2および図3に示すように、軸受ハウジング15Cは、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成される内周面(第2内周面)15aを有し、内周面15aによりジャーナル軸受21の外周面21bを保持する部材である。軸受ハウジング15Cは、内周面15aに対してジャーナル軸受21の外周面21bを圧入することによりジャーナル軸受21を保持する。
【0031】
軸受ハウジング15Cは、給油孔(第2給油孔)15bと、給油溝15cと、を有する。給油孔15bは、軸線Xに直交する径方向に延びるとともに内周面15aに向けて開口する貫通孔である。給油孔15bは、軸受ハウジング15Cの内部に設けられる給油系統(図示略)から供給される潤滑油を、後述する給油溝15cを介してジャーナル軸受21の給油孔21cへ供給する。
【0032】
図3に示すように、軸受ハウジング15Cには、ジャーナル軸受21の給油孔21cと対応するように、3つの給油孔15bが軸線X回りの周方向に120°間隔で3か所に設けられている。給油孔15bは、1つのみ、180°間隔で2つ、90°間隔で4つなど、給油孔21cと同数の任意の個数を設けるようにしてもよい。
【0033】
給油溝15cは、軸線X回りの周方向に沿って延びるとともに周方向の全周に形成され、径方向に深さを有する溝である。給油溝15cは、軸受ハウジング15Cの内周面15aに形成されており、軸線Xから遠ざかる方向に凹んでいる。給油溝15cは、給油孔15bから排出される潤滑油をジャーナル軸受21の給油孔21cへ導く。本実施形態の給油溝15cは軸受ハウジング15Cの内周面15aに形成されており、ジャーナル軸受21の外周面21bには形成されていない。そのため、ジャーナル軸受21が薄肉化して強度が低下することを抑制できる。
【0034】
図2に示すように、給油溝15cの軸線X方向の幅W1は、給油孔15bの軸線X方向の幅W2と略同じとなっている。給油孔15bと給油孔21cの幅はそれぞれW2で等しい。給油孔15bは断面視が円形の孔であるため、給油孔15bの軸線X方向の幅W2は給油孔15bの直径と一致する。幅W1と幅W2は、例えば、以下の式(1)のような関係を有するのが望ましい。
W1≦W2 (1)
【0035】
給油溝15cの幅W1を給油孔21cの幅W2以下としているのは、軸受ハウジング15Cとジャーナル軸受21との接触面積を十分に確保し、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに圧入により固定される状態を確実に維持するためである。
【0036】
図2および図3に示すジャーナル軸受構造100は、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が一致した状態を示す。図2および図3に示すジャーナル軸受構造100は製造当初の状態を示している。図3に矢印で示すように、給油孔15bから給油溝15cへ導かれた潤滑油は、その一部が給油溝15cに沿って周方向に流れるものの、主として径方向に沿って給油孔21cへ流入する。これは、給油孔15bから給油溝15cへ流入した潤滑油の流入方向の延長線上に給油孔21cが配置されており、かつ給油溝15cの開口面積に対して給油孔21cの開口面積が大きいためである。
【0037】
一方、図4および図5に示すジャーナル軸受構造100は、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が異なった状態を示す。図4および図5に示すジャーナル軸受構造100は使用によって回転軸14とジャーナル軸受21が焼き付き、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに圧入された状態が少なくとも一時的に解除された後の状態を示す。
【0038】
図5に示すように、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置は、軸線X回りに角度θだけ異なった位置となっている。図5に矢印で示すように、給油孔15bから給油溝15cへ導かれた潤滑油は、給油溝15cに沿って周方向に流れた後に、径方向に沿って給油孔21cへ流入する。
【0039】
図4および図5に示す状態で、給油溝15cが設けられていない場合、給油孔15bの内周側の端部がジャーナル軸受21の外周面21bによって閉塞される。そのため、軸受ハウジング15Cの給油孔15bからジャーナル軸受21の給油孔21cへ潤滑油が供給されない状態となる。それに対して、給油溝15cが設けられる本実施形態の軸受ハウジング15Cでは、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が異なった状態となっても、給油孔15bから給油孔21cへ潤滑油を供給することができる。
【0040】
以上説明した本実施形態のジャーナル軸受構造100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態のジャーナル軸受構造100によれば、軸受ハウジング15Cの内周面15aに給油溝15cが形成されている。そのため、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに保持された状態が解除されて給油孔15bと給油孔21cの周方向の位置が異なった位置となっても、給油孔15bから排出される潤滑油が給油孔21cへ導かれる状態が維持される。よって、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が異なった状態となっても、ジャーナル軸受21と回転軸14との隙間に潤滑油を供給することが可能なジャーナル軸受構造100を提供することができる。
【0041】
本実施形態のジャーナル軸受構造100において、給油溝15cの軸線X方向の幅W1は、給油孔15bの軸線X方向の幅W2と略同じである。給油溝15cの軸線X方向の幅W1を給油孔15bの軸線X方向の幅W2よりも広くしすぎると、軸受ハウジング15Cの内周面15aがジャーナル軸受21の外周面21bを保持する領域が減少し、軸受ハウジング15Cによるジャーナル軸受21の保持力が低下してしまう。
【0042】
また、給油溝15cの軸線X方向の幅W1を給油孔15bの軸線X方向の幅W2よりも狭くしすぎると、給油孔15bから給油溝15cへの潤滑油の供給が円滑に行われなくなってしまう。本実施形態のジャーナル軸受構造100では、給油溝15cと給油孔15bの軸線X方向の幅が略同じであるため、前述した不具合を抑制することができる。
【0043】
本実施形態のジャーナル軸受構造100において、給油溝15cは、軸線X回りの周方向の全周に形成されている。給油溝15cが周方向の全周に形成されるため、軸受ハウジング15Cの給油孔15bとジャーナル軸受21の給油孔21cの周方向の位置がどのような周方向の位置関係となった場合でも、給油溝15cにより給油孔15bから給油孔21cへ潤滑油を確実に供給することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態の排気タービン過給機について説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。本実施形態の排気タービン過給機は、ジャーナル軸受構造を除き、第1実施形態の排気タービン過給機と同様である。
【0045】
第1実施形態のジャーナル軸受構造100は、軸受ハウジング15Cの内周面15aに軸線X回りに周方向に延びる給油溝15cを設けるものであった。それに対して、本実施形態のジャーナル軸受構造100Aは、ジャーナル軸受21の外周面21bに給油溝21eを設けたものである。
【0046】
図6および図8は、図1に示すA部分の部分拡大図であり、本実施形態のジャーナル軸受構造100Aを示す。図7は、図6に示すジャーナル軸受構造100AのIII-III矢視断面図である。図9は、図8に示すジャーナル軸受構造100AのIV-IV矢視断面図である。図6から図9おいて、軸線Xは図1に示す回転軸14の中心軸であるが、回転軸14の図示を省略している。以下、図6および図7に示すジャーナル軸受構造100Aについて主に説明し、図8および図9に示すジャーナル軸受構造100で同一の符号を持つ構成についての説明を省略する。
【0047】
図6および図7に示すジャーナル軸受構造100Aは、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が一致した状態を示す。一方、図8および図9に示すジャーナル軸受構造100Aは、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が異なった状態を示す。
【0048】
図6および図7に示すジャーナル軸受構造100Aは製造当初の状態を示し、図8および図9に示すジャーナル軸受構造100Aは使用によって回転軸14とジャーナル軸受21が焼き付き、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに圧入された状態が少なくとも一時的に解除された後の状態を示す。
【0049】
ジャーナル軸受21は、給油溝21eを有する。給油溝21eは、軸線X回りの周方向に沿って延びるとともに周方向の全周に形成され、径方向に深さを有する溝である。給油溝21eは、ジャーナル軸受21の外周面21bに形成されており、軸線Xに近づく方向に凹んでいる。給油溝21eは、給油孔15bから排出される潤滑油をジャーナル軸受21の給油孔21cへ導く。
【0050】
図6示すように、給油溝21eの軸線X方向の幅W3は、給油孔15bの軸線X方向の幅W2と略同じとなっている。給油孔15bと給油孔21cの幅はそれぞれW2で等しい。給油孔15bは断面視が円形の孔であるため、給油孔15bの軸線X方向の幅W2は給油孔15bの直径と一致する。幅W3と幅W2は、例えば、以下の式(2)のような関係を有するのが望ましい。
W3≦W2 (2)
【0051】
給油溝21eの幅W3を給油孔15bの幅W2以下としているのは、軸受ハウジング15Cとジャーナル軸受21との接触面積を十分に確保し、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに圧入により固定される状態を確実に維持するためである。
【0052】
図6および図7に示すジャーナル軸受構造100Aは、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が一致した状態を示す。図6および図7に示すジャーナル軸受構造100Aは製造当初の状態を示している。図7に矢印で示すように、給油孔15bから給油溝21eへ導かれた潤滑油は、その一部が給油溝21eに沿って周方向に流れるものの、主として径方向に沿って給油孔21cへ流入する。これは、給油孔15bから給油溝21eへ流入した潤滑油の流入方向の延長線上に給油孔21cが配置されており、かつ給油溝21eの開口面積に対して給油孔21cの開口面積が大きいためである。
【0053】
一方、図8および図9に示すジャーナル軸受構造100Aは、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が異なった状態を示す。図8よび図9に示すジャーナル軸受構造100は使用によって回転軸14とジャーナル軸受21が焼き付き、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに圧入された状態が少なくとも一時的に解除された後の状態を示す。
【0054】
図9に示すように、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置は、軸線X回りに角度θだけ異なった位置となっている。図9に矢印で示すように、給油孔15bから給油溝21eへ導かれた潤滑油は、給油溝21eに沿って周方向に流れた後に、径方向に沿って給油孔21cへ流入する。
【0055】
図8および図9に示す状態で、給油溝21eが設けられていない場合、給油孔15bの内周側の端部がジャーナル軸受21の外周面21bによって閉塞される。そのため、軸受ハウジング15Cの給油孔15bからジャーナル軸受21の給油孔21cへ潤滑油が供給されない状態となる。それに対して、給油溝21eが設けられる本実施形態のジャーナル軸受21では、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が異なった状態となっても、給油孔15bから給油孔21cへ潤滑油を供給することができる。
【0056】
以上説明した本実施形態のジャーナル軸受構造100Aによれば、ジャーナル軸受21の外周面21bに給油溝21eが形成されている。そのため、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに保持された状態が解除されて給油孔15bと給油孔21cの周方向の位置が異なった位置となっても、給油孔15bから排出される潤滑油が給油孔21cへ導かれる状態が維持される。よって、ジャーナル軸受21の給油孔21cと軸受ハウジング15Cの給油孔15bの周方向の位置が異なった状態となっても、ジャーナル軸受21と回転軸14との隙間に潤滑油を供給することが可能なジャーナル軸受構造100Aを提供することができる。
【0057】
本実施形態の給油溝21eはジャーナル軸受21の外周面21bに形成されており、第1実施形態のように軸受ハウジング15Cの内周面15aには形成されていない。軸受ハウジング15Cよりもジャーナル軸受21が小さい部材である。そのため、軸受ハウジング15Cの内周面15aに給油溝15cを形成する加工よりも、ジャーナル軸受21の外周面21bに給油溝21eを形成する加工の方が容易である。本実施形態によれば、給油溝を形成する加工を容易に行うことができる。
【0058】
本実施形態のジャーナル軸受構造100Aにおいて、給油溝21eの軸線X方向の幅W3は、給油孔15bの軸線X方向の幅W2と略同じである。給油溝21eの軸線X方向の幅W3を給油孔15bの軸線X方向の幅W2よりも広くしすぎると、軸受ハウジング15Cの内周面15aがジャーナル軸受21の外周面21bを保持する領域が減少し、軸受ハウジング15Cによるジャーナル軸受21の保持力が低下してしまう。
【0059】
また、給油溝21eの軸線X方向の幅W3を給油孔15bの軸線X方向の幅W2よりも狭くしすぎると、給油孔15bから給油溝21eへの潤滑油の供給が円滑に行われなくなってしまう。本実施形態のジャーナル軸受構造100Aでは、給油溝21eと給油孔15bの軸線X方向の幅が略同じであるため、前述した不具合を抑制することができる。
【0060】
本実施形態のジャーナル軸受構造100Aにおいて、給油溝21eは、軸線X回りの周方向の全周に形成されている。給油溝21eが周方向の全周に形成されるため、軸受ハウジング15Cの給油孔15bとジャーナル軸受21の給油孔21cの周方向の位置がどのような周方向の位置関係となった場合でも、給油溝21eにより給油孔15bから給油孔21cへ潤滑油を確実に供給することができる。
【0061】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、給油溝15cおよび給油溝21eは、軸線X回りの全周に設けられるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、給油溝15cおよび給油溝21eを、軸線X回りの周方向の一部の領域(例えば、半周分の領域)に設けるようにしてもよい。
【0062】
また、以上の説明において、給油溝は、軸受ハウジング15Cの内周面15aまたはジャーナル軸受21の外周面21bのいずれか一方に設けるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、給油溝は、軸受ハウジング15Cの内周面15aおよびジャーナル軸受21の外周面21bの双方に設けてもよい。給油溝を双方に設けることで、給油溝を流通する潤滑油の容積を十分に確保することができる。このように、給油溝は、軸受ハウジング15Cの内周面15aおよびジャーナル軸受21の外周面21bの少なくともいずれかに設ければよい。
【0063】
以上で説明したジャーナル軸受構造100は、使用によって回転軸14とジャーナル軸受21が焼き付き、ジャーナル軸受21が軸受ハウジング15Cに圧入された状態が少なくとも一時的に解除された場合、給油孔21cが配置される周方向の位置と、給油孔15bが配置される周方向の位置とが異なる位置となる。
【0064】
それに対して、他の態様として、ジャーナル軸受構造100の製造時から、給油孔21cが配置される周方向の位置と、給油孔15bが配置される周方向の位置とが異なる位置としてもよい。この場合、例えば、軸受ハウジング15Cにジャーナル軸受21を取り付ける際に給油孔21cと給油孔15bの周方向の位置を一致させる必要がないため、取り付け作業が容易となる。
【0065】
また、ジャーナル軸受21に設けられる給油孔21cの数よりも軸受ハウジング15Cに設けられる給油孔15bの数を少なくしてもよい。例えば、ジャーナル軸受21に設けられる給油孔21cの数を3つとし、軸受ハウジング15Cに設けられる給油孔15bの数を1つとしてもよい。ジャーナル軸受21に設けられる給油孔21cの数よりも軸受ハウジング15Cに設けられる給油孔15bの数を少なくしても給油溝15cを介して潤滑油が供給されるため、軸受ハウジング15Cへ潤滑油を供給する給油系統を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0066】
11 排気タービン過給機
15C 軸受ハウジング
15a 内周面
15b 給油孔
15c 給油溝
21 ジャーナル軸受
21A バックメタル
21B 軸受メタル
21a 内周面
21b 外周面
21c 給油孔
21d 凹所
21e 給油溝
22 ジャーナル軸受
100,100A ジャーナル軸受構造
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9