(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】卵子提供による妊娠での胎児異数性の非侵襲的検出
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20230731BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALI20230731BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/6883 Z
G01N33/50 P
(21)【出願番号】P 2019045640
(22)【出願日】2019-03-13
(62)【分割の表示】P 2015549563の分割
【原出願日】2013-12-17
【審査請求日】2019-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-15
(32)【優先日】2012-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504412406
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ・ロッヒェ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】F.HOFFMANN-LA ROCHE AG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】オリファント、アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】ワン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ストラブル、クレイグ
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】松本 淳
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/088456(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/012703(WO,A2)
【文献】SPARKS、A.B.et al.、AMERICAN JOURNAL OF OBSTETRICS GYNECOLOGY、2012年 4月、Vol.206、No.4、P.319.e1-e319.e9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12Q1/00-3/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵子提供妊娠による妊娠女性における胎児異数性の有無の統計的尤度を提供するための方法であって、
母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを含む母体試料からの第1の染色体に由来する10個以上の
多型核酸領域を調査する工程であって、前記母体試料は前記妊娠女性からのものであり、血漿、血清、又は血液から選択されたものである工程と、
調査した第1の染色体由来の
多型核酸領域を平均で少なくとも100回検出する工程と、
第1の染色体由来の
多型核酸領域の対立遺伝子の相対頻度を定量化する工程と、
第2の染色体に由来する10個以上の
多型核酸領域を調査する工程と、
調査した第2の染色体由来の
多型核酸領域を平均で少なくとも100回検出する工程と、
第2の染色体由来の
多型核酸領域の対立遺伝子の相対頻度を定量化する工程と、
第1の染色体由来の
多型核酸領域の相対頻度を第2の染色体由来の
多型核酸領域の相対頻度と比較する工程と、
卵子提供者情報を含む遺伝子座を使用して、母体試料中の胎児無細胞DNA割合を算出する工程であって、前記卵子提供者情報を含む遺伝子座は、以下の対立遺伝子パターン:保持母体がホモ接合型であり、かつ胎児がヘテロ接合型である;保持母体がヘテロ接合型であり、かつ胎児がホモ接合型である;又は、保持母体がホモ接合型であり、胎児もホモ接合型であるが、両者の遺伝子型は異なっている
を有する
多型核酸領域である工程と、
母体試料中の胎児無細胞DNA割合を使用して予測される第1又は第2の染色体の異数性の統計的存在を考慮し、第1の染色体由来の
多型核酸領域の相対頻度及び第2の染色体由来の
多型核酸領域の相対頻度を使用して、胎児異数性の有無の統計的尤度を提供する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記胎児無細胞DNA割合を算出する工程が、
(a)母体DNAの対立遺伝子の両方が、胎児DNAと異なっている卵子提供者情報を含む遺伝子座を選択すること、又は
(b)低頻度対立遺伝子の相対頻度を、高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の両方の相対頻度と比較すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記10個以上の
多型核酸領域を調査する工程が、
第1のセットの固定配列オリゴヌクレオチドを、前記固定配列オリゴヌクレオチドが第1の多型核酸領域の相補的領域に特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で母体試料に導入すること、
第2のセットの固定配列オリゴヌクレオチドを、前記固定配列オリゴヌクレオチドが第2の多型核酸領域の相補的領域に特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で母体試料に導入すること、及び
ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドをライゲーションして、前記多型核酸領域に相補的な連続したライゲーション産物を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固定配列オリゴヌクレオチドが、ユニバーサルプライマー領域を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1のセットの固定配列オリゴヌクレオチド及び第2のセットの固定配列オリゴヌクレオチドが、同じユニバーサルプライマー領域を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
第1のセットの固定配列オリゴヌクレオチドが第1のユニバーサルプライマー領域を含み、第2のセットの固定配列オリゴヌクレオチドが、第2のユニバーサルプライマー領域を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ユニバーサルプライマー領域を使用して前記連続したライゲーション産物を増幅して、増幅産物を生成することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記増幅が、前記連続したライゲーション産物テンプレートに対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実施することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
母体試料が母体の血漿又は血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記胎児無細胞DNA割合を算出する工程が、2つ以上の選択多型核酸領域を調査することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記2つ以上の選択多型核酸領域を調査することが、少なくとも10個の
多型核酸領域を調査することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記2つ以上の選択多型核酸領域を調査することが、少なくとも20個の
多型核酸領域を調査することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記2つ以上の選択多型核酸領域を調査することが、少なくとも40個の
多型核酸領域を調査することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記2つ以上の選択多型核酸領域を調査することが、少なくとも90個の
多型核酸領域を調査することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記2つ以上の選択多型核酸領域を調査することが、少なくとも300個の
多型核酸領域を調査することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも第1の染色体が常染色体である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第1及び第2の両方の染色体が常染色体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
調査した第1及び第2の染色体由来の
多型核酸領域を検出する工程が、ハイブリダイゼーションプロセスを用いて実施される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵子提供による妊娠での遺伝子異常の診断、及びそのような診断用のアッセイ系に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の考察では、特定の文献及び方法が、背景技術及び導入の目的のために説明される。本明細書に含まれているものは、従来技術の「承認」として解釈されるべきではない。該当する場合、出願人は、本明細書中に引用された文献及び方法が、該当する法令の条項に基づいて従来技術を構成しないことを論証する権利を明示的に保留する。
【0003】
遺伝子異常は、染色体異数性(例えば、ダウン症候群)、特定遺伝子の生殖細胞系突然変異(例えば、鎌状赤血球性貧血)により引き起こされる病理、及び体細胞突然変異により引き起こされる病理(例えば、癌)を含む数多くの病理の原因となる。そのような遺伝子異常を決定するための診断法は、特定の疾患及び障害を特定するための、並びに病源及び治療選択に関する貴重な情報を提供するための標準的技法になっている。
【0004】
例えば、出生前スクリーニング及び診断は、妊婦管理で日常的に提供されており、遺伝的条件により影響を受ける妊娠に関する女性のインフォームドチョイスに重要であると考えられている。従来の出生前診断検査法では、典型的には妊娠11週~14週での絨毛膜試料採取(CVS)又は典型的には15週後の羊水穿刺のいずれかを使用して、遺伝子分析用の胎児細胞の試料を子宮から直接取り出すことが現在も必要である。しかしながら、これらの侵襲的手法には、約1%の流産リスクが伴う(非特許文献1)。
【0005】
胎児DNAを取得するためのこうした手法は、現在、出生前診断の至適基準となる検査法であるが、主に検査が不快であり、少ないとはいえ有意な流産リスクがあるため、侵襲的検査を受けたくないという女性が多い。こうした流産リスクを低減し、より早期の検査を可能にするための、信頼性が高く簡便な非侵襲的出生前診断法が求められて久しい。頸管粘液から得られる胎児細胞を使用することが幾つかの研究で調査されているが(非特許文献2、3)、ほとんどの研究は、母体循環系に存在する胎児由来の遺伝子要素を検出する戦略に注目している。妊娠中に母体と胎児との間には双方向の移動があることが実証されており(非特許文献4)、完全な胎児細胞及び無細胞胎児核酸が両方とも、胎盤を越えて母体血流を循環することが、複数の研究により示されている(例えば、非特許文献5を参照)。
【0006】
特に、異数性を特定するためのより最近の試みでは、出発物質として母体血液が使用されている。そのような研究には、無細胞DNAを使用して、妊娠女性に由来する試料中の胎児異数性を検出することが挙げられ、大規模並列ショットガン配列決定(MPSS)を使用して、トリソミー染色体に由来するcfDNA断片の増加を正確に定量化することが含まれる。しかしながら、胎児異数性に起因する染色体の量は、胎児cfDNAの割合と直接関連している。母体試料に対する胎児寄与のレベルによって、胎児染色体が異数性であるリスクを算出するために必要な検出量は様々であるため、試料間の胎児核酸寄与の変動は、分析を複雑にする場合がある。
【0007】
例えば、21番染色体トリソミーを有する胎児に由来するDNAを4%含有するcfDNA試料は、正常胎児と比較して、21番染色体(chr21)解読割合の2%増加を示すはずである。胎児核酸割合が4%である母体試料を使用して、高い信頼性で21番染色体トリソミーと正常胎児とを区別するには、多数(>93K)の21番染色体を観察することが必要であるが、それは苦労を伴い、MPSS等の非選択的技法が使用され、対費用効果がよくない。
【0008】
したがって、正常なDNA及び異常と推定されるDNAを含む混合試料で、異数性を含む遺伝子異常をスクリーニングするための非侵襲的な方法が必要とされている。本発明は、この必要性に取り組むものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Mujezinovic及びAlfirevic、Obstet Gynecol 2007年;110巻:687~694頁
【文献】Fejgin MDら、Prenat Diagn 2001年;21巻:619~621頁
【文献】Mantzarisら、ANZJOG 2005年;45巻:529~532頁
【文献】Loら、Blood 1996年;88巻:4390~4395頁
【文献】Chiu RW及びLo YM、Semin Fetal Neonatal Med.2010年11月11日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本概要は、単純化された形態の選択的な概念を紹介するためのものであり、これらは以下の詳細な説明に更に記載されている。本概要は、特許請求の主題の重要な又は本質的な特徴を特定するためのものではなく、特許請求の主題の範囲を限定するために使用されるものでもない。特許請求の主題の他の特徴、詳細、有用性、及び利点は、添付の図面に示され、添付の特許請求の範囲で規定されている態様を含み、以下に記載の詳細な説明から明白になるであろう。
【0011】
本発明は、卵子提供による妊娠において、ゲノム物質(例えば、無細胞DNA)を含む母体試料の遺伝子異常を決定するためのアッセイ系及び関連方法を提供する。胎児異数性を決定するための分析は、種々の技法を使用して実施することができる。
【0012】
卵子提供による妊娠での母体試料中の胎児DNAの相対的割合を決定することにより、胎児異数性を示すことのできる核酸領域の相対的な統計的存在に関する重要な情報が提供される。胎児が妊婦の対立遺伝子とは異なる少なくとも1つの対立遺伝子を有する遺伝子座を決定することにより、母体試料中の胎児DNAを推定することが可能になり、したがって、目的染色体の染色体頻度の統計的有意差を算出するために使用される情報を提供することができる。したがって、そのような遺伝子座は、アッセイで2つの形態の情報を提供することができると考えられる。すなわち、対立遺伝子情報を、母体試料中の胎児DNA寄与割合の決定に使用することができ、検出技法からの対立遺伝子情報の経験的な決定(例えば、対立遺伝子検出レベルの合計)を、母体試料中のその遺伝子座の相対的な全頻度の決定に使用することができる。しかしながら、対立遺伝子情報は、その遺伝子座の相対的な全頻度を決定するために必須ではない。
【0013】
したがって、幾つかの特定の態様では、目的対立遺伝子における母体DNAの相対的胎児寄与を、その対立遺伝子における非母体寄与と比較することにより、試料中の近似的な胎児DNA濃度を決定することができる。特定の態様では、母体試料中の胎児DNAの推定は、胎児DNAが、母体対立遺伝子とは異なる少なくとも1つの対立遺伝子を有する遺伝子座で決定される。卵子提供による妊娠の場合、これは、母体又は胎児の遺伝子型のいずれかがホモ接合型であり、他方がヘテロ接合型である遺伝子座、並びに母体及び胎児の遺伝子型が両方ともホモ接合型であり、胎児対立遺伝子が両方とも母体対立遺伝子とは異なる遺伝子座を含んでいてもよい。この状況では、胎児DNA量は、卵子提供者情報を含む遺伝子座のサブセットを使用して決定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの特定の態様では、本発明は、卵子提供妊娠による妊娠女性に由来する母体試料中の胎児無細胞DNA割合を決定するための方法であって、母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを含む母体試料を準備する工程と、2つ以上の選択多型核酸領域を調査する工程と、調査した核酸領域を検出する工程と、調査した核酸領域での多型の相対頻度を決定して卵子提供者情報を含む遺伝子座を特定する工程と、特定した卵子提供者情報を含む遺伝子座を使用して胎児無細胞DNA割合を算出する工程とを含む方法を提供する。
【0015】
ある特定の態様では、母体試料中の胎児DNAの相対的割合を決定することは、胎児染色体の統計的存在の予測に関する重要な情報を提供することになり、その予測からの逸脱が胎児異数性を示すことができるため、アッセイ系の実施及びアッセイ系から得られる結果の最適化に有益であり得る。多数の手法を使用して、母体試料中の胎児DNAの相対寄与を算出することができる。
【0016】
1つの特定の態様では、本発明は、卵子提供妊娠による妊娠女性における胎児異数性の有無の統計的尤度を提供するためのアッセイ系であって、母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを含む母体試料を準備する工程と、第1の染色体由来の2つ以上の核酸領域を調査する工程と、第1の染色体由来の核酸領域の対立遺伝子の相対頻度を定量化する工程と、第2の染色体由来の複数の選択核酸領域を調査する工程と、第1の染色体由来の核酸領域の相対頻度を第2の染色体由来の核酸領域の相対頻度と比較する工程と、母体試料中の胎児無細胞DNAの割合を算出する工程と、算出した母体試料中の胎児無細胞DNA割合を使用して胎児異数性の有無の統計的尤度を提供する工程とを含む方法を提供する。
【0017】
1つの特定の態様では、本発明は、卵子提供妊娠による妊娠女性における胎児異数性の有無の統計的尤度を提供するためのアッセイ系であって、母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを含む母体試料を準備する工程と、第1の染色体由来の2つ以上の核酸領域を調査する工程と、調査した第1の染色体由来の核酸領域を検出する工程と、第1の染色体由来の核酸領域の対立遺伝子の相対頻度を定量化する工程と、第2の染色体由来の2つ以上の選択核酸領域を調査する工程と、調査した第2の染色体由来の核酸領域を検出する工程と、第2の染色体由来の核酸領域の対立遺伝子の相対頻度を定量化する工程と、第1の染色体由来の核酸領域の相対頻度を第2の染色体由来の核酸領域の相対頻度と比較する工程と、母体試料中の胎児無細胞DNA割合を算出する工程と、算出した母体試料中の胎児無細胞DNA割合を使用して、胎児異数性の有無の統計的尤度を提供する工程とを含むアッセイ系を提供する。
【0018】
1つの特定の態様では、本発明は、卵子提供妊娠による妊娠女性における胎児異数性の有無の統計的尤度を提供するためのアッセイ系であって、母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを含む母体試料を準備する工程と、第1の染色体由来の2つ以上の核酸領域を調査する工程と、第1の染色体由来の核酸領域の対立遺伝子の相対頻度を定量化する工程と、第2の染色体由来の2つ以上の選択核酸領域を調査する工程と、第2の染色体由来の核酸領域の対立遺伝子の相対頻度を定量化する工程と、第1の染色体由来の核酸領域の相対頻度を第2の染色体由来の核酸領域の相対頻度と比較する工程と、母体試料中の胎児無細胞DNA割合を算出する工程と、算出した母体試料中の胎児無細胞DNA割合を使用して、胎児異数性の有無の統計的尤度を提供する工程とを含むアッセイ系を提供する。
【0019】
幾つかの態様では、母体試料中の胎児DNA寄与割合は、性染色体の遺伝子座及び常染色体の遺伝子座を含む、1つ又は複数の非母体寄与遺伝子座のレベルを決定することにより算出される。常染色体の遺伝子座を使用する態様では、一般的に、胎児DNA寄与割合は、非母体遺伝子座の1つ又は複数の遺伝変異を母体遺伝子座と比較することにより決定される。幾つかの特定の態様では、これらの遺伝子変異は、コピー数変異である。他の特定の態様では、これらの遺伝子変異は、1つ又は複数の一塩基多型である。
【0020】
アッセイ系では、好ましくは、各目的染色体につき少なくとも10個の多型核酸領域、より好ましくは、各目的染色体につき少なくとも20個の多型核酸領域、より好ましくは、各目的染色体につき少なくとも40個の多型核酸領域、更により好ましくは、各目的染色体につき少なくとも90個の多型核酸領域が分析される。
【0021】
本発明のアッセイ系は、個々の試料及び/又は複数の試料内にある単一の又は複数の染色体の複数の核酸領域を同時に分析することができる、高度に多重化された系として構成することができる。そのような多重化された系では、試料を別々に分析してもよく、又は、多数の試料を分析するために最初に2群以上に分けてプールしてもよい。プールされたデータを得る場合、そのようなデータは、好ましくは、異数性を分析する前に、異なる試料について識別される。しかしながら、幾つかの態様では、プールされたデータを、異数性の可能性について分析してもよく、プールされた群内に異数性の可能性が検出されたことが、初期結果により示された場合に、続いてその群に由来する個々の試料を分析してもよい。
【0022】
ある態様では、アッセイ系では、試料又は遺伝子座を特定するための情報を提供する1つ又は複数のインデックスが使用される。例えば、選択的増幅に使用されるプライマーは、遺伝子座に特異的な追加配列、例えば、選択核酸領域又はその核酸領域の特定の対立遺伝子を示す核酸配列を有していてもよい。別の例では、核酸増幅の元となった試料を示すインデックスが、選択的増幅またはユニバーサル増幅で使用される。更に別の例では、一意的な識別インデックスを使用して、特定の増幅産物を、検出法から得られる他の増幅産物と区別する。また、単一のインデックスを任意の他のインデックスと組み合わせて、2つの特性に関する情報を提供する1つのインデックスを生成してもよい(例えば、試料識別インデックス、対立遺伝子遺伝子座インデックス)。
【0023】
ある態様では、核酸領域は、ユニバーサル増幅法を使用して増幅される。ユニバーサル増幅は、例えば、卵子提供による妊娠に由来する母体試料の初期選択的増幅又は濃縮ステップを行った後で実施してもよい。ユニバーサル増幅を使用することにより、単一の又は限定的な数の増幅プライマーを使用して複数の核酸領域を増幅することが可能になり、複数の選択核酸領域を単一反応で増幅するのに特に有用である。これにより、単一又は複数の試料からの複数の核酸領域を同時に処理することが可能になる。
【0024】
分析に使用する母体試料は、卵子提供妊娠による任意の妊娠女性から取得してもよく、又は卵子提供妊娠による任意の妊娠女性に由来していてもよい。例えば、母体試料は、限定するものではないが、母体血漿、母体血清、又は母体血液を含む、母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを両方とも含む任意の母体体液に由来していてもよい。
【0025】
好ましい態様では、1つの染色体の複数の核酸領域に対応する標的核酸が検出され、頻度を使用して、母体試料中の1つの染色体の相対頻度が決定される。1つの染色体に対応する核酸領域の頻度が、母体試料中の別の染色体に対応する核酸領域の量と比較して予想よりも高いことは、胎児性の重複、欠失、又は異数性を示す。この比較は、胎児染色体に挿入又は欠失していると推定される目的ゲノム領域の比較であり得る。また、比較は、各々が胎児で異数体であると推定される場合があるが、両方とも異数体である可能性はほとんどない染色体(例えば、18番及び21番染色体)の比較であってもよい。また、比較は、一方が異数体であると推定され(例えば、21番染色体)、他方が参照染色体(例えば、12番染色体等の常染色体)として作用する染色体の比較であってもよい。更に他の態様では、比較は、異数体であると推定される2つ以上の染色体及び1つ又は複数の参照染色体を使用してもよい。
【0026】
これらの及び他の態様、特徴、及び利点は、本明細書に記載のように、より詳細に提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】母体試料中の無細胞DNAの胎児寄与割合を決定するための基本ステップの単純化されたフローチャートである。
【
図2】特定の遺伝子座における、卵子提供による妊娠での母体遺伝子型、卵子提供者遺伝子型、及び胎児遺伝子型の組合せの表である。
【
図3】胎児割合関連セット及び胎児割合非関連セットの胎児割合比較のグラフである。
【
図4A】75%、80%、85%、90%、及び95%の女性由来血漿を含む混合試料について、多型アッセイ及び性染色体アッセイの両方を使用して、推定寄与割合を比較した棒グラフである。
【
図4B】75%、80%、85%、90%、及び95%の女性由来血漿を含む混合試料について、多型アッセイ及び性染色体アッセイの両方を使用して、推定寄与割合を比較した棒グラフである。
【
図4C】75%、80%、85%、90%、及び95%の女性由来血漿を含む混合試料について、多型アッセイ及び性染色体アッセイの両方を使用して、推定寄与割合を比較した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載の方法は、別様の指定がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、及びマイクロアレイの従来技法及び説明、並びに配列決定技法を使用することができる。それらは当業者の技術内にある。そのような従来技法には、オリゴヌクレオチドのポリマーアレイ合成、ハイブリダイゼーション、及びライゲーション、オリゴヌクレオチドの配列決定、並びに標識を使用したハイブリダイゼーションの検出が含まれる。好適な技法は、本明細書中の実施例を参照して具体的に説明することができる。しかしながら、同等の従来手順も、無論、使用することができる。そのような従来技法及び説明は、以下のもの等の標準的実験手引き書に見出すことができる:Greenら編、Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(I~IV巻)(1999年);Weinerら編、Genetic Variation:A Laboratory Manual(2007年);Dieffenbach、Dveksler編、PCR Primer:A Laboratory Manual(2003年);Bowtell及びSambrook、DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual(2003年);Mount、Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis(2004年);Sambrook及びRussell、Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2006年);及びSambrook及びRussell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2002年)(全てCold Spring Harbor Laboratory Press社刊);Stryer,L.、Biochemistry(第4版)W.H.Freeman、New York(1995年);Gait、「Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach」IRL Press、London(1984年);Nelson及びCox、Lehninger,Principles of Biochemistry、第3版、W.H. Freeman Pub.、New York(2000年);及びBergら、Biochemistry、第5版、W.H. Freeman Pub.、New York(2002年)。これらの文献は全て、参照によりそれらの全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。本組成物、研究ツール、及び方法を説明する前に、本発明は、記載されている特定の方法、組成物、標的、及び使用に限定されず、無論、それ自体、様々であってもよいことが理解されるべきである。また、本明細書中で使用される用語は、特定の態様を説明するためのものであるに過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになることが理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用される場合及び添付の特許請求の範囲では、単数の「1つの」、「前記」、及び「その」は、状況が明白にそうではないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの核酸領域」への言及は、1つ、複数、又はそのような領域の混合物を指し、「1つのアッセイ」への言及は、当業者に知られている同等のステップ及び方法への言及を含む等である。
【0030】
一連の値が提供される場合、その範囲の上限及び下限間の各介在値、及びその記載されている範囲の任意の他の記載されている値又は介在値は、本発明内に包含されることが理解されるべきである。記載されている範囲が、上限及び下限を含む場合、それらの含まれる限界値のうちのいずれかを除外した範囲も、本発明に含まれる。
【0031】
本明細書で言及されている刊行物は全て、刊行物に記載されており、本明細書に記載の発明と共に使用することができる配合及び方法を説明及び開示するために、参照により組み込まれる。
【0032】
以下の記載には、本発明のより良い理解を提供するために、多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、本発明は、これら特定の詳細の1つ又は複数がなくとも実施することができることは、当業者であれば明白であろう。他の場合には、周知の特徴及び当業者に周知の手順は、本発明の曖昧さを回避するために記載されていない。
【0033】
定義
明示的に示されていない限り、本明細書で使用される用語は、当業者により理解されているような明白な通常の意味を有することが意図される。以下の定義は、読者による本発明の理解を支援するためのものであるが、具体的に指定されていない限り、そのような用語の意味を変更したり、その他の方法で限定したりすることは意図されていない。
【0034】
用語「増幅核酸」は、その量が、in vitroで実施された任意の核酸増幅法又は複製法により、その開始量と比較して、少なくとも2倍増加された任意の核酸分子である。
【0035】
用語「保持母体」は、異なる女性に由来するヒト卵母細胞の使用に起因する胎児を保持する妊娠女性を指す。
用語「染色体異常」は、染色体の全て又は一部のあらゆる遺伝子変異を指す。遺伝子変異には、限定ではないが、重複又は欠失、転座、逆位、及び突然変異等の任意のコピー数変異が含まれる。
【0036】
用語「相補的」又は「相補性」は、塩基対合則により関連付けられる核酸分子(つまり、ヌクレオチドの配列)に関して使用される。相補的ヌクレオチドは、一般的に、AとT(又はAとU)又はCとGである。2つの一本鎖RNA又はDNA分子は、最適にアラインされ、適切なヌクレオチド挿入又は欠失を有する1つの鎖のヌクレオチドが、少なくとも約90%~約95%の相補性で、より好ましくは約98%から約100%までの相補性で、更により好ましくは100%の相補性で対合する場合、実質的に相補的であると言われる。或いは、実質的な相補性は、RNA鎖又はDNA鎖が、選択的ハイブリダイゼーション条件下でその相補体とハイブリダイズする場合に存在する。選択的ハイブリダイゼーション条件には、限定するものではないが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が含まれる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、典型的には、約1M未満の、より通常は約500mM未満の、好ましくは約200mM未満の塩濃度が含まれる。ハイブリダイゼーション温度は、一般的に、融解温度(Tm)よりも少なくとも約2℃~約6℃低い。
【0037】
用語「補正インデックス」は、増幅エラー、配列決定エラー、又は他の実験エラーの同定及び補正を可能にする更なるヌクレオチドを含んでいてもよいインデックスを指し、これらには、配列決定中の1つ又は複数の塩基の欠失、置換、又は挿入、並びに配列決定以外で生じるヌクレオチド変化、例えばオリゴ合成、オリゴ増幅、及びアッセイの任意の他の態様の検出が含まれる。これらの補正インデックスは、個別の配列である独立型のインデックスであってもよく、又は他のインデックス内に埋め込んで、使用される実験技法の精度確認を支援してもよく、例えば、補正インデックスは、遺伝子座インデックス又は識別インデックスの配列のサブセットであってもよい。
【0038】
用語「診断ツール」は、本明細書で使用される場合、患者試料での診断検査又はアッセイを実施するために、組み合わせて、例えば系で使用される本発明の任意の組成物又はアッセイを指す。
【0039】
用語「卵子提供による妊娠」、「卵子提供妊娠」は、保持母体のものではないヒト卵母細胞の使用に起因する妊娠を指す。
用語「ハイブリダイゼーション」は、一般的に、核酸の相補鎖の対合により生じる反応を意味する。DNAは、通常は二本鎖であり、鎖は、分離しても、適切な条件下で再ハイブリダイズする。ハイブリッドは、DNA-DNA間、DNA-RNA間、又はRNA-RNA間に形成され得る。ハイブリッドは、短鎖と、短鎖に相補的な領域を含む長鎖との間に形成され得る。また、不完全なハイブリッドが形成される場合があるが、それらは、より不完全になるほど、より不安定になる(また、より形成されにくくなる)。
【0040】
用語「識別インデックス」は、一般的に、核酸領域の増幅産物を一意的に識別するために増幅プロセスのプライマー領域に組み込まれている一連のヌクレオチドを指す。識別インデックス配列は、好ましくは、6ヌクレオチド長以上である。好ましい態様では、識別インデックスは、標的配列を有する各分子を一意的に標識する統計的確率を有するのに十分な長さを有する。例えば、特定の標的配列の3000個のコピーが存在する場合、特定の標的配列の各コピーが一意的インデックスで標識される可能性が高くなるように、実質的に3000個を超える識別インデックスが存在する。識別インデックスは、配列決定中の1つ又は複数の塩基の欠失、置換、又は挿入、並びにオリゴ合成、増幅、及びアッセイの任意の他の態様等の配列決定以外で生じる場合があるヌクレオチド変化の検出を含む配列決定エラーの特定及び補正を可能にする更なるヌクレオチドを含有していてもよい。上記インデックスを任意の他のインデックスと組み合わせて、2つの特性に関する情報を提供する1つのインデックスを生成してもよい(例えば、試料-識別インデックス、遺伝子座-識別インデックス)。
【0041】
用語「尤度」は、尤度を直接算出することにより得られる任意の値、又は尤度と相関するか、或いは他の方法で尤度を示すことができる任意の値を指す。
用語「遺伝子座」は、本明細書で使用される場合、ゲノムの既知位置の核酸領域を指す。
【0042】
用語「遺伝子座インデックス」は、一般的に、染色体の既知遺伝子座に対応する一連のヌクレオチドを指す。一般的に、遺伝子座インデックスは、各既知遺伝子座領域を一意的に標識するのに十分な長さを有する。例えば、本方法が、既知遺伝子座と関連する192個の個々の配列に対応する192個の既知遺伝子座を使用する場合、少なくとも192個の一意的な遺伝子座インデックスが存在し、各々は、染色体の特定の遺伝子座を示す領域を一意的に識別する。本発明の方法で使用される遺伝子座インデックスは、単一染色体の異なる遺伝子座、並びに試料内の異なる染色体に存在する既知遺伝子座を示すことができる。遺伝子座インデックスは、配列決定中の1つ又は複数の塩基の欠失、置換、又は挿入、並びにオリゴ合成、増幅、及びアッセイの任意の他の態様等の配列決定以外で生じる場合があるヌクレオチド変化の検出を含む配列決定エラーの特定及び補正を可能にする更なるヌクレオチドを含有していてもよい。
【0043】
用語「母体試料」は、本明細書で使用される場合、胎児無細胞ゲノム物質及び母体無細胞ゲノム物質(例えば、DNA)を両方とも含む妊娠哺乳類から採取される任意の試料を指す。好ましくは、本発明で使用される母体試料は、比較的非侵襲的な手段、例えば静脈穿刺又は被験者から末梢試料を抽出するための他の標準的技法により得られる。
【0044】
用語「融解温度」又はTmは、一般的に、二本鎖核酸分子の集団の半分が一本鎖に解離する温度と定義される。核酸のTmを算出するための式は、当技術分野で周知である。標準的文献により示されるように、Tm値の単純な推定値は、下記式により算出することができる:Tm=81.5+16.6(log10[Na+])0.41(%[G+C])-675/n-1.0m ここで、核酸は0.5M以下の陽イオン濃度を有する水溶液中にあり、(G+C)含有量は30%~70%であり、nは塩基の数であり、mは不適正塩基対のパーセンテージである(例えば、Sambrook Jら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001年)を参照)。他の文献には、構造的特徴並びに配列的特徴を考慮に入れてTmを算出する、より精巧な計算が記載されている。
【0045】
「マイクロアレイ」又は「アレイ」は、表面、好ましくは(ただし排他的ではない)平坦な又は実質的に平坦な表面を有する固相支持体を指し、この表面は核酸を含む部位のアレイを担持し、アレイの各部位はオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの実質的に同一の又は同一のコピーを含み、空間的に画定されており、アレイの他のメンバーの部位と重複していない。すなわち、各部位は空間的に別個のものである。また、アレイ又はマイクロアレイは、ビーズ又はウエル等の表面を有する非平坦調査構造を含んでいてもよい。アレイのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、固体支持体に共有結合で結合されていてもよく、又は非共有結合で結合されていてもよい。従来のマイクロアレイ技術は、例えば、Schena編、Microarrays:A Practical Approach、IRL Press、Oxford(2000年)に概説されている。「アレイ分析」、「アレイによる分析」、又は「マイクロアレイによる分析」は、例えば、マイクロアレイを使用する1つ又は複数の生体分子の特定の核酸の単離又は配列分析等の分析を指す。
【0046】
「非多型的」とは、選択核酸領域の検出に関して使用される場合、そのような核酸領域の検出を意味し、これは1つ以上の多型を含んでいてもよいが、その検出は、その領域内の特定の多型の検出には依存しない。したがって、選択核酸領域は多型を含んでいてもよいが、本発明のアッセイ系を使用した領域の検出は、その領域の特定の多型の有無ではなく、領域の出現に基づく。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」は、塩基-糖-リン酸の組合せを指す。ヌクレオチドは、核酸配列(DNA及びRNA)のモノマー単位である。ヌクレオチドという用語は、リボヌクレオシド三リン酸であるATP、UTP、CTG、GTP、及びdATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTP等のデオキシリボヌクレオシド三リン酸、又はそれらの誘導体を含む。そのような誘導体には、例えば、[αS]dATP、7-デアザ-dGTP、及び7-デアザ-dATP、並びにそれらを含む核酸分子にヌクレアーゼ耐性を付与するヌクレオチド誘導体が含まれる。また、ヌクレオチドという用語は、本明細書で使用される場合、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)及びそれらの誘導体を指す。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の代表的な例には、限定するものではないが、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITP、及びddTTPが含まれる。
【0048】
本発明によると、「ヌクレオチド」は、未標識であってもよく、又は周知の技法により検出可能に標識されてもよい。蛍光標識及びそれらのオリゴヌクレオチドに対する結合は、以下のものを含む多数の概説に記載されている:Haugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、第9版、Molecular Probes,Inc.、Eugene OR(2002年);Keller及びManak、DNA Probes、第2版、Stockton Press、New York(1993年);Eckstein編、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、IRL Press、Oxford(1991年);Wetmur、Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology、26巻:227~259頁(1991年)等。本発明に応用可能な他の方法は、以下の文献例に開示されている:Fungら、米国特許第4,757,141号明細書;Hobbs,Jr.ら、米国特許第5,151,507号明細書;Cruickshank,米国特許第5,091,519号明細書;Menchenら、米国特許第5,188,934号明細書;Begotら、米国特許第5,366,860号明細書;Leeら、米国特許第5,847,162号明細書;Khannaら、米国特許第4,318,846号明細書;Leeら、米国特許第5,800,996号明細書;Leeら、米国特許第5,066,580号明細書:Mathiesら、米国特許第5,688,648号明細書等。標識化は、以下の特許及び特許公報に開示されているように、量子ドットで実施することもできる:米国特許第6,322,901号明細書;第6,576,291号明細書;第6,423,551号明細書;第6,251,303号明細書;第6,319,426号明細書;第6,426,513号明細書;第6,444,143号明細書;第5,990,479号明細書;第6,207,392号明細書;第2002/0045045号明細書;及び第2003/0017264号明細書。検出可能な標識には、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、及び酵素標識が含まれる。ヌクレオチドの蛍光標識には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’-ジメトキシ-4’5-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、4-(4’ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、カスケードブルー、オレゴングリーン、テキサスレッド、シアニン、及び5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)。蛍光的に標識されたヌクレオチドの具体的な例には、以下のものが含まれる:Perkin Elmer社、フォスターシティ、カリフォルニア州から入手可能な[R6G]dUTP、[TAMRA]dUTP、[R110]dCTP、[R6G]dCTP、[TAMRA]dCTP、[JOE]ddATP、[R6G]ddATP、[FAM]ddCTP、[R110]ddCTP、[TAMRA]ddGTP、[ROX]ddTTP、[dR6G]ddATP、[dR110]ddCTP、[dTAMRA]ddGTP、及び[dROX]ddTTP;Amersham社、アーリントンハイツ、イリノイ州から入手可能なFluoroLink DeoxyNucleotides、FluoroLink Cy3-dCTP、FluoroLink Cy5-dCTP、FluoroLink FluorX-dCTP、FluoroLink Cy3-dUTP、及びFluoroLink Cy5-dUTP;Boehringer Mannheim社、インディアナポリス、インディアナ州から入手可能なフルオレセイン-15-dATP、フルオレセイン-12-dUTP、テトラメチル-ローダミン-6-dUTP、IR770-9-dATP、フルオレセイン-12-ddUTP、フルオレセイン-12-UTP、及びフルオレセイン-15-2’-dATP;及びMolecular Probes社、ユージーン、オレゴン州から入手可能なChromosomee Labeled Nucleotides、BODIPY-FL-14-UTP、BODIPY-FL-4-UTP、BODIPY-TMR-14-UTP、BODIPY-TMR-14-dUTP、BODIPY-TR-14-UTP、BODIPY-TR-14-dUTP、カスケードブルー-7-UTP、カスケードブルー-7-dUTP、フルオレセイン-12-UTP、フルオレセイン-12-dUTP、オレゴングリーン488-5-dUTP、ローダミングリーン-5-UTP、ローダミングリーン-5-dUTP、テトラメチルローダミン-6-UTP、テトラメチルローダミン-6-dUTP、テキサスレッド-5-UTP、テキサスレッド-5-dUTP、及びテキサスレッド-12-dUTP。
【0049】
用語「オリゴヌクレオチド」又は「オリゴ」は、本明細書で使用される場合、ワトソン-クリックタイプの塩基対合、塩基スタッキング、及びフーグスティーン又は逆フーグスティーンタイプの塩基対合等の通常パターンのモノマー間相互作用により一本鎖ポリヌクレオチドと特異的に結合可能な、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、それらのアノマー形態、ペプチド核酸モノマー(PNA)、及びロックドヌクレオチド酸モノマー(LNA)等、又はそれらの組み合わせを含む、天然又は修飾核酸モノマーの直鎖オリゴマーを指す。通常、モノマーは、リン酸ジエステル結合又はその類似体により連結されて、サイズが、少数のモノマー単位、例えば8~12個から、数十個のモノマー単位、例えば100~200個以上の範囲のオリゴヌクレオチドを形成する。好適な核酸分子は、Beaucage及びCarruthers(Tetrahedron Lett.,22巻:1859~1862頁(1981年))に記載のホスホラミダイト法により調製してもよいし、又はMatteucciら(J.Am.Chem.Soc.、103巻:3185頁(1981年))によるトリエステル法により調製してもよいし(これらの文献は両方とも参照により本明細書に組み込まれる)、又は市販の自動化オリゴヌクレオチドシンセサイザーの使用等の他の化学的方法により調製してもよい。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「ポリメラーゼ」は、別の鎖をテンプレートとして使用して、個々のヌクレオチドを共に連結し、鎖を長くする酵素を指す。2つの一般的なタイプのポリメラーゼ:DNAを合成するDNAポリメラーゼ及びRNAを合成するRNAポリメラーゼがある。これらの2つの種類の中には、テンプレートとして機能することができる核酸のタイプに応じて、及び形成される核酸のタイプに応じて、多数のサブタイプのポリメラーゼが存在する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」は、過剰な非特異的DNAが存在する場合でさえ、特定の1片の標的DNAをin vitroで複製するための技法を指す。プライマーを標的DNAに加えると、プライマーは、ヌクレオチド及び典型的にはTaqポリメラーゼ等を使用して、標的DNAの複製を開始する。温度をサイクルさせることにより、標的DNAが、反復して変性及び複製される。他の無作為DNAと混合されている場合でさえ、標的DNAの単一コピーが増幅され、何十億個もの複製物を得ることができる。ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、非常に少量のDNAを検出及び測定し、特注のDNAを生成することができる。幾つかの場合では、PCRの代わりに線形増幅法を使用してもよい。
【0052】
用語「多型」は、本明細書で使用される場合、限定するものではないが、一塩基多型(SNP)、メチル化の相違、及びショートタンデムリピート(STR)等を含む、その特定の遺伝子座を示すことができる遺伝子座の任意の遺伝子変化を指す。
【0053】
一般的に、「プライマー」は、ポリメラーゼ連鎖反応の合成ステップ又はある配列決定反応で使用されるプライマー伸長技法等、例えばDNAの伸長、ライゲーション、及び/又は合成を開始するために使用されるオリゴヌクレオチドである。プライマーは、特定の核酸領域を検出するための捕捉オリゴヌクレオチドに核酸領域の相補性を提供する手段として、ハイブリダイゼーション技法にも使用することもできる。
【0054】
用語「研究ツール」は、本明細書で使用される場合、性質が学術的又は商業的である科学的調査に使用される本発明の任意の組成物又はアッセイを指し、これは薬学的な及び/又は生物学的な治療法の開発を含む。本発明の研究ツールは、治療用又は規制認可の対象になることが意図されていない。むしろ、本発明の研究ツールは、規制申請を支援するための情報をもたらす意図を持って実施される任意の活動を含む、そのような開発活動における研究及び支援を容易にするためのものである。
【0055】
用語「試料インデックス」は、一般的に、一連の一意的なヌクレオチドを指す(つまり、各試料インデックスが、複数の試料を分析するための多重アッセイ系での1つの試料に対して一意的である)。したがって、試料インデックスは、単一の反応容器中の異なる試料を多重化するための核酸領域識別を支援するために使用することができ、各試料は、その試料インデックスに基づいて識別することができる。好ましい態様では、1セットの試料中の各試料ごとに一意的な試料インデックスが存在し、試料は、配列決定中にプールされる。例えば、12個の試料が、単一の配列決定反応にプールされる場合、各試料が一意的に標識されるように、少なくとも12個の一意的な試料インデックスが存在する。上記インデックスを任意の他のインデックスと組み合わせて、2つの特性に関する情報を提供する1つのインデックスを生成してもよい(例えば、試料-識別インデックス、試料-遺伝子座インデックス)。
【0056】
用語「選択核酸領域」は、本明細書で使用される場合、個々の染色体に対応する核酸領域を指す。そのような選択核酸領域は、例えばハイブリダイゼーション及び/又は他の配列決定に基づく技術に基づいて、検出用の試料から直接単離及び濃縮してもよく、又は配列を検出する前に、試料をテンプレートとして使用して増幅してもよい。本発明のアッセイ系で使用される核酸領域は、特定の染色体に対する特異性、CG含有量、及び/又は選択核酸領域に必要な増幅条件、又は当業者であれば本開示を読むと明白になるであろう他の特徴に基づき、個体間のDNAレベル変異に基づいて選択することができる。
【0057】
用語「選択的増幅」、「選択的に増幅する」等は、選択ゲノム領域の配列に対するオリゴのハイブリダイゼーションに、完全に又は部分的に依存する増幅手順を指す。ある選択的な増幅では、増幅に使用されるプライマーは、選択ゲノム領域に相補的である。他の選択的な増幅では、増幅に使用されるプライマーは、ユニバーサルプライマーであるが、増幅に使用される核酸の領域が目的ゲノム領域に相補的である場合にのみ、産物をもたらす。
【0058】
用語「配列決定する」、「配列決定」等は、本明細書で使用される場合、一般的に、核酸のヌクレオチド塩基の順序を決定するために使用することができるありとあらゆる生化学的方法を指す。
【0059】
用語「特異的に結合する」、「特異的結合」等は、本明細書で使用される場合、結合パートナー(例えば、核酸プローブ又はプライマー、抗体等)について言及する場合、指定されたアッセイ条件下で統計的に有意な陽性シグナルの生成をもたらす。典型的には、相互作用は、不要な相互作用の結果として生成される任意のシグナル(バックグラウンド)の標準偏差の少なくとも2倍である検知可能なシグナルを連続的にもたらす。
【0060】
用語「ユニバーサル」は、増幅手順を説明するために使用される場合、複数の増幅反応に単一のプライマー又は1セットのプライマーを使用することを指す。例えば、96個の異なる標的配列の検出では、テンプレートは全て、同一のユニバーサルプライマー結合配列を共有していてもよく、単一セットのプライマーを使用して96個の異なる配列を多重増幅することが可能になる。そのようなプライマーの使用は、複数の選択核酸配列を増幅するのに2つのプライマーしか必要としないという点で、多重化を非常に単純化する。用語「ユニバーサル」は、プライマー結合部位を説明するために使用される場合、ユニバーサルプライマーがハイブリダイズする部位である。
【0061】
また、ユニバーサルプライマー結合配列/プライマーの「セット」を使用してもよいことに注目すべきである。例えば、高度に多重化された反応では、単一のセットではなく、幾つかのセットのユニバーサル配列を使用することが有用であり得る。例えば、96個の異なる核酸は、第1のセットのユニバーサルプライマー結合配列を有していてもよく、第2の96個は、異なるセットのユニバーサルプライマー結合配列を有する等である。
【0062】
本発明の基本
本発明は、卵子提供で妊娠している妊娠女性の無細胞DNAを含む混合試料中の、全染色体を含む特定のゲノム領域のコピー数変異(例えば、異数性)を特定するための改良方法を提供する。これらの方法は、例えば、母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを含む混合試料、移植ドナー及びレシピエントに由来する無細胞DNAを含む混合試料等の、2つ以上の別々の個体に由来する無細胞ゲノム物質(例えば、DNA)を含む、個体に由来する任意の混合試料に有用である。
【0063】
ある態様では、卵子提供による妊娠に由来する母体試料中の胎児寄与割合が、本発明のアッセイ法を使用して推定される。ある特定の態様では、本明細書に記載されているように、母体試料中の無細胞DNAの胎児寄与割合の決定を使用して、胎児異数性の有無の尤度を決定するのに使用される選択核酸領域の頻度計算の正確さを高めることができる。
【0064】
ある態様では、本発明のアッセイ法は、コピー数変異を検出するために、目的染色体及び/又は参照染色体に由来する核酸領域の選択的濃縮を提供する。本発明の特徴的な利点は、限定するものではないが、ハイブリダイゼーション技法、デジタルPCR、及びハイスループット配列決定技法を含む様々な検出及び定量化技法を使用して、選択核酸領域を更に分析することができるということである。選択プローブは、任意の染色体の任意の数の核酸領域に対して設計することができる。選択核酸領域を特定及び定量化する前の増幅は必ず実施しなければならないわけではないが、検出前の限定的な増幅は好ましい。
【0065】
母体試料中の胎児DNA含有量の決定
本発明は、卵子提供による妊娠において、保持母体に由来する母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを両方とも含む母体試料で胎児染色体異数性を特定するための方法、及びそのような特定用のアッセイ系を提供する。ある態様では、母体試料中の胎児DNAの相対的割合を決定することは、それが、ゲノム領域の統計的存在予測に関する重要な情報を提供することになり、その予測に由来する変異が、挿入、欠失、又は異数性に関連するコピー数変異を示すことができるため、アッセイ系の実施に有益であり得る。これは、胎児寄与割合を使用して、母体試料中の特定された核酸領域レベルの変動の定量的統計有意差を決定することができるため、母体試料中の胎児DNAのレベルが低い場合に特に有用であり得る。他の態様では、母体試料中の胎児無細胞DNAの相対的割合の測定は、胎児異数性を検出する際の確実性又は能力のレベルを推定するのに有益であり得る。胎児無細胞DNA寄与割合の推定が不正確だと、胎児異数性の有無のリスク決定が不正確になり、偽陽性又は偽陰性の結果に結び付く場合がある。
【0066】
本発明の方法は、選択核酸領域にある卵子提供者情報を含む遺伝子座を調査し、それを検出して、低頻度対立遺伝子及び高頻度対立遺伝子等の、卵子提供者情報を含む遺伝子座を識別するための対立遺伝子の相対頻度を決定することを含む。母体対立遺伝子は、当然母体試料中により大量にあるため、高頻度対立遺伝子は、それら対立遺伝子が胎児ゲノムに存在するか否かに関わらず、母体対立遺伝子である。低頻度対立遺伝子は、その対立遺伝子の少なくとも1つのコピーが母体ゲノムに存在しない場合、胎児対立遺伝子である。低頻度対立遺伝子の頻度及び高頻度対立遺伝子の頻度を使用して、試料中の胎児無細胞DNA割合を算出する。例えば、低頻度対立遺伝子の合計を、高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の合計で除算してもよい。
【0067】
図1は、卵子提供による妊娠に由来する母体試料中の無細胞DNAの胎児寄与割合を決定するのに使用される基本ステップの単純化されたフローチャートである。
図1には、方法100が示されており、第1のステップ101では、母体試料は、卵子提供で妊娠している妊娠女性から提供され、母体無細胞DNA及び胎児無細胞DNAを含む。母体試料は、全血、血漿、又は血清の形態であってもよい。任意選択で、無細胞DNAは、更なる分析の前に試料から単離される。ステップ103では、試料に由来する無細胞DNAの2つ以上の多型核酸領域が調査される。調査は、選択多型核酸を配列決定し、その後それら核酸領域を選択的に増幅し、最初の試料中の選択核酸領域の相対量の保存を可能にする様式で、選択核酸領域のコピー数を増加させることを含んでもよい。その後、任意選択で、例えば、ユニバーサルプライマー配列を使用することにより、核酸領域をユニバーサル増幅してもよい。ユニバーサル増幅は、決定ステップの前に又は決定ステップ中に実施してもよい。ステップ105では、調査した核酸領域が検出される。検出は、配列決定又はハイブリダイゼーション等の検出方法を含んでもよい。選択核酸配列の検出は、選択多型領域に関連する1つ又は複数のインデックス、例えば、遺伝子座インデックス、対立遺伝子インデックスを検出することにより実施することができる。ステップ107では、調査した核酸領域の多型の相対頻度を決定して、卵子提供者情報を含む遺伝子座を特定する。ステップ109では、特定した卵子提供者情報を含む遺伝子座を使用して、胎児無細胞DNA割合を算出する。胎児割合の計算は、低頻度対立遺伝子の合計を、低頻度対立遺伝子及び高頻度対立遺伝子を合わせた合計で除算することを含んでもよい。これらの概念は、以下で更に詳細に説明される。
【0068】
保持母体及び胎児が、母体の遺伝子情報のおよそ半分を共有しないことを考慮すると、卵子提供による妊娠は、母体試料中の胎児寄与割合の決定において、通常妊娠と区別される。胎児が母体の遺伝的子孫である母体試料では、ある対立遺伝子が、例えば突然変異のために異なる場合があるものの、母体DNA及び胎児DNAは、一般的に、任意の特定の遺伝子座に少なくとも1つの共通の対立遺伝子を持つ。しかしながら、卵子提供による妊娠では、母体DNA及び胎児DNAは、特定の遺伝子座に共通の対立遺伝子を持たない場合がある。例えば、母体ゲノム及び胎児ゲノムは両方とも、同じ遺伝子座にホモ接合型対立遺伝子を含んでいてもよいが、両母体対立遺伝子は、胎児対立遺伝子とは異なっていてもよい。
【0069】
本発明で使用される卵子提供者情報を含む遺伝子座は、少なくとも1つの胎児対立遺伝子が母体対立遺伝子と異なる遺伝子座である。例えば、母体ゲノムが特定の遺伝子座にホモ接合型対立遺伝子を含み、胎児ゲノムがヘテロ接合型対立遺伝子を含み、かつ1つの対立遺伝子を母体ゲノム及び胎児ゲノムで共有していてもよい。或いは、母体ゲノムが特定の遺伝子座にヘテロ接合型対立遺伝子を含み、胎児ゲノムがホモ接合型対立遺伝子を含み、かつ1つの対立遺伝子を母体DNA及び胎児DNAで共有していてもよい。更に別の例では、上述のように、母体ゲノムが特定の遺伝子座にホモ接合型対立遺伝子を含み、胎児ゲノムが特定の遺伝子座にホモ接合型対立遺伝子を含み、かつ母体対立遺伝子が両方とも胎児対立遺伝子と異なっていてもよい。
【0070】
図2は、特定の遺伝子座における、卵子提供による妊娠での母体遺伝子型、卵子提供者遺伝子型、及び胎児遺伝子型の14通りの考え得る組合せを示す表であり、それらを情報提供遺伝子座と非情報提供遺伝子座に分類したものが更に示されている。
図2では、Aは、第1のタイプの対立遺伝子を表すために使用され、Bは、異なるタイプの対立遺伝子を表すために使用されている。例えば、組合せ201では、母体遺伝子型はAAであり、卵子提供者遺伝子型はAAであり、胎児遺伝子型はAAである。この状況では、胎児DNAが、母体DNAと異なる少なくとも1つの対立遺伝子を含まないため、遺伝子座は、胎児寄与割合を評価するための情報を含まない。別の例では、組合せ204は、AAの母体遺伝子型、ABの卵子提供者遺伝子型、及びABの胎児遺伝子型を含む。これは、胎児DNAが、母体対立遺伝子とは異なる少なくとも1つの対立遺伝子をその遺伝子座に有するため、卵子提供者情報を含む遺伝子座である。更に別の例では、組合せ105は、AAの母体遺伝子型、ABの卵子提供者遺伝子型、BBの胎児遺伝子型を含む。胎児源が、母体源の対立遺伝子とは異なる少なくとも1つの対立遺伝子を有し、実際、胎児DNAの対立遺伝子は両方とも、その遺伝子座の母体DNAとは異なるため、これは、卵子提供者情報を含む遺伝子座である。
【0071】
幾つかの特定の態様では、目的対立遺伝子での母体DNAの相対的胎児寄与を、その対立遺伝子での非母体寄与と比較して、試料中の近似的な胎児DNA濃度を決定することができる。
【0072】
胎児常染色体多型及び遺伝的変異を使用した、母体試料中の胎児DNA含有量の決定
上述のように、卵子提供による妊娠に由来する母体試料では、胎児に由来するDNAは、特定の遺伝子座で保持母体と共通の対立遺伝子を持たない場合がある。胎児が保持母体の対立遺伝子とは異なる少なくとも1つの対立遺伝子を有する遺伝子座を決定することは、母体試料中の胎児DNA割合を推定することを可能にし、したがって、目的染色体の染色体頻度の統計的有意差を算出するために使用する情報を提供することができる。
【0073】
ある態様では、胎児多型の決定には、母体試料中の胎児DNAの存在を特定するための標的SNP分析及び/又は突然変異分析が必要である。幾つかの態様では、事前の父系及び母系遺伝子型決定の使用を実施することができる。例えば、親は、疾患マーカーを特定するための遺伝子型決定を受けている場合があり、例えば、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症等の障害の遺伝子型の決定、又は更にRhD遺伝子の状態が決定されている場合がある。多型、コピー数変異、又は突然変異の差異を使用して、母体試料中の胎児寄与割合を決定することができる。
【0074】
1つの好ましい態様では、母体試料中の胎児無細胞DNA割合は、母系又は父系の遺伝子型を事前に知ることなく、多重SNP検出を使用して定量化することができる。この態様では、各領域の既知SNPを有する2つ以上の選択多型核酸領域が使用される。好ましい態様では、選択多型核酸領域は、異数性である可能性が低い常染色体、例えば1~12番染色体に位置している。母体に由来する選択多型核酸領域が増幅される。好ましい態様では、増幅はユニバーサルである。
【0075】
好ましい実施形態では、選択多型核酸領域は、1つの容器中の1つの反応で増幅される。その後、母体試料中の選択多型核酸領域の各対立遺伝子が決定及び定量化される。好ましい態様では、ハイスループット配列決定が、そのような決定及び定量化に使用される。配列決定した後、母体遺伝子型及び胎児遺伝子型が異なる遺伝子座、例えば、母体遺伝子型がホモ接合型であり、胎児遺伝子型がヘテロ接合型であるか、又は母体遺伝子型及び胎児遺伝子型が両方ともホモ接合型であり、胎児対立遺伝子が両方とも母体対立遺伝子とは異なる遺伝子座が特定される。この特定は、特定の選択核酸領域について、一方の対立遺伝子の相対頻度が高く(>60%)、他方の対立遺伝子の相対頻度が低い(<20%かつ>0.15%)ことを観察することにより実施することができる。複数の遺伝子座を使用すると、対立遺伝子の存在量の測定における変動量が低減されるため、特に有利である。この要求を満たす遺伝子座の全て又はサブセットを使用して、統計分析により胎児濃度を決定する。
【0076】
卵子提供による妊娠での胎児濃度は、胎児対立遺伝子が両方とも母体対立遺伝子とは異なる、卵子提供者情報を含む遺伝子座を考慮することにより決定される。必要以上の多型核酸の検出は、胎児寄与割合の過大評価をもたらす場合があり、そのような遺伝子座は、決定ステップの前又は後のいずれでも考慮されない。特定の態様では、両方とも母体の対立遺伝子と異なる胎児対立遺伝子のみが、この決定に使用される。他の態様では、両方とも母体対立遺伝子と異なる胎児対立遺伝子は、決定の前又は後で除外される。より具体的な態様では、1つの対立遺伝子のみが母体対立遺伝子並びに対立遺伝子と異なる胎児の対立遺伝子。1つの態様では、胎児濃度は、2つ以上の遺伝子座に由来する低頻度対立遺伝子の相対頻度を決定し、高頻度対立遺伝子の相対頻度を決定し、低頻度対立遺伝子の相対頻度を、低頻度対立遺伝子及び高頻度対立遺伝子の両方の頻度と比較することにより推定される。
【0077】
1つの態様では、胎児寄与割合は、母体遺伝子型又は胎児遺伝子型のいずれかがホモ接合型であり、他方の遺伝子型がヘテロ接合型であるサブセット等の、遺伝子座のサブセットを分析することにより決定される。特定の態様では、胎児濃度は、2つ以上の選択遺伝子座に由来する低頻度対立遺伝子の頻度、並びに高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の頻度を使用して決定される。1つの態様では、胎児濃度は、2つ以上の遺伝子座に由来する低頻度対立遺伝子を共に合計し、高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の合計で除算することにより決定される。別の態様では、胎児寄与割合は、2つ以上の遺伝子座に由来する低頻度対立遺伝子を平均し、高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の平均で除算し、2倍することにより決定される。遺伝子座のサブセットの単離は、対立遺伝子の相対頻度を決定する前に実施してもよく、又は対立遺伝子の相対頻度を決定した後で実施してもよい。
【0078】
別の態様では、胎児寄与割合は、母体遺伝子型及び胎児遺伝子型が両方ともホモ接合型であり、胎児対立遺伝子が両方とも母体対立遺伝子とは異なる遺伝子座のサブセットを分析することにより決定される。特定の態様では、胎児濃度は、2つ以上の選択遺伝子座に由来する低頻度対立遺伝子の頻度、並びに高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の頻度を使用して決定される。ある特定の態様では、胎児無細胞DNA割合は、2つ以上の遺伝子座に由来する低頻度対立遺伝子を合計し、高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の合計で除算することにより決定される。別の態様では、胎児無細胞DNA割合は、2つ以上の遺伝子座に由来する低頻度対立遺伝子を平均し、高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の平均で除算することにより決定される。遺伝子座のサブセットの単離は、対立遺伝子の相対頻度を決定する前に実施してもよく、又は対立遺伝子の相対頻度を決定した後で実施してもよい。
【0079】
更に別の態様では、胎児寄与割合は、多型核酸を含む卵子提供者情報を含む遺伝子座全てを分析することにより決定される。例えば、母体遺伝子型又は胎児遺伝子型のいずれかがホモ接合型であり、他方がヘテロ接合型である遺伝子座全て、並びに母体遺伝子型及び胎児遺伝子型が両方ともホモ接合型であり、胎児対立遺伝子が両方とも母体対立遺伝子とは異なる遺伝子座全てが使用される。1つの態様では、胎児寄与割合は、母体遺伝子型及び胎児遺伝子型が両方ともホモ接合型であり、胎児対立遺伝子が両方とも母体対立遺伝子とは異なる遺伝子座の場合、2つ以上の選択遺伝子座に由来する低頻度遺伝子座の頻度並びに高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の頻度を使用することによる計算、母体遺伝子型又は胎児遺伝子型のいずれかがホモ接合型であり、他方がヘテロ接合型である場合、2つ以上の選択遺伝子座に由来する低頻度遺伝子座の頻度を一緒に使用し、並びに高頻度対立遺伝子及び低頻度対立遺伝子の頻度を使用することによる計算の組み合わせを使用して決定される。
【0080】
多くの対立遺伝子では、母体配列及び胎児配列は、ホモ接合型かつ同一の場合があり、この情報は、母体DNAと胎児DNAとを区別しないため、母体試料中の胎児DNA割合の決定に有用ではない。本発明は、胎児DNAと母体DNAとの間に識別可能な差異がある対立遺伝子座情報(例えば、母体対立遺伝子と異なる少なくとも1つの対立遺伝子を含む胎児対立遺伝子)を、胎児割合を計算するために使用する。したがって、母体DNA及び胎児DNAで同じである対立遺伝子領域に関するデータは、分析用に選択しないか、又は有用なデータを埋没させないように、胎児DNA割合を決定する前に関連データから除去される。
【0081】
母体血漿中の胎児DNAを定量化するための例示的な方法は、例えば、Chuら、Prenat Diagn 2010年;30巻:1226~1229頁に見出すことができ、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
1つの態様では、選択核酸領域は、領域の量又は頻度が、実験エラーによるか又は特定の試料内の特発的な遺伝子バイアスによる外れ値であると考えられる場合、除外してもよい。別の態様では、選択核酸は、低頻度対立遺伝子及び高頻度対立遺伝子の頻度を決定する前に、正規化、標準化、クラスター化、又は変換等の統計的又は数学的な調整を受けてもよい。別の態様では、選択核酸は、低頻度対立遺伝子及び高頻度対立遺伝子の頻度を決定する前に、正規化及び実験エラーデータ除外を両方とも受けてもよい。
【0083】
好ましい態様では、12個以上の遺伝子座が分析に使用される。別の好ましい態様では、24個以上の遺伝子座が分析に使用される。別の好ましい態様では、48個以上の遺伝子座が分析に使用される。別の態様では、1つ又は複数のインデックスを使用して、試料、遺伝子座、対立遺伝子を特定、又は核酸を特定する。
【0084】
1つの好ましい態様では、母体試料中の胎児寄与割合は、母体対立遺伝子及び胎児対立遺伝子のタンデムSNP検出を使用して定量化することができる。母体試料から抽出されたDNA中のタンデムSNPを特定するための技法は、以下の文献に開示されている:Mitchellら、米国特許第7,799,531号明細書、及び米国特許出願第12/581,070号明細書、第12/581,083号明細書、第12/689,924号明細書、及び第12/850,588号明細書。これらには、胎児ゲノム及び母体ゲノム間で異なるハプロタイプを有する母体試料中の少なくとも1つのタンデム一塩基多型(SNP)を検出することにより、胎児遺伝子座及び母体遺伝子座を区別することが記載されている。これらのハプロタイプの特定及び定量化は、Mitchellらの開示に記載されているように母体試料で直接実施することができ、母体試料中の胎児寄与割合を決定するために使用することができる。
【0085】
染色体異数性の検出
ある態様では、本発明の方法は、母体DNA及び胎児DNAを両方とも含む、卵子提供による妊娠に由来する母体試料中の胎児染色体異数性を特定するための機序を提供する。ある態様では、胎児異数性の特定は、当業者であれば本明細書を読むと明白になるであろう任意の好適な方法により実施することができる。上記方法には、特定の核酸のSNP検出等の多型検出、又は好ましくは胎児配列及び母体配列、好ましくは母体と胎児との間で保存された非多型配列に基づく非多型検出が含まれる。例示的な方法は、以下の通りである。
【0086】
幾つかの態様では、核酸は、検出前に母体試料から選択することができる。つまり、ハイブリダイゼーション等の増幅又は捕捉技法を使用して、検出前に母体試料から選択的に単離することができる。別の特定の態様では、卵子提供による妊娠での胎児異数性検出に使用される核酸は、検出後に、例えば、母体試料内の核酸の大規模並列ショットガン配列決定等の技法から生成される頻度データをフィルタリングすることにより選択することができる。
【0087】
幾つかの特定の態様では、卵子提供による妊娠での胎児異数性検出には、染色体特異的遺伝子座を調査する選択的配列決定法が使用され、特定の目的染色体に由来する選択遺伝子座の高度多重配列決定が可能になる。染色体選択的配列決定を使用して、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を単一反応で同時にアッセイすることができ、母体試料中の胎児異数性及び胎児核酸寄与割合の両方の決定を可能にする。その後、胎児異数性及び胎児寄与推定を活用して、各被験者の胎児異数性(例えば、胎児トリソミー)の尤度を計算する本発明の新規なリスク計算を使用することができる。
【0088】
1つの態様では、本発明は、以下の文献に記載されているもの等の無作為DNAセグメントの分析を使用して胎児異数性を決定する:例えば、Quakeら、米国特許第8,008,018号明細書、米国特許第7,888,017号明細書、及びShoemakerら。簡潔に述べると、母体試料等の混合試料内の核酸の量は、選択核酸配列を使用して別個に検出することができる。核酸は、ゲノムDNA又はRNAであってもよく、好ましくは、mRNAである。mRNAの場合、胎児で高度に発現される遺伝子に対応する標的配列を選択してもよい。各試料中の核酸を、核酸の2つの標的配列の少なくとも1つに対する1つ又は複数の配列特異的プローブで検出し、検出可能な反応産物を得る。調査した染色体に特異的なプローブを、別の(例えば、調査していない)染色体に特異的な対照プローブと共に反応試料と混合する。ほとんどの場合、反応産物は、母体核酸に由来することになるが、少数の反応産物は胎児核酸に由来することになる。胎児結果を無作為変異と区別するために、多数の反応を実施し、結果に統計処理を施す。「デジタル分析」と呼ばれる、本プロセスでの標識化及び検出を使用して、単一の標的配列の有無を区別するが、別々の試料中の1つの標的配列と複数の標的配列とを区別する高感度核酸検出プロセスを用いて実施してもよい。
【0089】
別の例では、核酸(例えば、試料から無作為に選択されるDNA断片)の大規模並列配列決定を使用して母体試料中の核酸の配列を決定し、母体試料内の核酸の選択された頻度を決定する。核酸配列の大規模並列配列決定を実施するための例示的な技法には、以下の文献に開示のものが含まれる:米国特許第8,318,430号明細書、第8,296,076、及び第8,195,415号明細書、並びに米国特許出願公開第20090029377号明細書、第20090087847号明細書、第20100112590号明細書、第20110312503号明細書、第20110319272号明細書、第20110246083号明細書、第20110318734号明細書、第20120003635号明細書、第20120003636号明細書、第20120003637号明細書、第20120190559号明細書、及び第20120208708号明細書。染色体頻度異常(例えば、トリソミー)を検出する場合、配列決定された核酸が第1の染色体に由来することを特定し、母体試料中の少なくとも1つの第1の染色体に由来する核酸の総量を、母体試料中の少なくとも1つの第2の染色体に由来する核酸の総量と比較する。総核酸量は、母体試料中の胎児及び母体の両方に由来する核酸を含み、胎児に由来する核酸は、染色体頻度に対応する核酸の頻度を決定する際に母体と区別されない。第1の染色体が正倍数性であると推定され、第2の染色体が異数体であると疑われる場合、第1及び第2の染色体の核酸の合計数を比較して、上記異数性の有無を決定する。
【0090】
より具体的な態様では、核酸の大規模並列配列決定に使用される試料は、多型領域を濃縮したものである。濃縮を実施するための例示的な技法には、以下の文献に開示されているものが含まれる:例えば、国際公開第2011091063号、国際公開第2011091046号、及び米国特許出願公開第20110230358号明細書。簡潔に述べると、無細胞DNAを含む母体試料の一部を増幅して、試料中の1つ又は複数の多型配列のコピー数を増大させ、その後、核酸の増幅された部分を、配列決定用の原試料に加え直す。或いは、試料を全ゲノム配列決定にかけて複数の配列タグを得て、タグの配列を、複数の参照多型の配列と比較する。
【0091】
幾つかの態様では、米国特許出願公開第2011/0172111号明細書に記載のもの等の、アレイに基づくハイブリダイゼーションプロセスを使用して、核酸を配列決定する。他の態様では、米国特許出願公開第2011/0124518号明細書に記載のもの等の、ナノポア技術による検出を使用して、生体分子を検出する。
【0092】
別の態様では、核酸を配列決定し、試料中の母体対立遺伝子と胎児対立遺伝子とを区別する多型を使用し、以下の文献に記載のものなど方法を使用して比較する:米国特許第7,727,720号明細書、第7,718,370号明細書、第7,598,060号明細書、第7,442,506号明細書、第7,332,277号明細書、第7,208,274号明細書、及び第6,977,162号明細書。簡潔に述べると、上記方法は、多型検出を使用して、染色体異常を特定する。母体ではホモ接合型であり、胎児ではヘテロ接合型である対立遺伝子の配列を決定し、ヘテロ接合型対立遺伝子の比率を決定する。ヘテロ接合型対立遺伝子の比率は、染色体異常の有無を示すために使用される。
【0093】
更に別の態様では、胎児異数性は、以下の文献に記載のもの等のタンデム多型の特定を使用して決定される:米国特許第7,799,531号明細書、及び米国特許出願公開第2011/0117548号明細書、第2011/0059451号明細書、第2010/0184044号明細書、第2010/184043号明細書、及び第2008/0020390号明細書。簡潔に述べると、タンデムSNPを検出及び使用して、母体試料中の母体対立遺伝子及び胎児対立遺伝子を区別し、母体DNAを胎児DNAと比較することにより、胎児染色体異常を検出する。
【0094】
好ましい態様では、胎児異数性は、代表的な遺伝子座の選択増幅を使用して決定される。そのような技法は、例えば、米国特許出願第13/013,732号明細書、第13/205,490号明細書、第13/205,570号明細書、第13/205,603号明細書に開示されている。これらの文献は全て、それらの全体が本明細書に組み込まれる。これらの技法では、固定配列オリゴヌクレオチドを使用し、ライゲーション及び/又は伸長により固定配列オリゴヌクレオチドを結合させるゲノム領域の検出が使用される。これは、ライゲーション及び増幅の組合せ、例えば、2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドのライゲーション、及び任意選択で固定配列オリゴヌクレオチド間の領域に相補的な架橋オリゴヌクレオチドを使用して達成することができる。別の例では、これは、伸長、ライゲーション、及び増幅の組合せを使用して達成することができる。
【0095】
幾つかの態様では、正常集団の変動は、同様の割合の胎児DNAを有する正常試料から決定される。例えば、特定の胎児無細胞DNA割合を有するDNA試料中のトリソミー染色体の予測量は、異数性染色体の寄与割合を加えることにより算出することができる。その後、試料の染色体量を、正常胎児の染色体量と、及び三倍体の場合の予測染色体量と比較し、試料が正常又は三倍体のどちらの可能性がより高いか、及びそれが一方か又は他方かの統計的確率を、染色体量の変異を使用して統計的に決定する。
【0096】
好ましい態様では、母体試料中の分析用に選択された核酸領域は、胎児寄与割合を決定するための両核酸領域、並びに染色体量異常を検出するために使用される2つ以上の染色体に対応する核酸領域の両方を単一反応に含む。単一反応を使用することにより、個別の反応を使用すると導入される場合があり、そうでなくとも結果が歪められる場合がある夾雑物又はバイアスのリスク最小化が支援される。実際、本発明の方法は、好ましくは、多重化反応又は更に高度多重化反応として実施され、ここでは多型遺伝子座及び非多型遺伝子座(それぞれ胎児寄与割合及び胎児異数性の決定用)が両方とも、試料毎に単一反応で調査される。好ましい実施形態では、米国特許出願第13/013,732号明細書、第13/205,490号明細書、第13/205,570号明細書、及び第13/205,603号明細書に記載の多重化アッセイが使用され、これらのアッセイは、単一の多重化反応で母体試料中の多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を両方とも調査する。
【0097】
他の態様では、1つ又は複数の選択核酸領域を、胎児核酸割合の決定並びに胎児染色体異常検出の両方について調査することができる。胎児寄与割合及び胎児異数性検出の両方に同じ領域を使用することにより、実験エラー又は夾雑物によるバイアスの最小化が更に支援される。
【0098】
増幅方法
多数の増幅方法を使用して、本発明のアッセイ系で分析される増幅核酸を提供することができる。そのような方法は、好ましくは、母体試料中の核酸領域の初期含有量に関する情報の保存を可能にする様式で、卵子提供による妊娠に由来する母体試料中の目的核酸領域のコピー数を増加させるために使用される。増幅及び分析の全ての組み合わせが、本明細書中で詳細に記載されているわけではないが、それは、本明細書に記載のように核酸領域を単離及び/又は分析するための様々な増幅法及び/又は分析ツールを使用する当業者の技術の範囲内に十分にあり、そのような変法は、当業者であれば本開示を読むと明白になるであろう。
【0099】
そのような増幅方法には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4,683,195号明細書及び第4,683,202号明細書、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification、H.A.Erlich編、Freeman Press、NY、N.Y.,1992年)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu及びWallace、Genomics 4巻:560頁、1989年;Landegrenら、Science 241巻:1077頁、1988年)、鎖置換増幅法(SDA)(米国特許第5,270,184号明細書及び第5,422,252号明細書)、転写介在増幅法(TMA)(米国特許5,399,491号明細書)、連結線形増幅法(LLA、linked linear amplification)(米国特許第6,027,923号明細書)等、自家持続配列複製法(Guatelliら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、87巻、1874頁(1990年)及び国際公開第90/06995号)、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅法(米国特許第6,410,276号明細書)、コンセンサス配列プライムポリメラーゼ連鎖反応(CP-PCR)(米国特許第4,437,975号明細書)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)(米国特許第5、413,909号明細書、第5,861,245号明細書)、及び核酸配列に基づく増幅法(NASBA、nucleic acid based sequence amplification)。(米国特許第5,409,818号明細書、第5,554,517号明細書、及び第6,063,603号明細書を参照。これら文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。使用することができる他の増幅方法には、以下のものが含まれる:PCT特許出願第PCT/US87/00880号に記載のQベータレプリカーゼ、Walkerら、1992年、Nucleic Acids Res.20巻(7号):1691~6頁、1992年に記載の、SDA等の等温増幅法、及び米国特許第5,648,245号明細書に記載のローリングサークル増幅法。使用することができる他の増幅方法は、以下の文献に記載されている:米国特許第5,242,794号明細書、第5,494,810号明細書、第4,988,617号明細書、及び米国特許出願第09/854,317号明細書、及び米国特許出願公開第20030143599号明細書。これらの文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。幾つかの態様では、DNAは、多重遺伝子座特異的PCRにより増幅される。好ましい態様では、DNAは、アダプター-ライゲーション及び単一プライマーPCRを使用して増幅される。他の利用可能な増幅方法には、バランスの取れたPCR(Makrigiorgosら、(2002年)、Nat Biotechnol、20巻、936~9頁)及び自己持続的配列複製法(Guatelliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87巻:1874頁、1990年)が含まれる。このような方法に基づくと、当業者であれば、目的の核酸領域に対する任意の好適な領域5’及び3’のプライマーを容易に設計することができる。そのようなプライマーを使用して、その配列の目的核酸領域を含有するのに十分な任意の長さのDNAを増幅することができる。
【0100】
目的ゲノム領域に由来する増幅された選択核酸の長さは、一般的に、増幅された及び/又は選択された他の核酸と区別するための十分な配列情報を提供するのに十分な長さである。一般的に、増幅核酸は、少なくとも約16ヌクレオチド長であり、より典型的には、増幅核酸は、少なくとも約20ヌクレオチド長である。本発明の好ましい態様では、増幅核酸は、少なくとも約30ヌクレオチド長である。本発明のより好ましい態様では、増幅核酸は、少なくとも約32,40、45、50、又は60ヌクレオチド長である。本発明の他の態様では、増幅核酸は、約100、150、又は最大200個分の長さであってもよい。
【0101】
ある態様では、選択的増幅は、選択核酸に相補的な核酸を含むプライマー対を用いた1回又は数回の増幅を使用する。他の態様では、選択的増幅は、初期線形増幅ステップを含む。これらの方法は、開始DNA量が非常に限られている場合、例えば、試料中の無細胞DNAが限定的な量でしか入手可能でない場合に、特に有用であり得る。この機序は、元のDNA含有量を表すDNA分子の量を増加させ、DNA又はDNAの割合の正確な定量化(例えば、母体試料中の胎児DNA寄与)が必要な場合、サンプリングエラーの低減を支援する。
【0102】
したがって、1つの態様では、限定的なサイクル数の配列特異的増幅を、無細胞DNAを含む出発母体試料に対して実施する。サイクル数は、一般的に、典型的なPCR増幅に使用されるサイクル数未満であり、例えば5~30サイクル以下である。プライマー又はプローブは、特定のゲノム区間又は領域を増幅するように設計することができる。プライマー又はプローブは、更なる単離又は分析のために増幅産物が精製され得るか又は固体支持体(例えば、ビーズ又はアレイ)に結合され得るように、プライマー又はプローブの5’末端の末端標識で(例えば、ビオチンで)又は他所で修飾されていてもよい。好ましい態様では、プライマーは、単一反応が、異なる領域に由来する複数のDNA断片を産出するように多重化されている。その後、線形増幅に由来する増幅産物を、標準的PCR法又は更なる線形増幅で更に増幅することができる。
【0103】
例えば、妊娠女性に由来する血液、血漿、又は血清から無細胞DNAを単離し、目的染色体に対応するセット数の核酸領域に対するプライマーと共にインキュベートすることができる。好ましくは、初期増幅に使用されるプライマー対の数は、12対以上、より好ましくは24対以上、より好ましくは36対以上、更により好ましくは48対以上、及び更により好ましくは96対以上である。プライマーの各々は、単一の核酸領域に対応し、任意選択で識別用及び/又は単離用のタグが付けられている。限定的なサイクル数、好ましくは10サイクル以下が実施される。その後、増幅産物を単離する。例えば、プライマーがビオチン分子に結合されている場合、増幅産物は、固体支持体に担持されているアビジン又はストレプトアビジンと結合させることにより単離することができる。その後、産物は、他のプライマー(例えば、ユニバーサルプライマー)を用いた更なる増幅、並びに/又は配列決定及びハイブリダイゼーション等の検出技法等の更なる生化学的プロセスにかけられる。
【0104】
増幅の効率は、ある系では、正規化を使用して、増幅に由来する産物が出発物質核酸含有量を確実に表すことができるように、部位間及びサイクル間で様々であってもよい。本発明のアッセイ系を実施する者は、種々の試料からの情報を使用して、限定的な初期線形増幅後の個々の試料中の様々な核酸領域の変異、及び/又は様々な試料中の同じ核酸領域間の変異を含む、核酸レベルの変異を決定することができる。そのような情報を正規化に使用して、DNA含有量の初期レベルの歪みを防止することができる。
【0105】
ユニバーサル増幅
本発明の好ましい態様では、選択的に増幅された核酸領域は、好ましくは、選択的な増幅又は濃縮後に、核酸領域検出技法の前又はその最中のいずれかにおいて増幅される。本発明の別の態様では、核酸領域は、事前の増幅を一切行わずに、核酸領域検出技法中に選択的に増幅される。多重アッセイ系では、これは、好ましくは、本発明のアッセイ系を使用して分析される種々の核酸領域のユニバーサル増幅を使用することにより実施される。ユニバーサルプライマー配列は、単一のユニバーサル増幅反応で更に増幅することができるように、選択的増幅中又は選択的増幅後のいずれかにおいて、選択的に増幅される核酸領域に付加される。例えば、これらのユニバーサルプライマー配列は、選択的増幅プロセス中に核酸領域に付加してもよく、つまり、選択的増幅用のプライマーは、遺伝子座に隣接するユニバーサルプライマー配列を有する。或いは、ユニバーサル増幅配列を含むアダプターは、母体試料に由来する選択核酸の増幅及び単離後に、選択核酸の末端にアダプターとして付加することができる。
【0106】
1つの例示的な態様では、核酸は、目的染色体の選択領域及びユニバーサルプライマー結合部位に相補的な領域を含むプライマーを使用して、最初に母体試料から増幅される。初期選択的増幅の後、ユニバーサル増幅ステップを行って、分析する核酸領域の数を増加させる。このようにプライマー領域を初期増幅産物に導入することにより、分析、例えば配列決定の前又はその間に、選択核酸の全て又は一部のその後の制御されたユニバーサル増幅が可能になる。
【0107】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)中に見られるもの等のバイアス及び変動性が、DNA増幅中に導入される場合がある。増幅反応が多重化される場合、遺伝子座が、異なる割合又は効率で増幅される可能性がある。これは、プライマーのうちあるものは他のものよりも良好な効率(つまり、ハイブリダイゼーション)を有し、あるいはあるものは塩基組成のために特定の実験条件でより良好に機能するといった、多重化反応におけるプライマーの多様性に部分的に起因し得る。所与の遺伝子座のプライマーの各セットは、プライマー及びテンプレートDNAの配列構成、緩衝液条件、及び他の条件次第で挙動が異なる場合がある。多重アッセイ系のユニバーサルDNA増幅は、一般的に、より少ないバイアス及び変動性を導入すると考えられる。
【0108】
したがって、好ましい態様では、少数のサイクル(例えば、1~10回、好ましくは、3~5回)の選択的増幅又は核酸濃縮を多重混合物反応で実施し、その後、導入したユニバーサルプライマー結合部位を使用してユニバーサル増幅を実施する。ユニバーサルプライマーを使用するサイクル回数は様々であるが、好ましくは、少なくとも10サイクル、より好ましくは少なくとも5サイクル、更により好ましくは20サイクル以上である。1回又は数回の選択的増幅サイクルの後でユニバーサル増幅に移行することにより、特定の遺伝子座が他のものよりも高い比率で増幅するというバイアスが低減される。
【0109】
任意選択で、アッセイ系は、選択的増幅とユニバーサル増幅との間に、選択的増幅で特異的に増幅されないあらゆる過剰核酸を除去するステップを含んでもよい。
選択的増幅に由来する産物全体又は産物のアリコートを、ユニバーサル増幅に使用してもよい。増幅ステップでは、例えば、意図しないバイアス及び変動性が実験条件により導入されないことを保証するために、同じ条件又は異なる条件(例えば、ポリメラーゼ及び緩衝液等)を使用してもよい。加えて、プライマー濃度の変化を使用して、配列特異的増幅サイクルの回数を効果的に制限することができる。
【0110】
ある態様では、アッセイ系で使用されるプライマー又はアダプターのユニバーサルプライマー領域は、一般的なプライマー結合機序を使用して、多数の核酸を1つの容器中の1つの反応で同時に分析する従来の多重アッセイ法と互換性を持つように設計される。そのような「ユニバーサル」プライマー結合法は、卵子提供による妊娠に由来する母体試料に存在する核酸領域の量の効率的な大量分析を可能にし、異数性を決定するために、そのような母体試料内の核酸領域の存在の包括的な定量化を可能にする。
【0111】
そのようなアッセイ法の例には、限定するものではないが、Oliphantら、米国特許第7,582,420号明細書に記載のもの等の、様々な試料を同時に増幅及び/又は遺伝子型決定するために使用される多重化法が含まれる。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
幾つかの態様では、各プロセスの初期のオリゴヌクレオチドが、プロセスの後期のオリゴヌクレオチドにより使用される場合がある配列を含む、核酸配列を多重検出するための組合せ反応が使用される。試料中の核酸を増幅及び/又は検出するための例示的なプロセスは、単独で又は組み合わせて使用することができ、それらには限定ではないが、下述の方法が含まれ、それらの各々は、本発明のアッセイ系で使用することができる種々の要素を教示するために、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0113】
ある態様では、本発明のアッセイ系は、以下の選択的増幅技法及びユニバーサル増幅技法の組合せの1つを使用する:(1)PCRと組み合わせたLDR、(2)LDRと組み合わせた二次PCRと組み合わせた一次PCR、及び(3)二次PCRと組み合わせた一次PCR。本発明のこれらの態様の各々は、ある核酸特徴の検出に特定の応用可能性を有する。しかしながら、各々は、各プロセスの初期のオリゴヌクレオチドがプロセスの後期のオリゴヌクレオチドにより使用される場合がある配列を含む核酸配列の差異を多重検出するために、組合せ反応の使用を必要とする。
【0114】
Baranyらの米国特許第6,852,487号明細書、第6,797,470号明細書、第6,576,453号明細書、第6,534,293号明細書、第6,506,594号明細書、第6,312,892号明細書、第6,268,148号明細書、第6,054,564号明細書、第6,027,889号明細書、第5,830,711号明細書、第5,494,810号明細書には、様々な核酸サンプル中のヌクレオチドの特定の配列を検出するためのリガーゼ連鎖反応(LCR)アッセイの使用が記載されている。
【0115】
Baranyらの米国特許第7,807,431号明細書、第7,455,965号明細書、第7,429,453号明細書、第7,364,858号明細書、第7,358,048号明細書、第7,332,285号明細書、第7,320,865号明細書、第7,312,039号明細書、第7,244,831号明細書、第7,198,894号明細書、第7,166,434号明細書、第7,097,980号明細書、第7,083,917号明細書、第7,014,994号明細書、第6,949,370号明細書、第6,852,487号明細書、第6,797,470号明細書、第6,576,453号明細書、第6,534,293号明細書、第6,506,594号明細書、第6,312,892号明細書、及び第6,268,148号明細書には、核酸検出用のポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)と組み合わせた検出反応を用いたリガーゼ検出反応(「LDR」)の使用が記載されている。
【0116】
Baranyらの米国特許第7,556,924号明細書及び第6,858,412号明細書には、核酸検出用のリガーゼ検出反応(「LDR」)及びポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)と組み合わせた錠型(padlock)プローブ(「プレサークル(precircle)プローブ」又は「多反転(multi-inversion)プローブ」とも呼ばれる)の使用が記載されている。
【0117】
Baranyらの米国特許第7,807,431号明細書、第7,709,201号明細書、及び第7,198、814号明細書には、核酸配列の検出用のエンドヌクレアーゼ切断反応及びライゲーション反応の組合せの使用が記載されている。
【0118】
Willisらの米国特許第7,700,323号明細書及び第6,858,412号明細書には、多重核酸増幅、検出、及び遺伝子型決定でのプレサークルプローブの使用が記載されている。
【0119】
Ronaghiらの米国特許第7,622,281号明細書には、固有のプライマー及びバーコードを含むアダプターを使用して、核酸を標識及び増幅するための増幅技法が記載されている。
【0120】
種々の増幅技法に加えて、多数の配列決定法が、本発明のアッセイ系と互換性を持つ。好ましくは、そのような方法には、「次世代」配列決定法が含まれる。配列を決定するための例示的な方法には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:限定するものではないが、参照により組み込まれるDrmanacの米国特許第6,864,052号明細書、第6,309,824号明細書、及び第6,401,267号明細書、並びにDrmanacらの米国特許出願公開第2005/0191656号明細書に開示されているもの等のハイブリダイゼーションに基づく方法;合成による配列解読法、例えば、Nyrenらの米国特許第7,648,824号明細書、第7,459,311号明細書、及び第6,210,891号明細書、Balasubramanianの米国特許第7,232,656号明細書及び第6,833,246号明細書、Quakeの米国特許第6,911,345号明細書、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.,100巻:414~419頁(2003年);Ronaghiらの米国特許第7,648,824号明細書、第7,459,311号明細書、第6,828,100号明細書、及び第6,210,891号明細書に記載のピロリン酸配列決定法;及びライゲーションに基づく配列決定法、例えば、Drmanacらの米国特許出願公開第20100105052号明細書、及びChurchらの米国特許出願公開第20070207482号明細書及び第20090018024号明細書。
【0121】
或いは、目的の核酸領域は、ハイブリダイゼーション技法を使用して選択及び/又は特定することができる。検出のためのポリヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイを実施するための方法は、当技術分野で十分に開発されている。ハイブリダイゼーションアッセイ手順及び条件は、用途に依存して様々であり、以下に引用されているものを含む既知の一般的な結合方法に従って選択される:Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual (第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年);Berger及びKimmel、Methods in Enzymology,152巻、Guide to Molecular Cloning Techniques(Academic Press,Inc.、San Diego、Calif.、1987年);Young及びDavis、P.N.A.S,80巻:1194頁(1983年)。反復及び制御されたハイブリダイゼーション反応を実施するための方法及び装置は、米国特許第5,871,928号明細書、第5,874,219号明細書、第6,045,996号明細書、及び第6,386,749号明細書、第6,391,623号明細書に記載されている。
【0122】
また、本発明は、ある好ましい態様では、リガンド間のハイブリダイゼーションのシグナル検出を企図する。米国特許第5,143,854号明細書、第5,578,832号明細書、第5,631,734号明細書、第5,834,758号明細書、第5,936,324号明細書、第5,981,956号明細書、第6,025,601号明細書、第6,141,096号明細書、第6,185,030号明細書、第6,201,639号明細書、第6,218,803号明細書、及び第6,225,625号明細書、米国特許出願第60/364,731号明細書、及びPCT出願第PCT/US99/06097号(国際公開第99/47964号として公開)を参照されたい。
【0123】
シグナルを検出し、強度データを処理するための方法及び装置は、以下の文献に開示されている:例えば、米国特許第5,143,854号明細書、第5,547,839号明細書、第5,578,832号明細書、第5,631,734号明細書、第5,800,992号明細書、第5,834,758号明細書;第5,856,092号明細書、第5,902,723号明細書、第5,936,324号明細書、第5,981,956号明細書、第6,025,601号明細書、第6,090,555号明細書、第6,141,096号明細書、第6,185,030号明細書、第6,201,639号明細書;第6,218,803号明細書;及び第6,225,625号明細書、米国特許出願第60/364,731号明細書、PCT出願第PCT/US99/06097号(国際公開第99/47964号として公開)。
【0124】
本発明のアッセイ系でのインデックスの使用
ある態様では、目的核酸の全て又は一部は、記載されている技法、例えば配列決定又はハイブリダイゼーションを使用して直接検出される。しかしながら、ある態様では、目的核酸は、選択核酸領域又は分析される特定の試料について特定される1つ又は複数のインデックスと関付けられる。1つ又は複数のインデックスの検出は、選択核酸領域の代用検出機序として、又はインデックスの配列及び核酸領域自体の配列が両方とも決定される場合は特定の選択核酸領域の存在の確認としての役目を果たすことができる。これらのインデックスは、好ましくは、核酸領域に特異的にハイブリダイズする配列領域及びインデックスを両方とも含むプライマーを使用する増幅ステップ中に選択核酸と関連付けられる。
【0125】
1つの例では、核酸領域の選択的増幅に使用されるプライマーは、目的遺伝子座に相補的な領域とユニバーサル増幅プライマー結合部位との間に遺伝子座インデックスを提供するように設計される。遺伝子座インデックスは、各選択核酸領域に対して一意的であり、目的染色体又は参照染色体の遺伝子座を代表し、したがって、試料中の遺伝子座インデックスの定量化は、遺伝子座及び遺伝子座を含む特定の染色体の定量化データを提供する。
【0126】
別の例では、選択核酸領域の増幅に使用されるプライマーは、目的遺伝子座に相補的な領域とユニバーサル増幅プライマー結合部位との間に対立遺伝子インデックスを提供するように設計される。対立遺伝子インデックスは、選択核酸領域の特定の対立遺伝子に対して一意的であり、目的染色体又は参照染色体に存在する遺伝子座変異を代表し、したがって、試料中の対立遺伝子インデックスの定量化は、対立遺伝子の定量化データを提供し、特定の遺伝子座の対立遺伝子のインデックスの相対頻度は、遺伝子座及びその遺伝子座を含む特定の染色体の両方の定量化データを提供する。
【0127】
別の態様では、卵子提供による妊娠に由来する母体試料で分析される選択核酸領域の増幅に使用されるプライマーは、目的遺伝子座に相補的な領域とユニバーサル増幅プライマー結合部位との間に識別インデックスを提供するように設計される。そのような態様では、十分な数の識別インデックスが、試料中の各選択核酸領域を一意的に特定するために存在する。分析される各核酸領域は、一意的な識別インデックスと関連付けられ、したがって、識別インデックスは、選択核酸領域と一意的に関連付けられる。試料中の識別インデックスの定量化は、関連付けられた選択核酸領域の、及び選択核酸領域に対応する染色体の定量化データを提供する。また、識別遺伝子座は、試料からの選択核酸領域の初期単離の下流で生じるあらゆる増幅バイアスを検出するために使用することができる。
【0128】
ある態様では、遺伝子座インデックス及び/又は識別インデックス(存在する場合)のみが検出され、試料中の選択核酸領域を定量化するために使用される。別の態様では、各遺伝子座インデックスが一意的な識別インデックスと共に生じる回数を計数して、試料中の選択核酸領域の相対頻度を決定する。
【0129】
幾つかの態様では、核酸を単離する元となる試料を表すインデックスを使用して、多重アッセイ系で核酸の供給源を特定する。そのような態様では、核酸は、試料インデックスで一意的に特定される。その後、これらの一意的に特定されたオリゴヌクレオチドを、配列決定の前に、他の試料に由来する核酸を有する単一の反応容器に混合してもよい。各試料の各標的遺伝子座の頻度を決定する前に、及び各試料に染色体異常があるか否かを決定する前に、まず、配列決定データを、各一意的試料インデックスによって分別する。検出のために、試料インデックス、遺伝子座インデックス、及び識別インデックス(存在する場合)を配列決定する。
【0130】
インデックスを使用する本発明の態様では、選択的増幅プライマーは、好ましくは、識別用の情報を含むインデックスが、プライマーの一端又は両端にコードされるように設計される。或いは、インデックス及びユニバーサル増幅配列を、初期選択的増幅後の選択的増幅核酸に付加することができる。
【0131】
インデックスは、非相補的だが、プライマー内で使用される一意的な配列であり、プライマーを使用して単離及び/又は増幅された選択的核酸領域と関連する情報を提供する。この利点は、実際の配列自体の決定を必要とせずに、選択核酸領域の存在及び量に関する情報を得ることができるということであるが、ある態様では、そうすることが望ましい場合がある。しかしながら、一般的に、1つ又は複数のインデックスを特定することにより選択核酸領域を特定及び定量化する能力は、単離された選択核酸領域の3’又は5’末端に遺伝子座情報が捕捉されるため、必要とされる配列決定の長さを減少させるであろう。また、より長い配列決定解読はエラーをより導入しやすいため、選択核酸領域を特定するための代用物としてインデックス識別を使用すると、エラーを低減させることができる。
【0132】
遺伝子座インデックス、対立遺伝子インデックス、及び識別インデックスに加えて、更なるインデックスをプライマーに導入して、試料の多重化を支援することができる。例えば、実験エラー(例えば、増幅又は配列決定中に導入されるエラー)を特定する補正インデックスを使用して、アッセイ系での実験手順及び/又は検出方法での食い違いの可能性を特定することができる。これらのインデックスの順序及び場所、並びにこれらのインデックスの長さは様々であってもよく、それらは、種々の組合せで使用することができる。
【0133】
選択核酸領域の特定及び定量化に使用されるプライマーは、選択核酸領域の5’に相補的な領域と関連付けられてもよく、又はある増幅様式では、インデックスは、選択核酸領域の配列に相補的な配列を含む1セットの増幅プライマーの一方又は両方に存在していてもよい。プライマーは、試料内で分析される複数の選択核酸領域の分析を多重化するために使用することができ、溶液中又は固体基材上のいずれかで、例えば、マイクロアレイ又はビーズで使用することができる。これらのプライマーは、線形複製又は増幅に使用してもよく、又はそれらは、更なる分析のために環状構築物を生成してもよい。
【0134】
試料内及び試料間の変動最小化
卵子提供による妊娠に由来する母体試料中の染色体異常を検出する場合の1つ問題は、多くの場合、推定上の染色体異常を有する細胞タイプに由来するDNAが、正常細胞タイプに由来するDNAよりも遥かに低い含有量で存在するということである。胎児無細胞DNA及び母体無細胞DNAを含む混合母体試料の場合、総無細胞DNAに対する無細胞胎児DNAの割合は、1パーセント未満から40パーセントまでの範囲で変動し得、最も一般的には20パーセント以下、多くの場合10パーセント以下で存在する。そのような混合母体試料の胎児DNAの21番染色体トリソミー(ダウン症候群)等の異数性の検出では、21番染色体の相対的増加は、胎児DNAで50%であり、したがって、母体試料中の全DNAに対する割合としては、一例として胎児DNAが全体の5%である場合、21番染色体の増加は、合計に対する割合では2.5%である。本明細書に記載の方法によりこの違いを確実に検出しようとする場合、21番染色体の測定における変動は、21番染色体の増加パーセントよりも遥かに小さくなければならない。
【0135】
試料間及び/又は試料内の核酸領域に見出されるレベル間の変動は、分析法の組合せで最小化することができ、それらの多くは本願に記載されている。例えば、変動は、アッセイで内部標準を使用することにより減少する。内部標準の一例は、「正常」量で存在する染色体(例えば、常染色体の二染色体)を使用して、異数性等の、同じ試料中に異常量で存在すると推定される染色体と比較することである。1つのそのような「正常」染色体を参照染色体として使用することで十分である場合があるが、多数の正常染色体を内部標準染色体として使用して、定量化の統計的能力を高めることも可能である。
【0136】
内部標準を使用する1つの方法は、染色体比と呼ばれる、試料中の正常染色体の存在量に対する推定異常染色体の存在量の比率を算出することである。染色体比の算出では、各染色体の核酸領域の各々の存在量又は計数を定量化して、各染色体の総計数を算出する。その後、1つの染色体の総計数を、異なる染色体の総計数で除算して、それら2つの染色体の染色体比を生成する。
【0137】
或いは、各染色体の染色体比は、まず、各染色体の核酸領域の各々の相対頻度を定量化(例えば、加算)し、次に、1つの染色体の相対頻度を、2つ以上の染色体の相対頻度と比較する(例えば、1つの染色体の合計を2つ以上の染色体の合計で除算する)ことにより算出することができる。算出したら、その後、染色体比を、正常集団の平均染色体比と比較する。
【0138】
平均は、相加平均、中央値、最頻値、又は他の平均であってもよく、正規化及び外れ値データを排除をしてもよく、又はしなくともよい。好ましい態様では、相加平均が使用される。正常集団の染色体比のデータセットを開発する際に、測定された染色体の正常変動が算出される。この変動は、様々な様式で、最も典型的には変動係数又はCVとして表すことができる。試料の染色体比を正常集団の平均染色体比と比較して、試料の染色体比が統計的に正常集団の平均染色体比から外れる場合、試料は異数性を含む。異数性と判定するための統計閾値を設定するための基準は、所望のアッセイでの染色体比測定の変動及び許容される偽陽性率及び偽陰性率に依存する。一般的に、この閾値は、染色体比に見られる変動の倍数であってもよい。1つの例では、この閾値は、染色体比の変動の3倍以上である。別の例では、この閾値は、染色体比の変動の4倍以上である。別の例では、この閾値は、染色体比の変動の5倍以上である。別の例では、この閾値は、染色体比の変動の6倍以上である。上記の例では、染色体比は、染色体により核酸領域の相対頻度を決定することにより(例えば、計数を合計することにより)推定される。典型的には、各染色体について同数の核酸領域が使用される。染色体比を生成するための代替法には、各染色体の核酸領域の平均相対頻度を算出することがある。平均は、相加平均値、中央値、最頻値の任意の推定値であってもよいが、典型的には、平均が使用される。平均は、全ての相対頻度の相加平均、又はトリム平均又は加重平均等の幾つかのバリエーションであってもよい。各染色体の平均相対頻度を算出したら、各染色体の平均相対頻度を他の染色体と比較して、2つの染色体間の染色体比を得ることができ、各染色体の平均相対頻度を、測定した染色体全ての相対頻度と比較して、上述のように各染色体の染色体比を得ることができる。上記で強調されているように、推定DNAの存在量が相対的に低い卵子提供による妊娠に由来する母体試料中で異数性を検出する能力は、アッセイで様々な核酸領域を測定する際の変動に大きく依存する。この変動を低減し、したがってこの異数性検出法の感受性を向上させる多数の分析法を使用することができる。
【0139】
アッセイの変動性を低減するための1つの方法は、染色体の存在量を算出するために使用される核酸領域の数を増加させることである。一般的に、染色体の単一核酸領域の測定された変動がX%であり、Y個の異なる核酸領域が同じ染色体で測定される場合、その染色体の各核酸領域の存在量を合計又は平均することにより算出される染色体存在量の測定値の変動は、おおよそ、X%÷Y1/2になるであろう。言い換えれば、染色体存在量の測定値の変動は、おおよそ、各核酸領域の存在量の測定値の平均変動量を核酸領域の数の平方根で除算したものになろう。
【0140】
本発明の好ましい態様では、各染色体で測定される核酸領域の数は、少なくとも24個である。本発明の別の好ましい態様では、各染色体で測定される核酸領域の数は、少なくとも48個である。本発明の別の好ましい態様では、各染色体で測定される核酸領域の数は、少なくとも100個である。本発明の別の好ましい態様では、各染色体で測定される核酸領域の数は、少なくとも200個である。各核酸領域の測定には増分原価があり、したがって、各核酸領域の数を最小限に抑えることが重要である。本発明の好ましい態様では、各染色体で測定される核酸領域の数は、2000個未満である。本発明の別の好ましい態様では、各染色体で測定される核酸領域の数は、1000個未満である。本発明の最も好ましい態様では、各染色体で測定される核酸領域の数は、少なくとも48個であり、1000個未満である。1つの態様では、各核酸領域の存在量を測定した後、核酸領域のサブセットを使用して、異数性の有無を決定することができる。核酸領域のサブセットを選択するための標準的方法が多数存在する。これらの方法は、外れ値を排除することを含み、ある百分位数未満及び/又はある百分位数を超える検出レベルを示す核酸領域は、分析から排除される。1つの態様では、百分位数は、存在量で測定して、低い方及び高い方から5%であってもよい。別の態様では、百分位数は、存在量で測定して、低い方及び高い方から10%であってもよい。別の態様では、百分位数は、存在量で測定して、低い方及び高い方から25%であってもよい。
【0141】
核酸領域のサブセットを選択する別の方法は、何らかの統計範囲から外れる領域を排除することを含む。例えば、相加平均存在量の1標準偏差又はそれ以上から外れる領域は、分析から取り除かれてもよい。核酸領域のサブセットを選択する別の方法は、核酸領域の相対存在量を、健常集団の同じ核酸領域の予測存在量と比較し、期待基準を満たさないあらゆる核酸領域を排除することであってもよい。アッセイにおける変動を更に最小限に抑えるために、各核酸領域を測定する回数を増加させてもよい。説明したように、ゲノムが平均で1回未満しか測定されない、異数性を検出するための無作為法とは対照的に、本発明のアッセイ系では、各核酸領域を意図的に複数回測定する。一般的に、事象を計数する場合、計数における変動はポアソン統計により決定され、計数変動は、典型的には、計数回数の平方根の逆数と等しい。本発明の好ましい態様では、核酸領域は各々、平均で少なくとも100回測定される。本発明の好ましい態様では、核酸領域は各々、平均で少なくとも500回測定される。本発明の好ましい態様では、核酸領域は各々、平均で少なくとも1000回測定される。本発明の好ましい態様では、核酸領域は各々、平均で少なくとも2000回測定される。本発明の好ましい態様では、核酸領域は各々、平均で少なくとも5000回測定される。
【0142】
別の態様では、遺伝子座のサブセットは、染色体異常が存在するか否かを決定する統計的に有意な結果をもたらすのに十分な回数を使用して、無作為に選択することができる。遺伝子座の異なるサブセットの分析を、母体試料内で複数回実施して、より高い統計能力をもたらすことができる。この例では、無作為分析の前に任意の遺伝子座を除去又は排除することは、必須であってもなくてもよい。例えば、21番染色体に100個の選択領域があり、18番染色体に100個の選択領域がある場合、染色体の各々について100個未満の領域を評価する一連の分析を実施することができる。
【0143】
アッセイの変動を低減するための上記の方法に加えて、他の分析技法を組み合わせて使用してもよく、それらの多くは、本願に上述されている。一般的に、各試料の核酸領域を全て単一容器の単一反応中で調査すると、アッセイの変動を低減することができる。同様に、ユニバーサル増幅系を使用すると、アッセイの変動を低減させることができる。更に、増幅のサイクル数を制限すると、アッセイの変動を低減することができる。
【0144】
異数性検出を最適化するための胎児無細胞DNA割合の使用
胎児無細胞DNA割合を算出したら、このデータを、異数性検出法と組み合わせて、母体試料が異数性を含む尤度を決定することができる。1つの態様では、以下の文献に記載されているもの等の、無作為DNAセグメントの分析を使用する異数性検出法が使用される:例えば、Quakeの米国特許出願第11/701,686号明細書;Shoemakerらの米国特許出願第12/230,628号明細書。好ましい態様では、選択核酸領域の分析を使用する異数性検査法が使用される。この態様では、試料の胎児無細胞DNA割合が算出される。その試料の染色体比、正常集団の染色体比、及び正常集団の染色体比の変動は、本明細書に記載のように決定される。
【0145】
1つの好ましい態様では、正常集団の染色体比及びその変動は、同様の割合の胎児DNAを有する正常試料から決定される。胎児無細胞DNA割合が算出されたDNA試料中の予測される異数性染色体比は、異数性染色体の寄与割合を加えることにより算出することができる。その後、試料の染色体比を、正常集団の染色体比と及び予測される異数性染色体比と比較し、染色体比の変動を使用して統計的に決定し、試料が正常又は異数性のどちらである可能性がより高いか、及びそれらのどちらかとなる統計的確率を決定することができる。
【0146】
好ましい態様では、単一の反応で胎児染色体異常を検出するために、卵子提供による妊娠に由来する母体試料の選択領域は、胎児DNA含有量を決定するための領域と、2つ以上の染色体に由来する非多型領域との両方を含む。アッセイ系の様々なステップの最中に導入され得る夾雑物又はバイアスは、染色体異常の有無の決定を支援するのに胎児DNA含有量を使用する場合に結果を歪める可能性があるが、単一の反応はそのような夾雑物又はバイアスのリスクを最小化するのを支援する。
【0147】
他の態様では、1つ又は複数の選択領域を、胎児核酸含有量の決定並びに胎児染色体異常の検出の両方に使用することができる。選択領域の対立遺伝子を使用して、胎児DNA含有量を決定することができ、その後、同じ選択領域を使用し、対立遺伝子情報を無視して、胎児染色体異常を検出することができる。胎児DNA含有量及び染色体異常検出の両方に同じ領域を使用することにより、実験エラー又は夾雑物によるあらゆるバイアスの最小化を更に支援することができる。
【0148】
ある態様では、胎児無細胞DNA割合は、胎児異数性の有無の決定の品質管理ツールとして使用することができる。卵子提供による妊娠での母体試料中の胎児無細胞DNA割合の決定は、該当する場合、試料に対して、どのような分析を更に実施することができるかを決定するための機序を提供することができる。幾つかの母体試料では、試料中の胎児無細胞DNAのレベルは低く、幾つかの場合では非常に低いため、その試料に対して、胎児異数性の有無を決定する分析等の特定の分析を信頼性を持って実施することができない。
【0149】
21番染色体トリソミーの場合等の胎児異数性では、胎児DNAの21番染色体の相対的増加は、21番二染色体と比較して50%である。一例として、胎児DNAが試料中の全DNAの5%である場合の母体試料中の全DNAに対する割合としては、21番染色体の増加は、全体に対する割合で2.5%である。試料中の胎児無細胞DNA割合のレベルが低くなるにつれて、試料中の全DNAに対する割合としての21番染色体の増加量は減少し、検出するのが難しくなる場合がある。胎児異数性の有無の正確な決定を確実にするために、胎児無細胞DNA割合の閾値レベルを、品質管理ツールとして使用することができる。「閾値レベル」は、試料への更なる分析の実行を許容できると考えられる胎児無細胞DNAの最低レベルであり、例えば、閾値レベル以上の胎児無細胞DNAレベルを有する卵子提供による妊娠に由来する母体試料のみが、胎児異数性の有無の決定に使用される。閾値レベルは、胎児割合を決定する前に設定された所定のレベルでもよく、又は検査性能の分析及び/又は胎児異常に関する所望の検査の更なる分析後に設定してもよい。
【0150】
卵子提供による妊娠に由来する母体試料の分析に閾値レベルを使用することにより、試料分析の品質及び信頼性を確保するための基準が提供される。ある特定の例では、胎児異数性の有無の尤度は、閾値レベル以上の胎児無細胞DNAを含むことを実証可能な試料で決定することができる。
【0151】
ある態様では、母体試料中の胎児無細胞DNA割合の計算は、胎児異数性の有無の決定前に実施してもよい。これらの態様では、胎児無細胞DNA割合が、その閾値を満たさない場合、試料を更なる分析にかけるべきでないという決定を下すことができる。或いは、試料の更なる分析を実施してもよいが、結果は、使用しなくともよく又は信頼性が低いと特徴付けてもよい。ある態様では、母体試料中の胎児無細胞DNA割合の計算は、胎児異数性の有無の決定と同時に実施してもよい。これらの態様では、試料中の胎児無細胞DNAが閾値未満である場合、胎児異数性の有無の決定は、使用しなくともよく又は信頼性が低いと特徴付けてもよい。
【0152】
ある態様では、母体試料中の胎児無細胞DNAの閾値レベルは、1~5%胎児無細胞DNA、例えば1.5%~4.5%胎児無細胞DNA、又はより具体的には2%~4%胎児無細胞DNAであってもよい。ある特定の態様では、胎児無細胞DNA割合の閾値レベルは、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5又は5.0%胎児無細胞DNAであってもよく、又はこれらの間に含まれる任意の数であってもよい。
【0153】
遺伝子突然変異の検出
ある態様では、本発明のアッセイ系は、特定の目的遺伝子座における胎児異数性及び他の遺伝子変化(染色体異常を含む)を両方とも検出する。そのような更なる遺伝子変化には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:欠失突然変異、挿入突然変異、コピー数多型、コピー数変異、染色体22q11欠失症候群、11番染色体の11q欠失症候群、及び8番染色体の8p欠失症候群等。一般的に、同じ又は別々の染色体に存在する少なくとも2つの標的核酸配列が分析され、標的配列の少なくとも1つが、胎児対立遺伝子異常と関連する。その後、2つの標的配列の配列及び2つの標的配列のコピーの数を比較して、染色体異常が存在するか否かを判断し、存在する場合は、異常の性質を決定する。
【0154】
本明細書に含まれている記載の多くには、1つ又は複数の推定上の異数性染色体の核酸領域の存在量、及び1つ又は複数の正常染色体の核酸領域の存在量を計数することによる異数性を検出が記載されているが、同じ技法を使用して、染色体の一部にのみ生じるコピー数変異を検出することができる。このコピー数変異の検出では、推定上のコピー数変異位置内の複数の核酸領域を、推定上のコピー数変異位置の外側の複数の核酸領域と比較する。その後、異数性について記載されている本発明の他の態様を、コピー数変異の検出に使用してもよい。例えば、22q11欠失内の2つ以上の核領域及び22q11欠失の外側の2つ以上の核酸領域を選択することにより、混合母体試料で胎児の染色体22q11欠失症候群を検出することができる。22q11欠失の外側の核酸領域は、22番染色体の別の領域にあってもよく、又は全く異なる染色体にあってもよい。各核酸領域の存在量は、本願に記載の方法により決定される。
【0155】
その後、欠失内の核酸領域を定量化して相対頻度を決定し、欠失の外側の核酸領域も同様に決定する。その後、これらの相対頻度を互いに比較して、欠失の有無を決定する。任意選択で、相対頻度を比率にし、その比率を、正常集団から生成した平均比率と比較してもよい。試料の比率が、統計的に期待比率から外れる場合、欠失が検出される。欠失を検出するための閾値は、正常集団で算出される変動の4倍以上であってもよい。
【0156】
他の胎児検出法の使用
本発明のある態様では、本発明の方法は、他の既知リスク要因(例えば、母体年齢、家族歴、母系又は父系の遺伝情報)の検出、及び/又は好ましくは他の比較的非侵襲性の胎児異常の診断機序(例えば、母体試料中の1つ又は複数の生化学的マーカーの測定、及び/又は超音波スキャンでの測定又は構造検出)を用いる、胎児異常を検出するための手段と共に使用することができる。これらのリスク要因及び診断機序と本発明の方法との併用は、胎児異常、特にトリソミー等の既知の遺伝子突然変異の有無のリスク決定の向上を提供することができる。
【0157】
したがって、幾つかの好ましい態様では、本発明のアッセイ系で得られる結果は、リスク要因の生化学的検出、リスク要因の超音波検出、又は胎児異常の他のリスク決定因子の結果と併用される。
【0158】
幾つかの特定の態様では、本発明のアッセイ系で得られる結果は、胎児異常のリスク増加に関連する生化学的マーカーの検出と併用される。生化学的マーカーは、母体の血液、血清、血漿、又は尿を含む試料に基づいて決定することができる。そのような生化学的マーカーには、限定するものではないが、以下のものが含まれる:遊離ベータhCG、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPP-A)、母体血中アルファ-フェトプロテイン、母体血中hCG、母体血中非抱合型エストリオール、母体血中二量体インヒビンA、母体尿中全エストリオール、母体尿中βコアフラグメント、母体尿中高度グリコシル化hCG、母体血中高度グリコシル化hCG、及びインヒビンA(好ましくは二量体インヒビンA)。幾つかの態様では、更なる評価機序は、Orlandiら米国特許第7,315,787号明細書、又はWaldら米国特許第6,573,103号明細書に記載されているもの等の、多マーカー分析である。これら及び他のマーカーの存在及び/又はレベルの検出を、本発明のアッセイ系の結果と組み合わせて、最終結果を患者に提供することができる。
【0159】
他の特定の態様では、本発明のアッセイ系で得られる結果は、限定するものではないが、以下のものを含む超音波画像から得られる結果と併用される:項部透過性(NT)肥厚又は浮腫、項部ひだの厚さ、静脈系の異常(静脈管、門脈、肝静脈、及び下大静脈を含む)、鼻骨の不在又は形成不全、大腿骨長、上腕骨長、高エコー源性腸管、腎盂拡張症、心臓の点状高エコー、胎児心拍数、及びある種の心臓異常。特定の態様では、胎児異常の更なる評価は、米国特許第7,780,600号明細書及び第7,244,233号明細書に記載のように、形状分析により実施される。特定の態様では、更なる評価は、米国特許第7,343,190号明細書に記載のように、画像に基づく目標物の決定に基づく。これら及び他の物理的パラメータの検出を、本発明のアッセイ系の結果と組み合わせて、最終結果を患者に提供することができる。
【0160】
ほとんどのスクリーニングマーカー及び物理的特徴は、在胎月齢とともに変動することが知られている。この変動を考慮に入れるために、各マーカーレベルを、同じ在胎月齢の健常妊娠の中央値レベル(MoM)の倍数で表してもよい。特に、超音波スキャンから導き出されるマーカーの場合、頭殿長(CRL)測定又は大横径(BPD)測定は、在胎月齢の代替尺度である。MoMは、母体の体重、人種、糖尿病の状態、及び妊娠胎児数等の、マーカーレベルに影響を及ぼすことが知られている要因を考慮する既知の方法で調節してもよい。
【0161】
上記技法の使用は、単一の妊娠段階で実施してもよく、又は2つ以上の異なる妊娠段階で連続して取得してもよい。また、これらのマーカーレベルを、母体の年齢、体重、人種等の母体の変数と組み合わせて解釈して、推定リスクを導き出してもよい。リスクの推定は、標準的統計手法を使用して実施される。例えば、Wald NJら、BMJ(1992年);305巻(6850号):391~4頁;Wald NJら、(1988年)BMJ 297巻:883~887頁、及びRoyston P、Thompson SG Stat Med.(1992年)11巻(2号):257~68頁に、公知の方法が記載されている。
【0162】
卵子提供による妊娠に由来する母体試料中の他の因子又はリスク要因の検出
ある態様では、本発明のアッセイ系の多重的性質を考慮すると、本アッセイを使用して、被験者の健康にリスクをもたらし得るか、他の様式で被験者の治療又は予後に関する臨床判断に影響を及ぼし得る他の核酸を検出することが有益な場合がある。そのような核酸には、限定するものではないが、母体又は胎児の健康にリスクを示すことが知られている母体の対立遺伝子、多型、又は体細胞突然変異等の、疾患又はリスクの指標が含まれ得る。そのような指標には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:Rh状態に関連する遺伝子;糖尿病、高脂血症、高コレステロール血症、鎌状赤血球性貧血、血友病、又はサラセミア等の血液疾患、心臓状態等の疾患に関連する突然変異又は多型;活性又は潜在性の感染に関連する外来性核酸;自己免疫障害又は悪性疾患(例えば、乳癌)、又は被験者に、特に、アッセイ結果の成績に基づき被験者の治療及び/又は健康リスクの予防に使用可能であり得る臨床選択肢に影響を及ぼす場合がある任意の他の健康問題に関連する体細胞突然変異又はコピー数変異。
【0163】
したがって、本発明の好ましいアッセイ系は、高度に多重化されており、母体試料内の数百又は数千個もの核酸を調査することができるため、ある態様では、母体試料内の核酸マーカー、例えば、遺伝的リスクに関連する核酸又は感染性生物の有無を特定する核酸について試料を調査するのが望ましい。したがって、ある態様では、アッセイ系は、母体試料内のコピー数を決定するための核酸の検出と共に、そのような核酸の検出を提供する。
【0164】
例えば、卵子提供による妊娠に由来するある母体試料、自己免疫疾患を有する被験者に由来する試料、及び化学療法を受けている患者に由来する試料では、被験者の免疫抑制が、被験者の免疫系の変化に起因する疾患のリスクを増加させる場合がある。母体試料中の外来性因子の検出は、感染因子との接触及び感染因子による感染を示す場合があり、この知見は、被験者がそのような感染因子の検査に陽性を示す感染症の患者ケア又は患者管理に影響を及ぼす。
【0165】
具体的には、妊娠中の免疫学的及び生理学的変化は、妊娠女性を、感染症に対してより感受性にするか、又はより重症の感染症に罹患させる場合がある。実際、妊娠それ自体が、トキソプラズマ症、ハンセン病、及びリステリア症等の、ある種の感染症に罹患するリスク要因であり得る。加えて、免疫系が抑制された妊娠女性又は被験者の場合、インフルエンザ及び水痘等のある種の感染症は、より重症の臨床経過、合併症率の増加、及びより高い致死率を示す場合がある。したがって、感染症因子の特定は、妊娠中の母体疾患のより良好な治療を可能にし、母体及び胎児の両方のより良好な全体的転帰に結び付く場合がある。
【0166】
加えて、ある感染因子は、垂直感染により胎児に移る場合があり、つまり、母から子に感染が広がる場合がある。これらの感染は、胎児がまだ子宮にいる間に、分娩中に、又は出産後(授乳中等)に、生じ得る。
【0167】
したがって、幾つかの好ましい態様では、アッセイ系は、母体、胎児、又は新生児の健康を守るために、外来性配列、例えば、胎児又は新生児の健康及び/又は生存能力に有害な効果を示す場合がある感染性生物に由来する配列を検出することを含むことができる。
【0168】
垂直感染により広がる場合があり、本発明のアッセイ法を使用して検査することができる例示的な感染症には、限定するものではないが、先天性感染症、周産期感染症、及び生後感染症が含まれる。
【0169】
先天性感染症は、胎盤を越えることにより子宮内で胎児に移る。多くの感染性微生物が先天性感染症の原因となり得、胎児の発育上の問題、又は更には死亡を引き起こす場合がある。TORCHは、より一般的な先天性感染症の幾つかの頭字語である。それらは、トキソプラズマ症(toxoplasmosis)、他の感染症(other infections)(例えば、梅毒、B型肝炎、コクサッキーウイルス、エプスタイン-バーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(水痘)、及びヒトパルボウイルスB19株(第五病))、風疹(rubella)、サイトメガロウィルス(cytomegalovirus)(CMV)、及び単純ヘルペスウィルス(herpes simplex virus)である。
【0170】
周産期感染症は、赤ん坊が、出産中に感染した産道又は糞便による汚染物を通って移動する際に生じる感染を指す。これらの感染症には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:性行為感染症(例えば、淋病、クラミジア、単純ヘルペスウィルス、ヒトパピローマウイルス等)、CMV、及びB群連鎖球菌(GBS)。
【0171】
出産後に母から子に移る感染症は、生後感染症として知られている。これらの感染症は、母親の母乳中に見られる感染性微生物を介して、授乳中に広がる場合がある。生後感染症の幾つかの例は、CMV、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、及びGBSである。
【0172】
実施例
以下の例は、本発明を実施及び使用する方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために示されており、本発明者らが自らの発明であるとするものの範囲を限定するためのものではなく、下記の実験が、実施された実験の全てであること又は実施した唯一の実験であることを示し又は示唆するためのものでもない。広く記載されている本発明の趣旨又は範囲から逸脱せずに、特定の態様で示されている本発明に、数々の変更及び/又は改変をなすことができることは、当業者であれば理解するであろう。したがって、本態様は、あらゆる点で例示的なものであり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0173】
本発明の方法を使用して胎児寄与割合を特定する効率及び精度は、下記の実施例に示されており、本方法は、24人の群で、混合試料中の各個人の寄与割合を正確に決定した。
実施例1:被験者及び試料
被験者は、治験審査委員会により承認されたプロトコールに従って、インフォームドコンセントを行った上で、予め登録されていた。被験者は、少なくとも18歳であることが必要とされた。第1の人種集団の8人及び第2の人種集団の8人からなる16人の登録被験者のサブセットを、この研究に含めるために選択した。母体試料が、他方の遺伝子情報のおよそ半分を共有しない2人の別々の個人に由来するDNAを含む、卵子提供による妊娠に由来する混合試料を模倣するために、第1の人種集団の1人及び第2の人種集団の1人に由来する血漿を含む混合試料を調製した。個人の各ペアについて、第1の人種集団の個人に由来する血漿の100%、95%、90%、85%、15%、10%、5%、及び0%の容積割合で試料を混合した。
【0174】
実施例2:非血縁者の寄与割合を評価するための多型遺伝子座の分析
混合試料中の各個人の寄与割合を評価するために、1~12番染色体にある一連の192個のSNP含有遺伝子座に対して、1つの塩基が異なる2つの中間オリゴを使用して各SNPが調査されるアッセイを設計した。SNPは、HapMap3データセットの低対立遺伝子頻度に最適化した。Duanら、Bioinformation、3巻(3号):139~41頁(2008年);Epub 2008年11月9日。
【0175】
オリゴヌクレオチドは、IDT(Integrated DNA Technologies社、コーラルビル、アイオワ州)が合成し、一緒にプールして、単一の多重アッセイプールを生成した。各混合試料からアッセイ産物を生成し、混合試料に由来する産物をプールして、TruSeq v2フロースライド(Illumina社、サンディエゴ、カリフォルニア州)の単一レーンでのクラスター増幅用のテンプレートとして使用した。スライドをIllumina HiSeq 2000で処理して、平均1.18Mの粗配列解読/試料を生成した。平均1.15Mの解読には、3個未満のミスマッチがあり、予測されたアッセイ構成は、平均854解読/遺伝子座/試料をもたらした。
【0176】
混合試料の第1の個人の少なくとも1つの対立遺伝子が、混合試料の第2の個人の対立遺伝子と異なる遺伝子座を、情報を含む多型遺伝子座と定義した。アッセイは99%を超える対立遺伝子特異性を示すため、卵子提供者の情報を含む遺伝子座は、割合がより低い個人の遺伝子座の対立遺伝子割合が1~20%であると測定された時に容易に特定された。比較目的のために、2セットの卵子提供者情報を含む遺伝子座を使用して、混合試料のアッセイを分析した。本明細書では「非同一ホモ接合型非包括的寄与割合」セットと呼ぶ第1のセットの遺伝子座では、二項分布モデルを使用して、第1の個人に由来する対立遺伝子がホモ接合型であり、第2の個人に由来する対立遺伝子がホモ接合型であるが、第1の個人に由来する対立遺伝子が、第2の個人に由来する対立遺伝子とは異なる場合(これはアッセイの少なくともかなり部分である)を検討から除外した。本明細書では「非同一ホモ接合型包括的寄与割合」セットと呼ぶ第2のセットの遺伝子座では、卵子提供者情報を含む遺伝子座を、アッセイプールから除外しなかった。両セットの遺伝子座について、同時係属中の出願第61/509,188号に記載のように、二項分布を使用して最大尤度を推定し、幾つかの卵子提供者情報を含む遺伝子座の測定に基づいて、最も可能性の高い胎児割合を決定した。結果は、Chu及び同僚ら(Chuら、Prenat.Diagn、30巻:1226~29頁(2010年))により示されている加重平均手法で十分な相関性を示した(R2>0.99)。
【0177】
実施例3:結果
図3は、非同一ホモ接合型包括的寄与割合セット及び非同一ホモ接合型非包括的寄与割合セットの推定寄与割合比較のグラフである。非同一ホモ接合型包括的寄与割合セットは、更なる多型対立遺伝子の存在が検出されるため、非同一ホモ接合型非包括的寄与割合セットよりも高い推定寄与割合を推定すると予想された。本方法の検出限界(およそ3.5%)未満の試料を除いて、非同一ホモ接合型非包括的寄与割合セットの分析は、非同一ホモ接合型包括的寄与割合セットの分析よりも低い推定胎児割合を示した。
【0178】
実施例4:性能検証 被験者及び試料
被験者は、治験審査委員会により承認されたプロトコールに従って、インフォームドコンセントを行った上で、予め登録されていた。被験者は、少なくとも18歳であることが必要とされた。4人の女性及び4人の男性からなる8人の登録被験者のサブセットを、この研究に含めるために選択した。胎児が男性である卵子提供による妊娠に由来する混合試料を模倣するために、1人の女性及び1人の男性に由来する血漿を含む混合試料を調製した。各女性-男性ペアについて、女性に由来する血漿の100%、95%、90%、85%、15%、10%、5%、及び0%の容積割合で試料を混合した。
【0179】
実施例5:非血縁者の寄与割合を評価するための多型遺伝子座の性能検証分析
混合試料中の各個人の寄与割合を評価するために、1~12番染色体にある一連の192個のSNP含有遺伝子座に対して、1つの塩基が異なる2つの中間オリゴを使用して各SNPが調査されるアッセイを設計した。SNPは、HapMap3データセットの低対立遺伝子頻度に最適化した。Duanら、Bioinformation、3巻(3号):139~41頁(2008年);Epub 2008年11月9日。
【0180】
オリゴヌクレオチドは、IDT(Integrated DNA Technologies社、コーラルビル、アイオワ州)が合成し、一緒にプールして、単一の多重アッセイプールを生成した。各混合試料からアッセイ産物を生成し、8つの混合試料に由来する産物をプールして、TruSeq v2フロースライド(Illumina社、サンディエゴ、カリフォルニア州)の単一レーンでのクラスター増幅用のテンプレートとして使用した。スライドをIllumina HiSeq 2000で処理して、平均1.18Mの粗配列解読/試料を生成した。平均1.15Mの解読には、3個未満のミスマッチがあり、予測されたアッセイ構成は、平均854解読/遺伝子座/試料をもたらした。
【0181】
混合試料の第1の個人の少なくとも1つの対立遺伝子が、混合試料の第2の個人の対立遺伝子と異なる遺伝子座を、情報を含む多型遺伝子座と定義した。アッセイは99%を超える対立遺伝子特異性を示すため、卵子提供者情報を含む遺伝子座は、割合がより低い個人の遺伝子座の対立遺伝子割合が1~20%であると測定された時に容易に特定された。比較目的のために、2セットの卵子提供者情報を含む遺伝子座を使用して、混合試料のアッセイを分析した。本明細書では胎児割合関連セットと呼ぶ第1のセットの遺伝子座では、二項機能性を使用して、第1の個人に由来する対立遺伝子がホモ接合型であり、第2の個人に由来する対立遺伝子がホモ接合型であるが、第1の個人に由来する対立遺伝子が、第2の個人に由来する対立遺伝子とは異なるアッセイを検討から除外した。本明細書では胎児割合無関連セットと呼ぶ第2のセットの遺伝子座では、卵子提供者情報を含む遺伝子座を、アッセイプールから除外しなかった。両セットの遺伝子座について、同時係属中の出願第61/509,188号に記載のように、二項分布を使用して最大尤度を推定して、幾つかの卵子提供者情報を含む遺伝子座の測定に基づいて、最も可能性の高い胎児割合を決定した。結果は、Chu及び同僚ら(Chuら、Prenat.Diagn、30巻:1226~29頁(2010年))により示されている加重平均手法で十分に相関性を示した(R2>0.99)。
【0182】
実施例6:非血縁者の寄与割合を評価するための性染色体上の遺伝子座の性能検証分析
多型遺伝子座を使用した寄与割合の推定を検証するために、混合試料中の各個人の性染色体上の遺伝子座を分析することにより寄与割合を推定し、両推定の結果を比較した。アッセイは、性染色体で設計した一連の8個のアッセイに対して設計し、他のアッセイは、13、18、及び21番染色体で設計した。
【0183】
オリゴヌクレオチドは、IDT(Integrated DNA Technologies社、コーラルビル、アイオワ州)が合成し、一緒にプールして、単一の多重アッセイプールを生成した。各混合試料からアッセイ産物を生成し、混合試料に由来する産物をプールして、TruSeq v2フロースライド(Illumina社、サンディエゴ、カリフォルニア州)の単一レーンでのクラスター増幅用のテンプレートとして使用した。スライドをIllumina HiSeq 2000で処理して、平均1.18Mの粗配列解読/試料を生成した。平均1.15Mの解読には、3個未満のミスマッチがあり、予測されたアッセイ構成は、平均854解読/遺伝子座/試料をもたらした。
【0184】
Y(FPY)を使用した未正規化寄与割合は、13、18、及び21番染色体のアッセイの中央値計数と比較したYアッセイの中央値計数を使用して推定した。
【0185】
【0186】
Yを使用した寄与割合は正規化されていないため、多型アッセイを使用した推定寄与割合は、強い相関性を示すであろうが同一にはならないことが予測された。
実施例7:性能検証結果
図4A~Cは、75%、80%、85%、90%、及び95%の女性由来血漿を含む混合試料について、多型アッセイ及び性染色体アッセイの両方を使用して推定寄与割合を比較した棒グラフである。これらの例の各々では、各混合試料の推定値は同一ではないが、多型アッセイを使用した寄与割合推定値と性染色体アッセイを使用した推定値との間には、強い相関性が存在する。
【0187】
本発明は、本発明の好ましい態様に関して詳細に記載されているように、多くの異なる形態の態様により条件が満たされる。本開示は、本発明の原理の例示とみなされるべきであり、本発明を、本明細書に例示及び記載されている特定の態様に限定するためのものではないことが理解される。当業者であれば、本発明の趣旨からの逸脱せずに、多数の変更をなすことができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物により規定される。要約及び発明の名称は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。それらの目的は、関係当局並びに一般公衆が本発明の一般的な性質を迅速に決定することを可能にすることである。下記の特許請求の範囲では、用語「手段」が使用されない限り、そこに列挙されている特徴又は要素はいずれも、米国特許法112条6項に記載のミーンズプラスファンクション制限として解釈されるべきでない。