(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】建物の施工方法および低外壁面材
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20230731BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20230731BHJP
E04B 2/90 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
E04B2/56 642F
E04G21/14
E04B2/56 631A
E04B2/90
(21)【出願番号】P 2019068898
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅司
(72)【発明者】
【氏名】松本 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】橘 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 栄紀
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-249796(JP,A)
【文献】特開平07-238609(JP,A)
【文献】特開平11-241454(JP,A)
【文献】特開平11-256738(JP,A)
【文献】特開昭62-215742(JP,A)
【文献】実開昭59-065107(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56 - 2/70;2/88 - 2/96
E04G 21/14 -21/22
E04F 13/00 -13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外壁面材が上下に並べられる外壁を躯体の屋外側に設ける建物の施工方法であって、上記外壁面材および下地材を存在させない一時開口を外壁に形成する工程と、上記一時開口に、当該一時開口高さよりも高さの低い低外壁面材を、上記躯体の屋内側から嵌め込む工程と、を含んでおり、
上記複数の外壁面材が上下に並べられて全体で吊り上げ可能とされる施工時構造体を用い、この施工時構造体における一時開口を跨いで上下の外壁面材の下地材に連結される第2下地材を、上記施工時構造体が建物の躯体に固定された後に取り外して上記一時開口を得ることを特徴とする建物の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建物の施工方法において、上記低外壁面材として、当該低外壁面材の下部側に下部側係合部が形成された外壁面材を用い、上記一時開口に上記低外壁面材を嵌め込む際に、上記下部側係合部を、上記低外壁面材の下側に位置する外壁面材の上部側に係合させることを特徴とする建物の施工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建物の施工方法において、上記低外壁面材として、当該低外壁面材の上側に位置する外壁面材の下部側に係合する係合部を備えない外壁面材を用いることを特徴とする建物の施工方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の建物の施工方法において、上記低外壁面材の上側に位置する外壁面材として、当該外壁面材の下端が金物で支持される外壁面材を用いることを特徴とする建物の施工方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の建物の施工方法において、上記低外壁面材の上側に位置する外壁面材として、上記低外壁面材の上部の屋外側を覆う水切りを配置できる外壁面材を用いることを特徴とする建物の施工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の建物の施工方法において、上記水切りの下端が、上記低外壁面材を下地材に固定する固定部材よりも下方に位置することを特徴とする建物の施工方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の建物の施工方法において、上記水切りの下端よりも上側に位置して上方に向くように当該水切りの屋内側に設けられた立上片を、上記低外壁面材の上端に装着される挟持金物における屋外側に位置する部位と、上記低外壁面材の屋外側の面と、の間で挟持することを特徴とする建物の施工方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の建物の施工方法において、上記一時開口の上側に位置する外壁面材として、屋内面の上下2箇所で上記躯体側に固定される外壁面材を用いることを特徴とする建物の施工方法。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の建物の施工方法において、
上記一時開口に上記低外壁面材を上記躯体の屋内側から取り付けた後に、上記低外壁面材の下地材を、上記第2下地材を用いて、上側および下側の外壁面材の下地材に連結することを特徴とする建物の施工方法。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の建物の施工方法において上記一時開口に取り付けられる低外壁面材であって、
当該低外壁面材の下部側に、下側に位置する外壁面材の上部側に係合する係合部を備える一方、当該低外壁面材の上部側は、上側に位置する外壁面材の下部側に係合する係合部の無いフラット部を有することを特徴とする低外壁面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の外壁面材が上下に並べられた外壁を有する建物の施工方法およびこの施工方法用いることができる低外壁面材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大判化外壁パネルおよびこの大判化外壁パネルを建物の躯体に取り付ける構造が開示されている。大判化外壁パネルは、パネルフレームと、このパネルフレームに取付けられた上下に並ぶ複数枚の、断熱材を含む横長形状の外壁面材とを備える。また、上記パネルフレームは、左右の縦フレーム材および上下端の横フレーム材が矩形に組まれた外周フレーム部と、この外周フレーム部に互いに横幅方向に間隔を開けて配置されて上下端が上下の横フレーム材に接合された複数の縦胴縁とからなる。
【0003】
また、特許文献2には、足場を組むことなく,建物開口部毎に設置することによって建物開口部の工事をなし得るようにした養生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-113839号公報
【文献】特開2006-152695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献はいずれも、複数の外壁面材が上下に並べられた外壁を有する建物の効率的な施工方法を開示するものではない。また、外壁に設けられた一時開口をどう閉じるかについて開示しない。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、複数の外壁面材が上下に並べられた外壁を有する建物を効率的に施工でき、また、外壁に設けられた一時開口を屋内側より効率よく閉じることができる建物の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の建物の施工方法は、上記の課題を解決するために、複数の外壁面材が上下に並べられる外壁を躯体の屋外側に設ける建物の施工方法であって、上記外壁面材および下地材を存在させない一時開口を外壁に形成する工程と、上記一時開口に、当該一時開口高さよりも高さの低い低外壁面材を、上記躯体の屋内側から嵌め込む工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記方法であれば、上記一時開口の高さよりも高さが低い低外壁面材を上記躯体の屋内側から嵌め込むので、上記一時開口の箇所において、上下外壁面材の嵌合形状が複雑であっても、外壁面を屋内側から形成することができる。
【0009】
上記低外壁面材として、当該低外壁面材の下部側に下部側係合部が形成された外壁面材を用い、上記一時開口に上記低外壁面材を嵌め込む際に、上記下部側係合部を、上記低外壁面材の下側に位置する外壁面材の上部側に係合させてもよい。これによれば、上記低外壁面材と、この下側に位置する外壁面材との係合が行える。
【0010】
上記低外壁面材として、当該低外壁面材の上側に位置する外壁面材の下部側に係合する係合部を備えない外壁面材を用いてもよい。
【0011】
上記低外壁面材の上側に位置する外壁面材として、当該外壁面材の下端が金物で支持される外壁面材を用いてもよい。これによれば、上記低外壁面材の上側に位置する外壁面材の下端側が上記金物で支持される。
【0012】
上記低外壁面材の上側に位置する外壁面材として、上記低外壁面材の上部の屋外側を覆う水切りを配置できる外壁面材を用いてもよい。これによれば、上記低外壁面材の上部に雨水が入るのを防止できる。
【0013】
上記水切りの下端が、上記低外壁面材を下地材に固定する固定部材よりも下方に位置してもよい。これによれば、上記水切りで上記固定部材を隠して外観の美観を向上することができる。
【0014】
上記水切りの下端よりも上側に位置して上方に向くように当該水切りの屋内側に設けられた立上片を、上記低外壁面材の上端に装着される挟持金物における屋外側に位置する部位と、上記低外壁面材の屋外側の面と、の間で挟持してもよい。これによれば、上記水切りが風圧等でふらつくのを低減することができる。
【0015】
上記一時開口の上側に位置する外壁面材として、屋内面の上下2箇所で上記躯体側に固定される外壁面材を用いてもよい。これによれば、上記一時開口を利用する状態、すなわち、上記一時開口の上側の外壁面材と上記一時開口の下側の外壁面材とが下地材で連結されない状態において、上記一時開口の上側に位置する外壁面材を、上下2箇所で上記躯体側に固定できる。これにより、上記一時開口を利用する状態において、上記一時開口の上側の外壁面材のガタツキを低減できる。
【0016】
複数の外壁面材が上下に並べられて全体で吊り上げ可能とされる施工時構造体を用い、この施工時構造体における一時開口を跨いで上下の外壁面材の下地材に連結される第2下地材を、上記施工時構造体が建物の躯体に固定された後に取り外して一時開口を得る一方、一時開口に上記低外壁面材を上記躯体の屋内側から取り付けた後に、上記低外壁面材の下地材を、上記第2下地材を用いて、上側および下側の外壁面材の下地材に連結するようにしてもよい。これによれば、第2下地材を無駄なく利用することができる。
【0017】
また、この発明の低外壁面材は、複数の外壁面材が上下に並べられる外壁を躯体の屋外側に設ける建物の施工方法に用いられ、上記外壁面材および下地材を存在させない一時開口に取り付けられる低外壁面材であって、当該低外壁面材の下部側に、下側に位置する外壁面材の上部側に係合する係合部を備える一方、当該低外壁面材の上部側は、上側に位置する外壁面材の下部側に係合する係合部の無いフラット部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明であれば、外壁面材および下地材を存在させないことにより得られる外壁の一時開口に対して、屋内側から外壁面を形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施形態にかかる建物の施工方法で用いられる外壁パネルの施工時構造体を示した背面図である。
【
図2】同図(A)は
図1の外壁パネルにおける外壁面材の上部および下部の断面を示した説明図であり、同図(B)は
図1の上下に並ぶ外壁面材の嵌め込み箇所を示した説明図である。
【
図3】
図1の外壁パネルの施工時構造体を地上で組み立てる地組架台の一例を示した正面図である
【
図4】
図1の外壁パネルの施工時構造体を建物の躯体に取り付けた状態を示した説明図である。
【
図5】
図1の外壁パネルの施工時構造体を建物の躯体に取り付けるために天秤で吊り上げている状態を示した説明図である。
【
図6】この発明の実施形態にかかる建物の施工方法を示す図であって、低外壁面材の一時開口への取り付けを示した説明図である。
【
図7】
図6の工程に続く工程を示す図であって、低外壁面材の一時開口への取り付けを示した説明図である。
【
図8】同図(A)は、低外壁面材の上部が、上側の外壁面材の下部に設けられた水切りで覆われる構造を示した概略の断面図であり、同図(B)は、挟持金物を示す斜視図である。
【
図9】この発明の実施形態にかかる建物の施工方法を示す図であって、低外壁面材の上側の外壁面材を躯体に固定するファスナー等を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態にかかる建物の施工方法で用いられる外壁パネルの施工時構造体5は、複数の横長の外壁面材51を上下に並べて下地材である第1下地材(縦胴縁)52で相互に連結されて一体化された形態で建物の躯体に取り付けられる構造を有する。
図1に示す例では、6本の第1下地材52を備えており、各第1下地材52は、リップ溝形鋼等の開放断面鋼材或いは角形鋼管などの閉鎖断面鋼材からなる。
【0021】
上記外壁面材51は、例えば、
図2(A)および
図2(B)に示すように、不燃断熱材51aを鋼板51b、51cで挟み込んだ金属サンドイッチパネルである。2枚の外壁面材51を上下に並べた場合、下段に位置する外壁面材51の上端面に形成された横幅方向に長い2か所の凹部51dに、上段に位置する外壁面材51の下端面に形成された横幅方向に長い2か所の凸部51eが嵌まり込むことにより、上下の外壁面材51が互いに面外方向に位置ずれしないように組み合わされる。
【0022】
また、例えば、
図3に示す地組架台1を用いることにより、上記複数の外壁面材51を上下に並べて第1下地材52で連結した外壁パネルを、当該外壁パネルが取り付けられる建物の躯体の外壁取付箇所とは異なる場所で組み立てることができる。上記地組架台1は、例えば、複数の柱状部材11と梁状部材12とを縦横に組んでなるものであるが、その構造については
図3に示すものに限定されない。
【0023】
作業者は、上記第1下地材52を地組架台1にセットした後に、外壁面材51をセットし、このセットした上記外壁面材51の上端部側にビス等をねじ込み、上記外壁面材51を、先にセットした上記第1下地材52に固定する。この作業を繰り返すことで外壁パネルの施工時構造体5が作製される。
【0024】
上記外壁パネルの施工時構造体5では、例えば、上から2段目の外壁面材51が存在すべき箇所において第1下地材52が分断されて上下に離間しており、最上位置の外壁面材51は上側の第1下地材52に装着され、上から2段目となる外壁面材51および第1下地材52は未装着とされ、上から3段目以下では全ての外壁面材51が下側の第1下地材52に装着されている。すなわち、この例の外壁パネルの施工時構造体5は、上から2段目の1段のみ外壁面材51および第1下地材52が存在しない構造を有する。
【0025】
そして、上記外壁パネルの施工時構造体5は、
図1に示したように、例えば、最上位置の外壁面材51から6段目となる外壁面材51に至る縦長さを有する第2下地材53を備えている。上記第2下地材53は、上記第1下地材52が不存在の箇所(一時開口となる箇所)を跨いで、上下に位置する第1下地材52と接続される。上記第2下地材53は、上記地組架台1を用いて上記第1下地材52に取り付けることができる。上記第2下地材53は、上記第1下地材52に対して着脱自在に取り付けられており、施工時構造体5が建物の躯体7に取り付けられた後で一旦外せるようになっている。
【0026】
上記第1下地材52は、例えば、2つの対向面部およびこれら対向面部を繋ぐ閉鎖面部を有する溝形鋼からなり、上記対向面部の一方の側において外壁面材51がビス固定されている。
【0027】
また、
図4に示すように、上記外壁パネルの施工時構造体5が取り付けられる建物の躯体7は、例えば、屋根7Aが支持される屋根梁71、耐風梁72、床梁73等を備えている。また、上記屋根梁71には、繋ぎ材71aが所定のピッチで固定されており、また、繋ぎ材71aを貫通させて屋根側耐風梁72Aが設けられている。上記外壁パネルの施工時構造体5の建物の躯体7への取り付けにおいては、例えば、上記第1下地材52の上記対向面部の他方の側が、上記建物の躯体7における屋根側耐風梁72A、耐風梁72、床梁73等に、Lアングル等の金具、固定ボルト、高さ調整ボルト等を用いて固定される。
【0028】
また、例えば、上記第2下地材53も溝形鋼とされ、その閉鎖面部を上記第1下地材52の閉鎖面部に対面させることで、上記第1下地材52の横位置に取り付けられる。上記閉鎖面部には、例えば、所定ピッチでボルト挿通孔が形成されており、このボルト挿通孔に縫い通されたボルトとナットとによって、上記第2下地材53が上記第1下地材52に着脱自在に取り付けられる。なお、上記第1下地材52および上記第2下地材53が閉鎖断面形状を有する角形鋼管である場合でも、同様のボルトによる取付構造とすることができる。また、上記の着脱自在とするための構造は、ボルトとナットを用いる構造に限らない。
【0029】
また、外壁パネルの施工時構造体5は、
図5に示すように、天秤8を用いて吊り上げることができる。この天秤8は、一方の側に固定部81を備え、他方の側にカウンターウェイト82を備える。上記固定部81は、外壁パネルの施工時構造体5の第1下地材52、第2下地材53、外壁面材51、或いは、これらに仮固定された部材に固定される。天秤8はクレーン等の吊元83によって吊られる。
【0030】
建物の施工においては、上記のように吊り上げた外壁パネルの施工時構造体5を上記第1下地材52によって建物の躯体7に取り付けていく。より具体的には、上記外壁パネルの施工時構造体5における上側の第1下地材52を、屋根側耐風梁72Aに固定し、下側の第1下地材52を耐風梁72に固定する。
【0031】
上記のように、外壁面材51における第1下地材52を建物の躯体7に固定した後に、上記第2下地材53を、上記第1下地材52から取り外す。上記第1下地材52は上記のように躯体7側に固定されているので、上記第2下地材53を上記第1下地材52から取り外しても、上記外壁面材51が躯体7から外れることはない。そして、このように上記第2下地材53を上記第1下地材52から取り外すことで、外壁面材51の存在しない箇所において上記第2下地材53も存在しない一時開口、すなわち、下地材で遮られない施工時利用が可能な開口を形成する。施工時利用としては、例えば、足場の屋内側からの持出がある。
【0032】
次に、上記一時開口への外壁面材の取り付けを、
図6および
図7を用いて説明する。なお、上記
図6および
図7における下地材に対する外壁面材の突出量、耐風梁の位置や鋼材形状等は例示であり、また、先に用いた
図4および
図5における下地材に対する外壁面材の突出量、耐風梁の位置や鋼材形状等も例示である。これらの図において、上記下地材に対する外壁面材の突出量、耐風梁の位置や鋼材形状等は必ずしも同じにはなっていない。
【0033】
上記一時開口には、当該一時開口の高さよりも高さが低い低外壁面材501を取り付ける。この低外壁面材501は、他の外壁面材51と同様、当該低外壁面材501の下部側に、下部側係合部である凹部51dを備えている。一方、上記低外壁面材501は、当該低外壁面材501の上部側には、上側に位置する外壁面材51の下部側に係合する係合部(凸部51e)を備えていない。上記低外壁面材501の上部側は、フラット部をなす。上記低外壁面材501の上部側は、不燃断熱材51aが露呈していてもよい。
【0034】
上記一時開口には、上記低外壁面材501を嵌め込む際には、当該低外壁面材501の上側の外壁面材51と、当該低外壁面材501の上部との間に面材間隙間を設けて、上記躯体7の屋内側から嵌め込む。なお、上記面材間隙間は、屋内側から低外壁面材501を持ち出す際に低外壁面材501の凹部51dと下側の凸部51e外壁面材51の凸部51eが干渉しないように、取り付け位置より上方へ移動できる分の鉛直方向のクリアランスを有する。この嵌め込みでは、例えば、上記躯体7の屋内側において、上記低外壁面材501と連結する第1下地材52を揚重機によって持ち上げる。
【0035】
そして、上記一時開口に上記低外壁面材501を嵌め込む際には、
図7に示すように、下部側係合部である凹部51dを、当該低外壁面材501の下側に位置する外壁面材51の上部側の凸部51eに係合させる。
【0036】
また、上記低外壁面材501を一時開口に上記躯体7の屋内側から取り付けた後に、上記低外壁面材501の第1下地材52に、一旦取り外しておいた第2下地材53を連結し、さらに、この第2下地材53を上側および下側の外壁面材51の第1下地材52に連結する。
【0037】
上記低外壁面材501の上側に位置する外壁面材51は、当該外壁面材51の下端、すなわち、上記面材間隙間に露呈する下端が、長尺の金物91で固定される。この金物91は、例えば、2枚の部材がリベット等で相互に固定されており、
図8(A)に示すように、第1下地材52の屋外側にビス留めされる取付面部91a、この取付面部91aから屋外側に延びる第1部位91b、当該外壁面材51の屋外側の凹部51dに嵌る第2部位91c、外壁面材51の屋外側下端部の屋内側面に対面する第3部位91d、この第3部位91dの下端から屋内方向に延びる第4部位91eを有する。この金物91は、施工時構造体5の作製時に、上記第1下地材52に取り付けられてもよい。上記金物91は、外壁面材51の下部を第1下地材52に固定するための部材である。この金物91の固定は、例えばビス留めにより行われる。
【0038】
また、上記低外壁面材501の上側に位置する外壁面材51は、当該外壁面材51の屋内面の側から上記面材間隙間を通って屋外側に出て、上記低外壁面材501の上部の屋外側を覆う水切り92が配置できる。この水切り92は、
図8(A)に示すように、上記第1下地材52の屋外側にビス留めされる取付面部92a、この取付面部から上記金物91の下方側で、屋内側から上記面材間隙間を通って屋外側へ斜め方向に延びる第1部位92b、この第1部位92bの屋外側端から垂下する第2部位92c、この第2部位92cの下端から屋内側に曲げられた第3部位92d、この第3部位92dの屋内側端から屋外側に折り返されて立ち上がり、上記第2部位92cから離間して位置する立上片92eを有する。上記立上片92eは、当該水切り92の下端よりも上側に位置して上方に向くように当該水切り92の屋内側に位置する。
【0039】
また、上記水切り92の下端は、上記低外壁面材501を第1下地材52に固定するドリルビス等の固定部材511よりも下方に位置する。
【0040】
上記水切り92の立上片92eが上記低外壁面材501の上端の屋外側に当たる状態で、上記低外壁面材501の上端部に、短尺のピース物である挟持金物93を所定間隔で嵌め込む。
【0041】
上記挟持金物93は、
図8(B)にも示すように、互いに対向する対向面部93a、93bと、これらを繋ぐ繋ぎ部93cと、を備える。上記対向面部93aは、対向面部93bよりも屋外側に位置し、対向面部93bよりも垂下長が短い。対向面部93aと対向面部93bの間隔は、上記低外壁面材501の厚さよりも、例えば、0.5mm程度広い。上記挟持金物93は、上記低外壁面材501の上端部に装着することで、上記水切り92の立上片92eを、当該挟持金物93の対向面部93aと、上記低外壁面材501の屋外側の面と、の間で挟持する。
【0042】
上記低外壁面材501の上側に位置する外壁面材51は、一時開口を利用するとき、すなわち、上記第2下地材53を上記第1下地材52から取り外した状態において、連結する第1下地材52の屋内面の上下2箇所で上記躯体7側に固定される。この実施形態では、ファスナー4によって、第1下地材52の屋内面の上側が耐風梁72(屋根側耐風梁72Aでも同様)の上側に連結され、クリップ55によって、第1下地材52の屋内面の下側が上記耐風梁72の下側に連結される。
【0043】
上記クリップ55は、例えば、短尺で縦長の部材55aと、この部材55aを第1下地材52の屋内面に留め付ける螺子55bと、上記部材55aを第1下地材52の屋内面から離間させるスペーサ55cとを備える。上記螺子55bの締め付け状態にて、上記部材55aの下部側に設けられており、螺子55bを緩めれば、上記部材55aを下方に垂らすことができる。
【0044】
上記クリップ55は、螺子55bを締めた状態で、第1下地材52の屋内側面から離間して上方に突出する。上記クリップ55による上側の第1下地材52の連結では、上側の第1下地材52の屋内面とクリップ55の部材55aとの間で、上記Lアングル72aの縦片が挟持された状態となる。
【0045】
上記クリップ55は、上記施工時構造体5を吊り上げてファスナー4を躯体7側に係合させた後に、上記螺子55bで留めることができる。或いは、上記螺子55bを緩めて上記部材55aを下方に垂れ下げた状態で、上記施工時構造体5を吊り上げてファスナー4を躯体7側に係合させることもできる。
【0046】
また、上記ファスナー4は、例えば、
図9に示すように、段状に形状されるか、或いはスペーサを屋内面に配置して段をなす縦面部41と、上記縦面部41の下部側に設けられた水平板部42と、を備えている。上記水平板部42の横幅は、上記縦面部41の横幅よりも広くされている。そして、上記縦面部41の各縁側であって、当該縦面部41と上記水平板部42との間には、略三角形状のリブ部43がそれぞれ溶接等によって設けられている。
【0047】
上記縦面部41は、上側の面部を第1下地材52に接して取り付けると、下側の面部が第1下地材52から離間して第1下地材52との間に一定幅の隙間を形成する。上記上側の面部には水平方向に挿通孔が形成されており、この挿通孔に、第1下地材52の内側から水平方向に突出して設けられたボルト41aの螺子部を通し、この螺子部にナット41bを螺合することで、上記ファスナー4を第1下地材52に固定することができる。
【0048】
また、上記耐風梁72上には、上記ファスナー4を受け止める受け部6が設けられる。受け部6は、鋼材等からなる荷重受けプレート61を備えており、この荷重受けプレート61上であって上記耐風梁72の屋外側の縁部には、Lアングル62を備える。上記Lアングル62は、その水平片部62aを上記荷重受けプレート61の上面に接触させて設けられている。また、上記Lアングル62の立上片部62bは屋外側に位置している。上記縦面部41による上記隙間に上記立上片部62bが入り込むことで、上記施工時構造体5が建物に取り付けられる。
【0049】
上記ファスナー4の水平板部42の中央位置(リブ部43の間)には、ピン挿通孔が形成されている。また、上記水平板部42の一方の端側位置には、螺子孔が形成されており、この螺子孔には先丸形状の荷重受けボルト42cが上側から螺合される。なお、荷重受けボルト42cにはロックナットやワッシャが装着される。さらに、上記水平板部42の他の端側位置には、突出螺子挿通孔が形成されている。
【0050】
そして、上記荷重受けプレート61には、位置決めピン61aおよび突出螺子61bが立設されている。上記突出螺子61bは、螺子部を上側にして上記荷重受けプレート61に溶接によって固定される。上記位置決めピン61aは、上記水平板部42の上記ピン挿通孔に対応する位置に設けられており、上記突出螺子61bは上記水平板部42の上記突出螺子挿通孔に対応する位置に設けられている。なお、上記Lアングル62の水平片部62aには、上記位置決めピン61aおよび突出螺子61bが通る貫通孔が形成されている。一方、上記荷重受けボルト42cに対応する箇所には貫通孔は形成されておらず、上記荷重受けボルト42cの先端は上記水平板部42の上面に当たる。上記突出螺子61bにナット42eを螺合させることで、下方向の力を上記水平板部42に与えて調整高さを保持することができる。
【0051】
上記の施工方法であれば、上記一時開口に、当該一時開口の高さよりも高さが低い低外壁面材501を、当該低外壁面材501の上側の外壁面材51と、当該低外壁面材501の上部との間に上記面材間隙間を設けて、上記躯体7の屋内側から取り付けるので、上記一時開口の箇所において、外壁面を屋内側から形成することができる。
【0052】
上記低外壁面材501として、当該低外壁面材501の下部側に下部側係合部(凹部51d)が形成された外壁面材51を用い、上記一時開口に上記低外壁面材501を嵌め込む際に、上記下部側係合部(凹部51d)を、上記低外壁面材501の下側に位置する外壁面材51の上部側(凸部51e)に係合させると、上記低外壁面材501と、この下側に位置する外壁面材51との通常の係合が行える。
【0053】
上記低外壁面材501の上側に位置する外壁面材51の下端が金物91で支持されると、上記低外壁面材501の上側に位置する外壁面材51の下端を上記第1下地材52に固定できる。
【0054】
上記低外壁面材501の上部の屋外側を覆う水切り92を、上側の外壁面材51の下部側で、第1下地材52に固定して用いるのがよい。これによれば、上記低外壁面材501の上部のフラット部に雨水が入るのを防止できる。
【0055】
上記水切り92の下端が、上記低外壁面材501を第1下地材52に固定する固定部材511よりも下方に位置してもよい。これによれば、上記水切り92で上記固定部材511を隠して外観の美観を向上することができる。
【0056】
上記水切り92の立上片92eを、上記低外壁面材501の上端に装着される挟持金物93における屋外側に位置する対向面部93aと、上記低外壁面材501の屋外側の面と、の間で挟持すると、上記水切り92が風圧等でふらつくのを低減することができる。
【0057】
上記一時開口の上側に位置する外壁面材として、屋内面の上下2箇所で上記躯体7側に固定される外壁面材51を用いてもよい。これによれば、一時開口を利用する状態、すなわち、一時開口の上側の外壁面材51と上記一時開口の下側の外壁面材51とが第1、第2下地材52,53で連結されない状態において、上記一時開口の上側に位置する外壁面材51は、上下2箇所で上記躯体7側に固定される。これにより、上記一時開口を利用する状態において、上記一時開口の上側の外壁面材51のガタツキを低減できる。
【0058】
また、上記の施工時構造体5を用い、一時開口に上記低外壁面材501を上記躯体7の屋内側から取り付けた後に、上記低外壁面材501の第1下地材52を、第2下地材53を用いて、上側および下側の外壁面材51の第1下地材52に連結すれば、第2下地材53を無駄なく利用することができる。
【0059】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 :地組架台
4 :ファスナー
5 :施工時構造体
6 :受け部
7 :躯体
7A :屋根
8 :天秤
11 :柱状部材
12 :梁状部材
41 :縦面部
41a :ボルト
41b :ナット
42 :水平板部
42c :荷重受けボルト
42e :ナット
43 :リブ部
51 :外壁面材
51a :不燃断熱材
51b :鋼板
51c :鋼板
51d :凹部
51e :凸部
52 :第1下地材
53 :第2下地材
55 :クリップ
55a :部材
55b :螺子
55c :スペーサ
61 :荷重受けプレート
61a :位置決めピン
61b :突出螺子
62 :Lアングル
62a :水平片部
62b :立上片部
71 :屋根梁
71a :繋ぎ材
72 :耐風梁
72A :屋根側耐風梁
72a :Lアングル
73 :床梁
81 :固定部
82 :カウンターウェイト
83 :吊元
91 :金物
91a :取付面部
91b :第1部位
91c :第2部位
91d :第3部位
91e :第4部位
92 :水切り
92a :取付面部
92b :第1部位
92c :第2部位
92d :第3部位
92e :立上片
93 :挟持金物
93a :対向面部
93b :対向面部
93c :繋ぎ部
501 :低外壁面材
511 :固定部材