(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20230731BHJP
F25D 21/04 20060101ALI20230731BHJP
F25D 23/02 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F25D21/04 E
F25D23/02 305Z
(21)【出願番号】P 2019073307
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋平
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-329445(JP,A)
【文献】特開平11-311477(JP,A)
【文献】特開2007-292378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 21/04
F25D 23/04
F25D 23/12
A47B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有して前方に開口する箱状の貯蔵庫本体と、
前記貯蔵庫本体に取り付けられて前記貯蔵室を開閉可能な扉と、
前記扉の裏面に設けられて前記貯蔵庫本体における枠状の前端面と前記扉との間を塞ぐためのシール部材と、
前記貯蔵室を冷却する冷却装置と、
前記貯蔵庫本体における前記前端面を加熱する前面枠ヒータと、
前記冷却装置を制御
して前記貯蔵室内を冷却する冷却運転を実行する冷却装置制御部と前記前面枠ヒータを制御する前面枠ヒータ制御部とを有する制御装置と、
を備え、
前記前面枠ヒータ制御部は、前記冷却装置制御部によって
前記冷却運転が実行されて前記貯蔵室内の温度である内部温度が前記貯蔵室外の温度である外部温度より低下させられている場合に、前記前面枠ヒータを作動させる冷却時作動処理を実行するとともに、
前記冷却運転が実行されておらず前記外部温度が前記内部温度より低下している場合に、前記シール部材の温度が低下している状況下になると、前記前面枠ヒータを作動させる非冷却時作動処理を実行する貯蔵庫。
【請求項2】
前記前面枠ヒータ制御部は、前記非冷却時作動処理において、前
記内部温度と前
記外部温度との少なくとも一方に基づいて、前記シール部材の温度が低下している状況下にあると判断すると、前記前面枠ヒータを作動させる請求項1に記載の貯蔵庫。
【請求項3】
前記前面枠ヒータ制御部は
、前記外部温度が閾外部温度以下
となり、さらに、前記内部温度が閾内部温度以下となった場合に、前記シール部材の温度が低下している状況下にあると判断し、前記前面枠ヒータを作動させる請求項2に記載の貯蔵庫。
【請求項4】
少なくとも前記冷却装置の作動を許容すべく当該貯蔵庫を起動させた起動状態と、前記冷却装置の作動を許容しない非起動状態と、を切り替える主電源を備え、
前記前面枠ヒータおよび前記前面枠ヒータ制御部は、前記主電源によって前記非起動状態とされている場合にも作動可能とされ、
前記前面枠ヒータ制御部は、前記起動状態と前記非起動状態との両者において、前記非冷却時作動処理を実行可能とされた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の貯蔵庫。
【請求項5】
前記貯蔵室を加熱する加熱装置を備え
、
前記制御装置は、前記加熱装置を制御して前記貯蔵室内を乾燥させる乾燥運転を実行可能とされ、前記乾燥運転の後に前記非冷却時作動処理を実行可能とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、貯蔵庫として冷却庫が記載され、この冷却庫は、貯蔵室を有する貯蔵庫本体と、その貯蔵庫本体に取り付けられて貯蔵室を開閉可能な扉と、その扉の裏面に設けられて貯蔵庫本体と扉との間を塞ぐためのシール部材(パッキン)と、貯蔵庫本体の開口の開口縁に設けられたヒータと、を備えたものとされる。そして、貯蔵室内の冷却温度に基づいて、ヒータの発熱量を制御するように構成されており、冷却中のパッキンの温度を調整して、結露や扉の凍り付きを抑制することが可能となっている。また、下記特許文献2には、貯蔵庫として、食品等を急速に冷却することが可能な急速冷却庫が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-344282号公報
【文献】特開2014-215019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシール部材は、一般的に、貯蔵庫本体と扉との間をしっかりと塞ぐために軟質性の素材からなる。そして、例えば、上記特許文献2に記載された急速冷却庫のように、冷却運転を停止することがある貯蔵庫や、庫内を冷却するだけでなく加熱することも可能な貯蔵庫においては、シール部材の温度変化が大きい。そして、シール部材が、温められて膨張したり柔らかくなったりした後に、再び冷やされると、シール部材は収縮することになる。そのシール部材の収縮によって、シール部材が貯蔵庫本体に固着して、扉を開ける際に大きな力が必要となったり、シール部材と貯蔵庫との間に隙間が生じて、貯蔵庫内の空気が外部に漏れたりする虞がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、シール部材の収縮を抑えて、シール部材の貯蔵庫本体への固着やシール部材と貯蔵庫本体との隙間の発生を抑制することが可能な貯蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の貯蔵庫は、
貯蔵室を有して前方に開口する箱状の貯蔵庫本体と、
前記貯蔵庫本体に取り付けられて前記貯蔵室を開閉可能な扉と、
前記扉の裏面に設けられて前記貯蔵庫本体における枠状の前端面と前記扉との間を塞ぐためのシール部材と、
前記貯蔵室を冷却する冷却装置と、
前記貯蔵庫本体における前記前端面を加熱する前面枠ヒータと、
前記冷却装置を制御する冷却装置制御部と前記前面枠ヒータを制御する前面枠ヒータ制御部とを有する制御装置と、
を備え、
前記前面枠ヒータ制御部は、前記冷却装置制御部によって前記冷却装置が作動させられている場合に、前記前面枠ヒータを作動させる冷却時作動処理を実行するとともに、前記冷却装置が作動していない場合に、前記シール部材の温度が低下している状況下になると、前記前面枠ヒータを作動させる非冷却時作動処理を実行することを特徴とする。
【0007】
冷却装置による冷却運転を停止させている場合において、貯蔵庫の周囲の温度が低くなると、シール部材の温度も低下して、シール部材が収縮する虞がある。しかしながら、この構成の貯蔵庫は、シール部材の温度が低下している状況下(以下、「シール部材低温状況下」と呼ぶ場合がある。)において、前面枠ヒータを作動させてシール部材を温めることができ、シール部材の収縮を抑えることができる。したがって、この構成の貯蔵庫によれば、シール部材の収縮による貯蔵庫本体への固着や、シール部材と貯蔵庫本体との隙間の発生を抑制することができる。なお、このシール部材低温状況下にあるか否かは、例えば、庫内の温度、貯蔵庫の周囲の温度、冷却運転が停止させられてからの経過時間(前面枠ヒータが切られてからの経過時間)、非冷却時作動処理が前回実行されてからの経過時間等のうちから1つあるいは複数の組み合わせによって推定するような構成とすることができる。
【0008】
上記構成の貯蔵庫において、前記前面枠ヒータ制御部は、前記非冷却時作動処理において、前記貯蔵室内の温度である内部温度と前記貯蔵室外の温度である外部温度との少なくとも一方に基づいて、前記シール部材の温度が低下している状況下にあると判断すると、前記前面枠ヒータを作動させる構成とすることができる。
【0009】
この構成の貯蔵庫は、シール部材低温状況下にあるか否かを推定するための指標として、内部温度と外部温度との少なくとも一方を用いており、シール部材の温度低下を適切に推定することができる。
【0010】
また、上記構成の貯蔵庫において、前記前面枠ヒータ制御部は、前記内部温度が閾内部温度以下かつ前記外部温度が閾外部温度以下となった場合に、前記シール部材の温度が低下している状況下にあると判断し、前記前面枠ヒータを作動させる構成とすることができる。
【0011】
この構成の貯蔵庫は、内部温度と外部温度との両者が閾値以下となった場合に前面枠ヒータを作動させる。一方、内部温度と外部温度との一方が閾値を超えた場合に、前面枠ヒータが停止させられることになる。例えば、内部温度と外部温度との一方のみを監視している場合には、それらの他方の温度が上昇しても、その監視している温度が上昇しなければ、前面枠ヒータは作動し続けることになる。この構成の貯蔵庫によれば、そのような事態を回避し、シール部材の温度を適切な温度に保つことができる。
【0012】
また、上記構成の貯蔵庫において、少なくとも前記冷却装置の作動を許容すべく当該貯蔵庫を起動させた起動状態と、前記冷却装置の作動を許容しない非起動状態と、を切り替える主電源を備え、前記前面枠ヒータおよび前記前面枠ヒータ制御部は、前記主電源によって前記非起動状態とされている場合にも作動可能とされ、前記前面枠ヒータ制御部は、前記起動状態と前記非起動状態との両者において、前記非冷却時作動処理を実行可能とされた構成とすることができる。
【0013】
この構成の貯蔵庫は、主電源が非起動状態とされている場合においてもシール部材の温度低下を抑えることができ、非起動状態にある場合や主電源を起動状態した直後においても、シール部材の収縮による貯蔵庫本体への固着や、シール部材と貯蔵庫本体との隙間の発生を抑制することができる。
【0014】
また、上記構成の貯蔵庫において、前記貯蔵室を加熱する加熱装置を備えた構成とすることができる。
【0015】
この構成の貯蔵庫は、庫内の温度調節や庫内の乾燥等を目的で、加熱装置が設けられたものとなっている。この構成の貯蔵庫は、庫内の温度が一時的に高められことで、シール部材も、一時的に温度が高くなり、膨張しやすい。つまり、この構成の貯蔵庫においては、シール部材の温度低下が大きく、その温度低下によるシール部材の圧縮が特に生じやすい。したがって、この構成の貯蔵庫には、上記の非冷却時に前面枠ヒータを作動させる非冷却時作動処理が、特に有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シール部材の収縮を抑えて、シール部材の貯蔵庫本体への固着やシール部材と貯蔵庫本体との隙間の発生を抑制することが可能な貯蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例の貯蔵庫である急速冷却庫の正面図である。
【
図2】
図1に示す急速冷却庫の斜視図(2枚の扉とピラーとを外し、カートを出した状態の図)である。
【
図3】
図1示した右側の扉を開いて貯蔵室を開口させた状態を示す図である。
【
図4】
図1に示した急速冷却庫の正面断面図である。
【
図5】
図2に示した制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】
図2に示した制御装置において実行される前面枠ヒータ制御プログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0019】
<貯蔵庫の構成>
本発明の実施例である貯蔵庫としての急速冷却庫10を、
図1および
図2に示す。本急速冷却庫10は、ブラストチラーとも呼ばれるものであり、調理された高温の食品を+3℃などの低温に短時間で冷却するものである。本急速冷却庫10は、全体として縦長の長方形状をなしており、前方に開口する箱状の筐体である冷却庫本体(貯蔵庫本体)11と、その冷却庫本体11の開口を開閉する2枚の扉12,13と、冷却庫本体11の上方に配された機械室14と、を含んで構成される。また、本急速冷却庫10は、カートインタイプ(トロリータイプ)のものであり、冷却庫本体11内に収容可能なカート15も備えている。なお、以下の説明では、扉12,13側を前側、扉12,13とは反対側を後側(背面側)とし、正面視(急速冷却庫10を前側から視た状態)における左右方向(
図1の左右方向)を、急速冷却庫10の左右方向として、説明することとする。
【0020】
冷却庫本体11には、開口側の上端と下端との間にピラー16が取り付けられている。そのピラー16によって、冷却庫本体11の開口は、左右方向に分割されており、縦長の長方形状の2つの開口が形成されている。そして、冷却庫本体11の内部である庫内は、
図2に示すように、庫内におけるピラー16の右側の領域が、被冷却物である食品が収容される収容室(貯蔵室)20とされ、ピラー16の左側の領域が、冷却ユニット21が設置される設置室22とされている。そして、冷却庫本体11の枠状の前端面11Aにおける右側の側端部には、相対的に大きな方の扉12が回動可能に取り付けられるとともに、右側の側端部には、相対的に小さな方の扉13が回動可能に取り付けられている。つまり、収容室20は、右側の扉12によって開閉可能とされ、設置室22は、左側の扉13によって開閉可能とされている。
【0021】
なお、急速冷却庫10は、扉12および扉13を閉状態で保持するためのロック機構23を備えている。そのロック機構23は、右側の扉12の表面に設けられたレバー24と、左側の扉13に設けられた係合部25と、を含んで構成される。そして、レバー24を係合部25に係合させることで、扉12および扉13をロック状態とし、レバー24の係合部25への係合を解除することで、扉12および扉13をアンロック状態とすることが可能となっている。
【0022】
また、
図3に示すように、扉12には、その裏面における周縁部に沿って、冷却庫本体11の前端面11Aあるいはピラー16の前面との間を塞ぐためのシール部材としてのパッキン26が取り付けられている。そのパッキン26は、本実施例においては、軟質ポリ塩化ビニル製のものとされている。
【0023】
上記の収容室20には、上述したカート15の上側の大部分が収容されるような構成となっている。次に、そのカート15について簡単に説明する。カート15は、
図2に示すように、キャスタ30を備えた方形枠状の台車部31と、その台車部31の上方側に位置して被冷却物である食品を載置するカート本体部32と、それら台車部31とカート本体部32とを接続する接続部33と、を備える。接続部33は、台車部31の前端部から立設している。カート本体部32は、その接続部33の後側の上部から後方に向かって延びる基盤34と、その基盤34上に設けられた縦長の門型をなす前後一対のフレーム35と、一対のフレーム35の間にわたって設けられた複数対のトレイ受け36と、を含んで構成される。つまり、そのような構成とされたカート15を冷却庫本体11に向かって移動させると、台車部31が冷却庫本体11の下側に入り込み、カート本体部32が収容室20に収容されるようになっている。
【0024】
先にも述べたように、設置室22には、冷却ユニット21が設置されている。その冷却ユニット21は、
図4に示すように、2基の冷却器40(蒸発器)と3基の庫内ファン41とをケーシング42内に収めてユニット化したものである。冷却器40は、ケーシング42内の左側に配されており、冷媒配管を介して、機械室14に設けられた圧縮機や凝縮器を含む冷凍装置43と循環接続されることで冷凍サイクルを構成するものとされる。つまり、冷却ユニット21,冷凍装置43,冷媒管等を含んで、収容室20を冷却する冷却装置44が構成されている。
【0025】
なお、収容室20を冷却する冷却運転において、冷凍装置43と庫内ファン41とが作動させられると、収容室20の空気がケーシング42内に吸引され、その吸引された空気が冷却器40を通過する際に冷やされることで冷気となり、ケーシング42の左側から外部に吹き出された冷気が冷却庫本体11の左側の内壁面11Bに当たった後、ケーシング42を回り込むようにして収容室20に送り込まれる。このような空気の循環が連続的に行われることで収容室20が冷却されるようになっている。
【0026】
また、冷却ユニット21は、庫内ヒータ45も備えている。その庫内ヒータ45は、冷却器40の右側面に設けられており、庫内を乾燥させる乾燥運転を行う際に用いられる。なお、その乾燥運転は、例えば、庫内の洗浄を行った後等に実行される。
【0027】
本急速冷却庫10は、庫内の洗浄を行う洗浄装置50を備えている。その洗浄装置50は、
図3および
図4に示すように、冷却庫本体11の内部における天面に設けられている。洗浄装置50は、複数のノズル51,52,53と、それら複数のノズル51,52,53を回転させる回転軸54とを含んで構成され、回転軸54まわりに回転させられた複数のノズル51,52,53から種々の方向に洗浄液や水を噴射し、冷却庫本体11内を隅々まで洗浄可能なものとなっている。また、本急速冷却庫10は、庫内の除菌を行う除菌装置55を備えている。その除菌装置55は、紫外線の殺菌効果を利用したUV除菌装置であり、冷却庫本体11の右側の内壁面11Cに、上下方向に間隔をおいて3つ設けられている。
【0028】
さらに、本急速冷却庫10は、
図3に示すように、冷却庫本体11の開口縁の結露防止や扉12,13の冷却庫本体11への凍り付き防止等を目的として、前面枠ヒータ60が設けられている。具体的に言えば、前面枠ヒータ60は、冷却庫本体11の前端面11Aを内側から加熱する本体用ヒータ61と、ピラー16の前面を内側から加熱するピラー用ヒータ62と、からなる。それら本体用ヒータ61およびピラー用ヒータ62は、コードヒータであり、冷却庫本体11およびピラー16の前面を形成する部分の内面に貼り付けられている。そして、本体用ヒータ61の右側部分およびピラー用ヒータ62の右側部分が、扉12の周縁部に沿って、本体用ヒータ61の左側部分およびピラー用ヒータ62の左側部分が、扉13の周縁部に沿って配されている。つまり、それら本体用ヒータ61およびピラー用ヒータ62は、閉状態とされた扉12のパッキン26および扉13のパッキンに対向する箇所に配されており、冷却中のパッキンの温度を調整することで、結露や扉の凍り付きを抑制することが可能となっている。
【0029】
本急速冷却庫10は、
図2に示すように、機械室14に配された制御装置70を備えており、その制御装置によって、上述した冷却装置44,庫内ヒータ45,洗浄装置50,除菌装置55,前面枠ヒータ60が制御される。制御装置70は、CPU,ROM,RAMを含むコンピュータを主体とするものであり、冷却装置44(詳しくは、圧縮機,凝縮器や庫内ファン41等),庫内ヒータ45,洗浄装置50,除菌装置55,前面枠ヒータ60等が、電気的に接続されている。また、本急速冷却庫10は、
図5に示すように、庫内の温度(収容室20の内部の温度である内部温度)T
INを検出する庫内温度センサ71と、庫外の温度(収容室20の外部の温度である外部温度)T
OUTを検出する庫外温度センサ72と、を備えており、それらも制御装置70に接続されている。
【0030】
また、本急速冷却庫10は、
図1に示すように、ユーザーの操作を受け付けるための操作パネル73を備えており、その操作パネル73も制御装置70に接続されている。なお、その操作パネル73の近傍には、主電源74が設けられており、その主電源74によって、本急速冷却庫10は、冷却運転や乾燥運転等を作動させるべく本急速冷却庫10を起動させた起動状態と、本急速冷却庫10を停止させた非起動状態と、が切り替えられる。なお、この非起動状態は、本急速冷却庫10が、通電された状態を前提としている。
【0031】
<急速冷却庫の制御>
制御装置70が有するROMには、本急速冷却庫10を制御するための種々のプログラム等が記憶されており、制御装置70は、それらプログラムを実行することで、本急速冷却庫10を制御するようになっている。
【0032】
i)急速冷却運転
本急速冷却庫10の運転モードの主体となる急速冷却運転は、調理された高温の食品を急速に冷却する運転モードである。急速冷却運転は、食品を載置したトレイをトレイ受け36に保持させたカート15を本急速冷却庫10の収容室20に収容した後、操作パネル73を操作して急速冷却運転の開始をユーザーが指示すると開始される。
【0033】
急速冷却運転において、制御装置70は、冷却装置44の庫内ファン41と冷凍装置43(詳しく言えば、圧縮機,凝縮器ファン)と、を作動させる。先にも述べたが、冷凍装置43と庫内ファン41とを作動させると、収容室20の空気がケーシング42内に吸引され、その吸引された空気が冷却器40を通過する際に冷やされることで冷気となり、ケーシング42の左側から外部に吹き出された冷気が冷却庫本体11の左側の内壁面11Bに当たった後、ケーシング42を回り込むようにして収容室20に送り込まれる。これにより庫内を冷気が循環し、食品が急速に冷却される。なお、制御装置70は、急速冷却運転を開始すると芯温センサによって食品の温度を監視し、食品が所定温度まで冷却されると急速冷却運転を終了する。
【0034】
なお、この急速冷却運転が行われている場合には、庫内と庫外との温度差により冷却庫本体11の開口付近、換言すれば、扉12,13の周縁部において、結露が生じやすく、その結露が凍ることで扉12,13が冷却庫本体11に凍り付いてしまう虞がある。そこで、本急速冷却庫10は、急速冷却運転中においては、前面枠ヒータ60を作動させて、その結露を防止するようになっている(冷却時作動処理)。
【0035】
ii)乾燥運転
また、本急速冷却庫10は、庫内を乾燥させる運転モードとして乾燥運転が可能倒されている。その乾燥運転は、例えばユーザーが庫内を洗浄した後に、操作パネル73を操作して乾燥運転の開始を指示すると開始される。
【0036】
乾燥運転において、制御装置70は、は、庫内ヒータ45と庫内ファン41とを作動させる。庫内ヒータ45に通電して庫内ファン41を回転させると、庫内に温風が送り出されて庫内温度が上昇し、庫内の水分が徐々に水蒸気に変化する。水分が水蒸気に変化すると体積が膨張して庫内の圧力が上がり、それにより、排気口から水蒸気を排気させるとともに、吸気口から庫内に外気を吸い込んで、庫内を乾燥させるようになっている。
【0037】
iii)お手入れ運転
また、本急速冷却庫10は、洗浄装置50によって庫内を自動洗浄することが可能となっており、その自動洗浄後に上記の乾燥運転と、その乾燥運転後に除菌装置55によるUV除菌と、連続して行うことが可能とされている。急速冷却運転を行った後、操作パネル73を操作してお手入れ運転の開始を指示すると開始される。なお、このお手入れ運転が完了した後には、主電源74を起動状態から非起動状態に切り替えるようにすることが可能となっている。
【0038】
iv)前面枠ヒータの制御(非冷却時作動処理)
上述した乾燥運転が行われると、庫内の温度は60℃近くまで上昇する。その庫内の温度上昇や水蒸気による庫内の湿度上昇に伴って、庫内と庫外との境界にある扉12のパッキン26や扉13のパッキンは、温められて柔らかくなり(膨張し)、冷却庫本体11およびピラー16の前面になじんで、例えば接する面積が大きくなる。そして、乾燥運転やお手入れ運転が終了した後は、常温に戻されることになるが、外気温が低い環境に長時間さらされると、パッキン26も温度が下がって収縮することになる。その収縮により、パッキン26は、冷却庫本体11やピラー16に固着し、扉12を開ける際に大きな力が必要となったり、扉12と冷却庫本体11やピラー16との間に隙間が生じたりする虞がある。
【0039】
それに対処するために、本急速冷却庫10は、冷却運転、乾燥運転、お手入れ運転等種々の運転が行われていない場合において、パッキン26の温度が低下している状況下(以下、「パッキン低温状況下」と呼ぶ場合がある。)になると、制御装置70が、前面枠ヒータを作動させるようになっており、パッキン26の温度低下が抑えられるようになっている。詳しく言えば、制御装置70は、庫内温度センサ71により検出された内部温度TINと、庫外温度センサ72により検出された外部温度TOUTとに基づいて、パッキン低温状況下にあるか否かを判断し、パッキン低温状況下にあると判断されると、前面枠ヒータ60を作動させるのである。
【0040】
本実施例の急速冷却庫10においては、制御装置70は、外部温度TOUTが閾外部温度T0以下で、かつ、内部温度TINが閾内部温度T1以下となった場合に、パッキン低温状況下にあると判断し、前面枠ヒータ60を作動させる。そして、外部温度TOUTと内部温度TINとのいずれか一方の温度が高くなった場合、具体的には、外部温度TOUTが閾外部温度T0より高くなった場合、あるいは、内部温度TINが閾内部温度T1より高くなった場合に、作動させた前面枠ヒータ60を停止させるようになっている。
【0041】
本急速冷却庫10は、加熱装置としての庫内ヒータ45によって、庫内の温度が一時的に高くなる場合があり、パッキン26の温度も高くなりやすい。つまり、本実施例の急速冷却庫10は、パッキン26の温度差が大きく、温度低下によるパッキン26の収縮量が大きくなりやすいが、上記の前面枠ヒータ60の非冷却時作動処理によって、パッキン26の温度低下を効果的に抑えることができる。
【0042】
なお、パッキン低温状況下にあるか否かの判断は、上記の手段に限定されない。例えば、外部温度TOUTと内部温度TINとのいずれか一方のみで判断するようにしてもよい。ただし、外部温度TOUTと内部温度TINとのいずれか一方のみで、前面枠ヒータ60のオン・オフを制御する場合、監視していない方の温度が上がらないような場合には、前面枠ヒータ60を停止させるタイミングが遅れ、冷却庫本体11やピラー16の前面が熱くなる虞がある。したがって、本実施例の急速冷却庫10は、外部温度TOUTと内部温度TINとのいずれか一方の温度が高くなった場合に、前面枠ヒータ60を停止させるため、上記のような加熱し過ぎるような事態を回避することができる。
【0043】
また、パッキン低温状況下にあるか否かの判断は、乾燥運転が終了してからの経過時間や、前面枠ヒータ60を停止させた状態としてからの経過時間、あるいは、それら経過時間と、上記の温度との組み合わせによって、判断するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施例の急速冷却庫10は、起動状態にある場合だけでなく、非起動状態にある場合にも、制御装置70は作動しており、その制御装置70によって前面枠ヒータ60を作動させることが可能とされている。つまり、制御装置は、起動状態、非起動状態に関わらず、前面枠ヒータ60の非冷却時作動処理を実行することが可能とされている。したがって、本急速冷却庫10は、主電源74によって起動状態とした直後においても、先に述べたパッキン26の収縮による扉12,13の冷却庫本体11への固着や、それらの間の隙間の発生を抑えることができる。
【0045】
<前面枠ヒータの制御プログラム>
上述した前面枠ヒータ60の制御は、制御装置70によって、
図6にフローチャートを示す前面枠ヒータ制御プログラムが、短い時間間隔をおいて繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その前面枠ヒータ制御プログラムについて、説明する。
【0046】
前面枠ヒータ制御プログラムでは、まず、ステップ1(以下、「S1」と省略する。他のステップも同様である。)において、冷却装置44が作動しているか否か(冷却運転中か否か)が判断され、冷却運転中においては、S2~S4がスキップされ、S5において前面枠ヒータ60が作動させられる。一方、冷却運転が行われていない場合には、S2において、他の機能(乾燥運転、お手入れ運転等)が実行されているか否かが判断され、他の機能が実行されている場合には、S6において、前面枠ヒータ60は作動させられないようになっている。
【0047】
S2において他の機能が実行されていない場合には、S3において、庫外温度センサ72によって検出された外部温度TOUTが閾外部温度T0以下か否かが判断されるとともに、S4において、庫内温度センサ71によって検出された内部温度TINが閾内部温度T1以下か否かが判断される。そして、外部温度TOUTが閾外部温度T0以下、かつ、内部温度TINが閾内部温度T1以下である場合には、パッキン26の温度が低下している状況下にあると判断し、前面枠ヒータ60が作動させられる。
【0048】
一方、外部温度TOUTが閾外部温度T0より高い場合、あるいは、内部温度TINが閾内部温度T1より高い場合には、S6において、前面枠ヒータ60が停止させられる。つまり、前面枠ヒータ60が作動させられている場合において、外部温度TOUTと内部温度TINとのいずれか一方が閾値より高くなると、前面枠ヒータ60が停止させられるようになっている。以上で、前面枠ヒータ制御プログラムの1回の実行が終了する。
【0049】
<制御装置の機能構成>
制御装置70は、
図5にブロック図で示すような機能構成、つまり、上記のプログラム等を実行する機能部等のいくつかの機能部を有する機能構成のものとされていると考えることができる。具体的には、まず、制御装置70は、冷却運転において冷却装置44を制御する冷却装置制御部80と、乾燥運転等において庫内ヒータ45を制御する庫内ヒータ制御部81と、お手入れ運転等において洗浄装置50を制御する洗浄装置制御部82と、お手入れ運転等において除菌装置55を制御する除菌装置制御部83と、起動状態・非起動状態に関わらず常時に前面枠ヒータ60を制御する前面枠ヒータ制御部84と、を備えている。
【0050】
また、上述した前面枠ヒータ制御プログラムの実行によれば、上記の前面枠ヒータ制御部84は、S1およびS5の処理を実行する機能部として、冷却装置制御部80によって冷却装置44が作動させられている場合に前面枠ヒータ60を作動させる冷却時作動処理を実行する冷却時作動処理部85と、S2~S6の処理を実行する機能部として、冷却装置44が作動していない場合にパッキン26の温度が低下している状況下になると前面枠ヒータ60を作動させる非冷却時作動処理を実行する非冷却時作動処理部86と、を含んで構成されていると考えることができる。
【0051】
<他の実施形態>
本実施例の貯蔵庫は、急速冷却庫とされていたが、それに限定されず、冷却運転を停止させる場合のある貯蔵庫に広く適用可能である。また、本実施例の貯蔵庫は、庫内を加熱する加熱装置として庫内ヒータ45を備えたものであったが、備えていないものであってもよい。ただし、加熱装置を備えた貯蔵庫は、シール部材の温度が高くなりやすいため、そのような貯蔵庫には、本発明の貯蔵庫が特に有効である。
【符号の説明】
【0052】
10…急速冷却庫〔貯蔵庫〕、11…冷却庫本体〔貯蔵庫本体〕、11A…前端面、12…扉、16…ピラー、20…収容室〔貯蔵室〕、21…冷却ユニット、26…パッキン〔シール部材〕、40…冷却器、41…庫内ファン、43…冷凍装置、44…冷却装置、45…庫内ヒータ〔加熱装置〕、60…前面枠ヒータ、70…制御装置、71…庫内温度センサ、72…庫外温度センサ、74…主電源、80…冷却装置制御部、84…前面枠ヒータ制御部、85…冷却時作動処理部、86…非冷却時作動処理部