(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】固形状組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230731BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230731BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230731BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230731BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230731BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230731BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20230731BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230731BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230731BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/704
A61K31/7048
A61K9/14
A61P25/28
A61P9/12
A61P9/14
A61P9/00
A61P43/00 121
A61K31/216
(21)【出願番号】P 2019073942
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 琴美
(72)【発明者】
【氏名】首藤 愛呼
(72)【発明者】
【氏名】林田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】池田 学人
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-112935(JP,A)
【文献】特開2013-013392(JP,A)
【文献】特開2014-125461(JP,A)
【文献】世界のウェブアーカイブ|インターネット通販サイトYahoo!ショッピングの店舗「ラ・グランダ・ファミリオ」に掲載された商品「コーヒーグラノーラ」の商品情報(http://store.shopping.yahoo.co.jp/grandafamilio/coffee.html)に対する2015年 6月 30日付けアーカイブ,2015年,[オンライン],[検索日:2023年 1月31日],URL,http://web.archive.org/web/20150630021103/http://store.shopping.yahoo.co.jp/grandafamilio/coffee.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A61K,A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII),
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)クロロゲン酸類
2.0質量%以上
(B)ヘスペリジン類
を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比[(B)/(A)]が0.3以上
8以下であ
り、固形状態のクロロゲン酸類が舌に接触する形態で摂取される固形状組成物。
【請求項2】
成分(A)の含有量が80質量%以下である請求項
1記載の固形状組成物。
【請求項3】
成分(B)の含有量が2.0質量%以上である請求項1
又は2記載の固形状組成物。
【請求項4】
成分(B)の含有量が80質量%以下である請求項1~
3のいずれか1項記載の固形状組成物。
【請求項5】
成分(B)がグルコシルヘスペリジンである請求項1~
4のいずれか1項記載の固形状組成物。
【請求項6】
顆粒剤、散剤、錠剤又は丸剤である請求項1~5のいずれか1項記載の固形状組成物。
【請求項7】
錠剤又は散剤である請求項1~5のいずれか1項記載の固形状組成物。
【請求項8】
次の成分(A)及び(B):
(A)クロロゲン酸類 2.0質量%以上
(B)ヘスペリジン類
を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比[(B)/(A)]が0.3以上8以下であり、チュアブル錠である固形状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロゲン酸類及びヘスペリジン類を含有する固形状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロゲン酸類は、コーヒー中に含まれる代表的なポリフェノールであり、抗酸化作用、血圧降下作用、高次脳機能改善作用等の生理作用を有することが報告されている(例えば、特許文献1)。これまでに、クロロゲン酸類を含む飲食品が多数上市されている。
【0003】
一方、ヘスペリジン類は、柑橘類に多く含まれるフラボノイドであり、毛細血管の強化作用、血流改善作用等の生理作用を有することが報告されている。また、ヘスペリジン配糖体またはヘスペリジン配糖体とヘスペリジンとの混合物を野菜飲料等の飲食品に添加すると、その青臭みや苦味、渋味等を低減できることが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-39797号公報
【文献】特開平11-318379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
錠剤や散剤等の固形状組成物は、携帯性や保存性に優れ、手軽にクロロゲン酸類の生理的効果を享受する上で好適な形態である。しかしながら、粉末等の固形状態のクロロゲン酸類は、摂取後に刺激感が舌に強く残り、この舌に残る刺激感がクロロゲン酸類を固形状組成物形態で摂取することを困難にすることが判明した。ここで、クロロゲン酸類の舌に残る刺激感は、摂取後、10秒程経ってから舌に感じる刺激であり、タンニン酸の口に含んだ直後から感じる不快な苦渋味(所謂、柿渋様の味)とは異なる。
従って、本発明は、舌に残る刺激感が少ないクロロゲン酸類含有固形状組成物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、クロロゲン酸類に対し、ヘスペリジン類を特定の量比で含有させることで、クロロゲン酸類の舌に残る刺激感を抑制できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)クロロゲン酸類
(B)ヘスペリジン類
を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比[(B)/(A)]が0.3以上である固形状組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロロゲン酸類の舌に残る刺激感が少ない、クロロゲン酸類含有固形状組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の固形状組成物は、(A)クロロゲン酸類を含有する。ここで、本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルロイルキナ酸、4-フェルロイルキナ酸及び5-フェルロイルキナ酸のモノフェルロイルキナ酸を併せての総称である。本発明においては上記6種のうち少なくとも1種を含有すればよい。
成分(A)は、塩や水和物の形態であってもよい。塩としては生理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩を挙げることができる。
【0010】
成分(A)としては、市販の試薬を用いてもよいが、成分(A)を含む植物の抽出物を使用することもできる。
植物としては、成分(A)が含まれていれば特に限定されないが、例えば、ヒマワリ種子、リンゴ未熟果、コーヒー豆、シモン葉、マツ科植物の球果、マツ科植物の種子殻、サトウキビ、南天の葉、ゴボウ、ナスの皮、ウメの果実、フキタンポポ、ブドウ科植物等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、クロロゲン酸類の含有量等の観点から、コーヒー豆が好ましい。コーヒー豆の豆種及び産地は、特に限定されない。
【0011】
コーヒー豆は、生コーヒー豆でも、焙煎コーヒー豆でもよく、これらを併用することもできる。焙煎コーヒー豆は、クロロゲン酸類の含有量の観点から、浅焙煎コーヒー豆であることが好ましい。浅焙煎コーヒー豆のL値の範囲としては、好ましくは27以上62未満、より好ましくは29以上60以下、更に好ましくは35以上55以下である。ここで、本明細書において「L値」とは、黒をL値0とし、また白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を粉砕後に色差計(例えば、スペクトロフォトメーター SE2000、(株)日本電色社製)で測定したものである。
抽出方法及び抽出条件は、適宜選択することができ、例えば、水や熱水、水溶性有機溶媒を用いて、バッチ抽出、ドリップ抽出、カラム抽出等の公知の方法により行うことができる。水溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。抽出方法は、例えば、特開昭58-138347号公報、特開昭59-51763号公報、特開昭62-111671号公報、特開平5-236918号公報に記載の方法等を採用することができる。抽出に付されるコーヒー豆は、未粉砕のものでも、粉砕したものでもよい。
抽出後、得られた抽出液は、常圧濃縮、減圧濃縮、膜濃縮等の公知の手段により濃縮してもよく、また、抽出液や濃縮液を精製してもよい。乾燥は、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の手段により行うことができる。
成分(A)の試薬、成分(A)を含む植物抽出物の形態は、室温(25℃)で、固形(粉末、顆粒等)である。
【0012】
本発明の固形状組成物中、成分(A)の含有量は、生理活性の観点から、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは7.0質量%以上である。また、刺激感抑制の観点から、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
本明細書において、成分(A)の含有量は上記6種の合計量に基づいて定義される。なお、成分(A)が塩又は水和物である場合、成分(A)の含有量は、遊離酸であるクロロゲン酸類に換算した値とする。成分(A)の分析は、例えば、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。例えば、後掲の実施例に記載の方法で分析することが可能である。
【0013】
本発明の固形状組成物は、(B)ヘスペリジン類を含有する。ヘスペリジン類は、ヘスペリジン、ヘスペリジンに糖が結合した糖付加物、ヘスペリジンのメチル化物の総称である。
ヘスペリジンは、ヘスペレチン(5,7,3'-トリヒドロキシ-4'-メトキシフラバノン)の7位の水酸基にルチノース(L-ラムノシル-(α1→6)-D-グルコース)がβ結合した配糖体であり、ヘスペリジンの糖付加物は、ヘスペリジンの糖部分(ルチノース部分)に別の糖、例えばグルコース、マルトース、フルクトース、ラムノース、ラクトース等を結合させた化合物である。ヘスペリジンの糖付加物は、溶解性の観点から、ヘスペリジンに1個~10個のグルコースが結合したグルコシルヘスペリジンが好ましく、更にグルコース1個が結合したモノグルコシルヘスペリジンが好ましい。グルコースの付加数は分布を持っていてもよく、ヘスペリジン1モルに対するグルコースの平均付加モル数は1~10が好ましい。
【0014】
ヘスペリジンのメチル化物のメチル化の位置、個数は特に限定されない。メチルヘスペ
リジンとしては、主に、カルコン型化合物(1)及びフラバノン型化合物(2)が含まれ
ることが知られており、その構成成分として、例えば以下に示す構造のものが挙げられる。
【0015】
【0016】
(式中、Rは、水素原子もしくはメチル基を表す)
【0017】
ここで、医薬品添加物及び食品添加物としてのメチルヘスペリジンは、主に、化合物(3)及び(4)の混合物として取り扱われている。
【0018】
【0019】
(式中、Glは、グルコース残基、Rhは、ラムノース残基を表す。また、Gl-2は、グルコース残基の2位((3-1)の場合、3位も含む)、Rh-2は、ラムノース残基の2位を表す。)
なお、化粧品原料としてのヘスペリジンメチルカルコンは、(5)で示される化合物として取り扱われている。カルコン型化合物を多く含む組成の場合、ヘスペリジンメチルカルコンとも呼ばれる。
【0020】
【0021】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【0022】
本発明においてメチルヘスペリジンは、上記で示したカルコン型化合物(1)とフラバノン型化合物(2)の両方を含むものでもよいし、また、それぞれの片方のみを含むものでもよい。
本発明において、より好適なメチルヘスペリジンとしては、化合物(3)と化合物(4)の混合物が挙げられる。
【0023】
成分(B)は、クロロゲン酸類の舌に残る刺激感を抑制する観点から、好ましくはヘスペリジンの糖付加物であり、より好ましくはグルコシルヘスペリジンであり、更に好ましくはモノグルコシルヘスペリジンである。
【0024】
ヘスペリジン糖付加物は、例えば、ヘスペリジンに糖供与体の存在下、糖転移酵素を作用させる方法(特許第3060227号明細書等の記載を参照)により得ることができる。また、メチルヘスペリジンは、例えば、ヘスペリジンを水酸化ナトリウム水溶液に溶かし、そのアルカリ溶液に対応量のジメチル硫酸を作用させ、反応液を硫酸で中和し、n-ブチルアルコールで抽出し、溶媒を留去したのち、イソプロピルアルコールで再結晶する方法(崎浴、日本化學雑誌、79、733-6(1958)参照)により得ることができる。
成分(B)としては商業的に入手したものを使用してもよい。
【0025】
本発明の固形状組成物中、成分(B)の含有量は、有効性の観点から、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは7.0質量%以上である。また、ヘスペリジン類は、高濃度化するに従い特有の苦味を生じるため、ヘスペリジン類の苦味抑制の観点から、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
本明細書において、成分(B)の含有量は総ヘスペレチン配糖体換算値とする。ここで総ヘスペレチン配糖体の含量(乾燥物)(%)=ヘスペリジンの含量(%)+モノグルコシルヘスペリジンの含量(%)+グルコアミラーゼ処理により遊離するα-グルコシル残基量(%)である。成分(B)は、例えば、後掲の実施例に記載の方法で分析することが可能である。
【0026】
本発明の固形状組成物は、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比[(B)/(A)]が0.3以上である。かかる質量比とすることで、固形状組成物においてクロロゲン酸類の舌に残る刺激感を抑制できる。当該成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]は、クロロゲン酸類の舌に残る刺激感を抑制する観点から、好ましくは0.32以上であり、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上である。また、ヘスペリジン類の苦味抑制の観点から、成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]は、好ましくは8以下であり、より好ましくは3以下、更に好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0027】
本発明の固形状組成物には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、ミネラル(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、クロム、セレン、マンガン、モリブデン、銅、ヨウ素、リン、カリウム、ナトリウム)、ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸及びそれらの塩、又はそれらのエステル)、甘味料(例えば、単糖、少糖、糖アルコール、合成甘味料)、酸味料、香料、着色料、保存料等の添加剤が適宜配合されていてもよい。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0028】
本発明の固形状組成物は、室温(25℃)で固形状態のものであれば特に限定されないが、具体的な剤形として、例えば、カプセル剤、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤等が挙げられる。なかでも、1回あたり少量で摂取可能な点、摂取が簡便な点から、好ましくは錠剤、散剤であり、より好ましくはチュアブル錠である。
【0029】
このような固形状の組成物を調製する際には、必要に応じて許容される担体を適宜組み合わせて用いることができる。担体としては、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、蔗糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、リン酸水素カルシウム)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、メチルセルロース、硬化油)、崩壊剤(例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化ケイ素)、嬌味剤(例えば、ステビア、アスパルテーム)、香料、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、被膜剤、希釈剤等が挙げられる。担体の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0030】
本発明の固形状組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方法を採り得る。例えば、成分(A)及び成分(B)、必要に応じて担体及び/又は添加剤を、成分(A)と成分(B)の質量比が上記範囲内となるように混合して製造することができる。各成分の混合順序は特に限定されず、任意の順序で添加しても、同時に添加してもよい。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法を採用することが可能であり、混合装置を使用しても構わない。混合装置の混合方式は、容器回転型でも、容器固定型でもよい。容器回転型として、例えば、水平円筒型、V型、ダブルコーン型、立方体型等を採用することができる。また、容器固定型として、例えば、リボン型、スクリュー型、円錐形スクリュー型、パドル型、流動層型、フィリップスブレンダ-等を採用することができる。
また、公知の造粒法により造粒物としてもよい。造粒方法としては、例えば、噴霧造粒、流動層造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒、押出造粒、粉末被覆造粒等が挙げられる。造粒条件は、造粒方法により適宜選択することができる。
【0031】
錠剤とする場合には、成分(A)及び成分(B)、必要に応じて担体及び/又は添加剤の混合物を原料粉末として直接圧縮して成形しても、上記の造粒方法により造粒してから、造粒物を打錠成形機で圧縮して成形しても良い。
直接又は造粒物を圧縮して成形して錠剤を製造する場合、打錠成形機としてはロータリー式打錠機や単発式打錠機等通常使用されるものを用いることができる。
打錠時の圧縮成形圧は、成形物の硬度維持の観点から、10~30MPa程度が好ましい。
また、錠剤硬度は、運搬や保存等に耐え得る硬度であることが好ましく、10N~200N程度が好ましい。
錠剤の形状は、円形又は楕円形、長円形、四角形等の面形を有する各種異形錠であってもよいが、服用性の観点から円形であることが好ましい。円形錠の場合、服用性の観点から、直径3~30mmが好ましく、3~20mmがより好ましい。また、錠剤は、一製剤当たり0.1~6gの重さとするのが、簡便性及び有効性の点で好ましい。
【実施例】
【0032】
[クロロゲン酸類の分析]
クロロゲン酸の定量は、島津製作所製高速液体クロマトグラフを用い、インタクト社製Cadenza CD-C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径5μmを装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。
【0033】
(分析条件)
・サンプル注入量:10μL
・流量:1.0mL/min
・紫外線吸光光度計検出波長:325nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:0.05mol/L酢酸、0.01mol/L酢酸ナトリウム、及び0.1mmol/L HEDP(1- ヒドロキシエタン-1,1- ジホスホン酸)を含有する5%アセトニトリル
・溶離液B:アセトニトリル
【0034】
(濃度勾配条件)
時間(分) 溶離液A(体積%) 溶離液B(体積%)
0.0 100% 0%
10.0 100% 0%
15.0 95% 5%
20.0 95% 5%
22.0 92% 8%
50.0 92% 8%
52.0 10% 90%
60.0 10% 90%
60.1 100% 0%
70.0 100% 0%
【0035】
標準品を用いてクロロゲン酸類の保持時間を確認したところ、以下の通りであった。
・3-カフェオイルキナ酸 5.3分
・5-カフェオイルキナ酸 8.8分
・4-カフェオイルキナ酸 11.6分
・3-フェルロイルキナ酸 13.0分
・5-フェルロイルキナ酸 19.9分
・4-フェルロイルキナ酸 21.0分
上記保持時間と一致したピークの面積値から、クロロゲン酸類の定量を行った。
【0036】
[ヘスペリジン類の分析]
ヘスペリジンの定量は、島津製作所製高速液体クロマトグラフを用い、インタクト社製Cadenza CD-C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径5μmを装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。
【0037】
(分析条件)
・サンプル注入量:10μL
・流量:1.0mL/min
・紫外線吸光光度計検出波長:280nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:0.05mol/L酢酸、0.01mol/L酢酸ナトリウム、及び0.1mmol/L HEDP(1- ヒドロキシエタン-1,1- ジホスホン酸)を含有する5%アセトニトリル
・溶離液B:アセトニトリル
【0038】
(濃度勾配条件)
時間(分) 溶離液A(体積%) 溶離液B(体積%)
0.0 100% 0%
10.0 100% 0%
15.0 95% 5%
20.0 95% 5%
22.0 92% 8%
45.0 92% 8%
47.0 87.5% 12.5%
60.0 87.5% 12.5%
62.0 10.0% 90.0%
70.0 10.0% 90.0%
70.1 100% 0%
80.0 100% 0%
【0039】
実施例1~7及び比較例1~4
表1に記載の配合組成で各原料成分を均一に混合し、粉末食品を得た。
得られた粉末食品について、次の官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
〔クロロゲン酸類由来の舌に残る刺激感〕
上記の各実施例及び比較例で得られた粉末食品200mgを摂取した後の舌に残る刺激感を評価した。評価基準は下記の通りとし、専門パネル3名が評価を行い、協議により評点を決定した。なお、実施例1の粉末食品の舌に残る刺激感を評点「1」とし、比較例4の粉末食品の舌に残る刺激感を評点「5」として5段階で評価した。
〔舌に残る刺激感〕
1:摂取後、舌に残る刺激感が弱い
2:摂取後、舌に残る刺激感がやや弱い
3:摂取後、舌に残る刺激感がやや強い
4:摂取後、舌に残る刺激感が強い
5:摂取後、舌に残る刺激感がとても強い
【0041】
〔ヘスペリジン類の苦味〕
上記の各実施例及び比較例で得られた粉末食品200mgを摂取した時の苦味を評価した。評価基準は下記の通りとし、専門パネル3名が評価を行い、協議により評点を決定した。なお、比較例4の粉末食品の苦味を評点「1」とし、実施例1の粉末食品の苦味を評点「5」として5段階で評価した。
〔苦味〕
1:苦味が弱い
2:苦味がやや弱い
3:苦味がやや強い
4:苦味が強い
5:苦味がとても強い
【0042】
【0043】
実施例8~13及び比較例5
表2に記載の配合組成で各成分を均一に混合し、実施例1と同様に粉末食品を得た。
得られた粉末食品について、比較例5の粉末食品の舌に残る刺激感を評点「5」、苦味を評点「1」として5段階で評価した以外は、実施例1と同様の方法で官能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
製造例1 クロロゲン酸類製剤の製造
生コーヒー豆の粉砕物を熱水で抽出後、エタノール水溶液に溶解させ、ろ過して得られたろ過液を活性炭処理することで生コーヒー豆抽出物を得た。スプレードライにより、粉末状のクロロゲン酸類製剤を得た。
クロロゲン酸類製剤中のクロロゲン酸類(3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸、5-カフェオイルキナ酸、3-フェルロイルキナ酸、4-フェルロイルキナ酸、5-フェルロイルキナ酸)の含有量は30質量%であった。
【0046】
実施例14~15及び比較例6
表3に記載の配合組成で各成分を均一に混合し、実施例1と同様に粉末食品を得た。
得られた粉末食品について、実施例1と同様の方法で官能評価(クロロゲン酸類由来の舌に残る刺激感)を行った。その結果を表3に示す。
【0047】
【0048】
表1~表3より、クロロゲン酸類に対し、ヘスペリジン類を特定の量比で含有させることで、クロロゲン酸類の舌に残る刺激感を抑制できることが確認された。