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特許7321745過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルム及び包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230731BHJP
   B65B 55/10 20060101ALI20230731BHJP
   B65B 55/02 20060101ALI20230731BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20230731BHJP
   B65B 55/18 20060101ALI20230731BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B65D65/40 BRQ
B65B55/10 A ZBP
B65B55/02 A
B65B55/04 B
B65B55/18
A61L2/20 106
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019075508
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020172299
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 俊明
(72)【発明者】
【氏名】檀 有馬
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-193617(JP,A)
【文献】特開2003-053917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0092398(US,A1)
【文献】特開2017-205293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65B 55/02-55/18
A61L 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素滅菌が施される医療用品を包装するフィルムであって、内側を医療用品側に向けて医療用品を包装する包装フィルムにおいて、
内側フィルム層と、前記内側フィルム層の外側に配置された外側フィルム層と、を有し、
前記内側フィルム層と前記外側フィルム層の間に、過酸化水素を分解する触媒を含む触媒層が介在されており、
前記内側フィルム層が、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成された多孔構造であり、
前記外側フィルム層が、無孔構造である、過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルム。
【請求項2】
前記内側フィルム層の貫通孔が、前記内側フィルム層の内面に開口された孔内端と、内側フィルム層の外面に開口された孔外端と、前記孔内端と孔外端の間に連通された孔路と、からなり、
前記孔外端の開口面積が、前記孔内端の開口面積よりも大きい、請求項1に記載の過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルム。
【請求項3】
前記貫通孔の孔路が、前記孔内端から孔外端に向かうに従って次第に大きく形成されている、請求項2に記載の過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルム。
【請求項4】
前記内側フィルム層の最内面部が、シーラント性を有し、前記外側フィルム層の最外面部が、耐熱性を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルム。
【請求項5】
過酸化水素と医療用品が、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医療用品包装フィルムにて密封されている、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素滅菌に供される医療用品を包装する包装フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
プレフィルドシリンジなどの医療用品を過酸化水素を用いて滅菌する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、医療用品であるプレフィルドシリンジを容器本体に収納し、この容器本体の凹部開口を封止フィルムによってヒートシールして密封することによって包装体を得、この包装体の内部空間に、過酸化水素水又は過酸化水素ガスを充填することが開示されている。
前記過酸化水素水がガス化する条件下におくと、包装体内が医療用品の外面を滅菌可能な過酸化水素雰囲気濃度に到達し、医療用品が滅菌される。最高濃度に到達した後には、過酸化水素が、包装体の外部へと徐々に流出するようになる。そして、包装体内の過酸化水素が低濃度となった後も引き続いて過酸化水素が流出する。最終的に、包装体内のほぼすべての過酸化水素が流出すると、包装体を利用できるようになる(つまり、包装体の製造者から医療機関などの使用場所に出荷できるようになる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-016053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、医療用品を過酸化水素滅菌した場合、包装体内からほぼ全ての過酸化水素を流出させることが望ましく、特に、商品の生産効率の観点からは、過酸化水素を包装体から可及的速やかに流出させることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、過酸化水素滅菌が施される医療用品を包装するために用いられ、包装体内の過酸化水素を速やかに除去できる医療用品包装フィルム、及びその包装フィルムによって医療用品が包装された包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、過酸化水素滅菌が施される医療用品を包装するフィルムであって、内側を医療用品側に向けて医療用品を包装する包装フィルムにおいて、内側フィルム層と、前記内側フィルム層の外側に配置された外側フィルム層と、を有し、前記内側フィルム層と前記外側フィルム層の間に、過酸化水素を分解する触媒を含む触媒層が介在されており、前記内側フィルム層が、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成された多孔構造であり、前記外側フィルム層が、無孔構造である。
【0007】
発明の好ましい過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルムは、前記内側フィルム層の貫通孔が、前記内側フィルム層の内面に開口された孔内端と、内側フィルム層の外面に開口された孔外端と、前記孔内端と孔外端の間に連通された孔路と、からなり、前記孔外端の開口面積が、前記孔内端の開口面積よりも大きい。
本発明の好ましい過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルムは、前記貫通孔の孔路が、前記孔内端から孔外端に向かうに従って次第に大きく形成されている。
本発明の好ましい過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルムは、前記内側フィルム層の最内面部が、シーラント性を有し、前記外側フィルム層の最外面部が、耐熱性を有する。
本発明の包装体は、過酸化水素と医療用品が、上記いずれかの医療用品包装フィルムにて密封されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルムを用いて、医療用品と共に過酸化水素を密封状に包装した包装体を作製することにより、医療用品を滅菌でき、さらに、過酸化水素を包装体から速やかに除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の包装フィルムの一部省略平面図。
図2図1のII-II線で切断した断面図。
図3】内側フィルム層を外側から見て、貫通孔の形状及び配置を表した参考平面図。
図4】本発明の包装フィルムを用いて作製されたピロー包装袋(第1の包装体)の平面図。
図5図4のV-V線で切断した断面図。
図6】本発明の包装フィルムを用いて作製されたブリスター容器(第2の包装体)の平面図。
図7図6のVII-VII線で切断した断面図。
図8】第2実施形態の第1例の包装フィルムの断面図。
図9】第2実施形態の第2例の包装フィルムの断面図。
図10】第2実施形態の第3例の包装フィルムの断面図。
図11】第3実施形態の第1例の包装フィルムの断面図。
図12】第3実施形態の第2例の包装フィルムの内側フィルム層を外側から見て、貫通孔の形状及び配置を表した参考平面図。
図13】第3実施形態の第3例の包装フィルムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本明細書において、「内側」、「内面」などの「内」は、包装フィルムを用いて医療用品を包装した際に、当該医療用品に面する側を、「外側」及び「外面」などの「外」は、前記「内」とは反対側(包装フィルムを用いて医療用品を包装した際に、当該医療用品とは反対側)を意味する。
本明細書において、「下限値A~上限値B」で表される数値範囲は、下限値A以上上限値B以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
各図に示される層及び部材の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0011】
[医療用品包装フィルムの概要]
本発明の医療用品包装フィルムは、過酸化水素滅菌が施される医療用品を包装するために用いられ、過酸化水素を速やかに除去できる過酸化水素滅菌用途に適したフィルムである。以下、本発明の過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルムを単に「包装フィルム」という場合がある。
本発明の包装フィルムは、内側フィルム層と、前記内側フィルム層の外側に配置された外側フィルム層と、を有する多層フィルムである。前記内側フィルム層は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成された多孔構造であり、前記外側フィルム層は、無孔構造である。好ましくは、前記内側フィルム層と外側フィルム層の間には、過酸化水素を分解する触媒を含む触媒層が介在されている。
必要に応じて、包装フィルムは、印刷インキ層が設けられていてもよい。印刷インキ層は、無色又は有彩色のインキを固化させた印刷層である。
【0012】
包装フィルムは、従来公知のピロー包装袋などに使用されているフィルムと同程度の柔軟性を有する。また、包装フィルムは、実質的に熱収縮性を有さないものが用いられる。なお、熱収縮性は、所望の温度(例えば、70℃~90℃)に加熱されると収縮する性質をいう。
包装フィルム1の平面視形状は、図1に示すように、長尺帯状である。前記長尺帯状は、長手方向の長さが短手方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいい、例えば、長手方向長さが短手方向の長さの3倍以上、好ましくは5倍以上である。長尺帯状の具体的な寸法としては、例えば、短手方向の長さが100mm~3000mmで、長手方向の長さが2m~500mなどの場合が挙げられる。長尺帯状に形成された包装フィルム1は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、包装体を作製する際に、所望の形状に裁断して使用される。もっとも、本発明の包装フィルム1は、長尺帯状に限られず、平面視枚葉状に形成されていてもよい(図示せず)。前記枚葉状としては、例えば、平面視略四角形状、略三角形状や略六角形状などの平面視略多角形状、平面視略円状などが挙げられる。
【0013】
[第1実施形態]
<包装フィルムの積層構造例>
図2は、第1実施形態に係る包装フィルム1の断面図である。
図2を参照して、包装フィルム1は、内側から順に、内側フィルム層2と、前記内側フィルム層2に積層された触媒層3と、前記触媒層3に積層された外側フィルム層4と、を有する。
本実施形態では、前記内側フィルム層2には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔5が形成されている。他方、触媒層3及び外側フィルム層4には、厚み方向に貫通する貫通孔は形成されていない。
【0014】
<内側フィルム層>
内側フィルム層2は、包装フィルム1の内側の層を構成している。
内側フィルム層2は、1層から構成されていてもよく、或いは、2層以上から構成されていてもよい。
図示例では、内側フィルム層2は、2層以上の多層体から構成されている。
詳しくは、図示例では、内側フィルム層2は、2つの樹脂フィルム層21,22を有し、必要に応じて、その2つの樹脂フィルム層の間に介在された接着層61をさらに有する。以下、内側フィルム層2のうち内側フィルム層2の最内面部を構成する樹脂フィルム層を「最内樹脂フィルム層21」といい、内側フィルム層2の最外面部を構成する樹脂フィルム層を「最外樹脂フィルム層22」という場合がある。
内側フィルム層2の最内面部を構成する最内樹脂フィルム層21は、包装フィルム1の最内面部を構成する層でもある。
【0015】
ここで、本明細書において、フィルム層、接着層及び印刷インキ層は、いずれも層状であるが、フィルム層は、それ単独で層を成すことができる点で、接着層及び印刷インキ層とは異なる。つまり、フィルム層は、それ単独で層状を維持できるものであり、接着層、印刷インキ層及び蒸着層は、フィルム層に付着した状態で層を成しているが(フィルム層に支持されることによって層を成しているが)、それ単独では非常に脆く、僅かな力で破断して層状を維持できないものである。
【0016】
内側フィルム層2を構成する樹脂フィルム層(最内樹脂フィルム層21及び最外樹脂フィルム層22など)としては、公知の樹脂を主成分として含む樹脂層が挙げられる。前記樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレ-ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;6-ナイロン、66-ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリロニトリルなどのニトリル系樹脂;ポリイミドなどのイミド系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩化ビニル系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリレート系樹脂;などが挙げられる。樹脂フィルム層の厚みは、特に限定されず、例えば、8μm~120μmであり、好ましくは10μm~100μmである。
最内樹脂フィルム層21や最外樹脂フィルム層22などの樹脂フィルム層は、透明(無色透明又は有色透明)でもよく、或いは、不透明でもよい。好ましくは、透明な樹脂フィルム層が用いられ、より好ましくは、無色透明な樹脂フィルム層が用いられる。
【0017】
なお、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-オレフィン共重合体などは、シーラント性(熱溶着性)を有するので、このようなシーラント性を有する樹脂フィルム層を用いることにより、包装フィルム1にシーラント性を付与できる。さらに、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂やナイロンなどのポリアミド系樹脂は、シーラント性の樹脂フィルム層との比較において耐熱性に優れている。このような耐熱性を有する樹脂フィルム層を用いることにより、包装フィルム1に耐熱性を付与できる。
【0018】
熱シール可能な包装フィルム1を構成できることから、内側フィルム層2の最内面部を構成する最内樹脂フィルム層21として、前記低密度ポリエチレン樹脂などのシーラント性を有する樹脂フィルム層を用いることが好ましい。
最内樹脂フィルム層21の厚みは、特に限定されず、例えば、8μm~120μmである。最内樹脂フィルム層21がシーラント性を有する樹脂フィルム層である場合、その最内樹脂フィルム層21の厚みは、特に限定されないが、熱シール時に溶融することから、例えば、20μm~120μmであり、好ましくは、30μm~60μmである。
また、前記低密度ポリエチレン樹脂などのシーラント性を有する樹脂フィルム層は、比較的柔らかいので、内側フィルム層2(又は包装フィルム1)の強度を維持する観点から、最外樹脂フィルム層22として、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂などの機械的強度に比較的優れた樹脂フィルム層を用いることが好ましい。
最外樹脂フィルム層22の厚みは、特に限定されず、例えば、8μm~120μmである。最外樹脂フィルム層22が強度に優れた樹脂フィルム層である場合、その最外樹脂フィルム層22の厚みは、例えば、8μm~40μmであり、好ましくは、10μm~30μmである。
【0019】
前記最内樹脂フィルム層21と最外樹脂フィルム層22の間には、接着層61が設けられている。本明細書において、接着層は、フィルム層同士又はフィルム層と蒸着層などの他の層の間に介在して、それらの間を結合させるバインダーとして機能する層をいう。接着層は、従来公知の接着剤を用いて形成できる。前記接着剤としては、ドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、感熱接着剤、紫外線硬化型接着剤などが挙げられ、一般的には、ドライラミネート用接着剤又は紫外線硬化型接着剤が用いられる。
従って、図示の接着層61は、例えば、ドライラミネート用接着剤にて形成されており、最内樹脂フィルム層21と最外樹脂フィルム層22を結合させるバインダーとして機能している。
接着層61など接着層の厚みは、特に限定されず、例えば、2μm~20μmであり、好ましくは、3μm~10μmである。
なお、最内樹脂フィルム層21と最外樹脂フィルム層22が直接的に接着し得る樹脂フィルム層から構成される場合には、前記接着層61を省略してもよい。この場合、通常、最内樹脂フィルム層21と最外樹脂フィルム層22は、それぞれの樹脂材料を共押出してフィルム状に形成される。
【0020】
内側フィルム層2は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔5が形成された多孔構造である。内側フィルム層2が多層体からなる場合、前記貫通孔5は、全ての層(図示例では、最内樹脂フィルム層21、接着層61及び最外樹脂フィルム層22)を貫通するものである。
【0021】
具体的には、内側フィルム層2には、その面方向に一定間隔又は不規則な間隔を開けて複数の貫通孔5が形成されている。
図3は、貫通孔5の形状及び配置を表した平面図であって、内側フィルム層2の外側から垂線方向に内側フィルム層2の外面を見たときの参考平面図である。
図2及び図3を参照して、前記貫通孔5は、内側フィルム層2の厚み方向に貫通されている。厚み方向に貫通した貫通孔5は、内側フィルム層2の内面に開口された孔内端51と、内側フィルム層2の外面に開口された孔外端53と、前記孔内端51と孔外端53の間に連通された孔路52と、からなる。
貫通孔5の孔路52の軸芯は、内側フィルム層2の厚み方向(内側フィルム層2の面に対する垂線方向)と平行に延びている。もっとも、貫通孔5の孔路52の軸芯が前記厚み方向に対して少し傾斜していてもよい。
【0022】
孔内端51は、貫通孔5の一方側(内面側)の孔端であり、孔外端53は、貫通孔5の反対側(外面側)の孔端である。
孔内端51の平面視形状及び孔外端53の平面視形状は、特に限定されず、代表的には、図3に示すような平面視略円形状が挙げられる。なお、孔内端51の平面視形状及び孔外端53の平面視形状は、略楕円形状、略長方形状、略正方形状、略三角形状、略六角形状などに形成されていてもよい。本発明において、形状の「略」は、本発明の属する技術分野において許容される形状を意味する。
【0023】
孔内端51と孔外端53は、平面視で同形同大でもよく、同形異大でもよく、異形同大でもよく、異形異大でもよい。なお、孔内端51と孔外端53が異大とは、開口面積が異なるという意味である。
孔路52は、直管状でもよく、一方側から反対側に向かうに従って次第に開口面積が大きくなるように形成されていてもよい。
図示例では、孔内端51と孔外端53は、同形異大である(つまり、開口面積が異なる相似形である)。この場合、孔外端53が孔内端51よりも開口面積が大きくてもよく或いは小さくてもよい。内側フィルム層2の強度を維持でき且つ過酸化水素の排出を促進できることから、図2及び図3に示すように、孔外端53の開口面積が、孔内端51の開口面積よりも大きいことが好ましい。孔外端53の開口面積が孔内端51の開口面積よりも大きい場合(孔内端の開口面積<孔外端の開口面積の関係を満たす場合)、前記孔路52は、孔内端51から孔外端53に向かうに従って次第に開口面積が大きくなるように形成されていることが好ましい。
【0024】
孔外端53の開口面積と孔内端51の開口面積の差は、特に限定されないが、孔外端53の開口面積が孔内端51の開口面積に近すぎると、実質的に両者に差異がなく、一方、孔外端53の開口面積が孔内端51の開口面積から大きく離れすぎると、貫通孔5を形成することが困難となる。かかる観点から、孔外端53の開口面積と孔内端51の開口面積は、孔内端の開口面積×2<孔外端の開口面積<孔内端の開口面積×50の範囲であることが好ましく、孔内端の開口面積×5<孔外端の開口面積<孔内端の開口面積×40の範囲がより好ましく、孔内端の開口面積×10<孔外端の開口面積<孔内端の開口面積×30の範囲であることがさらに好ましい。
孔外端53の開口面積及び孔内端51の各開口面積は、特に限定されないが、余りに小さいと過酸化水素が内側フィルム層2の厚み方向に通過し難く、余りに大きいと貫通孔5を形成することが困難となる。
例えば、貫通孔5の孔径、孔面積及び分散率は、フラジール形通気性試験機を用いた内側フィルム層2の酸素透過率、過酸化水素透過率及び水蒸気透過率(JIS L1096に準拠)が、いずれも5万cc/m・atm・day~10万cc/m・atm・day(25℃、65%)となるように設定されることが好ましい。
【0025】
単位面積当たりの貫通孔5の形成数は、過酸化水素の除去効果と内側フィルム層2の強度を比較考慮して設定される。単位面積当たりの貫通孔5の形成数は、例えば、1個/平方cm~1000個/平方cmであり、好ましくは、10個/平方cm~100個/平方cmである。
具体的な構成例を1つ挙げると、内側フィルム層2の厚みが40μm~120μm、孔内端51が直径10μmの平面視略円形状、孔外端53が直径50μmの平面視略円形状、孔路52が円錐台状、面方向において縦及び横に隣接する孔外端53の縦間隔及び横間隔がそれぞれ100μmである。ただし、前記縦及び横に隣接する孔外端53の縦間隔及び横間隔は、隣接する孔外端53の中心点距離をいう。
【0026】
<外側フィルム層>
外側フィルム層4は、包装フィルム1の外側の層を構成している。外側フィルム層4は、無孔構造である。無孔構造とは、積極的に孔が形成されていないことをいう。つまり、外側フィルム層4を構成する樹脂フィルム層は、分子的に見ると樹脂(ポリマー)の間に微細な隙間があるが、このような隙間は本明細書の孔に該当しない。本発明の無孔構造は、穿孔処理が施されていない構造と言える。
外側フィルム層4は、1層から構成されていてもよく、或いは、2層以上から構成されていてもよい。
図示例では、外側フィルム層4は、1層の単層体から構成されている。
外側フィルム層4は、例えば、1つの樹脂フィルム層から構成される。
外側フィルム層4を構成する樹脂フィルム層としては、公知の樹脂を主成分として含む樹脂層が挙げられる。前記樹脂としては、上記内側フィルム層2で例示したような樹脂が挙げられる。
外側フィルム層4を構成する樹脂フィルム層は、透明(無色透明又は有色透明)でもよく、或いは、不透明でもよい。好ましくは、透明な樹脂フィルム層が用いられ、より好ましくは、無色透明なフィルム層が用いられる。
内側フィルム層2の最内面部がシーラント性を有する樹脂フィルム層である場合、外側フィルム層4は、上記耐熱性を有する樹脂フィルム層(ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂などのシーラント性の樹脂フィルム層との比較において耐熱性に優れている樹脂フィルム層)を用いることが好ましい。
外側フィルム層4の厚みは、例えば、10μm~80μmであり、好ましくは、12μm~50μmである。
【0027】
<触媒層>
触媒層3は、内側フィルム層2と外側フィルム層4の間に積層されている。本実施形態では、触媒層3は、過酸化水素を分解する触媒を含んでいる。なお、過酸化水素は、常温で、酸素と水に分解し得るが、前記触媒は、その分解反応を促進するため(分解反応速度を大きくするため)に用いられる。また、本実施形態では、触媒層3は、内側フィルム層2と外側フィルム層4を結合させるバインダーとしても機能している。つまり、本実施形態の触媒層3は、過酸化水素の触媒を含む層であり且つ接着層でもある。
前記触媒は、過酸化水素が水と酸素に自己分解することを促進できるものであれば特に限定されない。前記触媒としては、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、アルミニウム、クロムなどの金属類又は重金属類、二酸化マンガン、アルミナ、シリカアルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニア、シリカなどの酸化物などが挙げられる。
【0028】
本実施形態のように、接着層として機能する触媒層3は、前記触媒を添加した接着剤を用いて形成できる。前記接着剤としては、上述のように、ドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、感熱接着剤、紫外線硬化型接着剤などが挙げられ、一般的には、ドライラミネート用接着剤又は紫外線硬化型接着剤が用いられる。
触媒層3に含まれる触媒の含有量は、特に限定されない。本実施形態のように、接着層として機能する触媒層3に含まれる触媒の含有量は、触媒層3の全体を100重量%とした場合に、例えば、触媒を0.01重量%~90重量%含み、好ましくは、触媒を0.1重量%~50重量%含む。
触媒層3の厚みは、特に限定されず、例えば、2μm~20μmであり、好ましくは、3μm~10μmである。
【0029】
触媒層3は、内側フィルム層2と同様に多孔構造であってもよいが、接着層の機能を併有する触媒層3は、無孔構造であることが好ましい。
また、触媒層3の内面は、内側フィルム層2の外面に直接接している。従って、内側フィルム層2の貫通孔5の孔外端53から触媒層3の内面が覗き出ている状態である。なお、触媒層3の外面は、外側フィルム層4の内面に直接接している。
【0030】
<印刷インキ層>
印刷インキ層は、代表的には、包装フィルム1にデザインを付与する目的で設けられる。印刷インキ層は、図示しない。このようなデザイン目的の印刷インキ層は、有彩色のインキ層である。このようなデザイン目的の印刷インキ層は、包装フィルム1の外側からそのデザインが視認できるように設けられる。例えば、外側フィルム層4の外面にデザイン目的の印刷インキ層が設けられる。外側フィルム層4が透明である場合には、外側フィルム層4の内面にデザイン目的の印刷インキ層を設けてもよく、或いは、外側フィルム層4及び触媒層3がいずれも透明である場合には、内側フィルム層2の外面にデザイン目的の印刷インキ層を設けてもよい。
また、外側フィルム層4の外面を保護する目的で印刷インキ層を設けてもよい。保護目的の印刷インキ層は、オーバーコート層などとも呼ばれ、通常、無色透明なインキを印刷することによって形成される。
【0031】
<包装フィルムの製法>
上記のような多孔構造の内側フィルム層2/触媒層3/無孔構造の外側フィルム層4からなる包装フィルム1は、例えば、次のようにして製造できる。
最内樹脂フィルム層21となる長尺帯状の第1樹脂フィルム(例えば、低密度ポリエチレンフィルム)と最外樹脂フィルム層22となる長尺帯状の第2樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム)を準備する。前記第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムの間に、ドライラミネート接着剤などの接着剤をベタ状に介在させ、接着剤を固化させることにより、最内樹脂フィルム層21/接着層61/最外樹脂フィルム層22からなる内側フィルム層2が得られる。
なお、最内樹脂フィルム層21と最外樹脂フィルム層22が直接的に接着し得る樹脂材料から構成される場合には、最内樹脂フィルム層21と最外樹脂フィルム層22を形成する各樹脂材料を共押出しすることにより、最内樹脂フィルム層21/最外樹脂フィルム層22からなる内側フィルム層2を形成してもよい。
【0032】
この内側フィルム層2に穿孔処理を施すことによって、多孔構造の内側フィルム層2が得られる。
例えば、従来公知のミシン目形成装置(ミシン針を用いたミシン目形成装置、レーザー光を用いたミシン目形成装置など)を用いて、前記内側フィルム層2に穿孔処理を行うと、孔内端51と孔外端53が平面視で同形同大で且つ孔路52が直管状の貫通孔5を形成できる。
また、東邦樹脂工業株式会社が提供するポロソ加工を内側フィルム層2に施すことにより、好ましい貫通孔5(孔内端51の開口面積<孔外端53の開口面積の関係を満たし且つ孔路52が次第に大きくなった貫通孔5)を形成できる。
【0033】
他方、外側フィルム層4となる長尺帯状の樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム)を準備する。
この樹脂フィルムの内面と前記貫通孔5が形成された内側フィルム層2の外面の間に、触媒を含むドライラミネート接着剤などの触媒入り接着剤をベタ状に介在させ、その接着剤を固化させることにより、多孔構造の内側フィルム層2/無孔構造の触媒層3/無孔構造の外側フィルム層4からなる包装フィルム1が得られる。
得られた包装フィルム1は、ロール状に巻き取って保管・運搬に供される。
【0034】
<包装体>
本発明の包装フィルム1を用いて、過酸化水素滅菌が施される医療用品を包装することにより、包装体が得られる。
医療用品は、医療機関で使用される各種の物品であり、過酸化水素滅菌に供されるものである。
前記医療用品としては、プレフィルドシリンジ、アンプル、バイアル瓶、点眼・点鼻容器などの医薬品を収納した医療容器;ハサミやメスなどの医療用刃物類、鉗子類、検鏡、シャーレなどの容器類などの医療器具;などが挙げられる。
【0035】
本発明の包装フィルム1を用いて作製される包装体は、柔らかい包材でもよく、比較的硬い包材でもよい。前者の例としては、包装フィルム1をピロー包装袋などの軟包材に加工することが挙げられ、後者の例としては、包装フィルム1をブリスター容器の蓋材に加工することが挙げられる。
また、包装体は、本発明の包装フィルム1のみを用いて医療用品を包装してもよく、或いは、本発明の包装フィルム1と別の包材を用いて医療用品を包装してもよい。
【0036】
図4及び図5は、本発明の包装フィルム1を包装袋7(柔らかい包材)に加工した第1の包装体10の一例を示す。この例では、本発明の包装フィルム1のみを用いて医療用品Xを包装している包装体10を例示している。
図4及び図5を参照して、第1の包装体10は、医療用品Xと、この医療用品Xを密封状に包んだ包装袋7と、を有する。図示例では、医療用品Xとしてプレフィルドシリンジを例示している。
【0037】
前記包装袋7は、本発明の包装フィルム1から形成されており、その包装袋7の内部には、医療用品Xが密封状に収納されていると共に過酸化水素が封入されている。
前記第1の包装体10は、包装フィルム1の内面(内側フィルム層2側)を医療用品X側に向け、包装フィルム1にて医療用品Xの周囲を包み、その包装フィルム1の側端部の内面を互いに重ね合せて接着(例えば、熱シールなど)して接合部を形成することによって筒状体を形成すると共に、その筒状体の2つの筒口端部をそれぞれ扁平にして接着(例えば、熱シールなど)して接合部71を形成することにより、得られる。かかる形成方法で得られる包装体10は、いわゆる背貼りタイプのピロー包装袋の形態である。なお、上記のように、内側フィルム層2の最内面部がシーラント性を有する樹脂フィルム層で構成されている包装フィルム1は、前記側端部の内面及び前記筒口端部の内面が前記シーラント性を有する樹脂フィルム層で構成されるので、それらを熱シールして容易に包装袋7を形成できる。なお、熱シールした場合には、シーラント性の樹脂フィルム層が溶融するので、その熱シールされた部分に対応する貫通孔5は部分的に塞がれる。
【0038】
前記包装袋7内への過酸化水素の封入は、例えば、特許文献1(特開2006-016053)に開示された方法などを用いることができる。例えば、(1)包装フィルム1を包装袋7に加工する際に、医療用品Xと共に過酸化水素(過酸化水素水又は/及び過酸化水素ガス)を包み込む、(2)特許文献1の[0047]などに開示されているように、過酸化水素の注入器具を接続可能で且つ当該器具の取り外し後に気密性を維持できる注入部位を包装フィルム1の一部分に形成しておき、その包装フィルム1を用いて医療用品Xを包んだ包装袋7を作製した後、注入部位から過酸化水素を包装袋7内に注入する、(3)特許文献1の[0052]などに開示されているように、医療用品Xを密封状に包装した包装袋7を作製後、その包装袋7内に注入器具を用いて過酸化水素を注入した後、注入箇所を気密性シールなどを用いて封止する、などの方法が挙げられる。
【0039】
なお、図4及び図5では、本発明の包装フィルム1のみを用いて包装袋7を作製しているが、本発明の包装フィルム1と別の包装フィルム(従来公知の包装フィルム)を組み合わせて包装袋を作製したものでもよい(図示せず)。
【0040】
図6及び図7は、本発明の包装フィルム1をブリスター容器81の蓋材82に加工した第2の包装体10の一例を示す。この例では、本発明の包装フィルム1と別の包材(ブリスター容器81)を用いて医療用品Xを包装している包装体10を例示している。
図6及び図7を参照して、第2の包装体10は、医療用品Xと、この医療用品Xを入れたブリスター容器81と、ブリスター容器81の開口部を閉塞する蓋材82と、を有する。図示例では、医療用品Xとしてプレフィルドシリンジを例示している。
前記蓋材82は、本発明の包装フィルム1から形成されている。ブリスター容器81は、医療用品Xを収納できる収納凹部811を有する。ブリスター容器81の収納凹部811には、必要に応じて、医療用品Xを位置決めする係止部812などが設けられていてもよい。また、蓋材82には、フランジ部813から延出される摘まみ部821が形成されていてもよい。
【0041】
前記第2の包装体10は、ブリスター容器81の収納凹部811に医療用品Xを入れ、包装フィルム1の内面をブリスター容器81の収納凹部811側に向けてそのブリスター容器81の開口部を包装フィルム1にて密封状に塞ぐことにより、得られる。この包装体10は、ブリスター容器81と蓋材82(包装フィルム1)が協働して医療用品X及び過酸化水素を密封状に包装するものである。なお、上記のように最内面部がシーラント性を有する包装フィルム1は、ブリスター容器81のフランジ部813に熱シールできるので、容易に包装体10を形成できる。
前記ブリスター容器81と蓋材82の間への過酸化水素の封入は、上記第1の包装体10に例示したような方法で行うことができる。
【0042】
<本発明の包装フィルムを用いた包装体の利点>
上記包装体10を製造した後、包装体10内において、医療用品Xが過酸化水素によって滅菌される。
本発明の包装フィルム1は、内側フィルム層2が多孔構造であるが、少なくとも外側フィルム層4が無孔構造である。よって、この包装フィルム1を用いて医療用品Xを密封状に包装ができる。
そして、前記包装体10に残留した過酸化水素は、徐々に除去されていく。
本発明の包装フィルム1は、内側フィルム層2が多孔構造であるので、包装体10内に残留した過酸化水素が、内側フィルム層2の貫通孔5を通じて触媒層3に直接接する。触媒層3は、過酸化水素の自己分解を促進する触媒が含まれているので、過酸化水素が速やかに水と酸素に分解されるようになる。特に、貫通孔5が、孔内端51の開口面積<孔外端53の開口面積の関係を満たように形成されていることにより、貫通孔5の孔外端53から覗き出る触媒層3の内面の面積が大きくなる。このため、過酸化水素が貫通孔5を通じて触媒層3に比較的大面積で接触するようになり(過酸化水素が大面積の孔外端53から触媒層3の内面に接触するようになり)、過酸化水素の分解が促進されるようになる。そして、過酸化水素、水及び酸素は、外側フィルム層4を構成するポリマーの分子隙間から包装体10の外部へと排出されていく。
【0043】
従来の過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルムは、全体的に無孔構造であるので、過酸化水素などが分子隙間を通過する距離が比較的長く、過酸化水素の排出に長期間を要する。
この点、本発明の過酸化水素滅菌用の医療用品包装フィルム1によれば、内側フィルム層2が多孔構造で且つ外側フィルム層4が無孔構造であるので、過酸化水素などが分子隙間を通過する距離が比較的短くなり、包装体10内の過酸化水素を速やかに排出できるようになる。さらに、上述のように、過酸化水素を分解する触媒を含む触媒層3が設けられていることにより、過酸化水素が水と酸素に分解することも促進される。
本発明の包装フィルム1を用いれば、上述のように過酸化水素の包装体10の外部へ排出が促進され且つ過酸化水素の分解が促進されるので、包装体10内の過酸化水素を速やかに除去し、消失させることができる。かかる包装フィルム1から得られる医療用品Xの包装体10は、製造から出荷までの期間が短く、生産効率に優れている。
【0044】
以下、本発明の第2実施形態を説明するが、その説明に於いては、主として上述の実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある(第3実施形態も同様である)。
【0045】
[第2実施形態]
上記実施形態では、過酸化水素を分解する触媒を含む触媒層3が接着層を兼ねているが、バインダーとして機能しない触媒層を設けてもよい。
例えば、図8の包装フィルム1は、内側フィルム層2の外面に、触媒層3が積層されている。この触媒層3の外面には、接着層62を介して外側フィルム層4が積層されている。前記触媒層3は、過酸化水素を分解する触媒を含んでいれば特に限定されない。例えば、前記触媒層3は、触媒が添加された印刷インキ層(触媒入り印刷インキ層)、触媒機能を有する金属やシリカなどの酸化物からなる蒸着層などが挙げられる。簡易に形成できることから、前記触媒層3は、前記触媒入り印刷インキ層、又は/及び、前記触媒機能を有する金属やシリカなどの酸化物からなる蒸着層であることが好ましい。触媒入り印刷インキ層は、触媒を含む無色又は有彩色のインキを印刷することによって、最外樹脂フィルム層22に簡易に形成できる。金属又は酸化物の蒸着層は、蒸着によって最外樹脂フィルム層22に簡易に形成できる。この場合、触媒入り印刷インキ層を設けた又は/及び金属蒸着などの蒸着処理を施した最外樹脂フィルム層22を準備し、その最外樹脂フィルム層22と最内樹脂フィルム層21を接着層61を介して接着することにより、触媒層3が外面に積層された内側フィルム層2が得られる。これを外側フィルム層4に接着層62を介して積層することにより、図8に示す包装フィルム1が得られる。なお、最外樹脂フィルム層22に蒸着することに代えて又はこれと併用して、外側フィルム層4の内面に前記触媒層3である蒸着層又は/及び触媒入り印刷インキ層を形成してもよい。
前記金属又は酸化物の蒸着層(蒸着層からなる触媒層3)は、比較的ガスバリアー性に優れているので、蒸着層を介在させる場合には、図示のように、内側フィルム層2に形成される貫通孔5が前記蒸着層(触媒層3)にも貫通されていることが好ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、触媒層3は、内側フィルム層2と外側フィルム層4の間に設けられているが、例えば、図9に示すように、触媒層3が内側フィルム層2の内部に設けられていてもよい。図示例では、内側フィルム層2が、前記触媒層3と3つの樹脂フィルム層21,22,23とを有する場合を図示している。また、外側フィルム層4は、2つの樹脂フィルム層41,42を有する場合を例示しており、この場合、例えば、2つの樹脂フィルム層41,42の間に接着層63が設けられる。前記樹脂フィルム層42としては、例えば、上記外側フィルム層4で開示したものが挙げられ、前記樹脂フィルム層41としては、例えば、吸水層が挙げられる。吸水層としては、例えば、ゼオライトを含有するフィルム、不織布などが挙げられる。
前記内側フィルム層2と外側フィルム層4は、例えば、接着層66を介して接着されている。
この内側フィルム層2にあっては、例えば、中間樹脂フィルム層23に蒸着処理を施し(触媒層3を形成し)、その中間樹脂フィルム層23の内外面に、それぞれ接着層64,65を介して最内樹脂フィルム層21と最外樹脂フィルム層22が積層されている。なお、特に図示しないが、前記内側フィルム層2において、最内樹脂フィルム層21の外面及び/又は最外樹脂フィルム層22の内面に触媒層3が設けられていてもよい。
【0047】
なお、例えば、最外樹脂フィルム層22或いは中間樹脂フィルム層23を形成する樹脂材料に、過酸化水素を分解する触媒を含有させることにより、内側フィルム層2を構成する樹脂フィルム層を触媒層として兼用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、包装フィルム1が触媒層3を具備しているが、本発明の包装フィルム1は、触媒層を有さないフィルムであってもよい。
例えば、図10に示すように、多孔構造の内側フィルム層2と無孔構造の外側フィルム層4が、接着層67(触媒を含まない)を介して接着されている包装フィルム1であってもよい。触媒層を有さない包装フィルム1は、過酸化水素の分解促進を期待できないが、内側フィルム層2が多孔構造であるので、過酸化水素を包装体10の外部へ排出することを促進できる。
【0049】
[第3実施形態]
上記実施形態では、貫通孔5の孔路52は、孔内端51から孔外端53に向かうに従って次第に大きく形成されているが、例えば、図11に示すように、貫通孔5の孔路52が、断面視で階段状に形成されていてもよい。
また、上記実施形態で説明したように、貫通孔5の孔内端51及び孔外端53の各平面視形状は、図3に示すような略円形状に限られない。例えば、図12に示すように、大面積の孔外端53及び小面積の孔内端51がいずれも略矩形状に形成されていてもよい。図12に示す例では、大面積の孔外端53は、平面視略正方形状に形成され、小面積の孔内端51は、平面視略長方形状に形成されている。
さらに、上記実施形態で説明したように、貫通孔5は直管状でもよく、図13は、内側フィルム層2に直管状の貫通孔5が形成された包装フィルム1の一例を示している。
【符号の説明】
【0050】
1 包装フィルム
2 内側フィルム層
3 触媒層
4 外側フィルム層
5 貫通孔
51 孔内端
52 孔路
53 孔外端
10 包装体
X 医療用品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13