(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】シリコンヒドロハライド前駆体を用いたSiNのプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)
(51)【国際特許分類】
C23C 16/42 20060101AFI20230731BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230731BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C23C16/42
C23C16/455
H01L21/318 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019076142
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-02-15
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512144771
【氏名又は名称】エーエスエム アイピー ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】上田 真也
(72)【発明者】
【氏名】胡谷 大志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊哉
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-195564(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088062(WO,A1)
【文献】特開2013-093551(JP,A)
【文献】特開2009-239283(JP,A)
【文献】特開2017-079327(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
H01L 21/302
H01L 21/461
H01L 21/312-21/32
H01L 21/47 -21/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の堆積サイクルを含む原子層堆積(ALD)プロセスによって反応空間内の基板上の3次元構造上にSiN薄膜を堆積する方法であって、前記複数の堆積サイクルは、
順次プラズマ前処理段階であって、
前記基板と第1の水素プラズマとを接触させるステップと、
前記基板と前記第1の水素プラズマとを接触させた後に、水素プラズマの不在下で前記基板と第2の窒素プラズマとを接触させるステップとを含む、順次プラズマ前処理段階と、
前記基板をシリコンヒドロハライド前駆体および窒素反応体と交互に順次接触させるステップを含む窒化ケイ素堆積段階とを含
み、
前記シリコンヒドロハライド前駆体は、HSiI
3
、H
2
SiI
2
、H
3
SiI、HSi
2
I
5
、H
2
Si
2
I
4
、H
3
Si
2
I
3
、H
4
Si
2
I
2
、H
5
Si
2
I、HSiCl
3
、またはH
2
SiCl
2
を含み、
前記第1の水素プラズマは、第1のパワー及び第1の持続時間によって生成され、前記第2の窒素プラズマは、前記第1のパワーよりも低い第2のパワーまたは前記第1の持続時間より短い第2の持続時間によって生成される、方法。
【請求項2】
前記基板と前記第1の水素プラズマとを接触させるステップは、前記基板と前記第1の水素プラズマおよび窒素プラズマとを同時に接触させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記順次プラズマ前処理段階は各堆積サイクルにおいて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の窒素プラズマはN
2ガスにおいて形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記SiN膜は、前記3次元構造上
で100%か
ら300%のステップカバレッジを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板上の前記3次元構造は3以上のアスペクト比(AR)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記3次元構造は側壁を含み、前記SiN膜の前記側壁のコンフォーマリティは100%より大きい、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
反応空間内の基板上の3次元構造上にSiNを堆積するためのプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)法であって、堆積サイクルを含み、前記堆積サイクルは、
順次プラズマ前処理段階であって、
前記基板と、H
2およびN
2ガスの混合物において生成された第1のプラズマとを接触させるステップと、
前記基板と、H
2ガス不在下のN
2ガスにおいて生成された第2のプラズマとを接触させるステップとを含む、順次プラズマ前処理段階と、
前記基板とシリコン
ヒドロハライド前駆体とを接触させるステップを含む堆積段階とを順に含み、
前記堆積サイクルは2回またはそれ以上順次繰り返される、
前記シリコンヒドロハライド前駆体は、HSiI
3
、H
2
SiI
2
、H
3
SiI、HSi
2
I
5
、H
2
Si
2
I
4
、H
3
Si
2
I
3
、H
4
Si
2
I
2
、H
5
Si
2
I、HSiCl
3
、またはH
2
SiCl
2
を含み、
前記第1のプラズマは、第1のパワー及び第1の持続時間によって生成され、前記第2のプラズマは、前記第1のパワーよりも低い第2のパワーまたは前記第1の持続時間より短い第2の持続時間によって生成される、プラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)法。
【請求項9】
前記基板と前記
ヒドロハライドシリコン前駆体とを接触させる前、かつ前記基板と前記第1のプラズマおよび前記第2のプラズマとを接触させた後に、前記反応空間をパージするステップをさらに含む、請求項
8に記載のプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)法。
【請求項10】
前記堆積サイクル全体にわたって、N
2ガスが継続的に前記反応空間に流される、請求項
8に記載のプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)法。
【請求項11】
前記3次元構造は、側壁および上部領域を有するトレンチを含み、前記SiN膜は100%より大きい側壁コンフォーマリティを有する、請求項
8に記載のプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)法。
【請求項12】
前記SiN膜は、3次元特徴部の上部領域上の窒化ケイ素薄膜の希釈HFにおけるウェットエッチング速度(WER)に対する3次元特徴部の側壁上の窒化ケイ素薄膜の希釈HFにおけるウェットエッチング速度(WER)の比
が0.02か
ら3.0である、請求項
8に記載のプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)法。
【請求項13】
反応空間内の基板上にプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)によってSiNを堆積する方法であって、前記方法は複数の堆積サイクルを含み、前記複数の堆積サイクルは、
前記基板と、水素および窒素を含むガスに第1のプラズマパワーを加えることによって生成された第1のプラズマとを接触させるステップと、
その後、前記基板と、窒素を含むが水素を含まないガスに第2のプラズマパワーを加えることによって生成された第2のプラズマとを接触させるステップと、
前記基板を
シリコンヒドロハライド前駆体および窒素前駆体と交互に順次接触させることを含む堆積段階とを含
み、
前記シリコンヒドロハライド前駆体は、HSiI
3
、H
2
SiI
2
、H
3
SiI、HSi
2
I
5
、H
2
Si
2
I
4
、H
3
Si
2
I
3
、H
4
Si
2
I
2
、H
5
Si
2
I、HSiCl
3
、またはH
2
SiCl
2
を含み、
前記第1のプラズマは、第1のパワー及び第1の持続時間によって生成され、前記第2のプラズマは、前記第1のパワーよりも低い第2のパワーまたは前記第1の持続時間より短い第2の持続時間によって生成される、方法。
【請求項14】
前記SiNは、3より大きいアスペクト比を有するトレンチ上に堆積され、100%より大きいコンフォーマリティを有する、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、半導体デバイス製造の分野に関し、より具体的には水素プラズマおよび窒素プラズマ処理ステップによる窒化ケイ素膜の原子層堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なプラズマエンハンスト原子層堆積(plasma-enhanced atomic layer deposition(PEALD))プロセスによって3次元構造上に堆積された窒化ケイ素(SiN)膜は、たとえば側壁のコンフォーマリティ(conformality)が低いことおよび/またはステップカバレッジ(step coverage)が比較的乏しいことなどのいくつかの望ましくない特徴を有することがあり、これらはたとえばギャップフィルプロセスにおける空隙の形成などの問題をもたらす。このことは特に、高いアスペクト比(aspect ratio(AR))を有する構造上にPEALDによってSiNが堆積されるときに当てはまる。
図1は、従来の方法によってアスペクト比10を有する基板上の3次元構造上にPEALDによって堆積された窒化ケイ素膜の典型例の走査透過型電子顕微鏡(scanning transmission electron microscopy(STEM))画像を示す。
【0003】
側壁コンフォーマリティの欠如は、トレンチまたはその他の特徴部の入口における、より速い成長速度と、トレンチの内側の不均一な反応体露出を少なくとも部分的に原因とする内側のより遅い成長とによって、もたらされ得る。加えてコンフォーマリティの欠如は、プラズマ処理の際のトレンチの入口における再スパッタリングによって、もたらされ得る。膜の品質は、トレンチの上部または3次元構造の平面領域においては目標適用のために十分かもしれないが、3次元構造の側壁またはその他の非水平もしくは鉛直表面においては不十分であり得る。
【発明の概要】
【0004】
窒化ケイ素膜は、原子層堆積を用いて堆積され得る。一部の実施形態では、窒化ケイ素はたとえばプラズマエンハンスト原子層堆積(ALD)などのALDによって堆積され得る。一部の実施形態では、窒化ケイ素を形成するためのPEALD堆積サイクルの一部として、第1のプラズマ処理ステップと第2のプラズマ処理ステップとを含むプラズマ前処理段階が行われる。1つまたはそれ以上の堆積サイクルにおいて、プラズマ前処理段階は、水素プラズマと、水素プラズマ不在下の窒素プラズマとに基板を順次露出するステップを含む。
【0005】
プラズマ前処理段階の後に、窒化ケイ素堆積サイクルにおける窒化ケイ素堆積段階が行われる。窒化ケイ素堆積段階において、基板はシリコン前駆体に露出される。一部の実施形態では、基板はシリコン前駆体と窒素反応体とに交互に順次露出される。一部の実施形態では、窒化ケイ素を堆積するためにシリコンヒドロハライド前駆体が用いられる。一部の実施形態では、窒化ケイ素堆積段階は、プラズマ前処理段階の前に2つまたはそれ以上の連続する窒化ケイ素堆積サイクルにおいて行われる。こうした実施形態において、プラズマ前処理プロセスは、後の窒化ケイ素堆積サイクルの窒化ケイ素堆積段階の前に基板表面を修飾する。
【0006】
開示される方法によって堆積される窒化ケイ素膜は高い側壁コンフォーマリティを有することができ、一部の実施形態では、窒化ケイ素膜はトレンチ構造の側壁の上部よりも側壁の底部において厚くなり得る。ギャップフィルプロセスにおいて、窒化ケイ素堆積プロセスは空隙およびシームを低減または除去することができる。
【0007】
詳細な説明と、本発明を限定するのではなく例示することが意図された添付の図面とによって、本発明はより良好に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、従来の方法によって10のARを有する3次元構造上に堆積されたSiN膜のSTEM画像を示す図である。
【
図2】
図2は、各堆積サイクルにおける順次プラズマ前処理を用いるいくつかの実施形態によるPEALDプロセスによって窒化ケイ素膜を形成する方法を一般的に示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、順次プラズマ前処理を用いるいくつかの実施形態に従って窒化ケイ素膜を形成するための堆積サイクルにおけるガス流およびプラズマパワーを示す図である。示される堆積サイクルにおいて、順次プラズマ前処理段階311は、第1の期間340における水素プラズマへの露出と、その後の第2の期間350における水素プラズマ不在下の窒素プラズマへの露出とを含む。順次プラズマ前処理段階311の後のSiN堆積段階312は、シリコン前駆体への露出370と、その後のシリコン前駆体パージステップ380と、窒素プラズマへの露出390と、窒素プラズマパージステップ392とを含む。流れる窒素ガス310は、シリコン前駆体に対するキャリアガス、ならびにステップ380および392におけるパージガスの働きをし得る。
【
図4】
図4は、各堆積サイクルにおける順次プラズマ前処理を用いるいくつかの実施形態に従って窒化ケイ素膜を形成する方法を示すフローチャートである。示される方法において、順次プラズマ前処理段階450の間に、基板は水素および窒素プラズマに同時に接触し(410)、その後水素プラズマ不在下で第2の窒素プラズマと接触する(420)。順次プラズマ前処理段階450の後、窒化ケイ素堆積段階において基板はシリコン前駆体と接触し、このサイクルは繰り返されてもよい(440)。吸着したシリコン前駆体がその後の堆積サイクルにおいて窒素プラズマと反応して、窒化ケイ素を形成することができる。代替的には、基板がシリコン前駆体と接触した(430)後、次の堆積サイクルを始める前に、基板を窒素反応体と接触させる付加的なステップが堆積サイクルに加えられてもよい。
【
図5】
図5は、各堆積サイクルにおける順次プラズマ前処理を用いるいくつかの実施形態に従って窒化ケイ素膜を形成するための堆積サイクルにおけるガス流およびプラズマパワーを示す図である。示される堆積サイクルにおいて、順次プラズマ前処理段階511の間に、基板は期間550において水素および窒素プラズマと同時に接触し、その後期間560において水素プラズマ不在下で第2の窒素プラズマと接触し、その後に続くパージ期間570においてはパージガス510の助けによって過剰なプラズマ反応体が除去される。プラズマ前処理段階511に続く窒化ケイ素堆積段階512において、基板はシリコン前駆体515と接触する。次の堆積サイクルを始める前に、流れるN
2パージガス510の助けによって、シリコン前駆体が反応空間からパージされ得る(590)。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、本明細書に開示される方法に従って堆積された窒化ケイ素膜の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
当業者に明らかなとおり、窒化ケイ素膜は半導体産業および半導体産業以外の両方における幅広い適用を有する。たとえば、窒化ケイ素膜は平面論理、DRAM、およびNANDフラッシュデバイスに用いられる。いくつかの適用においては、3次元構造上にコンフォーマルな窒化ケイ素薄膜を堆積することが望ましい。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態によると、窒化ケイ素膜を堆積するためのさまざまなプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)法が提供される。一部の実施形態では、PEALD法は、1つまたはそれ以上の堆積サイクルにおいて順次プラズマ前処理プロセスを用いる。順次プラズマ前処理プロセスは、基板が水素プラズマと接触する第1のプラズマ処理ステップと、その後に基板が水素プラズマの不在下で窒素プラズマと接触する第2のプラズマ処理ステップとを含む。順次プラズマ前処理プロセスは、(その堆積サイクルまたはその後の堆積サイクルにおいて)基板とシリコン前駆体とを接触させる前に行われ、基板表面に対するシリコン前駆体の吸着を制御する働きをすることができる。シリコン前駆体の吸着を制御することによって、SiNの堆積および品質を制御できる。一部の実施形態では、たとえばトレンチの上部などの3次元構造の上部に、より少量のシリコン前駆体が吸着され、一方でトレンチの内側または側壁には、より多量のシリコン前駆体が吸着されるように、シリコン前駆体吸着が制御される。このやり方で、増加したコンフォーマリティを有する膜を3次元構造上に堆積できる。
【0011】
一部の実施形態では、この方法はギャップフィルSiN堆積プロセスに用いられる。一部の実施形態では、この方法は、たとえば約10以上のアスペクト比を有するトレンチなどの深いトレンチにSiNライナーを形成するときなどに、ハードマスク適用のためにSiNを堆積するために用いられる。
【0012】
一部の実施形態では、窒化ケイ素薄膜は基板上の3次元構造上に堆積される。一部の実施形態では、SiN膜が堆積される3次元構造、たとえば間隙またはトレンチなどは、高いアスペクト比を有する。たとえば、アスペクト比は約3から約20、たとえば3以上、5以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、またはさらに20以上などであり得る。一部の実施形態では、3次元構造は2つの側壁と、上部または平面状の表面とを含む。
【0013】
一部の実施形態では、窒化ケイ素膜は、高いアスペクト比のトレンチに対して約100%のコンフォーマリティ(側壁に対する特徴部の上部)を有し得る。一部の実施形態では、トレンチの内側のSiNの成長速度は、トレンチの上部におけるSiNの成長速度よりも速い。一部の実施形態では、ギャップまたはトレンチの内側の成長速度は、本明細書に記載される順次プラズマ前処理ステップを用いないSiNの堆積方法によって得ることができるギャップまたはトレンチの内側の成長速度よりも速くなり得る。一部の実施形態では、ギャップまたはトレンチの上部の成長速度は、本明細書に記載される順次プラズマ前処理ステップを用いない方法によって得られるギャップまたはトレンチの上部の成長速度よりも遅くなり得る。
【0014】
一部の実施形態では、窒化ケイ素膜は高い側壁コンフォーマリティを有する。本出願の目的に対して、側壁コンフォーマリティとは、[(側壁の底部のSiN膜の厚さ)/(側壁の上部のSiN膜の厚さ)]×100%と定義される。一部の実施形態では、約100%の側壁コンフォーマリティを有するSiN膜を堆積するために、この方法を使用できる。つまり、側壁の上部の部分から側壁の底部の部分まで、側壁の厚さの変動がほとんどない。一部の実施形態では、たとえばトレンチなどの3次元構造における側壁の上部よりも側壁の底部の方が厚い、すなわち100%より大きいコンフォーマリティを有するSiN膜を堆積するために、この方法を使用できる。側壁コンフォーマリティは、たとえば85%以上、95%以上、100%以上、105%以上、125%以上、150%以上、175%以上、またはさらに200%以上などであってもよい。
【0015】
一部の実施形態では、窒化ケイ素膜は低いウェットエッチング速度(wet etch rate)を有する。一部の実施形態では、WERは5Å/min以下から約200Å/min、たとえば約20Å/min、40Å/min、60Å/min、80Å/min、100Å/min、120Å/min、140Å/min、160Å/min、180Å/min、または200Å/minなどであり得る。一部の実施形態では、WERは約200Å/minから240Å/minであり得る。ウェットエッチング速度は、100:1希釈フッ化水素酸において測定され得る。一部の実施形態では、ウェットエッチング速度は順次プラズマ処理のパワーを調整することによって調整され得る。
【0016】
一部の実施形態では、特徴部の側壁のWERは低い。たとえば、WERは100:1希釈フッ化水素酸において5Å/min以下であり得る。
【0017】
一部の実施形態では、SiN膜は側壁を有する3次元構造上に堆積され、この膜は95%より高い側壁コンフォーマリティと、100:1希釈HFにおける5Å/min未満のエッチング速度とを有する。
【0018】
一部の実施形態では、SiN膜は、本明細書に記載される水素および窒素プラズマ前処理を伴わずに形成された膜に比べて増加したウェットエッチング抵抗性を示す。一部の実施形態では、SiN膜は、3D特徴部の鉛直表面に対する水平表面の増加したエッチング速度均一性、減少したウェットエッチング速度(WER)、および/または熱酸化物(thermal oxide(TOX))に対する減少したウェットエッチング速度比(wet etch rate ratio(WERR))を有する。一部の実施形態では、SiO2に対するWERRは約0.1から約10であってもよい。
【0019】
一部の実施形態では、本明細書に記載される1つまたはそれ以上のプロセスによって3D特徴部上に形成された窒化ケイ素薄膜の示し得る、3D特徴部の上部領域の窒化ケイ素薄膜のウェットエッチング速度(WER)に対する3D特徴部の側壁の窒化ケイ素薄膜のウェットエッチング速度(WER)の比は、0.5%希釈フッ化水素酸において約0.02から約3.0、約0.2から約2.8、約0.75から約1.5、または約0.9から約1.1である。たとえば、特徴部の上部を除去する一方で側壁を残す側壁ハードマスク適用に対して、上部領域のWERは高くなり得る(たとえば約24~240Å/min)が、側壁におけるWERは低くなり得る(たとえば5~15Å/min)。これらの場合、上部WERに対する側壁WERの比を約0.02に保つために、高いパワープラズマが適用され得る。一部の実施形態では、上部WERに対する側壁WERは0.01から0.03、たとえば0.015、0.02、0.025、または0.03などに保たれ得る。
【0020】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるとおりにSiN PEALD堆積においてプラズマ前処理を用いることによって、たとえばFiNFETおよびその他のマルチゲートトランジスタなどの当該技術の水準の半導体デバイスにおける、たとえば犠牲層、ゲートスペーサ、および/またはスペーサ規定二重/四重パターニング(spacer defined double/quadruple patterning(SDDP/SDQP))などの適用に有用な窒化ケイ素膜の形成が促進されてもよい。
【0021】
一部の実施形態では、ステップカバレッジは300%の高さであってもよく、たとえば約100%から約300%など、たとえば100%、150%、200%、250%、または300%などであり得る。ステップカバレッジとは、空隙またはギャップの上部のSiN膜の厚さに対する空隙またはギャップの底部のSiN膜の厚さの比と定義される。
【0022】
一部の実施形態では、基板に堆積されたSiNは、側部に対する上部の高いコンフォーマリティを有し得る。一部の実施形態では、基板上の3次元構造の上部に堆積されたSiNの厚さに対する基板上の3次元構造の側壁に堆積されたSiNの厚さの比は0.8以上である。一部の実施形態では、この比は0.95以上であり得る。一部の実施形態では、この比は1以上であり得る。一部の実施形態では、この比は1.05以上であり得る。一部の実施形態では、この比は2以上であり得る。
【0023】
一部の実施形態では、基板上の3次元構造へのSiN堆積は、ギャップフィルプロセスにおいて最小限の空隙またはシームが生じるように実質的にコンフォーマルである。一部の実施形態では、空隙もシームも見えない。一部の実施形態では、SiN堆積の後に3次元構造パターン上のトレンチの5%未満が空隙を含む。
【0024】
本明細書においては、利便性および簡便性のために窒化ケイ素の調合物を一般的にSiNと呼ぶ。しかし、窒化ケイ素の実際の調合物は膜のSi:N比を表し、水素またはその他の不純物を除外してSiNxと表すことができ、ここでいくつかのSi-N結合が形成される限り、xは約0.5から約2.0に変動することを当業者は理解するだろう。場合によっては、xは約0.9から約1.7、約1.0から約1.5、または約1.2から約1.4に変動してもよい。一部の実施形態では、Siが+IVの酸化状態を有し、材料内の窒化物の量が変動し得るような窒化ケイ素が形成される。
【0025】
ALDタイプのプロセスは、制御された一般的に自己制限する表面反応に基づく。基板を反応体に交互に順次接触させることによって、気相反応は典型的に回避される。気相反応体は、たとえば反応体パルスの合間に過剰な反応体および/または反応体副生成物を除去することなどによって、反応チャンバ内で互いに分離される。反応体は、パージガスおよび/または真空の助けによって基板表面の近くから除去されてもよい。一部の実施形態では、不活性ガスでパージすることによって、過剰な反応体および/または反応体副生成物が反応空間から除去される。
【0026】
いくつかの実施形態によると、ALDタイプのプロセスは、たとえば集積回路加工物などの基板上にSiN薄膜を形成するために用いられる。一部の実施形態では、SiN膜は基板上の1つまたはそれ以上の3次元構造上に堆積される。一部の実施形態では、ALDタイプのプロセスは複数の堆積サイクルを含み、各堆積サイクルは基板と、シリコン前駆体および窒素前駆体との交互かつ順次の接触を含むSiN堆積段階を含む。少なくとも1つの堆積サイクルにおいて、基板とシリコン前駆体とを接触させる前に、順次プラズマ前処理が行われる。一部の実施形態では、すべての堆積サイクルにおいて順次プラズマ前処理が行われる。以下に詳細に説明されるとおり、順次プラズマ前処理は、第1の水素プラズマ処理ステップと、その後の第2の窒素プラズマ処理とを含む。第2の窒素プラズマ処理ステップの間、基板は水素プラズマに露出されない。
【0027】
順次プラズマ前処理の後、基板の表面にシリコン種が吸着するように、シリコン前駆体が基板と接触する。一部の実施形態では、このシリコン種はシリコン前駆体と同じであってもよいし、吸着ステップにおいて、たとえば1つまたはそれ以上のリガンドを失うことなどによって修飾されてもよい。次いで基板は窒素前駆体と接触し、この窒素前駆体は吸着したシリコン種と反応して窒化ケイ素を形成する。一部の実施形態では、窒素前駆体は、たとえばN2を含むガスにおいて生成されたプラズマなどの窒素プラズマを含む。一部の実施形態では、窒素前駆体は非プラズマ反応体であり得る。一部の実施形態では、窒素前駆体は、堆積サイクルにおいてシリコン前駆体の後に順次提供される。一部の実施形態では、窒素前駆体は、その後の堆積サイクルにおける順次プラズマ前処理からの窒素プラズマである。すなわち一部の実施形態では、堆積サイクルにおけるシリコン前駆体の後に窒素反応体は提供されなくてもよく、その後の堆積サイクルにおける順次プラズマ処理からの窒素プラズマが、吸着したシリコン前駆体と反応して窒化ケイ素を形成する。
【0028】
プラズマ前処理ステップと呼ばれているが、一部の実施形態では、プラズマ前処理ステップによって後の堆積サイクルの窒化ケイ素堆積段階のための基板表面が準備されるように、1つまたはそれ以上の堆積サイクルにおけるSiN堆積段階(またはシリコン反応体露出)の後にプラズマ前処理が行われてもよい。たとえばSiN堆積サイクルは、熱ALDステップによって最初にSiNが形成され得るSiN段階と、それに続くプラズマ前処理段階とを含んでもよい。よってプラズマ前処理段階は、後のSiN堆積サイクルのSiN堆積段階のために基板表面を準備する。一部の実施形態では、その後のプラズマ処理は、本明細書に記載されるとおり、順次の水素および窒素プラズマ処理ステップに基板を露出するステップを含んでもよい。
【0029】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の堆積サイクルにおいて、完全なSiN堆積サイクルは順次プラズマ前処理段階と、SiN堆積段階とを含む。上記に考察されるとおり、順次プラズマ前処理段階の後に典型的にSiN堆積段階が続くが、一部の実施形態ではSiN堆積段階が順次プラズマ前処理段階に先行する。順次プラズマ前処理段階は、基板を水素プラズマによる処理の後に、水素プラズマ不在下の窒素プラズマによる処理に露出するステップを含む。上記に簡単に述べたとおり、任意の特定の活性モードに制限されることなく、3次元構造への堆積に関して、水素プラズマ処理は3次元構造の表面全体にわたって反応性-H終端部位を増加できると考えられる。その後の(水素プラズマ不在下の)窒素プラズマ処理は、たとえばトレンチの側壁の上側部分または上部の部分などの、3次元構造のよりアクセスしやすい部分から優先的に-H終端部位を除去できる。-H終端部位は、たとえば3次元構造の底部の部分などのアクセスしにくい部分に優先的に残るため、その後のALDサイクルにおけるシリコン前駆体の吸着は、たとえば3次元構造の上部の部分に対する底部など、アクセスしやすい部分に対してアクセスしにくい部分において増強される。結果的に、SiN成長速度は特徴部の底部においてより速く、上部においてより遅くなる。たとえば水素プラズマ処理に続いて低いパワーまたは短い持続時間の窒素プラズマ処理を用いることなどによって、プラズマ処理を制御することによって、この方法は高いコンフォーマルなSiN膜の堆積を実現でき、さらには特徴部の底部においてより厚く、上部においてより薄い(100%より大きい側壁コンフォーマリティ)SiN膜を形成するために使用できる。
【0030】
一部の実施形態では、プラズマエンハンストALD(PEALD)プロセスは、反応空間内の基板上にSiN膜を堆積するために用いられる。簡単にいうと、基板または加工物は反応チャンバに入れられて、交互に繰り返される表面反応を含む1つまたはそれ以上の堆積サイクルを受ける。基板をシリコン前駆体と接触させる前の少なくとも1つの堆積サイクルにおいて、順次の水素および窒素プラズマ処理ステップを含む順次プラズマ前処理段階が行われる。この順次プラズマ前処理の後に、基板をシリコン前駆体と接触させるシリコン種堆積段階、または基板をシリコン前駆体および窒素前駆体と順次接触させる窒化ケイ素堆積段階が続く。
【0031】
一部の実施形態では、堆積サイクルのシリコン前駆体堆積またはSiN堆積部分は、シリコン種堆積またはSiN堆積段階とも呼ばれ、たとえばシリコンヒドロハライド前駆体などのシリコン前駆体と基板とを接触させるステップを含む。いくつかのこうした実施形態において、シリコン種堆積段階において、シリコン前駆体は基板表面に吸着し、その後の堆積サイクルにおける窒素反応体(たとえばその後の堆積サイクルのプラズマ前処理段階における窒素プラズマなど)は、吸着したシリコン前駆体と反応して窒化ケイ素を形成する。
【0032】
一部の実施形態では、各ALDサイクルのSiN堆積部分は少なくとも2つの別個の段階を含み、ここで基板は最初にたとえばシリコンヒドロハライドなどのシリコン前駆体と、その後に窒素前駆体と交互に順次接触する。これに関して、反応空間からの反応体または副生成物の提供および除去は、段階とみなされてもよい。第1の段階において、シリコンを含む第1の反応体が提供され、基板表面にシリコン種の約1以下の単層を形成する。この反応体は「シリコン前駆体」、「シリコン含有前駆体」、または「シリコン反応体」とも呼ばれることがある。
【0033】
本開示のPEALDプロセスにおいて、いくつかの好適なシリコン前駆体が用いられ得る。いくつかの実施形態によると、シリコン前駆体はたとえばIまたはClなどのハロゲン化物を含む。一部の実施形態では、シリコン前駆体はSiI4、HSiI3、H2SiI2、H3SiI、Si2I6、HSi2I5、H2Si2I4、H3Si2I3、H4Si2I2、H5Si2I、またはSi3I8を含む。一部の実施形態では、シリコン前駆体はHSiI3、H2SiI2、H3SiI、H2Si2I4、H4Si2I2、およびH5Si2Iのうちの1つを含む。一部の実施形態では、シリコン前駆体はHSiI3、H2SiI2、H3SiI、H2Si2I4、H4Si2I2、およびH5Si2Iのうちの任意の組み合わせを含む2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む。特定の実施形態において、Si前駆体はH2SiI2を含む。一部の実施形態では、シリコン前駆体はSiCl4、HSiCl3、H2SiCl2、またはSi2Cl6を含む。
【0034】
堆積サイクルのSiN堆積段階の第2の段階において、第2の反応体が提供されて、吸着したシリコン種を窒化ケイ素に転換する。一部の実施形態では、第2の反応体は窒素前駆体を含む。一部の実施形態では、第2の反応体は励起された窒素種を含む。一部の実施形態では、第2の反応体は、たとえばNH3などの非プラズマ窒素反応体を含む。一部の実施形態では、第2の反応体は窒素前駆体ではない。一部の実施形態では、第2の反応体は水素プラズマを含む。
【0035】
一部の実施形態では、第2の反応体は窒素含有プラズマからの種を含む。一部の実施形態では、第2の反応体は窒素ラジカル、窒素原子、および/または窒素プラズマを含む。一部の実施形態では、第2の反応体は、窒素含有プラズマまたは窒素を含むプラズマを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の反応体は、窒素含有種を含むプラズマを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の反応体は窒素原子および/またはN*ラジカルを含んでもよい。
【0036】
第2の反応体は、窒素前駆体ではない他の種を含んでもよい。一部の実施形態では、第2の反応体は水素のプラズマ、水素のラジカル、または1つもしくは別の形態の原子水素を含んでもよい。一部の実施形態では、第2の反応体はたとえばHe、Ne、Ar、Kr、またはXeなどの希ガスからの種、好ましくはArまたはHeを、たとえばラジカルとして、プラズマ形態で、または元素形態で含んでもよい。
【0037】
以下により詳細に考察されるとおり、一部の実施形態では、たとえばN2を含むガスなどのプラズマを形成するために用いられるガスは、堆積プロセス全体にわたって常に流れていてもよいが、断続的にしか活性化されなくてもよいし、堆積サイクルの特定のステップにおいて流れてもよい。
【0038】
第1および第2の反応体の1つまたはそれ以上は、たとえばN2、H2、Ar、またはHeなどのキャリアガスの助けによって提供されてもよい。一部の実施形態では、シリコン前駆体および第2の反応体は、キャリアガスの助けによって提供される。一部の実施形態では、第1の反応体はキャリアガスによって提供され、そのキャリアガスは第2のプラズマ反応体に対するソースガスの働きもする。たとえば、N2ガスは第1のシリコン反応体に対するキャリアガスとして用いられてもよく、そのN2ガスが流れ続けて反応空間から過剰なシリコン前駆体をパージし、その後流れるN2ガス内でプラズマが生成されて第2の反応体を形成してもよい。最後にプラズマが消失されてもよく、流れるN2ガスは、もしあれば過剰な第2の反応体および反応副生成物を反応空間からパージする働きをしてもよい。
【0039】
一部の実施形態では、SiN堆積段階の2つの段階が重複するか、または組み合わされてもよい。たとえば、部分的または完全に重複するパルスにおいて、シリコン前駆体および第2の反応体が同時に提供されてもよい。加えて、第1および第2の段階、ならびに第1および第2の反応体と呼ばれているが、段階の順序は変えられてもよく、ALDサイクルは第1および第2の段階の任意の一方から始まってもよい。すなわち、特に指定されない限り、第1および第2の反応体は任意の順序で提供されてもよく、プロセスは任意の反応体によって開始してもよい。
【0040】
窒化ケイ素膜を堆積するための一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のSiN堆積段階はシリコン前駆体の提供によって開始し、その後に第2の反応体が続く。他の実施形態において、堆積は第2の反応体の提供によって開始し、その後にシリコン前駆体が続いてもよい。
【0041】
上述のとおり、一部の実施形態では、SiN堆積サイクルはシリコン種堆積段階を含んでもよく、ここでは第1の段階またはSiN堆積段階のみが行われ、ここで基板はシリコン前駆体に露出される。その後の堆積サイクルのプラズマ前処理段階において、吸着したシリコン種をSiNに転換する窒素反応体が提供されてもよい。
【0042】
1つまたはそれ以上の堆積サイクルにおいて、順次プラズマ前処理段階が行われる。一部の実施形態では、順次プラズマ前処理段階はSiN堆積段階の前に行われる。順次プラズマ前処理は、基板が水素プラズマに露出される第1のプラズマ処理ステップと、その後に基板が水素プラズマの不在下で窒素プラズマに露出される第2のプラズマ処理ステップとを含む。以下に考察されるとおり、一部の実施形態では、プラズマ前処理段階は堆積サイクルのSiN堆積部分の前に行われる。一部の実施形態では、プラズマ前処理段階は、各堆積サイクルにおいて基板とシリコン前駆体とを接触させる前に行われる。一部の実施形態では、プラズマ前処理段階は、1つまたはそれ以上の堆積サイクルにおいて基板とシリコン前駆体とを接触させる前に行われる。
【0043】
一部の実施形態では、第1のプラズマ処理ステップは、基板を第1の水素プラズマに露出するステップを含む。このステップは、第1の水素プラズマ処理ステップと呼ばれ得る。一部の実施形態では、第1のプラズマ処理ステップは、基板を水素プラズマおよび窒素プラズマに露出するステップを含む。
【0044】
一部の実施形態では、第2のプラズマ処理ステップは、水素プラズマ不在下で基板を窒素プラズマに露出するステップを含む。このステップは、窒素プラズマ処理ステップと呼ばれ得る。一部の実施形態では、第2のプラズマ処理ステップは、短い持続時間かつ低いパワーで行われる。
【0045】
一部の実施形態では、第1のプラズマ処理ステップは、基板を水素および窒素プラズマに露出することによって、窒素プラズマが前の堆積サイクルにおいて基板に吸着したシリコン前駆体と反応して、窒化ケイ素の形成をもたらすようにするステップを含んでもよい。
【0046】
所望の厚さおよび組成の膜が得られるまで、SiN堆積サイクル全体が繰り返される。一部の実施形態では、所望の特徴を有する膜を得るために、1つまたはそれ以上のプラズマ処理ステップにおいて、たとえばプラズマ反応体の印加のパワーおよび時間などのプラズマ前処理パラメータが変えられてもよい。
【0047】
順次プラズマ前処理段階と、シリコン種堆積段階またはSiN堆積段階とを含むSiN堆積は、適切な堆積リアクタ内で行われてもよい。一部の実施形態では、たとえば半導体加工物など、上への堆積が所望される基板がリアクタ内に装填される。リアクタは、集積回路の形成におけるさまざまな異なるプロセスが中で行われるクラスタツールの一部であってもよい。一部の実施形態では、フロー型リアクタが使用される。一部の実施形態では、シャワーヘッド型のリアクタが使用される。一部の実施形態では、空間分割リアクタが使用される。一部の実施形態では、高体積製造可能単一ウェーハALDリアクタが用いられる。他の実施形態においては、複数の基板を含むバッチリアクタが用いられる。バッチALDリアクタが用いられる実施形態に対して、基板の数は好ましくは10から200の範囲、より好ましくは50から150の範囲、最も好ましくは100から130の範囲である。
【0048】
ALDプロセスを増強するために特定的に設計された例示的な単一ウェーハリアクタは、ASM America,Inc.(Phoenix、AZ)よりPulsar(登録商標)2000およびPulsar(登録商標)3000の商品名で、ASM Japan K.K(東京、日本)よりEagle(登録商標)XP、XP8、およびDragon(登録商標)の商品名で商業的に入手可能である。ALDプロセスを増強するために特定的に設計された例示的なバッチALDリアクタは、ASM Europe B.V(Almere、オランダ)よりA400(商標)およびA412(商標)の商品名で商業的に入手可能である。
【0049】
一部の実施形態では、加工物の露出表面は、第1のSiN堆積サイクルの前に表面上に所望の反応性部位を提供するために前処理され得る。一部の実施形態では、別個の前処理ステップは必要ない。一部の実施形態では、所望の表面終端を提供するために基板が前処理される。一部の実施形態では、基板はプラズマによって前処理される。
【0050】
一部の実施形態では、各反応体パルスの合間およびプラズマ処理ステップの合間に、基板の近く、特に基板表面から、もしあれば過剰な反応体および反応副生成物が除去される。一部の実施形態では、反応体パルスの合間およびプラズマ処理ステップの合間に、不活性ガスでパージすることによって反応チャンバがパージされる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の反応体および/または反応副生成物は、たとえばN2またはH2ガスなどのパージガスによって除去され得る。各反応体の流速および時間は調整可能であり、除去ステップも同様であることによって、膜の品質およびさまざまな特性の制御が可能になる。
【0051】
上述のとおり、一部の実施形態では、堆積サイクルの特定の時間に、または各堆積サイクル中に継続的に、またはALDプロセス全体の間に反応チャンバにガスが提供され、反応チャンバ内または反応チャンバの上流でガス中にプラズマを生成させることによって、特定の反応性種が提供される。一部の実施形態では、ガスは窒素を含む。一部の実施形態では、ガスはN2を含む。流れるガスがパージガスの働きもしてもよい。たとえば、流れる窒素は第1のシリコン前駆体に対するキャリアガスおよびパージガスの両方の働きをしてもよく、加えて第2の反応体(反応性種の供給源(ソース))および前処理段階の窒素プラズマ処理ステップに対するソースガスの働きをしてもよい。
【0052】
「パルス」という用語は、予め定められた長さの時間だけ反応チャンバに反応体を供給するステップを含むことが理解されてもよい。「パルス」という用語は、パルスの長さまたは持続時間を制限することはなく、パルスは任意の長さの時間であり得る。
【0053】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の堆積サイクルは、順次プラズマ前処理段階およびSiN堆積段階の両方を含む。一部の実施形態では、順次プラズマ前処理プロセス段階はSiN堆積サイクルの前に起こる。一部の実施形態では、SiN堆積段階はプラズマ前処理段階の前に起こる。所望の特徴を有するSiN膜を形成するために、SiN堆積サイクル全体が2回またはそれ以上繰り返されてもよい。
【0054】
一部の実施形態では、窒化ケイ素堆積サイクルは、基板表面をシリコン前駆体および窒素前駆体と交互に順次接触させるステップを含む。一部の実施形態では、窒素前駆体はプラズマ前処理プロセスにおける窒素プラズマとは別に提供される。しかし一部の実施形態では、窒化ケイ素堆積サイクルは、基板を、シリコン前駆体と、その後の堆積サイクルまたは同じ堆積サイクルのプラズマ前処理プロセスからの窒素プラズマとに接触させるステップを含んでもよく、この窒素プラズマは、吸着したシリコン前駆体と反応して窒化ケイ素を形成する。
【0055】
一部の実施形態では、窒化ケイ素堆積サイクルにおいて、最初にシリコン反応体が提供される。初期の表面終端の後、もし必要または所望であれば、第1のシリコン反応体パルスが加工物に供給される。いくつかの実施形態によると、第1の反応体パルスはキャリアガス流と、目的の加工物表面と反応するたとえばシリコンヒドロハライド(たとえばH2SiI2)などの揮発性シリコン種とを含む。したがって、シリコン反応体はこれらの加工物表面に吸着する。第1の反応体パルスは加工物表面を自己飽和させることによって、第1の反応体パルスの任意の過剰な成分がこのプロセスによって形成された分子層とさらに反応しないようにする。
【0056】
第1のシリコン反応体パルスは、好ましくは気体の形態で供給される。その種が、露出表面を飽和させるために十分な濃度でその種を加工物に輸送するためのプロセス条件下で十分な蒸気圧を示すとき、シリコン前駆体ガスは本記載の目的に対して「揮発性」とみなされる。
【0057】
一部の実施形態では、シリコン反応体パルスは約0.05秒から約5.0秒、約0.1秒から約3秒、または約0.2秒から約1.0秒である。最適なパルス時間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に定められ得る。
【0058】
シリコン種の分子層が基板表面に吸着するために十分な時間の後、次いで過剰な第1のシリコン反応体が反応空間から除去される。一部の実施形態では、過剰な第1の反応体は、第1の化学物質の流れを停止する一方でキャリアガスまたはパージガスを十分な時間流し続けて、反応空間からもしあれば過剰な反応体および反応体副生成物を拡散またはパージすることによってパージされる。一部の実施形態では、過剰な第1の前駆体は、ALDサイクル全体にわたって流れるたとえば窒素またはアルゴンなどの不活性ガスの助けによってパージされる。
【0059】
一部の実施形態では、第1の反応体は約0.1秒から約10秒、約0.3秒から約5秒、または約0.3秒から約1秒の間パージされる。シリコン反応体の提供および除去は、ALDサイクルの第1の段階またはシリコン段階とみなされ得る。
【0060】
第2の段階において、たとえば窒素プラズマなどの第2の窒素前駆体が反応空間に提供されて、基板と接触する。窒素プラズマは、たとえば遠隔プラズマ生成器を通じて窒素ソースガスを流すことなどによって、反応チャンバ内または反応チャンバの上流で窒素を含むガス中にプラズマを生成させることによって形成されてもよい。上記に考察されるとおり、一部の実施形態では、後の堆積サイクルにおけるプラズマ前処理プロセスからの窒素プラズマは、窒素反応体の働きをする。
【0061】
典型的に、たとえば窒素プラズマを含む第2の反応体は、約0.1秒から約10秒の間提供される。一部の実施形態では、たとえば窒素プラズマなどの第2の反応体は、約0.1秒から約10秒、0.5秒から約5秒、または0.5秒から約2.0秒の間提供される。しかし、リアクタのタイプ、基板のタイプおよびその表面積によっては、第2の反応体のパルス時間は約10秒よりも長くてもよい。一部の実施形態では、パルス時間は分単位であり得る。最適なパルス時間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に定められ得る。
【0062】
前に吸着したシリコン種の分子層を窒素反応体パルスによって完全に飽和および反応させるために十分な期間の後、過剰な反応体および反応副生成物が反応空間から除去されてもよい。第1の反応体の除去と同様に、このステップは反応性種の生成を止めるステップと、過剰な反応性種および揮発性反応副生成物が反応空間から拡散してパージされるために十分な期間、たとえば窒素などの不活性ガスを流し続けるステップとを含んでもよい。他の実施形態においては、別個のパージガスが用いられてもよい。一部の実施形態では、パージは約0.1秒から約10秒、約0.1秒から約4秒、または約0.1秒から約0.5秒であってもよい。窒素反応体の提供および除去はともに、窒化ケイ素原子層堆積サイクルにおける第2の窒素段階を表す。
【0063】
本明細書において、SiN堆積プロセス段階は一般的にシリコン前駆体から始まるものとして示されるが、他の実施形態においてはサイクルが窒素前駆体から始まってもよいことが予期される。第1の前駆体段階は一般的に、前のサイクルの最終段階によって残された終端と反応することを当業者は認識するだろう。よって、もし反応性種段階が第1のALDサイクルの第1の段階であれば、反応体が予め基板表面に吸着したり反応空間に存在したりしないかもしれないが、その後のサイクルにおいて反応性種段階はシリコン段階に有効に続く。よって上述のとおり、一部の実施形態では、プラズマ前処理段階の窒素プラズマは、窒化ケイ素を形成するために吸着したシリコン前駆体と反応するための窒素反応体の働きをしてもよい。一部の実施形態では、堆積プロセスに1つまたはそれ以上の異なるALDサイクルが提供される。
【0064】
完全なSiN堆積サイクルの各々において、基板とシリコン反応体および窒素反応体とを交互に順次接触させるステップが1回またはそれ以上繰り返され得る。
【0065】
1つまたはそれ以上の堆積サイクルにおいて、第1および第2のプラズマ処理ステップを含むプラズマ前処理段階が行われ、ここで基板は水素プラズマと接触し、次いで水素プラズマ不在下の窒素プラズマと順次接触する。一部の実施形態では、第1および第2のプラズマ処理ステップは、各SiN堆積サイクルにおいて行われる。一部の実施形態では、プラズマ前処理は堆積プロセスの1つ、2つ、またはそれ以上の堆積サイクルにおいて行われる。一部の実施形態では、プラズマ前処理は各SiN堆積サイクルにおいて行われる。一部の実施形態では、(第1および第2のプラズマ処理ステップを含む)プラズマ前処理は堆積プロセスの特定の間隔の堆積サイクルにおいて、たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、10などの堆積サイクルごとに行われる。一部の実施形態では、プラズマ前処理段階は、1つまたはそれ以上の堆積サイクルのSiN堆積段階の前に行われる。一部の実施形態では、プラズマ前処理段階は、各SiN堆積サイクルのSiN堆積段階の前に行われる。
【0066】
第1のプラズマ処理ステップは、基板と第1の水素プラズマとを第1の持続時間だけ接触させるステップを含んでもよい。一部の実施形態では、第1のプラズマ処理ステップは、基板を水素および窒素プラズマの両方に露出するステップを含む。水素プラズマは、たとえばH2ガス、H2を含むガス、またはNH3ガスなどの水素ソースガスにおいて生成されてもよい。
【0067】
一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理は、約0.1秒から約10秒、0.5秒から約5秒、または0.5秒から約2.0秒の持続時間だけ行われ得る。
【0068】
一部の実施形態では、第1のプラズマ処理ステップは、たとえば窒素プラズマなどの窒素反応体も提供してもよい。一部の実施形態では、窒素反応体は前の堆積サイクルからの吸着シリコン前駆体と反応してSiNを形成してもよい。よって、SiN堆積段階におけるシリコン前駆体と反応する別個の窒素前駆体は、1つまたはそれ以上の堆積サイクルにおいて省略されてもよい(それによって、SiN堆積段階はシリコン種堆積段階として特徴付けられてもよい)。たとえば一部の実施形態では、シリコン反応体への露出の後、その後の堆積サイクルは第1のプラズマ処理を含むプラズマ前処理ステップから始まってもよく、この第1のプラズマ処理において、基板はH2およびN2ガスの両方を含む流動ソースガス中で生成したプラズマと接触することによって、窒素プラズマが吸着したシリコンと反応してSiNを形成する。
【0069】
一部の実施形態では、水素および/または窒素を含むガス、たとえばH2およびN2などは、プラズマが着火されるか、または窒素および水素原子もしくはラジカルが形成されるよりも前に反応チャンバに提供される。一部の実施形態では、水素および/または窒素プラズマは遠隔的に生成されて、反応チャンバに提供される。
【0070】
第1のプラズマ処理ステップの後、第2のプラズマ処理ステップが第2の持続時間だけ行われる。第2のプラズマ処理ステップは、基板を水素プラズマの不在下で窒素プラズマと接触させるステップを含む。窒素プラズマは、たとえばN2ガスまたはN2を含むガスなどの窒素含有ソースガスにおいて生成される。一部の実施形態では、プラズマはN2ガス中で生成される。しかし、第2のプラズマ処理の間、基板は水素プラズマと接触しない。よって、プラズマが生成される窒素ソースガスは、窒素を含むが水素を含まない。一部の実施形態では、窒素プラズマは反応空間内で生成される。一部の実施形態では、窒素プラズマは遠隔的に生成されて、反応空間に提供される。
【0071】
一部の実施形態では、第2のプラズマ処理ステップは約0.1秒から約10秒、0.5秒から約5秒、または0.5秒から約2.0秒の間行われる。一部の実施形態では、第2の窒素プラズマ処理ステップは、第1の水素プラズマ処理ステップの持続時間よりも短い持続時間だけ行われ得る。
【0072】
窒素および水素プラズマは、約10Wから約2000W、好ましくは約50Wから約1000W、より好ましくは一部の実施形態では約300Wから約550Wの高周波(radiofrequency(RF))パワーを加えることによって生成されてもよい。一部の実施形態では、RFパワー密度は約0.02W/cm2から約2.0W/cm2、好ましくは約0.05W/cm2から約1.5W/cm2であってもよい。RFパワーは、特定のプラズマパルス時間の間流れるか、または反応チャンバ内を連続的に流れるか、および/または遠隔プラズマ生成器を通って流れるソースガスに加えられてもよい。よって一部の実施形態では、プラズマは、その場で(in situ)生成されるが、他の実施形態においては、プラズマは遠隔的に生成される。一部の実施形態では、シャワーヘッドリアクタが使用され、サセプタ(その上部に基板が位置する)と、シャワーヘッドプレートとの間でプラズマが生成される。一部の実施形態では、このサセプタとシャワーヘッドプレートとの間は約0.1cmから約20cm、約0.5cmから約5cm、または約0.8cmから約3.0cmである。
【0073】
一部の実施形態では、第1のプラズマ処理ステップにおいて用いられる水素プラズマは、水素ソースガスに約10Wから約2000WのRFパワーを加えることによって生成され得る。一部の実施形態では、水素プラズマは約550Wのパワーを用いて生成される。
【0074】
一部の実施形態では、第2のプラズマ処理ステップにおいて用いられる窒素プラズマは、窒素含有ソースガスに約10Wから約2000WのRFパワーを加えることによって生成される。一部の実施形態では、窒素プラズマは約300Wのパワーを用いて生成される。
【0075】
一部の実施形態では、第2のプラズマ処理ステップにおいて用いられる窒素プラズマは、先行する第1の水素プラズマ処理ステップにおいて水素プラズマを生成するために用いられるパワーよりも低いパワーを用いて生成される。たとえば一部の実施形態では、第1のプラズマ処理ステップにおける水素プラズマは約500Wのパワーを用いて生成され、第2のプラズマ処理における窒素プラズマは約300Wのパワーを用いて生成される。一部の実施形態では、たとえば約300Wなどの低い方のプラズマパワーが、第1および第2のプラズマ処理ステップの両方に対して用いられる。
【0076】
一部の実施形態によると、堆積サイクルは約25℃から約700℃、好ましくは約50℃から約600℃、より好ましくは約100℃から約500℃、最も好ましくは約200℃から約400℃の範囲の温度にて行われてもよい。一部の実施形態では、最適なリアクタ温度は最大許容熱収支によって制限されることがある。したがって一部の実施形態では、反応温度は約300℃から約400℃である。一部の適用において、最高温度は約400℃付近であり、したがって堆積プロセスはその反応温度にて実行される。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態によると、処理中の反応チャンバの圧力は約0.01torrから約50torr、好ましくは約0.1torrから約30torrにて維持される。一部の実施形態では、圧力は0.1torrにて維持される。一部の実施形態では、圧力は10torrにて維持される。一部の実施形態では、圧力は15torrにて維持される。一部の実施形態では、圧力は20torrにて維持される。一部の実施形態では、圧力は25torrにて維持される。一部の実施形態では、圧力は30torrにて維持される。
【0078】
本明細書に記載される実施形態は窒化ケイ素膜のPEALD堆積に言及するが、本明細書に開示されるとおり、一部の実施形態では非プラズマの第2の窒素反応体が用いられてもよいことが理解されるだろう。しかし、少なくとも1つの堆積サイクルは、第1および第2のプラズマ処理ステップを含む。
【0079】
図2は、いくつかの実施形態に従ってSiN薄膜を形成するための例示的堆積プロセスを一般的に示すフローチャートである。特定の実施形態によると、窒化ケイ素薄膜は、複数の窒化ケイ素堆積サイクルを含む堆積プロセスによって基板上に形成され、1つまたはそれ以上の窒化ケイ素堆積サイクル200は、順次プラズマ前処理を行うステップ250に続く窒化ケイ素堆積230を含む。一部の実施形態では、順次プラズマ前処理250は、
(1)基板と水素プラズマとを接触させるステップを含む第1のプラズマ処理ステップ210を行うステップ、
(2)基板を水素プラズマの不在下で窒素プラズマと接触させるステップを含む第2のプラズマ処理ステップ220を行うステップを含み、
順次プラズマ前処理250の後に窒化ケイ素堆積段階が続き、この窒化ケイ素堆積段階は、
(3)基板を気相シリコン前駆体および窒素前駆体と交互に順次接触させること(230)によって、シリコン種が基板表面に吸着して窒化ケイ素に転換されるステップを含む。
【0080】
もしあれば過剰な反応体および反応副生成物は、たとえばAr、N2、またはH2ガスなどの不活性ガスでパージすることなどによって、各ステップの後に基板の近くから除去されてもよい。プラズマ前処理プロセス250は、SiN堆積プロセス段階230の前に前処理表面を提供できる。所望の特性および所望の厚さを有するSiN薄膜が堆積されるように、プラズマ前処理段階250およびSiN堆積段階が2回またはそれ以上繰り返され得る(240)。
【0081】
一部の実施形態では、ステップ210および220を含む順次プラズマ前処理段階250はすべての堆積サイクルに含まれてもよいが、一部の実施形態では、ステップ210および220を含む順次プラズマ前処理段階250は特定の堆積サイクルにのみ含まれる。たとえば、ステップ210および220を含む順次プラズマ前処理段階250は、1、2、3、5、10、15、20、またはそれ以上の堆積サイクルごとに含まれてもよい。
【0082】
上記に考察されるとおり、一部の実施形態では、窒化ケイ素堆積段階230は基板をシリコン前駆体とのみ接触させて窒素前駆体とは接触させないステップを含むことによって、吸着したシリコン前駆体は、その後の堆積サイクルにおける順次プラズマ前処理段階250からの窒素プラズマと反応して、窒化ケイ素を形成する。
【0083】
本明細書に考察されるとおり、シリコン前駆体はヒドロハライドシリコン前駆体であってもよい。一部の実施形態では、基板表面に吸着するシリコン種は、反応空間に提供されるシリコン前駆体とは化学的に異なり得る。一部の実施形態では、シリコン種はシリコン前駆体と実質的に同じであり得る。
【0084】
一部の実施形態では、N2を含むガスにおいてプラズマを生成させることによって、窒素プラズマが形成されてもよい。
【0085】
一部の実施形態では、第1のプラズマ処理ステップ210は、たとえばH2ガス、H2を含むガス、またはNH3を含むガスなどの水素ソースガスにおいて生成されたプラズマと基板とを接触させるステップを含む。一部の実施形態では、基板は約0.1秒から20秒の間水素プラズマと接触する。たとえば、基板は0.1秒、1秒、5秒、10秒、15秒、または20秒の間水素プラズマと接触する。
【0086】
一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理ステップ210は、約1秒から10秒の持続時間だけ行われ得る。一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理ステップは1秒、2秒、5秒、7秒、または最大10秒の持続時間だけ行われる。一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理ステップ210は、約1秒から10秒の持続時間だけ行われ得る。一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理ステップは1秒の持続時間だけ行われる。一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理ステップは約5秒間行われる。一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理ステップは約10秒間行われる。
【0087】
一部の実施形態では、水素プラズマは、水素ソースガスにRFパワーを加えることによって生成され得る。プラズマは、約10Wから約2000Wのパワーを用いて生成されてもよい。一部の実施形態では、水素プラズマは約550Wのパワーを用いて生成される。
【0088】
図4および
図5を参照して以下により詳細に考察されるとおり、一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理210の間に、基板が窒素プラズマとも接触し得る。たとえば、基板は窒素および水素を含むガスにおいて形成されたプラズマと接触してもよい。一部の実施形態では、窒素プラズマ反応体は、前の堆積サイクルにおいて予め基板に吸着したシリコン前駆体と反応してSiNを形成してもよい。
【0089】
一部の実施形態では、第2のプラズマ処理ステップ220は、窒素含有ソースガスにおいて生成したプラズマと基板を接触させるステップを含む。たとえば、窒素含有ソースガスはN2ガスであってもよいし、N2を含んでもよい。しかし、第2のプラズマ処理ステップ220において、基板は水素プラズマと接触しない。よって、プラズマが生成される窒素ソースガスは、窒素を含むが水素を含まない。一部の実施形態では、プラズマはN2ガス中で生成される。さらに、第2のプラズマ処理ステップ220を行う前に、第1のプラズマ処理ステップ210からのあらゆる残留水素プラズマが反応空間から除去される。
【0090】
一部の実施形態では、第2のプラズマ処理ステップ220において用いられる窒素プラズマは、窒素含有ソースガスにRFパワーを加えることによって生成される。一部の実施形態では、窒素プラズマは、約10Wから約2000Wのパワーを用いて生成されてもよい。しかし一部の実施形態では、窒素プラズマは、水素プラズマ処理ステップにおいて水素プラズマを生成するために用いられるパワーよりも低いパワーを用いて生成される。たとえば一部の実施形態では、第1の水素プラズマ処理ステップ210における水素プラズマは約550Wのパワーを用いて生成され、第2のプラズマ処理ステップ220における窒素プラズマは約300Wのパワーを用いて生成される。
【0091】
一部の実施形態では、第2の窒素プラズマ処理ステップ220は、約0.1秒から20秒の持続時間だけ行われ得る。たとえば、第2の窒素プラズマ処理は0.1秒の間、1秒の間、5秒の間、10秒の間、15秒の間、または20秒の間行われ得る。一部の実施形態では、第2の窒素プラズマ処理ステップ220は、第1のプラズマ処理ステップ210に対する持続時間よりも短い持続時間だけ行われ得る。一部の実施形態では、第2の窒素処理ステップ220は、第1のプラズマ処理ステップ210とほぼ同じ時間だけ行われる。一部の実施形態では、第2の窒素プラズマ処理ステップ220は、第1のプラズマ処理ステップ210に対する持続時間よりも長い持続時間だけ行われ得る。
【0092】
上述のとおり、一部の実施形態では、堆積サイクルの一部またはすべてを通じて不活性ガスが流れてもよく、1つまたはそれ以上の目的を果たしてもよい。たとえば一部の実施形態では、不活性ガスは、たとえばシリコン反応体などの1つまたはそれ以上の反応体に対するキャリアガスおよび/またはソースガスの働きをし得る。一部の実施形態では、不活性ガスは、堆積サイクルにおける1つまたはそれ以上のステップの合間に過剰な反応体および/または反応副生成物を除去するためのパージガスの働きをし得る。一部の実施形態では、不活性ガスは、たとえば窒素プラズマなどのプラズマ反応体の1つまたはそれ以上を生成するためのソースガスの働きをし得る。たとえば一部の実施形態では、N2ガスは堆積サイクル全体にわたって流れるか、または堆積サイクルの特定の時点で流れてもよい。一部の実施形態では、N2ガスは堆積サイクル全体にわたって流され、第2のプラズマ処理のための窒素プラズマを生じさせるためのプラズマが生成される。加えてN2ガスは、SiN堆積段階230における窒素反応体のためのソースガスの働きもでき、さらにシリコン前駆体に対するキャリアガスの働きもし得る。一部の実施形態では、N2ガスは堆積サイクル全体にわたって流され、第2のプラズマ処理ステップの間だけN2ガスにおいてプラズマが生成される。一部の実施形態では、不活性ガスは堆積プロセスの特定のステップにおいて流されない。たとえば一部の実施形態では、不活性ガスとしてH2ガスが用いられ、H2ガスは窒素プラズマ処理ステップの間には流されないが、堆積サイクルのその他のステップ全体にわたって流される。第1のプラズマ処理ステップの際に、流れるH2ガスにおいてプラズマが生成されてもよい。
【0093】
図3は、いくつかの実施形態によるSiN堆積サイクルにおける反応体のパルスおよびプラズマパワーの印加を示す。示される堆積サイクルはプラズマ前処理段階311と、窒化ケイ素堆積段階312とを含む。堆積サイクル全体にわたって、パージガスおよび/またはキャリアガスとしてN
2が流される(310)。
【0094】
プラズマ前処理段階311は、ステップ340、350、および360を含む。第1の水素プラズマ処理340は、プラズマパワー330を加えながらチャンバにH2ガス325を流し込むステップを含む。この期間中はプラズマパワー330がオンにされ、流れるH2ガス325においてプラズマが生じる。水素プラズマ露出期間340の最後にH2流はオフにされ、窒素流320がオンにされる。窒素プラズマ処理350は、プラズマパワー330を加えながら反応空間にN2ガス320を流し込むステップを含む。窒素プラズマ処理ステップ350の間、基板は水素プラズマの不在下で窒素プラズマに露出される。窒素プラズマ処理期間350の最後に、プラズマパワー330がオフにされる。ステップ360において、過剰な反応性種を除去するために、反応チャンバにN2ガスが流し込まれる。窒化ケイ素堆積段階312の前に、ステップ340、350、および360が任意に複数回繰り返され得る。加えて、本明細書の一部の実施形態で考察されるとおり、プラズマ前処理段階311は窒化ケイ素堆積段階312の後に続いてもよい。
【0095】
窒化ケイ素堆積段階312は、ステップ370、380、390、および392を含む。ステップ370は、シリコン前駆体流315をオンにして反応チャンバにシリコン前駆体を提供することによって、シリコン種が基板表面に吸着するようにするステップを含む。シリコン前駆体が反応チャンバに流された(370)後、ステップ380においてN2パージガス310を流すことによって、過剰なシリコン前駆体がチャンバからパージされる。シリコン前駆体パージ380の後、ステップ390においてN2ガス320が反応空間に流し込まれ、RFパワーがオンにされて窒素プラズマが形成する。窒素プラズマは吸着したシリコン前駆体と反応して、基板表面に窒化ケイ素を形成する。その後、プラズマパワーはオフにされ、N2ガス310を流すことによって、過剰な反応性種および任意の反応副生成物が反応空間からパージされる(392)。シリコン前駆体は、たとえばN2などのキャリアガスの助けによって提供されてもよい。N2が窒素反応体に対するソースガスとして働き、反応空間のパージを助けるように、ステップ370、380、390、および392の間にN2流が維持されてもよい。一部の実施形態では、窒化ケイ素堆積段階312の後に、窒化ケイ素堆積サイクルが繰り返される。つまり、所望のSiN膜を形成するために、順次プラズマ前処理段階311および堆積サイクル312が何回か繰り返され得る。一部の実施形態では、次の窒化ケイ素堆積サイクルを始める前に、窒化ケイ素堆積段階312が何回か繰り返され得る。所望の特徴を有するSiN膜を達成するために、プラズマパワー330が制御されてもよい。
【0096】
図4は窒化ケイ素堆積サイクルの実施形態を一般的に示すフローチャートであり、ここで順次プラズマ前処理段階450は、たとえばN
2/H
2混合ガスにおいてプラズマを形成することなどによって、基板を窒素プラズマおよび水素プラズマと同時に接触させる第1のステップ410を含む。プラズマ前処理段階450の後、シリコン種堆積段階において基板がシリコン前駆体430と接触することによって、基板表面にシリコン種が吸着する。この堆積サイクルが繰り返され、後のサイクルのステップ410の窒素プラズマが吸着したシリコン種と反応して、窒化ケイ素を形成する。
【0097】
図4に示されるとおり、複数の窒化ケイ素堆積サイクルによって基板上に窒化ケイ素薄膜を形成することができ、1つまたはそれ以上の窒化ケイ素堆積サイクル400は、
(1)基板と第1の窒素および水素プラズマとを接触させるステップ410と、
(2)水素プラズマの不在下で基板と第2の窒素プラズマとを接触させるステップ420と、
(3)基板とシリコン前駆体とを接触させるステップ430と、
(4)ステップ410~430を繰り返すステップ440とを含む。
【0098】
各々の接触させるステップの後に、たとえば不活性ガスによって反応空間からパージすることなどによって、過剰な反応体が基板の近くから除去されてもよい。
【0099】
プラズマ前処理段階450は、基板と窒素および水素プラズマとを接触させるステップ410と、水素プラズマの不在下で基板と第2の窒素プラズマとを接触させるステップ420とを含む。基板とシリコン前駆体とを接触させるステップ430の前に、プラズマ前処理段階450が1回またはそれ以上繰り返されてもよい。
【0100】
プラズマ前処理段階450の後、基板はたとえばシリコンヒドロハライド前駆体などのシリコン前駆体と接触する(430)。ステップ430の後、所望のSiN膜を形成するために、堆積サイクルが何回か繰り返されてもよい。一部の実施形態では、所望の厚さおよび所望の特性を有するSiN膜を形成するために、堆積サイクル全体が順次何回か繰り返される(440)。
【0101】
一部の実施形態では、すべての堆積サイクルにおいて順次プラズマ前処理450が繰り返されない。
【0102】
一部の実施形態では、ステップ410の第1の窒素および水素プラズマ処理は第1のパワーを用いて生成され、ステップ420の第2の窒素プラズマ処理は第2のパワーを用いて生成される。一部の実施形態では、第2のパワーは第1のパワーよりも低い。一部の実施形態では、第2のパワーは第1のパワーと同じである。一部の実施形態では、第1のパワーは550Wであり、第2のパワーは300Wである。一部の実施形態では、第1および第2のパワーはどちらも300Wである。
【0103】
一部の実施形態では、少なくとも1つの堆積サイクルにおいて、基板は第1の持続時間だけ第1の窒素および水素プラズマと接触し(410)、この第1の持続時間は、基板が第2の窒素プラズマと接触する(420)ときの第2の持続時間よりも長い。一部の実施形態では、少なくとも1つの堆積サイクルにおいて、基板は第1の持続時間だけ第1の窒素および水素プラズマと接触し(410)、この第1の持続時間は、基板が第2の窒素プラズマと接触する(420)ときの第2の持続時間よりも短い。一部の実施形態では、第1の窒素および水素プラズマステップ410の持続時間は、第2の窒素プラズマステップ420と同じである。
【0104】
図5は、いくつかの実施形態によるSiN堆積サイクルにおける反応体のパルスおよびプラズマパワーの印加を示しており、ここでは順次プラズマ前処理の第1のプラズマステップの間、基板は水素および窒素プラズマに同時に露出される。
【0105】
SiN堆積サイクル540はプラズマ前処理段階511と、シリコン種堆積段階512とを含む。プラズマ前処理段階511において、基板は窒素および水素プラズマに露出され(550)、その後水素プラズマの不在下で窒素プラズマに露出される(560)。シリコン種堆積段階512においては、基板表面にシリコン種が吸着されるように、基板がシリコン前駆体に露出される。しかし、この段階では基板が反応体Nプラズマに露出されないことによって、堆積サイクルのシリコン種堆積段階512ではSiNが形成されない。しかし、その後のSiN堆積サイクル540においては、プラズマ前処理段階511において基板が窒素プラズマに露出されるときに、窒素プラズマが前のシリコン前駆体堆積段階512からの吸着シリコン種と反応することによってSiNが形成される。
【0106】
プラズマ前処理段階511は、ステップ550、560、および570を含む。第1のプラズマステップ550の間に、水素525および窒素520ガスが反応チャンバに流れ込み、第1のパワーレベルのプラズマパワー530が加えられて、流れるN2およびH2反応体ガス520、525においてプラズマが生じることによって、基板は水素および窒素プラズマに露出される。
【0107】
第2のプラズマ処理ステップ560の間、N2反応体ガス520は反応空間に流れ続けるが、H2ガス525の流れは停止する。第1のプラズマ処理ステップ550よりも低い第2のレベルのプラズマパワー530が加えられて、流れるN2ガスにおいてプラズマが生成することによって、基板は水素プラズマの不在下で窒素プラズマに露出される。
【0108】
プラズマ処理ステップ550および560の後に、反応空間の任意の残留励起種をパージする570ためにN2ガスが用いられてもよい。
【0109】
シリコン種堆積段階512は、ステップ580および590を含む。ステップ580において、シリコン反応体流515がオンにされ、シリコン反応体がN2キャリアガス510の助けによって反応チャンバに流れ込み、一方でプラズマパワーはオフにされることによって、シリコン種が基板表面に吸着する。ステップ580の間、H2流525およびN2流520はオフにされる。その後の堆積サイクルにおいて、ステップ550で生成した窒素プラズマが吸着したシリコン種と反応してSiNを形成する。ステップ590において、過剰なシリコン前駆体がパージされる。
【0110】
所望の厚さのSiN膜を形成するために、プラズマ前処理段階511とシリコン種堆積段階512とが何回か繰り返されてもよい。所望の特徴を有するSiN膜を達成するために、プラズマパワー530が制御されてもよい。
【実施例】
【0111】
図6Aおよび
図6Bは、本開示のいくつかの実施形態による、10のARを有する構造上に堆積したSiN膜のSTEM画像を示す。200%より大きい側壁コンフォーマリティが得られ(
図6A)、ギャップフィルプロセスにおいては小さいシームしか有さない構造が得られる(
図6B)。具体的には、SiN堆積を400℃にて行い、反応チャンバを2000Pa(15torr)にて維持した。順次プラズマ前処理段階は、基板を水素および窒素プラズマに同時に2秒間接触させるステップと、その後水素プラズマの不在下で基板を第2の窒素プラズマと2秒間接触させるステップとを含んだ。SiN堆積段階の間、基板とシリコン前駆体とを接触させた。
【0112】
本発明の趣旨から逸脱することなく、多数かつ多様な修正が行われ得ることが当業者に理解されるだろう。記載される特徴部、構造、特徴、および前駆体は、任意の好適な方式で組み合わされ得る。したがって、本発明の形態は単なる例示であり、本発明の範囲を制限することは意図されないことが明らかに理解されるべきである。すべての修正および変更は、以下の請求項において定義される本発明の範囲内にあることが意図される。