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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20230731BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H04M9/00 D
H04M9/00 J
A61G12/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019081669
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020182010
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 修
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
(72)【発明者】
【氏名】箭内 伸司
(72)【発明者】
【氏名】松村 保彦
(72)【発明者】
【氏名】相馬 俊也
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207644(JP,A)
【文献】特開2016-187139(JP,A)
【文献】特開2007-096769(JP,A)
【文献】特開平11-298886(JP,A)
【文献】特開2000-107239(JP,A)
【文献】特開2015-039551(JP,A)
【文献】特開2006-060412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 3/58- 3/62
H04M 9/00- 9/10
A61G 9/00-15/12
A61G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ナースコール子機と、
前記第一ナースコール子機から呼び出すことが可能な第一ナースコール親機と、
第二ナースコール子機と、
前記第二ナースコール子機から呼び出すことが可能な第二ナースコール親機と、
前記第一ナースコール親機又は前記第二ナースコール親機を呼び出すことが可能な第三ナースコール子機と、
前記第三ナースコール子機が前記第一ナースコール親機を呼出可能な第一設定と、前記第三ナースコール子機が前記第二ナースコール親機を呼出可能な第二設定と、を切り替えることが可能な切替部と、
を備え、
前記切替部は、前記第一ナースコール親機と前記第二ナースコール親機の一方から発信された切替要求信号に対して前記第一ナースコール親機と前記第二ナースコール親機の他方から承認信号が発信されたことを確認した後に、前記第一設定と前記第二設定とを切り替えることが可能となる、
ナースコールシステム。
【請求項2】
複数の前記第三ナースコール子機と、
複数の前記第三ナースコール子機と前記切替部との間に設けられる廊下灯と、
を備え、
前記切替部は、前記廊下灯の接続先を前記第一ナースコール親機又は前記第二ナースコール親機に切り替えることにより、前記廊下灯と接続する複数の前記第三ナースコール子機の呼出先を前記第一ナースコール親機又は前記第二ナースコール親機に切り替える、
請求項に記載のナースコールシステム。
【請求項3】
前記第一ナースコール親機と前記第二ナースコール親機の両方において、前記第三ナースコール子機と関連付けられたベッドの所属先を表示可能であり、
前記第三ナースコール子機の呼出先に応じて、前記第一ナースコール親機と前記第二ナースコール親機とにおいて互いに異なる表示態様で前記ベッドの所属先が表示される、
請求項1または請求項に記載のナースコールシステム。
【請求項4】
前記第一ナースコール子機から呼び出すことが可能な第一携帯端末と、
前記第二ナースコール子機から呼び出すことが可能な第二携帯端末と、
を備え、
前記切替部が、前記第一設定と前記第二設定とを切り替えることにより、
前記第一設定では、前記第三ナースコール子機が前記第一ナースコール親機及び前記第一携帯端末を呼出可能な状態となり、
前記第二設定では、前記第三ナースコール子機が前記第二ナースコール親機及び前記第二携帯端末を呼出可能な状態となる、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会の高齢化が進むにつれて、病院では患者数が増加する一方であり、ベッド不足や看護師の人数不足の問題は深刻である。そこで、医療サービスの品質維持や業務負担の分散の観点から、病院内の各部門間(医療科間)におけるスムーズな業務連携を支援することが可能なシステムに対するニーズが高まっている。例えば、下記特許文献1~2には、診療科ごとの患者の一時的な増減に対応が可能なナースコールシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-207644号公報
【文献】特開2006-34711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のナースコールシステムでは、ベッド不足により、例えば隣の診療科のベッドを一時的に借りて患者を入院させた場合、その患者は、そのベッドに設置されたナースコール子機からでは、その患者の本来の診療科のナースコール親機や担当看護師の携帯端末を直接的に呼び出すことができない場合があった。
このように、従来のナースコールシステムでは、病院内の各部門間(診療科間)におけるフレキシブルな業務連携を支援するために、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、複数の診療科や病棟等におけるフレキシブルな業務連携を支援することが可能なナースコールシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるナースコールシステムは、
第一ナースコール子機と、
前記第一ナースコール子機から呼び出すことが可能な第一ナースコール親機と、
第二ナースコール子機と、
前記第二ナースコール子機から呼び出すことが可能な第二ナースコール親機と、
前記第一ナースコール親機又は前記第二ナースコール親機を呼び出すことが可能な第三ナースコール子機と、
前記第三ナースコール子機が前記第一ナースコール親機を呼出可能な第一設定と、前記第三ナースコール子機が前記第二ナースコール親機を呼出可能な第二設定と、を切り替えることが可能な切替部と、
を備える。
【0007】
この構成によれば、切替部により、第三ナースコール子機の呼出先を第一ナースコール親機又は第二ナースコール親機に切り替えることができる。このため、例えば、A診療科とB診療科とで共有で使用する病室内のベッドに対して第三ナースコール子機を設置した場合、そのベッドに入院した患者を担当する診療科が何処であるかに応じて、第三ナースコール子機の呼出先を切り替えることができ、病院内の各部門間(診療科間)におけるフレキシブルな業務連携を支援することができる。
【0008】
また、本発明のナースコールシステムは、
複数の前記第三ナースコール子機と、
複数の前記第三ナースコール子機と前記切替部との間に設けられる廊下灯と、
を備え、
前記切替部は、前記廊下灯の接続先を前記第一ナースコール親機又は前記第二ナースコール親機に切り替えることにより、前記廊下灯と接続する複数の前記第三ナースコール子機の呼出先を前記第一ナースコール親機又は前記第二ナースコール親機に切り替えてもよい。
【0009】
この構成によれば、廊下灯の接続先を切り替えることにより、複数の第三ナースコール子機の接続先を一括して効率的に切り替えることができる。
【0010】
また、本発明のナースコールシステムは、
前記第一ナースコール親機と前記第二ナースコール親機の両方において、前記第三ナースコール子機と関連付けられたベッドの所属先を表示可能であり、
前記第三ナースコール子機の呼出先に応じて、前記第一ナースコール親機と前記第二ナースコール親機とにおいて互いに異なる表示態様で前記ベッドの所属先が表示されてもよい。
【0011】
この構成によれば、医療従事者は、各ナースコール親機で表示されるベッドの所属先を示す表示を確認することにより、第三ナースコール子機が現在どちらの管理下にあるか容易に判別することができる。
【0012】
また、本発明のナースコールシステムにおいて、
前記切替部は、前記第一ナースコール親機と前記第二ナースコール親機の一方から発信された切替要求信号に対して前記第一ナースコール親機と前記第二ナースコール親機の他方から承認信号が発信されたことを確認した後に、前記第一設定と前記第二設定とを切り替えることが可能となるものでもよい。
【0013】
この構成によれば、第三ナースコール子機の呼出先を切り替える際、第三ナースコール子機の呼出先として切り換えられる側のナースコール親機の承認が必要となる。このため、例えば複数の診療科間で安全に第三ナースコール子機の呼出先を切り替えることができる。
【0014】
また、本発明のナースコールシステムは、
前記第一ナースコール子機から呼び出すことが可能な第一携帯端末と、
前記第二ナースコール子機から呼び出すことが可能な第二携帯端末と、
を備え、
前記切替部が、前記第一設定と前記第二設定とを切り替えることにより、
前記第一設定では、前記第三ナースコール子機が前記第一ナースコール親機及び前記第一携帯端末を呼出可能な状態となり、
前記第二設定では、前記第三ナースコール子機が前記第二ナースコール親機及び前記第二携帯端末を呼出可能な状態となってもよい。
【0015】
この構成によれば、例えば各診療科の看護師長が携帯する各携帯端末について、第三ナースコール子機の呼出先の切り替えに応じて同時に設定を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の診療科や病棟等におけるフレキシブルな業務連携を支援することが可能なナースコールシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るナースコールシステムの構成図である。
図2図1に示すナースコールシステムにおける制御機の機能ブロック図である。
図3図1に示すナースコールシステムにおけるナースコール親機の機能ブロック図である。
図4】(a)は第一ナースコール親機の大型モニタの画面例を示しており、(b)は第二ナースコール親機の大型モニタの画面例を示している。
図5】(a)は第一ナースコール親機の大型モニタの画面例を示しており、(b)は第二ナースコール親機の大型モニタの画面例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るナースコールシステムの実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るナースコールシステム1の構成図である。
図1に示すように、ナースコールシステム1は、複数の(本例では2つの)部門である診療科100A,100Bに設置されている。ナースコールシステム1は、例えば患者を収容する病院等の医療・介護施設内に設置されている。例えば、診療科100Aは、第一外科であり、病室A101~A103を有している。また、診療科100Bは、第二外科であり、病室B101~B103を有している。例えば、診療科100Aの病室A103と診療科100Bの病室B101は、隣接しており、ベッドの混み具合等の事情で互いに利用可能なフレキシブルルームとして利用される。
【0019】
病室A101~A102には、それぞれ、複数の(本例では2つの)第一ナースコール子機2Aと、第一廊下灯4Aとが設置されている。各第一ナースコール子機2Aは、第一廊下灯4Aを介して、ハブ15Aに接続されている。
【0020】
病室B102~B103には、それぞれ、複数の(本例では2つの)第二ナースコール子機2Bと、第二廊下灯4Bとが設置されている。各第二ナースコール子機2Bは、第二廊下灯4Bを介して、ハブ15Aに接続されている。
【0021】
病室A103と病室B101には、それぞれ、複数の(本例では2つの)第三ナースコール子機2Cと、第三廊下灯4C(廊下灯の一例)とが設置されている。各第三ナースコール子機2Cは、第三廊下灯4Cを介して、ハブ15Aに接続されている。
【0022】
診療科100Aのスタッフステーション等の施設内共用部には、第一ナースコール親機3Aが設置されている。診療科100Bのスタッフステーション等の施設内共用部には、第二ナースコール親機3Bが設置されている。第一ナースコール親機3Aと第二ナースコール親機3Bは、ハブ15Aに接続されている。
【0023】
ナースコールシステム1は、制御機5を備えている。制御機5は、ハブ15Aを介して、各ナースコール子機や、各ナースコール親機等の機器と接続されている。
【0024】
ナースコールシステム1は、基地局61と、交換機62(例えばIP PBX)と、を備えている。ナースコールシステム1にはハブ15Bを介してオーダリングシステム7が接続されている。ナースコールシステム1は、複数の(本例では4つの)第一携帯端末6Aと、複数の(本例では4つの)第二携帯端末6Bと、を備えている。
【0025】
以下、ナースコールシステム1の各構成について説明する。
なお、第一ナースコール子機2A、第二ナースコール子機2B、第三ナースコール子機2Cについては、基本的な構成が同一であるので、第一ナースコール子機2Aについて説明し、各機器で異なる構成以外の説明を省略する。各廊下灯4A,4B,4Cや、各ナースコール親機3A,3B等についても同様であり、各機器で異なる構成以外の説明を省略する。
【0026】
第一ナースコール子機2Aは、患者が看護師を呼び出して通話を行うためのものであり、病室内の病床(ベッド)毎に設置されている。第一ナースコール子機2Aは、プレート子機21と、握り子機22と、を有している。プレート子機21は、マイクとスピーカを備え、各患者のベッドの上方の壁面に設置されている。マイク及びスピーカは患者が看護師との間で相互に通話を行うためのものである。握り子機22は、呼出ボタンを備え、プレート子機21にケーブルで接続されている。呼出ボタンは病室内の患者が看護師を呼び出すためのボタンである。第一ナースコール子機2Aは、通信ケーブルを通じて第一廊下灯4Aに接続されている。
【0027】
第一廊下灯4Aは、各患者からの呼出を検出してその呼出を病室外へ報知するものであり、病室の入口付近に設置されている。本例の第一廊下灯4Aは、ハブ15Aを経由して制御機5と接続されている。本例の第一廊下灯4Aには、液晶表示部41が設けられていて、第一ナースコール子機2Aから呼び出しがあると、呼び出しをした患者の名前等の患者情報が液晶表示部41に表示されるように構成されている。さらに、第一ナースコール子機2Aから呼び出しがあると、第一廊下灯4Aに設けられた表示ランプ42が例えば点滅するように構成されている。
【0028】
第一ナースコール親機3Aは、患者からの呼び出しに看護師が応答して通話を行ったり、患者や看護師等の情報を表示する機能を有するものである。第一ナースコール親機3Aは、大型モニタ31と、小型モニタ32と、通話部33と、を有している。
【0029】
大型モニタ31は、例えば24型の縦長のタッチパネル画面で構成されており、ナースコール親機3Aの操作部としても機能することが可能である。小型モニタ32は、例えば7型の横長のタッチパネル画面で構成されている。小型モニタ32は、例えば、ナースコール子機2によって患者から呼び出しが有った場合、その呼び出しをした患者のベッド番号や名前等を含む患者情報を表示する。通話部33は、患者からの呼出音および患者の音声を出力するスピーカと、患者の呼び出しに看護師が応答して通話を行うための送受話機と、を有している。
【0030】
制御機5は、中継器として設置されており、接続されている各機器の呼出制御あるいは通話制御等を行なうものである。制御機5は、ハブ15A及び通信ケーブルを介して、各ナースコール子機2A,2B,2C、各廊下灯4A,4B,4C、各ナースコール親機3A,3B、交換機62と接続されている。また、制御機5は、ハブ15A、ハブ15B及び通信ケーブルを介して、オーダリングシステム7と接続されている。
【0031】
第一携帯端末6Aは、第一ナースコール子機2Aからの呼び出しを通知するとともに呼び出しに応答して患者と通話するためのものであり、各看護師によって携帯されている。第一携帯端末6Aには表示画面が設けられており、第一ナースコール子機2Aからの呼び出しが有ると、呼出元である患者の病室番号、ベッド番号、名前等が表示される。第一携帯端末6Aとしては、例えばPHSやスマート端末等が用いられ、各第一携帯端末6Aは個別の携帯端末IDを有している。
【0032】
基地局61は、ナースステーションの近辺、および施設内でナーステーションから離れた場所に所定の間隔で設置されている。交換機62は、第一携帯端末6Aと第一ナースコール子機2Aとの接続及び第二携帯端末6Bと第二ナースコール子機2Bとの接続を行うためのものであり、ナースステーション内または施設内の共用部に設置されている。交換機62は、ハブ15Aを経由して制御機5に接続されている。また、交換機62は、ハブ15Aを経由して第一ナースコール子機2A、第二ナースコール子機2B及び第三ナースコール子機2Cにも接続されている。
【0033】
オーダリングシステム7は、各患者の患者情報を含む病院に関する情報を一括して管理するものであり、例えば施設の管理室等の所定の場所に設置されている。
【0034】
図2は、制御機5の機能ブロック図である。
図2に示すように、制御機5は、CPU等で構成される制御部51と、制御部51に接続された記憶部52、廊下灯インターフェース回路(以下、インターフェース回路を「I/F」と称す)53、親機I/F54、交換機I/F55、オーダリングI/F56、受信部58及び送信部59と、を備えている。
【0035】
廊下灯I/F53は、図1にある各廊下灯4A,4B,4Cと信号伝送路を形成するための通信部を構成している。親機I/F54は、図1にある各ナースコール親機3A,3Bと信号伝送路を形成するための通信部を構成している。交換機I/F55は、交換機62と信号伝送路を形成するための通信部を構成している。オーダリングI/F56は、オーダリングシステム7と信号伝送路を形成するための通信部を構成するとともに、オーダリングシステム7で管理されている情報を受信するための回路である。
【0036】
記憶部52には、患者情報記憶部52aと、勤務情報記憶部52bと、レイアウト情報記憶部52cと、呼出テーブル記憶部52dと、が設けられている。
【0037】
患者情報記憶部52aには、図1にある各診療科100A,100Bに現在入院している患者の入院日、退院予定日、氏名、性別、年齢、主担当看護師と副担当看護師を含む担当情報、担当医師、病室番号、ベッド番号、感染症情報、救護区分、食事制限の有無、看護必要度、投薬情報などを含んで構成される患者情報が記憶されている。また、患者情報記憶部52aには、現在入院している患者だけでなく入院予定の患者の患者情報も含まれる。本例では、患者情報は、オーダリングシステム7から例えば定期的に送信されてきて患者情報記憶部52aに記憶されている。
【0038】
勤務情報記憶部52bには、各看護師の勤務情報が記憶されている。勤務情報は、例えば一か月単位で、各看護師の勤務日(勤務予定日を含む)、勤務帯(例えば3勤制であれば、日勤、夜勤、準夜勤のいずれか)、休暇日(休暇予定日を含む)等の勤怠に関する情報で構成されている。本例では、勤務情報は、オーダリングシステム7から例えば定期的に送信されてきて勤務情報記憶部52bに記憶されている。
【0039】
レイアウト情報記憶部52cには、図1にある各診療科100A,100Bにおける各病室の配置関係を示すレイアウト情報が記憶されている。レイアウト情報には、各病室の病室番号や各患者のベッド番号を特定するための情報も含まれており、患者情報に含まれる各患者の病室情報やベッド番号と対応づけることで、所定のエリアでどの位置にあるどの病室にどの患者が入院しているかを対応づけることができるものである。
【0040】
呼出テーブル記憶部52dには、呼出テーブルが格納されている。呼出テーブルは、図1にある各ナースコール子機2A,2B,2Cからの呼出信号に含まれた子機特定情報(子機ID)と、呼出信号の転送先の親機情報とが関連づけられたテーブルである。
呼出テーブルについては、追って例をあげて説明する。
【0041】
制御部51は、例えば、記憶部52に記憶される情報の送受信等の管理や書き換え等の処理を実行する。制御部51は、呼出テーブル上の設定内容を切り替える切替部60としても機能する。制御部51は、図1にある各ナースコール親機3A,3Bからの切替要求信号や承認信号を確認できたとき、呼出テーブル内の呼出先親機の設定を切り替えることができる。
【0042】
受信部58は、呼出信号等を受信し、送信部59は、呼出信号等を送信する。
【0043】
図3は、第一ナースコール親機3Aの機能ブロック図である。
図3に示すように、第一ナースコール親機3Aは、CPU等で構成される制御部36と、制御機I/F37と、記憶部38と、を備えている。制御部36は、大型モニタ31と、小型モニタ32と、通話部33と接続され、これらの動作を制御する。
【0044】
制御機I/F37は、制御機5と信号伝送路を形成するための通信部を構成している。
記憶部38には、制御機の記憶部52に記憶された患者情報、勤務情報、レイアウト情報が記憶されている。本例では、これらの情報は、制御機5から例えば定期的に送信されてきて記憶部38に記憶される。記憶部38は、表示テーブル記憶部38Aを有している。
【0045】
表示テーブル記憶部38Aには、表示テーブルが格納されている。表示テーブルは、図1にある各ナースコール子機2A,2B,2Cからの呼出信号に含まれた子機特定情報(子機ID)と、子機が設置されたベッドのベッドボタン表示の表示態様とが関連づけられたテーブルである。ベッドボタン表示とは、例えば矩形状の表示枠と、その表示枠内に表示されるベッド番号、患者氏名、看護種別等のベッド番号等の情報とで構成される画面表示である。表示テーブルについては、例をあげて説明する。
【0046】
制御部36は、CPU等で構成されており、例えば、記憶部38に記憶された患者情報と勤務情報とレイアウト情報とに基づいて、大型モニタ31に表示させる画面を形成する処理を行う。また、制御部36は、例えば、第一ナースコール子機2Aによって患者から呼び出しが有った場合、呼出元の患者の患者情報を小型モニタ32に表示する制御を行なっている。
【0047】
制御部36は、表示テーブル記憶部38Aに記憶された表示テーブルに基づいて、各ベッドのベッドボタン表示を大型モニタ31や小型モニタ32に表示させる。制御部36は、大型モニタ31や小型モニタ32に対して行われた操作に基づいて、表示テーブルの内容を更新する。
【0048】
また、第二ナースコール親機3Bも、制御部36と、制御機I/F37と、記憶部38と、を備えており、制御部36は、大型モニタ31と、小型モニタ32と、通話部33と接続され、これらの動作を制御する。
【0049】
制御機I/F37は、制御機と信号伝送路を形成するための通信部を構成している。記憶部38には、制御機の記憶部52に記憶された患者情報、勤務情報、レイアウト情報が記憶されており、これらの情報は、制御機5から例えば定期的に送信されてきて記憶部38に記憶される。
【0050】
次に、ナースコールシステム1における呼出先切替の具体例について説明する。
まず、初期設定(第一設定の一例)として、診療科100Aと診療科100Bとで共有で使用されるフレキシブルルームのうち、病室A103内に設置された第三ナースコール子機2Cが診療科100Aの第一ナースコール親機3Aを呼び出すように設定され、病室B101内に設置された第三ナースコール子機2Cが診療科100Bの第二ナースコール親機3Bを呼び出すように設定されている例を説明する。
【0051】
この初期設定の状態において、制御機5の呼出テーブル(表1)、第一ナースコール親機3Aの表示テーブル(表2)、第二ナースコール親機3Bの表示テーブル(表3)は、下記に示される内容となる。
【0052】
(表1)呼出テーブル
(表2)第一ナースコール親機3Aの表示テーブル
(表3)第二ナースコール親機3Bの表示テーブル
【0053】
図4(a)に示されるように、第一ナースコール親機3Aは、表示テーブル(表2)に基づいて、大型モニタ31に、各ナースコール子機が設置された各ベッドのベッドボタン表示を表示する。
【0054】
例えば、図1にある診療科100Aの病室A101~A102内の各第一ナースコール子機2Aが設置されたベッドのベッドボタン表示D1,D2と、病室A103内の第三ナースコール子機2Cが設置されたベッドのベッドボタン表示D3とが、第一ナースコール親機3Aから呼出可能な状態であることを示すアクティブな表示態様(グレーアウトされていない表示態様)で、表示される。
また、診療科100Bの病室B101内の第三ナースコール子機2Cが設置されたベッドのベッドボタン表示D4が、第一ナースコール親機3Aから呼出不可能な状態であることを示すグレーアウトな表示態様(図中は斜線)で、表示される。このグレーアウトな表示態様は、アクティブな表示態様とは異なるため、視覚的に区別がしやすい。
【0055】
また、図4(b)に示されるように、第二ナースコール親機3Bは、表示テーブル(表3)に基づいて、大型モニタ31に、各ナースコール子機が設置された各ベッドのベッドボタン表示を表示する。
【0056】
例えば、病室A103内の第三ナースコール子機2Cが設置されたベッドのベッドボタン表示D5が、第二ナースコール親機3Bから呼出不可能な状態であることを示すグレーアウトな表示態様(図中は斜線)で、表示される。
また、病室B101内の第三ナースコール子機2Cが設置されたベッドのベッドボタン表示D6と、病室B102~B103内の各第二ナースコール子機2Bが設置されたベッドのベッドボタン表示D7,D8とが、第二ナースコール親機3Bから呼出可能な状態であることを示すアクティブな表示態様(グレーアウトされていない表示態様)で、表示される。
【0057】
ここで、例えば、診療科100Aのベッド数が足りず、診療科100Aに属する医療従事者が、診療科100Bのフレキシブルルームである病室B101のベッドを利用したい場合に、病室B101の第三ナースコール子機2Cの呼出先を切り替える具体例について説明する。
この場合、医療従事者は、第一ナースコール親機3Aの大型モニタ31に表示されるベッドボタン表示D4をタッチする等の切替要求のための操作を行う。この操作にともなって、第一ナースコール親機3Aから第二ナースコール親機3Bに向けて、フレキシブルルームである病室B101の各ベッドの利用権限を診療科100Bから診療科100Aに切り替える旨を要求するための切替要求信号が発信される。
【0058】
切替要求信号を受信した第二ナースコール親機3Bは、例えば、大型モニタ31に、病室B101の各ベッドの利用権限を診療科100Bから診療科100Aに切り替えることについて、承認可能か否かを確認するメッセージを表示する。
診療科100Bに属する医療従事者は、ベッドの混み具合等を考慮して承認可能と判断した場合、大型モニタ31に表示されたメッセージにタッチする等の操作を行い、切替要求を承認する。
このとき、第二ナースコール親機3Bの表示テーブル記憶部38Bに記憶されている表示テーブルが表4のように更新される。
(表4)
【0059】
また、第二ナースコール親機3Bから、第一ナースコール親機3A及び制御機5に向けて、承認信号が発信される。
【0060】
承認信号を受信した制御機5の切替部60は、呼出テーブル記憶部52dに記憶される呼出テーブルを表5のように更新して、初期設定を、病室B101内の第三ナースコール子機2Cから第一ナースコール親機3Aを呼び出すことが可能な設定(第二設定の一例)に切り替える。
(表5)
【0061】
なお、上述の設定切替のとき、病室B101内の第三ナースコール子機2Cから呼び出すことが可能な携帯端末を、第二ナースコール親機3Bの支配下の第二携帯端末6Bから第一ナースコール親機3Aの支配下の第一携帯端末6Aに切り替えても良い。
【0062】
また、上述の設定切替のとき、切替部60は、病室B101の第三廊下灯4Cの接続先を第二ナースコール親機3Bから第一ナースコール親機3Aに切り替えることにより、病室B101の第三廊下灯4Cの支配下の第三ナースコール子機2Cの呼出先を一括して切り替えても良い。
【0063】
次に、承認信号を受信した第一ナースコール親機3Aは、承認された旨を大型モニタ31に表示するとともに、表示テーブル記憶部38Aに記憶されている表示テーブルを表6のように更新する。
(表6)
【0064】
このような切替動作の結果、病室B101の第三ナースコール子機2Cから呼出信号が発信されると、制御機5を介して、その呼出信号が第一ナースコール親機3Aに届き、第一ナースコール親機3Aが呼び出し状態となる。
【0065】
ところで、近年、医療の専門化が進み、看護師の果たす役割も幅広い専門性が求められており、1つの診療科に属する医療従事者の人数も多くなっている。このため、例えば大学病院等の総合病院では、複数の制御機で構成されたナースコールシステムが導入されている。一方で、社会の高齢化が進むにつれて、病院では患者数が増加する一方であり、ベッド不足や看護師の人数不足の問題は深刻である。
【0066】
しかしながら、従来のナースコールシステムでは、ベッド不足により、例えば隣の診療科のベッドを一時的に借りて患者を入院させた場合、その患者は、そのベッドに設置されたナースコール子機からでは、その患者の本来の診療科のナースコール親機や担当看護師の携帯端末を直接的に呼び出すことができない場合があった。
【0067】
そこで、本実施形態に係るナースコールシステム1では、上述のように、診療科100Aと診療科100Bとで共有で使用するフレキシブルルーム(病室A103、病室B101)内のベッドに対して第三ナースコール子機2Cを設置し、そのベッドに入院した患者を担当する診療科が何処であるかに応じて、第三ナースコール子機2Cの呼出先を切り替えることができるようにしている。このため、病院内の各部門間(診療科間)におけるフレキシブルな業務連携を支援することができる。
【0068】
また、第一ナースコール親機3Aの大型モニタ31では、上述の設定切替後、図5(a)に示されるように、病室A101~A102内のベッドボタン表示D1,D2と、病室A103内のベッドのベッドボタン表示D3と、病室B101内のベッドのベッドボタン表示D4とが、第一ナースコール親機3Aから呼出可能な状態であることを示すアクティブな表示態様で、表示される。
【0069】
また、第二ナースコール親機3Bの大型モニタ31では、上述の設定切替後、図5(b)に示されるように、病室A103内のベッドのベッドボタン表示D5と、病室B101内のベッドのベッドボタン表示D6とが、第二ナースコール親機3Bから呼出不可能な状態であることを示すグレーアウトな表示態様(図中は斜線)で、表示される。
また、病室B102~B103内のベッドのベッドボタン表示D7,D8とが、第二ナースコール親機3Bから呼出可能な状態であることを示すアクティブな表示態様で、表示される。
【0070】
このため、医療従事者は、第一ナースコール親機3Aや第二ナースコール親機3Bの大型モニタ31に表示されるベッドボタン表示の表示態様がアクティブかグレーアウトであるかを確認することにより、フレキシブルルームA103,B101内の第三ナースコール子機2Cが現在どちらのナースコール親機の管理下にあるかを容易に判別することができる。
【0071】
また、本実施形態に係るナースコールシステム1では、フレキシブルルームである病室B101の第三ナースコール子機2Cの呼出先を第二ナースコール親機3Bから第一ナースコール親機3Aに切り替える際、切り換えられる側の第二ナースコール親機3Bからの承認が必要となる。このため、例えば診療科100A,100B間で安全に第三ナースコール子機2Cの呼出先を切り替えることができる。
【0072】
なお、上記実施形態に係るナースコールシステム1は、二つの診療科100A,100Bを備えた施設に設けた場合を例示したが、ナースコールシステム1は、二つの診療科100A,100Bを備えた施設に限らず、三つ以上の診療科を備えた施設にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1:ナースコールシステム、2A:第一ナースコール子機、2B:第二ナースコール子機、2C:第三ナースコール子機、3A:第一ナースコール親機、3B:第二ナースコール親機、4A:第一廊下灯、4B:第二廊下灯、4C:第三廊下灯(廊下灯の一例)、5:制御機、6A:第一携帯端末、6B:第二携帯端末、31:大型モニタ、32:小型モニタ、60:切替部
図1
図2
図3
図4
図5