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特許7321758垂直板材の取付金物及び垂直板材の取付構造
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  • 特許-垂直板材の取付金物及び垂直板材の取付構造 図1
  • 特許-垂直板材の取付金物及び垂直板材の取付構造 図2
  • 特許-垂直板材の取付金物及び垂直板材の取付構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】垂直板材の取付金物及び垂直板材の取付構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20230731BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
E04B2/56 622J
E04B2/56 631J
E04B2/56 642C
E04B2/56 652J
E04B1/58 601E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019087208
(22)【出願日】2019-05-04
(65)【公開番号】P2020183632
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000133135
【氏名又は名称】株式会社タナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】坂野 潤
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-025839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56-2/70
E04B 1/38-1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造構造体に垂直面材を取りつける際に使用する金物であって、以下のように構成したことを特徴とする木造構造体の垂直面材の取付金物。
(1) 前記取付金物は、前記木造構造体の略垂直面に固定する基板と、該基板の下縁に、略垂直の前記垂直面材の下縁を支持する支持板とを備えた。
(2) 前記基板は、水平方向に間隙を設けて並列した第1部材と第2部材とを下縁部で、連結部材で連設して、形成した。
(3) 前記支持板は、前記連結部材に連設した。
(4) 前記支持板は、略中央に切欠を形成した。
【請求項2】
木造構造体に垂直面材を取りつける際に使用する金物であって、以下のように構成したことを特徴とする木造構造体の垂直面材の取付金物。
(1) 前記取付金物は、前記木造構造体の略垂直面に固定する基板と、該基板の下縁に、略垂直の前記垂直面材の下縁を支持する支持板とを備えた。
(2) 前記基板は、水平方向に間隙を設けて並列した第1部材と第2部材とを下縁部で、連結部材で連設して、形成した。
(3) 前記支持板は、前記連結部材に連設した。
(4) 前記基板は、適用する木造構造体の柱および横架材に位置するように配置した。
(5) 前記第1部材と第2部材の少なくとも上端部および下端部にビス孔を形成した。
(6) 前記ビス孔は、間隙の近傍に形成し、かつ上端部および下端部のビス孔は、適用する木造構造体の柱および横架材に位置するように配置した。
【請求項3】
柱と横架材とを接合境界線で接合した木造構造体に、取付金物を介して垂直面材を取りつける構造であって、以下のように構成したことを特徴とする木造構造体の垂直面材の取付構造。
(1) 前記取付金物は、水平方向に間隙を設けて並列した第1部材と第2部材とを備えた基板と、該基板に略垂直に連結した支持板とを含む構成とした。
(2) 前記柱と前記横架材の側面で、前記接合境界線を跨いで、前記取付金物の基板を配置して固定した。
(3) 前記垂直面材の下縁を前記取付金物の支持板に載置して、かつ前記垂直面材の側縁を前記柱の側面に合わせて配置した。
(4) 前記垂直面材の側縁付近から、前記取付金物の間隙を通して、前記柱の側面にビス類を打ち込み、かつ前記垂直面材の下縁付近から前記横架材の側面にビス類を打ち込み、前記垂直面材を木造構造体に固定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に木造建造物の構築にあたり、横架材・柱などの木造構造体に略垂直の壁板などの垂直面材を固定する際に使用する垂直面材の支持金物、およびこの取付金物を適用した「垂直面材の取付構造に関する。とりわけ、柱と横架材との接合部周辺での施工に最適な金物である。
【背景技術】
【0002】
従来、ALCで外壁を構成する鉄骨構造ではあるが、垂直の平板の上端に鉄骨梁に固定する水平の横片、平板の下端委水平のパネル端受部片を形成した金物が提案されている(特許文献1、図2など)。また、同様構造で、横方向に長い金物も記載されている(特許文献2、従来例図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-312042号公報
【文献】特開2004-92125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、柱41周りは柱41と横架材31、51とを接合するために柱41内(主に柱41の軸周辺)に埋まる金物や露出する金物54など各種金物が使われ(図3)、これらとの干渉しないように垂直面材61、61を取り付けるための金物を固定することが難しかった。したがって、一般には、横架材31の側面(垂直面)34に、垂直面材60、60の下縁62位置に合わせて墨付け線71を描き、墨付け線71に沿って、釘72や木片などの受け材を横架材31の側面34に打ち込み、釘72などの受け材に合わせて垂直面材60A、60Bを配置して、垂直面材60A、60Bの外面から柱41や横架材31に向けて釘やビスなどを打ち付けて、垂直面材60A、60Bを柱41や横架材31に固定していた(図3)。この場合、垂直面材60A、60Bを固定後に邪魔な受け材を除去する必要があり、釘72は横架材31の側面34から突出しないように打ち込み、木片の場合には取り外していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、墨出し作業を省略して、各種の柱接合金物と干渉せずに、柱に固定して垂直面材の位置合わせ作業を簡略化させる金物とするために、柱に固定する基板に間隙を設けて並列した第1部材と第2部材とを備えた構成としたので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの取付金物の発明は、木造構造体に垂直面材を取りつける際に使用する金物であって、以下のように構成したことを特徴とする木造構造体の垂直面材の取付金物である。
(1) 前記取付金物は、前記木造構造体の略垂直面に固定する基板と、該基板の下縁に、略垂直の前記垂直面材の下縁を支持する支持板とを備えた。
(2) 前記基板は、水平方向に間隙を設けて並列した第1部材と第2部材とを下縁部で、連結部材で連設して、形成した。
(3) 前記支持板は、前記連結部材に連設した。
(4) 前記支持板は、略中央に切欠を形成した。
【0008】
また、他の取り付け金物の発明は、木造構造体に垂直面材を取りつける際に使用する金物であって、以下のように構成したことを特徴とする木造構造体の垂直面材の取付金物である。
(1) 前記取付金物は、前記木造構造体の略垂直面に固定する基板と、該基板の下縁に、略垂直の前記垂直面材の下縁を支持する支持板とを備えた。
(2) 前記基板は、水平方向に間隙を設けて並列した第1部材と第2部材とを下縁部で、連結部材で連設して、形成した。
(3) 前記支持板は、前記連結部材に連設した。
(4) 前記基板は、適用する木造構造体の柱および横架材に位置するように配置した。
(5) 前記第1部材と第2部材の少なくとも上端部および下端部にビス孔を形成した。
(6) 前記ビス孔は、間隙の近傍に形成し、かつ上端部および下端部のビス孔は、適用する木造構造体の柱および横架材に位置するように配置した。
【0009】
また、取付構造の発明は、柱と横架材とを接合境界線で接合した木造構造体に、取付金物を介して垂直面材を取りつける構造であって、以下のように構成したことを特徴とする木造構造体の垂直面材の取付構造である。
(1) 前記取付金物は、水平方向に間隙を設けて並列した第1部材と第2部材とを備えた基板と、該基板に略垂直に連結した支持板とを含む構成とした。
(2) 前記柱と前記横架材の側面で、前記接合境界線を跨いで、前記取付金物の基板を配置して固定した。
(3) 前記垂直面材の下縁を前記取付金物の支持板に載置して、かつ前記垂直面材の側縁を前記柱の側面に合わせて配置した。
(4) 前記垂直面材の側縁付近から、前記取付金物の間隙を通して、前記柱の側面にビス類を打ち込み、かつ前記垂直面材の下縁付近から前記横架材の側面にビス類を打ち込み、前記垂直面材を木造構造体に固定した。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、木造構造体の側面に固定する基板に略垂直の支持板を形成したので、支持板に垂直面材の下面を合わせるだけで、垂直面材を所定の位置に配置できるので、墨だし作業などを廃止して、施工作業を正確且つ効率化できる効果がある。また、木造構造体の側面に固定する基板に間隙を形成したので、垂直面材から木造構造体に向けてビス類を打つ際に、間隙を通過できるので、垂直面材を効率よく木造構造体に固定できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施形態で、(a)は金物の斜視図、(b)は構造体に金物を固定した状態の斜視図である。
図2】この発明の実施形態で、(a)は金物の平面図、(b)は金物の正面図、(c)は金物の右側面図、(d)は金物の底面図、を表す。
図3】従来例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に基づきこの発明の実施形態を説明する。
【0013】
1.支持金物30の構成
【0014】
(1) 幅Dの平板1の下端部の屈曲縁3で、下端側2を一面側に直角に屈曲して、支持板20として、平板1の残部を基板10とする。基板10を自由端11から支持板20の近傍まで、長方形状に切り取り、切り取った部分を間隙15として、両側の残部を第1部材13および第2部材14とし、平板1の屈曲縁3側の残部を連結部材16とする。
換言すれば、基板10と、基板10の下縁3に略垂直の支持板20とを形成する。基板10は、水平方向(屈曲縁3の長さ方向)に間隙15を設けて並列した第1部材13と第2部材14とを下縁部の連結部材16で連設して形成し、連結部材16に支持板20が連設されている。
前記において、幅Dは使用する柱41の太さに合わせて形成されている。したがって、第1部材13、第2部材14で間隙15の反対側の縁13a、14aは、柱41の縁(または柱の縁の下方延長線42に一致する)(図1(a))。
【0015】
(2) 第1部材13および第2部材14で、水平方向(屈曲縁3の長さ方向)で間隙15に近い側で、かつ自由端11側と屈曲縁3側とにそれぞれ、合計4つのビス孔17、17を形成する。ビス孔17は開口の周囲を、他面側(支持板20を形成した一面の反対側の面)に膨出させた突出部18を形成した。
また、支持板20の自由端21から屈曲縁3に向けてV字状の切欠22を形成し、切欠の先端(底)23は屈曲縁3の近傍に位置するが、屈曲縁3には達しないように形成することが望ましい。
また、第1部材13および第2部材14の自由端11側、支持板20の自由端21側の角を削って丸めることが望ましい。
【0016】
(3) 以上のようにして、取付金物30を構成する(図1(a)、図2)。
【0017】
2.取付金物30の施工(壁板60の取付構造)
【0018】
(1) 第1土台(横架材)31の上面32に、柱41の下面44が固定されて、柱41の軸付近には各種の接合金物(図示していない)が埋設されている。また、第1土台31の一側面33に第2土台51の端面が接合されている。
また、第1土台31の一側面33から他側面34に略水平の貫通孔36が穿設され、第1土台31の一側面33側には大径部37が形成されている。第2土台51の側面52に一端55が固定された棒状の接続金物54の他端56が貫通孔36を通り大径部37内のナットで第1土台31に接合されている。大径部37は柱41の下方延長線42が交わる位置にある。
【0019】
(2) 施工予定の壁板(垂直面材)60の下縁62の位置に、支持板20の上面が位置するように、柱41の側面43、第1土台31の他側面34に、取付金物30を当接する。この際、取付金物30の第1部材13の側縁13a、第2部材14の側縁14aを柱41の縁(角)に合わせるだけで、所定の位置に設置できる。
続いて、各ビス孔17、17からビスを打ち込むと、取付金物31で、上側のビス孔17、17は柱41の側面43に、下側のビス孔17、17は第1土台31の他側面34に位置しているので、取付金物31は柱41および第1土台31に一体に固定される。したがって、取付金物30により、柱41と第1土台31の接合部分の補強もなされる。
【0020】
(3) 続いて、壁板(垂直面材)60A、60Bをその下縁62、62を取付金物31の支持板20に載せ、対向する側縁61、61を取付金物30の支持板20の切欠22の先端23位置に合わせる(図1(a)(b))。この作業だけで、壁板60A、60Bを所定位置に配置できる。なお、図1で、壁板60A、60Bは、一部のみを記載してあり、下縁62と側縁61以外は省略してある(図1(a)(b))。
続いて、壁板60A、60Bの側縁61、61は取付金物30の間隙15内に位置しているので、壁板60A、60Bの側縁61、61の近傍で柱41の側面43および第1土台31の他側面34に釘やビスを打ち込み、同様に、壁板60A、60Bの下縁62、62の近傍で、第1土台31の他側面34に釘やビスを打ち込み、壁板60A、60Bを柱41および第1土台31に固定する。この際、壁板60A、60Bの側縁61、61の近傍から柱41の側面43(第1土台31の他側面34)に打ち込んだ釘やビスは、取付金物30の間隙15に位置するので、支障なく壁板60A、60Bを固定できる。
【0021】
(4) 以上のようにして、柱41、第1土台(横架材)31および第2土台(横架材)51の接合部(木造構造体)に壁板60A、60Bを固定する。第2土台51を省略した、柱41および第1土台(横架材)31の接合部(木造構造体)への適用も同様である(図示していない)。
【0022】
(5) なお、前記において、柱が接合した位置以外で、壁板60Aの下縁62の置出しが必要な場合には、適宜従来の任意の方法により、位置出しをする(図示していない)。また、前記において、第1土台31は貫通孔36の大径部37に一部重なっているが、ビス孔17、17は間隙15側に寄せて配置されているので、取付金物30の固定に支障がない。
【0023】
3.取付金物30の他の構成
【0024】
(1) 前記実施例において、取付金物30の第1部材13の側縁13a、第2部材14の側縁14aの距離D(平板の幅D)を柱41の太さに合わせたので、取付金物30の位置合わせが容易であるが、幅Dを柱の太さより大きくあるいは小さく形成することもできる(図示していない)。
【0025】
(2) また、前記実施例において、取付金物30のビス孔17に突出部18を形成したが、突出部18を省略することもできる(図示していない)。
【0026】
(3) また、前記実施例において、取付金物30のビス孔17は、第1部材13および第2部材14の間隙15寄り(側縁13a、14aの反対側)に配置することが望ましいが、第1部材13、第2部材14に形成されていれば、他の位置に配置することもできる(図示していない)。
【0027】
(4) また、前記実施例において、取付金物30で、支持板20に切欠22を形成することが望ましいが、省略することもできる(図示していない)。
【0028】
(5) また、前記実施例において、取付金物30に、適用予定の柱41の下面44位置(第1土台31の上面32位置。接合境界線)に合わせて、横架材位置印26を形成しておくことできる(図2(b))。横架材位置印26を形成しておけば、取付金物30の配置作業を簡略化できる。
【符号の説明】
【0029】
1 平板
2 平板の下端側
3 平板の屈曲線
10 基板
11 基板の自由端
13 第1部材
13a 第1部材の側縁
14 第2部材
14a 第2部材の側縁
15 間隙
16 連結部材
17 ビス孔
18 ビス孔の突出部
20 支持板
21 支持板の自由端
22 支持板の切欠
23 切欠の底(先端)
26 横架材位置印(第1部材、第2部材)
30 取付金物
31 第1土台(横架材)
32 第1土台の上面(接合境界線)
33 第1土台の一側面
34 第1土台の他側面(略垂直面)
36 第1土台の貫通孔
37 貫通孔の大径部
41 柱
42 柱の下方延長線
43 柱の側面(略垂直面)
44 柱の下面(接合境界線)
51 第2土台(横架材)
52 第2土台の側面
54 接続金物
60 壁板(垂直面材)
61 壁板の側縁
62 壁板の下縁
71 墨出し線
72 釘
図1
図2
図3