(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ディスプレイ装置の製造方法、およびソース基板構造体
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20230731BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20230731BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230731BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/00 Z
G09F9/00 338
G09F9/33
(21)【出願番号】P 2019089336
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高木 孝
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158264(WO,A1)
【文献】特開2003-208106(JP,A)
【文献】特開2010-177390(JP,A)
【文献】特開2010-251359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長のレーザー光を透過するソース基板と
、発光素子との間にあ
り、前記ソース基板と前記発光素子とを接着するリリース層により前記ソース基板に前記発光素子を保持させるソース基板構造体形成工程と、
駆動基板側電極が形成された駆動基板に接着剤層を形成する駆動基板接着剤層形成工程と、
前記ソース基板に保持されている所定の発光素子を前記駆動基板上の接着剤層の所定位置に移動させるために、前記所定の発光素子を前記駆動基板に対して位置決めする発光素子位置決め工程と、
前記ソース基板を透過させて前記発光素子を保持する前記リリース層へ前記所定波長のレーザー光を照射して前記ソース基板から前記駆動基板の接着剤層表面に移動させる発光素子移動工程と、
移動した前記発光素子を前記駆動基板に前記接着剤層を介して接着させるとともに、前記駆動基板側電極と前記発光素子とを接続して導通させる発光素子接着導通工程と、
を有し、
前記リリース層は、
硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μm以下である樹脂材料を含む、ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項2】
前記ソース基板構造体形成工程は、
サファイア基板上に形成された半導体層上に電極を形成し、
前記電極が形成された面側に仮接着層を形成し、
前記電極面側を前記仮接着層を介して中継基板に接着し、
前記サファイア基板を除去し、
前記半導体層の前記サファイア基板を除去した面に、前記ソース基板を前記リリース層を介して保持し、
前記仮接着層と前記中継基板を除去し、
前記半導体層の不要な部分を除去して分割し、
前記ソース基板上に前記リリース層を介して複数の前記発光素子を形成する発光素子形成工程を、
有する、請求項1に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項3】
前記リリース層は、前記所定波長の吸収率が60%以上100%以下である、請求項1または2に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂材料は、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびABS樹脂よりなる群から選択されたいずれか一つの樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項5】
前記リリース層は、
前記ソース基板上に形成された第1樹脂材料を含む第1リリース層と、
前記発光素子上に形成され、前記第1樹脂材料とは異なる第2樹脂材料を含む第2リリース層と、
を有し、
前記第2樹脂材料は、前記発光素子上に
硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μm以下で形成される、請求項1に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項6】
前記ソース基板構造体形成工程は、
前記ソース基板を用意し、前記ソース基板上に、前記第1樹脂材料を塗布して前記第1リリース層を形成する第1リリース層形成工程と、
サファイア基板上に形成された半導体層上に電極を形成し、
前記電極が形成された面側に仮接着層を形成し、
前記電極面側を前記仮接着層を介して中継基板に接着し、
前記サファイア基板を除去し、
前記半導体層の前記サファイア基板を除去した面に、前記第2樹脂材料を、硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μm以下となるように塗布して前記第2リリース層を形成する第2リリース層形成工程と、
前記第1リリース層および前記第2リリース層を向かい合わせて、前記ソース基板と前記中継基板を貼り合わせて、前記ソース基板上に、前記第1リリース層および前記第2リリース層を介して前記半導体層を転写し、前記中継基板を除去し、前記半導体層の不要な部分を除去して分割し、前記ソース基板上に前記第1リリース層および前記第2リリース層を介して複数の前記発光素子を形成する発光素子形成工程と、
を有する、請求項5に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1リリース層と前記第2リリース層の前記所定波長の吸収率の関係は、前記第1リリース層の前記所定波長の吸収率をWa1とし、前記第2リリース層の前記所定波長の吸収率をWa2とすると、Wa1<Wa2である、請求項5または6に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1リリース層の前記所定波長の吸収率は1%以上50%以下であり、前記第2リリース層の前記所定波長の吸収率は60%以上100%以下である、請求項5~7のいずれか1つに記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1リリース層と前記第2リリース層の膜厚の関係は、前記第1リリース層の膜厚をT1、前記第2リリース層の膜厚をT2とすると、T1>T2である、請求項5~8のいずれか1つに記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1リリース層の
硬化後の膜厚は、1μm以上5μm以下である、請求項5~9のいずれか1つに記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1樹脂材料は、ポリジメチルシロキサン樹脂を含み、
前記第2樹脂材料は、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびABS樹脂よりなる群から選択されたいずれか一つの樹脂を含む、請求項5~10のいずれか1つに記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項12】
前記所定波長は、248nm以上355nm以下の波長である、請求項1~11のいずれか1つに記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項13】
前記発光素子は、1辺が1μm以上100μm以下の多角形状、直径が1μm以上100μm以下の円形状、または長径が1μmを超えて100μm以下で短径が1μm以上100μm未満の楕円形状である、請求項1~12のいずれか1つに記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項14】
所定波長のレーザー光を透過するソース基板と、発光素子
との間に
あり、前記ソース基板と前記発光素子とを接着するリリース層を有し、前記リリース層によって前記ソース基板に前記発光素子が保持され、
前記リリース層は、
硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μmである樹脂材料を含む、ソース基板構造体。
【請求項15】
前記リリース層は、前記所定波長の吸収率が60%以上100%以下である、請求項14に記載のソース基板構造体。
【請求項16】
前記樹脂材料は、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびABS樹脂よりなる群から選択されたいずれか一つの樹脂である、請求項14または15に記載のソース基板構造体。
【請求項17】
前記リリース層は、
第1樹脂材料を含む第1リリース層と、
前記第1樹脂材料とは異なる第2樹脂材料を含み、前記発光素子上にある第2リリース層と、
を有し、
前記第2樹脂材料は、
硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μm以下である、請求項14に記載のソース基板構造体。
【請求項18】
前記第1リリース層と前記第2リリース層の前記所定波長の吸収率の関係は、前記第1リリース層の前記所定波長の吸収率をWa1とし、前記第2リリース層の前記所定波長の吸収率をWa2とすると、Wa1<Wa2である、請求項17に記載のソース基板構造体。
【請求項19】
前記第1リリース層の前記所定波長の吸収率は1%以上50%以下であり、前記第2リリース層の前記所定波長の吸収率は60%以上100%以下である、請求項17または18に記載のソース基板構造体。
【請求項20】
前記第1樹脂材料は、ポリジメチルシロキサン樹脂を含み、
前記第2樹脂材料は、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびABS樹脂よりなる群から選択されたいずれか一つの樹脂を含む、請求項17~19のいずれか1つに記載のソース基板構造体。
【請求項21】
前記所定波長は、248nm以上355nm以下の波長である、請求項17~20のいずれか1つに記載のソース基板構造体。
【請求項22】
前記発光素子は、1辺が1μm以上100μm以下の多角形状、直径が1μm以上100μm以下の円形状、または長径が1μmを超えて100μm以下で短径が1μm以上100μm未満の楕円形状である、請求項17~21のいずれか1つに記載のソース基板構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置の製造方法、およびソース基板構造体に関し、詳細には、ディスプレイ装置の製造方法、およびディスプレイ装置の製造に使用されるソース基板構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置として、最近では、発光素子としてマイクロLED(micro-light emitting diode)によるディスプレイ装置が脚光を浴びている。マイクロLEDによるディスプレイ装置は、応答速度が速く、焼き付けを起こさず、低電力で高輝度高精細の映像を映し出せる次世代の表示装置である。
【0003】
マイクロLEDによるディスプレイ装置の製造技術としては、たとえば、特許文献1がある。特許文献1の技術は、まず、成長基板上で形成された発光デバイス(発光素子)が移送基板(ソース基板)に接着される。その後、特許文献1の技術は、移送基板側からレーザ光が照射されて、発光デバイスが移送基板から切り離されてバックプレーン基板(駆動基板)へ移動される。特許文献1の技術では、移送基板と発光デバイスの接着は、発光デバイス側に第1接着剤層を形成する一方、移送基板上には、リリース層と第2接着剤層が、この順で形成されている。そして、第1接着剤層と第2接着剤層とが合わされて接着されることで、移送基板に発光デバイスが接着される。
【0004】
そのほか、素子と基板とを接続する技術としては、たとえば、特許文献2から4がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-508971号公報
【文献】米国特許第9991423号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0269943号明細書
【文献】米国特許第9484332号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術においては、移送基板と発光デバイスは、珪素酸化物やガラス系材料を含む第1接着剤層、第2接着剤層およびリリース層によって接着されている。そして従来技術では、レーザー照射によって移送基板から放出された後の発光デバイス上に残留した接着剤層はそのままでもよいし、フッ化水素酸により除去してもよい、とされている。
【0007】
しかし、発光デバイス上に残留物を残した場合は、発光デバイスとしての特性を劣化させてしまう。一方、フッ化水素酸を用いて除去した場合は、半導体層によって形成されている発光デバイスそのものを損傷させてしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、発光素子をソース基板から駆動基板へ転写後、発光素子上に残膜を残さないディスプレイ装置の製造方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、ディスプレイ装置の製造に用いられ、発光素子をソース基板から駆動基板へ転写後、発光素子上に残膜を残さないソース基板構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は以下の手段により達成される。
【0011】
(1)所定波長のレーザー光を透過するソース基板と発光素子との間にあり、前記ソース基板と前記発光素子とを接着するリリース層により前記ソース基板に前記発光素子を保持させるソース基板構造体形成工程と、
駆動基板側電極が形成された駆動基板に接着剤層を形成する駆動基板接着剤層形成工程と、
前記ソース基板に保持されている所定の発光素子を前記駆動基板上の接着剤層の所定位置に移動させるために、前記所定の発光素子を前記駆動基板に対して位置決めする発光素子位置決め工程と、
前記ソース基板を透過させて前記発光素子を保持する前記リリース層へ前記所定波長のレーザー光を照射して前記ソース基板から前記駆動基板の接着剤層表面に移動させる発光素子移動工程と、
移動した前記発光素子を前記駆動基板に前記接着剤層を介して接着させるとともに、前記駆動基板側電極と前記発光素子とを接続して導通させる発光素子接着導通工程と、
を有し、
前記リリース層は、硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μm以下である樹脂材料を含む、ディスプレイ装置の製造方法。
【0012】
(2)前記リリース層は、
前記ソース基板上に形成された第1樹脂材料を含む第1リリース層と、
前記発光素子上に形成され、前記第1樹脂材料とは異なる第2樹脂材料を含む第2リリース層と、
を有し、
前記第2樹脂材料は、前記発光素子上に硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μm以下で形成される、上記(1)に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【0013】
(3)所定波長のレーザー光を透過するソース基板と発光素子との間にあり、前記ソース基板と前記発光素子とを接着するリリース層を有し、前記リリース層によって前記ソース基板に前記発光素子が保持され、
前記リリース層は、硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μmである樹脂材料を含む、ソース基板構造体。
【0014】
(4)前記リリース層は、
第1樹脂材料を含む第1リリース層と、
前記第1樹脂材料とは異なる第2樹脂材料を含み、前記発光素子上にある第2リリース層と、
を有し、
前記第2樹脂材料は、硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μm以下である、上記(4)に記載のソース基板構造体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ソース基板と発光素子とを接着するリリース層として、膜厚0.1μm以上0.5μm以下で塗布した樹脂材料を用いた。このため、本発明は、ソース基板側からレーザー光を照射することで、リリース層は消失して、ソース基板から発光素子が放出される。このため、発光素子上にはリリース層の残膜が残らない。
【0016】
また、本発明によれば、ソース基板と発光素子とを接着するリリース層を2層以上とした。2層以上のリリース層は、第1樹脂材料を含む第1リリース層と、第1樹脂材料とは異なる第2樹脂材料を含む第2リリース層である。このうち、発光素子上の第2リリース層に含まれる第2樹脂材料は、膜厚0.1μm以上0.5μm以下で塗布した。このため、本発明は、ソース基板側からレーザー光を照射することでは第2リリース層は消失して、発光素子が放出される。このため、発光素子上にはリリース層の残膜が残らない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程を示した断面図である。
【
図2】ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程を示した断面図である。
【
図3】ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程を示した断面図である。
【
図4】ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程を示した断面図である。
【
図5】ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程を示した断面図である。
【
図6】ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程を示した断面図である。
【
図7】ディスプレイ装置の製造方法に係る駆動基板を示す断面図である。
【
図8】ディスプレイ装置の製造方法に係るマイクロLEDと駆動基板との接続方法を説明するための断面図である。
【
図9】ディスプレイ装置の製造方法に係るマイクロLEDと駆動基板との接続方法を説明するための断面図である。
【
図10】実施形態2における、半導体層とソース基板との接着工程を示す断面図である。
【
図11】実施形態2における、半導体層とソース基板との接着工程を示す断面図である。
【
図12】実施形態2における、半導体層とソース基板との接着工程を示す断面図である。
【
図13】実施形態2における、マイクロLEDと駆動基板との接続方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付された図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の図面において、同一参照符号は、同一構成要素を指し、図面上において、各構成要素の大きさは、説明の明瞭性および便宜さのために誇張されてもいる。一方、以下で説明される実施形態は、ただ例示的なものに過ぎず、そのような実施形態から多様な変形が可能である。
【0019】
以下において、「上部」や「上」と記載されたところは、接触して真上にあるものだけではなく、非接触で上にあるものも含んでもよい。
【0020】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」または「有する」とするとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0021】
また、「前記」の用語、およびそれと類似した指示用語の使用は、単数および複数のいずれにも該当する。
【0022】
方法を構成する段階について、明白に順序を記載する、あるいは反対となる記載がなければ、段階は、適切な順序で実行される。必ずしも前記段階の記載順序に限定されるものではない。全ての例、または例示的な用語(たとえば、など)の使用は、単に技術的思想を説明するためのものであり、特許請求の範囲によって限定されない以上、前記例、または例示的な用語によって範囲が限定されるものではない。
【0023】
(実施形態1)
本発明の例示的な実施形態1によるディスプレイ装置の製造方法について説明する。
【0024】
図1から
図6は、ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程を示した断面図である。
【0025】
ディスプレイ装置の製造方法に係る、マイクロLED形成工程は、まず、
図1に示すように、サファイア基板101にマイクロLED(発光素子)となる半導体層102が形成される。半導体層102は、LEDとして所定の波長の光を発光する。半導体層102は、サファイア基板101に成長させたGaN系半導体などである。この段階では、半導体層102は、個別のマイクロLEDの形態に分割されていない。本実施形態では、サファイア基板101と半導体層102を合わせて初期基板100と称する。
【0026】
サファイア基板101は、たとえば4インチウェーハサイズの大きさである。
【0027】
半導体層102の上には、さらに、分割後の各マイクロLEDに対応する位置に、電極が形成される。本実施形態では、この電極をLED側電極12(発光素子側電極)と称する。マイクロLEDへの分割については後述する。
【0028】
LED側電極12は、半導体層102上に、分割後のマイクロLEDとなる部分ごとに形成される。LED側電極12は、半導体層102と電気的に接続された金属配線の一部がそのまま用いられてもよいし、半導体層102と直接接する金属パッドとして形成されてもよい。
【0029】
LED側電極12は、たとえば、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Cr、Ti、ITOのうちいずれか一つの金属またはグラフェン(Graphene)を用いて形成される。中でも、Au、Ag、Cuが好ましい。
【0030】
続いて、
図2に示すように、初期基板100のLED側電極12が形成された面側に、転写用樹脂層111によって中継基板112が貼り付けられる。転写用樹脂層111は仮接着層である。この工程は、たとえば、以下のように行われる。まず、中継基板112の、初期基板100と対向する面に転写用樹脂層111がスピンコーティングなどで形成される。続いて、初期基板100と中継基板112が貼り合わされる。続いて、加熱処理によって、転写用樹脂層111が硬化されて、初期基板100と中継基板112が接着される。中継基板112は、たとえば石英ガラス基板が用いられる。
【0031】
転写用樹脂層111には、樹脂材料硬化後、後述するレーザーリフトオフで使用するレーザー光波長の吸収率が60%以上100%以下となる樹脂材料を用いることが好ましく、より好ましくは80%以上100%以下となる樹脂材料を用いることである。具体的な樹脂材料としては、たとえば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂(たとえばPMMA(Polymethyl methacrylate))、エポキシ樹脂、PP(Polypropylene)樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂よりなる群から選択されたいずれか一つの樹脂が用いられる。例示した樹脂の使用に際しては、熱硬化剤が配合されてもよい。また、転写用樹脂層111としては、その他の熱硬化性樹脂が使用されてもよい。
【0032】
なお、樹脂材料と光は、透過率(%)=100%-吸収率(%)-反射率(%)の関係がある。したがって、レーザー光波長の吸収率は、レーザーリフトオフで使用するレーザー光の波長について、この関係式から求めることができる。また、樹脂材料は、市販されている樹脂材料の仕様(たとえば透過率、吸収率、反射率)や樹脂材料の特性(たとえば透過率、吸収率、反射率)などから、上記のレーザー光波長の吸収率となるように選定してもよい。
【0033】
続いて、
図3に示すように、サファイア基板101が半導体層102から分離される。サファイア基板101の分離は、たとえば、レーザーリフトオフ技術を用いる。具体的には、サファイア基板101側から、その全面を走査するようにして、紫外線波長のレーザー光が照射される。レーザー光照射によって、サファイア基板101が半導体層102から分離される。レーザー光は、たとえば、波長248nmのKrFエキシマレーザーが使用される。使用する波長はこれに限定されず、サファイア基板101を半導体層102から分離できる波長であればよい。
【0034】
続いて、
図4に示すように、半導体層102側に、リリース層13を介してソース基板14を貼り合わせる。リリース層13は、ダイナミックリリース層(DRL(Dynamic Release Layer))とも称される。この工程は、たとえば、以下のように行われる。まず、半導体層102側に、リリース層13となる樹脂材料がスピンコーティングなどで形成される。続いて、この樹脂材料にソース基板14が貼り合わされる。続いて、加熱処理によって、樹脂材料が硬化されてリリース層13となり、ソース基板14が接着される。
【0035】
ソース基板14は、後述するレーザーアブレーション工程に使用するレーザー光の波長を透過させる。ソース基板14は、たとえば、石英ガラス基板が用いられる。石英ガラス基板は、たとえば、前述したサファイア基板101と同じサイズかそれ以上でよく、具体的には、サファイア基板101が4インチウェーハであれば、ソース基板14(石英ガラス基板)も4インチウェーハサイズが用いられる。
【0036】
リリース層13は、樹脂材料の硬化後の膜厚が0.1μm以上0.5μm以下となるように材料の硬化収縮率に応じて塗布膜厚を調整して形成する。たとえば、使用する樹脂材料の硬化収縮率が70%の場合は、塗布膜厚0.14μm以上0.7μm以下で塗布する。また、樹脂材料の塗布膜厚は、リリース層13となる樹脂材料が硬化後、上記膜厚の範囲となるように、あらかじめ実験などによって決めてもよい。
【0037】
リリース層13には、使用する樹脂材料が硬化後、レーザーアブレーション工程で使用するレーザー光の所定波長の吸収率が60%以上100%以下となる樹脂材料を用いることが好ましく、より好ましくは80%以上100%以下である。所定波長については後述する。
【0038】
なお、樹脂材料と光は、透過率(%)=100%-吸収率(%)-反射率(%)の関係がある。したがって、所定波長の吸収率は、レーザーアブレーション工程で使用するレーザー光の波長について、この関係式から求めることができる。また、樹脂材料は、市販されている樹脂材料の仕様(たとえば透過率、吸収率、反射率)や樹脂材料の特性(たとえば透過率、吸収率、反射率)などから、上記の所定波長の吸収率となるように選定してもよい。
【0039】
リリース層13に用いる樹脂材料としては、たとえば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂(たとえばPMMA(Polymethyl methacrylate))、エポキシ樹脂、ポリプロピレン(PP(Polypropylene))樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂よりなる群から選択されたいずれか一つの樹脂が用いられる。例示した樹脂の使用に際しては、熱硬化剤が配合されてもよい。また、樹脂材料としては、その他の熱硬化性樹脂が使用されてもよい。
【0040】
続いて、
図5に示すように、中継基板112が除去される。中継基板112の除去は、たとえば、レーザーリフトオフ技術が用いられる。中継基板112の除去は、たとえば、以下ように行われる。まず、中継基板112側から、中継基板112の全面を走査するように紫外線波長のレーザー光が照射される。これにより、レーザー光の照射によって転写用樹脂層111が溶解し、中継基板112がLED側電極12の面から分離されて、除去される。LED側電極12の面に残った転写用樹脂層111は、洗浄処理により取り除かれる。ここで使用するレーザー光は、たとえば、波長248nmのKrFエキシマレーザーである。使用する波長はこれに限定されず、転写用樹脂層111として使用する樹脂材料に応じて適宜決定されてもよい。
【0041】
続いて、
図6に示すように、半導体層102が複数のマイクロLED11に分割される。複数のマイクロLED11への分割は、たとえば、半導体層102上にフォトレジストを形成して、フォトリソグラフィによりパターニングし、パターニングされたフォトレジストをマスクとしてドライエッチングにより、個別のマイクロLED11に分割される。この段階では、さらに、分割されたマイクロLED11をマスクとして、リリース層13もマイクロLED11と同じ形状となるようにパターニングされる。使用されるドライエッチングは、異方性エッチングであるRIE(Reactive Ion Etching)が好ましい。
【0042】
マイクロLED11のチップ形状は、LED側電極12が形成されている面を平面として見たとき、たとえば、1辺が1μm以上100μm以下の多角形状である。好ましくは、1辺が1μm以上100μm以下の矩形状である。また、マイクロLED11の高さ、すなわち、半導体層102の厚さは、たとえば500μm以下である。したがって、マイクロLED11全体の形状としては、縦×横×高さ=100μm以下×100μm以下×500μm以下である。なお、縦、横および高さのそれぞれ下限値は、1μm程度であるが、これに限定されず、製造可能な大きさであればよい。また、マイクロLED11の形状は、円形状または楕円形状などとしてもよい。円形状に分割する場合は直径が1μm以上100μm以下、楕円形状に分割する場合は長径が1μmを超えて100μm以下、短径が1μm以上100μm未満とすることが好ましい。これらの場合も径の下限は、1μmに限定されず、製造可能な大きさであればよい。
【0043】
ソース基板14上に配列されたマイクロLED11は、マイクロLED11同士が確実に分割されていれば、それらの隙間(間隔)は製造可能な最小値でよい。このため、配列ピッチは、マイクロLED11の大きさにもよるが、たとえば200μm以下が好ましい。配列ピッチは、たとえば、隣接するマイクロLED同士の中心間距離、または隣接するマイクロLED同士の同じ側のエッジ間距離である。
【0044】
本実施形態1では、ここまでの工程で、ソース基板14とマイクロLED11の間にある1層のリリース層13により、ソース基板14にマイクロLED11が保持されたソース基板構造体が提供される。
【0045】
次に、駆動基板について説明する。
図7はディスプレイ装置の製造方法に係る駆動基板を示す断面図である。
【0046】
駆動基板20は、製造するディスプレイ装置のサイズに対応した大きさとなる。
【0047】
駆動基板20は、マイクロLED11に電力を供給するために必要な配線やTFT(thin-film-transistor)などと共に、LED側電極12と接続するための電極が形成される。本実施形態では、駆動基板20に設けられる電極を駆動基板側電極21と称する。駆動基板側電極21は、駆動基板20上に形成されている金属配線の一部がそのまま用いられてもよいし、配線と接続された金属パッドとして形成されてもよい。駆動基板側電極21は、既に説明したLED側電極12と同様の金属が用いられる。
【0048】
本実施形態1では、駆動基板20の駆動基板側電極21が形成された面に、接着剤層32が形成される。接着剤層32は、たとえば、非導電性接着剤であるNCF(Nonconductive Film)、NCP(Nonconductive paste)、NCA(Non Conductive Adhesive)などが用いられる。また、接着材層は、たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどに、熱硬化剤が配合されたものが使用されてもよい。接着剤層32は、これらに限定されず、熱硬化性樹脂を使用することができる。また、接着剤層32は、フォトレジスト(ポジ型)が使用されてもよい。
【0049】
接着剤層32は、たとえば、ラミネート法や印刷法などによって、駆動基板20の駆動基板側電極21が形成された面の全面に塗布される。接着剤層32の厚さは、たとえば、1μm以上50μm以下である。後述するマイクロLED11と駆動基板20との接続においては、加圧、加熱工程がある。本実施形態1では、接着剤層32の厚さを1μm以上50μm以下とすることで、この加圧、加熱工程によりLED側電極12を駆動基板側電極21まで到達させることができる。
【0050】
本実施形態1では、ここまでの工程で、接着剤層32が設けられている駆動基板構造体が提供される。
【0051】
次に、マイクロLED11と駆動基板20との接続について説明する。
図8および
図9は、ディスプレイ装置の製造方法に係るマイクロLED11と駆動基板20との接続方法を説明するための断面図である。
【0052】
マイクロLED11と駆動基板20との接続は、レーザーアブレーション技術を利用する。
図8に示すように、まず、1個のマイクロLED11を駆動基板20へ接続するために、ソース基板14全体を移動させて位置決めされる。このときの位置決めは、1個のマイクロLED11のLED側電極12が、これを駆動するために対応する駆動基板側電極21と接続できる位置に移動される。
【0053】
位置決め後、ソース基板14側から、1個のマイクロLED11に目がけて、所定波長(紫外線(UV))のレーザー光16が照射される。レーザー光16が照射されることによって、1個のマイクロLED11を保持していたリリース層13が分解、消失して、マイクロLED11が駆動基板20側へ放出される。放出されたマイクロLED11は、駆動基板20側の接着剤層32にキャッチされる。使用されるレーザー光16の所定波長は、たとえば、波長248nmのKrFエキシマレーザーである。そのほか、波長266nmのYAG(FHG)、波長355nmのYAG(THG)などが用いられる。特に、波長355nmのレーザーは、石英ガラス基板に代えてガラス基板を用いることができ、部材および装置コストの面でより優位性が得られる。したがって、所定波長としては、たとえば、波長248nm以上355nm以下である。そのほかの波長のレーザー光を用いてもよい。
【0054】
レーザー光16のビーム径は1個のマイクロLED11のチップサイズと同じか、それ以上のサイズでもよい。ただし、レーザー光16のビーム径は、ソース基板14上で隣接するマイクロLED11に影響しない程度の大きさとすることが好ましい。このようなレーザー光16のビーム径とすることで、ソース基板14上で並んでいるマイクロLED11を1個1個選択的に駆動基板20側へ転写させることができる。
【0055】
レーザー光16のビームは1本でも良いが、マスクなどを用いて、またはレーザー光源を複数用意して、所望のピッチで複数のビームを同時に照射することとしてもよい。このようにすることで、多数のマイクロLED11を同時に転写させることもできる。
【0056】
また、レーザーアブレーション工程を行う際の、マイクロLED11と駆動基板20との隙間(ギャップ)間隔は、たとえば、70μm以上100μm以下とすることが好ましい。このような隙間(ギャップ)間隔とすることで、レーザーアブレーション工程によりソース基板14から放出されたマイクロLED11を、駆動基板20の狙い通りの位置でキャッチさせることができる。また、ボンディング装置の動作精度にもよるが、隙間間隔の下限を70μmとすることで、ボンディング装置によりソース基板14を移動させる際にソース基板14が駆動基板20と接触させずに高速で移動させることができる。なお、隙間(ギャップ)間隔は、ソース基板14と駆動基板20を対向させた状態でもっとも近接した位置の間隔である。もっとも近接した位置の間隔は、通常、LED側電極12と、駆動基板側電極21上の接着剤層32が対向する位置である。このレーザー光による、ソース基板14からのマイクロLED11の放出と駆動基板20への接着が、ディスプレイ装置として必要な個数分、繰り返し行われる。
【0057】
続いて、駆動基板20上に必要数のマイクロLED11が配置されたなら、マイクロLED11を駆動基板20方向へ相対的に押圧して、密着させるとともに加熱する。このときの加圧力はLED側電極12と駆動基板側電極21が接続されるようにする。加熱温度は、接着剤層32が硬化する温度である。この加熱温度は、たとえば、熱硬化性樹脂を含むNCF、NCP、NCAを用いた場合、加圧力にもよるが、圧力1MPa以上10MPa以下の場合、硬化温度は100℃以上200℃以下とされる。
【0058】
これにより、
図9に示すように、LED側電極12と駆動基板側電極21が電気的に接続されて導通され、硬化した接着剤層32によってマイクロLED11と駆動基板20が接着される。
【0059】
ディスプレイ装置10の製造方法としては、さらに必要な周辺回路の接続や配線などがあれば、それらの形成や配線工程が行われ、また、マイクロLED11保護のために、樹脂モールディングなどが行われて、ディスプレイ装置10が完成する。
【0060】
本実施形態1によれば以下の効果を奏する。
【0061】
本実施形態1においては、ソース基板14がマイクロLED11を保持するリリース層13として、膜厚0.1μm以上0.5μm以下で樹脂材料を形成した。このように極めて薄いリリース層13は、レーザー光の照射によって分解、消失してしまうので、ソース基板14から放出後のマイクロLED11上には、リリース層13の樹脂成分が残らない。したがって、本実施形態1は、レーザーアブレーション工程後の残膜処理や洗浄工程が不要となり、製造コストの低減を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態1は、マイクロLED11上に残膜が残らないので、マイクロLED11から放射される光の光学特性が劣化しない。
【0063】
また、本実施形態1は、マイクロLED11上に残膜が残らないので、マイクロLED11上に樹脂モールディングをする際に密着不良、はじきなどの不具合が生じない。
【0064】
また、本実施形態1は、リリース層13でのレーザー光の吸収率が60%以上と高いため、より速くリリース層13を分解させることができる。このため、レーザーアブレーション工程によって照射されるレーザー光のエネルギーを低減させることができるので、レーザー光によってマイクロLED11が受ける損傷を防止または極めて少なくできる。
【0065】
また、本実施形態1は、レーザーアブレーション工程によって照射されるレーザー光のエネルギーを低減させることができる。このため、本実施形態1は、マイクロLED11をソース基板14から放出させる際の、転写位置精度を安定化させることができる。レーザーアブレーション工程は、レーザー光のエネルギーでリリース層13を分解、消失させるだけでなく、マイクロLED11を弾き出す作用がある。このため、レーザーアブレーション工程は、レーザー光のエネルギーが強すぎると、強い力でマイクロLED11が弾き出されることになって、マイクロLED11の放出される方向が不安定になる。この点、本実施形態1は、エネルギーを少なくできるので、その結果、マイクロLED11を弾き出す力が弱くなり、マイクロLED11が放出される方向が安定する。
【0066】
また、本実施形態1は、このようにマイクロLED11が放出される方向が安定するため、ソース基板14と駆動基板20との隙間(ギャップ)を比較的広くすることができる。したがって、本実施形態1は、ギャップマージンも広くできる。ゆえに、本実施形態1は、ソース基板14よりも大きな駆動基板20にマイクロLED11を転写する際に、ソース基板14を連続的に移動させる動作が比較的容易に実現できるようになり、プロセス時間を短くすることができる。
【0067】
また、本実施形態1では、レーザーアブレーション工程によって照射されるレーザー光のエネルギーを低減させることができるので、レーザーアブレーション工程で発生するプラズマの発生を少なくできる。このように本実施形態1は、レーザーアブレーション工程で発生するプラズマを少なくできることで、ソース基板14がプラズマによって受ける損傷を防止または極めて少なくできる。これにより、本実施形態1は、マイクロLED11を放出させた後のソース基板14を再利用しやすくなり、製造コストの低減を図ることができる。これは、従来、ソース基板14を再利用する際は、プラズマによって損傷された表面を研磨工程によって鏡面化する必要があった。この点、本実施形態1では、ソース基板14が受ける損傷がないか極めて少なくできる。ゆえに、本実施形態1では、ソース基板14を再利用する際の研磨作業をなくし、または研磨回数を少なくできるので、ソース基板14を再利用するためのコストを低減できる。
【0068】
また、本実施形態1では、レーザーアブレーション工程によって照射されるレーザー光のエネルギーを低減させることができるので、製造工程の省エネルギー化を図ることができる。たとえば、4K解像度のディスプレイ装置を製造する場合、約800万画素分のマイクロLED11を駆動基板20へ転写する必要がある。1画素をRGB各1個のマイクロLED11で構成した場合、単純に約2400万個ものマイクロLED11を1個1個レーザー照射によって放出することになる。このため、本実施形態1は、レーザー光のエネルギーを少なくできることで、製造コストを低減させることができる。
【0069】
(実施形態2)
本発明の例示的な実施形態2によるディスプレイ装置の製造方法について説明する。
【0070】
実施形態2は、ソース基板14とマイクロLED11との間にあるリリース層として、異なる樹脂材料からなる2層以上を有する。リリース層以外の構成およびリリース層の製造工程以外は、実施形態1と同様である。また、実施形態1で説明した部材と、同様機能を有する部材については、配置が異なっている場合も含めて同じ符号を付した。
【0071】
図10~12は、実施形態2における、半導体層102とソース基板14との接着工程を示す断面図である。また、
図13は、実施形態2における、マイクロLED11と駆動基板20との接続方法を説明するための断面図である。
【0072】
本実施形態2では、
図10に示すように、半導体層102を接着する前のソース基板14に第1リリース層131となる第1樹脂材料を塗布している。第1リリース層131となる第1樹脂材料としては、たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂である。第1リリース層131の膜厚は、塗布時において1μm以上5μm以下とする。第1樹脂材料は、塗布後、加熱焼成されて、第1リリース層131となる。第1樹脂材料硬化後、第1リリース層131の膜厚は、たとえば1μm以上5μm以下である。第1リリース層131の膜厚が、硬化前後で同じ値なのは、第1樹脂材料であるポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂の硬化前後の比重が測定限界以下の差であるためである。もちろん、使用する樹脂材料によっては、硬化前後の膜厚が異なる。そのような場合は、第1リリース層131となる第1樹脂材料の硬化後、膜厚が上記範囲となるように、塗布膜厚を調整するとよい。
【0073】
第1樹脂材料からなる第1リリース層131の所定波長の吸収率は、1%以上50%以下である。この所定波長は、実施形態1同様に、レーザーアブレーション工程に使用するレーザー光の波長である。なお、第1樹脂材料における所定波長の吸収率は、実施形態1同様に、透過率(%)=100%-吸収率(%)-反射率(%)の関係式を用いて求めることができる。すなわち、所定波長の吸収率は、レーザーアブレーション工程で使用するレーザー光の波長について、この関係式から求める。また、実施形態1同様に、第1樹脂材料としては、市販されている樹脂材料の仕様(たとえば透過率、吸収率、反射率)や樹脂材料の特性(たとえば透過率、吸収率、反射率)などから、上記の所定波長の吸収率となるように選定してもよい。
【0074】
さらに、本実施形態2では、
図11に示すように、中継基板112上に保持された半導体層102上に、第2リリース層132となる第2樹脂材料が塗布される。第2リリース層132は、第2樹脂材料の硬化後の膜厚が、0.1μm以上0.5μm以下となるように、塗布膜厚を調整して形成する。たとえば、使用する第2樹脂材料の硬化収縮率が70%の場合は、塗布膜厚0.14μm以上0.7μm以下で塗布することになる。また、第2樹脂材料の塗布膜厚は、第2リリース層132となる第2樹脂材料が硬化後、上記膜厚の範囲となるように、あらかじめ実験などによって決めてもよい。したがって、この第2樹脂材料は、実施形態1におけるリリース層を形成している樹脂材料と同様の構成である。
【0075】
したがって、第1リリース層131と第2リリース層132の膜厚の関係は、第1リリース層131の膜厚をT1、第2リリース層132の膜厚をT2とすると、T1>T2となっている。
【0076】
第2樹脂材料は、実施形態1のリリース層13に用いられる樹脂材料と同様である。すなわち第2樹脂材料は、たとえば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂(たとえばPMMA(Polymethyl methacrylate))、エポキシ樹脂、ポリプロピレン(PP(Polypropylene))樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂よりなる群から選択されたいずれか一つの樹脂が用いられる。例示した樹脂の使用に際しては、熱硬化剤が配合されてもよい。また、樹脂材料としては、その他の熱硬化性樹脂が使用されてもよい。
【0077】
第2リリース層132は、樹脂材料硬化後、所定波長の吸収率が60%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは80%以上100%以下である。所定波長は、実施形態1同様に、たとえば、波長248nm以上355nm以下である。なお、第2樹脂材料における所定波長の吸収率は、実施形態1同様に、透過率(%)=100%-吸収率(%)-反射率(%)の関係式を用いて求めることができる。すなわち、所定波長の吸収率は、レーザーアブレーション工程で使用するレーザー光の波長について、この関係式から求める。また、実施形態1同様に、第2樹脂材料としては、市販されている樹脂材料の仕様(たとえば透過率、吸収率、反射率)や樹脂材料の特性(たとえば透過率、吸収率、反射率)などから、上記の所定波長の吸収率となるように選定してもよい。
【0078】
このように、本実施形態2では、第1リリース層131がソース基板14に近い側に形成されており、第2リリース層132がマイクロLED11となる半導体層102側に形成されている。
【0079】
そして、第1リリース層131と第2リリース層132とは、所定波長の吸収率に違いがあり、第1リリース層131の所定波長の吸収率は、第2リリース層132の所定波長の吸収率より低い。すなわち、第1リリース層131と第2リリース層132の所定波長の吸収率の関係は、第1リリース層131の所定波長の吸収率をWa1とし、第2リリース層132の所定波長の吸収率をWa2とすると、Wa1<Wa2となっている。
【0080】
続いて、本実施形態2では、
図12に示すように、第1リリース層131と第2リリース層132を向かい合わせて、ソース基板14と中継基板112とを貼り合わせ、加圧加熱される。これにより、第1リリース層131と第2リリース層132とが接着される。
【0081】
その後、本実施形態2は、実施形態1同様に、中継基板112をレーザーリフトオフによって除去し、半導体層102表面を洗浄する。
【0082】
その後、本実施形態2は、実施形態1同様に、半導体層102がマイクロLED11へ分割される。このとき、少なくとも第2リリース132層は、実施形態1同様にマイクロLED11の大きさに合わせて分割されるが、第1リリース層131については、分割されてもよいし、分割されなくてもよい。つまり、第1リリース層131は、分割後のマイクロLED11をマスクとして第2リリース132層をエッチングした際に、オーバーエッチングされてもよい。
【0083】
これにより、本実施形態2では、ソース基板14とマイクロLED11の間にある第1リリース層131および第2リリース層132によって、ソース基板14にマイクロLED11が保持されたソース基板構造体が提供される。
【0084】
本実施形態2では、その後、
図13に示すように、レーザーアブレーション工程によって、1個1個のマイクロLED11が、駆動基板20へ転写される。本実施形態2におけるレーザーアブレーション工程は、基本的には実施形態1同様であり、実施形態1で説明した所定波長のレーザー光が用いられる。
【0085】
その後は、本実施形態2においても、所定個数のマイクロLED11を駆動基板20へ転写したなら、実施形態1同様に、加圧加熱工程が行われる。これにより、本実施形態2においても、マイクロLED11が駆動基板20へ接着され、LED側電極12と駆動基板側電極21が電気的に接続されて導通される。そして、本実施形態2においても、必要な周辺回路の接続や配線工程が行われ、また、マイクロLED11保護のために、樹脂モールディングなどが行われて、ディスプレイ装置10が完成する(
図9参照)。
【0086】
本実施形態2によれば以下の効果を奏する。
【0087】
本実施形態2においては、ソース基板14とマイクロLED11を、2層以上のリリース層(第1リリース層131および第2リリース層132)を用いて保持した。このうち、マイクロLED11側の第2リリース層132は、第2リリース層132となる第2樹脂材料塗布後、硬化後の膜厚0.1μm以上0.5μm以下とした。このため、本実施形態2においても、実施形態1同様に、レーザーアブレーション工程によって放出されたマイクロLED11上に残膜が発生しない。したがって、レーザーアブレーション工程後の残膜処理や洗浄工程が不要となる。
【0088】
また、本実施形態2は、第1リリース層131の所定波長の吸収率が1%以上50%以下とし、第2リリース層132の所定波長の吸収率が60%以上100%以下とした。これにより、本実施形態2では、レーザーアブレーション工程によって照射されるレーザー光のエネルギーが実施形態1より高くても、第1リリース層131によって吸収させることができる。このため本実施形態2では、マイクロLED11に到達するレーザー光のエネルギーが低減されるので、実施形態1同等に、マイクロLED11は放出される際の起動が安定する。したがって、本実施形態2でも、実施形態1同様に、ソース基板14と駆動基板20との間のギャップマージンを広くとることができる。また、本実施形態2においても、マイクロLED11に到達するレーザー光のエネルギーが低減されるので、マイクロLED11がレーザー光によって受ける損傷を防止または極めて少なくできる。
【0089】
また、本実施形態2では、レーザーアブレーション工程により、個々のマイクロLED11と同形状に分割されている第2リリース層132は消失するが、第1リリース層131はソース基板14に残る。このため、本実施形態2では、ソース基板14の半導体層102を貼り付ける面は、レーザーアブレーション工程で発生したプラズマから、残った第1リリース層131により保護される。したがって、本実施形態2は、ソース基板14が、レーザーアブレーション工程で発生したプラズマによって受ける損傷を防止できる。これにより、マイクロLED11を放出させた後のソース基板14を再利用しやすくなり、製造コストの低減を図ることができる。これは、従来、ソース基板14を再利用する際は、プラズマによって損傷された表面を研磨工程によって鏡面化する必要があった。この点、本実施形態2では、ソース基板14が受ける損傷がないか極めて少なくできる。ゆえに、本実施形態2では、ソース基板14を再利用する際の研磨作業をなくし、または研磨回数を少なくできるので、ソース基板14を再利用するためのコストを低減できる。
【実施例】
【0090】
以下では、ディスプレイ装置10を試作した例について説明する。
【0091】
<実施例1>
(ソース基板の作成)
本実施例1は、まず、4インチサイズのサファイア基板101上にLEDとなる半導体層102とLED側電極12を形成した。LED側電極12は半導体層102に直接形成した金(Au)製のパッドとした。また、LED側電極(パッド)の大きさは30×20μmとした。半導体層102の膜厚は、5μmとした。
【0092】
続いて、中継基板112上に、熱硬化剤を配合したポリイミド樹脂を10μmの膜厚でスピンコーティングし、転写用樹脂層111を形成した。中継基板112は石英ガラス基板を用いた。
【0093】
続いて、半導体層102と転写用樹脂層111が接するように、サファイア基板101と中継基板112を重ね合わせて、1000N、250℃で、10分間、加圧、加熱して、両基板を貼り合せた。
【0094】
続いて、波長248nmのKrFエキシマレーザーをサファイア基板101側から、200mJ/cm2のエネルギー密度で全面照射し、半導体層102とサファイア基板101を分離した。
【0095】
続いて、ソース基板14として石英ガラス基板を用意し、このソース基板14上に、熱硬化剤が配合されたポリイミド樹脂をスピンコーティングして、膜厚0.15μmの樹脂層を形成し、真空オーブン中で250℃/1時間焼成してリリース層13を形成した。ポリイミド樹脂は、HD3007(HD MicroSystems)を所望の固形分濃度に希釈したものを用いた。HD3007は、硬化後、波長248nmの紫外線吸収率が99%以上である。
【0096】
続いて、中継基板112上の半導体層102の面をソース基板14のリリース層13に重ね合わせて、ボンディング装置を用いて圧力1000N、250℃で10分、加圧、加熱して、ソース基板14と中継基板112とを貼り合せた。
【0097】
続いて、波長248nmのKrFエキシマレーザーを中継基板112側から、200mJ/cm2のエネルギー密度で全面照射し、転写用樹脂層111と中継基板112を分離した。半導体層102上に残った転写用樹脂を除去するために、N-メチルピロリドン(NMP)を60℃で転写用樹脂の表面に60秒間スプレーした。その後、純水で60秒間リンスした。
【0098】
続いて、ドライエッチング(RIE)により半導体層102を個々のマイクロLED11に分割した。さらに、分割されたマイクロLED11をマスクとして、リリース層13を酸素プラズマRIEによりエッチングして、マイクロLED11の形状に合わせて分割した。
【0099】
(レーザーアブレーション工程による転写)
一定の間隔でTFTがアレイ上に配置されるとともに、TFTに接続された銅(Cu)配線が施された駆動基板20を用意した。銅配線の一部が駆動基板側電極21となる。
【0100】
駆動基板20の駆動基板側電極21が配置されている面の全面に、エポキシ樹脂と熱硬化剤からなる非導電性材料をアプリケーターを用いて塗布して接着剤層32を形成した。接着剤層32は駆動基板側電極21上で膜厚5μmとした。
【0101】
続いて、ソース基板14のマイクロLED11が保持されている面と、駆動基板20の駆動基板側電極21が配置されている面を100μmの隙間を開けて向かい合わせて保持した。このとき、転写する1個のマイクロLED11を駆動基板20の狙いの位置に位置決めした。
【0102】
続いて、レーザーアブレーション工程により、マイクロLED11を駆動基板20へ転写させた。レーザーアブレーション工程は、波長248nmのKrFエキシマレーザーをソース基板14側から、転写する1個のマイクロLED11へ、照射エネルギー密度100mJ/cm2で照射した。レーザー光の径は、1個のマイクロLED11以上でかつ隣接するマイクロLED11にはレーザ光が照射されない大きさとした。
【0103】
これにより、1個のマイクロLED11がソース基板14から放出され、駆動基板20の狙いの位置にキャッチされた。
【0104】
同様にして駆動基板20上に必要な数量のマイクロLED11を繰り返し転写した。
【0105】
続いて、加圧、加熱工程により、駆動基板20にマイクロLED11を固定した。加圧、加熱工程は、駆動基板20の全面を加圧して、LED側電極12と駆動基板側電極21とがエポキシ樹脂を貫通して接触された状態となるようにし、250℃の温度でエポキシ樹脂を熱硬化させた。
【0106】
以上により、駆動基板20上にディスプレイパネルとして必要な数のマイクロLED11が転写された。
【0107】
駆動基板20へ転写後のマイクロLED11の表面を、洗浄を行わずに観察した。その結果、転写後のマイクロLED11の表面には、リリース層13であるポリイミド樹脂の残膜は存在しなかった。また、マイクロLED11の表面には、レーザー痕などの損傷は検出されなかった。
【0108】
<実施例2>
実施例2は、リリース層13となる樹脂材料塗布時の膜厚を0.5μmとした。それ以外の工程および材料は実施例1と同様である。
【0109】
駆動基板20へ転写後のマイクロLED11の表面を、洗浄を行わずに観察した。その結果、転写後のマイクロLED11の表面には、リリース層13であるポリイミド樹脂の残膜は存在しなかった。また、マイクロLED11の表面には、レーザー痕などの損傷は検出されなかった。
【0110】
<比較例1>
比較例1は、リリース層13となる樹脂材料塗布時の膜厚を0.7μmとした。それ以外の工程および材料は実施例1と同様である。
【0111】
駆動基板20へ転写後のマイクロLED11の表面を、洗浄を行わずに観察した。その結果、転写後のマイクロLED11の表面には、リリース層13であるポリイミド樹脂の残膜が検出された。
【0112】
<実施例3>
実施例3は、中継基板112上に半導体層102を接着するまでは実施例1と同じにした。
【0113】
そして、実施例3は、ソース基板14に熱硬化触媒を配合したジメチルポリシロキサン(PDMS)樹脂を10μmの膜厚でスリットコーティングを用いて塗布し、150℃のオーブン中で1時間焼成し、第1リリース層131を形成した。
【0114】
ジメチルポリシロキサン(PDMS)樹脂を焼成して形成された第1リリース層131は、波長248nmの紫外線吸収率が35%である。
【0115】
別途、中継基板112上に接着された半導体層102の表面に、ポリイミド樹脂をスピンコーティング法により0.1μmの膜厚で形成し、真空オーブン中で250℃/1時間焼成して第2リリース層132を形成した。ポリイミド樹脂は、HD3007(HD MicroSystems)を所望の固形分濃度に希釈したものを用いた。HD3007は、硬化後、波長248nmの紫外線吸収率が99%以上である。
【0116】
続いて、第1リリース層131と第2リリース層132を向かい合わせてソース基板14および中継基板112を重ねて、真空ボンディング装置を用いて20℃以上30℃以下の室温で圧力10N/cm2で加圧して貼り合せた。
【0117】
続いて、実施例1同様に、波長248nmのKrFエキシマレーザーを中継基板112側から、200mJ/cm2のエネルギー密度で全面照射し、転写用樹脂層111と中継基板112を分離した。その後、N-メチルピロリドン(NMP)を60℃で転写用樹脂の表面に60秒間スプレーし、その後、純水で60秒間リンスした。
【0118】
続いて、ドライエッチング(RIE)により半導体層102を個々のマイクロLED11に分割した。さらに、分割されたマイクロLED11をマスクとして、リリース層13を酸素プラズマRIEによりエッチングして、マイクロLED11の形状に合わせて分割した。
【0119】
(レーザーアブレーション工程による転写)
レーザーアブレーション工程による転写は、実施例1と同様に行った。すなわち、駆動基板側電極21上で膜厚5μmとなるように接着剤層32を形成した。
【0120】
続いて、ソース基板14のマイクロLED11が保持されている面と、駆動基板20の駆動基板側電極21が配置されている面を100μmの隙間を開けて向かい合わせて保持した。このとき、転写する1個のマイクロLED11を駆動基板20の狙いの位置に位置決めした。
【0121】
続いて、レーザーアブレーション工程により、マイクロLED11を駆動基板20へ転写させた。レーザーアブレーション工程は、波長248nmのKrFエキシマレーザーをソース基板14側から、転写する1個のマイクロLED11へ、照射エネルギー密度100mJ/cm2で照射した。レーザー光の径は、1個のマイクロLED11以上でかつ隣接するマイクロLED11にはレーザ光が照射されない大きさとした。
【0122】
これにより、1個のマイクロLED11がソース基板14から放出され、駆動基板20の狙いの位置にキャッチされた。
【0123】
同様にして駆動基板20上に必要な数量のマイクロLED11を繰り返し転写した後、加圧、加熱工程により、駆動基板20上にマイクロLED11を固定した。加圧、加熱工程は、駆動基板20全面を加圧して、LED側電極12と駆動基板側電極21が接触する状態にして、200℃のオーブンで1時間熱処理を行い、エポキシ樹脂を熱硬化させた。
【0124】
以上により、駆動基板20上にディスプレイパネルとして必要な数のマイクロLED11が転写された。
【0125】
実施例3においても、駆動基板20へ転写後のマイクロLED11の表面を、洗浄を行わずに観察した。その結果、転写後のマイクロLED11の表面には、第2リリース層132であるポリイミド樹脂の残膜は存在しなかった。また、マイクロLED11の表面には、レーザー痕などの損傷は検出されなかった。
【0126】
以上、本発明の実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれら実施形態や実施例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
【0127】
上述した各実施形態では、LED側電極12と駆動基板側電極21を直接接触させて接合させているが、これら電極の間に金属層を介して接続することとしてもよい。具体的には、たとえば、LED側電極12および駆動基板側電極21の少なくともいずれか一方にハンダバンプを形成して置く。そして、レーザーアブレーション工程によるマイクロLEDを転写後、接着剤層を硬化させるための加熱工程において、その温度をハンダバンプのリフロー温度とすることで、電極を金属層により接続させることができる。
【0128】
また、上述した実施形態2では、ソース基板14上で、第1リリース層131と第2リリース層132の2層のリリース層によってマイクロLED11を保持したが、これに代えて、3層以上のリリース層によってマイクロLED11を保持するようにしてもよい。3層以上のリリース層を設ける場合の製造方法は、たとえば、ソース基板14側に第1リリース層となる第1樹脂材料を塗布し、さらにその上に第3リリース層となる第3樹脂材料を塗布する。
【0129】
ここで第3の樹脂材料は、たとえば、硬化後の所定波長の吸収率が第1リリース層131および第2リリース層132とは異なる。
【0130】
このような3層以上のリリース層を設けることは、たとえば、第1リリース層の1層だけではレーザー光のエネルギーを低減させる効果が低いような場合に、さらに第3リリース層を追加することで、エネルギーをいっそう低減させることができる。つまり、実施形態2としては、マイクロLED11に到達するレーザー光のエネルギー量を、リリース層の層数で制御できるということである。なお、第3リリース層の所定波長の吸収率は、第1リリース層131と同様に、1%以上50%以下とすることが好ましい。ただし、第2リリース層132を確実に分解させる観点から、第1リリース層と第3リリース層を合わせた所定波長の吸収率は、50%を超えないようにすることが好ましい。
【0131】
また、本発明は、さらに複数のリリース層があっても良い。その場合、各リリース層は異なる樹脂材料からなることが好ましい。
【0132】
そのほか、本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0133】
10 ディスプレイ装置、
11 マイクロLED、
12 LED側電極、
13 リリース層、
14 ソース基板、
16 レーザー光、
20 駆動基板、
21 駆動基板側電極、
32 接着剤層、
100 初期基板、
101 サファイア基板、
102 半導体層、
111 転写用樹脂層、
112 中継基板、
131 第1リリース層、
132 第2リリース層。