(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ブロワ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/62 20060101AFI20230731BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
F04D29/62 C
F04D29/42 H
(21)【出願番号】P 2019092159
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】金原 修平
(72)【発明者】
【氏名】吉留 聖也
(72)【発明者】
【氏名】合田 英明
(72)【発明者】
【氏名】日高 誠
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-171998(JP,U)
【文献】実開昭62-018399(JP,U)
【文献】特開昭62-020693(JP,A)
【文献】特開平09-126198(JP,A)
【文献】特開2015-045253(JP,A)
【文献】米国特許第05878594(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1716731(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの外周面に形成した
長尺のレール状の突起に固定取付足を形成したフランジを取り付け、前記フランジに抜け止めブロックを装着して前記フランジを前記ケースに固定したブロワ装置であって、
前記抜け止めブロックは、第1ブロックと、第2ブロックと、前記第1ブロックと前記第2ブロックとを連結し、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックよりも幅が小さい連結部を有し、
前記第1ブロックと前記第2ブロックとは各々抜け止め脚部と係止脚部を備えるブロワ装置。
【請求項2】
前記フランジには、前記レール状の突起と噛み合う溝および前記レール状の突起の
一方の端面に接触する係止部が設けられ、
前記抜け止め脚部には、前記レール状の突起
の他方の端面の方向に突出した突起部が設けられ、
前記係止部が前記レール状の突起の
前記一方の
端面に接触し、前記突起部が前記レール状の突起の
前記他方の
端面に接触することで、前記ケースの外周面に前記フランジが固定されている請求項1に記載のブロワ装置。
【請求項3】
前記フランジには、前記抜け止め脚部が挿入される第1の開口と前記係止脚部が挿入される第2の開口が形成され、
前記第1の開口に前記抜け止め脚部が挿入され、前記第2の開口に前記係止脚部が挿入されることで、前記抜け止めブロックが前記フランジに装着され、
該装着の状態において、前記連結部が弾性変形している請求項1または2に記載のブロワ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロワ装置に関し、特に遠心ファンを用いたブロワ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ファンを用いたブロワ装置は、家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用機器、などに広く用いられている。ブロワ装置を筐体等に固定する構造として、特許文献1に記載された構造がある。特許文献1の構造では、ブロアケースに一体成型された固定取付足を用いて、ブロアケースの取り付け対象への固定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたブロア装置は、固定取付足がブロアケースに一体に形成されているため、例えば、ブロア側の固定位置を変更する場合に、ブロア下ケース成形用金型を変更する必要がある。これは、異なる複数の金型を用意する必要があり高コストとなる。
【0005】
このような背景において、本発明は、ブロワ装置の固定位置の変更が容易で大幅なコストの増加を抑えたブロワ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ケースの外周面に形成した長尺のレール状の突起に固定取付足を形成したフランジを取り付け、前記フランジに抜け止めブロックを装着して前記フランジを前記ケースに固定したブロワ装置であって、前記抜け止めブロックは、第1ブロックと、第2ブロックと、前記第1ブロックと前記第2ブロックとを連結し、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックよりも幅が小さい連結部を有し、前記第1ブロックと前記第2ブロックとは各々抜け止め脚部と係止脚部を備えるブロワ装置である。
【0007】
本発明において、前記フランジには、前記レール状の突起と噛み合う溝および前記レール状の突起の一方の端面に接触する係止部が設けられ、前記抜け止め脚部には、前記レール状の突起の他方の端面の方向に突出した突起部が設けられ、前記係止部が前記レール状の突起の前記一方の端面に接触し、前記突起部が前記レール状の突起の前記他方の端面に接触することで、前記ケースの外周面に前記フランジが固定されている態様が挙げられる。
【0008】
本発明において、前記フランジには、前記抜け止め脚部が挿入される第1の開口と前記係止脚部が挿入される第2の開口が形成され、前記第1の開口に前記抜け止め脚部が挿入され、前記第2の開口に前記係止脚部が挿入されることで、前記抜け止めブロックが前記フランジに装着され、該装着の状態において、前記連結部が弾性変形している態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブロワ装置の固定位置の変更が容易で大幅なコストの増加を抑えたブロワ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】ブロワ装置ケースへの固定取付足の結合状態を示す斜視断面図である。
【
図3】ブロワ装置ケースへの固定取付足の結合状態を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す抜け止めブロックの斜視図である。
【
図5】
図1に示す抜け止めブロックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(構造)
まず、ブロワ装置について説明する。
図1には、ブロワ装置100が示されている。ブロワ装置100の内部構造や動作形態は、通常のブロワ装置と同じである。以下の説明において、軸方向とは、ブロワ装置100内部の図示しない遠心ファンのインペラの回転軸の方向であり、図のZ軸方向のことである。上とは、下ケーシング102から上ケーシング101を見た方向(Z軸正の方向)であり、下とはその反対の方向のことである。
【0012】
ブロワ装置100は、上ケーシグ101と下ケーシング102により構成されるケーシグ103を備えている。上ケーシグ101と下ケーシング102は、樹脂を材料とした射出成型法により製造されている。ケーシング103の内側に遠心ファンが納められている。
【0013】
下ケーシング102の上端側には係止部(爪部)102aが周方向に複数個所、形成されている。またそれに対応する上ケーシング101の下端側には、前記係止部(爪部)102aが軸方向で引っかかる複数の受け部(開口部)が形成されている。
【0014】
また、下ケーシング102の上端の縁の部分には、軸方向に向いた凹部が形成され、上ケーシング101の下端の縁の部分には、上記凹部と噛み合う凸部が形成されている。これら凹部と凸部を嵌合させ、更に上記係止部102aを上ケーシング101にひっかけて係止させることで、上ケーシング101と下ケーシング102が結合される。
図2には、この凹凸の噛み合いによる嵌合構造112が示されている。そして、上ケーシング101と下ケーシング102が結合した状態は、機械的固定部材であるスナップフィット104を用いて固定化されている。
【0015】
上ケーシング101には、軸方向に開口した吸込口105が設けられている。ケーシング103の内側には、図では見えていない遠心ファンが収められている。ブロワ装置100は、遠心ファンのインペラを駆動するモータを備え、Z軸をインペラの回転軸の方向とする。このインペラが回転することで、吸込口105から空気が吸い込まれる。
【0016】
ケーシング103の内側には、渦巻き型の流路が形成されており、この流路の終端部分に吹出口106が形成されている。インペラの回転に従って吸気口105から吸い込まれた空気は、インペラの内側から径外側の方向に吹き出され、上記渦巻き型の流路を搬送され、吹出口106から吹出される。
【0017】
下ケーシング102は円筒形状を有し、その外周には、ガイドレール部107が設けられている。ガイドレール部107は、断面が突起形状を有し、軸方向に延在した2つのレール108と109を有している。符号110,111は、ガイドレール部107と同様な構造を有する他のガイドレール部である。同様なガイドレール部は、
図1に示す状態の背面側にも複数が設けられている。
【0018】
ガイドレール部107を構成する2条のレール108,109は同じ構造であり、下ケーシング102の外周面上に軸方向に延在する状態で、間隔をおいて平行に配置されている。
【0019】
図3には、軸方向(Z軸の方向)から見た、レール108,109の断面が示されている。レール108,109は、延在方向から見て突起状の構造を有し、縦につぶれた略T型の形状を有している。
図1に示すように、レール109はその延在方向において下端109aと上端109bを有している。同様に、レール108はその延在方向において下端108aと上端108bを有している。
【0020】
ガイドレール部107を利用して固定取付足200が下ケーシング102に固定される。固定取付足200は、フランジ201、ボルト等の締結部材を挿通するための貫通孔202aが形成された固定部202を備えている。
【0021】
フランジ201には、レール108,109と噛み合う2本の溝203,204が形成されている。溝203,204のそれぞれは、レール108,109と噛み合う形状を有し、軸方向に延在している。
【0022】
図3に示すように、レール108,109は略T字型の断面形状を有し、溝203,204はこの略T字型の形状を受容する形状を有している。そのため、溝203にレール108を軸方向で噛み合わせて嵌合させ、溝204にレール109を軸方向で噛み合わせて嵌合させると、固定取付足200は、下ケーシング102に対して、軸方向(Z軸方向)に摺動可能であるが、それ以外の方向への移動は規制され、移動できない状態となる。
【0023】
例えば、ケーシング103(ブロワ装置100)のガイドレール部107に固定取付足200を取り付ける場合を説明する。この場合、Z軸負の方向から、固定取付足200(フランジ201)の溝203をレール108に,溝204をレール109に噛み合わせ、そのまま固定取付足200をZ軸正方向(軸方向)にスライドさせる。
【0024】
フランジ201の下端部分には、軸方向に直交する方向に延在する係止部201aが設けられている。溝203,204がレール108,109に噛み合った状態で固定取付足200をZ軸正方向(軸方向)にスライドさせて行くと、最終的に係止部201aがレール108の下端108aおよびレール109の下端109aに接触し、それ以上固定取付足200をZ軸正方向に押し込めなくなる。こうして、固定取付足200のガイドレール部107(ケーシング103)への位置決めが行なわれる。
【0025】
この状態では、逆方向(Z軸負の方向)に固定取付足200がスライド可能であるので、抜け止めブロック205を用いて、固定取付足200が軸方向に動かないようにする。これにより、固定取付足200がケーシング103(ガイドレール部107)に固定される。
【0026】
図4,5に抜け止めブロック205を示す。抜け止めブロック205は、樹脂の射出成型によって一体成形され、第1ブロック210と第2ブロック220が連結部230によって結合した構造を有している。連結部230は、第1ブロック210と第2ブロック220とを結ぶ線の方向で考えた場合の幅の寸法(第1ブロック210と第2ブロック220とを結ぶ線に直交する方向における寸法)W
1を、同様の方向で考えた第1ブロック210と第2ブロック220の幅W
2よりも小さくしている。
【0027】
第1ブロック210は、抜け止め脚部211と係止脚部212を備えている。第2ブロック220は、抜け止め脚部221と係止脚部222を備えている。抜け止め脚部211の係止脚部212と反対の側の側面(フランジ201に装着した状態でのレール108の上端108aの側の面)には、円弧状に盛り上がった突起部213が設けられている。突起部213は、抜け止めブロック205がフランジ201に装着された状態で考えて、レール108がある方向(Z軸負の方向)に突出している。また、係止脚部212の先端には爪部212aが形成されている。
【0028】
抜け止め脚部221の係止脚部222と反対の側の側面には、突起部213と同様に円弧状に盛り上がった突起部223が設けられている。また、係止脚部222の先端には爪部222aが形成されている。
【0029】
固定取付足200のフランジ201には、4箇所の開口206,207,208,209が形成されている。これらの開口は貫通孔である。開口206,207に、抜け止めブロック205の抜け止め脚部211,221が挿入され、開口208,209に係止脚部212,222が挿入されることで、固定取付足200に抜け止めブロック205が装着される。
【0030】
例えば、固定取付足200をガイドレール部107に固定する場合を説明する。この場合、固定取付足200をガイドレール部107に装着した状態で、固定取付足200に抜け止めブロック205を装着する。
【0031】
ここで、開口206に抜け止め脚部211が挿入され、開口207に抜け止め脚部221が挿入される。また、係止脚部212が開口208に挿入され、係止脚部222が開口209に挿入される。
【0032】
この状態において、抜け止め脚部211,221は、開口206,207を貫通し、その先端はフランジ201の裏側に突出する。この部分において、突起部213がレール108の上端108bに接触し、突起部223がレール109の上端109bに接触する。これにより、固定取付足200は、ガイドレール部107上でZ軸負の方向に移動できなくなる。
【0033】
固定取付足200は、係止部201aがレール108の下端108aとレール109の下端109aに軸方向で接触(
図2参照)しており、ガイドレール部107上でZ軸正の方向に移動できない。また、
図3の嵌合構造により、抜け止めブロック205がない状態において、固定取付足200は下ケーシング102に対してZ軸方向以外に動けない。よって、上記の様に抜け止めブロック205を装着することで、固定取付足200がガイドレール部107(ケーシング103)に動かないように固定される。
【0034】
他方で、係止脚部212が開口208に挿入され、開口208奥側の縁に爪部212aが引っかかって係合する。また、係止脚部222が開口209に挿入され、開口209奥側の縁に爪部222aが引っかかって係合する。これにより、係止脚部212,222が開口208,209から抜けなくなり、抜け止めブロック205が固定取付足200に固定される。
【0035】
図1の例では、固定取付足200の他に固定取付足300がガイドレール部110に固定される。固定取付足300のケーシング103への固定構造は、固定取付足200の場合と同じである。また、抜け止めブロック205と同様な構造の抜け止めブロック400により、固定取付足300がケーシング103に対して動かないようにする点も固定取付足200の場合と同じである。
【0036】
図1の場合、固定取付足200の貫通孔202aと固定取付足300の貫通孔301a,302aを用いてボルトにより対象物(冷却対象を収納した筐体等)へのブロワ装置100の固定が行われる。
【0037】
固定取付足200および固定取付足300のケーシング103への固定を他のガイドレール部に行うこともできる。固定取付足のいずれのガイドレール部への固定の構造は、全て同じである。また、抜け止めブロック205を共通化し、固定取付足の形状として、図示する以外のものを用意し、必要に応じて、適宜組み合わせて利用することもできる。
【0038】
以上の構造によれば、ブロワ装置のケーシングの形状の変更を必要とせず、固定取付足の固定位置について多用なバリエーションに対応できる。また固定取付足の形状が異なる場合でも、その形状に応じた固定取付足を用意するだけで対応できる。
【0039】
(特徴)
下ケーシング102の外周面に形成したガイドレール部110、固定取付足200および抜け止めブロック205は、樹脂の射出成型で成形されるため、寸法精度をあまり追求できない。このため、抜け止めブロック205の第1ブロック210と第2ブロック220の各々の抜け止め脚部211,221の側面に形成した円弧状の突起部213,223を、固定取付足200の開口(貫通孔)206,207に挿入(圧入)してレール108,109の上端108b、109bに圧接させる時、左右の抜け止め脚部211,221の寸法がばらついた時、連結部230を有していない(連結部230がない状態)場合、抜け止めブロック205が弾性変形し難く、抜け止めブロック205の装着が難しくなったり、無理に挿入して抜け止め脚部211,221の根元に応力集中が生じて部品が破損する虞がある。
【0040】
これに対して、本実施形態では、第1ブロック210と第2ブロック220とを連結する幅の寸法が小さい連結部230を形成している。こうすることで、第1ブロック210と第2ブロック220各々の抜け止め脚部211,221の側面に形成した円弧状の突起部213,223を、レール108,109の上端108b、109bに圧接させる際、連結部230が僅かに弾性変形することが可能で、それによって、第1ブロック210と第2ブロック220それぞれの動きの自由度が高くなる。これにより、抜け止めブロック205の固定取付足200への装着が容易になり、高い作業性が得られる。また、連結部230が僅かに弾性変形することで、ガタがない状態で抜け止めブロック205が固定取付足200に固定される。
【0041】
本実施形態において、フランジ201には、レール108,109と噛み合う溝203,204が形成され、フランジ201には、レール108,109の下端108a,109aに接触する係止部201aが設けられ、係止部201aがレール108,109の下端108a,109aに接触し、抜け止めブロック205の突起部213,223がレール108,109の上端108b,109bに接触することで、ケーシング103の外周面にフランジ201が固定されている。
【0042】
この構造によれば、フランジ201がレール108,109の両端に係止され、フランジ201が軸方向で移動できない状態となって、固定取付足200が確実にケーシング103に固定される。固定取付足200と同様に固定取付足300も確実にケーシング103に固定される。
【符号の説明】
【0043】
100…ブロワ装置、101上ケーシング、102…下ケーシング、102a…係止部、103…ケーシング、104…スナップフィット、105…吸気口、106…吹出口、107…ガイドレール部、108…レール、108a…下端、108b…上端、109…レール、109a…下端、109b…上端、110…ガイドレール部、111…ガイドレール部、112…凹凸の嵌め合いによる嵌合構造、200…固定取付足、201…フランジ、201a…係止部、202…固定部、202a…貫通孔、203…溝、204…溝、205…抜け止めブロック、206…開口、207…開口、208…開口、209…開口、210…第1ブロック、211…抜け止め脚部、212…係止脚部、212a…爪部、213…突起部、220…第1ブロック、221…抜け止め脚部、222…係止脚部、222a…爪部、223…突起部、230…連結部、300…固定取付足、301a…貫通孔、302a…貫通孔、400…抜け止めブロック。