(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、磁気共鳴イメージング方法および磁気共鳴画像再構成プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2019116651
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-04-25
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウエイン・アール・ダネル
(72)【発明者】
【氏名】アヌージ シャルマ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0309142(US,A1)
【文献】特開2015-047240(JP,A)
【文献】特開2004-000593(JP,A)
【文献】特表2013-521013(JP,A)
【文献】特開2014-226204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0254548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/48 - 33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像を行うシーケンス制御部と、
前記撮像により得られたk空間データに基づいて、画像を再構成する生成部とを備え、
前記生成部は、
前記複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るデータとに基づいてSENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成し、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出し、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るデータとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
するものであって、
前記生成部は、
前記感度マップと、前記一つのスライスに係るデータであって縮小された撮像視野に係るデータとに基づいて前記SENSE再構成を行ってエイリアシング除去を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータから前記縮小された撮像視野より広い撮像視野の画像データを生成し、
前記生成された画像データに基づいて前記残留エイリアシングを算出する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記生成部は、
前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、
前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、
前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する、
請求項
1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記逆行列データの算出に先立って、前記行列の対角線上における複数の値各々が1に等しい又は1に近くなるように、前記行列の値を前記行列の列方向に沿って規格化する、 請求項
2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記生成部は、
前記逆行列データの算出に先立って、前記行列の複数の列各々における全ての値の2乗和の平方根で前記列における複数の値各々を前記列ごとに除算することにより、前記行列の値を前記行列の列方向に沿って規格化する、
請求項
2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記シーケンス制御部は、
前記複数スライスに対応する複数の位置を同時励起する本スキャンに先立って、前記一つのスライス位置を励起するプリスキャンを実行する、
請求項1乃至
4のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記行列の複数の非対角要素の非ゼロの複数の値は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方に対応し、
前記行列の複数の対角要素の複数の値はシェーディングに対応する、
請求項
2乃至
4のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記生成部は、
前記複数スライスに係るデータに前記逆行列データを乗算することにより、前記複数スライスに係るデータから前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する、
請求項
2乃至
4および請求項
6のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
ユーザから前記一つのスライスの選択の入力を受け付ける入力部を更に備え、
前記生成部は、前記入力部が受け付けた前記一つのスライスから、前記一つのスライス以外の他のスライスへの前記スライス間の漏れを算出する、
請求項1乃至
7のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
複数のRFコイルを用いて、一つのスライス位置を励起するシングルスライス撮像
工程と、
前記複数のRFコイルを用いて、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起する同時励起撮像
工程と、
前記複数のRFコイルの感度マップと、前記シングルスライス撮像
工程により得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成
する生成工程と、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出
する算出工程と、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記同時励起撮像
工程により得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
する除去工程と、を具備し、
前記生成工程は、前記感度マップと、前記一つのスライスに係るデータであって縮小された撮像視野に係るデータとに基づいて前記SENSE再構成を行ってエイリアシング除去を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータから前記縮小された撮像視野より広い撮像視野の画像データを生成し、
前記算出工程は、前記生成された画像データに基づいて前記残留エイリアシングを算出する、
磁気共鳴イメージング方法。
【請求項10】
コンピュータに、
複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成
させる生成機能と、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出
させる算出機能と、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
させる除去機能と、
を実現させ、
前記生成機能は、前記感度マップと、前記一つのスライスに係るデータであって縮小された撮像視野に係るデータとに基づいて前記SENSE再構成を行ってエイリアシング除去を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータから前記縮小された撮像視野より広い撮像視野の画像データを生成し、
前記算出機能は、前記生成された画像データに基づいて前記残留エイリアシングを算出する、
磁気共鳴画像再構成プログラム。
【請求項11】
複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像を行うシーケンス制御部と、
前記撮像により得られたk空間データに基づいて、画像を再構成する生成部とを備え、 前記生成部は、
前記複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るデータとに基づいてSENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成し、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出し、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るデータとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
するものであって、
前記生成部は、
前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、
前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、
前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去し、
前記逆行列データの算出に先立って、前記行列の対角線上における複数の値各々が1に等しい又は1に近くなるように、前記行列の値を前記行列の列方向に沿って規格化する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像を行うシーケンス制御部と、
前記撮像により得られたk空間データに基づいて、画像を再構成する生成部とを備え、 前記生成部は、
前記複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るデータとに基づいてSENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成し、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出し、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るデータとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
するものであって、
前記生成部は、
前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、
前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、
前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去し、
前記逆行列データの算出に先立って、前記行列の複数の列各々における全ての値の2乗和の平方根で前記列における複数の値各々を前記列ごとに除算することにより、前記行列の値を前記行列の列方向に沿って規格化する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像を行うシーケンス制御部と、
前記撮像により得られたk空間データに基づいて、画像を再構成する生成部とを備え、 前記生成部は、
前記複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るデータとに基づいてSENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成し、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出し、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るデータとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
するものであって、
前記生成部は、
前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、
前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、
前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去し、
前記行列の複数の非対角要素の非ゼロの複数の値は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方に対応し、
前記行列の複数の対角要素の複数の値はシェーディングに対応する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
複数のRFコイルを用いて、一つのスライス位置を励起するシングルスライス撮像
工程と、
前記複数のRFコイルを用いて、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起する同時励起撮像
工程と、
前記複数のRFコイルの感度マップと、前記シングルスライス撮像
工程により得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成
する生成工程と、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出
する算出工程と、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記同時励起撮像
工程により得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
する除去工程と、を具備し、
前記算出工程は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、前記逆行列データの算出に先立って、前記行列の対角線上における複数の値各々が1に等しい又は1に近くなるように、前記行列の値を前記行列の列方向に沿って規格化し、
前記除去工程は、前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する、
磁気共鳴イメージング方法。
【請求項15】
複数のRFコイルを用いて、一つのスライス位置を励起するシングルスライス撮像
工程と、
前記複数のRFコイルを用いて、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起する同時励起撮像
工程と、
前記複数のRFコイルの感度マップと、前記シングルスライス撮像
工程により得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成
する生成工程と、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出
する算出工程と、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記同時励起撮像
工程により得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
する除去工程と、を具備し、
前記算出工程は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、前記逆行列データの算出に先立って、前記行列の複数の列各々における全ての値の2乗和の平方根で前記列における複数の値各々を前記列ごとに除算することにより、前記行列の値を前記行列の列方向に沿って規格化し、
前記除去工程は、前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する、
磁気共鳴イメージング方法。
【請求項16】
複数のRFコイルを用いて、一つのスライス位置を励起するシングルスライス撮像
工程と、
前記複数のRFコイルを用いて、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起する同時励起撮像
工程と、
前記複数のRFコイルの感度マップと、前記シングルスライス撮像
工程により得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成
する生成工程と、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出
する算出工程と、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記同時励起撮像
工程により得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
する除去工程と、を具備し、
前記算出工程は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、
前記除去工程は、前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去し、ここで、
前記行列の複数の非対角要素の非ゼロの複数の値は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方に対応し、
前記行列の複数の対角要素の複数の値はシェーディングに対応する、
磁気共鳴イメージング方法。
【請求項17】
コンピュータに、
複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成
させる生成機能と、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出
させる算出機能と、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
させる除去機能と、
を実現させ、
前記算出機能は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、前記逆行列データの算出に先立って、前記行列の対角線上における複数の値各々が1に等しい又は1に近くなるように、前記行列の値を前記行列の列方向に沿って規格化し、
前記除去機能は、前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する、
磁気共鳴画像再構成プログラム。
【請求項18】
コンピュータに、
複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成
させる生成機能と、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出
させる算出機能と、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
させる除去機能と、
を実現させ、
前記算出機能は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、前記逆行列データの算出に先立って、前記行列の複数の列各々における全ての値の2乗和の平方根で前記列における複数の値各々を前記列ごとに除算することにより、前記行列の値を前記行列の列方向に沿って規格化し、
前記除去機能は、前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する、
磁気共鳴画像再構成プログラム。
【請求項19】
コンピュータに、
複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成
させる生成機能と、
前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出
させる算出機能と、
前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去
させる除去機能と、
を実現させ、
前記算出機能は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、前記行列データに基づいて、前記行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、
前記除去機能は、前記逆行列データを用いて、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去し、ここで、
前記行列の複数の非対角要素の非ゼロの複数の値は、前記スライス間の漏れまたは前記面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方に対応し、
前記行列の複数の対角要素の複数の値はシェーディングに対応する、
磁気共鳴画像再構成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置、磁気共鳴イメージング方法および磁気共鳴画像再構成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
同時マルチスライス(以下、SMS(Simultaneous Multislice)と呼ぶ)イメージングは、マルチスライスを同時に励起するパルスを印加することにより、高速イメージングを実現することのできる磁気共鳴イメージング手法である。SMSイメージングに、いわゆるパラレルイメージングの手法を組み合わせることにより、例えば複数のコイルを用いて収集が行われる。しかしながら、このような場合、例えばコイル感度マップの不正確さなどに起因して、スライス間でスライス漏れアーチファクトが生じる場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Barth et al, “Simultaneous Multislice(SMS)imaging techniques”, MRM 75:63-81, 2016
【文献】Setsompop et al, “Blipped-controlled aliasing in parallel imaging for simultaneous multislice echo planar imaging with reduced g-factor penalty”, MRM 67:1210-1224, 2012
【文献】Moeller et al.、Signal Leakage (L-factor) as a measure of parallel imaging performance among simultaneously multi-slice(SMS) excited and acquired signals、Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 20 (2012)
【文献】Cauley et al.、Interslice Leakage Artifact Reduction Technique for Simultaneous Multislice Acquisitions、Magnetic Resonance in Medicine、72:93-102 (2014)
【文献】Pruessmann K. P., et al., SENSE: Sensitivity encoding for fast MRI, Magnetic Resonance in Medicine, 42:952-962, 1999
【文献】Park et al.、SMS-HSL:Simultaneous Multislice Aliasing Separation Exploiting Hankel Subspace Learning、 Magnetic Resonance in Medicine、78:1392-1404、2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像を行う場合の画質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部と、生成部とを有する。
前記シーケンス制御部は、複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像を行う。
前記生成部は、前記撮像により得られたk空間データに基づいて、画像を再構成する。
前記生成部は、前記複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るデータとに基づいてSENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成する。
前記生成部は、前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出する。
前記生成部は、前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた前記複数スライスに係るデータとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示した図である。
【
図2】
図2は、比較例に係り、感度エンコード(Sensitivity Encoding:SENSE)を使用して、同時マルチスライスイメージング(Simultaneous Multi-Slice Imaging:SMS)に関する再構成処理による理想的な出力の概略図である。
【
図3】
図3は、比較例に係り、SMS又はSENSEに関する再構成処理により、スライス間の漏れによる影響を受けた出力の概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係り、SMSイメージングを使用して取得されたMRI画像において可視のアーチファクトの影響の例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係り、SMS又はSENSEに関する再構成処理による理想的な出力の概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係り、SMS又はSENSEに関する再構成処理により、スライス間の漏れによる影響を受けた出力の概略図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係り、SMS無しのSENSEに関する再構成処理により、スライス間の漏れによる影響を受けた出力の概略図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係り、SMSを伴うSENSEに関する再構成処理の使用例の概略図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係り、スライス漏れマップの生成及び格納のための処理に関するフローチャートの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係り、表示されたMRI画像におけるスライス間の漏れを識別及び/且つ除去するための処理に関するフローチャートの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、比較例に係り、再構成されたSMS画像における漏れアーチファクトの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係り、識別された漏れを伴って再構成されたSMS画像とスライス漏れマップとの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係り、漏れ補正及び補正された画像生成の概略を示す図である。
【
図14】
図14は、本実施形態に係り、スライス間漏れを補正するための処理に関するフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に開示される内容の実施形態例は、マルチスライスイメージング技術から生成されたMR画像におけるマルチスライス間の漏れアーチファクトを決定や補正を提供する。マルチスライスイメージング技術とは、同時マルチスライスイメージング(Simultaneous Multi-Slice Imaging:SMS)と、感度エンコード化(Sensitivity Encoding:SENSE)と呼ばれる面内パラレルイメージング、又はそれらの組み合わせであるが、一般性を喪失することなく、この限りでない。同時マルチスライスMR画像の収集において、一つのスライスからの信号寄与は、複数スライスの出力画像へとデマルチプレックス(多重分離)されることがあり、それにより個別のシングルスライス画像におけるアーチファクトを引き起こす。マルチスライスイメージングに対する既存の漏れ識別技術とは対照的に、いくつかの実施形態例は、画像ドメインにおける漏れ等の空間的な識別や評価について提供する。更に、マルチスライスイメージングに対する既存の漏れ補正技術とは対照的に、いくつかの実施形態例は、画像ベースの再構成を使用する、スライス漏れの積極的な除去について提供する。
【0008】
図1に示すMRIシステムは、ガントリ10(概要的に横断面で示されている)及びそれらと相互作用された様々な関連するシステム構成要素20とを有する。少なくともガントリ10は、通常はシールドルーム内に配置される。
図1に示されたMRIシステムの構造は、静磁場B
0磁石12の実質的に同軸なシリンダー状の配置と、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルセット14と、そして大型全身高周波(radio frequency:RF)コイル(WBC)16とを有する。この横軸に沿って、複数のエレメントの円筒形のアレイは、患者寝台11によって支持された被検体9の解剖学的関心部分(すなわち、関心領域(ROI))を実質的に包括するように示された撮像ボリューム18に対応する。
【0009】
いくつかの実施形態において、より小型のアレイRFコイル19は、撮像ボリュームが該小型のアレイRFコイルによって包括されたエリアを包含するように、被検体の一部の近傍に配置されてもよい。当業者には理解されるように、全身コイル(whole body coil:WBC)と比べて、表面コイル等の比較的小さなコイルやアレイは、特定の身体部分(例えば、腕、肩、肱、手首、膝、脚、胸部、背骨等)に合わせて設定されることが多い。このような小さなRFコイルを、ここでは「アレイコイル(array coils:AC)」又は「フェーズドアレイコイル(phased array coils:PAC)」と呼ぶ。これらは、RF信号を撮像ボリューム内へと送信するように構成された少なくとも一つのコイルと、係る撮像ボリュームからRF信号を受信するように構成された一つ以上のレシーバとを有していてもよい。
【0010】
MRIシステム制御部22は、ディスプレイ24、キーボード26、プリンタ28に接続された入力/出力ポートを有する。当然のことながら、ディスプレイ24は、制御入力としても提供するように、タッチスクリーンタイプのものであってもよい。ディスプレイ24、キーボード26は、それぞれ表示部、入力部の一例である。入力部は、ユーザから一つのスライスの選択の入力を受け付ける。
【0011】
MRIシステム制御部22、またはMRIシステム制御部22に関するコンピュータは、パルスシーケンスについての情報をMRIシーケンス制御部30に提供し、インストールされたソフトウェアプログラムに従って、全体的なシステムの動作を管理するよう、動作してもよい。MRIシステム制御部22は、例えば自動ボイス合成技術を使用して生み出されたボイスメッセージによる息止めのようなタスクを行うように被検体に指示する要素として動作してもよい。
【0012】
MRIシステム制御部22は、MRIシーケンス制御部30とインターフェースで接続する。次いで、MRIシーケンス制御部30は、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ32、ならびにRF送信器34及び送受信スイッチ(T/R)36(送受信両方に対し同じRFコイルが使用されている場合)を制御する。MRIシーケンス制御部30は、MRイメージング(核磁気共鳴撮像、又はNMR撮像としても知られる)を実行してコイル感度マップ等を生成するために、適切なマップ/MRIデータ取得プログラムコード構造38を有する。MRIシーケンス制御部30は、複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像を行う。MRIシーケンス制御部30は、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起する本スキャンに先立って、一つのスライス位置を励起するプリスキャンを実行する。MRイメージング技術は、例えばパラレルイメージングや他のイメージングシーケンスを含むことができる。MRIシステム制御部22によって制御することができるパラレルイメージング技術の例として、SMS、面内パラレルイメージング、又はそれらの組み合わせが挙げられる。MRイメージングの実装は、診断スキャンによって取得された画像に加えて、プリスキャンMR画像や低解像度のMR画像を取得する工程を含んでいてもよい。
【0013】
パルスシーケンス情報は、パルスシーケンスに従ってRF送信器34及び送受信スイッチ(T/R)36(送受信両方に対し同じRFコイルが使用されている場合)、ならびにGx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ32を動作するために必要な情報を有する。そのような情報は、x、y、およびzコイルに印加するパルス電流の強さ、継続時間、形状、および印加タイミングを有する。パルスシーケンスの送信、デューティサイクル等は、例えば、シングルスライス用の信号収集パターン、または例えばマルチスライス収集のような信号収集パターンについてのプログラムコードに基づいて、MRIシステム制御部22、MRIシーケンス制御部30や、MRIデータプロセッサ42により制御されてもよい。マルチスライス収集のような信号収集パターンとは、例えばSMS、面内高速イメージング或いはSMSと面内高速イメージングとの組み合わせ等のマルチスライス収集であるが、この限りでない。
【0014】
MRIシステム20は、ディスプレイ24へと送られる処理画像データを作り出すように、MRIデータプロセッサ42への入力を提供するRF受信器40を有する。MRIデータプロセッサ42は、また、メモリ46、MRIプログラムコード構造44、そしてプログラム/データ記憶装置50にアクセスするために構成されている。メモリ46は、システム構成パラメータ、コイル感度マップ、非エイリアシング(非折り返し)行列、スライス間の漏れマップ、スライスの漏れ行列、そして他のプログラム構造を有していてもよい。MRIプログラムコード構造44及びプログラム/データ記憶装置50は、MRI画像再構成のための制御ロジックに加えて、コイル感度マップを形成し、スライス間漏れマップを生成し、スライス漏れ行列を生成し、MRI画像におけるアーチファクトを減らす際の生成されたスライス間漏れマップ/行列の使用などを提供してもよく、且つRFコイル16や任意の他の受信コイルからMRデータを取得するための制御ロジックも有していてもよい。
図9、
図10、および
図14に関して下記でそれぞれ説明される例えば処理900、処理1000、処理1400は、MRIシステム制御部22、MRIシーケンス制御部30、やMRIデータプロセッサ42により実行することができる。なお、MRIデータプロセッサ42が有する生成機能は、生成部の一例である。生成機能により実行される処理内容については、後程説明する。
【0015】
図1では、RFコイル16から離れて配置されているが、いくつかの実施形態において、RF送信器34、送受信スイッチ(T/R)36、およびRF受信器40のうちのいずれかは、RFコイル16や他のRFコイルに対して、近接して又はその表面上に、配置されてもよい。
【0016】
また、
図1に示されているのは、プログラム/データ記憶装置50の一般化された記述である。ここで、(例えば、同時マルチスライススキャン技術に従ってデータ収集を制御するために、低減された又は除去されたスライス間漏れを備える改善された画像再構成のために、およびグラフィカルユーザインターフェース(graphical user interfaces:GUI)を規定し、操作者入力を受け取るために)記憶されたプログラムコード構造と、構成された又は予め決定されたデータ(例えば、プログラム実行を制御するための特定の閾値設定、コイル感度及び画像再構成の推定を制御するための複数のパラメータ)とは、MRIシステムの各種データ処理要素にアクセス可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納される。当業者には理解されるように、プログラム/データ記憶装置50は、セグメントされ、かつ、コンピュータの通常動作においてそのような格納されたプログラムコード構造に対して最優先で必要とするコンピュータを処理するMRIシステム20のうちの異なるコンピュータに少なくとも一部分で直接接続されてもよい(すなわちMRIシステムコントローラ22に直接接続され、一般に格納される代わりに)。
【0017】
実際に、当業者には理解されるように、
図1は、下記に説明される実施形態例を実行するように、いくつかの変形例を伴う典型的なMRIシステムについて極めて高いレベルで簡略化された概略図である。システムの構成要素は、複数の「ボックス」について異なる論理集合へと分割することが可能で、典型的には、多数のデジタル信号プロセッサ(digital signal processores:DSP)、マイクロプロセッサ及び専用処理回路(例えば、高速A/D変換用、高速フーリエ変換用、アレイ処理用等)により実現される。これらのプロセッサのそれぞれは、典型的には、クロック制御された「状態マシン」であり、物理的なデータ処理回路は、クロックサイクル(または所定数のクロックサイクル)ごとに、ある物理的状態から別の物理的状態に移る。
【0018】
処理回路(例えば、CPU、レジスタ、バッファ、計算ユニット等)の物理的状態が、動作経過にわたって一つのクロックサイクルから別のクロックサイクルへと次第に変化するだけでなく、関連するデータ格納媒体(例えば、磁気格納媒体におけるビット格納場所)の物理的状態も、そのようなシステムの動作にわたってある状態から別の状態へと変換される。例えば、画像再構成処理、スライス間漏れマップ生成処理、スライス漏れ行列作成/インバージョン(inversion:逆行列生成)処理やコイル感度マップ生成処理の終わりに、物理的記憶媒体内のコンピュータ可読でアクセス可能なデータ値の記憶場所の配列は、ある先行状態(全て一様な“0”の値、又は全て“1”の値)から新たな状態に変換される。そのような配列の物理的場所での物理状態は、最小値と最大値との間で変化し、実世界の物理的事象及び物理的条件(例えば、撮像ボリューム空間にわたる患者の内部物理構造)を表す。当業者によって理解されるように、そのような記憶されたデータ値の配列は、命令レジスタに順次読み込まれMRIシステム20の1以上のCPUによって実行されると、MRIシステム内において動作状態の特定のシーケンスを生じさせ遷移させるコンピュータ制御プログラムコードの特定の構成と同様に、物理的構造を示しかつ構成する。
【0019】
同時マルチスライス(simultaneous multi-slice:SMS)イメージングは、MRスキャンを高速化するために使用される技術である。収集処理を高速化する為に、多くの技術がMRイメージングにおいて実施される。MRI画像の収集を高速化すると、撮像対象(例えば患者)に対する快適性が向上し、患者の動き等により生じるアーチファクトの減少により、より正確な画像が得られる。
【0020】
SMSにおいて、スキャン時間の低減は、ROIにおける複数のスライスを同時に励起し、マルチバンドRF(radio frequency)パルスを使用し、さらに2D位相エンコードされた読出しを使用するデータ収集により、達成される。SMSは非特許文献1に説明されているが、非特許文献1を参照することにより、その全体が本実施形態に組み込まれるものとする。
【0021】
面内パラレルイメージング等のいくつかの高速化技術は、収集されたk空間サンプルの数がアクセレレーションファクタ(加速率)Rによって減少するため、加速率の平方根(√R)に比例して信号雑音比(signal-to-noise ratio:SNR)が低下する。SMSは、マルチバンドファクタにより励起数が増大するため、このような不利益を受けることはない。マルチバンドファクタ(multiband factor:MB)とは、同時に励起されるスライス数であり、係るスライスからMR信号が同時に収集される。マルチバンドファクタは、スライス方向における「加速率」とも呼ばれる。
【0022】
SMSにおいて、SNRは、規定通りに、割合√MB/√Rに比例することがある。しかしながら、SMSにおいて、MBはRに等しい。従って、SMSにおいて、√Rに比例してSNRは減少しない。この特徴は、スライスの同時収集について他のMR画像収集技術を上回る大幅な利点をSMSにもたらす。しかしながら、SMS及び面内パラレルイメージングは共に、コイルジオメトリ(コイルの構造上)の制約により、高い加速率においてSNRが低下する。コイルジオメトリによるこのSNRの低下は、「ジオメトリファクタペナルティ」又はより一般的には「gファクタペナルティ」と呼ばれる。gファクタは、ノイズ増幅ファクタとして考えることができる。所定の受信コイルの設定に対して、高いgファクタマップ値での再構成画像の領域において、より高いノイズを予想することができる。
【0023】
高速MR収集によって取得されたSMS画像データにおいて、(異なる空間的位置からの)スライスは重なり合っている。同時に収集されたスライス間で受信コイル感度に十分な変化が無い場合、再構成されたスライス画像のSNRは、増加したgファクタペナルティのために低くなることがある。係るSNRは、blipped-CAIPI技術(非特許文献2を参照)等の方法を用いる収集時に位相エンコード(phase encode:PE)方向において互いにスライスをシフトすることにより、改善することができる。非特許文献2で説明されている通り、blipped-CAIPIは、面内高速化のために設計された従来の受信コイルにおける感度の面内変化を活用する。PEシフトは、一つのスライスにおけるボクセルに、十分に直交する受信感度値を有する1つ以上の他のスライスにおけるボクセルでエイリアシング(折り返し)させる。これは、非エイリアシングで同時に収集された近接間隔のスライスと関連付けられる相対的に高いgファクタペナルティを低減する。
【0024】
同時に収集されたスライスは、SENSE等の(ただしこれに限定されない)パラレルイメージング技術を使用する再構成において分離される。SENSEとは、個別のコイルからのデータが画像空間へとフーリエ変換された後に、画像領域で実行される技術である。SMS画像の再構成を可能にする方法のうちの一つは、SENSEの考え方を利用するものがある。SMSにおいて、SENSEエイリアシング除去行列は、収集されたスライス位置からの所定の受信コイル感度データを使用して設定される。行列演算は、各受信コイルから収集されエイリアシングされた画像ボクセル輝度値のベクトルにエイリアシング除去行列を乗算することにより、エイリアシングが除去されたシングルスライス画像ボクセル輝度値を取得するために、利用される。PEシフトは、受信コイル感度マップをシフトすることにより、再構成に含めることができる。本質的に、通常のSENSEの概念は、SMS画像を再構成するためにスライス方向に拡張される。
【0025】
概念的に、SENSE再構成は、マルチバンドMR画像についてバンドセパレータ(帯域分離器)として動作する。バンドセパレータはマルチバンド画像を取り込み、シングルバンド画像へと分離する。すなわち、SENSEは、複数の励起されたスライスから受信コイルで受信されたMR信号に基づいて生成された1つのマルチバンド画像を入力として取り込み、且つコイル感度マップを使用して、MR信号が受信され励起された複数のスライス各々に関してコイル合成された画像の決定や生成を行う。
【0026】
SENSEは、SMS及び面内パラレルイメージング等、パラレルイメージング技術から生成されたマルチバンド画像からシングルスライス画像を再構成するために使用することができる。本開示の目的の為に、SMS画像又はシングルスライス画像の入力に応じて、SENSE再構成及びSMS再構成は、同じ方法で機能する。
【0027】
図2は、理想の出力をもたらす、例示的なSENSE再構成モジュール202の動作を概略的に示している。係るSENSE再構成モジュール202は、マルチスライス、ROIを含むボリュームに対するマルチコイル受信感度マップ204へのアクセスが提供されている。ROIにおける3つのスライスを同時に励起することにより収集されたSMS画像206は、SENSE再構成モジュール202へ入力される。入力SMS画像206は、3倍のSMS(つまり、SMSマルチバンドファクタが3で収集された)マルチバンド画像である。実際に、入力は、同期されたアレイコイルの受信チャンネル全てから取得された複数のマルチバンド画像を有する。図を簡潔にする為、
図2には1つの入力画像のみを示す。SENSE再構成モジュール202は、3つのスライスのそれぞれに対して、個別のコイル合成された画像(208a~208c)を出力する。
図2に示されている通り、入力画像がスライス1~3の画像の合成である一方で、出力画像は各スライスに対する個別の画像を有する。理想的な動作では、
図2に示されている通り、各スライス画像は、そのスライスにより放射されたMR信号からのみ再構成された画像を有する。このようにして、
図2に示される理想的な動作シナリオにおいて、入力SMS画像206は、ROIにおける個別のスライスに基づく矩形、三角形、円形の合成である一方、出力シングルスライス画像208a~208cは、矩形、三角形、又は円形のうちの一つのみをそれぞれ有する。
【0028】
図2は、SENSE再構成モジュール202の理想的な出力シナリオを概略的に示す一方で、
図3は、入力SMS画像206のような入力画像についてSENSE再構成モジュール202が使用された場合に、実際にどのような事がよく起こるのかを概略的に示している。出力シングルスライス画像308a~308cは、特定のスライスから受信したMR信号に対応する画像を表す個別の形状(矩形、三角形、円形)に加え、異なるスライスからのMR信号漏れによって生じるアーチファクト(例えば、アーチファクト310a、310b、310c、310d)を、それぞれ含む。図示されている通り、矩形画像におけるアーチファクト310aは三角形画像からの信号漏れであり、三角形画像におけるアーチファクト310bは円形画像からの信号漏れであり、そして円形画像におけるアーチファクト310c及び310dは三角形画像及び矩形画像からの信号漏れである。
【0029】
理想的でないSENSE再構成は、少なくとも部分的に、SENSE再構成モジュール202へと提供されたコイル感度マップの不正確さが原因である。係る不正確により、一つのスライスからの画像強度が別のスライスにおいて表れるというスライス漏れアーチファクトにつながる。
【0030】
漏れアーチファクトは、ごく一般的であり且つ通常は再現可能である。漏れアーチファクトは、非常に局所的で非対称形な一貫性のない鋭いエッジとして現れることがある。
図4は、3倍のSMSエコープラナーイメージング(Echo Planar Imaging:EPI)を使用して取得された画像404における例示的なスライス漏れアーチファクトを、従来のマルチスライスEPI(画像402)と比較して示している。スライス間漏れアーチファクトは、MR画像において、他の多くのタイプのアーチファクトよりも、通常検出することが難しい。検出の際の難易度におけるこの格差に対する理由のうちの少なくとも一部分は、他のアーチファクトが比較的分散して現れ、かつ規則的であるのとは対照的に、スライス間アーチファクトは非常に局所的に現れることである。
図4に示されている通り、スライス間漏れは、通常、非常に局所的であり、病変から切り離して識別することが難しいことがある。
図4において円で囲まれたエリアに示されているように、スライス間漏れは、MR画像における実質的なアーチファクトへ至ることがある。SMSにおける漏れた信号は、損傷、脳卒中、或いは他の病変の特徴として放射線科医(又は、MR画像を使用する他のユーザ/操作者)によって誤認されることがある。
【0031】
実施形態は、SMS、面内パラレルイメージング又はそれらのいくつかの組み合わせにおけるスライス間漏れを決定する改良された技術を提供する。いくつかの実施形態は、「正体不明のあの明るい物体は、実在するのか、またはスライス間漏れアーチファクトなのか?」といった疑問に対し、信頼性の高い答えを取得することを提供する。
【0032】
スライス間漏れを決定するための従来技術の一つには、非特許文献3で示されるモンテカルロ法がある。この方法では、低周波数信号は、シングルスライス画像へと取り込まれ、且つSMS画像を合成するために組み合わせられる。次いで、SMS画像からエリアシングが除去される。エイリアシングが除去されたスライスの周波数解析は、どの位の信号が一つのスライスから別のスライスへと漏れたのかを明らかにするために、使用されてもよい。
【0033】
別の従来技術として、スライスGRAPPA(k空間)技術が非特許文献4で説明されている。この方法では、スライスGRAPPAカーネルは、任意の同時に収集されたスライスに対して較正される。次いで、較正されたカーネルは、シングルスライス画像に適用される。結果として生じる画像により、通過(パススルー)信号及び漏れ信号が得られる。
【0034】
上記で説明されたモンテカルロ法やスライスGRAPPA法等のスライス漏れマップを推定するための従来技術は、周波数空間及びk空間領域において、受信されたMR信号情報を操作することにより、シングルスライス画像を再構成する。ここに説明されるいくつかの実施形態例は、スライス間漏れを識別するために、画像領域パラレルイメージング技術を有していてもよい。
【0035】
実施形態例を理解するための一つの原則は、SMSやSENSEは、空間帯域分離器のように動作すること(例えば、空間的にずらされた個別のスライスに対する画像を分離する機能)と、これがマルチスライスイメージングにおけるスライス間漏れを決定するために活用されることができることとを理解することである。
【0036】
スライス漏れは、SMSマルチバンド画像における周波数帯域をSENSE再構成が厳密に分離できなかった画像領域で発生する。このとき、シングルスライス画像が入力である場合、SENSE再構成は係る画像を正しく通過(パススルー)させ、全ての他の出力スライスは、ゼロ輝度を有する阻止帯域(ストップバンド)にあると考えることができる。阻止帯域スライスにおける任意のゼロでない画像輝度が、スライス漏れである。
【0037】
図5は、SENSE再構成モジュール502を通して、入力シングルスライス画像506が通過(path through)することを示している。入力画像506等のシングルスライス画像は、SMS画像と呼ばれるものとは異なる。SMS画像がいくつかのスライスからのMR信号を合成したものに対して、シングルスライス画像は、1つのスライスからのMR信号のみを含む。
【0038】
SENSE再構成モジュール502において、SMS画像に対するSENSEエイリアシング除去行列の形成は、所定のマルチスライスマルチコイル受信感度マップ504を用いて実行され、且つ出力画像の生成は、入力画像及びSENSEエイリアシング除去行列に基づいて実行される。いくつかの実施形態において、SMS画像が入力として提供される代わりに、シングルスライス画像が提供されていることをプロセスに通知するために、SENSE再構成に対して変更を行う必要はない。基本的に、シングルスライス入力画像に対するSENSE再構成と関連付けられた処理は、SMS画像に対するSENSE再構成と同一のままにできる。SENSE再構成処理の更なる詳細は、
図9に関連して説明される。
【0039】
実施形態例に従って、SENSEエイリアシング除去行列は、SMS MRIデータ収集シーケンスによって収集されたMR画像からエイリアスを除去するように設定され、MRスライス画像データが当該行列に入力されると通過スライス画像および1つ以上の追加のスライス画像が作成されるようにする。入力スライスからROIの別のスライスへのスライス漏れは、追加のスライス画像の内容に基づいて、決定することができる。
【0040】
出力画像508a~508cは、SENSE再構成行列502がシングルスライス画像を自身の帯域に(例えば、通過帯域に)通過させ、阻止帯域と呼ばれる全ての他の帯域は、画像強度がゼロとなる理想的な状況を示している。
【0041】
この例において、SENSE再構成処理により、矩形及び円形に対して割り当てられた帯域はゼロを受け取ると同時に、入力シングルスライス画像における三角形画像は、三角形自体の帯域へと分離される。例えば、入力シングルスライス画像が選択されたスライスからのMR信号のみを含む場合に、このような結果となる。
【0042】
係る処理は、各スライスに対する再構成画像を取得するために、ROIにおける各スライスに対して繰り返されることができる。
【0043】
図6は、SENSE再構成が理想的でない場合に、スライス漏れが1つ以上の素子帯域で現れることを示している。この例では、シングルスライス画像506は、マルチコイルマルチスライス受信感度マップを使用して、その対応するマルチバンド画像608bへと、SENSE再構成モジュール502によって通過(パススルー)される。入力画像における三角形からのいくつかのボクセルは、阻止低域へ漏れているが、出力画像608a及び608cにおいてゼロでない画像強度として示される。
図5および
図6と関連する実施形態において、各帯域は、当該文書において言及される通り、患者の解剖学的構造における個別のスライスに対応する。SENSE出力画像は、入力シングルスライス画像の帯域に対応する出力画像以外、スライス漏れ画像である。
【0044】
図7は、SMSを伴わない面内SENSEに対して、SMSイメージングに関連する上記で説明された技術の拡張を示している。実施形態例は、SMS画像におけるスライス漏れの様に、面内SENSE画像における残留エイリアシングに対して操作することにより、面内SENSE画像における残留エイリアシングを決定することや処理することのために提供される。より具体的には、
図7に関連した実施形態において、縮小された撮像視野(field of view:FOV)画像及び折り返し(エイリアス)は、
図5及び
図6に関連付けられたSMS実施形態に関して説明された「スライス」のように取り扱うことができる。言い換えれば、面内SENSE及びSMS無しでの実施形態において、縮小されたFOVを有する入力画像706が与えられると、SENSE再構成モジュール702は、通過帯域における一つの画像と、阻止帯域における残留エイリアス信号を有する1つ以上の他の画像とを出力する。
【0045】
2倍高速化で収集された面内SENSE画像710について考える。加速率が2では、k空間ラインは、フルFOV収集に対するk空間のステップサイズの2倍で収集され、1/2FOV画像710が各コイルから収集される。係る1/2FOV画像は、三角形の中間領域上に、折り返されたすなわちエイリアスを含む三角形の外側の一部分を含むエイリアシングを有する。SENSE再構成が、エイリアスされた領域から中間領域を完全に分離することができない場合に、残留エイリアシングが再構成画像に現れる。
【0046】
残留エイリアシングの量は、「スライス」漏れマップを作ることにより、計算することができる。エイリアシングが含まれない完全なFOV画像が収集される。そのような画像は、
図5において506で表されている。次に、処理されて縮小されたFOV画像706は、完全なFOV画像から導出される。導出されて縮小されたFOV画像は、SENSE再構成処理702へと入力として供給される。いくつかの実施形態において、SENSE再構成処理702の処理ロジックは、SENSE再構成モジュール502におけるSENSE再構成ロジックと同じであってもよい。SENSE再構成モジュール702への入力として提供されたコイル感度マップ704は、シングルスライスマルチコイル受信感度マップを少なくとも含む。すなわち、コイル感度マップ704は、複数の入力「スライス」画像において表された複数のスライスのそれぞれについて、複数のコイル感度マップを少なくとも有する。SENSE再構成モジュール702へ入力される縮小された入力FOV画像(例えば、処理された画像706及び対応するエイリアス)が患者の解剖学的構造のうちの一つのスライスの画像である場合、そのスライスに対する複数の感度マップで十分である。そのシングルスライスに対する複数の感度マップは、通過画像及びエイリアスの両方に関連する感度情報を有することになる。
【0047】
処理は、例えば(入力FOV画像706に示されるような)縮小されたFOV画像及び各エイリアス等の各「スライス」をSENSE再構成モジュール702に入力することと、他の「スライス」における漏れを決定することとにより、実施される。SENSE再構成モジュール702は、SENSE再構成モジュール502と同様に動作する。SENSE再構成モジュール702の動作は、
図9に関連して、以下で更に説明される。
【0048】
各入力画像は、制限された撮像視野における画像の一部分(例えば、入力FOV画像706において2本の点線の間の領域により示されたFOVの一部分)を、係る画像の残りから分離することにより(例えば、事前に設定されたパラメータに基づいて自動的に領域をトリミングすることにより)、収集された完全なFOVを処理して、取得されてもよい。加速率及びFOVが既知であるので、画像のどの領域が主要部であって、どの部分がエイリアスを形成しているかを計算するのは、容易である。加速率がRのときR個のエイリアスが生じるため、加速率Rの面内パラレルイメージングでは、上記処理は、R個全てのエイリアスに対して繰り返すことができる。
【0049】
図7に示すような面内パラレルイメージングと関連付けられた実施形態において、SENSEエイリアス除去(un-aliasing)モジュールにおけるSENSEエイリアス除去行列は、MRスライス画像データが行列に入力された場合、複数の「スライス」画像が生み出されるように、縮小されたFOVから収集されたMR画像からエイリアスを除去するように設定される。出力「スライス」画像のうちの一つは、縮小されたFOVにおける通過(パススルー)画像を出力する。エイリアス除去行列からの出力における少なくとも一つの追加のスライス画像は、拡大されたFOVを表す。このとき、縮小されたFOVのスライス画像における残留のエイリアスの内容は、行列から出力された余分なスライス画像の拡大された一部分の内容に基づいて、決定される。
【0050】
すなわち、MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、SENSEエイリアス除去マトリクスと、1つのスライスに係るデータであって縮小されたFOVに係るデータに基づいてSENSE再構成を行ってエイリアシング除去を行うことにより、当該スライスに係るデータや当該スライス以外のデータを、縮小されたFOVより広いFOVについて生成し、当該スライスに係るデータや当該スライス以外のスライスに係るデータに基づいて、残留エイリアシングを算出する。例えば、MRIデータプロセッサ42は、複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るデータとに基づいてSENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行う。このとき、MRIデータプロセッサ42は、当該SENSE再構成により、一つのスライスに係るデータ及び一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成する。次いで、MRIデータプロセッサ42は、一つのスライスに係るデータと一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出する。
【0051】
すなわち、
図7に関連した実施形態において、SENSE再構成モジュール702への縮小された入力FOV画像706の入力の結果は、通過画像708b及び残留エイリアシングを含む別の「スライス」画像708aとなる。708aで観察されるように、(例えば、708bにおいて通過信号が存在する領域の頂点側および底部において)エイリアスされた各領域は、残留エイリアスを含む。
【0052】
図8は、MR画像を収集するためにSMS及び面内SENSEを組み合わせて使用されているときの、いくつかの実施形態例に係るスライス間漏れの決定を概略的に示している。画像810a~810fは、加速率Rが6となるSMS3倍と面内SENSE2倍とにおける、全てのスライスに対して処理された(例えば、各画像に属するような縮小されたFOVのそれぞれの外側のエリアを切り取り出すことにより、縮小されたFOVを取得するように処理された)入力画像である。810aと810b、810cと810d、そして810eと810fの各ペア(それぞれ、四角形、三角形、円形の画像に対応)は、主要な縮小されたFOV画像(例えば、810cにおける三角形の中央部)及び面内高速化により生じる折り返しの画像(例えば、810dにおける三角形の頂点部/底部)を含む。
【0053】
SMS及び面内SENSEの組み合わせを用いる実施形態において、SENSEエイリアス除去行列は、MRスライス画像データが当該行列に入力されたとき、通過スライス画像と1つ以上の追加のスライス画像を生成するために、SMS MRIデータ収集シーケンスによって収集されたMR画像からエイリアスを除去するように設定される。入力スライスからROIの別のスライスへのスライス漏れは、追加のスライス画像の内容に基づいて決定することができる。加えて、面内SENSEに適応させるために、MRスライス画像データがSENSEエイリアス除去行列に入力された場合、各入力MRスライス画像データは縮小されたFOV画像であるので、MRスライス画像データは面内残留エイリアスも画像として出力される。
【0054】
SENSEエイリアス除去行列は、SMS加速率MBと面内の縮小されたFOVの加速率Pとからなり、R=MB×Pで表される総加速率Rに対して設定される。画像領域MRIデータのうちの一つのスライスは、一つの通過画像及びRが1の面間漏れマップ画像と面内漏れマップ画像とのうち少なくとも一方を生成するよう構成されたエイリアス除去行列への入力のために、選択される。(例えば、スライス漏れ及び残留エイリアスの形でそれぞれ生じる)面間漏れ及び面内漏れは、Rが1の漏れマップの内容に基づいて決定される。
【0055】
すなわち、MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、各スライス及び各縮小されたFOVに係るデータに基づいてSENSE再構成を行うことにより、スライス間の漏れ及び面内の残留エイリアシングを算出する。例えば、MRIデータプロセッサ42は、感度マップと、一つのスライスに係るデータであって縮小された撮像視野に係るデータに基づいてSENSE再構成を行ってエイリアシング除去を行う。このとき、MRIデータプロセッサ42は、当該SENSE再構成により、一つのスライスに係るデータから、縮小された撮像視野より広い撮像視野の画像データを生成する。次いで、MRIデータプロセッサ42は、生成された画像データに基づいて残留エイリアシングを算出する。
【0056】
処理は、810a~810fのうちの一つを入力画像806として選択することにより、機能する。このとき、入力画像806は、SENSE再構成モジュール802において処理される。SENSE再構成モジュール802は、複数のマルチスライスマルチコイル受信感度マップ804を、入力として受け取る。複数の感度マップは、
図5乃至
図7の複数の動作と同様な手法で構成されてもよい。SENSE再構成モジュール802も、モジュール502及び702と同じ或いは実質的に同じ方法で動作することができ、後程、
図9を参照してさらに説明する。
【0057】
出力画像808は、スライスごとおよびエイリアスされた領域ごとに対して、分離画像を有する。全体の加速率Rに対して、出力画像は、一つの通過画像及び(R-1)個の漏れマップを有する。
【0058】
図9は、いくつかの実施形態例にかかり、スライス漏れと面内残留エイリアスとのうち少なくとも一つのマップを生成し、格納する処理900のフローチャートを示している。これらの実施形態は、SMSイメージングを用いるいくつかの実施形態(例えば、
図5~6に関連した実施形態等)と、面内SENSEイメージングを使用するいくつかの実施形態(例えば、
図7に関連した実施形態等)と、SMSと面内SENSEとの組み合わせの実施形態(例えば、
図8に関連した実施形態等)と、を有していてもよい。
【0059】
処理900に入ったのち、工程902において、選択された複数のスライス位置での受信コイル感度マップが生成される。コイル感度マップを生成するために、周知の従来技術を用いることができる。いくつかの実施形態例において、すべての受信コイルごとに、またROI内の全てのスライスごとに、感度マップが生成される。しかしながら、いくつかの実施形態によっては、すべての受信コイルやROI内のすべてのスライスに対して、対応するコイル感度マップを用意する必要はない。コイル感度を生成するための詳細については、既知である(例えば、非特許文献5参照)。
【0060】
コイル感度マップを生成したのち、工程904において、少なくとも選択された複数のスライス位置に対するSENSEエイリアス除去行列が生成される。
【0061】
すなわち、MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、工程902において生成された感度マップから、SENSEエイリアス除去マトリクスを生成する。例えば、MRIデータプロセッサ42は、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、算出された行列データに基づいて、当該行列の逆行列を示す逆行列データを、SENSEエイリアス除去マトリクスとして算出する。例えば、当該行列の複数の非対角要素の非ゼロの複数の値は、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方に対応し、行列の複数の対角要素の複数の値はシェーディングに対応する。
【0062】
いくつかの実施形態に従って、SENSEエイリアス除去行列は、アクティブな受信コイル数(つまり、MR信号を実際に受信している受信コイル)及びROI内のスライス数よりも多い列数や行数をそれぞれ有するよう構成される。例えば、2つの動作している受信コイル及びROI内の2つのスライスとからなる構成の場合、SENSEエイリアス除去行列は、2行より多い行や2列より多い列を有することとなる。余分な行は、収集された画像のいくつかの特徴をエンコード化する疑似的コイルを含むために追加されてもよい。例えば、複数の二次元位相マップは、エコープラナーMRIにおけるゴーストアーチファクト(ghosting artifacts)を低減するために疑似的コイルとして含まれてもよい。
【0063】
付加的な列と行とのうち少なくとも一つは、通過帯域(パススルーバンド)から他の帯域への漏れを識別するため、追加されたエイリアスを収容するよう定義される。「通過帯域」は、SMSイメージングに関連して、主要なMR信号が受信された患者の解剖学的構造におけるスライスに関係し、また面内パラレルイメージングに関連して入力画像の縮小されたFOV内の領域に関係する。「他の帯域」は、SMSイメージングに関連して患者の解剖学的構造における他のスライスに関係し、また面内パラレルイメージングに関連して、入力画像の縮小されたFOVの外側の領域に関係する。
【0064】
上記で説明された通り、縮小されたFOV及び縮小されたFOVの外側の領域は、SENSEエイリアス除去行列による処理及び残留エイリアスの決定のために、実施形態例では個別のスライスとして取り扱われる。例えば、スライスにおいて縮小されたFOVの画像及び当該スライスにおいて縮小されたFOVの外側の領域の画像は、SENSEエイリアス除去行列への別々の入力画像としてそれぞれ提供され、それぞれについて、通過画像及び1つ以上の面内残留エイリアス画像が出力される。
【0065】
工程906において、SENSE再構成モジュールへの入力画像が取得される。係る画像は、プリスキャンにおいて、(例えば、
図10に記載の)メインイメージングシーケンスの一部として又はそれらの組み合わせとして、収集されてもよい。例えば、MRIシーケンス制御部30は、2D撮像を実行する。MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、当該2D撮像により得られた1つのスライスに係るデータを、SENSE再構成モジュールのための入力画像として生成し、後述のステップにおいて当該2D撮像により得られた1つのスライスに係るデータに基づいて、SENSE再構成を行う。
【0066】
SMSを使用する実施形態において、2Dシングルスライス画像は、SENSE再構成モジュールに対する入力画像として、スライスをずらして、又はスライスをずらすことなく、収集されてもよい。いくつかの実施形態において、2D画像は、互いの上部が直接重なる様にして、面内方向において当該2D画像をシフトすることなく、同時に収集される。しかしながら、これは、受信コイル感度がスライス方向において実質的に変化しない場合には、スライスの分離が難しくなることがある。再構成された画像の画質を改善するために、いくつかの実施形態において、スライスは、収集の間にシフトされてもよい。これは、位相エンコード(PE)方向においてk空間での線形位相勾配(linear phase ramp)に由来する傾斜磁場を印加することにより達成され、それは、次々、所定のファクタの分だけ複数の画像をシフトさせることで実現される。1つの例では、SMS3倍高速化が使用された場合(
図5及び関連した記述参照)、3つのシングルスライス画像が入力画像として使用される。この場合、MRIシーケンス制御部30は、SMSデータ収集シーケンスを実行する。MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、実行されたSMSデータ収集シーケンスにより得られたデータを、各スライスについて切り出すことにより、入力画像を生成する。
【0067】
面内SENSEを使用する実施形態において、SENSE再構成モジュールに対する入力画像は、中にROI全体を含む完全な撮像視野(FOV)にわたって取得される。すなわち、例えば、面内2倍の高速化が使用された場合(
図7及び関連した記述参照)、収集されたFOVに対して半分のFOV画像と、収集されたFOV画像に存在しない部分を含む画像とが、SENSEエイリアス除去への入力として使用される。
【0068】
SMS及び面内SENSEを使用する実施形態において、入力画像は、SMSを受けるスライスごとの画像と、完全なFOVをカバーするために各スライスに対して縮小されたFOV画像とを含む。
図8に関連して上記で説明された画像810a~fは、一例である。
【0069】
工程908において、一組のスライス位置は、入力画像を入手できるスライスから選択される。係る選択は、任意で行うことができる。実施形態例において、この一組のスライス位置は、ROI内の全てのスライスを含む。
【0070】
処理900は、選択された一組におけるスライスごとにスライス漏れマップを1つずつ生成するために、工程910~915を繰り返してもよい。工程910において、上記一組からスライス位置が選択される。
【0071】
工程912で、工程910で選択されたスライスに対して、スライス漏れマップが生成される。すなわち、MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るデータとに基づいてSENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、一つのスライスに係るデータ及び一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成し、一つのスライスに係るデータと一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出する。係る選択されたスライスについてのスライス漏れマップにより、1つ以上の他のスライスから選択されたスライスへの漏れや、選択されたスライスから1つ以上の他のスライスへの漏れを識別することができる。係る選択された一組のスライスについての複数のスライス漏れマップは、選択された一組のスライスにおいて、あらゆる任意のスライスから、あらゆる任意の複数のスライスへ、漏れをマッピングするように構成されてもよい。すなわち、例えばキーボード26はユーザから一つのスライスの選択の入力を受け付ける。MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、キーボード26が受け付けた当該スライスから他のスライスへの、スライス間の漏れを算出する。
【0072】
SMSの実施形態についての複数のスライス漏れマップは、一つのスライスから他のスライスへのスライス間の漏れのマッピングを提供し、面内SENSEの実施形態については、複数のスライス漏れマップは、一つの縮小されたFOV領域から他のそのような複数の領域への残留エイリアスのマッピングを提供し、更にSMSと面内SENSEとを組み合わせた実施形態に対しては、複数のスライス漏れマップは、スライス間漏れと残留エイリアス漏れとの両者を与える。
図6、
図7および
図8における出力画像は、実施形態の上記タイプのそれぞれに対する漏れマップ情報の例を示している。
【0073】
いくつかの実施形態によると、スライス漏れマップの生成は、画像を生成するために使用された収集シーケンスのタイプから独立しており、且つ処理された画像を収集するために使用されたイメージングシーケンスによりスライスがシフトされているか否かについてからも独立している。いくつかの実施形態において、処理された複数の画像は、少なくとも1つの拡散方向において拡散強調エンコーディング傾斜磁場を使用する少なくとも一つのMRイメージングシーケンスから生成される。実施形態に係るスライス漏れマップは、SMSに対する主要な適用例である拡散強調画像に対して生成されてもよいが、実施形態に係るスライス漏れマップは、それらに拘泥されない。
【0074】
収集高速化パラメータ(例えば、R、縮小されたFOV、加速率P、MBなど)は、操作者によって設定されてもよい。係る設定された値は、高速化なし、又は高速化のあるレベル(例えば、MR信号を受信するために同時に起動できる受信コイルの数まで)を条件として指定されてもよい。
【0075】
SENSE再構成モジュールにおいて、エイリアスが除去された出力画像は、SENSEコイル感度行列の逆行列を、収集されたエイリアスを含む画像に乗ずることにより得られる。
【0076】
SMS画像収集及びエンコーディング処理は、以下のように解析的に表すことができる。
【0077】
【0078】
ここで、Iは全ての受信コイルからの、収集され、高速化された画像の強度のベクトルであり、CはSENSEエイリアシング行列、mはIを形成するためにエイリアスされた全ての空間的位置からの、エイリアスが除去された画像の強度のベクトルである。上記式は、完全な行列とベクトルの形式で以下のように書くことができる。
【0079】
【0080】
ここで、Ncは添え字iによってインデックスされたコイルの数を示し、Nsは添え字jによってインデックスされたスライスの数を示し、Iiはコイルiによって収集された画像を示し、Cijはスライスjに対するコイルiの受信感度を示し、mjはスライスjのエイリアスが除去された画像の強度を示し、yjはスライスシフト(スライスがシフトしない場合に、全てのjに対してyj=0)を示している。
【0081】
エイリアスが除去された画像の強度値のベクトルは、上記式を解析的に解くことにより、再構成することで、以下のように求められる。
【0082】
【0083】
ここでλはチーホノフ(Tikhonov)正則化の重み(オプション)であり、Γは識別行列であり、†はエルミート演算子である。
【0084】
いくつかの場合において、解析解が求められない場合がある。例えば、高速MRデータを収集するために非線形のk空間トラジェクトリが使用された場合、SENSE方程式を解くために逐次解法を使用するのが一般的である。そのような解法は、エイリアスが除去された画像の強度値の初期推定値を用いて開始し、エイリアスが除去されたきれいな画像へと収束させるために、SENSE方程式を逐次的に解く。
【0085】
工程914において、スライス漏れマップは、後の使用のために格納される。例えば、マップは、メモリ46等のメモリに格納されてもよい。
【0086】
工程915において、処理されるための更なるスライス位置が残っているか否かが決定され、「はい」の場合には、係る処理900は工程910へと進む。「いいえ」の場合に、処理900は完了する。
【0087】
工程902~915のうちの1つ以上の動作は、図示されたものとは異なる順序で実行されてもよいし、または実行されなくてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の工程を、処理900で実行することができる。また、コイル感度マップを生成する工程902~904は、他の工程906~910のうちの少なくとも一部の前か、後か、又は並行して実行することができる。
【0088】
図10は、いくつかの実施形態例に従って、表示されたMRI画像におけるスライス間漏れの決定や低減を行うための処理1000のフローチャートを示している。
【0089】
処理1000に入った後、工程1002において、MRシステムは、スライス高速化(例えば、SMS)、面内高速化(例えば、SENSE)、またはスライス高速化および面内高速化の組み合わせを使用して、MR画像収集のために設定される。
【0090】
工程1004において、MRシステムは、診断スキャン(「メインスキャン」とも呼ばれる)において、スライス高速化、面内高速化、又はこれらの組み合わせを使用して、MR画像収集を実行する。例えば、MRIシーケンス制御部30は、複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像(本スキャン)を行う。なお、MRIシーケンス制御部30は、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起する本スキャンに先立って、一つのスライス位置を励起するプリスキャンを実行してもよい。
【0091】
工程1006で、1つ以上の合成された/処理された画像が、診断スキャンから生成される。診断スキャンがSMSに基づく実施形態において、合成された画像各々は、診断スキャンの結果として取得された複数のスライスを合成したものである。
【0092】
工程1008において、スライス漏れマップがアクセスされる。スライス漏れマップ情報の生成及び格納についての一つの方法は、処理900に関連して上述されている。
【0093】
当該工程の後、処理1000は、漏れマップに基づいてメインスキャンから取得された再構成画像を処理する工程1012と、対応するスライス漏れマップとともに再構成画像を表示する工程1010とのいずれに進んでもよい。
【0094】
工程1010において、例えば、メインスキャンからの1つ以上の画像および生成されたスライス漏れからの1つ以上の画像が、同じディスプレイ画面に又は近くに配置されたディスプレイ上に同時に表示される。スライスの診断画像とスライス漏れマップの少なくとも適切な一部分(例えば、選択されたスライスを含むマップの一部分)とを同時に表示することにより、放射線科医又は他の操作者は、横並びの比較をすることができる。さらに後述するように、いくつかの実施形態において、漏れアーチファクト等の存在に関して操作者に対して案内するために、信頼度値などは、各画像に関連付けられてもよい。
【0095】
工程1012において、スライス漏れマップは、スライス間信号漏れの1つ以上の空間的位置及び当該漏れの量を抽出するために、処理されてもよい。係る抽出された情報は、視認できる漏れの影響を低減するために、選択された診断画像を更に処理するため使用されてもよい。
【0096】
当然のことながら、処理1000の工程1002~工程1012の一つ以上は、いくつかの実施形態において、実行されない場合があるし、又は図示されたものとは異なる順番で、実行されてもよい。いくつかの実施形態は、処理1000における1つ以上の付加的な工程を含んでいてもよい。
【0097】
実施形態例において、処理900及び処理1000は、
図1に示されたシステムにおいて実行されてもよい。より具体的には、コイル感度マップの生成、高速化無しでの2Dマルチスライス画像の収集、および高速化したMR画像の収集は、MRIシステムコントローラ(MRIシステム制御部)22、MRIシーケンス制御部30及びMRIデータプロセッサ42により、互いにガントリ10およびMRIシステム20の他の構成要素とも通信および連携しながら、実行されてもよい。処理900と処理1000との間に、生成されたスライス漏れマップ(複数のマップ)は、ディスプレイ24上に表示されている間のアクセスのためや表示された診断MR画像における漏れアーチファクトを低減するための更なる処理のために、メモリ46等のメモリにおいて格納されてもよい。
【0098】
図11は、再構成されたSMS画像における漏れアーチファクトの例を示している。画像1102は、患者の脳の3つのスライスの32チャネル、シングルスライス2DスピンエコーEPI画像である。画像1102は、SMS3倍画像1104を合成するために、シミュレーションにおいて組み合わせられたものである。合成の前に、スライスは、FOV/3単位、0単位、-FOV/3単位だけそれぞれシフトされた後、足し合わされる。これは、直接的な加算及びフーリエ変換より後に続く所望のシフトに対応するk空間におけるPE位相勾配(ramp)を適応することで達成される。SENSE再構成は、合成された画像1104について実行される。再構成されたSMSスライス1106は、矢印で示された漏れアーチファクトを示している。この場合、漏れの主な原因は、メイン画像の歪みである。画像の歪みは、メインスキャンとコイル感度計測プリスキャンとの間のコイル感度値のミスマッチが原因である。人の頭部において、そのような歪みは、前頭皮質や外耳道などのような空気と組織との境界面の近くで主に見られる。再構成されたSMSスライス1106において見られるように、スライス漏れアーチファクトの大半は、これらの解剖学的領域から生じる。
【0099】
図12は、いくつかの実施形態に従って、漏れが識別された状態で再構成されたSMS画像1204とスライス漏れマップ1202とを示している。マップ行列1202は、
図11に示されたSMS3倍の例に対して推定された複数のスライス漏れマップを示している。行m及び列nに対して、画像S(m、n)は、スライスmからスライスnまでの漏れを示す。m=nの対角の画像は、スライスからそれ自身への通過信号を示す。理想的には、漏れがなければ、全ての非対角の複数の画像は、強度0を有するようになる。行mは、マップ行列において表された全てのスライスの間で、スライスmからの画像強度がどのように分配されるかを示している。列nは、スライスnに画像強度を与える全てのスライス(すなわち、マップ行列において表されたスライス)を示している。
【0100】
スライスは、空間的に互いに離れているほど、受信感度の差が大きくなるため、漏れが少なくなる。例えば、スライス1はスライス3から離れているため、S(1、3)は、より少ない漏れを示している。
【0101】
再構成されたSMSスライス1204と漏れマップ1202とを比較することで、スライス漏れの発生元の位置を特定することができる。アーチファクトは、スライス漏れ又は真に病気の状態として、個々に識別/分類できる。
【0102】
上述したように、ここで説明されたいくつかの実施形態は、同時マルチスライスイメージングにおけるスライス漏れを識別するために、画像領域パラレルイメージングに基づく技術を提供する。識別されたスライス漏れは、マルチスライスMR画像における病変のより厳密な区別での支援のために、使用することができる。いくつかの実施形態は、収集されたMRI画像の補正において、識別されたスライス漏れを利用してもよい。
【0103】
発明者が知る限りでは、これらの実施形態は、例えばSENSEのような画像ベースの再構成を使用してスライス漏れを能動的に除去することによりスライス漏れを補正するため、およびSMS撮像におけるスライス漏れを識別するための技術に基づく、最初の画像領域パラレルイメージングである。
【0104】
同時マルチスライスイメージングにおけるスライス漏れを識別するための従来技術には、多くの欠点がある。従来のモンテカルロ法は、時間がかかる。この技術は、厳密なスライス漏れマップを取得するため、何百もの繰り返しを要する。従来のスライスGRAPPA技術は、k空間に基づいており、いくつかのMR装置にそのような技術を用いると、かなりの修正と他の諸経費とが必要となる。
【0105】
SENSEのような画像領域パラレルイメージング再構成は、k空間に基づく再構成(例えば、スライスGRAPPA)に比べて、局所的な漏れアーチファクトが強くなりやすい。マップスキャン(例えば、コイル感度マップ用のプリスキャン)及びメインスキャン(例えば、診断スキャン)の間のボクセルのあらゆる位置合わせ不良は、スライス漏れを潜在的に引き起こす可能性がある。
【0106】
漏れアーチファクトを正しく特徴付けるために、メインスキャンで画像領域技術(SENSE等の面内パラレルイメージング)を使用した場合、スライス漏れ計測にも画像領域技術を使用する必要がある。画像領域法及びk空間法は、漏れを引き起こす可能性がある複数のプリスキャンとメインスキャンとの間の不一致の様々な原因に影響されやすい。例えば、k空間法は、スライス漏れに繋がる可能性のあるプリスキャンとメインスキャンとの間の画像のコントラストの違いに非常に敏感である。画像領域法は、そのような原因に対して、ほとんど影響されない。したがって、画像領域法を使用する再構成の処理過程から生じるスライス漏れを正確に特徴付けるために、スライス漏れ計測は、画像領域において実行されるべきである。例えば、MRIシステム20は、面内パラレルイメージングを使用し、且つ漏れ決定のための画像領域(「画像空間」とも呼ばれる)技術を効果的に組み込む。実施形態は、スライス漏れアーチファクトの識別や計測を行うために、画像領域パラレルイメージング再構成を使用する。一般的に、実施形態の技術は、スライス高速化、面内高速化、又はこれらの組み合わせを用いて、画像内の残留エイリアシングを計測するために使用されてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態は、blipped-SMS収集、非blipped-SMS収集の両方に適用される。実施形態は、面内SENSEを用いて又は用いることなく、SMS画像へと適用される。いくつかの実施形態は、SMSを用いない面内SENSEや面内SENSEを含むSMSイメージングに提供される。
【0108】
いくつかの実施形態例において、漏れマップは、SMS画像品質を評価するために、領域内のSNR分布の推定を提供するgファクタマップとともに用いられる。
【0109】
いくつかの実施形態例において、スライス漏れマップは、定量化することができる。例えば、各スライス漏れマップにおける正規化平均画像強度は、全ての他の複数のスライスに対する各スライスの相対的な寄与を見つけ出すために計算されてもよい。例えば、エイリアシング除去行列によって決定されてそれぞれ関連付けられた信号漏れに基づいて生成され、信頼度値を各スライスに対して提供する信頼性マップが、形成されてもよい。また、信頼性マップは、診断画像の表示と共に又は診断画像と関連付けて表示されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態例は、スライス漏れ軽減技術において使用される場合がある。例えば、複数のスライス漏れマップは、任意の漏れが関心領域の外側に漏れ出るよう強いるため、最適なSMSシーケンスパラメータの計算において使用されるように、システムへの入力として用いられてもよい。
【0111】
k空間に基づく方法は、従来、スライス間漏れアーチファクトを軽減するために提案されている。k空間に基づく軽減技術は、スプリットスライス-GRAPPA(例えば、非特許文献4参照)およびSMS-HSL(例えば、非特許文献6参照)を含む。
【0112】
スライス-GRAPPA(上述)は、SMS画像を再構成するための初期のk空間に基づく方法である。係る方法は、全てのコイルにわたる複数の近傍のk空間信号の間での線形依存を活用する。GRAPPAカーネルは、複数のシングルスライスキャリブレーション画像について訓練され、当該カーネルは、分離された複数のスライスに対するk空間データを生成するために、SMS-k空間に適用される。スライス-GRAPPAカーネルは、関心スライスから通過(パススルー)スライスまでの信号のみを許容するように、フィルタとして機能する。スプリットスライス-GRAPPAは、フィルタの阻止帯域が関心スライスの外側の全てのスライスからの信号を抑制するよう設計されるように、フィルタの概念を拡張する。これは、他の複数のスライスからの信号寄与を最小化するためにスプリットスライス-GRAPPAカーネルを訓練することにより、達成される。
【0113】
SMS-HSLは、スプリットスライス-GRAPPA技術を拡張し、三つの項を伴う非凸最適化問題としてSMS再構成を表現する。データ忠実度項は、(例えば、低解像参照データが収集された位置で)再構成されたシングルスライスイメージングデータと参照データとの間での直接的なマグニチュードプライオア(magnitude prior)を構成する。スライス間漏れは、ハンケル(Hankel)空間として知られるように関心スライス以外のスライスからの全てのキャリブレーションk空間データの合計と収集されたSMSデータとの間のl2ノルムを最小化することにより、低減される。さらに、低ランク拘束は、ハンケル空間において再構成されたシングルスライスデータへと付加される。
【0114】
従来のスプリットスライス-GRAPPA及びSMS-HSL技術等は、キャリブレーションデータとメイン撮像データとの間の差を対比することに敏感な場合がある。例えば、SMS-HSLは、k空間におけるマグニチュードプライオアのために、拡散イメージングへと適用することができない。その上、スプリットスライス-GRAPPA及びSMS-HSLは、未知のスライス漏れを抑制するために、k空間における複数のマグニチュードプライオアを使用する。したがって、これらの従来技術は、高速技術を使用して収集されたMRI画像における漏れを十分補正することができない。このような技術には、より高いレベルでの漏れ抑制が画像忠実度の他の側面における付随損失という結果にもなる、というトレードオフが典型的には存在する。
【0115】
スライス漏れを補正するための実施形態例は、通常のスプリットスライス-GRAPPA及びSMS-HSL技術とは対照的に、参照撮像データとメイン撮像データとの間の差を対することに敏感ではない。その上、未知のスライス漏れを抑制するための通常の技術におけるk-空間でのマグニチュードプライオアの使用とは対照的に、実施形態例において直接的に計測されたスライス間漏れマップは、解析的SENSE表現において使用される。従って、複数の画像は、完全に決定論的且つ厳密な線形変換を用いて低減されたスライス間漏れアーチファクトと共に実施形態例によって再構成され、画像忠実度における犠牲を必要としない。
【0116】
加えて、いくつかの通常の技術は、「オートキャリブレーション」(例えば、GRAPPAにおけるACSライン等)が使用される場合での改善およびSMS補正を処理するよう設計される。これらのオートキャリブレートされた方法は、1回以上(例えば2回)k-空間の中央領域を使用し、結果的に、線形ではなくモデル化や補正することがこのように難しい方法で複数の画像へと伝播するk-空間エラーとなる。
【0117】
通常の非線形スキャン及び再構成で生じる複数のエラーは、線形変換関数または行列の掛け算を用いるモデリングおよび計測に対しては適切でないことがある。例えば、通常の技術において、複数のエラーは、多くの場合、多数のモンテカルロモデルの繰り返しの大きな数を用いるRMS強度偏差のような2次オーダーの統計値で計測される。そのため、通常の技術のこのタイプは、エラーの信号又は位相ではなく、(各位置で)エラー強度の統計的な価値を与える。したがって、これらの通常の補正は、予測されたエラーの大きさに基づくいくつかのペナルティへと実際には制限され、エラー項フェーズが知られていないため、エラーを完全に除去することができない。
【0118】
特定の実施形態例は、漏れを計測(評価)することができた場合に、加速されたMRIにおけるスライス間漏れを補正するための、新たな方法及びシステムをこれから提供する。いくつかの実施形態例において、上述の
図9に関連して説明された技術にしたがって、漏れを計測することができる。実際に、
図9に関連して説明された技術は、
図9の技術により出力された複数の漏れマップ(例えば、操作者による観察用の複数の漏れマップ等)がそれ自体、実施形態例で実現される漏れ補正に対する入力となるため、実施形態例における漏れ補正に対して著しく相乗的なものとなる。しかしながら、いくつかの他の実施形態例においては、漏れは
図9に関連して説明されたものとは異なる技術により計測される。
【0119】
スライス漏れを補正することでの実施形態例の有効性は、少なくともある範囲で、高品質の複数の複素数スライス間漏れマップの利用可能性に依存する場合がある。
【0120】
いくつかの実施形態例において用いられる新たな漏れ補正技術は、(各位置での)乗法エラー行列の位相及び大きさを利用する。これは、(当然、漏れ計測ステップの厳密度及び有効性を条件として)漏れエラーの精確且つ完全な除去を提供する。更には、エラーモデルが線形行列であるため、インバージョン及び補正が計算的に速い。
【0121】
実施形態例は、SMS MRIにおいて(又は面内SENSEにおいて、又はSMSに面内SENSEを加えた撮像において)発生するようなスライス漏れを、能動的に除去又は補正する。
【0122】
実施形態例は、収集されエイリアスされた複数の画像値を用いる乗法と逆演算(インバージョン:inversion)とに続いて、複数の漏れマップをSENSE方程式へと組み込むことにより、補正されたMRI画像を提供する。複数の漏れマップがSENSE方程式において用いられる前に、複数の漏れマップは、定量的で、規格化され、複素数値の「部分的漏れ行列(fractional leakage matrix)」に変換される。部分的漏れ行列は、例えば、スライス間の漏れを行列として表される行列データに対応する。部分的漏れ行列における所定の空間的な位置は、全ての非エイリアススライスからその空間的位置へ寄与する信号の相対的な大きさ及び位相に対応する。部分的漏れ行列は、漏れ情報を線形変換の形式に割り当てること、すなわち複数の複素係数を伴う行列乗法により、SENSE方程式へと組み込まれる。その後、「部分的漏れ行列」の逆行列(又は疑似的逆行列)が形成される。「部分的漏れ行列」の逆行列は、逆行列データに対応する。2つの行列の逆行列の組み合わせである再構成-すなわちSMS収集又は面内パラレルイメージング収集に属する意図された(理想的な)順エンコード化の典型的な反転(normal inversion)は、このとき、漏れ補正されたMRI画像を取得するために「部分的漏れ行列」のインバージョンに続いて実行される。
【0123】
いくつかの実施形態例において、同じ補正技術が、純粋なSMS、純粋な面内SENSE、又はSMSに面内SENSEを結合させた撮像を用いて収集されたMRI画像に適用される。
【0124】
図13は、特定の実施形態例において、漏れ補正及び補正された画像生成の概略的図である。
【0125】
高速化されたMRIを用いて収集されたMRI画像1302は、再構成処理1308に対する入力として使用される。
図13に図示された例において、入力MRI画像1302は、SMS MRI撮像を使用して収集される。
【0126】
再構成処理1308は、入力として、スライス間漏れを表す複数の漏れマップ1306を付加的に取得する。複数の漏れマップ1306は、計測されたスライス間漏れに基づいて構成されてもよい。複数の漏れマップ1306は、本開示において説明されたようなスライス漏れ計測技術1304に従って、生成されてもよい。
図13に示された例において、
図6に関連して上記で説明されたスライス漏れ計測技術1304は、上記で述べたように、大きさ及び位相の両方を有する複素係数を含む部分的漏れ行列1306の生成において使用される複数のスライス漏れマップを生成するために用いられる。しかしながら、いくつかの他の実施形態において、スライス漏れを計測するための他の技術が、漏れマップの生成のために用いられてもよい。
【0127】
補正されていないMRI画像1302の入力及び複数の漏れ行列1306を受け取ったとき、再構成処理1308は、漏れが除去され又は低減されることにより補正されたMRI画像1310を出力するよう動作する。再構成は、漏れ補正されたMRI画像を取得するために、部分的漏れ行列の逆行列(又は疑似的逆行列)の形成と、このとき2つの逆行列の組み合わせを用いた積による再構成の実行と、を有していてもよい。
【0128】
例えば、MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、感度マップと、算出されたスライス間の漏れまたは算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた複数スライスに係るデータとに基づいてSENSE再構成を行う。MRIデータプロセッサ42は、当該SENSE再構成により、算出されたスライス間の漏れまたは算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去することで、漏れ補正と面内残留エイリアシング補正とのうち少なくとも一方が実行されたMRI画像を取得する。具体的には、MRIデータプロセッサ42は、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を、行列として表される行列データとして算出し、行列データに基づいて行列の逆行列を示す逆行列データを算出し、逆行列データを用いて、当該SENSE再構成により、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する。
【0129】
各位置での乗法エラー行列の位相及び大きさを用いることにより、実施形態例は、漏れエラーの厳密な且つ完全な除去を提供する。
【0130】
いくつかの実施形態に係るスライス漏れ補正は、画像ドメイン(画像領域)パラレルイメージング再構成を使用するMRシステムに組み込まれてもよい。
【0131】
図13に関する上記の考察を見て分かる通り、スライス漏れ補正に対する実施形態例は、部分的漏れ行列を生成し、かつ2つの行列又は2つの逆行列の組み合わせを含む再構成において部分的漏れ行列を用いる。部分的漏れ行列の及び漏れ補正を伴う改善された画像再構成処理の生成は、
図14に関連して以下、更に説明される。
【0132】
しかしながら、実施形態例に使用された漏れ補正技術を下記で更に詳しく説明する前に、問題の解析的な定式化について説明する。係る定式化は、面内SENSE及びSMSイメージングの前後関係において、分けて説明される。しかしながら、それぞれの技術に対するパルスシーケンスがSMS技術、面内SENSE技術、SMSに面内SENSEを結合させた技術の間で同一ではないが、純粋なSMS、純粋な面内SENSE及びSMSと面内SENSEとの結合に対する問題の解析的な形成は、互いに類似していてもよい。
【0133】
SENSEにおける画像再構成(非特許文献5参照)は、次のように解析的に定式化することができる。
【0134】
エイリアスされるピクセル“p”または“p(i)”が感度σを有する受信コイルによってエンコード化された場合、FFT再構成の後、(初期の位相エンコード方向または3Dスライス位相エンコード方向、またはその両者において、各コイルチャンネルが空間的にエイリアスされている)いくつかのエイリアスされたコイルチャンネル画像“cj”が取得される。
【0135】
【0136】
ここで、i={1,R}およびj={1,Nc}である。Rは、アクセレレーションファクタ(総加速率)またはエイリアス(スライス)数、そして“Nc”はコイル数または入力パラレルチャンネル数である。感度行列の複数の値σjiは、例えば独立なプリスキャンデータ収集およびデータ処理を伴うような技術で実験的に決定されることができるが、この限りではない。
【0137】
このとき、再構成問題は、線形行列変換“u”を用いることにより、再構成されたピクセル“r”の復元として、提起される。“u”は、「非エイリアシング行列」としても知られる「展開行列」である。
【0138】
【0139】
したがって、再構成されたピクセル“r”を取得するために、“u”行列の値を決定するアルゴリズムが必要とされる。
【0140】
(式4)を(式5)に代入することにより、以下の(式6)が得られる。
【数6】
【0141】
したがって、r
iの復元は、以下の(式7)を要求する。
【数7】
【0142】
概要的に、(式7)は、以下の(式8)を要求する。
【数8】
【0143】
すなわち、再構成された複数の画素rの復元において必要とされる展開行列は、上記で述べた通り、実験的に決定することができる感度行列の逆行列として導出することができる。
【0144】
しかしながら、(式8)は、たった一つの技術的な解法を有さない。Nc>R、つまり加速に比べてコイルがより多く存在するため、多くの場合において過剰に決定されることが問題である。したがって、(実際の状況では達成不可能な場合がある)完全な適合(解)を探す代わりに、実施形態例は、例えば、画像等についての特定のアプリオリ(演繹的な)モデル仮定に対する優先・選択(preference)または罰則項を考慮することにより、「最小二乗適合(least squares fit)」のようなものを達成するよう設計される。多くの技術が最小二乗適合を決定するために利用可能である。確実な古典的な選択肢は、Moore-Penrose疑似的インバース(pseudoinverse)技術がある。最適には、Moore-Penrose疑似的インバースは、ノイズ相関行列、またはチーホノフ(Tikhonov)正則化、または両者を伴って用いられてもよい。他のアルゴリズム及び「複数の解法」も、例えば、固有値に関してある種カットオフしきい値を伴うSVD(singular value decomposition:特異値分解)等で、実現可能である。これらは、展開行列を決定するために、次のアプローチとして(式10)乃至(式13)を与える。
【0145】
【数9】
または
【数10】
または
【数11】
または
【数12】
である。
【0146】
ここで、Ψは、一つのレシーバからのノイズが、別のレシーバからのノイズとどのくらい相関するかを表すNc×Ncのレシーバノイズ相関行列であり、上付き文字†(ダガー)はエルミート転置演算を示す。
【0147】
SENSEにおいて、Rに関連した画素は、位相エンコード間隔があまりに疎であるためにエイリアスされ(折り返され)、画像空間における明白なナイキストバンドは、規定のFOVに比べてより大きい。
【0148】
SMSにおいてRに関連した画素は、撮像エンコーディング勾配によって名目上同一にエンコードされるが、複数のRF送信励起におけるマルチバンド周波数成分のため、励起された複数のスライスについて多重度が存在する。複数の「良い」RF励起パターンが仮定された(またはそうでなければ、スライス励起の変化が画素のシェーディングへと「吸収される」ように仮定される)場合、SMSに対するエンコーディングは、以下のSENSE
【数13】
に対するものと構造的に同一であり、基本的な再構成も、それゆえに以下のSENSE
【数14】
に対するものと同様になる。
【0149】
SMSの状況における(式14)及び(式15)は、SENSEの状況における(式5)及び(式6)の内容と同一である。しかしながら、SMSにおいて、連続的な複数の励起は、通常の面内SENSEにおいて用いられる名目上の位相エンコード勾配に加えて、様々な複数のスライス位置に対してPE位相モジュレーションを適用するスライス方向におけるblipped勾配(gradient)波形を含んでいてもよい。
【0150】
実際的な実装例では、しかしながら、エンコーディングやSMS関連の複数の画素のデコーディングにおいてある種のエラーが存在する。そのような複数のエラーは、多くの理由により生じる場合がある。例えば、スライスが励起された場合に発生する実際のエンコーディング“σ”が、計測されたσと同じでない場合があること、計測されたσが明白に誤り(不精確)であるかもしれず、または(例えば、複数の送信RFプロファイルにおける不完全さのような)他に説明されないエンコーディング効果でさえも存在するかもしれないこと、σが計測された場合とSMSエンコーディング収集が実行された場合との間に(例えば、患者の動作、RXコイルの動作、又は一般的なシステムドリフトエラーなど)物理的な変化がある場合があること、メインSMS収集がシグマ計測(受信感度計測)の収集に関連して異なるジオメトリックな歪みを有する場合があること(これらの二つの画像において対応するピクセル位置が両者とも厳密に同じ物理的な位置に由来しないかもしれないこと)、複数のシグママップ(感度マップ)について様々なフィルタリングまたは補間または外挿がバイアスまたはエラー等を取り込む場合があることである。
【0151】
このため、SMSにおいて、利用可能なコイル及びスライスエンコーディングにはいくつかのエラーが存在するということを仮定して、「不備のある(flawed)」感度行列(すなわち、複数のエラーを含む感度行列)を表す“σfji”を用いて、複数の画素は以下の(式16)で表すことができる。
【0152】
【0153】
ここで、ufijは、“σfji”をそのままで逆にする(“σfji”の逆行列を求める)ための標準的な方法(例えば、スライス間漏れエラーに対する補正無しでの展開)に従って実行される「ノーマルな」再構成或いは展開である。
【0154】
推定されたσf
jiが正しくない場合、スライス漏れ及び残留のエイリアシングアーチファクトが、再構成されたSMS画像において認められる。不完全なσf
jiの存在の下で正確な再構成を実行するために、スライス漏れの定量的なマップ、すなわち「部分的漏れ行列」として上述したものが必要とされる。漏れ行列を計測するための複数の技術のうちの一つは、シングルで励起されたスライス値に基づく。シングルで励起されたスライスMRI信号値は、収集の間のある時点での一つのスライス位置ではなく、全てに対する励起のマルチバンドの局面を連続して「止める」ことにより、取得することができる。シングルで励起されたスライス画素値を収集する技術は、
図9に関連して上記で説明されている。
【0155】
これらの収集されたシングルで励起されたスライス画像a
pqは、「ノーマルなSMS再構成」を通して走らせることができ、1つのスライスが一つづつ励起された(または面内SENSEにおいて、SMSの代わりに、エイリアシングされていない複数の画素について1つのバンドを励起する)場合、他の複数のスライスの再構成は、他の複数のスライスが励起されたかのように実行される。理想的には、これは、以下の式
【数16】
を生成する。すなわち、上式は、「対角線上において」
【数17】
となり、「非対角線上において」
【数18】
となる。
【0156】
σjiの計測が正確な場合(例えば、計測された値が個別のコイル感度を厳密に反映する場合)、そしてujiを形成する逆行列が正確な場合、(式18)におけるδpqは、クロネッカーのデルタになる。
【0157】
しかし、複数のエラーのために、漏れに遭遇すると、
【数19】
となり、そして、以下の式
【数20】
のように、複数のシェーディングエラーが現れる。
【0158】
オリジナルの「ノーマルな再構成行列」が、シングルスライスで励起された複数の収集に乗算された場合、再構成された「複数のテスト画像」t
ilが計算され、以下の式、
【数21】
または
【数22】
で示すように、漏れ及びシェーディングを含む結果が認められる。
【0159】
(式23)において、δklは、もはや理想的なクロネッカーのデルタではなく、それよりもむしろ非ゼロの複数の非対角線項として経験的な「部分的な漏れ」と、1以外の対角項として「部分的なシェーディング」とを、描写すると考えることができる。
【0160】
この方法で定式化されて、δklは、理想的な複数の画像(例えば、漏れアーチファクトとがない複数の画像)を取得し、かつ、これらの理想的な画像を経験的な複数の不完全画像へ変換する線形変換として考えることができる。当該線形変換は、「部分的漏れ行列」や「漏れ行列線形変換」として呼称してもよい。
【0161】
改善され補正された(すなわち、第1オーダーで補正された)再構成を取得するために、実施形態例は、以下の式で示す、より良い再構成“bik”を利用する。
【0162】
【0163】
ここでufjkは、「ノーマルな」(例えば、漏れに対する補正がないことや不完全な)再構成であり、νijは、下記で具体的に示すように、漏れ行列変換を「逆にする」ように適用することができる別の逆行列である。
【0164】
“uf
jk”は、感度エンコーディングの逆にすることを意図した「ノーマルな再構成展開」として考えることができ、“ν
ij”は、複数のシングルスライス励起や
図9に関連して上記で説明された技術(例示であってこれに限定されない)により計測されたように、漏れ行列の残留のエイリアシングエラーを逆にすることを意図した「第2オーダーの展開」として考えることができる。
【0165】
このとき、実質的に正確な“νij”を決定することができるという推定により、この適用は、複数のエイリアスにわたるインデックス“w”を用いて、最終的なまたは固定した再構成画素“zw”という結果になるであろう。この再構成は、通常通り収集された複数のSMSエイリアス画像(式25)、およびシングルスライスで励起された複数のテスト画像(式26)のいずれにも、以下の式に示すように、必要に応じて、適用することができる。
【0166】
【0167】
テスト画像の画素tik((式22)及び(式23)参照)は、(例えば、シンプルなスケーリング又はシェーディング、または静的位相エラーの範囲内で、エイリアスされた漏れ信号を除いて正確である)もっともらしい正確な項xijと、スライス対スライス(slice-to-slice)の部分的漏れ項εijとに、以下の(式27)に示すように因数分解される。xijは、これらのテスト画像の再構成において予想される正しい信号に相当する。
【0168】
ε
ijに関する値は、(例えば、あまりシェーディングエラーがない場合、そして
【数25】
である場合)対角線上で1に近くなる。もしくは、ε
jiに関する値は、(例えば、x
jkの定義が任意の展開シェーディング(unfolding-shading)を緩和することを含む場合)対角線上で厳密に1である。
【0169】
【0170】
実施形態例において、これを達成するための効果的かつ簡潔な技術は、用いられる技術はただ一つの技術ではないが、各列における対角項による行列tikにおける複数の列を再スケールすることである。この再スケーリングは、「規格化」とも呼ばれ、εijが特定の複数の組織についてのMRIコントラストにもはや依存しないという、意味のある恩恵を有する。
【0171】
例えば、(ここでは例示用に、分かりやすくする為、R=4を前提とする)行列の第2列は、以下の(式28)
【数27】
において、対角項t
22によって除算することができて、以下の(式29)
【数28】
を得る。ここで要素ε
ij及びt
ijは、複素数である。同様の規格化が、勿論、全ての列について実行される。
【0172】
(式27)から(式29)の導出は、(式27)の両辺において、行列xjkの逆行列を右側から掛けることにより得られる。例えば、もっともらしい正確な項xijの対角成分は、エイリアスされる完全な画素値plにおおよそ等しくなる。このため、xijの非対角成分は、ゼロとなる。また、xijの対角成分xiiは、テスト画像の画素tijにおける対角成分tiiに等しいと仮定する。すなわち、行列xjkが対角行列であって、複数の列各々において、行列xjkにおける対角成分が行列tikの対角成分に等しい場合、(式29)は、(式27)の両辺において、行列xjkの逆行列を右側から掛けることにより導出される。
【0173】
なお、εijは計測された部分的な漏れである一方で、δklがメインの高速化された未補正の複数の画像の部分的な漏れであるという区別があるが、εijは、(式23)からのδklに対して高い類似性があるという意味を有する。事前に知られていない量、またはメインの高速化された複数の画像から決定することができない量であるとして、δklは考えられてもよく、εijは、(おそらく、いくつかの実施形態においてシングルスライスのフルFOVの複数のテスト画像を用いて収集された)同じ量のいくつかの計測または推定として考えられてもよい。
【0174】
すなわち、(式23)は、以下の式に書き換えられる。
【数29】
ここで、漏れは小さいため、上式における理想的な画素値p
jからテスト画像の画素t
ijの対角成分t
iiへの信号ロスまたは部分的信号ロスは、とても小さくなる。被検体へのスキャンにおいて、理想的な画素値p
jは未知なため、理想的な画素値p
jの代わりに、上記説明および(式27)を参照して、テスト画像の画素t
ijの対角成分t
iiを用いると上式は、
【数30】
と示すことができる。上式の両辺において、右から画素t
iiの逆行列を掛けると、(式29)が得られる。
【0175】
新たな漏れ補正行列νは、部分的な漏れ行列εijの適切な逆行列(inverse)または疑似的逆行列(pseudoinverse)である。
【0176】
【0177】
(式30)は、一部の正則化に適応するために、所望や必要に応じて、修正することができる。
【0178】
このとき、(式24)からの、改善された又は「より良い」再構成行列b
ikは、
【数32】
または
【数33】
または
【数34】
のようになる。
【0179】
(式31)、(式32)、(式33)は、改善された(及び/又はより良い)再構成の、より明白且つより詳細なバージョンを、それぞれ連続して示している。いくつかの忠実度を潜在的に犠牲にするという代価でノイズゲインを減らすために(式31)乃至(式33)のうちのいずれでも正則化等を挿入することがさらに許容可能であって、かつ本開示の教示と一貫して、ノイズ相関インバース行列Ψ-1等を挿入することもさらに許容可能である。
【0180】
図14は、改善された及び/又はより良い再構成処理1400の例のフローチャートを示している。特定の実施形態例に従って実行される改善された及び/又はより良い再構成処理は、スライス間漏れを除去しない再構成と比較した場合、漏れアーチファクトが除去されるまたは少なくとも実質的に低減された、改善され且つ再構成された複数の画像を提供する。
【0181】
処理1400に入った後に、工程1402で、複数のスライス間漏れマップが取得される。特定の実施形態例において、複数のスライス間漏れマップは、実際に計測されたスライス間漏れを表す。複数のスライス間漏れマップは、メモリ46又は同種類の物のようなメモリから取得されてもよい。複数のスライス間漏れマップは、
図9に関連して説明された処理のように、処理によって生成されてもよい。
図6は、いくつかの実施形態例に係る、SENSE再構成に用いられる複数のスライス間漏れマップの生成を概略的に示している。
図6におけるSENSE再構成処理に対する入力は、シングルスライスで励起された画像である。シングルスライスで励起された画像は、シングルスライスのみを励起することに応答して取得された画像である。
図6に示されている通り、そして
図6に関連してより詳細が述べられている通り、シングルスライスで励起された画像のSENSE再構成は、シングルスライスで励起された画像の多重分離(demultiplexing)を提供し、例を挙げれば、1つ以上の他の複数のスライスに対する複数の漏れ画像と、励起されたスライスにおける信号を有するパススルー画像とを生み出す。複数の漏れ画像は、他の複数のスライスやエイリアスされた位置から、シングルスライスで励起された画像への信号寄与に対応する。複数のスライス間漏れマップの例は、スライス漏れマップ行列1202の形式で整えられて、
図12に示されている。
【0182】
いくつかの実施形態例によれば、上記(式17)乃至(式23)は、複数のスライス間漏れマップを生成するために用いられる複数のシングルスライス励起画像を、解析的に特徴付ける。
【0183】
工程1404で、部分的漏れ行列は、取得された複数の漏れマップから生成される。上記で説明された通り、部分的漏れ行列は、R×R行列(Rは、エイリアス数であって、総加速率である)であってもよい。部分的漏れ行列は、複数のスライス間漏れマップに基づいていてもよい。例えば、部分的漏れマップにおける各要素は、漏れマップにおける特定の画素での漏れ計測に直接的に対応してもよい。例えば、実施形態によれば、部分的漏れ行列は、スライスjの画像における各画素位置iに対して形成されてもよい。画素位置iに対する部分的漏れ行列における各値は、複数のスライス間漏れマップから決定されるように、収集における各スライスjから画素位置iで受信された個別の信号寄与に対応してもよい。部分的漏れ行列の複数の要素は、個別の画像ピクセルの大きさ及び位相の両者を定量化する複数の複素係数を有していてもよい。
【0184】
実施形態によれば、部分的漏れ行列は、更なる処理を受ける前に、任意で規格化されてもよい。例えば、MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、逆行列データの算出に先立って、行列の対角線上における複数の値各々が1に等しい又は1に近くなるように、行列の値を行列の列方向に沿って規格化する。規格化は、行列の各列に対して、対応する対角要素によって各値を除算することで、実行されてもよい。例えば、(式29)に示された行列の列において、列における各要素は、対角要素t22によって除算される。理想的には、これは、対角項が厳密に1であるという結果になるだろうが、しかしこれは必ずしもそうとはならない場合もある。当該段落において説明されたように規格化された行列における1とは異なる値は、対応する画素がシェーディングのいくらかの推定量により影響を及ぼされているということを表す場合がある。
【0185】
いくつかの他の実施形態例において、規格化することは、他の技術によって実行されてもよい。例えば、ある実施形態は、対角項によって単に除算する代わりに、部分的漏れ行列の列における全ての画像ピクセル値の2乗和の平方根によって除算されてもよい。すなわち、MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、逆行列データの算出に先立って、行列の複数の列各々における全ての値の2乗和の平方根で列における複数の値各々を列ごとに除算することにより、行列の値を行列の列方向に沿って規格化する。
【0186】
工程1406で、部分的漏れ行列の逆行列が生成される。メモリに格納された部分的漏れ行列を逆数にすることは、行列代数演算に従って、実行されてもよい。インバージョン例は、ある実施形態例によれば、(式30)で示される。
【0187】
工程1408で、画像再構成は、二つの逆行列の合成によって実行される。ある実施形態例によれば、再構成は、(式31)乃至(式33)のうちのいずれかに従って、実行されてもよい。当該工程において実行された再構成は、漏れ補正無しで再構成された複数の画像と比較した場合、スライス間漏れが原因のアーチファクトが完全に除去されている又は実質的に低減されている、改善された複数の再構成画像という結果になる。例えば、MRIデータプロセッサ42は、生成機能により、複数スライスに係るデータに逆行列データを乗算することにより、複数スライスに係るデータからスライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去する。
【0188】
工程1410で、補正されたMR画像が出力される。補正されたMR画像において、漏れ補正のない再構成された複数の画像と比較して、スライス間漏れエラーが完全に除去されているか、またはそのようなエラーのために少なくとも実質的に低減されたアーチファクトを有していてもよい。係る出力は、操作者又は臨床医による即時の観察のために、一つ以上のディスプレイへと送信されてもよい。いくつかの実施形態において、複数の出力画像は、デジタルストレージメモリに格納されてもよい。
【0189】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置によれば、複数のRFコイルを用いて、一つのスライス位置を励起するシングルスライス撮像を行い、前記複数のRFコイルを用いて、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起する同時励起撮像を行い、前記複数のRFコイルの感度マップと、前記シングルスライス撮像により得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成し、前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出し、前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、前記同時励起撮像により得られた前記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去することができる。なお、上記処理手順は、磁気共鳴イメージング方法として実現可能である。
【0190】
本実施形態の応用例として、本磁気共鳴イメージング装置の技術的思想は、MRIデータプロセッサ42により実行される各種処理に関するプログラム(磁気共鳴画像再構成プログラム)をワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。例えば、磁気共鳴イメージングプログラムは、コンピュータに、前記複数のRFコイルの感度マップと、一つのスライス位置を励起することにより得られた一つのスライスに係るk空間データとに基づいて、SENSE(Sensitivity Encoding)再構成を行うことにより、前記一つのスライスに係るデータ及び前記一つのスライス以外のスライスに係るデータをそれぞれ生成し、前記一つのスライスに係るデータと前記一つのスライス以外のスライスに係るデータとに基づいて、スライス間の漏れまたは面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を算出し、前記感度マップと、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方と、複数スライスに対応する複数の位置を同時励起することにより得られた記複数スライスに係るk空間データとに基づいて前記SENSE再構成を行うことにより、前記算出されたスライス間の漏れまたは前記算出された面内の残留エイリアシングのうち少なくとも一方を除去すること、を実現させる。コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどの各種可搬型記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0191】
以上で説明した実施形態および応用例などによれば、複数のRFコイルを用いて複数スライスについて撮像を行う場合の画質を向上させることができる。
【0192】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0193】
10…ガントリ
11…患者寝台
12…静磁場磁石
14…傾斜磁場コイル
16…全身RFコイル
18…撮像ボリューム
19…アレイRFコイル
20…MRIシステム
22… MRIシステム制御部
24… ディスプレイ
26… キーボード
28…プリンタ
30…MRIシーケンス制御部
32…Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ
34…RF送信器
36…送受信スイッチ(T/R)
38…マップ/MRIデータ取得プログラムコード構造
40…RF受信器
42… MRIデータプロセッサ
44…MRIプログラムコード構造
46…メモリ
50… プログラム/データ記憶装置
202、502、702、802…SENSE再構成モジュール
204、504…マルチコイル受信感度マップ
206…入力SMS画像
208a、208b、208c、308a、308b、308c…出力シングルスライス画像
310a、310b、310c、310d…信号漏れ
402…従来のマルチスライスEPI画像
404…3倍のSMSEPI画像
506…入力シングルスライス画像
508a、508b、508c、608a、608b、608c、808…出力画像
704…シングルスライスマルチコイル受信感度マップ
706…入力FOV画像
708a…残留エイリアシングを有する別の「スライス」画像
708b…通過画像
710…面内SENSE画像
804…マルチスライスマルチコイル受信感度マップ
810a、810b、810c、810d、810e、810f…加速率Rが6となるSMS3倍と面内SENSE2倍とにおける全てのスライスに対して処理された入力画像
1102…シングルスライス2DスピンエコーEPI画像
1104…SMS3倍画像
1106…再構成されたSMSスライス
1202…スライス漏れマップ1202
1204…再構成されたSMS画像
1302…入力MRI画像
1304…スライス漏れ計測技術
1306…部分的漏れ行列、漏れマップ
1308…再構成処理
1310…補正されたMRI画像