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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/72 20060101AFI20230731BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20230731BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20230731BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230731BHJP
【FI】
A47C7/72
B60N2/64
A47C7/40
B60N2/90
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019142587
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021023475
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】古田 将也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔子
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】横地 信夫
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224127(JP,A)
【文献】特開平10-043001(JP,A)
【文献】特開2014-227013(JP,A)
【文献】特開2012-254721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、
前記シートバックの背面に設けられ、後席乗員の足元を照らす照明装置と、を備え、
前記照明装置は、
前記シートバックの骨格をなすシートバックフレームに取り付けられるベースカバーと、
該ベースカバーに取り付けられるパネルと、
前記ベースカバーに取り付けられる照明部品と、を備え、
前記ベースカバーは、取り付けられた前記照明部品の下方に、前記照明部品から照射される光が通過する光照射孔としての第一開口部が形成されており、
前記パネルには、前記ベースカバーに前記照明部品が取り付けられた状態で、前記第一開口部に対向する位置に、光照射孔としての第二開口部が形成されており、
前記第二開口部は、前記第一開口部に対して所定距離後方にずれた位置に配置されることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記シートバックフレームはパッドで包まれており、前記シートバックフレーム及び前記パッドは表皮で覆われていて、
前記第一開口部及び前記第二開口部は、前記第一開口部及び第二開口部より下方で、前記シートバックの背面を覆う前記表皮より後方の位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第一開口部及び前記第二開口部は、前記シートバックの中央に配置される受圧部材より上方の位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第二開口部の周囲において上下方向に延びるよう形成された壁部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第二開口部の周囲に形成された前記壁部において、前側に位置する前側壁部の上端の位置は、後側に位置する後側壁部の上端の位置よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第二開口部の周囲に形成された前記壁部において、後ろ側に位置する後側壁部と、前記ベースカバーの下面との間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記隙間の下方から後方にかけて前記隙間を覆うように前記パネルの下面及び後面が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第二開口部の周囲の後方から、下方に向けて後方に傾斜する斜面部を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記照明部品はLEDと導光体とを有し、前記照明部品は前記ベースカバーに取り付けられたとき、前記LEDの下方に前記導光体が配置され、前記導光体は少なくとも一部が前記第一開口部と高さ方向で重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物に搭載される乗物用シートに係り、特にシートバックの背面に照明装置を備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用シートのシートバックの背面に照明装置を設けて、後席乗員の正面から直接乗員に向かって照らす自動車の車内灯が開示されている。特許文献2には、シートクッションの下面に照明装置を設け、後席乗員の足元を照らす車両用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実全昭56-161834号公報
【文献】実全昭57-134946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシートバックの照明装置では、後席乗員に向かって照らしていることから、後席乗員の足元の範囲は照らされていなかった。特許文献2に記載の車両用シートでは、照明装置から足元までの距離が短く、照射距離をとることができないため、狭い範囲でしか足元を照らすことができなかった。一方、例えば天井に照明装置を設置した場合、後席乗員の足元全体を照らすようになり、部分的に照射することが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、後席乗員の足元の照射範囲を容易に設定可能な照明装置を備える乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、シートバックと、前記シートバックの背面に設けられ、後席乗員の足元を照らす照明装置と、を備え、前記照明装置は、前記シートバックの骨格をなすシートバックフレームに取り付けられるベースカバーと、該ベースカバーに取り付けられるパネルと、前記ベースカバーに取り付けられる照明部品と、を備え、前記ベースカバーは、取り付けられた前記照明部品の下方に、前記照明部品から照射される光が通過する光照射孔としての第一開口部が形成されており、前記パネルには、前記ベースカバーに前記照明部品が取り付けられた状態で、前記第一開口部に対向する位置に、光照射孔としての第二開口部が形成されており、前記第二開口部は、前記第一開口部に対して所定距離後方にずれた位置に配置されることにより、解決される。
【0007】
第二開口部が第一開口部に対して所定距離ずらして配置されることにより、簡易な構造で容易に照射範囲を設定することができる。
【0008】
上記の乗物用シートにおいて、前記シートバックフレームはパッドで包まれており、前記シートバックフレーム及び前記パッドは表皮で覆われていて、前記第一開口部及び前記第二開口部は、前記第一開口部及び第二開口部より下方で、前記シートバックの背面を覆う前記表皮より後方の位置に配置されると好適である。
第二開口部が表皮より後方の位置に配置されることで、表皮への光の照射が抑制されることがおこらず、後席乗員の足元を照らすことができるようになる。
【0009】
上記の乗物用シートにおいて、前記第一開口部及び前記第二開口部は、前記シートバックの中央に配置される受圧部材より上方の位置に配置されると好適である。
第一開口部及び第二開口部が受圧部材よりも上方の位置に配置されることで、受圧部材が後方に移動した場合でも照明装置への影響が起きにくい。
【0010】
上記の乗物用シートにおいて、前記第二開口部の周囲において上下方向に延びるよう形成された壁部を備えると好適である。
第二開口部の周囲に壁部を備えることで、第一開口部と第二開口部との間からの光漏れを抑制するとともに、第一開口部と第二開口部との間の距離の設定を容易にすることができる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記第二開口部の周囲に形成された前記壁部において、前側に位置する前側壁部の上端の位置は、後側に位置する後側壁部の上端の位置よりも高いと好適である。
前側に位置する壁と後ろ側に位置する壁との高さを変えることで、第一開口部と壁部の上面全周とが接触することによる異音の発生を抑制することができる。
【0012】
上記の乗物用シートにおいて、前記第二開口部の周囲に形成された前記壁部において、後ろ側に位置する後側壁部と、前記ベースカバーの下面との間には隙間が形成されていると好適である。
隙間を形成することで、ベースカバーの第一開口部とパネルと第二開口部の後側の壁との接触による異音の発生を抑制することができる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記隙間の下方から後方にかけて前記隙間を覆うように前記パネルの下面及び後面が形成されていると好適である。
隙間からの光をパネルの下面部と後面部とで覆うことにより、光漏れを抑制することができる。
【0014】
上記の乗物用シートにおいて、前記第二開口部の周囲の後方から、下方に向けて後方に傾斜する斜面部を備えると好適である。
斜面部を備えることにより、後方に放射する光を下方へ向かうようにすることができ、間接照明として後席乗員の足元を照らすことができる。
【0015】
上記の乗物用シートにおいて、前記照明部品はLEDと導光体とを有し、前記照明部品は前記ベースカバーに取り付けられたとき、前記LEDの下方に前記導光体が配置され、前記導光体は少なくとも一部が前記第一開口部と高さ方向で重なる位置に配置されると好適である。
導光体の一部が第一開口部と高さ方向で重なることで、高さ方向での小型化が可能になるとともに、光漏れの量も抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
第二開口部が第一開口部に対して所定距離ずらして配置されることにより、簡易な構造で容易に照射範囲を設定することができる。
第二開口部が、第一開口部及び第二開口部より下方でシートバックの背面を覆う表皮より後方の位置に配置されることで、表皮への光の照射が抑制されることがおこらず、後席乗員の足元を照らすことができるようになる。
第一開口部及び第二開口部が受圧部材よりも上方の位置に配置されることで、受圧部材が後方に移動した場合でも照明装置への影響が起きにくい。
第二開口部の周囲に壁部を備えることで、第一開口部と第二開口部との間からの光漏れを抑制するとともに、第一開口部と第二開口部との間の距離の設定を容易にすることができる。
前側に位置する壁と後ろ側に位置する壁との高さを変えることで、第一開口部と壁部の上面全周とが接触することによる異音の発生を抑制することができる。
隙間を形成することで、ベースカバーの第一開口部とパネルと第二開口部の後側の壁との接触による異音の発生を抑制することができる。
隙間からの光をパネルの下面部と後面部とで覆うことにより、光漏れを抑制することができる。
斜面部を備えることにより、後方に放射する光を下方へ向かうようにすることができ、間接照明として後席乗員の足元を照らすことができる。
また、導光体の一部が第一開口部と高さ方向で重なることで、高さ方向での小型化が可能になるとともに、光漏れの量も抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る乗物用シートを後方から見た概略斜視図である。
図2】本実施形態に係るシートフレームを示す概略斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図であり、ベースカバーの左右方向ワイヤ固定部を示す図である。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図であり、ベースカバーの上下方向ワイヤ固定部を示す図である。
図5図2のV-V線に沿った断面図であり、左右方向規制部を示す図である。
図6図2のVI-VI線に沿った断面図であり、下方爪部を示す図である。
図7】ベースカバーにパネルを取り付けた状態を示す背面図である。
図8】パネルを取り外した状態のベースカバーを示す背面図である。
図9図7のIX-IX線に沿った断面図であり、パネルをベースカバーに取り付けた状態を示す図である。
図10図7のX-X線に沿った断面図であり、上方表皮固定部を示す部分断面図である。
図11図8のXI-XI線に沿った断面図であり、表皮のトリムコードを固定する下側爪部と溝部を示す図である。
図12図8のXII-XII線に沿った断面図であり、表皮のトリムコードを固定する側方表皮係止部を示す図である。
図13図8のXIII-XIII線に沿った断面図であり、表皮のトリムコードを固定する溝部を示す図である。
図14】シートバックフレームに取り付けられたベースカバーを示す斜視図である。
図15図14の部分Aを拡大して示す部分拡大斜視図であり、照明部品を取り外した状態を示す図である。
図16図14のXVI-XVI線に沿った断面図であり、光照射孔の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図16を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートについて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示し、理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
【0019】
なお、以下の説明中、図1に記載の矢印で示すように、前後方向とは、乗物用シートに着座した乗員から見たときの前後方向を意味し、左右方向とは、乗物用シートのシートバックの幅方向(横方向)を意味し、高さ方向とは、シートバックの高さ方向、厳密にはシートバックを正面から見たときのシートバックの上下方向を意味する。また、乗員を基準にして外側内側を定める。すなわち、シート幅方向の中心に近づく方向を内方向、遠ざかる方向を外方向とする。左右一対に設けられる構成については、共通の番号を付し、左右を特定するときは構成の名称に左(L)又は右(R)の文字を付する。また、以下に説明する各部材の形状や配置位置については、特に断る場合を除き、乗物用シートが着座可能状態となったときの形状や配置位置となっている。
【0020】
先ず、図1図3を参照しながら、本発明の第一実施形態であるシートフレーム101を含む乗物用シート100の全体構成について概説する。図1は乗物用シート100を後方から見た外観を示す斜視図であり、図2は、乗物用シート100の骨格をなすシートフレーム101の外観を示す斜視図である。
【0021】
乗物用シート100は、乗員の背中を支持するシートバックS1、乗員の臀部を支持するシートクッションS2、及び、乗員の頭部を支持するヘッドレストS3からなり、各部は、その骨格としてのフレームにパッドS1a、S2a、S3aを載置し表皮S1b、S2b、S3bで被覆することで構成されている。
【0022】
ここで、図2に示すように、シートフレーム101のうち、シートバックS1の骨格を成すシートバックフレーム1は、その下端部にてシートクッションS2の骨格を成すシートクッションフレーム2の後端部に連結されている。また、シートバックフレーム1とシートクッションフレーム2との間には不図示のリクライニング機構が介在している。これにより、シートバックフレーム1がシートクッションフレーム2に対してリクライニングシャフト71周りに回動可能となり、シートクッションS2に対するシートバックS1の後傾角度(背凭れ角度)を調整自在となっている。なお、リクライニングシャフト71は、シートバックフレーム1の側方下端部、及び、シートクッションフレーム2の側方後端部を貫通して幅方向外側に向けて幾分突出している。
【0023】
また、シートバックフレーム1の上端中央部には、一対の筒型状のヘッドレストガイドステイ6が取り付けられている。そして、このヘッドレストガイドステイ6に、ヘッドレストS3の下端から延出したヘッドレストピラーS3cが挿入されることでヘッドレストS3がシートバックS1に取り付けられている。
【0024】
次に、シートバックフレーム1の構成例について図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係るシートバックフレーム1の外観を示す斜視図であり、同図には矢印にて幅方向及び高さ方向を示している。
【0025】
シートバックフレーム1は、図3に示すように、概ね金属部材により構成されたほぼ矩形状の枠体であり、幅方向両端部に備える一対のサイドフレーム3と、高さ方向上端部に備えるアッパーパイプ4と、下端部に備える下部フレーム架設部5とを主たる構成部品として備えている。なお、本実施形態において、サイドフレーム3、アッパーパイプ4、及び下部フレーム架設部5は、互いに分離した状態から組み合わせられて一体化することでシートバックフレーム1を構成しているが、当初より一体化して成形されたもの、すなわち樹脂材料により一体成形されたものであってもよい。
【0026】
一対のサイドフレーム3は、シートバックS1の幅を規定するために左右方向に離間し、双方ともに上下方向に延在するように配設されている。一対のサイドフレーム3は、乗物用シート100の姿勢が着座可能な姿勢にある状態では、各サイドフレーム3の上端部が下端部よりも幾分後方に位置している。また、各サイドフレーム3の下端部は、前後方向において上端部よりも幅広に形成されている。
【0027】
アッパーパイプ4は、一対のサイドフレーム3の上端部同士を連結するものであり、正面視で逆さU字状に形成されていて、一対の縦フレーム4aと縦フレーム4aを連結する横フレーム4bと備える。本実施形態に係るアッパーパイプ4は、鋼製のパイプを折り曲げて構成され、その両端部が各サイドフレーム3の上端部に取り付けられている。また、アッパーパイプ4の中央部には、前述した一対のヘッドレストガイドステイ6(ピラー支持部とも呼ぶ場合がある)が互いに間隔を空けて取り付けられている。
【0028】
図2に示すようにアッパーパイプ4には、一対の縦フレーム4aの間に架設されるワイヤ20が取り付けられている。ワイヤ20は、後述するベースカバー10をシートバックフレーム1に固定するために設けられる。ワイヤ20は、中央に正面視でU字状に屈曲した屈曲部21と、屈曲部21の上方端部21aと縦フレーム4aとを連結する一対の連結部22とを有する。屈曲部21は、下方に延びる一対の第一部分23と、一対の第一部分23をその下方端部において左右方向に延びて連結する第二部分24とを有する。
【0029】
シートバックフレーム1は、図2に示すようにSバネからなる受圧部材70を備えている。受圧部材70は、乗員の腰部を後方から支持する。ワイヤ20及びベースカバー10は、受圧部材70より上に位置するように設けられている。
【0030】
また、本実施形態の乗物用シート100は、図1に示すようにシートバックS1の背面上側において照明装置50が設けられている。この照明装置50は、後席乗員の足元を照らすためのものである。この照明装置50をシートSの背面に固定するためのベースカバー10とパネル30とが設けられている。
【0031】
ベースカバー10は、図2に示すように、カバー本体15と、カバー本体15をワイヤ20に取り付けるために一対の左右方向ワイヤ固定部11,11と、一対の上下方向ワイヤ固定部12,12と、一対の下方爪部14,14とを備える。
カバー本体15は、シートバックの背面の一部を覆うよう形成されており、照明装置50として機能するために、内部に照明部品51が取り付けられている。
【0032】
図2及び図3に示すように、一対の左右方向ワイヤ固定部11,11は、カバー本体15から前方に延び、それぞれの先端11a,11aが、ワイヤ20の連結部22,22を保持する。
【0033】
図2及び図4に示すように、一対の上下方向ワイヤ固定部12,12は、カバー本体15から前方に延び、それぞれの先端12a,12aが、ワイヤ20の第一部分23,23を保持する。
また、図5に示すように、上下方向ワイヤ固定部12は、屈曲部21の内方向で第一部分23,23に隣接する位置に設けられベースカバー10の左右方向の移動を規制する一対の左右方向規制部13,13を有する。左右方向規制部13,13が、ワイヤ20の第一部分23,23に当接することにより左右方向の移動を規制している。
【0034】
図2及び図6に示すように、一対の下方爪部14,14がカバー本体15から前方に延び、先端が屈曲部21の下方に位置する曲げ部分23a,23aの付近において第二部分24に係止している。
【0035】
ベースカバー10を縦フレーム4aに取り付ける際、カバー本体15から、前方に延びる下方爪部14,14を、ワイヤ20の曲げ部分23a、23a付近で、第二部分24に引掛ける。これにより、左右方向の仮位置決めが可能となる。第二部分24に引掛けた状態でベースカバー10を回転させ、上下方向ワイヤ固定部12,12の先端12a,12aをワイヤ20の第一部分23,23に取り付け、左右方向ワイヤ固定部11,11を、ワイヤ20の連結部22,22に取り付ける。上下方向ワイヤ固定部12,12の、左右方向規制部13,13をワイヤ20に当接させることによりベースカバー10の左右方向が規制されるようになる。
【0036】
図2に示すように、左右方向ワイヤ固定部11,11は、上下方向ワイヤ固定部12,12及び下方爪部14,14より縦フレーム4aの近くに配置されている。このように構成することにより取付剛性が向上する。
【0037】
また、図2に示すように、一対の下方爪部14,14は、ヘッドレストガイドステイ6それぞれの中心位置よりも外側に配置される。これによりヘッドレストピラーS3cが、ヘッドレストガイドステイ6に挿入され下方に延びた場合であっても、下方爪部14,14と干渉することを回避することができる。
【0038】
また、本実施形態では、図2に示すように左右方向規制部13,13は、高さ方向で、上下方向ワイヤ固定部12,12と下方爪部14,14との間に配置されている。このように配置することで、ベースカバー10を取り付ける際、下方爪部14,14により左右方向の仮位置決めを行い、下方爪部14,14を中心に回転させることで、左右方向規制部13,13がワイヤ20に当接してベースカバー10の左右方向の位置が修正され、上下方向ワイヤ固定部12,12によりベースカバー10を固定することができるようになる。
【0039】
左右方向ワイヤ固定部11の先端11aにおいてワイヤ20の連結部22を保持する爪部11b,11bは、上下方向ワイヤ固定部12の先端12aにおいて第一部分23を保持する爪部12b,12bよりも撓みにくく形成されている。
また、左右方向ワイヤ固定部11の先端11aにおいてワイヤ20の連結部22を保持する爪部11b,11bは、上下方向ワイヤ固定部12の先端12aにおいて第一部分23を保持する爪部12b,12bよりも挿入荷重が大きくなるよう設定されている。
このように左右方向ワイヤ固定部11,11を設けることで、挿入荷重が大きく設定されている部位(爪部11b,11b)が、縦フレーム4aの近くに配置されるため、ベースカバー10の安定した取り付けを行うことができる。
【0040】
次に、ベースカバー10にパネル30を取り付ける構造について説明する。パネル30は、ベースカバー10の背面に取り付けられる板状の部材である。
パネル30をベースカバー10に取り付けるため複数のパネル固定部19が設けられている。本実施形態のベースカバー10には、図3及び図8に示すように、パネル固定部19は、パネル30の上側に設けられる複数のクリップ191(上部固定部)が取り付けられ、パネル30の下側に複数の下方爪部192(下部固定部)が設けられている。パネル30の上側に設けられるクリップ191は金属製のSKクリップを用いている。しかしながら、クリップ191はSKクリップに限らず樹脂製のクリップであってもよい。
【0041】
クリップ191はカバー本体15から後方に延びていて、パネル30の背面に設けられた孔部37にクリップ191の先端が挿入される(図3参照)。ベースカバー10にはクリップ191が4か所設けられていて、パネル30の孔部37は、クリップ191の位置に合わせて4か所形成されている。クリップ191は、上述のように金属製のSKクリップであり、ベースカバー10に、SKクリップであるクリップ191を取り付けるための台座が設けられている。
【0042】
ベースカバー10には、パネル30の下方端部に沿って溝部164が形成されていて、パネル30の下方端部には、下方端部に沿って形成されるとともに前方向に延びる挿入片32が設けられている。パネル30の下端部の形状に対応して、ベースカバー10の溝部164が形成されている。下方爪部192には、断面がU字状に形成された下方爪部192Uと、断面がJ字状に形成された下方爪部192Jとがある。図11に示すように、下方爪部192Jの下面がパネル30の下方端部に接触する。挿入片32が表皮S1bとともに溝部164に挿入されると、下方爪部192Jにより挿入片32が押圧され挿入片32が固定される。
【0043】
図8に示すように、複数のクリップ191のそれぞれの左右方向の位置は、上下方向において、複数の下方爪部192J、192Uの左右方向の位置と重ならないよう、左右方向にずらして配置されている。左右方向にずらして配置することで、上下方向のスペース効率が向上する。
【0044】
また、パネル30の下端部を溝部内の断面J字形状の下方爪部192J及びU字形状の下方爪部192Uにより固定するため、上下方向に規制しつつ爪固定するため、強固な固定をすることができる。
また、パネル30の背面を複数のクリップ191で固定し、さらに、パネル30の下側端部(挿入片32)を、ベースカバー10の溝部164及び下方爪部192J、192Uにより固定することで、安定した取り付けを行うことができる。
【0045】
<<表皮取付構造>>
次に、ベースカバー10に表皮S1bを取り付ける構造について説明する。
シートフレーム101は前述のように、シートフレーム101を包むパッドS1aと、シートフレーム101及びパッドS1aを覆う表皮S1bとを備えている。本実施形態の乗物用シート100では、ベースカバー10の表面に、パネル30が取り付けられた部分を除いて、ベースカバー10を包むパッドS1aと、パッドS1aを覆う表皮S1bが取り付けられる。そして、ベースカバー10にパネル30が取り付けられる部分の周囲に、表皮S1bを係止する表皮係止部16が設けられている。表皮S1bの背面側端部のトリムコード40は、表皮係止部16に係止されていて、パネル30は、パネル30の端部が表皮S1bのトリムコード40と前後方向で重なるように、ベースカバー10に固定される。
【0046】
具体的に説明すると、図9及び図10に示すように、ベースカバー10には、表皮係止部16として、ベースカバー10の上側に配置され、表皮を係止する上側表皮係止部161を有する。上側表皮係止部161に対向する対向面に、ベースカバー10の中央に配置される第一ガイド部17(図8参照)と、第一ガイド部17の右側及び左側に配置される第二ガイド部18とが設けられる。第一ガイド部は壁面を用いて表皮S1bのトリムコード40を上側表皮係止部161にガイドし、第二ガイド部18はリブを用いて表皮S1bのトリムコード40を上側表皮係止部161にガイドする。第一ガイド部17及び第二ガイド部18を用いて、上側表皮係止部161の下方にトリムコード40をガイドすることにより、表皮S1bが上側表皮係止部161に係止されるようになる。
【0047】
また、ベースカバー10は、表皮係止部16として、ベースカバー10の左側及び右側に配置され、表皮を係止する側方表皮係止部162を備える。側方表皮係止部162は、側方表皮係止部162の先端部162aがベースカバー10の中央に向くよう配置されている(図8及び図12参照)。
トリムコード40には、側方表皮係止部162の先端部162aに対応する位置に貫通孔41が形成されており、貫通孔41に先端部162aを挿入することによりトリムコード40を側方表皮係止部162に係止することができる。
【0048】
ベースカバー10は、パネル30の下側端部の挿入片32を固定する下方爪部192は、側方表皮係止部162と、高さ方向で左右に重なる位置に設けられている。これにより、側方表皮係止部162の剛性が向上する。
また、パネル30の挿入片32とトリムコード40とを重ね、ベースカバー10の溝部164に差し込みパネル30を固定する。挿入片32とトリムコード40とを重ねて差し込むことによりトリムコード40は溝部164から外れ難くなり強固に表皮S1bを固定することができる。表皮S1bの固定に別途部材を用いることがないため、表皮S1bの外れ防止構造を小型化することができる。
【0049】
<<照明装置>>
本実施形態の乗物用シート100は、図1に示すようにシートバックS1の背面に照明装置50が設けられている。以下では、図1及び図14図16を用いて、照明装置50について説明する。照明装置50は、図1に示すように後席乗員の足元を照らす照明装置である。照明装置50は、図14に示すように、シートバックフレーム1と、シートバックフレーム1に取り付けられるベースカバー10と、ベースカバー10に取り付けられるパネル30(図16参照)と、ベースカバー10に取り付けられる照明部品51とを備える。
【0050】
図14に示すように、ベースカバー10には、照明部品51を載置する平板状の支持部64が設けられ、照明部品51は支持部64から立設するLED保持部63によって保持されている。図15に示すように照明部品51は上方から支持部64に取り付けられる。ベースカバー10の上方より照明部品51を取り付けることで、横方向や前後方向からの取り付ける場合と比較して、照明部品51のレンズに傷がつくのを抑制することができる。
【0051】
支持部64には、照明部品51から延びるハーネス60を保持するハーネス保持部61と、ハーネス保持部61が保持したハーネスを固定するハーネス固定部62とを有する。ハーネス保持部61は、LED保持部63よりも上方に設けられていて、それにより余長分のハーネスを保持することができ、組付作業性が向上する。
【0052】
ベースカバー10には、取り付けられた照明部品51の下方に、照明部品51から照射される光が通過する光照射孔52が形成されている。光照射孔52は、ベースカバー10に形成される第一開口部53と、パネル30に形成された第二開口部54とから構成されている。第二開口部54は、パネル30がベースカバー10に取り付けられた状態で、第一開口部53に対向する位置に形成されている。そして、図16に示すように、第二開口部54は、第一開口部53に対して、所定距離後方にずれた位置に配置されている。
【0053】
図1に示すように、シートバックフレーム1はパッドS1aで包まれており、シートバックフレーム1とパッドS1aは表皮S1bで覆われている。
第一開口部53及び第二開口部54は、図16に示すように、第一開口部53及び第二開口部54より下方で、ベースカバー10の背面を覆う表皮S1bより後方の位置に配置されている。表皮S1bの後方に照明装置の照明を設定することで、例えば表皮S1bに光の照射が抑制されることがおこらず、後席乗員の足元を適切に照らすことができる。
【0054】
また、第一開口部53及び第二開口部54は、シートバックS1の中央に配置された受圧部材70(図2参照)より上方の位置に配置されている。照明装置50の光照射孔52が受圧部材70より上方の位置に配置されることで、例えば乗員が前方荷重を受け、受圧部材が後方に移動した場合であっても、照明装置への影響が起きにくい。
【0055】
また、図16に示すように、第二開口部54の周囲において、上下方向に延びるよう形成された壁部55がパネル30に設けられている。壁部55を設けることにより、第一開口部53と第二開口部54との間からの光漏れを抑制しつつ、第一開口部53と第二開口部54との間の距離の設定を容易にしている。
【0056】
壁部55は、第二開口部54の前側に位置する前側壁部551と、後側に位置する後側壁部552とから構成されている。そして、図16に示すように、前側壁部551の上端551aの位置は、後側壁部552の上端552aの位置よりも高くなるよう壁部55が形成されている。前側壁部551と後側壁部552の高さを変えることにより、第一開口部53と壁部55の上面全周が接触することによる異音の発生を抑制している。
【0057】
また、第二開口部54の後側壁部552とベースカバー10の下面(第一開口部53の周囲の下面)との間に所定距離L3の隙間56が設けられている。隙間56があることにより、ベースカバー10の第一開口部53の周囲と、パネル30の第二開口部54の後側壁部552との接触による異音の発生を抑制することができる。
【0058】
また、隙間56の下方から後方にかけて、隙間56を覆うようにパネル30の下面部30a及び後面部30bが形成されている。隙間56を覆うようにパネル30の下面部30a及び後面部30bを形成することで、隙間から漏れた光が下面部30a及び後面部30bにより遮断されるため、光漏れを防ぐことができる。
【0059】
また、第二開口部54の周囲の後方から、下方に向けて後方に傾斜する斜面部57が設けられている。言い換えれば、パネル30の下面部30aを下方に向けて傾斜させている。斜面部57を設けることにより、第二開口部54から放射される光のうち、後方へ向かう光を下方へ向かうようにして間接照明になるよう設定することができる。
【0060】
照明部品51は、照明部品51の内部にLED58(Light Emitting Diode)と、LED58から照射される光を導光するレンズ59(導光体)を備えており、図16に示すように、照明部品51がベースカバー10に取り付けられたとき、LED58の下方にレンズ59が位置するように配置されている。そして、レンズ59の少なくとも一部が、第一開口部53と高さ方向で重なる位置に配置されている。
【0061】
レンズ59を第一開口部53と高さ方向で重なる位置に配置することで、高さ方向での小型化を可能とするとともに、照明部品51と第一開口部53との隙間を無くすことで、光漏れの量を抑制することが可能となる。
【0062】
第一開口部53の直径L1は、第二開口部54の直径L2よりも大きくなるよう設定されている。直径L1を直径L2より大きくすることで、第一開口部53からの光の照射範囲を第二開口部54で狭める設定を簡易的に行うことが可能になる。
【0063】
以上、図を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。上記実施形態では、具体例として車両に搭載される乗物用シートについて説明したが、乗物用シートは車両に限定されることなく、本願の乗物用シートは電車、バス等のシートとして設けることも可能であり、また、飛行機、船のシートにも利用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
100 乗物用シート
101 シートフレーム
S1 シートバック
S2 シートクッション
S3 ヘッドレスト
S1a、S2a、S3a パッド
S1b、S2b、S3b 表皮
S3c ヘッドレストピラー
1 シートバックフレーム
2 シートクッションフレーム
3 サイドフレーム
4 アッパーパイプ
4a 縦フレーム
4b 横フレーム
5 下部フレーム架設部
6 ヘッドレストガイドステイ(ピラー支持部)
10 ベースカバー
11 左右方向ワイヤ固定部
11a 先端
11b 爪部
12 上下方向ワイヤ固定部
12a 先端
12b 爪部
13 左右方向規制部
14 下方爪部
15 カバー本体
16 表皮係止部
161 上側表皮係止部
162 側方表皮係止部
162a 先端部
163 下側表皮係止部
164 溝部
17 第一ガイド部
18 第二ガイド部
19 パネル固定部
191 クリップ(上部固定部)
192J、192U 下方爪部(下部固定部)
20 ワイヤ
21 屈曲部
21a 上方端部
22 連結部
23 第一部分
23a 曲げ部分
24 第二部分
30 パネル
30a 下面部
30b 後面部
32 挿入片(下側端部)
37 孔部
40 トリムコード(表皮固定部)
41 貫通孔
50 照明装置
51 照明部品
52 光照射孔
53 第一開口部
54 第二開口部
55 壁部
551 前側壁部
551a 上端
552 後側壁部
552a 上端
56 隙間
57 斜面部
58 LED
59 レンズ(導光体)
60 ハーネス
61 ハーネス保持部
62 ハーネス固定部
63 LED保持部
64 支持部
70 受圧部材
71 リクライニングシャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16