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特許7321826デスケーリング装置及びデスケーリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】デスケーリング装置及びデスケーリング方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 43/04 20060101AFI20230731BHJP
   B21B 45/04 20060101ALI20230731BHJP
   B21F 1/00 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
B21C43/04
B21B45/04 A
B21F1/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019150439
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021030252
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】上本 敏史
(72)【発明者】
【氏名】溝口 茂
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-299517(JP,A)
【文献】特開昭62-028025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/00 - 43/04;99/00
B21B 45/00 - 45/08
B21F 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が巻かれてなるコイル体から前記線材を螺旋状に繰り出すペイオフスタンドと、
前記ペイオフスタンドから繰り出された前記線材を基準線に沿って走行させるデスケーリング部と、
を備え、
前記デスケーリング部は、
前記基準線を含む第1平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第1ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第1平面上で蛇行させる第1ユニットと、
前記第1ユニットの下流側に設置されており、前記基準線を含み且つ前記第1平面と交差する第2平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第2ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第2平面上で蛇行させる第2ユニットと、
を有し、
前記複数の第1ローラは、最も上流側に位置する第1ローラから順に、前記基準線に対して一方側及び他方側に交互に配置され、
前記複数の第2ローラは、最も上流側に位置する第2ローラから順に、前記基準線に対して一方側及び他方側に交互に配置され、
前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラは、前記第1平面上における前記線材の蛇行に対して無効化可能であり、
又は、
前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラは、前記第2平面上における前記線材の蛇行に対して無効化可能であり、
最も上流側に位置する第1ローラと最も下流側に配置される第1ローラの間の複数の第1ローラは、前記第1平面と平行な回転盤によって支持されており、前記回転盤は、前記間の複数の第1ローラそれぞれの中心を結ぶ線分と前記基準線との交点を中心として回転可能であり、
最も上流側に位置する第2ローラと最も下流側に配置される第2ローラの間の複数の第2ローラは、前記第2平面と平行な回転盤によって支持されており、前記回転盤は、前記間の複数の第2ローラそれぞれの中心を結ぶ線分と前記基準線との交点を中心として回転可能である、
デスケーリング装置。
【請求項2】
請求項1記載のデスケーリング装置であって、
前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラは、隣りに位置する第1ローラと、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラとの共通の接線に沿って配置された前記線材に接する小径ローラに交換可能であり、
又は、
前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラは、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラと、隣りに位置する第2ローラとの共通の接線に沿って配置された前記線材に接する小径ローラに交換可能であるデスケーリング装置。
【請求項3】
請求項1記載のデスケーリング装置であって、
前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラは着脱可能であり、
又は、
前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラは着脱可能であるデスケーリング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載のデスケーリング装置であって、
前記第1平面と前記第2平面との交差角度は90°であるデスケーリング装置。
【請求項5】
線材が巻かれてなるコイル体から前記線材を螺旋状に繰り出し、
前記コイル体から繰り出された前記線材を基準線に沿って走行させ、
前記基準線を含む第1平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第1ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第1平面上で蛇行させ、次に、前記基準線を含み且つ前記第1平面と交差する第2平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第2ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第2平面上で蛇行させ、
前記複数の第1ローラは、最も上流側に位置する第1ローラから順に、前記基準線に対して一方側及び他方側に交互に配置され、
前記複数の第2ローラは、最も上流側に位置する第2ローラから順に、前記基準線に対して一方側及び他方側に交互に配置され、
前記線材の巻き方向に応じて、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラを前記第1平面上における前記線材の蛇行に対して無効化し、又は、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラを前記第2平面上における前記線材の蛇行に対して無効化し、
最も上流側に位置する第1ローラと最も下流側に配置される第1ローラの間の複数の第1ローラは、前記第1平面と平行な回転盤によって支持されており、前記回転盤は、前記間の複数の第1ローラそれぞれの中心を結ぶ線分と前記基準線との交点を中心として回転可能であり、
最も上流側に位置する第2ローラと最も下流側に配置される第2ローラの間の複数の第2ローラは、前記第2平面と平行な回転盤によって支持されており、前記回転盤は、前記間の複数の第2ローラそれぞれの中心を結ぶ線分と前記基準線との交点を中心として回転可能である、
デスケーリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材のデスケーリング装置及びデスケーリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材を屈曲させ、屈曲に伴う線材表面の引張及び圧縮によって線材表面のスケールに亀裂を生じさせ、それによりスケールを線材から剥離するデスケーリング装置が知られている。特許文献1に記載されたデスケーリング装置では、複数のローラが線材の送り通路に沿ってジグザグ状に配置されており、線材は、ローラ間を蛇行し、それにより屈曲される。このデスケーリング装置は、複数のローラがジグザグ状に配置されてなる基板を二つ備え、一方の基板は他方の基板に対して90°傾いて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-38025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線材は、コイル状に巻かれており、コイル体から螺旋状に繰り出されてローラ間に導入される。ここで、線材の製造元等によって、コイル体における線材の巻き方向が異なる場合があり、線材の巻き方向に応じて、ローラ間を走行する線材にもつれが発生する場合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、線材の巻き方向にかかわらず線材のもつれを抑制できるデスケーリング装置及びデスケーリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のデスケーリング装置は、線材が巻かれてなるコイル体から前記線材を螺旋状に繰り出すペイオフスタンドと、前記ペイオフスタンドから繰り出された前記線材を基準線に沿って走行させるデスケーリング部と、を備え、前記デスケーリング部は、前記基準線を含む第1平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第1ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第1平面上で蛇行させる第1ユニットと、前記第1ユニットの下流側に設置されており、前記基準線を含み且つ前記第1平面と交差する第2平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第2ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第2平面上で蛇行させる第2ユニットと、を有し、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラは、前記第1平面上における前記線材の蛇行に対して無効化可能であり、又は、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラは、前記第2平面上における前記線材の蛇行に対して無効化可能である。
【0007】
また、本発明の一態様のデスケーリング方法は、線材が巻かれてなるコイル体から前記線材を螺旋状に繰り出し、前記コイル体から繰り出された前記線材を基準線に沿って走行させ、前記基準線を含む第1平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第1ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第1平面上で蛇行させ、次に、前記基準線を含み且つ前記第1平面と交差する第2平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第2ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第2平面上で蛇行させ、前記線材の巻き方向に応じて、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラを前記第1平面上における前記線材の蛇行に対して無効化し、又は、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラを前記第2平面上における前記線材の蛇行に対して無効化する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、線材の巻き方向にかかわらず線材のもつれを抑制できるデスケーリング装置及びデスケーリング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態を説明するための、デスケーリング装置の一例の模式図である。
図2】デスケーリング部の平面図である。
図3】第1ユニットにおけるローラの配置例を示す模式図である。
図4】第2ユニットにおけるローラの配置例を示す模式図である。
図5】第1ユニットと第2ユニットとの位置関係を示す模式図である。
図6】ペイオフスタンドにおいて螺旋状に繰り出された線材に生じる捩れの一例を示す模式図である。
図7】デスケーリング部において線材に付加される捩れの一例を示す模式図である。
図8】第2ユニットの最上流側のローラを無効化する場合の一例を示す模式図である。
図9】第2ユニットの最上流側のローラを無効化する場合の他の例を示す模式図である。
図10】第2ユニットの最上流側のローラを無効化する場合に、デスケーリング部において線材に付加される捩れの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、デスケーリング装置の一例を示す。
【0011】
デスケーリング装置1は、線材Wを屈曲させ、屈曲に伴う線材表面の引張及び圧縮によって線材Wの表面に生じているスケールに亀裂を生じさせ、それによりスケールを線材Wから剥離するものである。線材Wはコイル状に巻かれており、デスケーリング装置1は、線材Wが巻かれてなるコイル体Cから線材Wを繰り出すペイオフスタンド2と、ペイオフスタンド2から繰り出された線材Wを屈曲させるデスケーリング部3とを備える。デスケーリング部3を通過することによってスケールが剥離された線材Wは、図1に示す例では、引抜装置4によって所望の外径に引き抜かれ、そして、巻取り装置5によって再びコイル状に巻かれる。
【0012】
ペイオフスタンド2は、支持ロッド10と、可動アーム11とを有する。支持ロッド10は略水平にコイル体Cの内側に挿通されており、コイル体Cは支持ロッド10に吊り下げられている。可動アーム11もまた、コイル体Cの内側に挿通されているが、先端部を下に向けて傾斜している。可動アーム11は揺動自在であり、フロアに置かれた可動アーム11の先端部は、可動アーム11の揺動を伴って上下する。線材Wは、巻取り装置5によって引っ張られることにより、コイル体Cから螺旋状に繰り出される。螺旋状に繰り出された線材Wは、可動アーム11の先端部によって一時的に押えられ、それにより直線状に延ばされる。そして、直線状に延ばされた線材Wがデスケーリング部3に導入される。
【0013】
図2から図5は、デスケーリング部3を示す。
【0014】
デスケーリング部3は、導入された線材Wを基準線Xに沿って走行させる。デスケーリング部3は、第1ユニット20と、第2ユニット30とを有し、線材Wの走行方向に見て、第1ユニット20は上流側に配置され、第2ユニット30は下流側に配置されている。
【0015】
図3に示すように、第1ユニット20は、基準線Xを含む第1平面P1上に配置された4つのローラ21~24を有する。ローラ21~24は、第1平面P1上で基準線Xに沿って並んでいる。そして、最も上流側に位置するローラ21から順に、ローラ21~24は、基準線Xに対して一方側及び他方側に交互に配置され、換言すればジグザグ状に配置されている。なお、第1ユニット20に設けられるローラは、4つに限定されない。
【0016】
最も上流側に位置するローラ21、及び最も下流側に位置するローラ24それぞれの第1平面P1上における位置は固定であり、ローラ21及びローラ24それぞれの転動面と基準線Xとの間には、線材Wの外径以上の間隔があけられている。一方、ローラ22及びローラ23は、第1平面P1と平行な回転盤25によって支持されており、回転盤25は、ローラ22及びローラ23それぞれの中心を結ぶ線分と基準線Xとの交点O1を中心として回転可能である。回転盤25がシリンダ装置26によって回転されると、ローラ22及びローラ23それぞれの中心が基準線Xに接近し又は離間するように、ローラ22及びローラ23は第1平面P1上を一体に変位する。
【0017】
ローラ22及びローラ23それぞれの中心が基準線Xに接近するようにローラ22及びローラ23が変位すると、ローラ21~24が線材Wに押し当てられる。線材Wは、ローラ21~24間を蛇行し、それにより屈曲される。線材Wの屈曲に伴い、線材表面に引張及び圧縮が作用し、線材表面のスケールが線材Wから剥離される。なお、ローラ22及びローラ23の変位量が調節されることにより、第1ユニット20における線材Wの屈曲角度が調節される。
【0018】
図4に示すように、第2ユニット30は、基準線Xを含む第2平面P2上に配置された4つのローラ31~34を有する。ローラ31~34は、第2平面P2上で基準線Xに沿って並んでいる。そして、最も上流側に位置するローラ31から順に、ローラ31~34は、基準線Xに対して一方側及び他方側に交互に配置され、換言すればジグザグ状に配置されている。なお、第2ユニット30に設けられるローラは、4つに限定されない。
【0019】
最も上流側に位置するローラ31、及び最も下流側に位置するローラ34それぞれの第2平面P2上における位置は固定であり、ローラ31及びローラ34それぞれの転動面と基準線Xとの間には、線材Wの外径以上の間隔があけられている。一方、ローラ32及びローラ33は、第2平面P2と平行な回転盤35によって支持されており、回転盤35は、ローラ22及びローラ23それぞれの中心を結ぶ線分と基準線Xとの交点O2を中心として回転可能である。回転盤35がシリンダ装置36によって回転されると、ローラ32及びローラ33それぞれの中心が基準線Xに接近し又は離間するように、ローラ32及びローラ33は第2平面P2上を一体に変位する。
【0020】
ローラ32及びローラ33それぞれの中心が基準線Xに接近するようにローラ32及びローラ33が変位すると、ローラ31~34が線材Wに押し当てられる。これにより、線材Wは、ローラ31~34間を蛇行し、それにより屈曲される。線材Wの屈曲に伴い、線材表面に引張及び圧縮が作用し、線材表面のスケールが線材Wから剥離される。なお、ローラ32及びローラ33の変位量が調節されることにより、第2ユニット30における線材Wの屈曲角度が調節される。
【0021】
そして、図5に示すように、第1ユニット20のローラ21~24が配置される第1平面P1と、第2ユニット30のローラ31~34が配置される第2平面P2とは互いに交差している。第1平面P1と第2平面P2とが交差していることにより、線材表面に作用する圧縮及び引張が線材Wの周方向に分散され、線材表面のスケールが満遍なく剥離される。好ましくは、第1平面P1と第2平面P2との交差角度は90°である。
【0022】
図6は、ペイオフスタンド2において螺旋状に繰り出された線材Wに生じる捩れの一例を示す。
【0023】
デスケーリング部3からペイオフスタンド2を見て、図6に示すコイル体Cでは、線材Wが時計回りに巻かれている。この場合に、ペイオフスタンド2において螺旋状に繰り出された線材Wが直線状に延ばされる際に、線材Wは時計回りに捩れた状態で延ばされる。逆に、線材Wが反時計回りに巻かれている場合には、線材Wは反時計回りに捩れた状態で延ばされる。
【0024】
図7は、デスケーリング部3によって線材Wに付加される捩れの一例を示す。
【0025】
線材Wは、第1ユニット20の最も下流側に位置するローラ24に沿って第1平面P1上で屈曲され、また、第2ユニット30の最も上流側に位置するローラ31に沿って第2平面P2上で屈曲される。第1平面P1と第2平面P2とが交差しているため、ローラ24とローラ31との間に位置する線材Wに捩りが付加される。ローラ31が、第1平面P1上に配置され、且つ基準線Xに対してローラ24とは反対側に配置されているものと仮定して、線材Wが略Z字状(クランク状)に屈曲される場合を基準にすると、図7に示す例において、ローラ24とローラ31との間に位置する線材Wには、反時計回りの捩れccが付加される。
【0026】
ここで、図7に示す例では、ペイオフスタンド2において螺旋状に繰り出された線材Wに時計回りの捩れcが生じている。なお、捩れを可視化する目的で、線材Wの表面に一本の線Lを付している。ローラ24とローラ31との間で線材Wに付加される反時計回りの捩れccは、線材Wに予め生じている時計回りの捩れcを解消するように作用する。したがって、線材Wのもつれは抑制される。逆に、ペイオフスタンド2において螺旋状に繰り出された線材Wに反時計回りの捩れccが生じている場合に、ローラ24とローラ31との間で線材Wに付加される反時計回りの捩れccは、線材Wに予め生じている反時計回りの捩れccを助長するように作用する。したがって、線材Wのもつれが発生し得る。この場合に、デスケーリング装置1では、ローラ24及びローラ31の一方のローラを無効化することによって線材Wのもつれを抑制する。
【0027】
図8及び図9は、第2ユニット30の最も上流側に位置するローラ31が無効化された場合を示す。
【0028】
第2ユニット30の最も上流側に位置するローラ31が無効化されるとは、ローラ31が第2平面P2上における線材Wの蛇行に関係しないことを意味する。図8に示す例では、ローラ31は、取り外されることによって無効化されている。ローラ31が取り外されることにより、線材Wは、第1ユニット20の最も下流側のローラ24と、第2ユニット30においてローラ31の隣に位置するローラ32との共通の接線Tに沿って配置される。また、図9に示すように、ローラ31は、小径ローラ31sに交換されることによって無効化されてもよい。小径ローラ31sは、ローラ24とローラ32との共通の接線Tに沿って配置された線材Wに接する。ローラ24とローラ32との間で小径ローラ31sが線材Wに接することにより、線材Wのあばれを抑制できる。
【0029】
図10は、第2ユニット30の最も上流側に位置するローラ31が無効化されたデスケーリング部3によって線材Wに付加される捩れの一例を示す。
【0030】
線材Wは、第1ユニット20のローラ24に沿って第1平面P1上で屈曲される、また、第2ユニット30のローラ32に沿って第2平面P2上で屈曲される。第1平面P1と第2平面P2とが交差しているため、ローラ24とローラ32との間に位置する線材Wに捩りが付加される。そして、ローラ32は、基準線Xに対し、無効化されたローラ31とは反対側に配置されている。したがって、ローラ31が有効である場合に、ローラ24とローラ31との間に位置する線材Wに反時計回りの捩れccが付加されるのに対し、ローラ31が無効である場合には、ローラ24とローラ32との間に位置する線材Wに時計回りの捩れcが付加される。
【0031】
線材Wに予め生じている捩れが反時計回りの捩れccである場合に、ローラ31を無効化し、ローラ24とローラ32との間に位置する線材Wに時計回りの捩れcを付加するようにすれば、線材Wに予め生じている反時計回りの捩れccを解消することができる。これにより、線材Wのもつれを抑制できる。
【0032】
なお、第2ユニット30の最も上流側に位置するローラ31を無効化することに替えて、第1ユニット20の最も下流側に位置するローラ24を無効化するようにしてもよい。この場合にも、線材Wに付加する捩れを逆転させ、線材Wのもつれを抑制できる。
【0033】
以上、説明したとおり、本明細書に開示されたデスケーリング装置は、線材が巻かれてなるコイル体から前記線材を螺旋状に繰り出すペイオフスタンドと、前記ペイオフスタンドから繰り出された前記線材を基準線に沿って走行させるデスケーリング部と、を備え、前記デスケーリング部は、前記基準線を含む第1平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第1ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第1平面上で蛇行させる第1ユニットと、前記第1ユニットの下流側に設置されており、前記基準線を含み且つ前記第1平面と交差する第2平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第2ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第2平面上で蛇行させる第2ユニットと、を有し、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラは、前記第1平面上における前記線材の蛇行に対して無効化可能であり、又は、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラは、前記第2平面上における前記線材の蛇行に対して無効化可能である。
【0034】
また、本明細書に開示されたデスケーリング装置は、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラが、隣りに位置する第1ローラと、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラとの共通の接線に沿って配置された前記線材に接する小径ローラに交換可能であり、又は、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラは、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラと、隣りに位置する第2ローラとの共通の接線に沿って配置された前記線材に接する小径ローラに交換可能である。
【0035】
また、本明細書に開示されたデスケーリング装置は、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラが着脱可能であり、又は、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラは着脱可能である。
【0036】
また、本明細書に開示されたデスケーリング装置は、前記第1平面と前記第2平面との交差角度は90°である。
【0037】
また、本明細書に開示されたデスケーリング方法は、線材が巻かれてなるコイル体から前記線材を螺旋状に繰り出し、前記コイル体から繰り出された前記線材を基準線に沿って走行させ、前記基準線を含む第1平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第1ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第1平面上で蛇行させ、次に、前記基準線を含み且つ前記第1平面と交差する第2平面上で前記基準線に沿って並ぶ複数の第2ローラを前記線材に押し当てることによって前記線材を前記第2平面上で蛇行させ、前記線材の巻き方向に応じて、前記第1ローラのうち最も下流側に配置される第1ローラを前記第1平面上における前記線材の蛇行に対して無効化し、又は、前記第2ローラのうち最も上流側に配置される第2ローラを前記第2平面上における前記線材の蛇行に対して無効化する。
【符号の説明】
【0038】
1 デスケーリング装置
2 ペイオフスタンド
3 デスケーリング部
4 引抜装置
5 巻取装置
10 支持ロッド
11 可動アーム
20 第1ユニット
21~24 ローラ
25 回転盤
26 シリンダ装置
30 第2ユニット
31~34 ローラ
31s 小径ローラ
35 回転盤
36 シリンダ装置
C コイル体
P1 第1平面
P2 第2平面
T 接線
W 線材
X 基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10