(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】歪センサの固定装置とそれを用いたトルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/26 20060101AFI20230731BHJP
G01L 3/14 20060101ALI20230731BHJP
G01L 5/1627 20200101ALN20230731BHJP
【FI】
G01L1/26 Z
G01L3/14 Z
G01L5/1627
(21)【出願番号】P 2019186025
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 一広
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 貴敏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嵩幸
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-67206(JP,U)
【文献】実開昭55-102409(JP,U)
【文献】特開2017-172983(JP,A)
【文献】特開2003-14563(JP,A)
【文献】米国特許第4064744(US,A)
【文献】特表2009-540301(JP,A)
【文献】特開昭61-118621(JP,A)
【文献】米国特許第7318358(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0047857(US,A1)
【文献】米国特許第6658942(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/26,3/00-5/28,
G01G 3/00-3/18,
F16B 2/00-2/26,5/00-5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の辺と、前記第1の辺に平行な第2の辺と、前記第1の辺と前記第2の辺との間に設けられ、開口部を含む面とを具備し、前記面が前記第1の辺と前記第2の辺とを結ぶ線から離れた位置に設けられ、前記第1の辺が第1構造体に線接触又は点接触され、前記第2の辺が前記第1構造体の上に設けられた歪センサを構成する起歪体の端部に線接触される固定部材
を具備する歪センサの固定装置。
【請求項2】
前記固定部材は、前記第1の辺と前記第2の辺との間に設けられ、前記開口部を含む扁平な面と、
前記第1の辺に沿って設けられた第1の突起と、
前記第2の辺に沿って設けられ、前記第1の突起と同一方向に突出された第2の突起と、
を具備することを特徴とする請求項1記載の歪センサの固定装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記第1の辺と前記第2の辺との間に設けられ、前記開口部を含む湾曲された面を有することを特徴とする請求項1記載の歪センサの固定装置。
【請求項4】
前記固定部材は、全体が湾曲されていることを特徴とする請求項1記載の歪センサの固定装置。
【請求項5】
前記固定部材は、前記第1の辺及び前記第2の辺を結ぶ第3の辺及び第4の辺を有し、前記面は、前記第1の辺乃至前記第4の辺を結ぶ線から離れていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の歪センサの固定装置。
【請求項6】
前記固定部材の前記第1の辺は扁平であり、前記第1構造体に設けられた突起に線接触又は点接触されることを特徴とする請求項1記載の歪センサの固定装置。
【請求項7】
前記固定部材の前記第2の辺の長さは、前記起歪体の幅より長いことを特徴とする請求項1記載の歪センサの固定装置。
【請求項8】
前記固定部材の前記第2の辺の長さは、前記起歪体の幅と等しいことを特徴とする請求項1記載の歪センサの固定装置。
【請求項9】
第1構造体と、
第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられ、歪センサを構成する起歪体と、
前記第1構造体に設けられ、前記起歪体の第1端部を前記第1構造体に固定する第1固定装置と、
前記第2構造体に設けられ、前記起歪体の第2端部を前記第2構造体に固定する第2固定装置と、
を具備し、
前記第1固定装置及び前記第2固定装置のそれぞれは、
第1の辺と、前記第1の辺に平行な第2の辺と、前記第1の辺と前記第2の辺との間に設けられ、開口部を含む面とを具備し、前記面が前記第1の辺と前記第2の辺とを結ぶ線から離れた位置に設けられ、前記第1の辺が第1構造体に線接触又は点接触され、前記第2の辺が前記第1構造体の上に設けられた歪センサを構成する起歪体の端部に線接触される固定部材
を具備することを特徴とするトルクセンサ。
【請求項10】
前記固定部材は、前記第1の辺と前記第2の辺との間に設けられ、前記開口部を含む扁平な面と、
前記第1の辺に沿って設けられた第1の突起と、
前記第2の辺に沿って設けられ、前記第1の突起と同一方向に突出された第2の突起と、
を具備することを特徴とする請求項9記載のトルクセンサ。
【請求項11】
前記固定部材は、前記第1の辺と前記第2の辺との間に設けられ、前記開口部を含む湾曲された面を有することを特徴とする請求項9記載のトルクセンサ。
【請求項12】
前記固定部材は、全体が湾曲されていることを特徴とする請求項9記載のトルクセンサ。
【請求項13】
前記固定部材は、前記第1の辺及び前記第2の辺を結ぶ第3の辺及び第4の辺を有し、前記面は、前記第1の辺乃至前記第4の辺を結ぶ線から離れていることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載のトルクセンサ。
【請求項14】
前記固定部材の前記第1の辺は扁平であり、前記第1構造体に設けられた突起に線接触又は点接触されることを特徴とする請求項9記載のトルクセンサ。
【請求項15】
前記固定部材の前記第2の辺の長さは、前記起歪体の幅より長いことを特徴とする請求項9記載のトルクセンサ。
【請求項16】
前記固定部材の前記第2の辺の長さは、前記起歪体の幅と等しいことを特徴とする請求項9記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばロボットアームの関節に設けられる歪センサの固定装置とそれを用いたトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクセンサは、トルクが印加される第1構造体と、トルクが出力される第2構造体と、第1構造体と第2構造体とを連結する梁としての複数の起歪部とを有し、これら起歪部にセンサ素子としての複数の歪ゲージが配置されている。これら歪ゲージによりブリッジ回路が構成されている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-096735号公報
【文献】特開2015-049209号公報
【文献】特開2017-172983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、歪センサは、金属製の起歪体上にセンサ素子としての複数の歪ゲージが設けられている。この歪センサをトルクセンサに固定する方法として、例えば溶接を用いる方法、接着剤を用いる方法、複数のねじを用いる方法がある。
【0005】
しかし、溶接により歪センサを構造体に固定する場合、溶接による起歪体の急激な温度上昇を伴う。このため、起歪体及び歪ゲージの組成や形状などが変化し、歪センサの性能に影響を与える可能性がある。
【0006】
また、接着剤を用いて歪センサを構造体に固定する場合、起歪体と構造体との間に低剛性の接着剤が介在する。このため、構造体の変形が直接起歪体に伝達されず、歪センサの感度を低下させる可能性がある。
【0007】
一方、ねじを用いて歪センサを構造体に固定する場合、起歪体上に押え部材を設け、押え部材をねじにより構造体に締結することにより、押え部材によって、起歪体が構造体に固定される。このような構成の場合、押え部材と起歪体は面接触するため、押え部材は、起歪体に対して高い押圧力を保持する必要がある。高い押圧力を保持するため、押え部材の大型化及び高剛性化、ねじの大型化及びねじの数の増加が必要である。したがって、押え部材やねじが設けられるトルクセンサの小型、薄型化が困難となる。
【0008】
本実施形態は、センサ性能の低下及び装置構成の大型化を防止して、歪センサを構造体に確実に固定することが可能な歪センサの固定装置とそれを用いたトルクセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る歪センサの固定装置は、第1の辺と、前記第1の辺に平行な第2の辺と、前記第1の辺と前記第2の辺との間に設けられ、開口部を含む面とを具備し、前記面が前記第1の辺と前記第2の辺とを結ぶ線から離れた位置に設けられ、前記第1の辺が第1構造体に線接触又は点接触され、前記第2の辺が前記第1構造体の上に設けられた歪センサを構成する起歪体の端部に線接触される固定部材を具備する。
【0010】
実施形態のトルクセンサは、第1構造体と、第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられ、歪センサを構成する起歪体と、前記第1構造体に設けられ、前記起歪体の第1端部を前記第1構造体に固定する第1固定装置と、前記第2構造体に設けられ、前記起歪体の第2端部を前記第2構造体に固定する第2固定装置と、を具備し、前記第1固定装置及び前記第2固定装置のそれぞれは、第1の辺と、前記第1の辺に平行な第2の辺と、前記第1の辺と前記第2の辺との間に設けられ、開口部を含む面とを具備し、前記面が前記第1の辺と前記第2の辺とを結ぶ線から離れた位置に設けられ、前記第1の辺が第1構造体に線接触又は点接触され、前記第2の辺が前記第1構造体の上に設けられた歪センサを構成する起歪体の端部に線接触される固定部材を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態が適用されるトルクセンサを示す斜視図。
【
図3】
図2に示す歪センサの取り付け部を取り出し、拡大して示す斜視図。
【
図4】
図2の一部を取り出し、拡大して示す平面図。
【
図6】
図3に示す固定部材としての固定プレートを拡大して示す斜視図。
【
図10】固定プレートと起歪体の幅の一例を示す平面図。
【
図11】固定プレートと起歪体の幅の他の例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一符号を付している。
【0013】
図1、
図2は、本実施形態が適用されるトルクセンサ10の一例を示している。トルクセンサ10の構成は、これに限定されるものでなく、様々な構成のトルクセンサに適用することが可能である。また、トルクセンサに限らず、歪ゲージを用いた力覚センサなどに本実施形態を適用することも可能である。
【0014】
図1において、トルクセンサ10は、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、複数の防水用キャップ14、ケース15、ブッシュ16、ケーブル17を具備している。
【0015】
第1構造体11と、第2構造体12は、環状に形成され、第2構造体12の径は、第1構造体11の径より小さい。第2構造体12は、第1構造体11と同心状に配置され、第1構造体11と第2構造体12は、放射状に配置された複数の梁部としての第3構造体13により連結されている。第3構造体13の数は、例えば8個であり、8個の第3構造体13が等間隔に配置されている。第3構造体13の数は、8個に限定されるものではない。
【0016】
第1構造体11は、例えば被計測体に連結され、第2構造体12は、図示せぬ別の構造体に接続され、複数の第3構造体13は、第1構造体11から第2構造体12にトルク(
図2に示すモーメント(Mz))を伝達する。逆に、第2構造体12を被計測体に連結し、第1構造体11を図示せぬ別の構造体に接続し、第2構造体12から第1構造体11に複数の第3構造体13を介してトルクを伝達してもよい。
【0017】
尚、力覚センサの場合、第1構造体11、第2構造体12、第3構造体13は、三次元に変形し、
図2に示す直交する3軸(x、y、z)に関して、力(Fx、Fy、Fz)とモーメント(Mx、My、Mz)を検出する。
【0018】
第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13は、金属、例えばステンレス鋼により構成されるが、印加されるトルクに対して機械的に十分な強度を得ることができれば、金属以外の材料を使用することも可能である。
【0019】
図2に示すように、各第3構造体13に対応して、後述する歪センサ20が配置され、各歪センサ20は、キャップ14により覆われている。
図2において、1つのキャップ14が外され、歪センサ20が露出されている。本実施形態において、歪センサ20の数は、第3構造体13の数と同一とされているが、これに限定されるものではなく、歪センサ20の数は、第3構造体13の数より少なくてもよい。
【0020】
各歪センサ20の構成は、同一である。歪センサ20は、第1構造体11と第2構造体12との間に設けられている。すなわち、後述するように、歪センサ20の一端部は、第1構造体11に接合され、歪センサ20の他端部は、第2構造体12に接合される。
【0021】
第2構造体12は、中空部12aを有しており、ケース15は、中空部12aの周囲の第2構造体12に取り付けられている。ケース15の内部には、歪センサ20から供給される電気信号を処理し、センサ信号としてのトルクの検出信号を生成する図示せぬ処理回路が設けられている。
【0022】
ケース15の一部分にケーブル17を保持するブッシュ16が設けられている。ケーブル17の図示せぬ一端は、ケース15内の処理回路に接続され、ケーブル17の他端は、例えば中空部12aに通される。ケーブル17は、処理回路に外部から電源を供給したり、処理回路により処理されたセンサ信号を外部に出力したりする。処理回路の構成は、本実施形態の本質ではないため、説明は省略する。
【0023】
図3、
図4、
図5は、歪センサ20、及び歪センサ20の取り付け構造を示している。
【0024】
図3は、歪センサ20の取り付け部の構成を示している。第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13には、一体的に凹部30が形成されている。凹部30の底部において、第1構造体11に対応する部分には、第1底部31aと、第1底部31aより低い第2底部32aが設けられている。第1底部31aと第2底部32aの深さの差は、
図5に示すように、起歪体21の厚みとほぼ等しくされている。
【0025】
凹部30の底部において、第2構造体12に対応する部分にも、第1底部31bと、第1底部31bより低い第2底部32bが設けられている。第1底部31bと第2底部32bの深さの差も、起歪体21の厚みとほぼ等しくされている。
【0026】
凹部30の底部において、第3構造体13に対応する部分には、第2底部32a、32bより低い第3底部33が設けられている。
【0027】
第1構造体11に対応する第2底部32aのほぼ中央部には、開口部34aが設けられ、この開口部34a内には、ねじ山が設けられている。第2構造体12に対応する第2底部32bのほぼ中央部にも、開口部34bが設けられ、この開口部34bの内部にはねじ山が設けられている。
【0028】
図4に示すように、歪センサ20は、凹部30内において、第1構造体11と第2構造体12の間に設けられる。歪センサ20は、例えば金属製の起歪体21と、起歪体21の一方の表面に配置されたセンサ素子としての複数の歪ゲージ22とを具備している。
【0029】
歪ゲージ22は、例えば薄膜抵抗素子であり、起歪体21の変形に伴い抵抗値が変化する。複数の歪ゲージ22は、図示せぬブリッジ回路を構成し、ブリッジ回路により抵抗値の変化が電気信号として検出される。複数の歪ゲージ22は、起歪体21の中央部に設けられたフレキシブル基板23(
図2、
図5に示す)の一端部に接続される。フレキシブル基板23の他端部は、ケース15内の処理回路に接続されている。ブリッジ回路から出力された電気信号は、フレキシブル基板23を介して処理回路に供給され、処理回路において、センサ信号としてのトルクの検出信号が生成される。
【0030】
起歪体21は、例えば矩形状であり、起歪体21の長さは、第3底部33の長さより長くされている。起歪体21は、凹部30内に配置された状態で、固定装置40aと固定装置40bとにより、第1構造体11及び第2構造体12に固定される。
【0031】
具体的には、
図5に示すように、起歪体21の第1端部は、第1構造体11の第2底部32a上に載置され、起歪体21の第2端部は、第2構造体12の第2底部32b上に載置される。すなわち、起歪体21は、第1構造体11の第2底部32aの開口部34aと、第2構造体12の第2底部32bの開口部34bとの間に配置される。
【0032】
起歪体21の第1端部は、凹部30の第1構造体11と対応する部分に配置された固定装置40aにより第1構造体11に固定され、起歪体21の第2端部は、凹部30の第2構造体12と対応する部分に配置された固定装置40bにより、第2構造体12に固定される。
【0033】
固定装置40aと固定装置40bは、同一構成であり、固定装置40aと固定装置40bは、それぞれ固定部材としての固定プレート41と、ねじ42を具備している。固定装置40aにおいて、固定プレート41は、開口部34aに螺合されるねじ42により、第1構造体11に取り付けられる。固定装置40bにおいて、固定プレート41は、開口部34bに螺合されるねじ42により、第2構造体12に取り付けられる。
【0034】
ねじ42は、固定プレート41の上側から挿入され、第1構造体11の開口部34a又は第2構造体12の開口部34bに螺合される。
【0035】
固定装置40aのねじ42を締め付けると、起歪体21の第1端部は、固定プレート41により、第1構造体11に固定され、固定装置40bのねじ42を締め付けると、起歪体21の第2端部は、固定プレート41により、第2構造体12に固定される。
【0036】
(固定プレートの構成)
図6は、本実施形態に係る固定プレート41の一形態を示している。
【0037】
固定プレート41は、例えば第1構造体11と同様の金属により構成されるが、これに限定されるものではなく、別の材料により構成してもよい。
【0038】
固定プレート41は、例えば直方体の本体41aを有している。固定プレート41と本体41aは、同一であり、固定プレート41を単に本体41aとも言う。本体41aの例えば底面41bの第1の辺に沿って第1突起41cが設けられ、第1の辺に平行する第2の辺沿って第2突起41dが設けられている。第1突起41c及び第2突起41dは、直線状であり、互いに底面41bから同一方向に突出されている。このため、底面41bは、第1突起41cと第2突起41dとを結ぶ線から離れた位置に配置される。さらに、本体41aは、表面41eから底面41bに貫通する開口部41fを有している。
【0039】
固定プレート41の幅W1は、凹部30の幅W2(
図4に示す)より狭く、固定プレート41の長さL1は、凹部30の第1構造体11に対応する部分の長さL2(
図4に示す)、又は凹部30の第2構造体12に対応する部分の長さL3より短い。ここで、L2とL3の関係は、例えばL2<L3であるが、これに限定されるものではない。すなわち、固定プレート41の長さは、ねじ42が締め付けられたとき、固定プレート41が第1底部31aと起歪体21の第1端部に接触でき、又は第1底部31bと起歪体21の第2端部に接触できる長さであればよい。
【0040】
具体的には、
図4、
図5に示すように、2つの固定プレート41が凹部30の第1構造体11と対応する部分、及び第2構造体12と対応する部分に挿入された状態において、各固定プレート41の第1突起41cが第1底部31a又は第1底部31bに線接触でき、第2突起41dが起歪体21の第1端部又は第2端部に線接触できればよい。
【0041】
このように、2つの固定プレート41が凹部30の中に挿入された状態において、ねじ42が各固定プレート41の開口部41fに挿入され、第1構造体11の開口部34a、又は第2構造体12の開口部34bに螺合されることにより、固定プレート41の第1突起41cが第1底部31a又は第1底部31bに線接触され、第2突起41dが起歪体21の第1端部又は第2端部に線接触される。
【0042】
尚、
図6に示すように、固定プレート41の第1突起41cは、直線状とされ、第1突起41cが第1底部31bに線接触した。しかし、これに限らず、例えば、
図6に破線で示すように、第1突起41cを点状の突起とし、第1突起41cが第1底部31bに点接触するようにしてもよい。点状の第1突起41cは、第1の辺のほぼ中央部に設けられるが、例えば第1の辺の両端に2つの第1突起を設けてもよい。或いは、第1の辺の中央部と、両端部に3つの第1突起を設けてもよい。
【0043】
また、固定プレート41は、第1突起41c及び第2突起41dを有している。しかし、固定プレート41は、第2突起41dのみを具備し、第1構造体11及び第2構造体12が第1突起41cに代わる突起を具備してもよい。
【0044】
具体的には、
図5の破線内に示すように、固定プレート41の第1の辺は、第1突起41cを具備せず、底面41bと同様に扁平とされる。代わりに、第1構造体11の第1底部31aに突起35aが設けられる。突起35aは、固定プレート41の第1の辺に線接触される。第2構造体12側も同様の構成とすることができる。
【0045】
突起35aの形状は、第2突起41dと平行な直線状であることが好ましい。しかし、
図6に示す例と同様に点状であってもよく、この場合、点状の突起35aの数は1個以上であってもよい。
【0046】
(実施形態の効果)
上記実施形態によれば、固定プレート41は、第1突起41cと第2突起41dを有し、ねじ42を締め付けることにより、第1突起41cが第1底部31a又は31bに線接触し、第2突起41dが起歪体21の第1端部又は第2端部に線接触する。このため、例えば起歪体と固定プレートが面接触する場合に比べて、起歪体21を第1構造体11、第2構造体12に対して高い圧力で固定することが可能である。したがって、第1構造体11及び第2構造体12に対する起歪体21の固定強度のばらつきを低下させることができ、センサ性能の低下を防止することが可能である。
【0047】
しかも、本実施形態の固定プレート41を用いた固定方法によれば、固定プレート41の第2突起41dを起歪体21に線接触させるだけで、起歪体21を第1構造体11と第2構造体12に固定させることができる。このため、例えば起歪体21を溶接により第1構造体11及び第2構造体12に固定する場合のように、起歪体21及び歪ゲージに対する熱的な変形を防止できる。また、起歪体21を接着剤で固定する場合のように、起歪体21と第1構造体11及び第2構造体12との間に低剛性部が介在しない。したがって、本実施形態の固定プレート41を用いた固定方法によれば、第1構造体及び第2構造体12に印加された力を起歪体21に確実に伝達することができ、センサの性能を向上させることが可能である。
【0048】
しかも、固定装置40a、40bは、1つの固定プレート41と1つのねじ42とにより構成されている。このため、部品点数が少なく、固定装置40a、40bの大型化、及びトルクセンサ10の大型化を防止することが可能である。
【0049】
さらに、固定装置40a、40bは、1つの固定プレート41と1つのねじ42とにより構成されているため、固定装置40a、40bの組み立てが容易である。
【0050】
また、ねじ42は、固定プレート41の上側から挿入され、第1構造体11の開口部34a又は第2構造体12の開口部34bに螺合される。このため、例えばねじ42を第1構造体11の開口部34a又は第2構造体12の開口部34b側から挿入し、固定プレート41に螺合させる場合に比べて、組み立て作業を容易化することが可能である。
【0051】
(固定プレートの変形例)
(第1変形例)
図7は、固定プレートの第1変形例を示している。
図6に示す実施形態の場合、本体41aは、扁平な底面41bに第1突起41cと第2突起41dを設けている。
【0052】
これに対して、第1変形例において、固定プレート51の例えば直方体形状の本体51aは、湾曲した底面51bを有し、底面51bの第1の辺が第1突起51cとして機能し、第1の辺に平行する第2の辺が第2突起51dとして機能する。このため、湾曲した底面51bは、第1突起51cと第2突起51dを結ぶ線から離れた位置に配置される。底面51bの中央部には、表面51eに貫通する開口部51fが設けられている。
【0053】
上記第1変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。しかも、第2変形例によれば、本体51aの底面51bが湾曲されているため、固定プレート51の弾性が向上する。したがって、固定プレート51により起歪体21を確実に固定することが可能である。
【0054】
さらに、第1変形例によれば、本体51aの底面を湾曲に加工するだけで、第1突起51cと第2突起51dを形成することができるため、製造を容易化することが可能である。
【0055】
(第2変形例)
図8は、固定プレートの第2変形例を示している。
図7に示す第1変形例において、本体51aは、湾曲された底面51bを有している。
【0056】
これに対して、第2変形例において、固定プレート61の例えば直方体形状の本体61aは、全体が湾曲されている。したがって、湾曲された底面61bを有し、底面61bの第1の辺が第1突起61cとして機能し、第1の辺に平行する第2の辺が第2突起61dとして機能する。このため、湾曲した底面61bは、第1突起61cと第2突起61dを結ぶ線から離れた位置に配置される。底面61bの中央部には、表面61eに貫通する開口部61fが設けられている。
【0057】
上記第2変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。しかも、第2変形例によれば、本体61aの全体が湾曲されているため、固定プレート61の弾性が向上する。したがって、固定プレート61により起歪体21をより確実に固定することが可能である。
【0058】
さらに、第2変形例によれば、本体61aを湾曲に加工するだけで、第1突起61cと第2突起61dを形成することができるため、製造を容易化することが可能である。
【0059】
(第3変形例)
図9は、固定プレートの第3変形例を示している。上記実施形態及び各変形例は、固定プレートの本体に2つの辺に突起が設けられている。
【0060】
これに対して、
図9に示す第3変形例において、固定プレート71の本体71aは、例えば直方体であり、本体71aの底面71bの4つの辺に沿って突起71cが設けられている。すなわち、突起71cは、底面71bの周囲に設けられている。
【0061】
上記第3変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。しかも、底面71bの周囲に突起71cを設けることにより、固定プレート71の剛性を高めることが可能であり、起歪体21をより確実に固定することが可能である。
【0062】
さらに、固定プレート71の本体71aの形状は、直方体であり、底面71bの形状は長方形である場合について説明したが、固定プレート71の本体71aの形状を立方体とし、底面71bの形状を正方形とすることも可能である。この場合、4つの辺のうち、どちらの平行する2つの辺を用いても、起歪体21を固定することができる。このため、凹部30aに対する固定プレート71の向きを考慮する必要がないため、組み立て作業を簡単化することができる。
【0063】
尚、第1変形例及び第2変形例においても、本体の周囲に突起を設けることが可能である。
【0064】
(起歪体の変形例)
図10に示すように、上記実施形態において、起歪体21の幅W3は、固定プレート41の幅W1より狭くされている。
【0065】
しかし、
図11に示すように、起歪体21の幅を固定プレート41の幅W1と等しくすることも可能である。
【0066】
このように、起歪体21の幅を固定プレート41の幅W1と等しくした場合、固定プレート41と起歪体21の位置合わせが容易であり、固定プレート41と起歪体21とを位置合わせするための治具の構造を簡単化することができ、作業効率を向上させることが可能である。
【0067】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…トルクセンサ、11…第1構造体、12…第2構造体、13…第3構造体、21…起歪体、40a、40b…固定装置、41、51、61、71…固定プレート、41a、51a、61a、71a…本体、41b、51b、61b、71b…底面、41c、51c、61c…第1突起、41d、51d、61d…第2突起、41f、51f、61f…開口部、42…ねじ。