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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】配管固定方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/02 20060101AFI20230731BHJP
   F16L 3/04 20060101ALI20230731BHJP
   F16B 35/06 20060101ALI20230731BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
F16B35/02
F16L3/04
F16B35/06 Z
F16B35/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019193336
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021067323
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】長峰 洋一
(72)【発明者】
【氏名】林田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】林 圭介
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-095050(JP,U)
【文献】特開昭61-017718(JP,A)
【文献】実開昭59-084113(JP,U)
【文献】実開平02-056986(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/02
F16L 3/04
F16B 35/06
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管固定部材の主面に対して、略円筒状の配管を固定する配管固定方法であって、
配管固定部材の主面に前記配管を載置し、
前記配管の外周面に沿うように湾曲した湾曲部、及び湾曲部の両端から略直線状に延びるとともに、前記配管固定部材の主面に設けた貫通孔に挿通される棒材である一対の脚部で略U字状に一体形成されたU字状部材における一対の前記脚部の間に前記配管が位置するように、前記配管の上方から前記U字状部材を覆い被せ、前記U字状部材の前記脚部を、所定の挿入方向に沿って前記配管固定部材の貫通孔に挿入して、前記U字状部材を前記配管に載置し、
前記挿入方向に沿って分割形成された保持部材の半割部材を一方の主面側から前記挿入方向に沿って前記脚部が挿入された前記貫通孔に挿入
前記配管固定部材における他方の主面から突出した前記半割部材で構成する前記保持部材の円筒部に、ナットを螺合
前記円筒部における前記一方の主面側の縁端から、前記円筒部の径方向外方へ向けて突設された前記保持部材の当接部を、前記貫通孔の開口縁に当接させ、
前記当接部と前記貫通孔の開口縁との当接によって、前記保持部材の前記円筒部に設けた径方向の隙間を狭くす
配管固定方法。
【請求項2】
前記当接部は、
前記貫通孔における開口縁の角部に当接するテーパー面を備えた
請求項1に記載の配管固定方法
【請求項3】
前記当接部は、
前記貫通孔の開口縁に設けたテーパー面に当接する角部、またはテーパー面を備えた
請求項1に記載の配管固定方法
【請求項4】
前記保持部材は、
前記円筒部の周方向に所定間隔を隔てた位置で、前記一方の主面側の縁端から前記所定の挿入方向に沿って延びるスリット開口を備えた
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の配管固定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば略直線状に延びる棒材を、被固定部材に着脱自在に固定するような棒材固定具、配管固定具、及び棒材固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被固定部材に着脱自在に固定される棒材としては、例えば、ガスや油などの流体が流動する配管の固定に用いられるUボルトの脚部がある(特許文献1参照)。
具体的には、特許文献1のように、Uボルトは、配管の外径に沿って湾曲した正面視略半円状の湾曲部と、湾曲部の両端から延びる一対の脚部とで正面視略逆U字状に形成されている。
【0003】
このUボルトは、被固定部材に固定する際、被固定部材とで配管を挟み込むように、一方の主面に配管が載置された被固定部材の貫通孔に、予め第1ナットを螺合させた一対の脚部を挿通させる。
【0004】
そして、Uボルトは、被固定部材の他方の主面から突出した脚部に第2ナットを螺合させ、被固定部材を挟持するように第1ナット、及び第2ナットを締め付けることで、被固定部材に固定される。
このように第1ナット及び第2ナットを用いて、Uボルトを被固定部材に固定することで、被固定部材に対するUボルトの位置決めと固定とを行うことができる。
【0005】
ところで、図13に示すように、比較的外径の小さい配管101を固定するUボルト102では、一対の脚部102aに螺合させた第1ナット103の間隔Wが、配管101の外径Dよりも小さくなることがある。この場合、Uボルト102の脚部102aを、上面側から被固定部材104の貫通孔104aに挿通する際、Uボルト102の脚部102aに予め螺合させた第1ナット103が配管101に干渉する。このため、Uボルト102の脚部102aの間に配管101をとおしたあと、貫通孔104aに挿入する前の脚部102aに第1ナット103を螺合させる必要があり、組付け性が悪いという問題があった。
【0006】
さらに、被固定部材に対するUボルトの位置を位置決めするためには、第1ナット、及び第2ナットをそれぞれ緩めて調整する必要があるため、被固定部材にUボルトを固定する際の工数増加の要因となっていた。
このように、被固定部材に対して着脱自在に棒材を固定する構造には、組付け性において改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-61945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、被固定部材に対する棒材の組付け性を向上できる棒材固定具、配管固定具、及び棒材固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、被固定部材の主面に設けた貫通孔に挿通した棒材を固定するための棒材固定具であって、前記棒材を挿通可能な内径、及び前記被固定部材の前記貫通孔に、一方の主面側から所定の挿入方向に沿って挿入可能な外径を有する略円筒状の保持部材と、前記被固定部材における他方の主面から突出した前記保持部材に螺着されるナットとを備え、前記保持部材は、前記貫通孔に挿入され、前記ナットが螺合する略円筒状の円筒部と、該円筒部における前記一方の主面側の縁端から、前記円筒部の径方向外方へ向けて突設され、前記貫通孔の開口縁に当接する当接部とを備え、前記円筒部は、前記当接部と前記貫通孔の開口縁との当接によって径方向の間隔が狭くなる隙間が設けられたことを特徴とする。
【0010】
この発明により、被固定部材に対する棒材の組付け性を向上することができる。
具体的には、保持部材の円筒部に螺合させたナットを締め付けることにより、棒材固定具は、所定の挿入方向に沿って、保持部材の当接部を、被固定部材の貫通孔における開口縁に当接させることができる。
【0011】
この際、保持部材の円筒部に設けた隙間が狭くなるため、棒材固定具は、保持部材の円筒部が棒材を挟むように保持するとともに、保持部材とナットとが被固定部材を挟持することができる。このため、棒材固定具は、被固定部材に棒材を固定することができる。
【0012】
さらに、棒材にナットを直接的に螺合することを不要にできるため、棒材固定具は、ナットの締付けに伴う被固定部材と棒材との相対移動を抑制できる。このため、棒材固定具は、所望位置に配置した棒材を、位置ズレすることなく被固定部材に容易に固定することができる。
加えて、棒材固定具は、ひとつのナットを緩めるだけで、被固定部材に対する棒材の位置を変更できるため、被固定部材と棒材との相対位置調整を容易にすることができる。
【0013】
したがって、棒材固定具は、被固定部材に対する棒材の組付け性を向上することができる。さらにまた、棒材固定具は、棒材にネジ山を設けることを不要にできるため、ネジ山によって断面積が小さくなることで、棒材の強度が低下することを抑制できる。
【0014】
この発明の態様として、前記当接部は、前記貫通孔における開口縁の角部に当接するテーパー面を備えてもよい。
この態様によれば、棒材固定具の保持部材は、ナットの締付けによって貫通孔の開口縁との当接箇所に作用する荷重の一部を、径方向内側へ棒材を押圧する荷重に変換することができる。
【0015】
このため、棒材固定具は、保持部材の円筒部に設けた隙間を確実に狭くして、棒材を確実に保持することができる。これにより、棒材固定具は、棒材を被固定部材に確実に固定できるとともに、固定した状態を容易に維持することができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記当接部は、前記貫通孔の開口縁に設けたテーパー面に当接する角部、またはテーパー面を備えてもよい。
この態様によれば、棒材固定具の保持部材は、ナットの締付けによって貫通孔の開口縁との当接箇所に作用する荷重の一部を、径方向内側へ棒材を押圧する荷重に変換することができる。
【0017】
このため、棒材固定具は、保持部材の円筒部に設けた隙間を確実に狭くして、棒材を確実に保持することができる。これにより、棒材固定具は、棒材を被固定部材に確実に固定できるとともに、固定した状態を容易に維持することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記保持部材は、前記所定の挿入方向に沿って分割形成されもよい。
この構成によれば、棒材固定具は、予め棒材を挿通させた貫通孔に、保持部材を容易に挿入することができる。このため、棒材固定具は、棒材に予め保持部材を挿通させておくことを不要にできる。
【0019】
さらに、棒材固定具は、当接部と貫通孔の開口縁との当接によって径方向の間隔が狭くなる隙間を、分割された保持部材の間に生じる隙間で構成することができる。
これにより、棒材固定具は、保持部材の形状が複雑化することを抑制できる。このため、棒材固定具は、保持部材の成形性向上と、被固定部材に対する棒材の組付け性とを向上することができる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記保持部材は、前記円筒部の周方向に所定間隔を隔てた位置で、前記一方の主面側の縁端から前記所定の挿入方向に沿って延びるスリット開口を備えてもよい。
この構成によれば、棒材固定具は、当接部と貫通孔の開口縁との当接によって径方向の間隔が狭くなる隙間を、保持部材のスリット開口で構成することができる。
【0021】
また、この発明は、配管固定部材の主面に対して、略円筒状の配管を固定する配管固定具であって、前記配管の外周面に沿うように湾曲した湾曲部、及び湾曲部の両端から略直線状に延びるとともに、前記配管固定部材の主面に設けた貫通孔に挿通される棒材である一対の脚部で略U字状に一体形成されたU字状部材と、前記配管固定部材、及び前記U字状部材の湾曲部の間に前記配管を配設した状態において、前記U字状部材の前記脚部を前記配管固定部材に固定する前述の棒材固定具とを備えたことを特徴する。
【0022】
この発明により、U字状部材と配管固定部材との間での相対移動を抑制して、配管固定部材に対してU字状部材を所望される位置に容易に固定することができる。このため、配管固定具は、配管に対するU字状部材の相対位置、及び配管固定部材に対するU字状部材の相対位置を位置決めすることを不要にできる。
【0023】
したがって、配管固定具は、配管固定部材に対するU字状部材の組付け性を向上することができる。さらに、棒材固定具のナットの締付けに伴って、U字状部材が配管を押圧しないため、配管固定具は、配管の変形を防止することができる。
【0024】
また、この発明は、被固定部材の主面に設けた貫通孔に挿通した棒材を、棒材固定具を用いて固定する棒材固定方法であって、前記棒材を挿通させた保持部材の円筒部を、一方の主面側から所定の挿入方向に沿って前記貫通孔に挿入する工程と、前記被固定部材における他方の主面から突出した前記保持部材の前記円筒部に、ナットを螺合する工程と、前記円筒部における前記一方の主面側の縁端から、前記円筒部の径方向外方へ向けて突設された前記保持部材の当接部を、前記貫通孔の開口縁に当接させる工程と、前記当接部と前記貫通孔の開口縁との当接によって、前記保持部材の前記円筒部に設けた径方向の隙間を狭くする工程とを備えたことを特徴とする。
この発明により、ナットの締付けに伴う保持部材の当接部と貫通孔の開口縁との当接によって、保持部材の円筒部に設けた隙間の間隔を狭くすることができる。
【0025】
このため、棒材固定方法は、保持部材の円筒部で棒材を挟むように保持できるとともに、保持部材とナットとで被固定部材を挟持できるため、被固定部材に対して棒材を所望される位置に容易に固定することができる。
したがって、棒材固定方法は、被固定部材に対する棒材の組付け性を向上することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、被固定部材に対する棒材の組付け性を向上できる棒材固定具、配管固定具、及び棒材固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】配管固定構造における上方からの外観を示す外観斜視図。
図2】配管固定構造における正面視の外観を示す正面図。
図3】配管固定具の各構成要素の外観を示す分解斜視図。
図4】被固定部材の貫通孔に保持部材を挿通する工程の概略を示す概略図。
図5】被固定部材の貫通孔に挿通された保持部材の概略を示す概略図。
図6】保持部材にナットを締め付ける工程の概略を示す概略図。
図7】ナットが被固定部材の下面に当接した状態の概略を示す概略図。
図8】別の実施形態における配管固定構造を断面で示す断面図。
図9】別の実施形態における保持部材の断面を示す断面図。
図10】別の実施形態における保持部材の外観を示す外観斜視図。
図11】棒材固定具の用途の概略を示す概略図。
図12】棒材固定具の用途の概略を示す概略図。
図13】従来技術における配管固定構造の外観を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、図1は配管固定構造1における上方からの外観斜視図を示し、図2は配管固定構造1における正面図を示し、図3は配管固定具30の分解斜視図を示している。
また、図2中において、図示を明確にするため、被固定部材20、及び配管固定具30の一部を部分断面で図示している。
【0029】
また、配管10の軸方向に沿った方向を前後方向として、図中の矢印Xで示し(以下「前後方向X」とする)、平面視において前後方向に略直交する方向を幅方向として、図中の矢印Yで示している(以下、「幅方向Y」とする)。さらに、図1中の上側を上方とし、図1中の下側を下方とする。
【0030】
配管固定構造1は、図1及び図2に示すように、配管10と、配管10が載置固定される被固定部材20と、複数の配管固定具30とで構成されている。
配管10は、図1及び図2に示すように、前後方向Xを軸方向として、所定の内外径を有する略真円筒状の鋼管であって、例えば、マイナス167度からマイナス169度に冷却された液化天然ガスを流通可能に構成している。
【0031】
また、被固定部材20は、図1及び図2に示すように、架台21と、前後方向Xに所定の間隔を隔てて、架台21に載置された複数の摺動支持部材22とで構成されている。
架台21は、図1及び図2に示すように、上下方向に所定の厚みを有する略平板状であって、例えば、船舶の甲板などとする。
【0032】
この架台21には、図2に示すように、配管10の外径よりも大きい幅方向Yの間隔を隔てた位置で、上下方向に開口した2つの貫通孔21aが、前後方向Xに所定間隔を隔てて複数形成されている。
なお、貫通孔21aは、後述するU字状部材31の脚部32aにおける外径よりも大きい直径で開口形成されている。
【0033】
摺動支持部材22は、前後方向Xに摺動可能な状態で、配管10を下方から支持する部材であって、架台21とは別体で構成されている。この摺動支持部材22は、図1及び図2に示すように、略平板状のプレート23と、プレート23の上面における幅方向Yの略中央に配設された正面視略円弧状のシート台座24、及びスライドシート25とで構成されている。
【0034】
プレート23は、例えば、SS材、あるいはSUS材で、上下方向に所定の厚みを有する略平板状に形成されている。このプレート23は、図1及び図2に示すように、前後方向Xの長さに対して幅方向Yの長さが長い平面視略矩形に形成されている。
【0035】
なお、プレート23は、図2に示すように、幅方向Yにおける架台21の貫通孔21aの間隔よりも長い幅方向Yの長さに形成されている。
さらに、プレート23は、図2に示すように、架台21の貫通孔21aに略同じ幅方向Yの間隔を隔てた位置に、架台21の貫通孔21aに連通する2つの貫通孔23aが上下方向に開口形成されている。
【0036】
このプレート23の貫通孔23aは、図2に示すように、架台21の貫通孔21aと略同径に開口形成され、架台21の貫通孔21aとで配管固定具30(後述するU字状部材31、及び保持部材41)が挿通する貫通孔20aを構成している。
なお、貫通孔23aの内周面と被固定部材20の上面との境界である開口縁20bは、図2に示すように、略鉛直な縦断面において、略直角な角部となるように形成されている。
【0037】
シート台座24は、図2に示すように、例えば、SS材、あるいはSUS材で、下方へ突出した正面視略円弧状に形成されている。このシート台座24は、図2に示すように、プレート23の上面における幅方向Yの略中央に溶着されている。
【0038】
具体的には、シート台座24の上面は、図2に示すように、正面視において、所望位置に配置された配管10の外径よりも大きい直径の略同心円に沿った円弧面に形成されている。なお、シート台座24は、プレート23に略同じ前後方向Xの長さで形成されている。
【0039】
スライドシート25は、自己潤滑性、可撓性、及び低摩擦係数の上面を有するシート状部材であって、例えば、圧縮強度の高い充填剤入りPTFE材で構成されている。このスライドシート25は、図2に示すように、下方へ突出した正面視略円弧状の状態で、シート台座24の上面に貼付されている。
【0040】
具体的には、スライドシート25は、詳細な図示を省略するが、シート台座24よりも大きい前後方向Xの長さ、及び幅方向Yの長さを有するシート状に形成されている。このスライドシート25は、図2に示すように、正面視において、その上面が、所望位置に配置された配管10の外径に略同じ直径の円弧面となる厚みで形成されている。
【0041】
また、配管固定具30は、図1から図3に示すように、配管10を被固定部材20とで支持する略逆U字状のU字状部材31と、被固定部材20に対してU字状部材31(後述する脚部32a)を固定する脚部固定具40とで構成されている。
【0042】
U字状部材31は、図2及び図3に示すように、被固定部材20の貫通孔20aに挿通される略逆U字状の部材本体32と、部材本体32に装着された滑り部材33とで構成されている。
部材本体32は、図2及び図3に示すように、例えば、SS材、あるいはSUS材で、一様な直径の丸棒材を、下方が開口した略逆U字状に湾曲して形成されている。
【0043】
具体的には、部材本体32は、図2及び図3に示すように、正面視において、配管10の外径よりも大きい所定間隔を隔てた位置で上下方向に延びる一対の脚部32aと、一対の脚部32aにおける上端同士を橋架する略半円状の湾曲部32bとで略逆U字状に一体形成されている。
【0044】
部材本体32の脚部32aは、図2に示すように、摺動支持部材22のスライドシート25に載置された配管10における正面視略中央から架台21の下面に至る上下方向の長さよりも長く、かつ架台21の下面から所定長さだけ下方へ突出する上下方向の長さで形成されている。
部材本体32の湾曲部32bは、図2に示すように、配管10の外径よりも大きい直径で、上方へ突出した正面視略半円状に形成されている。
【0045】
滑り部材33は、図2に示すように、正面視において、摺動支持部材22のスライドシート25に載置された配管10と、U字状部材31の部材本体32との間に介在するように、部材本体32に装着されている。
具体的には、滑り部材33は、自己潤滑性、可撓性、及び低摩擦係数の平滑面(図示省略)を有する柱状部材であって、例えば、圧縮強度の高い充填剤入りPTFE材で構成されている。
【0046】
この滑り部材33は、図2に示すように、部材本体32における一方の脚部32aの上部から湾曲部32bを介して、他方の脚部32aの上部に至る長さに形成されている。
なお、滑り部材33は、平滑面が配管10に対向する状態において、部材本体32に設けた凹状の溝部分に嵌合する、または部材本体32に貼付されている。
【0047】
また、脚部固定具40は、図2及び図3に示すように、略直線状に延びる丸棒材であるU字状部材31の脚部32aを、被固定部材20に固定するための固定具である。この脚部固定具40は、図2及び図3に示すように、U字状部材31の脚部32aを保持する金属製の保持部材41と、保持部材41を被固定部材20に締結固定するナット42とで構成されている。
【0048】
保持部材41は、図3に示すように、上下方向に延びる略円筒状の部材であって、幅方向Yの略中央を上下方向に沿って二分割した第1半割部材43と第2半割部材44とで構成されている。
具体的には、保持部材41は、図2及び図3に示すように、第1半割部材43の端面と第2半割部材44の端面とを当接させた状態において、上下方向に延びる略円筒状の円筒部411と、下面が小径となる略逆円錐台形状の当接部412とで構成されている。
【0049】
保持部材41の円筒部411は、図2に示すように、被固定部材20の貫通孔20aよりも小径の外径と、U字状部材31の脚部32aの外径と同じ内径を有する略円筒状に形成されている。
この円筒部411は、図2に示すように、被固定部材20の厚み(被固定部材20における上下方向の長さ)よりも長く、かつ被固定部材20の下面から所定長さ突出する上下方向の長さに形成されている。
【0050】
さらに、円筒部411の外周面には、図3に示すように、ナット42が螺合するネジ山が形成されている。
保持部材41の当接部412は、図2及び図3に示すように、円筒部411の直径よりも大径の略逆円錐台形状に形成されている。
【0051】
より詳しくは、当接部412の下面は、図2及び図3に示すように、円筒部411の外径よりも大径、かつ被固定部材20の貫通孔20aの直径よりも小径の平面視略円形に形成されている。
一方、当接部412の上面は、図2及び図3に示すように、被固定部材20の貫通孔20aの直径よりも大径の平面視略円形に形成されている。
【0052】
このため、当接部412の外周面412aは、図2及び図3に示すように、下面から上面にかけて漸次拡径されたテーパー面に形成されている。
さらに、当接部412には、図2及び図3に示すように、円筒部411の内径に同じ直径で、円筒部411の内部空間に上下方向に連通する開口が開口形成されている。この当接部412における上下方向の開口は、円筒部411における上下方向の開口とで、U字状部材31の脚部32aが挿通する挿通孔41aを構成している。
【0053】
このような構成の保持部材41は、挿通孔41aの周面をU字状部材31の脚部32aに接触させた状態において、第1半割部材43の端面と第2半割部材44と端面とが、径方向に僅かな隙間を隔てて対面するように分割形成されている。
また、ナット42は、図2及び図3に示すように、架台21の下面から突出した保持部材41の円筒部411に螺合する締結部材である。
【0054】
次に、上述した構成の配管固定構造1において、作業者が、U字状部材31の脚部32aを、配管固定具30を用いて被固定部材20に固定する脚部固定方法について、図4から図7を用いて詳しく説明する。
【0055】
なお、図4は被固定部材20の貫通孔20aに保持部材41を挿通する工程の概略図を示し、図5は被固定部材20の貫通孔20aに挿通された保持部材41の概略図を示している。さらに、図6は保持部材41にナット42を締め付ける工程の概略図を示し、図7はナット42が被固定部材20の下面に当接した状態の概略図を示している。
また、図示を明確にするため、配管10を二点鎖線で図示している。
【0056】
まず、作業者は、図4に示すように、架台21の貫通孔21aと摺動支持部材22の貫通孔23aとが連通するように、架台21の上面に対して、摺動支持部材22を載置して、被固定部材20を構成する。そして、作業者は、被固定部材20のスライドシート25に配管10を載置する。
【0057】
その後、作業者は、所定の厚みのシム(図示省略)を、配管10の外周面上部に載置する。この所定の厚みのシムは、U字状部材31の湾曲部32bとの接触によって、配管10が変形することを阻止するために、U字状部材31と配管10との間に僅かな隙間を確保するために一時的に載置するものである。なお、所定の厚みのシムは、例えば、厚み1mmのシムとする。
【0058】
配管10に所定の厚みのシムを載置すると、作業者は、図4に示すように、一対の脚部32aの間に配管10が位置するように、配管10の上方からU字状部材31を覆い被せる。さらに、作業者は、U字状部材31の脚部32aを、被固定部材20の貫通孔20aに、上方から下方へ向かう挿入方向Zに沿って挿入して、U字状部材31を配管10に載置する。
つまり、作業者は、配管10とU字状部材31の湾曲部32bとの間に、所定の厚みのシムが介在するように、U字状部材31を配管10に載置する。
【0059】
その後、作業者は、図4及び図5に示すように、保持部材41の第1半割部材43、及び第2半割部材44を、それぞれ挿入方向Zに沿って貫通孔20aに挿入して、当接部412の外周面412a(テーパー面)を、貫通孔20aにおける上方側の開口縁20bに載置する。
【0060】
このため、保持部材41は、図5に示すように、貫通孔20aの内部において、U字状部材31の脚部32aを覆うように配設される。この際、保持部材41における円筒部411の外径に対して、貫通孔20aの直径が大径のため、保持部材41は、図5に示すように、第1半割部材43と第2半割部材44との間に隙間が形成される。
【0061】
保持部材41を貫通孔20aに挿入すると、作業者は、図6に示すように、被固定部材20の下面から突出した保持部材41の円筒部411に、下方からナット42を螺合させて締付けを開始する。この際、第1半割部材43と第2半割部材44とは、その隙間が狭くなる。
【0062】
ナット42の締付けが開始されると、保持部材41は、挿入方向Zへ引き寄せられるように、被固定部材20に対して相対移動する。この際、保持部材41の第1半割部材43と第2半割部材44とで脚部32aが把持されていないため、U字状部材31は、被固定部材20に対して相対移動することがない。
【0063】
そして、作業者が被固定部材20の下面に当接したナット42をさらに締め付けると、保持部材41は、図7に示すように、当接部412の外周面412a(テーパー面)が、貫通孔20aの開口縁20bに上下方向で強接触することになる。つまり、配管固定具30は、保持部材41とナット42とで被固定部材20を挟持することになる。
【0064】
さらに、外周面412a(テーパー面)と貫通孔20aの開口縁20bとの接触によって、保持部材41の当接部412には、径方向内方への荷重が生じることになる。このため、第1半割部材43と第2半割部材44との隙間がさらに狭くなり、第1半割部材43の内周面と第2半割部材44の内周面とが、U字状部材31の脚部32aに強く当接する。
【0065】
このようにして、保持部材41は、U字状部材31の脚部32aを挟むようにして保持する。これにより、被固定部材20に対するU字状部材31の上下方向への相対移動が阻止され、U字状部材31は、被固定部材20に固定される。
ナット42を所定トルクで締め付けると、作業者は、配管10とU字状部材31の湾曲部32bとの間に介在させた所定の厚みのシムを取外して、作業を完了する。
【0066】
以上のように、脚部固定具40は、略板状の被固定部材20の主面に設けた貫通孔20aに、上面側から挿入方向Zに沿って挿通したU字状部材31の脚部32a(棒材)を固定するための固定具である。
【0067】
この脚部固定具40は、脚部32a(棒材)を挿通可能な内径、及び被固定部材20の貫通孔20aに上面側から挿入可能な外径を有する略円筒状の保持部材41と、被固定部材20における他方の主面から突出した保持部材41に螺着されるナット42とを備えている。
【0068】
さらに、保持部材41は、貫通孔20aに挿入され、ナット42が螺合する略円筒状の円筒部411と、円筒部411における上面側の縁端から、円筒部411の径方向外方へ向けて突設され、貫通孔20aの開口縁20bに当接する当接部412とを備えている。
【0069】
そして、円筒部411は、当接部412と貫通孔20aの開口縁20bとの当接によって径方向の間隔が狭くなる隙間が設けられている。
これにより、被固定部材20に対する脚部32a(棒材)の組付け性を向上することができる。
【0070】
具体的には、保持部材41の円筒部411に螺合させたナット42を締め付けることにより、脚部固定具40は、挿入方向Zに沿って、保持部材41の当接部412を、被固定部材20の貫通孔20aにおける開口縁20bに当接させることができる。
【0071】
この際、保持部材41の円筒部411に設けた隙間が狭くなるため、脚部固定具40は、保持部材41の円筒部411が脚部32a(棒材)を挟むように保持するとともに、保持部材41とナット42とが被固定部材20を挟持することができる。このため、脚部固定具40は、被固定部材20に脚部32a(棒材)を固定することができる。
【0072】
さらに、脚部32a(棒材)にナット42を直接的に螺合することを不要にできるため、脚部固定具40は、ナット42の締付けに伴う被固定部材20と脚部32a(棒材)との相対移動を抑制できる。このため、脚部固定具40は、所望位置に配置した脚部32a(棒材)を、位置ズレすることなく被固定部材20に容易に固定することができる。
【0073】
加えて、脚部固定具40は、ひとつのナット42を緩めるだけで、被固定部材20に対する脚部32a(棒材)の位置を変更できるため、被固定部材20と脚部32a(棒材)との相対位置調整を容易にすることができる。
【0074】
したがって、脚部固定具40は、被固定部材20に対する脚部32a(棒材)の組付け性を向上することができる。さらにまた、脚部固定具40は、脚部32a(棒材)にネジ山を設けることを不要にできるため、ネジ山によって断面積が小さくなることで、脚部32a(棒材)の強度が低下することを抑制できる。
【0075】
また、当接部412は、貫通孔20aにおける開口縁20bの角部に当接するテーパー面を備えている。
この構成によれば、脚部固定具40の保持部材41は、ナット42の締付けによって貫通孔20aの開口縁20bとの当接箇所に作用する荷重の一部を、径方向内側へ脚部32a(棒材)を押圧する荷重に変換することができる。
【0076】
このため、脚部固定具40は、保持部材41の円筒部411に設けた隙間を確実に狭くして、脚部32a(棒材)を確実に保持することができる。これにより、脚部固定具40は、脚部32a(棒材)を被固定部材20に確実に固定できるとともに、固定した状態を容易に維持することができる。
【0077】
また、保持部材41が挿入方向Zに沿って分割形成されているため、脚部固定具40は、予め脚部32a(棒材)を挿通させた貫通孔20aに、保持部材41を容易に挿入することができる。このため、脚部固定具40は、脚部32a(棒材)に予め保持部材41を挿通させておくことを不要にできる。
【0078】
さらに、脚部固定具40は、当接部412と貫通孔20aの開口縁20bとの当接によって径方向の間隔が狭くなる隙間を、分割された保持部材41の間に生じる隙間で構成することができる。
【0079】
これにより、脚部固定具40は、保持部材41の形状が複雑化することを抑制できる。このため、脚部固定具40は、保持部材41の成形性向上と、被固定部材20に対する脚部32a(棒材)の組付け性とを向上することができる。
【0080】
また、配管固定具30は、略板状の被固定部材20における上面に対して、略円筒状の配管10を固定する固定具である。
この配管固定具30は、配管10の外周面に沿うように湾曲部32b、及び湾曲部32bの両端から延びるとともに、被固定部材20の貫通孔20aに上面側から挿通される一対の脚部32aで一体形成されたU字状部材31を備えている。
【0081】
さらに、配管固定具30は、被固定部材20、及びU字状部材31の湾曲部32bの間に配管10を配設した状態において、U字状部材31の脚部32aを被固定部材20に固定する脚部固定具40を備えている。
【0082】
これにより、配管固定具30は、U字状部材31と被固定部材20との間での相対移動を抑制して、被固定部材20に対してU字状部材31を所望される位置に容易に固定することができる。このため、配管固定具30は、配管10に対するU字状部材31の相対位置、及び被固定部材20に対するU字状部材31の相対位置を位置決めすることを不要にできる。
【0083】
したがって、配管固定具30は、被固定部材20に対するU字状部材31の組付け性を向上することができる。さらに、脚部固定具40のナット42の締付けに伴って、U字状部材31が配管10を押圧しないため、配管固定具30は、配管10の変形を防止することができる。
【0084】
また、脚部固定方法は、略板状の被固定部材20の主面に設けた貫通孔20aに、上面側から挿入方向Zに沿って挿通したU字状部材31の脚部32a(棒材)を、脚部固定具40を用いて固定する固定方法である。
【0085】
この脚部固定方法は、脚部32a(棒材)を挿通させた保持部材41の円筒部411を、上面側から貫通孔20aに挿入する工程と、被固定部材20の下面から突出した保持部材41の円筒部411に、ナット42を螺合する工程とを行うものである。
【0086】
さらに、脚部固定方法は、円筒部411の上面側の縁端から、円筒部411の径方向外方へ向けて突設された保持部材41の当接部412を、貫通孔20aの開口縁20bに当接させる工程を行うものである。
加えて、脚部固定方法は、当接部412と貫通孔20aの開口縁20bとの当接によって、保持部材41の円筒部411に設けた径方向の隙間を狭くする工程を行うものである。
【0087】
これにより、脚部固定方法は、ナット42の締付けに伴う保持部材41の当接部412と貫通孔20aの開口縁20bとの当接によって、保持部材41の円筒部411に設けた隙間の間隔を狭くすることができる。
【0088】
このため、脚部固定方法は、保持部材41の円筒部411で脚部32a(棒材)を挟むように保持できるとともに、保持部材41とナット42とで被固定部材20を挟持できるため、被固定部材20に対して脚部32a(棒材)を所望される位置に容易に固定することができる。
したがって、脚部固定方法は、被固定部材20に対する脚部32a(棒材)の組付け性を向上することができる。
【0089】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の被固定部材における一方の主面は、実施形態の被固定部材20の上面に対応し、
以下同様に、
所定の挿入方向は、挿入方向Zに対応し、
棒材は、脚部32aに対応し、
棒材固定具は、脚部固定具40に対応し、
被固定部材における他方の主面は、被固定部材20の下面に対応し、
隙間は、第1半割部材43と第2半割部材44との隙間に対応し、
テーパー面は、当接部412の外周面412aに対応し、
配管固定部材は、被固定部材20に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0090】
例えば、上述した実施形態において、金属製の保持部材41としたが、これに限定せず、合成樹脂製の保持部材であってもよい。
被固定部材20を、架台21と摺動支持部材22とで構成したが、これに限定せず、架台21を被固定部材としてもよい。この場合、架台21の上面にスライドシートを貼付してもよい。あるいは、架台21を被固定部材とし、U字状部材31、脚部固定具40、及び摺動支持部材22を配管固定具としてもよい。
また、所定の厚みのシムによって、U字状部材31の湾曲部32bと配管10との間に隙間を設けたが、これに限定せず、U字状部材31の湾曲部32bと配管10とを接触させてもよい。
【0091】
また、保持部材41の当接部412を略逆円錐台形状にしたが、これに限定せず、貫通孔20aの開口縁20bに当接可能であれば、例えば、周方向に所定間隔を隔てて形成された平面視略矩形の当接部であってもよい。この場合、当接部の側面は、例えば、下端に対して上端が径方向外側に位置するテーパー面に形成する。あるいは、保持部材41に設けた隙間が狭くなる径方向に長い略逆楕円錐台形状の当接部としてもよい。
【0092】
また、貫通孔20aの開口縁20bを断面略直角な角部とし、保持部材41における当接部412の外周面をテーパー面としたが、これに限定せず、貫通孔20aの開口縁、及び保持部材41の当接部の少なくとも一方がテーパー面に形成されていればよい。
【0093】
具体的には、別の実施形態における配管固定構造1の断面図を示す図8(a)のように、被固定部材20における貫通孔20aの開口縁20bを、下方から上方へかけて漸次拡径されたテーパー面で形成してもよい。
【0094】
この場合、保持部材41の当接部413は、図8(a)に示すように、略鉛直な縦断面において、貫通孔20aの開口縁20bに接触する部分を、略直角な角部となるように形成されてもよい。あるいは、保持部材41の当接部414は、図8(b)に示すように、貫通孔20aの開口縁20bにおけるテーパー面に略平行な外周面414aを有する略逆円錐台形に形成されてもよい。
【0095】
この構成によれば、保持部材41は、ナット42の締付けによって貫通孔20aの開口縁20bとの当接箇所に作用する荷重の一部を、径方向内側へ脚部32a(棒材)を押圧する荷重に変換することができる。
【0096】
このため、脚部固定具40は、保持部材41の円筒部411に設けた隙間を確実に狭くして、脚部32a(棒材)を確実に保持することができる。これにより、脚部固定具40は、脚部32a(棒材)を被固定部材20に確実に固定できるとともに、固定した状態を容易に維持することができる。
【0097】
また、U字状部材31の脚部32aが挿通される保持部材41の挿通孔41aを、別の実施形態における保持部材41の断面図を示す図9のように、下方から上方へ緩やかに漸次拡径されたテーパー面状に開口形成にしてもよい。
【0098】
具体的には、保持部材41の挿通孔41aは、図9に示すように、略鉛直な縦断面において、脚部32aの外径と略同じ直径で開口された下面側の開口から、上方へ向かうほど緩やかに漸次拡径されたテーパー面状の内周面を有する開口に形成されている。
【0099】
この際、保持部材41における内周面の傾斜角度θ1は、図9に示すように、略鉛直な縦断面において、当接部412における外周面412a(テーパー面)の傾斜角度θ2よりも緩やかな角度とする。
なお、内周面の傾斜角度θ1は、挿通孔41aにおける下端側の開口縁をとおる略鉛直な仮想直線に対する角度とし、外周面412aの傾斜角度θ2は、当接部412における外周面412aの下端をとおる略鉛直な仮想直線に対する角度とする。
【0100】
また、第1半割部材43と第2半割部材44とで構成された保持部材41としたが、これに限定せず、上下方向に延びるスリットが設けられた保持部材45としてもよい。
具体的には、別の実施形態における保持部材45の外観斜視図を示す図10のように、保持部材45は、略円筒状の円筒部451と、略逆円錐台形状の当接部452とで構成されている。
【0101】
さらに、保持部材45には、図10に示すように、平面視略中央を上下方向に貫通して、U字状部材31の脚部32a(棒材)が挿通される挿通孔45aが開口形成されている。
そして、保持部材45には、図10に示すように、当接部452の上端から円筒部451における上下方向略中央に至る範囲に、挿通孔45aと外部空間とを連通するスリット状のスリット開口45bが、径方向で対向して設けられている。なお、スリット開口45bは、少なくとも1つあればよく、好ましくは複数あるとよい。
【0102】
この構成によれば、脚部固定具40は、当接部452と貫通孔20aの開口縁20bとの当接によって径方向の間隔が狭くなる隙間を、保持部材45のスリット開口45bで構成することができる。
【0103】
さらに、脚部32a(棒材)に保持部材45を挿入した状態を維持できるため、脚部固定具40は、脚部32a(棒材)を貫通孔20aに挿通する際、及びナット42を取外した際、保持部材45が脚部32a(棒材)から脱落することを防止できる。
これにより、脚部固定具40は、被固定部材20に対する脚部32a(棒材)の組付け性をより向上することができる。
【0104】
また、上述した実施形態の保持部材41における第1半割部材43、及び第2半割部材44の少なくとも一方に上述したスリット開口を設けてもよい。
また、被固定部材20の貫通孔20aに保持部材41を挿通させる構成としたが、これに限定せず、貫通孔20aの内周面にネジ山を形成して、貫通孔20aに保持部材41の円筒部411を螺合する構成であってもよい。この場合、保持部材41の当接部に、平面視略六角形の頭部を一体的に設ける。
【0105】
また、挿入方向Zに沿って貫通孔20aに保持部材41を挿入したが、これに限定せず、挿入方向Zとは逆方向、すなわち下方から上方へ向けて貫通孔20aに保持部材を挿入してもよい。この場合、ナット42は、U字状部材31の脚部32aに予め挿入しておく。
【0106】
また、U字状部材31の脚部32aを被固定部材20に固定する脚部固定具40を棒材固定具として説明したが、これに限定せず、適宜の棒材を、適宜の用途で被固定部材に固定する棒材固定具であってもよい。
【0107】
例えば、棒材は、略直線状に延びる中実または中空の棒材であれば、その断面形状が断面略多角形であってもよい。この場合の保持部材の挿通孔を、棒材の断面形状に応じた形状にする。
例えば、棒材を被固定部材、またはその周辺部位に溶着する際、被固定部材に対する棒材の位置を位置決めするために、棒材固定具が用いられてもよい。このように、被固定部材に対する棒材の位置を位置決めする用途で、棒材固定具を用いてもよい。
【0108】
あるいは、棒材固定具の用途の概略図を示す図11(a)のように、2つの被固定部材50を、被固定部材50に設けた複数の貫通孔50aにそれぞれ挿通させた棒材51で連結する用途で棒材固定具52(保持部材53、ナット54)が用いられてもよい。
【0109】
この際、図11(a)に示すように、棒材51、及び保持部材53の挿入方向を、貫通孔50aごとに異ならせてもよい。
もしくは、棒材固定具は、図11(b)に示すように、パネル部材60の枠材60aを被固定部材として、並置されたパネル部材60に対して、かんぬきのように配設された棒材61を固定する用途で用いられてもよい。
さらにまた、棒材固定具の用途の概略図を示す図12のように、所定間隔を隔てて対向配置された被固定部材70を、被固定部材70に設けた複数の貫通孔(図示省略)に挿通させた棒材71で連結する用途で、棒材固定具72(保持部材73、ナット74)が用いられてもよい。
【0110】
例えば、被固定部材70を、コンクリートを流し込むための型枠パネルとしてもよい。この場合、棒材固定具72は、型枠パネルである被固定部材70の位置決めを容易にできるため、コンクリート構造物の成形性の向上を図ることができる。なお、棒材71は、鉄筋などであってもよい。
このように、複数の被固定部材を棒材で連結するために、棒材固定具が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10…配管
20,50,70…被固定部材
60a…枠材
20a,50a…貫通孔
20b…開口縁
30…配管固定具
31…U字状部材
32b…湾曲部
32a…脚部
40…脚部固定具
41,45,53,73…保持部材
42,54,74…ナット
45b…スリット開口
51,61,71…棒材
52,72…棒材固定具
411,451…円筒部
412,413,452…当接部
412a,413a…外周面
Z…挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13