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特許7321889薬剤、医療および美容用途のための物質のための複数のコンテナを搬送および貯蔵するための搬送ユニットおよびパッケージング構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】薬剤、医療および美容用途のための物質のための複数のコンテナを搬送および貯蔵するための搬送ユニットおよびパッケージング構造
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/14 20230101AFI20230731BHJP
【FI】
A61J1/14 520
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019197262
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2020069399
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】10 2018 127 191.3
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】323001797
【氏名又は名称】ショット ファーマ シュヴァイツ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Pharma Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】St. Josefen-Strasse 20, 9000 St. Gallen, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】レヴェント クソグラリ
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト ヒルバー
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-526267(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069244(WO,A1)
【文献】特開2016-128054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤、医療または美容用途のための物質のための複数のコンテナ(60)のためのパッケージング構造(100)のための搬送ユニット(101)であって、前記搬送ユニット(101)は、
前記コンテナを位置決めするための複数の座部(10)を備えるトレー(1)と、
前記トレーの前記座部(10)に位置決めされた前記コンテナをカバーするための平坦なインレー部材(3)と、
を備え、
前記インレー部材(3)は、前記座部に位置決めされた前記コンテナをカバーしかつ同時に前記トレー(1)の上縁より上方へ突出することなく前記トレー(1)に完全に収容されるように設計されている搬送ユニット(101)において、
前記トレー(1)の前記座部(10)に対応する複数の凹所(30)が、互いに反対側に位置する2つの端部(63,66)において前記コンテナを位置決めするために、前記インレー部材(3)に形成されており、
前記トレーに収容された前記インレー部材(3)と前記トレーの側壁(16)との間に少なくとも部分的に間隙(7,7’)が形成されており、
前記トレー(1)は、ベース(21)を有し、
前記ベース(21)では、前記複数の座部(10)は、複数の円錐台形の座部(10)として形成されており、
前記複数の座部(10)の各々は、周囲側壁(11,12)によって形成されており、
前記周囲側壁(11,12)の間には傾斜した接続領域(13)が形成されており、
前記傾斜した接続領域(13)は、上方から鉛直方向に前記コンテナ(60)を挿入するとき挿入斜面として機能する、
搬送ユニット(101)。
【請求項2】
前記インレー部材(3)は、前記トレー(1)に僅かな横方向遊びと共に緩く収容されるようにまたは前記トレー(1)の前記側壁(16)に実質的に不動に支持されるように設計されている、
請求項1記載の搬送ユニット。
【請求項3】
前記トレー(1)の前記座部(10)は、規則的な配列で配置されており、前記周囲側壁(11,12)の高さ(z3)は、前記コンテナ(60)の軸方向長さより小さく、
前記インレー部材(3)の凹所(30)は、比較的小さな高さ(z2)の周囲側壁(32)によって形成されており、
これにより、前記トレー(1)と前記インレー部材(3)との間の中央高さ領域において、自由空間(8b)が形成されており、前記自由空間(8b)は、前記コンテナを案内または位置決めするための案内または位置決め装置を有さない、
請求項1または2記載の搬送ユニット。
【請求項4】
前記案内または位置決め装置を有さない前記自由空間(8b)の高さは、前記トレー(1)の全高の少なくとも40%、好ましくは、前記トレー(1)の全高の少なくとも50%である、
請求項3記載の搬送ユニット。
【請求項5】
記コンテナの上端部が前記トレー(1)の前記座部(10)に詰まることを防止するために、前記トレー(1)の前記座部(10)の最小直径は、収容される前記コンテナの前記上端部(66)における最大外径より僅かに大きい、
請求項3または4記載の搬送ユニット。
【請求項6】
記周囲側壁(11,12)に、互いに所定の間隔を置いて、複数の軸方向リブ(23)が形成されており、前記リブ(23)は、前記座部(10)内へ半径方向内方に突出しており、前記コンテナの上端部が前記トレー(1)の前記座部(10)に詰まることを防止するために、前記リブ(23)の間の最小開口幅は、収容される前記コンテナの前記上端部(66)における最大外径より僅かに大きい、
請求項1から5までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項7】
なくとも2つの突出部(22)が、それぞれの前記座部のベース(21)に形成されており、前記突出部(22)において、それぞれの前記コンテナの拡大した上縁(66)が、前記ベース(21)から所定の距離において支持され、これにより、ガスまたは蒸気が、前記座部に位置決めされた前記コンテナの充填開口(67)に流入することができる、
請求項1から6までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項8】
記周囲側壁(11)は、前記コンテナの肩部(64)または円筒状の側壁(62)が僅かな半径方向遊びを生じながら収容されるように、収容される前記コンテナの外側輪郭に適応させられた円錐台形の案内部分を形成するために、傾斜した構成の周囲側壁(12)によって隣接されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項9】
別の挿入斜面(14)が、前記円錐台形の案内部分の前記周囲側壁(12)の上端部に形成されており、隣接する座部(10)の前記周囲側壁(12)の前記上端部は、集合的に1つの平面に位置する平坦な環状の接続部分(15)を介して互いに接続されている、
請求項8記載の搬送ユニット。
【請求項10】
前記インレー部材(3)の前記凹所(30)は、周囲側壁(32)によって形成されており、前記コンテナの下端部が前記インレー部材(3)の前記凹所(30)に詰まることを防止するために、前記インレー部材(3)の前記凹所(30)の最小直径は、収容される前記コンテナの前記下端部(63)における最大外径より僅かに大きい、
請求項1から9までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項11】
前記インレー部材(3)と前記トレー(1)の上縁(17)との間に自由空間(8a)が形成されており、前記自由空間(8a)は、前記コンテナを案内または位置決めするための案内または位置決め装置を有さない、
請求項1から10までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項12】
前記インレー部材(3)のエッジに、少なくとも1つのくぼみ(38)が形成されており、前記インレー部材の前記エッジは、前記インレー部材を前記トレー(1)から引き出すために掴むことができる、
請求項1から11までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項13】
前記インレー部材(3)の角領域に、前記少なくとも1つのくぼみ(38)が形成されており、前記トレー(1)の角領域は、丸みのある角領域(24)として形成されている、
請求項12記載の搬送ユニット。
【請求項14】
凹所またはくぼみ(38)を備える複数の部分が、前記インレー部材(3)のエッジに沿って形成されており、前記インレー部材が、前記トレーに位置決めされた前記コンテナに支持されたとき、前記インレー部材(3)が前記トレー(1)に緩くかつ僅かな横方向遊びを生じながら収容されるように、前記インレー部材の外側輪郭は、上縁において前記トレーの内側輪郭に適応させられている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項15】
前記インレー部材(3)の前記エッジは、前記インレー部材の長手方向側部に沿って直線状に延びており、前記インレー部材の横方向側部に沿ってまたは2つの互いに反対側の横方向側部に沿って、凹所またはくぼみ(38)を備えた複数の部分が形成されている、
請求項14記載の搬送ユニット。
【請求項16】
前記トレー(1)の前記上縁(17)は、平坦でかつ周囲形式であり、前記上縁および内側側壁と共に共同で、U字形でかつ周方向の保持座部(20)を形成するために、前記上縁(17)は、前記トレー(1)の上縁から下端部に向かって垂直にまたは実質的に垂直に突出した上側側壁(18)の外側に隣接させられている、
請求項1から15までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項17】
センサ、特に光電センサによって前記トレーの向きまたは位置の検出を可能にするために、前記トレーの横方向側部に沿ってまたは前記トレーの2つの互いに反対側の横方向側部に沿って、前記上側側壁(18)に、複数の第1の突出部または凹所(27)および/または複数の第2の突出部または凹所(27’)が形成されている、
請求項16記載の搬送ユニット。
【請求項18】
センサ、特に光電センサによって前記トレーの向きまたは位置の検出を可能にするために、前記トレーの長手方向側部に沿ってまたは前記トレーの2つの互いに反対側の長手方向側部に沿って、前記上側側壁(18)に、複数の第1の突出部または凹所(28)および/または複数の第2の突出部または凹所(28’)が形成されている、
請求項16または17記載の搬送ユニット。
【請求項19】
上縁(17)に配置されたカバー(5)の掴みを可能にするために、前記トレーの前記上縁(17)に沿って、少なくとも1つの後退部分(25)が形成されている、
請求項1から18までのいずれか1項記載の搬送ユニット。
【請求項20】
薬剤、医療または美容用途のための物質のための複数のコンテナ(60)のためのパッケージング構造(100)であって、
前記パッケージング構造(100)は、前記複数のコンテナ(60)が収容された請求項1から19までのいずれか1項記載の搬送ユニット(101)を備え、前記トレー(1)の上縁(17)に接続されたカバー(5)を有し、
前記コンテナは、前記トレー(1)の前記座部(10)に上下逆さに収容されており、
前記インレー部材(3)と前記トレーの側壁(16)との間に少なくとも部分的に狭い間隙(7,7’)が形成されるように、前記インレー部材(3)が、前記座部(10)に位置決めされた前記コンテナに支持され、
前記カバー(5)は、前記パッケージング構造の内側容積を環境からシールしている、
パッケージング構造(100)。
【請求項21】
前記カバーは、前記トレー(1)の前記上縁(17)に固定された、無菌バリヤの特性を備えるカバーフィルムである、
請求項20記載のパッケージング構造。
【請求項22】
前記カバーフィルムは、少なくとも1つの部分において、特にプラスチック繊維、例えばポリプロピレン(PP)繊維の編物によって、ガス透過性または蒸気透過性であり、連続的な流路が、前記コンテナ(60)の上端部(66)における充填開口(67)と、前記カバーフィルムの少なくとも1つのガス透過性または蒸気透過性の部分と、の間に形成されており、これにより、前記パッケージング構造に収容された前記コンテナを滅菌するためのガスまたは蒸気が、妨げられることなく、前記カバーフィルムを介して前記コンテナへ流入することができる、
請求項21記載のパッケージング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、薬剤、医療または美容用途のための物質のためのコンテナの処理に関し、特に、薬剤、医療または美容用途のための物質のための複数のコンテナ、例えば、バイアル、アンプルまたはカルプルを搬送および/または貯蔵するための搬送ユニットに関する。本発明は、さらに、このような搬送ユニット、特に無菌条件下で搬送ユニットにパックされたコンテナを搬送および/または貯蔵するためのこのような搬送ユニットを備える、パッケージング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用コンテナ、例えば、バイアル、アンプルまたはカルプルは、特に予め計量された量で、液体状態における投与のための医療、薬剤または美容製剤を貯蔵するためのコンテナとして広く使用されている。これらの医療用コンテナは、概して、円筒形であり、プラスチックまたはガラスから製造することができ、大量に費用対効果高く得ることができる。コンテナは、ますます保持構造において薬剤製造会社またはその後の処理操作へ提供されており、保持構造におけるコンテナが、所定の幾何学的配列においてかつ正確に規定された位置において保持または収容されながら、さらに処理される。このために、コンテナが、できるだけ小さなスペースを占める配列において保持または収容される、費用対効果が高くかつ耐久性のある保持構造が必要とされている。
【0003】
比較的複雑な設計のこのような保持構造に代わるものとして、コンテナが、無菌条件下でまたは無菌でない条件下でも、規則的な配列において、すなわち所定の位置において搬送および/または貯蔵される搬送ユニットも公知である。このような搬送ユニットは、単純な製造方法によって、特に、薄いプラスチックシートまたはプラスチックフィルムから深絞りまたは熱成形することによって得ることができる。このような搬送ユニットは、通常、所定の位置においてコンテナを収容するための座部を有し、案内部分は、コンテナを座部に挿入することを補助することを意図したものであり、位置決め部分は、コンテナの正確な位置決めのために設けられている。しかしながら、極めて高いパッキング密度を達成することが困難である。
【0004】
欧州特許出願公開第2915516号明細書は、バイアルのためのトレーを開示しており、このトレーは、熱可塑性材料から深絞りによって製造されている。トレーの座部は、テーパした形状を有し、バイアルを位置決めするために、複雑なバイアルの外側輪郭に正確に適応させられている。座部の上側3分の1における段部は、上下逆さに収容されたバイアルの肩部のための支持を提供し、これにより、バイアルの充填開口は座部のベースによって閉鎖されない。バイアルの下端部は、トレーの上縁より上方に突出しており、これにより、バイアルの無菌搬送は、容易に可能ではない。
【0005】
同様のトレーは、同一出願人による米国意匠第D701617S号明細書および第D690028S号明細書に開示されている。
【0006】
米国特許出願公開第2002/0093147号明細書は、保持タブレットの開口に引っ掛けられたシリンジボディまたはカルプルのための保持タブレットを開示している。複数の保持タブレットを上下に積層することができる。複数の保持タブレットを環境から閉鎖するために、凹所を備えるトレーが設けられている。このトレーは、保持タブレットの下側および上側の両方に設けることができる。しかしながら、シリンジボディまたはカルプルの無菌パッケージングは、不可能である。
【0007】
欧州特許第2867130号明細書は、バイアルのためのパッケージングユニットを開示しており、このパッケージングユニットは、2つの相互接続されたトレーから成り、各トレーは、トレーに収容されたバイアルの下端部および上端部を位置決めするための座部を有する。個々のバイアルを取り出すために、側壁を開放し、再び閉鎖することができる。しかしながら、バイアルの無菌パッケージングは、不可能である。
【0008】
国際公開第2013/181552号は、バイアルのためのトレーを開示しており、このトレーには、バイアルの搬送のためのカバーまたはバイアルのさらなる処理のためのカバーをクリップ留めすることができる。無菌条件下でのバイアルの搬送のために、ガス透過性フィルムが搬送カバーに固定されており、開口が搬送カバーに設けられておりかつ連続的な流路が確保されており、これにより、トレーの座部に収容されたバイアルを、それらの外側および内側において、ガス透過性フィルムを通ってトレー内へ流入するガスによって滅菌することができる。
【0009】
米国特許出願公開第2017/0073091号明細書は、バイアルのための別の搬送ユニットを開示しており、この搬送ユニットは、互いに内外に重なった2つの箱形のパッケージング部材から成る。バイアルは、下側パッケージング部材のベースに直立する。搬送ユニットを開放させるとき、それらの充填開口を介してバイアルに汚染物質が進入することを防止するために、インレー部材がバイアルの上端部に配置される。この搬送ユニットは、バイアルの極めて高いパッキング密度と、バイアルのさらなる処理のための処理ステーションへの単純な移動とを可能にする。しかしながら、バイアルは、互いに直接接触し、これは、望ましくない摩耗および引っかき傷と、搬送構造の内側に生じる汚染物質にもつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、薬剤、医療または美容用途のための物質のための複数のコンテナのための改良された搬送ユニットおよびパッケージング構造であって、パッケージング構造は、容易にかつ費用対効果高く製造することができ、極めて高いパッキング密度を可能にすることを意図したものであり、同時に、コンテナの正確な位置決めおよびセンタリングを行い、また、無菌条件下でのコンテナの搬送および貯蔵に等しく適していることを意図したものである、改良された搬送ユニットおよびパッケージング構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1による搬送ユニットおよび請求項20によるパッケージング構造によって達成される。別の有利な実施の形態は、従属請求項の対象である。
【0012】
本発明によれば、薬剤、医療または美容用途のための物質のための複数の容器、特に、バイアルまたはカルプルのためのパッケージング構造のための搬送ユニットであって、コンテナを位置決めするための複数の座部を備えるトレーと、トレーの座部に位置決めされたコンテナをカバーするための平坦なインレー部材とを有し、インレー部材は、座部に位置決めされたコンテナをカバーする、例えば、前記コンテナに直接的に支持され、かつ同時に、トレーの上縁より上方へ突出することなく、トレーに完全に収容されるように設計されている、搬送ユニットが提供される。本発明によれば、トレーの座部に対応する複数の凹所が、互いに反対側に位置する2つの端部においてコンテナを位置決めするために、インレー部材に形成されており、トレーに収容されたインレー部材とトレーの側壁との間に少なくとも部分的に間隙が形成されている。
【0013】
コンテナの無菌パッケージングは、無菌バリヤの特性を備えるカバーフィルムをトレーの上縁に固定することによって単純な形式で実現することができる。このカバーフィルムは、好ましくは、パッケージング構造およびパッケージング構造に収容されたコンテナの内部全体が、カバーフィルムを通って流入するガスまたは蒸気によって滅菌されるように、少なくとも1つの部分においてガス透過性または蒸気透過性であるように形成されている。トレーに収容されたインレー部材とトレーの側壁との間に少なくとも部分的に形成された間隙は、コンテナを滅菌するためのガスまたは蒸気が、インレー部材とトレーの座部との間の空間内へ妨げられることなく流入することができることを保証する。
【0014】
コンテナは、トレーの座部に上下逆さに収容される。コンテナの上端部は、座部のベースから所定の距離に支持されており、これにより、ガスの連続的な流路が、インレー部材とトレーの座部との間の前記空間から、コンテナの充填開口まで実現されている。これにより、コンテナは、パッケージング構造に収容されながら、その外側においてだけでなく、その内側においても、流入するガスまたは流入する蒸気によって滅菌することができる。
【0015】
トレーおよびインレー部材の単純なジオメトリは、単純かつ費用対効果の高い設計と共に極めて高いパッキング密度を可能にする。
【0016】
座部の側壁が斜めにかつ半径方向内方へ延びているとしても、座部は、本発明により互いに極めて近くに配置することができる。なぜならば、座部は、本発明によれば、トレーの高さ全体にわたって延びている必要がなく、その代わりに、トレーの下側領域において比較的短い高さでのみ形成されていれば十分であるからである。しかしながら、インレー部材の凹所とのトレーの座部の相互作用により、コンテナがトレーに収容されたとき、2つの端部におけるコンテナの極めて正確でかつ安定した位置決めを依然として達成することができる。本発明によれば、コンテナを、トレーの座部とインレー部材の凹所との間に実質的に不動に保持することができる。
【0017】
好ましい実施の形態
[1]薬剤、医療または美容用途のための物質のための複数のコンテナ(60)のためのパッケージング構造(100)のための搬送ユニット(101)であって、
コンテナを位置決めするための複数の座部(10)を備えるトレー(1)と、
トレーの座部(10)に位置決めされたコンテナをカバーするための平坦なインレー部材(3)と、を備え、
インレー部材(3)は、座部に位置決めされたコンテナをカバーしかつ同時にトレー(1)の上縁より上方へ突出することなくトレー(1)に完全に収容されるように設計されている、
搬送ユニット(101)において、
トレー(1)の座部(10)に対応する複数の凹所(30)が、互いに反対側に位置する2つの端部(63,66)においてコンテナを位置決めするために、インレー部材(3)に形成されており、
トレーに収容されたインレー部材(3)とトレーの側壁(16)との間に少なくとも部分的に間隙(7,7’)が形成されていることを特徴とする、搬送ユニット(101)。
【0018】
[2]インレー部材(3)は、トレー(1)に僅かな横方向遊びと共に緩く収容されるまたはトレー(1)の側壁(16)に実質的に不動に支持されるように設計されている、実施の形態[1]記載の搬送ユニット。
【0019】
実施の形態[2]の1つの態様において、横方向遊びは、0.5mm~15mmの範囲、より好ましくは2.5mm~13mmの範囲、さらに好ましくは4mm~10mmの範囲であることが好ましい。
【0020】
[3]トレー(1)の座部(10)は、規則的な配列で配置されておりかつ周囲側壁(11,12)によって形成されており、周囲側壁(11,12)の高さ(z3)は、コンテナ(60)の軸方向長さより小さく、
インレー部材(3)の凹所(30)は、比較的小さな高さ(z2)の周囲側壁(32)によって形成されており、
これにより、トレー(1)とインレー部材(3)との間の中央高さ領域において、自由空間(8b)が形成されており、自由空間(8b)は、コンテナを案内または位置決めするための案内または位置決め装置を有さない、
実施の形態[1]または[2]記載の搬送ユニット。
【0021】
実施の形態[3]の1つの態様において、高さz2は、0.5mm~12.5mmの範囲、より好ましくは3mm~10mmの範囲、さらに好ましくは4.5mm~8.5mmの範囲であることが好ましい。
【0022】
[4]案内または位置決め装置を有さない自由空間(8b)の高さは、トレー(1)の全高の少なくとも40%、好ましくは、トレー(1)の全高の少なくとも50%である、実施の形態[3]記載の搬送ユニット。
【0023】
[5]トレー(1)の座部(10)の周囲側壁(11,12)は、傾斜した構成を有し、コンテナの上端部がトレー(1)の座部(10)に詰まることを防止するために、トレー(1)の座部(10)の最小直径は、収容されるコンテナの上端部(66)における最大外径より僅かに大きい、実施の形態[3]または[4]記載の搬送ユニット。
【0024】
実施の形態[5]の1つの態様において、トレー(1)の座部(10)の最小直径は、収容されるコンテナの上端部(66)における最大外径より0.5mm~15mmの範囲、より好ましくは2.5mm~13mmの範囲、さらに好ましくは4mm~10mmの範囲だけ大きいことが好ましい。
【0025】
[6]トレー(1)の座部(10)の周囲側壁(11,12)に、互いに所定の間隔を置いて、複数の軸方向リブ(23)が形成されており、リブ(23)は、座部(10)内へ半径方向内方に突出しており、コンテナの上端部がトレー(1)の座部(10)に詰まることを防止するために、リブ(23)の間の最小開口幅は、収容されるコンテナの上端部(66)における最大外径より僅かに大きい、実施の形態[1]から[5]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0026】
実施の形態[6]の1つの態様において、リブ(23)の間の最小開口幅は、収容されるコンテナの上端部(66)における最大外径より0.5mm~15mmの範囲、より好ましくは2.5mm~13mmの範囲、さらに好ましくは4mm~10mmの範囲だけ大きいことが好ましい。
【0027】
[7]トレー(1)の座部(10)は、全体的に円筒状の構成であり、少なくとも2つの突出部(22)が、それぞれの座部のベース(21)に形成されており、これらの突出部(22)において、それぞれのコンテナの拡大した上縁(66)が、ベース(21)から所定の距離において支持され、これにより、ガスまたは蒸気が、座部に位置決めされたコンテナの充填開口(67)に流入することができる、実施の形態[1]から[6]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0028】
[8]座部の周囲側壁(11)は、コンテナの肩部(64)または円筒状の側壁(62)が僅かな半径方向遊びを生じながら収容されるように、収容されるコンテナの外側輪郭に適応させられた円錐台形の案内部分を形成するために、傾斜した構成の周囲側壁(12)によって隣接されている、実施の形態[1]から[7]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0029】
実施の形態[8]の1つの態様において、半径方向遊びは、0.5mm~15mmの範囲、より好ましくは2.5mm~13mmの範囲、さらに好ましくは4mm~10mmの範囲であることが好ましい。
【0030】
[9]別の挿入斜面(14)が、円錐台形の案内部分の側壁(12)の上端部に形成されており、隣接する座部(10)の側壁(12)の上端部は、集合的に1つの平面に位置する平坦な環状の接続部分(15)を介して互いに接続されている、実施の形態[8]記載の搬送ユニット。
【0031】
[10]インレー部材(3)の凹所(30)は、周囲側壁(32)によって形成されており、コンテナの下端部がインレー部材(3)の凹所(30)に詰まることを防止するために、インレー部材(3)の凹所(30)の最小直径は、収容されるコンテナの下端部(63)における最大外径より僅かに大きい、実施の形態[1]から[9]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0032】
実施の形態[10]の1つの態様において、インレー部材(3)の凹所(30)の最小直径は、収容されるコンテナの下端部(63)における最大外径より0.5mm~15mmの範囲、より好ましくは2.5mm~13mmの範囲、さらに好ましくは4mm~10mmの範囲だけ大きいことが好ましい。
【0033】
[11]インレー部材(3)とトレー(1)の上縁(17)との間に自由空間(8a)が形成されており、自由空間(8a)は、コンテナを案内または位置決めするための案内または位置決め装置を有さない、実施の形態[1]から[10]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0034】
[12]インレー部材(3)のエッジに、少なくとも1つのくぼみ(38)が形成されており、このくぼみにおいて、インレー部材のエッジを、インレー部材をトレー(1)から引き出すために掴むことができる、実施の形態[1]から[11]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0035】
[13]インレー部材(3)の角領域に、少なくとも1つのくぼみ(38)が形成されており、トレー(1)の角領域は、丸みのある角領域(24)として形成されている、実施の形態[12]記載の搬送ユニット。
【0036】
[14]凹所またはくぼみ(38)を備える複数の部分が、インレー部材(3)のエッジに沿って形成されており、インレー部材が、トレーに位置決めされたコンテナに支持されたとき、インレー部材(3)がトレー(1)に緩くかつ僅かな横方向遊びを生じながら収容されるように、インレー部材の外側輪郭は、上縁におけるトレーの内側輪郭に適応させられている、実施の形態[1]から[13]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0037】
実施の形態[14]の1つの態様において、横方向遊びは、0.5mm~15mmの範囲、より好ましくは2.5mm~13mmの範囲、さらに好ましくは4mm~10mmの範囲であることが好ましい。
【0038】
[15]インレー部材(3)のエッジは、インレー部材の長手方向側部に沿って直線状に延びており、インレー部材の横方向側部に沿ってまたは2つの互いに反対側の横方向側部に沿って、凹所またはくぼみ(38)を備えた複数の部分が形成されている、実施の形態[14]記載の搬送ユニット。
【0039】
[16]トレー(1)の上縁(17)は、平坦でかつ周囲形式であり、上縁および内側側壁と共に共同で、U字形でかつ周方向の保持座部(20)を形成するために、上縁(17)は、トレー(1)の上縁から下端部に向かって垂直にまたは実質的に垂直に突出した上側側壁(18)の外側に隣接させられている、実施の形態[1]から[15]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0040】
[17]センサ、特に光電センサによってトレーの向きまたは位置の検出を可能にするために、トレーの横方向側部に沿ってまたはトレーの2つの互いに反対側の横方向側部に沿って、上側側壁(18)に、複数の第1の突出部または凹所(27)および/または複数の第2の突出部または凹所(27’)が形成されている、実施の形態[16]記載の搬送ユニット。
【0041】
[18]センサ、特に光電センサによってトレーの向きまたは位置の検出を可能にするために、トレーの長手方向側部に沿ってまたはトレーの2つの互いに反対側の長手方向側部に沿って、上側側壁(18)に、複数の第1の突出部または凹所(28)および/または複数の第2の突出部または凹所(28’)が形成されている、実施の形態[16]または[17]に記載の搬送ユニット。
【0042】
[19]上縁(17)に配置されたカバー(5)の掴みを可能にするために、トレーの上縁(17)に沿って、少なくとも1つの後退部分(25)が形成されている、実施の形態[1]から[18]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット。
【0043】
[20]複数のコンテナ(60)が収容された、実施の形態[1]から[19]までのいずれか1つに記載の搬送ユニット(101)を備え、トレー(1)の上縁(17)に接続されたカバー(5)を有する、薬剤、医療または美容用途のための物質のための複数のコンテナ(60)のためのパッケージング構造(100)であって、
コンテナは、トレー(1)の座部(10)に上下逆さに収容されており、
インレー部材(3)とトレーの側壁(16)との間に少なくとも部分的に狭い間隙(7,7’)が形成されるように、インレー部材(3)が、座部(10)に位置決めされたコンテナに支持され、
カバー(5)は、パッケージング構造の内側容積を環境からシールしている、薬剤、医療または美容用途のための物質のための複数のコンテナ(60)のためのパッケージング構造(100)。
【0044】
[21]カバーは、トレー(1)の上縁(17)に固定された、無菌バリヤの特性を備えるカバーフィルムである、実施の形態[20]記載のパッケージング構造。
【0045】
[22]カバーフィルムは、少なくとも1つの部分において、特にプラスチック繊維、例えばポリプロピレン(PP)繊維の編物によって、ガス透過性または蒸気透過性であり、連続的な流路が、コンテナ(60)の上端部(66)における充填開口(67)と、カバーフィルムの少なくとも1つのガス透過性または蒸気透過性の部分と、の間に形成されており、これにより、パッケージング構造に収容されたコンテナを滅菌するためのガスまたは蒸気が、妨げられることなく、カバーフィルムを介してコンテナへ流入することができる、実施の形態[21]記載のパッケージング構造。
【0046】
図面の概略
発明は、以下に例としてかつ添付の図面を参照して説明され、そこから、達成される別の特徴、利点および目的が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1a】本発明の第1の実施の形態によるパッケージング構造の搬送ユニットの下方からの斜視図を示している。
図1b図1aによる搬送ユニットを上方からの平面図において示している。
図1c図1aによる搬送ユニットを下方からの平面図において示している。
図1d】本発明の別の実施の形態によるパッケージング構造の搬送ユニットの上方からの平面図を示している。
図2a】コンテナが収容されていない、図1aによる搬送ユニットの斜視部分断面図を示している。
図2b図1aによる搬送ユニットのトレーの切欠きの上方からの拡大された平面図を示している。
図2c】バイアルの形式のコンテナが収容された、本発明によるパッケージング構造の概略的な断面図を示している。
図2d図2cによるパッケージング構造の斜視分解図を示している。
図3】本発明によるパッケージング構造を開放しかつパッケージング構造に収容されたコンテナをさらに処理するための手順のステップを概説した概略的なフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図面において、同一の参照符号は、同一のまたは実質的に均等の要素または要素のグループを指示している。
【0049】
図2cおよび図2dを参照して、以下、本発明によるパッケージング構造100の基本設計をまず説明する。この例示的な実施の形態は、バイアル60、特にガラスバイアルが、薬剤、医療または美容用途のための物質のためのコンテナとして搬送および貯蔵されることが意図されているという仮定に基づく。しかしながら、本発明は、明示的にバイアルの搬送および貯蔵に限定されることは意図されておらず、代わりに、本発明は、対応して、カルプルまたはシリンジボディのための同等のコンテナのために使用することもできる。
【0050】
公知のように、バイアル60は、円筒状の側壁62を備える本体から形成されており、本体の下端部は、閉鎖されたベース63によって形成されており、本体の上端部は、次第にテーパした肩部64によって形成されており、肩部64は、狭まったネック部分65と、充填開口67が形成されている拡大した上縁66と、に移行している。
【0051】
パッケージング構造100は、バイアル60を上下逆さに位置決めするための複数の座部10を備えるトレー1と、プレートの形式で、全体的に平坦な構成を有するインレー部材3と、によって形成されている。インレー部材3は、トレー1の座部10に位置決めされたバイアル60のベース63において直接に支持されまたはベース63から僅かな距離を置いてトレー1の側壁16において直接に支持され、これにより、バイアル60の全体をカバーする。トレー1の側壁16の高さは、収容されるバイアル60の長さに適応させられており、これにより、インレー部材3は、トレー1の上縁17より上方へ突出せず、インレー部材3は、トレー1に完全に収容されている。上縁17おいて、カバー5がトレー1に接続されている。カバー5は、以下で説明するように、コンテナ60が収容されたパッケージング構造100の内部を滅菌するためのガスまたは蒸気の流入を許容するために少なくとも1つのガス透過性または蒸気透過性の部分を設けることもできる平坦なガス不透過性プラスチックシートとして形成することができる。カバーは、好ましくは、接着剤エッジ51によってトレー1のフランジ状の周囲上縁17に固定された、特に、プラスチック繊維、例えばポリプロピレン(PP)繊維の編物によって形成された、薄い、可撓性の、ガス透過性または蒸気透過性のプラスチックフィルムである。この種のプラスチックフィルム5は、特に商品名Tyvek(登録商標)として提供されている。
【0052】
トレー1のベースには、複数の円錐台形の座部10が形成されており、各座部10は、周囲側壁11,12によって形成されており、周囲側壁11,12の間には傾斜した接続領域13が形成されており、傾斜した接続領域13は、上方から鉛直方向にコンテナ60を挿入するとき挿入斜面として機能することができる。鉛直方向にかつ上下逆さに配置されたバイアル60の上端部は、これらの座部10に収容される。図2cからわかるように、これらの座部10の軸方向長さz3はコンテナ60の軸方向長さより小さく、これにより、トレー1の座部10とインレー部材3との間の中央高さ領域に自由空間8bが形成されており、前記自由空間8bは、コンテナ60を案内または位置決めするための案内または位置決め装置を有さない。この自由空間8bの高さは、トレー1の全高の少なくとも40%、好ましくはトレー1の全高の少なくとも50%に相当する。
【0053】
より正確に言えば、各座部10は、周囲下側側壁11および閉鎖されたベースによって形成された下側座部を有し、周囲上側側壁12によって形成された円錐台形領域も有する。コンテナ60の上端部は下側座部に収容されるのに対し、コンテナ60の肩部64は上側座部に収容される。下側座部の高さz1はバイアルの拡大した上縁66の軸方向長さより僅かに大きく、下側座部は、ほぼ狭まったネック部分65の領域において、上側座部領域へ移行している。
【0054】
上端部66がトレー1の座部10に詰まることを防止するために、下側座部の最小直径は、収容されるコンテナ60の上端部66の最大外径より僅かに大きい。以下でより詳細に説明するように、下側側壁11に軸方向リブが設けられている場合、下側座部の最小直径は、収容されるコンテナ60の上端部66における最大外径と等しいまたは実質的に対応していることもできる。周囲上側側壁12によって形成された座部領域の形状は、収容されるコンテナ60の外側輪郭に適応させられており、これにより、上側側壁12におけるコンテナ60の詰まりが同様に防止される。
【0055】
図2cによれば、座部10は、集合的に1つの平面に位置する平坦な接続部分15を介して互いに接続されている。コンテナ60が鉛直方向に上方から座部10へ挿入されるときにコンテナ60を案内するために、上側側壁12の上端部に挿入斜面14が設けられている。
【0056】
簡略化のために、図2cは、座部10のベース21とコンテナ60の上縁66との間に間隙が形成されていることを示している。しかしながら、図2bにおける座部10の平面図に見られるように、互いに離隔させられた複数の支持ウェブ22が、座部10のベース21に形成されており、ベース21から鉛直方向に突出しており、座部10内へ、ただし座部10の中央において接触することなく半径方向内方へ延びている。これにより、座部10の中央に凹所が形成されている。支持ウェブ22の間の空間29は、座部10の中央におけるこの凹所に連続的に接続されている。コンテナ60が座部10内へ上下逆さに挿入されると、これにより、コンテナ60は、上縁66が支持ウェブ22に接触するように位置し、充填開口67はベース21によって閉鎖されない。代わりに、連続的なガス流路が、狭まったネック部分65と側壁11との間の間隙71から充填開口67まで形成され、前記ガス流路は、拡大した上縁66と下側側壁11との間の間隙および支持ウェブ22の間に形成された空間29(図2b参照)を介して、座部10のベース21および充填開口67まで延びている。以下でより詳細に説明するように、下側側壁11に軸方向リブが設けられている場合、拡大した上縁66と下側側壁11との間のこれらの間隙は、これらの軸方向リブの間の空間によって直接的に形成することができる。対照的に、下側側壁11が滑らかであり、このような軸方向リブを備えずに形成されている場合、下側側壁11によって形成された下側座部の最小直径は、拡大した上縁66の領域におけるコンテナ60の最大外径より僅かに大きい。
【0057】
さらに図2cに見られるように、コンテナ60の円筒状の側壁62と上側側壁12との間の間隙70は、間隙71に接続されており、これにより、間隙70を通流するガスまたは蒸気は、例えば、コンテナ60の内部容積をガスまたは蒸気によって滅菌するために、間隙71内へ、ひいては充填開口67を介してコンテナ60内へ流れることができる。以下でより詳細に説明するように、上側側壁12に軸方向リブが設けられている場合、上側側壁12の領域におけるこれらの間隙70は、これらの軸方向リブの間の空間によって直接的に形成することができる。対照的に、上側側壁12が滑らかであり、このような軸方向リブを備えずに形成されている場合、コンテナ60の肩部64または円筒状の側壁62の領域における上側側壁12の直径は、肩部64または円筒状の側壁62の領域におけるコンテナ60の最大外径より僅かに大きい。
【0058】
コンテナ60を座部10へ挿入しかつ座部10におけるコンテナ60の詰まりを回避することをより容易にするために、座部10の側壁11,12は、斜めにかつ半径方向内方へ延びている。
【0059】
さらに図2cに見られるように、トレー1の側壁16は、平坦なフレーム状またはフランジ状の上縁17へ移行しており、この上縁17にカバー5が載置され、特にこの上縁17にカバーフィルム5が固定される。上縁17は、トレー1のベースの方向へ斜め下方に延びておりかつ周囲に形成された上側側壁18へ移行しており、側壁16の上端部と共にU字形の自由空間20を形成しており、これにより、トレー1をこのU字形の自由空間20によって保持フレーム(図示せず)に引っ掛けることによってトレー1を取り扱うことができる。このような保持フレームは、特に、収容されたコンテナ60および反転プレート(図示せず)と共にトレー1を反転させるための反転装置の一部であることができ、これにより、反転後、全てのコンテナ60のベース63が反転プレート上に配置され、図3を参照して以下でより詳細に説明するように、コンテナ60は直立して配置される。
【0060】
上側側壁18の外側は、印刷またはラベルなどによってパッケージング構造をラベリングまたはマーキングするために使用することもできる。上側側壁18における結果として提供される領域は、真空カップなどによってトレー1を掴むために使用することもできる。これは、例えば搬送バッグから、吸引カップなどを利用してトレー1が完全に自動的に取り外されることを可能にする。
【0061】
図2cに示したように、全てのコンテナ60はインレー部材3によってカバーされている。インレー部材3は、トレー1の内側に完全に収容され、インレー部材3の上方に、連続的な上側自由空間8aが形成されるように設計されており、この上側自由空間8aにおいて、例えばカバーフィルム5を通って流入するガスまたは蒸気が流れることができる。このために、上側自由空間8aの高さは比較的小さければ十分である。
【0062】
図2cに見られるように、複数の凹所30が、トレー1の座部10に対応する位置において、インレー部材3に形成されており、これらの凹所30に、コンテナ60の下端部が収容される。このために、凹所10は比較的浅くても十分である。例えば、凹所30の高さz2は、僅か1mmまたは数mmであることができる。コンテナ60の下端部が凹所30に詰まることを防止するために、座部30の周囲側壁32は、斜めにかつ半径方向内方へ延びており、座部30の最小直径は、下端部におけるコンテナ60の最大外径より僅かに大きいことができる。
【0063】
インレー部材3は、コンテナ60のベース63上に緩く支持されることができる。インレー部材3の持ち上げられたエッジ34とトレー1の側壁16との間に僅かな横方向遊びが存在することができ、これにより、インレー部材3の持ち上げられたエッジ34とトレー1の側壁16との間に、間隙7が、それぞれ少なくとも部分的に形成されており、この間隙7を通って、ガスまたは蒸気が、上側自由空間8aから下側自由空間8bへ流入することができ、次いで、さらにコンテナの上端部および充填開口67内へ流れることができる。この横方向遊びは、トレー1の側壁16に対するインレー部材3の僅かな横方向移動を生じる可能性があるが、この遊びは、いかなる場合にも、コンテナ60の直径よりも大幅に小さく、例えば、すぐ隣接するコンテナ60の衝突を確実に防止するために、最大で1mmまたは数mmであることができる。
【0064】
別の実施の形態によれば、インレー部材3の持ち上げられたエッジ34は、トレー1の側壁16に直接的に支持されるまたはこれらの側壁16上に支持されることもでき、これにより、インレー部材3は、トレー1における横方向遊びなしに不動に収容される。このような場合、少なくとも1つのくぼみまたは好ましくは複数のくぼみが、インレー部材3の持ち上げられたエッジ34および/またはトレー1の側壁16に沿って設けられており、前記くぼみは、上側自由空間8aを下側自由空間8bに接続しており、これにより、ガスまたは蒸気が妨げられることなく上側自由空間8aから下側自由空間8bへ流入することができる。凹所30のベース31はコンテナ60のベース63に直接的に支持される必要はなく、代わりに、それらの間に狭い間隙を形成することができる。
【0065】
図2cに見られるように、下側座部10はコンテナ60の上端部を位置決めするのに対し、インレー部材3の凹所30はコンテナ60の反対側の下端部を位置決めする。座部10と凹所30との協働により、コンテナ60はこれにより2つの端部において正確に位置決めされる。この位置決めは、トレー1における貯蔵および搬送の間、すぐ隣接するコンテナ60の衝突を確実に防止することができ、これにより、このような衝突の結果として、トレー1に望ましくない粒子が形成されることはできない。2つの端部におけるコンテナ60の位置決めは、原則的に、実質的に遊びを有さないことができ、これにより、コンテナ60は実質的に不動に保持される。しかしながら、原則的に、コンテナ60の両端部にある程度の半径方向遊びを提供することができ、これにより、例えば公差または異なる熱膨張を相殺するために、僅かな範囲まで可動であるようにコンテナ60を保持することができる。
【0066】
図1a~図2bを参照して、以下、本発明による搬送ユニット101のさらなる詳細が説明される。図1aに見られるように、インレー部材3は、トレー1の側壁16の内側輪郭に対応して、実質的に矩形である。狭い間隙7を長手方向側部に沿って形成することができ、狭い間隙7は、上側自由空間8aを下側自由空間8bに接続している(図2c参照)。
【0067】
さらに、インレー部材3の横方向側部は、領域37において波形部分を有し、波形部分は、ほとんどまたは完全にトレー1の側壁16まで延びた突出部と、凹所とを備え、この凹所の領域において、側壁16とインレー部材のエッジとの間に半円形の輪郭の拡大された間隙7’が形成されており、拡大された間隙7’は、上側自由空間8aを下側自由空間8bに接続している(図2c参照)。さらに、図1bによれば、直線的な縁部36が、インレー部材3の各横方向側部に沿って形成されており、直線的な縁部36とトレー1の側壁16との間に間隙7が形成されている。
【0068】
しかしながら、インレー部材3の横方向側部に沿った直線的な縁部36は、絶対に必要であるわけではない。むしろ、本発明の別の実施の形態による搬送構造101の平面図である図1dに示したように、波形部分37は、インレー部材3の横方向側部の全長にわたって延びていることもできる。さらに、インレー部材3の2つの角領域にはくぼみ38が設けられており、これにより、トレー1の丸みのある角領域24と、これらのくぼみ38の領域におけるインレー部材3と、の間には同様に拡大された間隙が形成されており、拡大された間隙は、上側自由空間8aを下側自由空間8bに接続している(図2c参照)。さらに、これらのくぼみ38は、コンテナから持ち上げられかつ取り出されるためにまたはコンテナをカバーするためにトレー1へ挿入されるために、くぼみ38の領域において、手によってまたは掴みツール、例えばロボットによってインレー部材3が掴まれることを許容するように機能する。このために、例えば、人間のオペレータの少なくとも1本の指をくぼみ38に挿入することができるようにくぼみ38は十分に後退させられていなければならない。
【0069】
別の実施の形態によれば、インレー部材3の角領域は、部分的に、トレー1の向き合った角領域24に正確に対応しており、これにより、インレー部材3は専らこれらの角領域においてトレー1の側壁16に支持され、これにより、トレー1に不動に収容される。
【0070】
図1aおよび図1bにも見ることができるように、センサ、特に光電センサによってトレーの向きの検出を可能にするために、トレー1の長手方向側部に沿ってまたはトレー1の2つの互いに反対側の長手方向側部に沿って、上側側壁18に、複数の第1の突出部または凹所28および/または複数の第2の突出部または凹所28’が形成されている。第1の突出部または凹所28は、第2の突出部または凹所28’と異なるように形成されており、これにより、向きまたは位置を明確に検出することができる。
【0071】
さらに、センサ、特に光電センサによってトレーの向きまたは位置の検出を可能にするために、トレー1の横方向側部に沿ってまたはトレー1の2つの互いに反対側の横方向側部に沿って、上側側壁に、複数の第1の突出部または凹所27および/または複数の第2の突出部または凹所27’が形成されている。第1の突出部または凹所27は、第2の突出部または凹所27’と異なるように形成されており、これにより、向きまたは位置を明確に検出することができる。
【0072】
前記凹所27,27’,28,28’または突出部は、好ましくは、上側側壁18の下縁における周囲に形成された延長部19まで延びておらず、これにより、センサによって検出することができる連続的な平坦な面が提供され、この面に沿ってグリッパがセクション25まで移動することができる。これにより、以下でより詳細に説明するように、カバーフィルムをロボットまたは類似の装置によって取り外すことができる。これにより、上側側壁18の外側における連続的な面は、カバーフィルムの自動取外しのための重要な特徴を表している。
【0073】
図1aおよび図1bにも見ることができるように、少なくとも1つの後退部分25が、トレー1の上縁17に沿って形成されており、この後退部分25は、上側側壁18および上縁17に矩形の中空空間を形成している。カバーフィルム5が上縁17に固定されているとき(図2c参照)、カバーフィルム5は、上縁17から完全に引き離されるために、それぞれの中空空間の領域において手によってまたは掴みツールによって容易に掴むことができる。図1aによれば、各後退部分25は、好ましくは、トレー1の角領域に形成されている。後退部分25は、好ましくは、人間のオペレータの指または掴みツールが中空空間においてカバーフィルム5を掴み、次いで、カバーフィルム5を引き離すことができるような十分なサイズである。
【0074】
図1bは、下方へ延びる上側側壁18とトレー1の側壁16の上端との間の前記U字形の自由空間20を示している。
【0075】
本発明の別の実施の形態によるトレー1の座部10の別の詳細が、図1a~図2bを参照して以下に説明され、この場合、軸方向リブ19を座部10の側壁に設けることができる。軸方向リブ19は、明らかに見ることができ、座部10に沿って互いから均等な角度距離で分配されている。軸方向リブ19は、特にトレー1をさらに剛性化するように機能し、これにより、トレー1を比較的薄い材料から製造することができる。インレー部材3の凹所30がトレー1の座部10と正確に整列していることを、図2aに明らかに見ることができる。
【0076】
座部10を備えるトレー1および凹所30を備えるインレー部材3の両方は、好ましくは、熱可塑性材料から形成された薄いプラスチックフィルムまたはプラスチックシートから深絞りまたは熱成形によって製造されている。プラスチックフィルムまたはプラスチックシートの厚さは、特に、0.5mm~1.0mmまたは2.0mmの範囲であることができる。特に、トレー1の座部10の側壁11,12に設けられた上述の軸方向リブ23(図2b参照)は、トレー1の薄い材料を剛性化するように機能し、これにより、薄い材料のために十分な機械的安定性を保証することもできる。
【0077】
図3を参照し、以下、本発明によるパッケージング構造からコンテナを取り出しかつコンテナをさらに処理するための手順のステップが説明される。
【0078】
まず、コンテナが収容されたパッケージング構造が提供される。このために、パッケージング構造が、環境に対して無菌形式で既にシールされているならば、パッケージング構造は既にクリーンルームへ移動させられることができる。
【0079】
その後、ステップS1において、次いで、カバーフィルムが掴まれ、トレーの上縁から引き離される。カバーフィルムと上縁との間の接着剤接続を解放するために、接着剤接続を軟化させるために、特にこの領域において熱を作用させることができる。カバーフィルムの代わりに、別のカバーが提供されているならば、別のカバーは、対応して、トレーの上縁から取り外され、ステップS1において除去される。ステップS1の最後に、トレーにおける全てのコンテナはまだカバーされており、これにより、トレーおよびトレーに収容されたコンテナ内への汚染物質の進入も、まだ確実に防止されている。
【0080】
その後、ステップS2において、インレー部材が、コンテナから持ち上げられ、除去される。このために、インレー部材を、特にくぼみ38(図1b参照)の領域において掴むことができ、これは、人間のオペレータの指によって行うこともできる。ステップS2の最後、トレーにおけるコンテナはもはやカバーされていない。しかしながら、この段階におけるコンテナはまだ上下逆さにトレーの座部に収容されているので、コンテナの充填開口もまだ容易にアクセス可能ではなく、これにより、コンテナへの汚染物質の進入もまだ確実に防止されている。
【0081】
次いで、トレー1は、トレー1に収容されたコンテナと共に、ステップS3において反転させられ、これにより、コンテナは、最終的に、コンテナのさらなる処理のための作業面上に直立して鉛直方向に配置される。反転作業のために、矩形の保持フレームを、まず、トレーの上縁17の下方のU字形の自由空間20(図1a参照)へ導入することができる。次いで、反転プレートが、トレーに収容されたコンテナのベースと接触するまで、反転プレートを、上方からトレーへ挿入することができる。最後に、保持フレームを反転プレートと共に反転させることができる。トレーは、保持フレームによって案内され、これにより、反転プレートに対するトレーおよびトレーに収容されたコンテナのずれは生じない。ステップS3の最後、反転プレートは、一時的に、コンテナのさらなる処理のための作業面として機能する。次いで、さらなる処理のために、コンテナを、下流に提供された別の作業面へ押し付けることができるまたはコンベヤ装置、例えばベルトコンベヤによって搬出することができる。
【0082】
ステップS2においてインレー部材を持ち上げる代わりに、インレー部材の除去は、原則的に、トレーがコンテナおよびインレー部材と一緒に反転させられる前には、省略することもできる。これは、インレー部材“において”、ひいてはトレーにおけるのと同じ配置で、充填開口のみが上向きで、コンテナのさらなる処理を許容する。これは、例えば、充填のために有利である。なぜならば、複数の平行な充填ニードルを、ネストソリューションと共に使用することができるからである。インレー部材におけるコンテナの位置決めは、コンテナの下端部が、インレー部材の凹所において比較的小さな半径方向遊びで収容されているならば、特に有利に安定化させることができる。このために、インレー部材の凹所は十分に持ち上げられることができる。
【0083】
もちろん、上述の反転作業の代わりに、トレーの座部に上下逆さに収容されたコンテナは、例えばロボット等を利用して、ステップS3においてトレーから個々に除去し、さらなる処理のために反転させることもできる。
【0084】
ステップS3の反転作業の後、ステップS4におけるトレーは、反転プレートに配置されたコンテナから鉛直方向に上方へ持ち上げられ、除去される。ステップS4の後、コンテナは、ステップS6におけるさらなる処理のために提供される。この状態において、コンテナは、最初、鉛直方向に直立して向けられている。
【0085】
ステップS6におけるさらなる処理のために、ステップS5におけるコンテナを、後続の処理ステーションへ搬送することができる。ステップS6におけるさらなる処理は、特に、以下の処理ステップ、すなわち、コンテナの洗浄、コンテナの滅菌、コンテナの乾燥、薬剤、医療または美容用途のための少なくとも1つの物質、特に液体または固体の薬剤物質のコンテナへの充填、コンテナへの保護ガス雰囲気の導入、ストッパまたは同等の閉鎖エレメントによるコンテナの閉鎖、適用されたストッパまたはクロージャエレメントへの金属キャップの圧着、コンテナのラベル付け、のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0086】
ステップS3における反転およびステップS4におけるトレーの除去の後、コンテナは、まず反転プレートまたは作業面上に互いに離隔して配置される。これにより、隣接するコンテナの間の衝突もさらに確実に防止され、これにより、コンテナのさらなる処理の間も、コンテナの外面における摩耗または望ましくない引っかき傷の形成、さらにはコンテナの望ましくない破損が、確実に防止される。
【0087】
上記の説明を検討したときに当業者にすぐに明らかになるように、図3によるステップを逆の順序で行うことによって、本発明によるパッケージング構造に、コンテナを装填し、次いで閉鎖し、無菌形式でシールすることができる。
【0088】
上記の説明を検討したときに当業者にすぐに明らかになるように、本発明の意味における搬送ユニットの主要なエレメントは、特に、比較的小さな厚さの薄いプラスチックフィルムまたはプラスチックシートから深絞りすることによって、容易にかつ費用対効果高く形成することができる。これは、特に、ワンピースで形成された、複数の座部を備える上述のトレーに該当する。座部10(図2c参照)の側壁11,12が斜めにかつ半径方向内方へ延びている場合にも、本発明による座部10は、互いに極めて近くに配置することができる。なぜならば、本発明によれば、座部は、トレーの全高にわたって延びていなくてもよく、その代わりに、トレーの下側領域において比較的小さい高さでのみ形成されていれば十分であるからである。これにより、本発明によれば、極めて高いパッキング密度を達成することができる。しかしながら、インレー部材の凹所との座部の相互作用により、コンテナがトレーに収容されたとき、2つの端部におけるコンテナの極めて正確でかつ安定した位置決めを達成することができる。本発明によれば、コンテナを、トレーの座部とインレー部材の凹所との間に実質的に不動に保持することができる。
【0089】
すなわち、パッケージング構造内でのすぐ隣接するコンテナの間の衝突は、常時、また、パッケージング構造の開閉の間、また、コンテナの挿入および除去の間にも、確実に防止され、これにより、このような衝突の結果として生じる汚染も、パッケージング構造内において確実に防止される。
【0090】
したがって、それぞれ比較的浅い座部および凹所を備えるトレーおよびインレー部材のジオメトリは、比較的小さな厚さの薄いプラスチックフィルムまたはプラスチックシートから深絞り成形することによる製造に著しく適している。
【0091】
コンテナは、トレーの座部に上下逆さに収容され、パッケージング構造の開閉の間もインレー部材によって完全にカバーされているので、コンテナへの汚染物質の望ましくない進入をほとんど回避することができる。
【0092】
コンテナの充填開口は、コンテナが座部に収容されているとき、トレーの座部のベースから離隔されて配置されており、本発明によれば、連続的なガス流路が、コンテナ60の充填開口67まで、カバーフィルムと上側自由空間8a(図2c参照)との間に確保されているので、パッケージング構造100内のコンテナ60は、外側および内側において、トレー1の上縁17に固定されたカバーフィルム5を通って流入するガスまたは蒸気によって、例えばエチレンオキシド(EO)滅菌プロセスに関連して、確実に滅菌することもできる。
【0093】
前記連続的なガス流路は、特に、トレーに収容されたインレー部材とトレーの側壁との間に、間隙が少なくとも部分的に形成され、間隙を介して、上側自由空間8a(図2c参照)がコンテナ60の充填開口67と連通していることによって得られる。
【0094】
トレーの座部の安定性は、座部の側壁に軸方向リブが設けられるとさらに高めることができる。これらは、コンテナと座部の側壁との間の接触点も減じ、これは、さらに、摩擦および摩耗の結果としてパッケージング構造内に生じる汚染の危険性を減じる。
【0095】
本発明による搬送ユニットおよびパッケージング構造は、これにより、単純かつ費用対効果の高い設計と共に多くの利点を提供する。
【0096】
上記の説明を検討した当業者にすぐに明らかになるように、バイアルの代わりに、円筒状の基本形状のカルプルまたは同等の薬剤コンテナが、本発明によるパッケージング構造において搬送および貯蔵されることができる。
【0097】
カルプルも、通常、本体を有する。本体は、円筒状の側壁によって形成されており、テーパした肩部および狭まったネック部分によって隣接されている。狭まったネック部分は、排出開口が形成された拡大した上縁へ移行している。排出開口は、通常、隔壁等を備えるストッパによって閉鎖されている。ストッパは、圧着されたまたはフランジ付きの金属蓋によって上縁に軸方向で固定されている。カルプルの反対側の端部には、充填しかつその後にピストンを収容するための充填開口が設けられている。カルプルは、同様に、トレーの座部に上下逆さに収容することができる。充填開口を通じたカルプル内への汚染物質の望ましくない進入をできるだけ防止するために、カルプルは、代替的に、トレーの座部に直立して収容されることもできる。
【0098】
上記の説明を検討したときに当業者にすぐに明らかになるように、トレーおよび平坦なインレー部材を有する上述の搬送ユニットは、コンテナが収容されることなくかつカバーまたはカバーフィルムがトレーに配置されることなく、それ自体で販売されることもできる。しかしながら、本発明によるパッケージング構造は、好ましくは、コンテナが、トレーに収容されたコンテナおよびトレーに配置されたカバーまたはカバーフィルムと一緒に、例えば、薬剤活性物質の製造業者または充填業者へ販売される。コンテナは、極めて特に好ましくは、パッケージング構造に無菌形式で貯蔵され、パッケージング構造が開放された後、さらなる処理のために即座に使用するための準備が整う。
【0099】
原則的に、本発明による搬送ユニットおよびパッケージング構造の主要なエレメントが、プラスチックを用いた3Dプリンティング法によって製造されることも考えられる。すなわち、独立請求項によって独立した発明として明確に請求されることもできる本発明の別の態様は、命令またはコマンドを含む、内部コンピュータネットワークなどのネットワークまたはインターネットを介した送信のための、コンピュータ読取り可能またはプロセッサ読取り可能ファイルに関し、命令またはコマンドは、コンピュータまたはプロセッサによってロードされると、コンピュータまたはプロセッサによって制御される3Dプリンタに、本願に開示されているように、適切な材料、特にプラスチック材料から、三次元の形式で、保持構造をプリントさせる。
【符号の説明】
【0100】
1 トレー
3 インレー部材
5 (無菌の)カバーフィルム
7 間隙
7’ 拡大された間隙
8a 上側自由空間
8b 下側自由空間
10 座部
11 下側側壁
12 上側側壁
13 下側挿入斜面
14 上側挿入斜面
15 接続部分
16 側壁
17 上縁
18 上側側壁
19 周囲延長部
20 U字形の自由空間
21 座部10の底部
22 支持ウェブ
23 リブ
24 丸みのある角領域
25 角領域24の後退部分
26 自由空間
27 横方向側部における第1の凹所
27’ 横方向側部における第2の凹所
28 長手方向側部における第1の凹所
28’ 長手方向側部における第2の凹所
29 支持ウェブ22の間の空間
30 座部
31 座部30のベース
32 座部30の側壁
33 接続部分
34 持ち上げられたエッジ
35 長手方向側部
36 横方向側部における直線的な縁部
37 横方向側部における波形の縁部
38 くぼみ
51 接続領域/接着剤エッジ
60 バイアル/コンテナ
62 円筒状の側壁
63 ベース
64 肩部
65 狭まったネック部分
66 上縁
67 充填開口
70 間隙
71 間隙
100 (無菌の)パッケージング構造
101 搬送ユニット
z1 高さ
z2 高さ
z3 高さ
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3