(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】表示光出射装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20230731BHJP
A42B 3/04 20060101ALI20230731BHJP
B62J 99/00 20200101ALN20230731BHJP
【FI】
G01C21/36
A42B3/04
B62J99/00
(21)【出願番号】P 2019209468
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018238198
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 元樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直哉
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠祐
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-065593(JP,A)
【文献】特開2007-315797(JP,A)
【文献】特開2012-058083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
A42B 3/04
B62J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在地から所定の案内地点までの距離を示す距離情報と、当該案内地点における進行方向を示す方向情報とを取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された方向情報に基づいて、前記案内地点における進行方向を示す案内画像を生成し、ヘルメットに設けられたコンバイナに当該案内画像を表示させるための表示光を出射する画像出力部とを備えた表示光出射装置であって、
前記画像出力部は、前記情報取得部により取得された距離情報に基づいて現在地から前記案内地点までの距離が所定距離未満であると判定した場合には、前記案内画像を表示させるための表示光を出射する通常出力処理と表示光の出射を停止する停止処理とを所定のタイミングで繰り返し行うとともに、前記案内画像の優先表示要求を検出したときに、前記停止処理に優先して前記案内画像を表示させるための表示光を出射する優先出力処理を一定時間継続して行うように構成され、
さらに、前記画像出力部は、前記優先出力処理が行われたとき、当該優先出力処理の終了時から当該優先出力処理後に行われる前記通常出力処理が開始されるまでの間隔推定を行い、当該間隔推定により得られた間隔が所定未満である場合には、前記優先出力処理を前記通常出力処理が開始されるまで継続して行うように構成されていることを特徴とする表示光出射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示光出射装置において、
前記画像出力部は、前記情報取得部により取得された距離情報に基づいて前記間隔推定を行うように構成されていることを特徴とする表示光出射装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表示光出射装置において、
前記画像出力部は、ユーザにより行われた案内画像の表示操作を、前記案内画像の優先表示要求として検出するように構成されていることを特徴とする表示光出射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の表示光出射装置において、
前記情報取得部は携帯電話と接続され、当該携帯電話の状態を取得可能に構成され、
前記画像出力部は、前記情報取得部が前記携帯電話の着信状態を取得したことを、前記案内画像の優先表示要求として検出し、前記案内画像には、着信状態を示す情報を表示するように構成されていることを特徴とする表示光出射装置。
【請求項5】
現在地から所定の案内地点までの距離を示す距離情報と、当該案内地点における進行方向を示す方向情報とを取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された方向情報に基づいて、前記案内地点における進行方向を示す案内画像を生成し、ヘルメットに設けられたコンバイナに当該案内画像を表示させるための表示光を出射する画像出力部とを備えた表示光出射装置であって、
前記画像出力部は、前記情報取得部により取得された距離情報に基づいて現在地から前記案内地点までの距離が所定距離未満であると判定した場合には、前記案内画像を表示させるための表示光を出射する通常出力処理と表示光の出射を停止する停止処理とを所定のタイミングで繰り返し行うとともに、前記案内画像の優先表示要求を検出したときに、前記停止処理に優先して前記案内画像を表示させるための表示光を出射する優先出力処理を一定時間継続して行うように構成され、
さらに、前記画像出力部は、前記優先出力処理が行われたとき、当該優先出力処理の終了時から当該優先出力処理後に行われる前記通常出力処理が開始されるまでの間隔推定を行い、当該間隔推定により得られた間隔が所定未満である場合には、前記通常出力処理を禁止するように構成されていることを特徴とする表示光出射装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の表示光出射装置において、
前記画像出力部は、前記案内画像の表示の開始時には、前記案内画像をフェードインさせるとともに、前記案内画像の表示の終了時には、前記案内画像をフェードアウトさせるように前記表示光を出射することを特徴とする表示光出射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットに設けられたコンバイナに表示させる画像を出力する表示光出射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定の案内地点までの距離を示す距離情報と、当該案内地点における進行方向を示す方向情報とを通信機器から受信する無線通信部と、無線通信部により受信された距離情報と方向情報とに基づいて、案内地点における進行方向を示す案内画像を生成し、ヘルメットに設けられたコンバイナに当該案内画像を表示させるための表示光を出射する画像出力部とを備えた表示光出射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような表示光出射装置において、無線通信部により受信された距離情報に示される距離が所定の基準距離を下回るときに、コンバイナに案内画像を表示させるための表示光を出射する通常出力処理を行うように構成することで、ヘルメットのユーザは案内地点に到達するまでに複数回、進行方向を見て確認しておくことができるという利点がある。また、ユーザが次の進行方向を確認したくなったときのように、ヘルメットに設けたスイッチが押されたという条件が満たされたときに、コンバイナに案内画像を表示させるための表示光を出射する優先出力処理を行うことで、ユーザの要求に応じて案内画像を表示させることができ、より一層の利便性向上が図られる。
【0005】
しかし、このようにすると、ユーザの要求に応じて優先出力処理を行った後、すぐに通常出力処理が行われるようなタイミングにあった場合、優先出力処理による案内画像が消えた後、同じ案内画像が通常出力処理によって表示されることになり、しかもその間隔が短いとユーザはチラつきを感じてしまい、ユーザの目への負担が大きくなることが考えられる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヘルメットのユーザの目への負担を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、現在地から所定の案内地点までの距離を示す距離情報と、当該案内地点における進行方向を示す方向情報とを取得する情報取得部と、前記情報取得部により取得された方向情報に基づいて、前記案内地点における進行方向を示す案内画像を生成し、ヘルメットに設けられたコンバイナに当該案内画像を表示させるための表示光を出射する画像出力部とを備えた表示光出射装置であって、前記画像出力部は、前記情報取得部により取得された距離情報に基づいて現在地から前記案内地点までの距離が所定距離未満であると判定した場合には、前記案内画像を表示させるための表示光を出射する通常出力処理と表示光の出射を停止する停止処理とを所定のタイミングで繰り返し行うとともに、前記案内画像の優先表示要求を検出したときに、前記停止処理に優先して前記案内画像を表示させるための表示光を出射する優先出力処理を一定時間継続して行うように構成され、さらに、前記画像出力部は、前記優先出力処理が行われたとき、当該優先出力処理の終了時から当該優先出力処理後に行われる前記通常出力処理が開始されるまでの間隔推定を行い、当該間隔推定により得られた間隔が所定未満である場合には、前記優先出力処理を前記通常出力処理が開始されるまで継続して行うように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ユーザが案内地点まで次第に近づき、現在地から案内地点までの距離が所定距離未満になった場合には、案内画像の通常出力処理と停止処理とが所定のタイミングで複数回繰り返し行われるので、ユーザは案内地点に到達するまでの間に、次の進行方向を確認することが可能になる。また、案内画像の優先表示要求が行われた場合には、停止処理に優先して案内画像の優先出力処理が行われるので、例えばユーザが確認したいときに次の進行方向を確認することが可能になる。そして、優先出力処理と、その後に行われる通常出力処理との間隔が短い場合には、優先出力処理が通常出力処理の開始時まで継続される。これにより、案内画像をコンバイナに表示させたままにできるので、案内画像を消した直後に再び表示させる処理に比べ、ヘルメットのユーザの目への負担を低減できる。
【0009】
第2の発明は、前記画像出力部は、前記情報取得部により取得された距離情報に基づいて前記間隔推定を行うように構成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、距離情報に基づくことで、優先出力処理の終了時から当該優先出力処理後に行われる通常出力処理が開始されるまでの間隔推定の結果が正確になる。
【0011】
第3の発明は、前記画像出力部は、ユーザにより行われた案内画像の表示操作を、前記案内画像の優先表示要求として検出するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、例えばユーザが次の案内地点における案内画像を確認すべく、スイッチやボタンを操作することがあり、このことは案内画像の優先表示要求に相当する。したがって、ユーザにより行われた案内画像の表示操作を、案内画像の優先表示要求として検出することで、優先表示要求を的確に検出することができる。
【0013】
第4の発明は、前記情報取得部は携帯電話と接続され、当該携帯電話の状態を取得可能に構成され、前記画像出力部は、前記情報取得部が前記携帯電話の着信状態を取得したことを、前記案内画像の優先表示要求として検出し、前記案内画像には、着信状態を示す情報を表示するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、携帯電話が着信状態になったときに、コンバイナに案内画像が表示されるとともに、着信状態を示す情報も表示されるので、ユーザは携帯電話が着信状態にあることを把握できるとともに、次の進行方向も把握できる。着信状態を示す情報には、相手の名前や名称等を含むことができる。
【0015】
第5の発明は、現在地から所定の案内地点までの距離を示す距離情報と、当該案内地点における進行方向を示す方向情報とを取得する情報取得部と、前記情報取得部により取得された方向情報に基づいて、前記案内地点における進行方向を示す案内画像を生成し、ヘルメットに設けられたコンバイナに当該案内画像を表示させるための表示光を出射する画像出力部とを備えた表示光出射装置であって、前記画像出力部は、前記情報取得部により取得された距離情報に基づいて現在地から前記案内地点までの距離が所定距離未満であると判定した場合には、前記案内画像を表示させるための表示光を出射する通常出力処理と表示光の出射を停止する停止処理とを所定のタイミングで繰り返し行うとともに、前記案内画像の優先表示要求を検出したときに、前記停止処理に優先して前記案内画像を表示させるための表示光を出射する優先出力処理を一定時間継続して行うように構成され、さらに、前記画像出力部は、前記優先出力処理が行われたとき、当該優先出力処理の終了時から当該優先出力処理後に行われる前記通常出力処理が開始されるまでの間隔推定を行い、当該間隔推定により得られた間隔が所定未満である場合には、前記通常出力処理を禁止するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ユーザが案内地点まで次第に近づき、現在地から案内地点までの距離が所定距離未満になった場合には、案内画像の通常出力処理と停止処理とが所定のタイミングで複数回繰り返し行われるので、ユーザは案内地点に到達するまでの間に、次の進行方向を確認することが可能になる。また、案内画像の優先表示要求が行われた場合には、停止処理に優先して案内画像の優先出力処理が行われるので、例えばユーザが確認したいときに次の進行方向を確認することが可能になる。そして、優先出力処理と、その後に行われる通常出力処理との間隔が短い場合には、優先出力処理が行われ、通常出力処理が禁止されるので、優先出力処理の直後に通常出力処理が行われることはない。よって、チラつきを防止することができ、ヘルメットのユーザの目への負担を低減できる。
【0017】
第6の発明は、前記画像出力部は、前記案内画像の表示の開始時には、前記案内画像をフェードインさせるとともに、前記案内画像の表示の終了時には、前記案内画像をフェードアウトさせるように前記表示光を出射することを特徴とする。
【0018】
これにより、案内画像の表示の開始時には、コンバイナに表示される画像が徐々に明るくなる一方、案内画像の表示の終了時には、コンバイナに表示される画像が徐々に暗くなるので、ヘルメットのユーザの目への負担を低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、案内画像のチラつきを防止することができるので、ヘルメットのユーザの目への負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態1に係る表示光出射装置を備えたナビゲーションシステムの構成を示す外観図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る表示光出射装置を備えたナビゲーションシステムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】画像出力部により出力される案内画像の一例を示す図である。
【
図4A】現在地から目的地までの距離を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図4B】案内地点の名称を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図4C】レーンガイダンス情報を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図4D】リルート状態を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図5A】着信状態を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図5B】発信状態を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図5C】通話中を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図5D】終話を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図6A】ヘッドアップディスプレイ装置のバッテリ残量を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図6B】スマートフォンのバッテリ残量を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図7A】エラーを表示する案内画像の例を示す図である。
【
図7B】通信が接続された状態を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図7C】通信が切断された状態を表示する案内画像の例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係る表示光出射装置によって実行される定常動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態1に係る表示光出射装置によって実行される臨時動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態1に係る表示光出射装置の動作を例示するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る表示光出射装置を備えたナビゲーションシステム1を示している。このナビゲーションシステム1は、通信機器としてのスマートフォン(携帯電話)10と、ヘルメット20とを備えており、自動二輪車用のものである。尚、ナビゲーションシステム1は、自動二輪車以外の乗物、例えば、水上バイク、自転車、スノーモービル(雪上バイク)などにおいても使用することが可能である。
【0023】
スマートフォン10は、電話機能及び電話回線を利用したデータ通信機能を有するとともに、
図2に示すように、Bluetooth(登録商標)を用いた無線通信を行う無線通信インターフェース11と、GPS受信機12と、記憶部10aと、タッチ操作パネル10bとを備えている。このスマートフォン10には、スマートフォン10のOSであるモバイルオペレーションシステム13と、モバイルオペレーションシステム13上で、GPS受信機12により取得された位置情報等を用いて稼働するカーナビゲーションサービスアプリケーション(以下、「カーナビアプリ」と呼ぶ)14とが搭載されている。カーナビアプリ14は、独自の地図情報を保有していてもよいし、スマートフォン10の記憶部10aに記憶されている地図情報を利用してもよいし、必要な地図情報をインターネット経由でダウンロードして用いてもよい。モバイルオペレーションシステム13やカーナビアプリ14のプログラム、地図情報は記憶部10aに記憶させておくことができる。地図情報には、道路情報や交差点名等も含まれている。
【0024】
タッチ操作パネル10bは、例えば液晶ディスプレイ等を含んでおり、モバイルオペレーションシステム13で生成されたユーザインターフェース、各種画像、カーナビアプリ14の実行画面、各種設定画面等を表示可能に構成されている。また、タッチ操作パネル10bは、例えば感圧式の操作検出手段等も含んでおり、ユーザによるタッチ操作を受け付けるように構成されている。
【0025】
GPS受信機12は、従来から周知の現在地測位用の機器であり、ほぼリアルタイムで高精度に現在地を測位することができるように構成されている。GPS受信機12で得られた位置情報はモバイルオペレーションシステム13やカーナビアプリ14で利用されるようになっている。GPS受信機12で得られた位置情報に基づいて移動速度も算出することができる。スマートフォン10は、ヘルメット20を装着したユーザ(自動二輪車のライダー)が所持していることが前提であり、これにより、ユーザ、即ち自動二輪車の現在位置情報及び速度情報を取得することができる。スマートフォン10は、自動二輪車に着脱可能に取り付けられていてもよいし、GPS信号を受信可能なバッグ等に収容されていてもよい。
【0026】
スマートフォン10は、カーナビアプリ14を用い、GPS受信機12で得られた位置情報(現在位置情報)とタッチ操作パネル10b上で入力された目的地情報とに基づいて現在地から目的地までの経路を自動で探索し、経路設定を行うことができるように構成されている。案内中、現在位置が予め設定された経路から外れた場合には経路の再探索を自動的に実行する、いわゆるオートリルート機能も搭載されている。また、現在地から目的地までの距離(残距離)及び到着予想時刻を算出することもできるように構成されている。また、現在地から目的地までの経路上には、例えば交差点や分岐等の案内地点が複数存在しており、各案内地点での進行方向も経路設定によって決定されている。カーナビアプリ14は、地図情報と現在地情報とに基づいて、現在地から次の案内地点までの距離及び現在地から次の案内地点に到達するまでの時間を算出するように構成されている。したがって、カーナビアプリ14は、上述した各情報、例えば、現在地から所定の案内地点までの距離を示す距離情報と、当該案内地点における進行方向を示す方向情報と、現在地から所定の案内地点への道路上の移動速度を示す速度情報とを所定の時間間隔(例えば1秒毎)で取得することが可能になる。
【0027】
スマートフォン10は、カーナビアプリ14で取得した各情報、例えば距離情報、方向情報、速度情報及び残距離を、無線通信インターフェース11による無線通信によって送信するようになっている。方向情報には、進行すべきレーン(車線)を案内するレーンガイダンス情報も含まれている。案内地点に名称がある場合には、その名称も無線通信インターフェース11による無線通信によって送信するようになっている。尚、目的地が設定されていない(経路設定がなされていない)場合には、距離情報、方向情報は送信しない。
【0028】
カーナビアプリ14は、設定された経路上に渋滞があるか否か等のリアルタイム情報も通信回線を利用して取得できるように構成されている。リアルタイム情報も無線通信インターフェース11による無線通信によって送信するようになっている。
【0029】
また、スマートフォン10は、電話の着信があった場合には着信状態であること、電話による通話中である場合には通話中であること、電話の通話が終わった場合には終話したことを、それぞれ無線通信インターフェース11による無線通信によって送信する。さらに、スマートフォン10が有するバッテリの残量も無線通信インターフェース11による無線通信によって送信する。これらスマートフォン10の状態は、Bluetoothを用いて送信されるように構成されている。
【0030】
図1に示すように、ヘルメット20の前面側には、当該ヘルメット20の装着者の額部と顎部との間に対向するように窓孔21が形成されている。該窓孔21の周縁部の左右両側には、透光性を有するシールド22が上下方向に回動することで窓孔21を開閉するように取り付けられている。ヘルメット20の外表面における窓孔21よりも当該ヘルメット20の装着者から見て左側、すなわち当該ヘルメット20の装着者の耳に対応する位置には、第1及び第2のスイッチ23,24が配設されている。また、ヘルメット20の窓孔21の上縁部における左右方向中央よりも当該ヘルメット20の装着者から見て右寄りの箇所には、半透明の板状のコンバイナ26が、取付部材27を介して内側から取り付けられている。ヘルメット20の窓孔21の下方には、本発明の実施形態1に係る表示光出射装置30と、当該表示光出射装置30によって出射された表示光をコンバイナ26に投射するミラー28とが内蔵されている。案内画像が表示光出射装置30にて生成され、その案内画像に応じた表示光が表示光出射装置30から出射された後にミラー28で反射される。そして、ミラー28で反射された表示光が、コンバイナ26に投光されて、コンバイナ26でヘルメット装着者の視界に入るようにさらに反射される。これにより、ヘルメット装着者は、コンバイナ26越しに前方視界の風景に重畳した状態で表示光による表示像を虚像として視認することができる。
【0031】
表示光出射装置30とコンバイナ26とミラー28とで、ヘッドアップディスプレイ装置40が構成されている。ヘッドアップディスプレイ装置40には、
図2に示すバッテリ50から電力が供給されるようになっている。バッテリ50はヘルメット20に内蔵することができる。
【0032】
表示光出射装置30は、
図2に示すように、Bluetoothを用いてスマートフォン10と通信可能な無線通信部としてのBluetoothモジュール31と、Bluetoothモジュール31により受信された情報に基づいて、コンバイナ26に表示させる画像を生成し、生成した画像をコンバイナ26に表示させるための表示光を出射する画像出力部32とを備えている。表示光出射装置30は、第1及び第2のスイッチ23,24の操作状態を検出可能に構成されており、第1のスイッチ23が長押しされた(例えば数秒間以上連続して押された)ことを検出すると、起動するようになっている。
【0033】
Bluetoothモジュール31は、スマートフォン10の無線通信インターフェース11に接続され、無線通信インターフェース11から送信される各種情報を取得する情報取得部である。スマートフォン10の無線通信インターフェース11から送信される各種情報には、現在地から所定の案内地点までの距離を示す距離情報、当該案内地点における進行方向を示す方向情報(レーンガイダンス情報を含む)、現在の速度を示す速度情報、残距離、到着予想時刻、案内地点の名称等が含まれている。さらに、Bluetoothモジュール31は、スマートフォン10の状態として、着信状態、通話中状態、終話に関する情報、電池の残量に関する情報等も取得する。これらの情報は、情報が更新される毎に取得するようにしてもよいし、取得する時間間隔を決めて取得するようにしてもよい。この実施形態1では、1秒毎に取得するようにしている。尚、目的地が設定されていない(経路設定がなされていない)場合には、距離情報、方向情報は取得しない。
【0034】
画像出力部32は、マイクロコンピュータ32aと、フラッシュROM(Read Only Memory)32bと、マイクロコンピュータ32aによる指示に基づいて、フラッシュROM32bに記憶されている図柄等を組み合わせて案内画像を生成するGDC(Graphics Display Controller)32cと、GDC32cにより生成された案内画像をコンバイナ26に表示させるための表示光を出射するLCOS(Liquid Crystal on Silicon)32dとを備えている。画像出力部32の構成は上述した構成に限られるものではなく、ヘッドアップディスプレイ装置として使用されている構成を利用することができる。
【0035】
具体的には、画像出力部32は、Bluetoothモジュール31で取得された情報に基づいて、例えば
図3に示すような案内画像33を生成し、コンバイナ26に案内画像33を表示させるための表示光を出射する。案内画像33は、方向距離表示領域33Aと、各種情報表示領域33Bとに区画することができる。この例では、方向距離表示領域33Aが案内画像33の上半部に設定され、各種情報表示領域33Bが案内画像33の下半部に設定されているが、これに限られるものはない。
【0036】
方向距離表示領域33Aには、現在地から所定の案内地点までの距離を表示する距離表示領域33aと、所定の案内地点における進行方向を表示する方向表示領域33bとが左右方向に並ぶように設けられている。距離表示領域33aでは、所定の案内地点までの距離が遠い場合には単位が「km」で表示され、所定の案内地点までの距離が1kmを未満になると単位が「m」で表示されるようにしてもよい。方向表示領域33bには、矢印等の進行方向指示画像が表示される。各種情報表示領域33Bには、現在地から目的地まで所要時間の推定値(到着予想時刻33cを表示することができる。また、各種情報表示領域33Bには現在時刻を表示させるようにしてもよい。現在時刻は、スマートフォン10から取得するようにしてもよいし、表示光出射装置30が持つ時刻情報から取得するようにしてもよい。
【0037】
図4Aに示すように、各種情報表示領域33Bには、現在地から目的地までの残距離33dを表示することもできる。
図4Bに示すように、各種情報表示領域33Bには、案内地点の名称33eを表示することもできる。
図4Cに示すように、各種情報表示領域33Bには、レーンガイダンス情報33fを表示することもできる。
図4Dに示すように、各種情報表示領域33Bには、リルート状態にあることを示すリルート情報33gを表示することもできる。所要時間の推定値33c、残距離33d、案内地点の名称33e及びレーンガイダンス情報33fのうちの任意の1つを、例えばユーザが第1及び第2のスイッチ23,24やスマートフォン10等を操作することによって選択できる。リルート情報33gは、リルートが行われているときに他の表示に代わって自動的に表示される。
【0038】
図5Aに示すように、各種情報表示領域33Bには、電話が着信状態にあることを示す着信マーク33hを着信中に表示することもできる。
図5Bに示すように、各種情報表示領域33Bには、電話が発信状態にあることを示す発信マーク33iを発信中に表示することもできる。
図5Cに示すように、各種情報表示領域33Bには、電話が通話状態にあることを示す通話中マーク33jを通話中に表示することもできる。着信マーク33h、発信マーク33i及び通話中マーク33jと共に、相手の名前や名称等の相手情報を表示することができる。相手情報はスマートフォン10から取得することができる。また、
図5Dに示すように、各種情報表示領域33Bには、電話が終了したことを示す終話マーク33kを数秒程度の短時間のみ表示することもできる。着信マーク33h、発信マーク33i、通話中マーク33j及び終話マーク33kは、スマートフォン10から送信される電話に関する情報に基づいて自動的に表示され、他の表示に優先される。着信マーク33h、発信マーク33i、通話中マーク33j及び終話マーク33kが消去されると、前の情報が再表示される。
【0039】
図6Aに示すように、各種情報表示領域33Bには、ヘッドアップディスプレイ装置40のバッテリ残量33lを表示することもできる。
図6Bに示すように、各種情報表示領域33Bには、スマートフォン10のバッテリ残量33mを表示することもできる。バッテリ残量33l、33mは、数値との組み合わせで表示することができる。バッテリ残量33l、33mは、例えばユーザが第1及び第2のスイッチ23,24等を操作することにより、他の表示に代わって表示される。表示後、数秒程度の短時間で消去されて表示前の情報が再表示される。
【0040】
図7Aに示すように、各種情報表示領域33Bには、エラーマーク33nを表示することもできる。エラーマーク33nは、装置の異常時等に他の表示に代わって表示され、異常の程度によって長時間表示してもよいし、短時間表示してもよい。エラーマーク33nには、エラー番号を含むことができる。エラー番号は、装置の異常部位を示す番号等である。
図7Bに示すように、各種情報表示領域33Bには、通信が接続された状態を表示する接続マーク33pを表示することもでき、具体的にはBluetoothモジュール31による通信の接続が成功した時点から数秒間の短時間だけ表示する。
図7Cに示すように、各種情報表示領域33Bには、通信が切断された状態を表示する切断マーク33rを表示することもでき、具体的にはBluetoothモジュール31による通信が何らかの原因によって切断された場合、切断された時点から数秒間の短時間だけ表示する。エラーマーク33n、接続マーク33p及び切断マーク33rを表示するときには、距離及び進行方向を消去する。
【0041】
尚、画像出力部32による案内画像の出力は、第1のスイッチ23が短押しされることで、強制的に停止できるようになっている。
【0042】
以下、上述のように構成されたナビゲーションシステム1の動作について説明する。
【0043】
まず、自動二輪車等の運転者が、カーナビアプリ14を起動させた状態のスマートフォン10を所持または自動二輪車に取付等した状態で、ヘルメット20を装着して第1のスイッチ23を長押しすると、表示光出射装置30が起動する。カーナビアプリ14を起動させた状態のスマートフォン10は、1秒毎に更新される各種情報を無線通信インターフェース11による無線通信によって送信している。表示光出射装置30は、起動後、Bluetoothモジュール31によるスマートフォン10との無線通信が成功すると、
図7Bに示すように、接続マーク33pを表示した案内画像を生成して出力する。経路設定がなされたスマートフォン10との無線通信が行われている間、
図8のフローチャートに示す定常動作を繰り返し実行する。経路が消去されると定常動作は停止する。
【0044】
定常動作の開始後、まず、ステップS101において、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aが、カウント値kを1に初期化する。この値は便宜上設定しているだけである。
【0045】
次に、ステップS102では、Bluetoothモジュール31が、スマートフォン10により送信された各種情報、例えば次の案内地点までの距離情報を含む各情報を受信する。その後、ステップS103に進む。ステップS103では、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aが、ステップS102でBluetoothモジュール31により受信された距離情報に示される距離D(次の案内地点までの距離)が所定の基準距離Rk未満であるか否かを判定する。ここで、R1~R6は、順に、5km、4km、3km、2km、1km、0.5kmに設定されており、R1が最も長く、R6が最も短くなっている。R1~R6の距離は、上記した距離に限られるものではなく、任意の距離に設定することができる。また、Rkの数は、6に限られるものではなく、2以上の任意の数に設定することができる。
【0046】
ステップS103でNOと判定された場合は、次の案内地点までの距離Dが所定の基準距離Rk以上であり、この場合は、ステップS102に進む。Rkが最も長いR1のときには基準距離が5kmとなり、このときにステップS103でNOと判定されたということは、現在地から次の案内地点まで5km以上離れているということである。つまり、現在地から次の案内地点までの距離が十分に長いので、次の案内地点の案内を行う必要がない状況であり、この場合には、ステップS106やステップS107の案内画像出力ステップには進まず、ステップS102に戻り、スマートフォン10から距離情報を受信する。その後、ステップS103に進み、上述したように画像出力部32のマイクロコンピュータ32aが、距離Dが所定の基準距離Rk未満であるか否かを判定する。最も長い基準距離であるR1は、例えば10km以下に設定するのが好ましく、より好ましくは8km以下、さらに好ましいのは5km以下である。R1は、3km以上に設定するのが好ましい。
【0047】
一方、ステップS103においてYESと判定されて距離Dが所定の基準距離Rk未満である場合にはステップS105に進み、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aが、カウント値k=6であるか否かを判定する。ステップS105に進むということは、現在地から次の案内地点までの距離Dが5km未満であり、次の案内地点に到達するまでの時間が短くなったということである。ステップS105でNOと判定されてk=6でない、即ちカウント値k=1~5であると判定された場合には、ステップS107に進み、画像出力部32が、案内画像を生成してコンバイナ26に表示させるための表示光を出射し続ける。これにより、案内画像が表示され、その表示時間は例えば10秒間に設定することができるが、案内画像の種類に応じて変更することもできる。すなわち、10秒間、画像出力部32のGDC32cが、マイクロコンピュータ32aの指示により案内画像を生成し、LCOS32dが、GDC32cによって生成された案内画像をコンバイナ26に表示させるための表示光を出射する。また、Bluetoothモジュール31により受信される距離情報は1秒毎に更新されるので、生成される案内画像も1秒毎に更新される。表示光の出射を開始してから10秒経過すると、表示光の出射を終了する。このステップS107の処理が、案内画像を表示させるための表示光を出射する通常出力処理である。表示光の出射を開始してから10秒経過すると通常出力処理が終了して、表示光の出射を停止する停止処理に移行する。案内画像を常時表示させることなく、停止処理を行うようにしているので、消費電力を抑制することができる。
【0048】
ステップS107に続くステップS108では、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aが、カウント値kに1を加算してステップS102に戻り、スマートフォン10から距離情報を受信する。その後、ステップS103に進む。ステップS103において、RkがR2になっていれば、現在地から次の案内地点までの距離Dが4km未満であるか否かを判定し、RkがR3になっていれば、現在地から次の案内地点までの距離Dが3km未満であるか否かを判定し、RkがR4になっていれば、現在地から次の案内地点までの距離Dが2km未満であるか否かを判定し、RkがR5になっていれば、現在地から次の案内地点までの距離Dが1km未満であるか否かを判定し、RkがR6になっていれば、現在地から次の案内地点までの距離Dが0.5km未満であるか否かを判定することになる。
【0049】
例えば、現在地から次の案内地点までの距離Dが5km以上離れていて、そこから次の案内地点へ向かって走行していると仮定する。ステップS103における判定の基準距離はR1である。現在地から次の案内地点までの距離Dが5km未満になると、ステップS103でYESとなり、ステップS105でNOと判定されてステップS107で10秒間だけ案内画像が表示され(通常出力処理)、ステップS108でRkがR2となり、ステップS102に進む。通常出力処理の開始前、及び通常出力処理の終了後は、表示光の出射を停止する停止処理が行われる。
【0050】
案内地点に更に近づき、現在地から案内地点までの距離Dが4km未満になると、ステップS103においてR2を基準距離として判定されるのでYESとなり、ステップS105でNOと判定されてステップS107で10秒間だけ案内画像が表示され、ステップS108でRkがR3となり、ステップS102に進む。
【0051】
案内地点に更に近づき、現在地から案内地点までの距離Dが3km未満になると、ステップS103においてR3を基準距離として判定されるのでYESとなり、ステップS105でNOと判定されてステップS107で10秒間だけ案内画像が表示され、ステップS108でRkがR4となり、ステップS102に進む。その後、案内地点に更に近づき、現在地から案内地点までの距離Dが2km未満になると、ステップS103においてR4を基準距離として判定されるのでYESとなり、ステップS105でNOと判定されてステップS107で10秒間だけ案内画像が表示され、ステップS108でRkがR5となり、ステップS102に進む。その後、案内地点に更に近づき、現在地から案内地点までの距離Dが1km未満になると、ステップS103においてR5を基準距離として判定されるのでYESとなり、ステップS105でNOと判定されてステップS107で10秒間だけ案内画像が表示され、ステップS108でRkがR6となり、ステップS102に進む。つまり、画像出力部32は、現在地から次の案内地点までの距離が5km未満であると判定した場合には、案内画像を表示させるための表示光を出射する通常出力処理と、表示光の出射を停止する停止処理とを所定のタイミングで繰り返し行うように構成されているので、ユーザは案内地点に到達するまでに次の進行方向を複数回確認することができる。
【0052】
その後、案内地点に更に近づき、現在地から次の案内地点までの距離Dが0.5km未満になると、ステップS103においてR6を基準距離として判定されるのでYESとなり、ステップS105では、カウント値k=6であるので、YESと判定されてステップS106に進む。
【0053】
ステップS106では、Bluetoothモジュール31により受信された距離情報に示される距離Dが0になるまで、画像出力部32は、案内画像をコンバイナ26に表示させるための表示光を出射し続ける。これにより、案内地点に接近した所から案内地点まで継続して次の進行方向をユーザに提示することができる。この間、Bluetoothモジュール31により受信される距離情報は1秒毎に更新されるので、生成される案内画像も1秒毎に更新される。画像出力部32は、距離情報に示される距離Dが0になると、表示光を消すことにより、定常動作における案内画像の表示を終了する。これにより、定常動作が終了する。定常動作の終了後は、案内地点が切り替わるので、上述した定常動作が引き続き実行される。案内地点が目的地となる場合もあり、この場合、距離Dは現在地から目的地までの距離になる。
【0054】
表示光出射装置30の画像出力部32は、
図8のフローチャートに示す動作を繰り返し実行する間であって、かつ案内画像を出力していないとき、即ち、表示光の出射を停止する停止処理を行っている間に、案内画像の優先表示要求を検出したときに、停止処理に優先して案内画像を表示させるための表示光を出射する優先出力処理を一定時間継続して行うように構成されている。
【0055】
案内画像の優先表示要求は、例えば、ユーザにより行われた案内画像の表示操作とすることができ、この場合、画像出力部32は、ユーザにより行われた案内画像の表示操作を、案内画像の優先表示要求として検出するように構成されている。案内画像の表示操作は、例えば、ユーザが次の進行方向を確認したくなったときに行われる操作であり、具体的には第1及び第2のスイッチ23,24の一方を押す操作等である。画像出力部32が停止処理を行っている間に第1及び第2のスイッチ23,24の一方を押す操作を検出すると、優先出力処理を一定時間継続して行う。
【0056】
また、優先表示要求としては、第1及び第2のスイッチ23,24の一方を押す操作以外にも、例えば、Bluetoothモジュール31によるスマートフォン10の無線通信インターフェース11との無線通信が途絶えてから再度繋がったこと、表示光出射装置30が起動したこと、画像出力部32による表示光の出射が強制的に停止された状態から再開されたこと、案内地点が切り替わったこと、リルートが実行されたこと、電話が着信状態になったこと、電話が発信状態になったこと、電話が通話状態になったこと、終話したこと、渋滞情報を受信したこと等である。これらのうち、1つを画像出力部32が検出すると、案内画像の優先表示要求があったと判定し、優先出力処理を一定時間継続して行う。
【0057】
具体的には、
図9のフローチャートに示しており、この
図9のフローチャートに示す動作を、
図8に示すフローチャートの通常動作と区別するために、臨時動作と呼ぶこともできる。
図9のフローチャートに示す動作は、
図8に示すフローチャートの処理と並行して実行するものであり、画像出力部32が停止処理を行っている間に、案内画像の優先表示要求を検出したときに開始される。開始後のステップS201では、画像出力部32が、案内画像をコンバイナ26に表示させるための表示光の出射を開始する。このステップS201は、優先出力処理開始ステップである。
【0058】
次いで、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aは、ステップS202において、ステップS201で表示光の出射を開始してから所定時間(例えば数秒~10秒間の任意の時間)経過するのを待ち、所定時間経過すると、ステップS203に進む。ステップS202の所定時間は案内画像の最短の表示時間であり、案内画像毎に変えることができる。なお、Bluetoothモジュール31により受信された距離情報は1秒毎に更新されるので、所定時間経過するのを待つ間に生成される案内画像も1秒毎に更新される。
【0059】
次に、ステップS203では、Bluetoothモジュール31が、スマートフォン10により送信された距離情報を受信し、ステップS204に進む。
【0060】
ステップS204で、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aは、ステップS203でBluetoothモジュール31により受信された現在地から次の案内地点までの距離DからRkを引いた距離を求め、この距離が100m以下であるか否かを判定する。例えば、現在地から次の案内地点までの距離Dが1100mであり、RkがR5(1km)であった場合には、距離DからR5を引いた距離が100mであるため、ステップS204でYESとなる。一方、現在地から次の案内地点までの距離Dが1200mであり、RkがR5(1km)であった場合には、距離DからR5を引いた距離が200mであるため、ステップS204でNOとなる。
【0061】
距離DからR
kを引いた距離が100m以下であるということは、ユーザがR
kに到達するまでの時間が短いということである。また、距離DからR
kを引いた距離が100mを超えているということは、ユーザがR
gに到達するまでの時間が長いということである。
図8に示すように、距離DがR
k未満になると通常出力処理が開始されることになるので、
図9のステップS204では、優先出力処理が行われたとき(ステップS201)、当該優先出力処理の終了時から当該優先出力処理後に行われる通常出力処理が開始されるまでの間隔推定を距離情報に基づいて行うことができる。尚、この間隔推定は、時間情報に基づいて行うこともできる。例えば、優先出力処理による案内画像の表示時間は予め決まっているので、優先出力処理の終了時を算出することができる。また、通常出力処理の開始時については、速度情報と距離情報とに基づいて算出することができる。したがって、優先出力処理の終了時と、当該優先出力処理後に行われる通常出力処理の開始時とを算出し、これらの時間間隔を取得することで、上記間隔推定を行うことができる。
【0062】
ステップS204で行った間隔推定によって得られた間隔が所定未満である場合には、YESと判定されてステップS205に進む。ステップS205では、ステップS201で開始された優先出力処理で出力された案内画像を次の通常出力処理が開始されるまで継続して出力する。つまり、優先出力処理と、その後に行われる通常出力処理との間隔が短い場合には、優先出力処理が通常出力処理の開始時まで継続される。これにより、案内画像をコンバイナ26に表示させたままにできるので、案内画像を消した直後に再び表示させる処理に比べ、ヘルメット20のユーザの目への負担を低減できる。
【0063】
一方、ステップS204で行った間隔推定によって得られた間隔が所定以上である場合には、NOと判定されてステップS206に進む。この場合、優先出力処理の終了時から次の通常出力処理が開始されるまでの時間が十分に確保されるので、優先出力処理による案内画像の出力を予め決められた時間で終了する。
【0064】
なお、ステップS202の終了後、ステップS205又はステップS206が開始されるまでの間、画像出力部32は、表示光の出射を継続している。また、ステップS202の終了後、ステップS205又はステップS206が開始されるまでの時間は、数msの短い時間とすることができる。つまり、ステップS203及びステップS204は、ステップS205又はステップS206を実行する直前に実行することができる。
【0065】
臨時動作の実行中に、定常動作における表示光の出射(ステップS106又はステップS107)が開始されたときには、臨時動作は終了して、通常出力処理が優先される。
【0066】
したがって、本実施形態1に係る表示光出射装置30は、起動後、Bluetoothモジュール31によるスマートフォン10との無線通信が繋がっている間、例えば
図10のタイミングチャートに示すように動作する。
図10において、t10、t20、t32、t40、t50、及びt60は、通常出力処理が行われるタイミングである。すなわち、t10は、現在地から次の案内地点までの距離Dが5km未満になったタイミングであり、t20は、現在地から次の案内地点までの距離Dが4km未満になったタイミングであり、t32は、現在地から次の案内地点までの距離Dが3km未満になったタイミングであり、t40は、現在地から次の案内地点までの距離Dが2km未満になったタイミングであり、t50は、現在地から次の案内地点までの距離Dが1km未満になったタイミングであり、t60は、現在地から次の案内地点までの距離Dが0.5km未満になったタイミングである。また、t61は、現在地から次の案内地点までの距離D=0となるタイミングである。
【0067】
t30は、画像出力部32が案内画像の優先表示要求を検出して優先出力処理を開始したタイミングである。優先表示要求の終了時は、優先出力処理の開始時(t30)から10秒間経過した時であり、t31となる。優先表示要求の終了時(t31)と、次に通常出力処理を開始するタイミング(t32)の間隔を推定する(ステップS204)。この例では、間隔が短いので、優先出力処理による案内画像の表示をt32まで継続した場合を示している。
【0068】
したがって、本実施形態1によると、走行中、ユーザが次の案内地点まで次第に近づき、現在地から案内地点までの距離が所定距離未満になった場合には、案内画像の通常出力処理と停止処理とが所定のタイミングで複数回繰り返し行われるので、ユーザは案内地点に到達するまでの間に、次の進行方向を確認することが可能になる。
【0069】
また、案内画像の優先表示要求が行われた場合には、案内画像の出力を停止する停止処理に優先して案内画像の優先出力処理が行われるので、例えばユーザが確認したいときに次の進行方向を確認することが可能になる。そして、優先出力処理と、その後に行われる通常出力処理との間隔が短い場合には、優先出力処理が通常出力処理の開始時まで継続される。これにより、案内画像をコンバイナに表示させたままにできるので、案内画像を消した直後に再び表示させる処理に比べ、ヘルメットのユーザの目への負担を低減できる。
【0070】
(実施形態2)
図11~
図13は、本発明の実施形態2に係るものであり、実施形態2は、優先出力処理の終了時から当該優先出力処理後に行われる通常出力処理が開始されるまでの間隔推定を行う点では実施形態1と同じであるが、当該間隔推定により得られた間隔が所定未満である場合には、通常出力処理を禁止するように画像出力部32が構成されている点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0071】
図11は、本発明の実施形態2に係る表示光出射装置30の臨時動作を示すフローチャートである。本実施形態2では、優先出力処理が開始されたとき、まず、ステップS301において表示光出射装置30の画像出力部32が、10秒間、案内画像をコンバイナ26に表示させるための表示光を出射し続ける。Bluetoothモジュール31により受信される距離情報は1秒毎に更新されるので、生成される案内画像も1秒毎に更新される。表示光の出射を開始してから10秒経過すると、表示光の出射を終了する。
【0072】
次に、ステップS302において、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aは、表示終了フラグをONにし、臨時動作を終了する。
【0073】
そして、定常動作では、
図12のフローチャートに示すように、ステップS103で画像出力部32のマイクロコンピュータ32aがYESと判定した場合、ステップS401に進む。ステップ401では、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aが、表示終了フラグがONであるか否かを判定し、表示終了フラグがONである場合にはステップS404に進む一方、表示終了フラグがOFFである場合にはステップS105に進む。
【0074】
ステップ404では、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aが、カウント値kが6であるか否かを判定する。カウント値kが6であるときには、ステップS106に進み、現在地から次の案内地点までの距離Dが0になるまで案内画像の出力を継続する。そして、定常動作が終了し、表示終了フラグはOFFになる。定常動作の終了後は、案内地点が切り替わり、次の定常動作が引き続き実行される。カウント値kが6でないときには、ステップS108に進む。
【0075】
このように、本実施形態2では、定常動作における表示光の出射が実行される条件が、距離条件に加え、表示間隔条件を含んでいる。
【0076】
本実施形態2に係る表示光出射装置30は、起動後、Bluetoothモジュール31によるスマートフォン10との無線通信が繋がっている間、例えば
図13のタイミングチャートに示すように動作する。
図13において、t41は、画像出力部32が案内画像の優先表示要求を検出して優先出力処理を開始したタイミングであり、また、t42は、優先出力処理を終了するタイミングである。まず、画像出力部32は、優先出力処理が行われたとき、当該優先出力処理の終了時(t42)から当該優先出力処理後に行われる通常出力処理の開始時(t40)までの間隔推定を行う。この間隔の推定手法は実施形態1と同様に行うことができる。
【0077】
そして、画像出力部32は、間隔推定により得られた間隔が所定未満であり、t42とt40とが近い場合には、t40で開始される予定であった通常出力処理を禁止する。つまり、ステップS107の処理が行われない。なお、t42がt40以降である場合には、t41で開始された優先出力処理の途中において、t40になった時点で通常出力処理が行われるようになっている。
【0078】
したがって、本実施形態2によると、優先出力処理と、その後に行われる通常出力処理との間隔が短い場合には、優先出力処理が行われ、通常出力処理が禁止されるので、優先出力処理の直後に通常出力処理が行われることはない。よって、チラつきを防止することができ、ヘルメットのユーザの目への負担を低減できる。
【0079】
また、画像出力部32のマイクロコンピュータ32aが、ステップS204の時間推定において、距離DからRkを引いた値が、100m以下であるか否かを判定したが、他の所定の設定距離(例えば50m~200mの間の任意の距離)以下であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0080】
また、ステップS204の時間推定を、距離情報に示される距離のみに基づいて行ったが、距離情報に示される距離に加え、Bluetoothモジュール31により受信された速度情報に示される速度に基づいて行うようにしてもよい。具体的には、距離情報に示される距離を速度情報に示される速度で割ることによって所要時間を算出し、算出した所要時間が所定の基準値未満となる場合には、所要時間が短いと判定する一方、算出した所要時間が所定の基準値未満となる場合には、所要時間が短くないと判定するようにしてもよい。これにより、距離情報に示される距離だけに基づいて時間推定を行う場合に比べ、より正確な推定結果を得ることができる。
【0081】
また、上記実施形態2では、表示間隔条件を、前回の臨時動作における表示光の出射の終了時からの移動距離が100m以上であるという条件としたが、当該移動距離が100m以外の所定値以上であるという条件としてもよい。また、表示間隔条件を、前回の臨時動作における表示光の出射の終了時からの経過時間が所定値以上であるという条件としてもよい。
【0082】
また、上記実施形態1,2において、定常動作及び臨時動作による案内画像の表示の開始時に案内画像をフェードインさせるとともに、定常動作及び臨時動作による案内画像の表示の終了時に案内画像をフェードアウトさせるように画像出力部32が表示光を出射するようにてもよい。これにより、案内画像の表示の開始時には、コンバイナ26に表示される画像が徐々に明るくなる一方、前記案内画像の表示の終了時には、コンバイナ26に表示される画像が徐々に暗くなるので、ヘルメット20のユーザの目への負担を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ヘルメットに設けられたコンバイナに表示させる画像を出力する表示光出射装置として有用である。
【符号の説明】
【0084】
10 スマートフォン(通信機器、携帯電話)
20 ヘルメット
26 コンバイナ
30 表示光出射装置
31 Bluetoothモジュール(無線通信部、情報取得部)
32 画像出力部