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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】腸管変化の処置において使用する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/45 20060101AFI20230731BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230731BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230731BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61K36/45
A61P1/00
A61K9/28
A61K9/20
A61K31/353
A61P1/04
A61K47/32
A61K47/14
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/44
A61K47/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019549668
(86)(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 IB2017057580
(87)【国際公開番号】W WO2018100551
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】102016000122310
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519198443
【氏名又は名称】ソファー・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ビッフィ
(72)【発明者】
【氏名】ルッジェーロ・ロッシ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター・フィオーレ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィア・サラミーナ
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/123491(WO,A1)
【文献】特表2016-518441(JP,A)
【文献】特表2009-514968(JP,A)
【文献】特表2016-501852(JP,A)
【文献】国際公開第2001/080870(WO,A1)
【文献】特表2001-524938(JP,A)
【文献】特表2009-535417(JP,A)
【文献】特表2007-532689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 9/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)スノキ属の少なくとも1つの植物の抽出物(a)と、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分(b)とを含む、又はそれからなるコア、
(ii)コア(i)の外側にあり、(i)を完全にコーティングしており、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分(c)を含む、胃耐性の層
を含む、又はそれからなる、経口投与のための組成物であって、前記胃耐性の層(ii)は、結腸中で抽出物(a)を放出させることができ、前記組成物は、結腸憩室症、憩室性疾患、SUDD(症候性無併発性憩室性疾患)、及び結腸憩室炎から選択される疾患の防止及び/又は処置における使用のためのものであり、
スノキ属の植物の抽出物の抽出物(a)が、質量又は体積で15%の濃度でPAC(プロアントシアニジン)を含有するクランベリーの抽出物からなり
前記成分(b)が、セルロース、マンニトール、二酸化ケイ素、架橋結合カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに飽和及び/又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩からなり
前記成分(c)が、Eudraguard biotic E1207(Evonik社)、クエン酸トリエチルE1505及びタルカム、あるいはエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、及び精製ステアリン酸からなる、組成物。
【請求項2】
前記スノキ属の少なくとも1つの植物の抽出物(a)が、(a)の全質量に対して好ましくは150mg~600mgを含む量で存在する乾燥抽出物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抽出物(a)が、(a)の全質量に対して200mg~300mgを含む量で存在し、(a)の全質量に対して80質量%~99質量%のプロアントシアニジンを含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)が、pH値及び/又は時間に応じて崩壊及び溶解する特徴を有し、好ましくは、前記層(ii)が、pH値約6.5~pH約8で崩壊及び溶解することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)が、pH値約7~pH約7.5で、好ましくは30分間~120分間、更により好ましくは45分間~90分間を含む時間で崩壊及び溶解することができる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)が、Eudraguard biotic E1207、胃耐性ポリマー、例えばポリ(メチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-メタクリル酸)7:3:1又は別のアニオン性メタクリルコポリマー、クエン酸トリエチル E1505、タルカム、エチルセルロース、アニオン性メタクリレートコポリマー及びその混合物、シェラック、アルギン酸ナトリウム及びその混合物、デンプン及び加工デンプン、オレイン酸、ステアリン酸、並びに中鎖トリグリセリドから選択される少なくとも1つの物質を含む、請求項1、4、及び5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)が、
- 胃耐性ポリマー、例えばポリ(メチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-メタクリル酸)7:3:1又は別のアニオン性メタクリレートコポリマー:5~50mg、10~35mg、18~25mg、
- クエン酸トリエチル E1505:0.1~5mg、0.3~3mg、0.5~2mg
- タルカム:1~30mg、3~20mg、5~15mg
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)が、
- エチルセルロース:5~15mg、8~12mg、9.97mg、
- アルギン酸ナトリウム:5~15mg、8~12mg、9.30mg、
- 水酸化アンモニウム:0.5~4mg、1.5~3mg、2.34mg、
- 中鎖トリグリセリド:0.5~5mg、1.5~3mg、2.12mg、
- オレイン酸:0.5~3mg、1~2mg、1.17mg、
- 精製ステアリン酸:0.01~0.5mg、0.05~0.3mg、0.1mg
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)が、
- エチルセルロース:5~50mg、10~30mg、15~20mg、
- 二酸化チタン:0.1~15mg、0.5~10mg、1~5mg、
- アルギン酸ナトリウム:0.1~5mg、0.3~4mg、0.5~2mg、
- オレイン酸、ステアリン酸、中鎖トリグリセリド:それぞれ0.01~3mg、0.05~1mg
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)が、
- Eudraguard(登録商標)biotic E1207(Evonik社):例えば20.4mg、
- クエン酸トリエチル E1505:例えば1mg、
- タルカム:例えば10.2mg
を含む、又はそれからなる、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)が、
- エチルセルロース:例えば9.97mg、
- アルギン酸ナトリウム:例えば9.30mg、
- 水酸化アンモニウム:例えば2.34mg、
- 中鎖トリグリセリド:例えば2.12mg、
- オレイン酸:例えば1.17mg、
- 精製ステアリン酸:例えば0.1mg
を含む、又はそれからなる、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スノキ属(Vaccinium)の少なくとも1つの植物の果実の抽出物(a)と、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分(b)とを含む、又はそれからなる混合物を含む組成物、並びに憩室性疾患又はそれに由来する若しくはそれに相関する病態の防止及び/又は処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腸管は、重篤な障害の原因となる場合があり、多くの場合は臨床家が管理するのが困難である、数々の炎症性病態の標的臓器を表す。
【0003】
中でも、最重要な役割は:
- 炎症性腸疾患(IBD)
- 嚢炎
- 憩室性疾患及び憩室炎
が占めている。
【0004】
炎症性腸疾患(IBD)は腸管の粘膜の慢性的な炎症の存在によって特徴づけられており、これは断続的な経過を有しており、重症合併症を引き起こし得る。これには、クローン病(CD)、潰瘍性直腸結腸炎(URC)、及びいわゆる「不確定結腸炎」(IC)が含まれる。
【0005】
症状は、この群の2つの最も重要な病態、すなわちクローン病(CD)及び潰瘍性直腸結腸炎(URC)で異なる。
【0006】
CDの場合、最も頻繁な初期症状は、下痢及び右腸骨窩(最も頻度の高い疾患部位である最後の回腸ループに対応する)にとりわけ限局される腹痛である。
【0007】
他方で、URCは、ほとんどの場合は血性下痢(明赤色の血液及び大便と混合された粘液を含有する)を伴って顕在化し、「しぶり腹」(不完全な排泄の感覚)及び場合によっては貧血が付随している。
【0008】
どちらの疾患も、交互する潜伏期及び炎症の再燃を有する場合がある。腸炎が再び急性となった場合、発熱、体重減少、無力症、及び食欲不振等の全身症状も現れる。時間とともに、CDは、狭窄症(腸管の罹患部分の管腔の狭小化であり、最終的には腸閉塞をもたらし得る)、瘻孔(腸管と皮膚との間若しくは腹部臓器間の連絡)、又は膿瘍の形成を併発する場合がある。
【0009】
対照的に、いわゆる「不確定結腸炎」、ICとは、比較的最近に習得された疾患であり、炎症が結腸に限局されており、原因をCD及びURCのどちらにも帰することにできないため分類が妨げられるような組織学的、臨床的、放射線学的、及び内視鏡的な特徴を有する。これは、事例の13~20%において、これら2つのうちの一方の初期形態を表す。
【0010】
いわゆる「不確定結腸炎」、ICは、一般に、分節性病変の存在、大規模な潰瘍形成、右結腸の関与の可能性(遠位結腸(左結腸)がより重篤に損なわれているにもかかわらず)、及び中毒性巨大結腸症に関連する結腸拡張の可能性を伴う、粘膜表面の50%を超えて広がる炎症の存在によって特徴づけられている。
【0011】
大多数の事例において(95%)、症状は、最初に下痢性の便通によって初期に特徴づけられる。72%の事例において血性下痢、74%において腹痛が存在する。より低い割合で患者が体重減少(44%)及び発熱(26%)を現す。
【0012】
嚢炎とは、回腸の貯留嚢又は嚢の非特異的な炎症であり、回腸嚢肛門吻合として知られる、外科的介入の最も頻繁な長期的合併症である。
【0013】
病因学は依然として不明であり、多因子である可能性が最も高い。糞便の滞留及び細菌の異常増殖、URCの再発、並びに嚢粘膜の虚血を含めた、様々な病因の仮説が提案されている。
【0014】
嚢炎は、排泄回数の増加及び糞便の流動性、直腸出血、けいれん性の腹痛、切迫及びしぶり腹、並びに場合によっては失禁及び発熱を含めた、可変の症状によって臨床的に特徴づけられている。
【0015】
結腸憩室症とは、最も頻繁な結腸の解剖学的変化であり、多くの場合は結腸内視鏡検査中に検出される。これは、結腸壁の構造的改変の存在をいい、「憩室」と呼ばれる嚢の存在によって特徴づけられていると思われる。これは炎症性腸疾患(IBD)及び嚢炎とは別個である。
【0016】
憩室とは、結腸の内層において、壁の筋層の比較的弱い点に形成される場合がある小さな突出した嚢である。
【0017】
憩室が検出される状態が、その存在に関連する症状が存在しない場合でも、「憩室症」と呼ばれる。実際的には、憩室症とは、消化器系の中空臓器の壁に沿った、正確には憩室と定義される、粘膜及び粘膜下層の突起の存在によって特徴づけられる病状である。これらは一般に、結腸(より高い圧力が原因で、とりわけS状結腸及び直腸)の筋層の比較的弱い領域(「抵抗減弱部」)中に形成される。憩室症は症状なしで顕在化する。例えば憩室炎の場合のように症候性となった場合は、憩室性の病態又は疾患という。
【0018】
憩室症は西側諸国において最も一般的であり、30~39歳の集団における有病率は5%であり、80歳を超える集団部分では60%である。
【0019】
憩室は、S状結腸と呼ばれる大腸(又は結腸)の下方部分においてより一般的である。
【0020】
結腸憩室の発生は、結腸の腔内圧の増加の結果であると考えられている。明確にいえば、憩室の発生は、慢性炎症性腸疾患(IBD)、例えばクローン病及び潰瘍性結腸炎等の炎症及び/又は自己免疫の現象とは完全に異なる現象であり、我々の現在の知識に基づくと、そのような病態は、憩室症及びそれに関連する障害とつながりはない。
【0021】
憩室の存在は、結腸壁の構造中の永久的な解剖学的変化であり、無症候性のままであるか、又は症状の発生をもたらす場合がある。患者の約20%が症状を発生すると推定されており、その存在下では、状態は「憩室性疾患」(DD)と定義される。
【0022】
無併発性憩室性疾患は、通常は特定の症状と関連していない。憩室性疾患は、結腸からの顕著な出血の一般的な原因である。
【0023】
DDの亜類は、巨視的に顕在化した結腸炎又は憩室炎の非存在下で憩室に起因する持続性の腹部症状が存在するSUDD(症候性無併発性憩室性疾患)である。
【0024】
他の症状は通常、憩室の巨視的な急性炎症である「憩室炎」等の、憩室性疾患の合併症に関連している。憩室炎は、膿瘍、腹膜炎、閉塞、瘻孔、又は出血等の合併症の特徴がコンピュータ断層撮影(CT)において観察されるかどうかに応じて、単純性又は併発性であり得る。
【0025】
憩室炎は、腹痛、震え、発熱、及び腸習慣の変化を引き起こす場合がある。最も強烈な症状は、穿孔(腹部中の自由な切断)、膿瘍(膿の蓄積)、又は瘻孔の形成(結腸と別の臓器との間若しくは憩室の穿孔に続いて皮膚との間に作製される異常な通路)等の重篤な合併症に関連している。
【0026】
結腸憩室(憩室症)の形成を引き起こす、根底にある病理学的機構は依然として不明確なままである。この理論に限定されることを望まずに、そのような形成は、おそらくは食習慣、腸管の微生物叢、遺伝因子、結腸の運動性、及び微視的な炎症の間の複雑な相互作用の結果である。
【0027】
証明はされていないが、現在普及している理論は、繊維摂取が低い食習慣が憩室性疾患の原因のうちの1つであることである。この疾患は、米国において、特定の食品が米国人の食習慣に導入され、米国人集団の繊維摂取を相当に低下させた時期である20世紀の初期に指摘された。
【0028】
憩室性疾患は先進国、特に、繊維摂取が低い食習慣が普及している米国、英国、及び豪州において一般的である。対照的に、大多数の人々の繊維の食事性摂取が高いアジア及びアフリカでは、この疾患は稀である。
【0029】
繊維は、身体が完全に消化することができない果実、野菜、及び未精製の(全粒)穀物中に見つかる。可溶性繊維と呼ばれる一部の繊維は水に容易に溶け、腸管において柔らかいゼラチン状の物質を作り出す一方で、不溶性繊維はほぼインタクトで腸管を通過する。どちらの種類の繊維も、容易に排出される柔らかい大便で便秘の防止を助ける。
【0030】
便秘は、排便するために相当な労力を要することで顕在化する。この労力は結腸内の圧力の増加を引き起こす場合があり、これはひいては結腸の内層が結腸壁の弱い点を貫いて膨張することを引き起こす場合があり、これは、嚢の形成、すなわち憩室をもたらし得る。
【0031】
運動不足は憩室の形成の危険性を増加させる場合があるが、この側面は未だ決定要因とみなされていない。
【0032】
現在、腸管安静、低繊維含有量の特定の食習慣、及び多くの場合は鎮痙薬に関連している広範囲抗生物質が、憩室性疾患及び/又は憩室炎の医学療法として処方されている。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)及びコルチコステロイドの使用は、これらの薬物は憩室の近くに穿孔を促進する場合があるため一般的ではない。例えば腹膜炎、膿瘍、瘻孔等の、ほとんどの併発性の事例では、吻合を用いた又は用いない緊急切除術が必要であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【文献】欧州特許EP 2135616 B1号
【非特許文献】
【0034】
【文献】Prior, R.L.ら、J. Sci Food Agric 2010、90(9)、1473~8頁
【文献】Priorら(Multi-laboratory validation of a standard method for quantifying proanthocyanidins in cranberry powders. J. Sci. Food Agric. (2010)、9、1473~1478頁. DOI 10.1002/jsfa.3966)
【文献】Minekusら(「A standardised static in vitro digestion method suitable for food - an international consensus」Food Funct. (2014)、6、1113~1124頁. DOI 10.1039/C3FO60702J)
【文献】BCD Cancer 2008 8:227頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
現在、憩室性疾患又は憩室症に罹患している個体において、憩室の形成を防止することができる、又はそれに縮小を導入することができる、又は憩室炎を有効に防止することができる、利用可能な処置は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0036】
従来技術の上述の制限に対応するために、本発明は、結腸における又はS状結腸及び直腸の一部分における憩室症、並びに結腸における又はS状結腸及び直腸の一部分における、憩室性疾患、SUDD(症候性無併発性憩室性疾患)、及び憩室炎等の憩室の存在に関連する病態又は疾患の防止又は処置に使用するための、スノキ属の植物に由来する抽出物を含む、経口投与のための新規組成物を提供する。
【0037】
本発明は、
(i)スノキ属の少なくとも1つの植物の抽出物(a)と、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分又は賦形剤(b)とを含む、又はそれからなるコア、
(ii)コア(i)の外側にあり、前記コア(i)を完全にコーティングしており、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分又は賦形剤(c)を含む、胃耐性の層を含む、又はそれからなる、経口投与のための組成物(CR)であって、前記胃耐性の層(ii)は、腸管の粘膜における抽出物(a)の放出を可能にすることができ、好ましくは結腸における抽出物(a)の放出を可能にすることができる、組成物に関する。
【0038】
本発明は、
(i)スノキ属の少なくとも1つの植物の抽出物(a)と、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分又は賦形剤(b)とを含む、又はそれからなるコア、
(ii)コア(i)の外側にあり、前記コア(i)を完全にコーティングしており、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分又は賦形剤(c)を含む、胃耐性の層を含む、又はそれからなる、経口投与のための組成物(CR)であって、前記胃耐性の層(ii)は、結腸における抽出物(a)の放出を可能にすることができる、組成物に更に関する。
【0039】
本発明は、
(i)スノキ属の少なくとも1つの植物の抽出物(a)と、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分又は賦形剤(b)とを含む、又はそれからなるコア、
(ii)コア(i)の外側にあり、前記コア(i)を完全にコーティングしており、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分又は賦形剤(c)を含む、胃耐性の層
を含む、又はそれからなる、経口投与のための組成物(CR)であって、前記胃耐性の層(ii)は、結腸における抽出物(a)の放出を可能にすることができ、前記組成物は、結腸における又はS状結腸及び直腸の一部分における憩室症、並びに結腸における又はS状結腸及び直腸の一部分における、憩室性疾患、SUDD(症候性無併発性憩室性疾患)、及び憩室炎等の憩室の存在に関連する病態又は疾患の防止及び/又は処置において使用するためのものである組成物に更に関する。
【0040】
本発明の組成物(CR)は胃保護されており、粉末、顆粒、フレーク、錠剤、丸薬、又はカプセルの固体形態にあり、好ましくは、胃保護されている一体式の錠剤である。この場合、コア(i)は一体式の錠剤によって表され、それに一致する。
【0041】
本発明は、
- スノキ属の少なくとも1つの植物の果実の抽出物(a)と、
- 医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分及び/又は賦形剤(b)と
を含む、又はそれからなる組成物(C)であって、
前記組成物が、結腸における又はS状結腸及び直腸の一部分における憩室症、並びに結腸における又はS状結腸及び直腸の一部分における、憩室性疾患、SUDD(症候性無併発性憩室性疾患)、及び憩室炎等の憩室の存在に関連する病態又は疾患の防止及び/又は処置において使用するためのものであり、好ましくは前記使用が(C)の経口投与を含む、組成物に関する。
【0042】
また、固体形態、例えば、粉末、顆粒、ビーズ若しくはマイクロビーズ、又はフレークの組成物(C)が、6より高いpH、好ましくは6.5~8に含まれるpH、例えばpH7.5で崩壊することができる胃耐性材料のシェル、例えばカプセル又はソフトゲル内に含有されていることも可能である。この場合、前記カプセル又はソフトゲルに含有される組成物(C)は、結腸における又はS状結腸及び直腸の一部分における憩室症、並びに結腸における又はS状結腸及び直腸の一部分における、憩室性疾患、SUDD(症候性無併発性憩室性疾患)、及び憩室炎等の憩室の存在に関連する病態又は疾患の防止及び/又は処置において、依然として有効な使用を有しており、好ましくは前記使用は(C)の経口投与を含む。
【0043】
好ましい実施形態を、いかなる様式でもその範囲及び内容を限定することを意図せずに、以下に例示する。
【0044】
別段に指定しない限りは、組成物中の成分の含有量は、組成物の全質量に対するその成分の質量の百分率をいう。
【0045】
別段に指定しない限りは、組成物が1つ又は複数の成分を「含む」という表示は、具体的に指定したものに加えて他の成分が存在し得ることを意味し、組成物が所定の成分「からなる」という表示は、他の成分の存在を認めないことを意味する。
【0046】
組成物(C)は、(a)及び(b)からなることができる、又は、(a)及び(b)に加えて他の成分若しくは賦形剤を含むことができる。
【0047】
非限定的な例として、本発明の組成物(CR)及び(C)中に存在することができる前記追加の成分は、
・ 繊維(例えば、イヌリン、サイリウム)
・ 酵素(例えば、ガラクトシダーゼ等)
・ 抗炎症剤(例えば、メサラジン及び誘導体、ベクロメタゾン及び同様の活性成分)
・ 抗生物質(例えば、リファキシミン及び同様の活性成分)
・ 腸管ガスの形成を減らすために、腸管レベルで吸収作用を有する物質並びに/又は駆風及び/若しくは口内消泡作用を有する物質(例えば、ペパーミント、シメチコン及び誘導体、活性炭)
・ 抗酸化剤
・ 免疫調節作用を有する物質
・ 短鎖脂肪酸(SCFA、例えばブチレート及び誘導体)
・ オメガ-3多価不飽和脂肪酸
・ プロバイオティック、又は、溶解物又は抽出物の形態の微生物(パラプロバイオティック)、微生物によって産生された代謝副産物(bioproduct)(ポストバイオティック)、及び/若しくはそれに由来する任意の他の産物
等の他の活性成分であり得る。
【0048】
本発明の組成物(CR)及び(C)中に存在することができる前記微生物の非限定的な例は、個別又は様々な組合せの、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、及びエンテロコッカス属(Enterococcus)に属するプロバイオティック細菌、並びに好ましくはサッカロミセス属(Saccharomyces)に属する酵母である。
【0049】
好ましい実施形態では、前記組成物(CR)又は(C)中に存在するコア(i)は、マンニトール、並びに/又は、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性薬物、及び天然由来の物質の物質若しくは混合物から選択される抗炎症作用を有する少なくとも1つの活性成分を更に含む。
【0050】
また、本発明は以下の図も参照する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】溶解試験の検量線を示す図である。
図2】腸相中の本発明による胃保護錠剤に対する溶解試験の結果を示す図である。。
図3図3~10は、腸管粘膜(CacoGoblet)に対する保護の有効性に関する研究の結果:大腸菌(E.Coli)を用いたコロニー形成を示す。図3は、10~100~1000μg/mlのクランベリーを用いた24時間の処理後の細胞生存度を示す図である。
図4】未処理の炎症CacoGoblet中の単球-上皮細胞接着を示す図である。
図5】基底(0時間)、生成物及びクランベリー1000μg/mlそのままで4時間処理した後、及び大腸菌によって2時間コロニー形成させた後(合計6時間の処理)のオーム*cm2で表す、経上皮電気抵抗(TEER)の結果を示す図である。
図6】頂部区画における0時点でのLYと比較した、LYの%流れを示す。これは6時間の処理後のLYの流れを示す(クランベリーで4時間及び大腸菌によるコロニー形成で2時間)。
図7】クランベリーで処理した又は処理していない、大腸菌によってコロニー形成された試料中のアルファ-アクチニンの免疫蛍光を示す図である。
図8】文献から得られたCaco-2細胞微絨毛の超微細構造的画像を示す図である。
図9】走査電子顕微鏡下の分析した試料を示す図である。
図10A】6時間での陰性対照:未処理のCacoGobletを示す図である。
図10B】大腸菌による組織のコロニー形成、2時間を示す図である。
図10C】2時間の大腸菌によるコロニー形成の前に、4時間のクランベリーを用いた前処理を示す図である。
図11】胃腸管を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の状況において、用語「抗炎症薬」は、この用語の一般的な意味で使用され、当業者に知られているように、炎症プロセス、特に、それだけには限定されないが個体の腸管への損傷を減らす又は排除することができる任意の物質を示す。
【0053】
組成物(CR)中、上記定義したように、コア(i)の外側にある胃耐性の層(ii)は、Eudraguard biotic E1207、ポリ(メチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-メタクリル酸)7:3:1又は別のアニオン性メタクリルコポリマー等の胃耐性ポリマー、クエン酸トリエチル E1505、タルカム、エチルセルロース、アニオン性メタクリレートコポリマー及びその混合物、lac、アルギン酸ナトリウム及びその混合物、デンプン及び加工デンプン、オレイン酸、ステアリン酸、並びに中鎖トリグリセリドから選択される少なくとも1つの物質を含む、又はそれからなる。
【0054】
コア(i)の外側にある胃耐性の層(ii)の好ましい形態は、
- ポリ(メチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-メタクリル酸)7:3:1又は別のアニオン性メタクリレートコポリマー等の胃耐性ポリマー:5~50mg、10~35mg、18~25mg、
- クエン酸トリエチル E1505:0.1~5mg、0.3~3mg、0.5~2mg、
- タルカム:1~30mg、3~20mg、5~15mg、又は
- エチルセルロース:5~15mg、8~12mg、9.97mg、
- アルギン酸ナトリウム:5~15mg、8~12mg、9.30mg、
- 水酸化アンモニウム:0.5~4mg、1.5~3mg、2.34mg、
- 中鎖トリグリセリド:0.5~5mg、1.5~3mg、2.12mg、
- オレイン酸:0.5~3mg、1~2mg、1.17mg、
- 精製ステアリン酸:0.01~0.5mg、0.05~0.3mg、0.1mg、又は
- エチルセルロース:5~50mg、10~30mg、15~20mg、
- 二酸化チタン:0.1~15mg、0.5~10mg、1~5mg、
- アルギン酸ナトリウム:0.1~5mg、0.3~4mg、0.5~2mg、
- オレイン酸、ステアリン酸、中鎖トリグリセリド:それぞれ0.01~3mg、0.05~1mg
を含む、又はそれからなる。
【0055】
コア(i)の外側にある胃耐性の層(ii)の好ましい形態は、
- Eudraguard(登録商標)biotic E1207(Evonik社):例えば20.4mg、
- クエン酸トリエチル E1505:例えば1mg、
- タルカム:例えば10.2mg、又は
- エチルセルロース:例えば9.97mg、
- アルギン酸ナトリウム:例えば9.30mg、
- 水酸化アンモニウム:例えば2.34mg、
- 中鎖トリグリセリド:例えば2.12mg、
- オレイン酸:例えば1.17mg、
- 精製ステアリン酸:例えば0.1mg
を含む、又はそれからなる。
【0056】
コア(i)の外側にある前記胃耐性の層(ii)は、pH値及び/又は時間に応じて崩壊又は溶解する特徴を有する。有利には、前記層(ii)は、pH値約6.5~pH約8で、好ましくはpH約7~約7.5で、30分間~120分間、好ましくは45分間~90分間を含む時間で、例えば30℃~40℃、好ましくは34℃~37℃を含む温度で、崩壊及び溶解することができるように配合及び調製されている。
【0057】
長い研究及び数々の実験の試みの後、有利には、外側の胃耐性の層を形成するための、前記物質のうちの1つ又は複数の使用により、口道、食道、及び胃道をインタクトで通過することができ、コア(i)の外側にある前記(ii)胃耐性の層の初期崩壊が、コア(i)の初期溶解及び抽出物(a)の放出を伴って又は伴わずに、pH約6.5~7で回腸末端から開始されること、及びコア(i)の外側にある前記(ii)胃耐性の層の続く崩壊が、コア(i)の溶解及び抽出物(a)の放出を伴って、pH約7~8で結腸において、主にpH7.5で結腸において起こることを可能にする(図11)、経口使用のための組成物(CR)、例えば錠剤を得ることが可能となることが見出された。
【0058】
実施した実験的試行により、本発明の組成物(CR)、例えば実施例1及び実施例2のように一体式の錠剤の形態のものは、pH1では2時間以内はインタクトなままであり、一方で、pH6では、1時間以内はインタクトなままであると実証されている。pH7.2では、組成物(CR)のコア(i)の外側にある胃耐性のコーティングが約30分後に引き裂かれ始める一方で、前記コーティングはpH7.2で90分後に十分に破れている。フィルム/コーティングが開き、内側には、コア(i)のごく一部、又は一部の例ではコア(i)の完全な分解に由来する粉末が残っている。
【0059】
前記コア(i)中に存在する前記抽出物(a)の放出に関して、回腸の前のpH6.5までは放出されない。回腸末端では、約5%~約20%、好ましくは約10%~約15%を含む放出がある。pH約7.5、例えばpH約7.2の結腸では、約80%~約95%、好ましくは約85%~約90%を含む放出がある。前記抽出物(a)の放出のほとんどは、憩室が存在し、病態又は疾患が顕在化する部位を正確に表す結腸で起こる。このように、結腸中で放出された抽出物(a)は、抗炎症活性を行うことができるPAC(プロアントシアニジン)の存在のおかげもあって、作用することができる。
【0060】
本発明による組成物(CR)は、栄養補助食品用の組成物、又は医療装置用の組成物、又は特殊な医療目的の食品若しくは医薬組成物用の組成物の形態である。すべての組成物は、経口使用のための医薬形態である。
【0061】
本発明の状況において、用語「医療装置」は、世界保健機関によって提供される定義に対応しており、URL http://www.who.int/medical_devices/full_deffinition/en/で入手可能な1997年2月24日のイタリア政令第46号に従った意味で使用する、すなわち、これは、疾患を診断、防止、モニタリング、処置、又は緩和する目的で、ヒトに対して、単独で又は組み合わせて使用することが製造者によって意図される、単独で又は組み合わせて使用する物質又は別の製品を示す。装置は、その主な意図する作用を人体中又は人体上における薬理学的、免疫学的、又は代謝的手段によって達成せず、そのような手段によってその意図する機能が支援され得る。
【0062】
上記定義した組成物(CR)中、抽出物(a)は、スノキ属、並びに任意選択でサンブクス属(Sambucus)、リキウム属(Lycium)、エウテルペ属(Euterpe)及びその組合せに属する果実(より詳細にはベリー)によって表すことができる。抽出物(a)は好ましくは乾燥抽出物である。
【0063】
上記定義した組成物(CR)中、抽出物(a)は、好ましくは、オオミノツルコケモモ(Vaccinium macrocarpon)、ツルコケモモ(Vaccinium oxycoccos)等のスノキ属及びツルコケモモ亜属(Oxycoccus)、又はバクシニウム・アルボレウム(Vaccinium arboreum)、バクシニウム・クラシフォリウム(Vaccinium crassifolium)、バクシニウム・ボレアル(Vaccinium boreale)、ビルベリー(Vaccinium myrtillus)等のスノキ亜属、又はその混合物の少なくとも1つの植物の果実からのものである。好ましくは、抽出物(a)はオオミノツルコケモモの果実又はツルコケモモ又はその混合物のものである。更により好ましくは、抽出物(a)は、オオミノツルコケモモの果実を含む、又はそれからなる。有利には、抽出物(a)は乾燥抽出物である。一実施形態では、これは、クランベリーの乾燥抽出物であり、好ましくはPAC(プロアントシアニジン)を、質量又は体積で5%~30%、例えば、10%、又は15%、又は20%、又は25%の濃度で含有する。
【0064】
アメリカン・クランベリー(オオミノツルコケモモ)は、寒帯気候帯、特に北米並びに欧州及びアジアの一部の北方地域に生育し、濃厚な果肉及び典型的には酸っぱい味を有するベリーに似た赤色の果実を生じる、ツツジ科(Ericaceae)に属する小さな常緑の低木である。
【0065】
過去に、北米のインディアンの間でクランベリーは神聖な果実とみなされており、食品として並びに腎結石及び様々な尿路の問題の処置の両方として使用されてきた。現在、アメリカン・クランベリーは、基本的にプロアントシアニジン(PAC)、特にA型プロアントシアニジンの高い含有量が原因の、その数えきれない有益な特性のために世界中で使用されている。
【0066】
アメリカン・クランベリー抽出物は、とりわけ尿路障害の防止及び処置において使用されるが、多くの場合に胃及び十二指腸潰瘍の原因である細菌ピロリ菌(Helicobacter pylori)の胃壁への接着、又は口腔に生息しており溶菌斑の形成の原因である細菌の接着、又は腸管レベルでの大腸菌等の潜在的に病原性の細菌の接着に対する防止策としても使用される。
【0067】
欧州特許EP 2135616 B1号は、IBD及び潰瘍性結腸炎を処置するためのクランベリーの使用に関し、上述のように、これらは本発明が関連するものとは全く別個であり異なる病態である。
【0068】
ピロリ菌の胃壁への接着を防止するためのクランベリーの使用が想定されていないのと同様に、本発明の状況において、IBD及び潰瘍性結腸炎の処置におけるクランベリーの使用は除外されており、したがって想定されていない。更に、膀胱炎(膀胱の炎症)又は細菌性膀胱炎若しくは非細菌性膀胱炎、例えば間質型の膀胱炎等の、尿道感染症(UTI)の処置におけるクランベリーの使用は除外されており、したがって想定されていない。
【0069】
本発明者らは、スノキ属、特にアメリカン・クランベリーの果実の抽出物が、結腸における若しくはS状結腸及び直腸の一部分における憩室症、並びに/又は結腸における若しくはS状結腸及び直腸の一部分における憩室性疾患、症候性無併発性憩室性疾患(SUDD)、及び憩室炎等の憩室の存在に由来する若しくは関連する病態若しくは疾患の、好ましくは経口投与による防止及び/又は処置に有用であることを見出した。
【0070】
本発明による組成物(CR)中、抽出物(a)は、前記抽出物(a)の全質量のうち、好ましくは質量で少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%若しくは20%若しくは30%、及び/又は95%若しくは60%若しくは40%以下のプロアントシアニジン、より好ましくはそれだけには限定されないがA型プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジン(PAC)とはフラバン-3-オールのオリゴマー及びポリマーであり、これはフラボノイドのファミリーに属しており、例えば、Prior, R.L.ら、J. Sci Food Agric 2010、90(9)、1473~8頁の「BL-DMAC」方法、又は等価な方法を用いて定量することができる。前記抽出物(a)は好ましくは乾燥抽出物であり、更により好ましくは、これはクランベリーの乾燥抽出物である。
【0071】
本発明による組成物(CR)又は(C)は、好ましくは少なくとも以下を含む:
- 150~600mg、好ましくは200~300mg、より好ましくは240~260mgの前記抽出物(a)であって、(a)の全質量のうち、質量で少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%のプロアントシアニジン(PAC)を含有するオオミノツルコケモモの抽出物、
- セルロース、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、飽和及び/又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、架橋結合カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びにその混合物から任意選択で選択される、医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分又は賦形剤(b)。前記抽出物(a)は好ましくは乾燥抽出物であり、更により好ましくは、これはクランベリーの乾燥抽出物である。医薬的又は食品的使用に許容される成分又は賦形剤(b)は、好ましくは、セルロース、マンニトール、二酸化ケイ素、架橋結合カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに飽和及び/又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩から選択される。
【0072】
上記定義した組成物(CR)は、憩室性疾患及びそれに関連する病態の処置及び/又は防止において特に有用である。
【0073】
一実施形態では、本発明は、
- スノキ属の少なくとも1つの植物の果実の抽出物(a)と、
- 医薬的又は食品的使用に許容される少なくとも1つの成分(b)と
を含む、又はそれからなる組成物(C)であって、
前記組成物が、憩室性疾患又は憩室症に由来する病態の防止及び/又は処置において使用するためのものであり、好ましくは前記使用が(C)の経口投与を含む、組成物を提供する。
【0074】
投与は任意の経路で起こることができる。好ましくは、組成物を経口で、より好ましくは、丸薬、カプセル、錠剤、顆粒粉末、硬殻カプセル、口内溶解顆粒、サッシェ、ロゼンジ、又は飲用バイアルの形態で摂取する。
【0075】
或いは、本発明の組成物は液体として、例えばシロップ若しくは飲料として配合されている、又は、これを食品、例えば、ヨーグルト、チーズ、若しくは果汁に添加する。
【0076】
或いは、本発明の組成物は、例えば浣腸を介して、外用的に作用を発揮することができる形態で配合されている。
【0077】
前記組成物(C)は、好ましくは、憩室性疾患、症候性無併発性憩室性疾患(SUDD)、及び憩室炎のうちの少なくとも1つの処置又は防止において使用するためのものである。前記組成物(C)は、好ましくは憩室炎の処置及び/又は防止において使用するためのものである。
【0078】
好ましい実施形態では、上述の使用のための組成物(C)は、胃耐性のコーティングを含み、結腸における抽出物(a)の放出を可能にすることができる、経口医薬調製物又は栄養補助食品又は医療装置の形態である。
【0079】
好ましい実施形態では、上に指定した使用のための組成物(C)中、抽出物(a)は、オオミノツルコケモモ、ツルコケモモ等のスノキ属及びツルコケモモ亜属、又はバクシニウム・アルボレウム、バクシニウム・クラシフォリウム、バクシニウム・ボレアル、ビルベリー(ビルベリー)等のスノキ亜属、又はその混合物の少なくとも1つの植物の果実からのものである。
【0080】
より好ましくは、本発明による使用のための組成物(C)中、抽出物(a)は、オオミノツルコケモモの果実(アメリカン・クランベリー)若しくはツルコケモモ又はその混合物からのものである。更により好ましくは、抽出物(a)は、オオミノツルコケモモの果実を含む、又はそれからなる。抽出物(a)は好ましくは乾燥抽出物である。
【0081】
本発明による使用のための組成物(C)中、抽出物(a)は、(a)の全質量のうち、好ましくは質量で少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%若しくは20%若しくは30%、及び95%若しくは60%若しくは40%以下のプロアントシアニジン、好ましくはそれだけには限定されないがA型プロアントシアニジンを含有する。有利には、抽出物(a)は乾燥抽出物である。一実施形態では、これはクランベリーの乾燥抽出物であり、好ましくはPAC(プロアントシアニジン)を、質量又は体積で5%~30%、例えば、10%、又は15%、又は20%、又は25%の濃度で含有する。
【0082】
プロアントシアニジン(PAC)とは、フラバン-3-オールのオリゴマー及びポリマーであり、これはフラボノイドのファミリーに属しており、例えば、Prior, R.L.ら、J. Sci Food Agric 2010、90(9)、1473~8頁の「BL-DMAC」方法、又は等価な方法を用いて定量することができる。
【0083】
本発明の状況において、医薬的又は食品的使用に許容される成分は、非限定的な例として、希釈剤、吸収剤、甘味料、香味料、着色剤、潤滑剤、抗接着剤、流動促進剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、抗微生物剤、抗酸化剤、安定化剤、増粘剤、ゲル化剤、及び、所定の生理的条件下でのみ、例えば特定のpH間隔で活性成分の放出を改変させて、その放出を経時的に許可することができる物質等の、経口投与用の形態を調製するために当業者に知られているすべての補助物質を含む。
【0084】
上述の使用のための組成物(C)は、好ましくは少なくとも以下を含む:
- (a)150~600mg、好ましくは200~300、より好ましくは240~260mgの、(a)の全質量のうち、質量で少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%のプロアントシアニジンを含有するオオミノツルコケモモの抽出物、
- (b)セルロース、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロース、及びその混合物から任意選択で選択される、少なくとも1つの薬学的に許容される成分。より好ましくは、前記組成物(C)は、胃保護コーティング、すなわち、少なくとも(a)及び(b)を含む混合物を胃液の作用から保護することができるものを更に含む。
【0085】
以下の実施例は、本発明の実用的な実施形態を提供し、その範囲及び限度を限定する意図はない。
【0086】
本発明の組成物(CR)の好ましい形態を以下に示す。
(i)以下を含むコア:
PACを10%又は15%又は30%の濃度(質量/質量)で含有するクランベリー抽出物:100~500mg、150~400mg、240~300mg
セルロース:100~400mg、200~350mg、300~310mg
マンニトール:1~50mg、5~30mg、10~18mg
二酸化ケイ素:1~50mg、3~30mg、5~8mg
架橋結合カルボキシメチルセルロースナトリウム:1~30mg、3~20mg、5~12mg
脂肪酸のマグネシウム塩:1~30mg、3~20mg、5~10mg
(ii)以下の薬剤を含む、コア(i)の1種類目のコーティング(フィルム):
- ポリ(メチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-メタクリル酸)7:3:1又は別のアニオン性メタクリレートコポリマー等の胃耐性ポリマー:5~50mg、10~35mg、18~25mg
- クエン酸トリエチル E1505:0.1~5mg、0.3~3mg、0.5~2mg
- タルカム:1~30mg、3~20mg、5~15mg、又は
(ii)以下の薬剤を含む、コア(i)の2種類目のコーティング(フィルム):
- エチルセルロース:5~15mg、8~12mg、9.97mg
- アルギン酸ナトリウム:5~15mg、8~12mg、9.30mg
- 水酸化アンモニウム:0.5~4mg、1.5~3mg、2.34mg
- 中鎖トリグリセリド:0.5~5mg、1.5~3mg、2.12mg
- オレイン酸:0.5~3mg、1~2mg、1.17mg
- 精製ステアリン酸:0.01~0.5mg、0.05~0.3mg、0.1mg。
【0087】
本発明の組成物(CR)の好ましい形態を以下に示す。
(i)以下を含むコア:
PACを10%又は15%又は30%の濃度(質量/質量)で含有するクランベリー抽出物:100~500mg、150~400mg、240~300mg
結晶セルロース:100~400mg、200~350mg、320~335mg
ステアリン酸マグネシウム:1~30mg、2~20mg、5~10mg
二酸化ケイ素:1~50mg、3~30mg、5~8mg
(ii)以下の薬剤を含む、コア(i)の1種類目のコーティング(フィルム):
- エチルセルロース:5~50mg、10~30mg、15~20mg、
- 二酸化チタン:0.1~15mg、0.5~10mg、1~5mg
- アルギン酸ナトリウム:0.1~5mg、0.3~4mg、0.5~2mg
- オレイン酸、ステアリン酸、中鎖トリグリセリド:それぞれ0.01~3mg、0.05~1mg、又は
(ii)以下の薬剤を含む、コア(i)の2種類目のコーティング(フィルム):
- エチルセルロース:5~15mg、8~12mg、9.97mg
- アルギン酸ナトリウム:5~15mg、8~12mg、9.30mg
- 水酸化アンモニウム:0.5~4mg、1.5~3mg、2.34mg
- 中鎖トリグリセリド:0.5~5mg、1.5~3mg、2.12mg
- オレイン酸:0.5~3mg、1~2mg、1.17mg
- 精製ステアリン酸:0.01~0.5mg、0.05~0.3mg、0.1mg
【実施例1】
【0088】
非限定的な例として、本発明による組成物(CR)は以下を含むことができる。
(i)以下を含むコア:
15%のPAC(質量/質量)を含有するクランベリー抽出物:240mg
セルロース:304.4mg
マンニトール:15mg
二酸化ケイ素:5.8mg
架橋結合カルボキシメチルセルロースナトリウム:9mg
脂肪酸のマグネシウム塩:5.8mg。
コア総量580mg。質量範囲:575mg~585mg
(ii)以下を含む、コア(i)のコーティング(フィルム):
- Eudraguard(登録商標)biotic E1207(Evonik社):20.4mg
- クエン酸トリエチル E1505:1mg
- タルカム:10.2mg。
コーティング/フィルム総量31.6mg。質量範囲:26.1mg~37.7mg。
コーティングした/フィルムで覆った錠剤の総量612mg。質量範囲:607mg~617mg。
【実施例2】
【0089】
(i)以下を含むコア:
15%のPAC(質量/質量)を含有するクランベリー抽出物:240mg
セルロース:270mg
マンニトール:29mg
二酸化ケイ素:5.8mg
架橋結合カルボキシメチルセルロースナトリウム:29mg
脂肪酸のマグネシウム塩:5.8mg。
コア総量580mg。質量範囲:575mg~585mg
(ii)以下を含む、コア(i)のコーティング(フィルム):
- エチルセルロース:9.97mg
- アルギン酸ナトリウム:9.30mg
- 水酸化アンモニウム:2.34mg
- 中鎖トリグリセリド:2.12mg
- オレイン酸:1.17mg
- 精製ステアリン酸:0.1mg。
コーティング/フィルム総量25mg。質量範囲:20mg~30mg。
コーティングした/フィルムで覆った錠剤の総量605mg。質量範囲:595mg~615mg。
【0090】
溶解試験
材料:
実施例の本発明による胃コーティングした錠剤を試験した。
【0091】
試薬:
- ジメチルアミノシンナムアルデヒド(DMAC、S状結腸コードD-4506)。
- プロシアニジンA2(PCAA2、Sigma社、コード28660)。
- GID用の酵素及び試薬(Sigma社)。
【0092】
方法:
- Priorら(Multi-laboratory validation of a standard method for quantifying proanthocyanidins in cranberry powders. J. Sci. Food Agric. (2010)、9、1473~1478頁. DOI 10.1002/jsfa.3966)によって提案された分光光度方法によるPCAアッセイ。
- Minekusら(「A standardised static in vitro digestion method suitable for food - an international consensus」 Food Funct. (2014)、6、1113~1124頁. DOI 10.1039/C3FO60702J)によって提案された方法によるin vitro GID。
【0093】
結果
錠剤をin vitro GID(3つ組で)に供し、120分間の胃相後及び30、60、90及び120分間の腸相後に試料を採取した。DMAC方法を使用して様々な試料のPCAA2含有量のmg当量について分析し、図1に示す検量線に従って定量した(PCAA2標準に適用したものと同じ方法で、640nmで得た)。
【0094】
本発明による錠剤の溶解プロフィールを図2に示す。実施例1及び実施例2の胃コーティングした錠剤について、実質的に等価な結果が得られた。
【0095】
in vitro GIDの胃相中、分析的に検証されたPCAの放出は存在しなかった。in vitro腸相中のPCA放出動力学(PCAA2 mg当量/錠剤として表す、3つ組の平均)を図2に示す。PCAの放出は、腸相中、60分後に分析的に観察可能であった。
【0096】
胃腸管液及び酵素(GIDブランク)又はPriorら(2010)によって提案された抽出溶媒(アセトン/水/酢酸、75:24.5:0.5v/v/v)を用いた錠剤自体及びPCA抽出物の機械的破損の後に、錠剤の未消化のPCAA2含有量のmg当量を決定した。得られた結果は、それぞれ19.39及び19.81PCAA2 mg当量/錠剤に等しかった。
【0097】
有効性の評価
本発明の有効性、特に腸管粘膜の保護の有効性に関するものを評価する目的で、いくつかのin vitro試験を実施して以下を決定した。
・ 特定のタンパク質の分析に基づいて接着の機構を遮断することによる、大腸菌の株の接着に対する競合の活性。
・ 以下のように評価した、腸管の透過性研究に基づいた、マクロファージにおける単球の活性化の低下を介した抗炎症活性。
〇 TEER(経上皮電気抵抗)の測定
経上皮電気抵抗(TEER)は、上皮組織の障壁の機能性の直接測定である。これは、厚さ及び構造の両方による全体的な組織抵抗を反映しており、単層の完全性のレベル、したがって細胞間の密着帯の形成の指標を表している。経上皮電気抵抗(Ωcm2で表す)は、電圧抵抗計(ERS Millicell)を使用して測定する。
〇 ルシファーイエローを用いたアッセイ:評価する物質の存在下。
ルシファーイエローは、細胞膜に不透過性であり、細胞間結合の完全性の検証を可能にする(百分率として)蛍光マーカーである。これは、Caco-2/Caco goblet細胞の単細胞層において物質の透過性を傍細胞レベルで研究するために使用する。LYの輸送は、規定期間のインキュベーション後の基底外側区画内への通過として評価する。蛍光物質の読み取りは、分光蛍光光度計によって、428nmの励起及び525nmの発光を用いて行う。
【0098】
特に、腸管細胞だけでなく、同時培養した粘液分泌細胞HT29からも構成されており、はるかにより現実的な系である、実験モデルCaco2-goblet(登録商標)を使用して、大腸菌によって誘導したストレスに続いて腸管粘膜を保護する本発明の有効性の評価を行うであろう。
【0099】
腸管粘膜(CacoGoblet)に対する保護の有効性に対する研究を実施した:大腸菌を用いたコロニー形成。
【0100】
1.研究の紹介及び目的
Caco-2モデルは、腸管粘膜の機能を再現するために使用する参照in vitroモデルであるため、その生物学的関連性は十分に確立されている。
【0101】
CacoGobletは、ヒト粘液分泌杯細胞並びに分化及び極性化したCaco-2細胞を播種した微孔質ポリカーボネートフィルター上の透過性の支持体からなる、粘液分泌細胞のモデルである。
【0102】
Sofar S.p.A.社に代わって、クランベリー抽出物の有効性を評価する目的でCacoGobletモデルに基づく実験モデルを適用した。
【0103】
生成物の潜在的な内因的毒性を除外するために、非細胞毒性濃度を予備段階でMTTアッセイによって試験した。
【0104】
2つのプロトコルを使用した。
1)同時培養系におけるクランベリー抽出物の抗炎症特性(THP-1細胞及び腸管上皮細胞)
2)大腸菌の粘膜への接着を防止するクランベリーの能力
【0105】
2.実験設計
1)in vitro同時培養系におけるクランベリー抽出物の抗炎症特性(THP-1細胞及び腸管上皮細胞)
CacoGoblet細胞を10ng/mlのIL1ベータで終夜前処理した。IL1ベータを除去した後、腸管モデルを非細胞毒性濃度のクランベリーで24時間処理した。粘膜の炎症状態の克服を研究するために、0.15%の参照分子etacortilen(デキサメタゾンリン酸ナトリウム)を用いて平行処理を実施した。
【0106】
その後、生成物を除去し、標識したTHP-1細胞(細胞トラッカー二酢酸5-クロロメチル-フルオレセインで標識した)を頂部区画のCacoGoblet細胞に加え、1時間、37℃でインキュベートした。
【0107】
非接着細胞を除去した後、THP-1細胞の残留表面蛍光を顕微鏡下で評価した。
【0108】
様々な化合物の腸管レベルでの抗炎症活性を、THP-1のCacoGobletに対する細胞接着の低下をエンドポイントパラメーターとして使用した静的アッセイで評価した。
【0109】
2)大腸菌の粘膜への接着を防止するクランベリーの能力
クランベリーで4時間前処理したCacoGoblet細胞を、50μlの大腸菌(ATCC 8739)を用いて、37℃で2時間コロニー形成させた。コロニー形成の終わりに、過剰な細菌を除去し、以下のパラメーターを評価した:
- 経上皮電気抵抗(TEER)及びルシファーイエローの傍細胞通過
- アルファ-アクチニンの免疫蛍光:アルファ-アクチニンは、大腸菌のタンパク質であるTirと相互作用してペデスタルとして知られる接着性溶菌斑を形成し、大腸菌感染のマーカーである。
- 細菌密度及びCacoGobletの表面への接着を評価するための、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた大腸菌の超微細構造解析。
【0110】
3.材料
3.1 実験系
CacoGoblet(商標)は、腸管吸収のin vitro評価のための、すぐに使用できる粘液分泌キットである。キットは、ヒト粘液分泌杯細胞並びに室温で安定な排他的な専売輸送培地を補充したHTS Transwellプレート中で分化及び極性化したCaco-2細胞を播種した、24ウェルを有する透過性の支持体からなる。
【0111】
CacoGoblet細胞系を分化の20日目に供給して5日間連続で使用し、完全培地を改変し、内部手順に基づいてTEERを測定した。CacoGoblet(商標)テクニカルデータシートを付録Iとして本明細書に添付する。
【0112】
Table 1(表1)に示すように、10%のFBS、1%のグルタミン 200mM、及び1%のNEAAを含有するDMEM(ロットRNBF5082)を培地として使用した。
【0113】
【表1】
【0114】
3.1.1 培養条件及び実験系の使用
CacoGoblet生成物を受け取った後、プレートを含有するジッパー開閉のパウチバッグを取り出す。ジッパーを開け、同じ週の金曜日までバッグを暗所の室温に静置する。金曜日に、プレートを37℃、5%のCO2、飽和湿度で4時間インキュベートする。培地を交換し、次の月曜日に実験を開始する。
【0115】
3.2 検査下の物質:同定及び特徴づけ
スポンサーが、安全性データシート及び検査下の物質の特徴づけに対して責任がある。(Table 2(表2))
【0116】
【表2】
【0117】
3.3 陰性及び陽性対照
陰性対照は培地そのままであった。
【0118】
【表3】
【0119】
4.方法
4.1 大腸菌。
株:大腸菌ATCC8739、ロット番号。
株を、実験の前週にニュートリエントブロスに接種した。更に、その正常な形態学を検証するために、これを寒天培地を有するプレート上に播種した。その後、37℃で16~24時間インキュベーションした。
【0120】
4.1.1 大腸菌懸濁液の調製及びコロニー形成の手順
コロニー形成の当日、大腸菌溶液の600nmでの光学密度(OD)を確認し、内部手順に基づいてコロニー形成懸濁液の調製に使用した(PM18)。
【0121】
適切な10×希釈液をプレート上に播種することによって(それぞれの区画の懸濁液の未希釈のものから10-7希釈液まで)、栄養素寒天培地中のそれぞれの接種材料を検証するために細菌計数を実施した。CacoGobletに施用した生細菌計数は1.2*107CFUに対応する。
【0122】
4.2 経上皮抵抗試験(TEER)
4.2.1 原理
経上皮電気抵抗(TEER)は、皮膚障壁機能の直接的尺度である。これは、その構造及び厚さの両方による全体的な組織抵抗を反映しており、密着帯の観点から障壁の完全性を測定している。
【0123】
分化Caco-2細胞の単層のTEER値は、単層自体の完全性の度合、したがって腸細胞間の密着帯の形成を示している。TEER(Ω*cm2)の測定は電圧抵抗計 (Millicell ERS)(範囲200~2000Ω)を用いて行う。
【0124】
4.2.2 手順
TEERは、十分に分化したCacoGoblet細胞の単層に対して、21日間の培養後に、正しい電極を使用して挿入し、電極の短い端をインサート内に、頂部位置で配置する(0.3mlの培地中)ことによって、測定を行うことによって、評価した。電極の長い端は、ウェル中に、基底外側位置で沈めた(0.9mlの培地中)。
【0125】
4.3 ルシファーイエローを用いた試験
4.3.1 原理
ルシファーイエロー(LY)は、細胞膜に不透過性の蛍光色素である。これは、物質の傍細胞透過性を研究するために使用される。結合がインタクトな場合、ルシファーイエローは非常に低い透過性を有する一方で、結合が損傷している場合、ルシファーイエローの流れがより大きくなる。したがって、この試験は、検査する物質の存在下における細胞間結合の完全性の検証を可能にする。
【0126】
4.3.2 手順
生理食塩水(0.25ml)に溶解した検査する物質に曝露させた後、ルシファーイエロー(LY)を頂部区画に100μMの濃度で施用する。0.70mlの生理食塩水を基底外側区画に加える。LYの輸送を、1時間、37℃での規定期間のインキュベーション後の頂部区画から基底外側区画への通過の観点から評価する。
【0127】
読み取りは、分光蛍光光度計(TECAN社INFINITE M200)によって、428nmの励起及び525nmの発光を用いて行う。
【0128】
透過性の百分率は以下の式によって計算する:
LY流=(RFUBL/RFUAP初期)×100
【0129】
インタクトなCacoGoblet単層では、LY流は1.4%未満であるべきである。
【0130】
4.4 走査電子顕微鏡(SEM)
SEMによって検査する試料を0.1MのPBS中の2.5%のグルタルアルデヒド溶液で24時間固定し、0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液、pH7.4で洗浄し、同じ試料中で1%の四酸化オスミウム(OsO4)で抽出した(2時間、室温)。その後、試料を、室温の漸増度合のエタノール及びヘキサメチルジシラザン中で終夜脱水した。
【0131】
試料を、炭素タブを有するピンに載せ、Polaron Equipment Limited社のSEM E5100金属コーターを使用して金の層をコーティングし、その後、視察及び撮影のためにZeiss社S状結腸電子走査顕微鏡に移した。
【0132】
【表4】
【0133】
4.5 免疫蛍光:アルファ-アクチニン
4.5.1 原理
免疫蛍光標識は、組織切片の細胞区画中の特定の構造又は分子を検出するための組織学的な技法である。この技法は、間接的な方法、すなわち、標的を特異的に認識することができる一次抗体、及び一次抗体を認識することができる、フルオロフォアと結合した二次抗体を使用して、標的分子を検出するための抗原と結合する抗体の特異性、及び蛍光顕微鏡によって検出するシステムに基づいている。
【0134】
4.5.2 手順
冷エタノールで30分間及び冷アセトンで3分間固定した後、腸管粘膜をPBSで洗浄し、非特異的な反応をPBS中の1%BSAを用いて30分間で遮断した。それぞれのインサートを、PBS中の1%BSA中の1μg/mlのアルファアクチニン抗体(モノクローナルマウス抗体、ab18061、ロットGR256204-1)と共に、終夜4℃でインキュベートした。洗浄後、組織をPBS中の1%BSA中の二次抗体(ヤギ抗マウス抗体Alexa Fluor 488、Invitrogen社A10-680)1:400と共に、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、核をDAPIで染色しLeica社DM2500蛍光顕微鏡下で分析した。
【0135】
4.6 単球-上皮細胞接着アッセイ
4.6.1 原理
接着アッセイの前に、CacoGoblet細胞を炎症誘発性サイトカインIL-1ベータで終夜処理して、炎症粘膜を作製した。その後、処理した単層を生成物で24時間処理した。標識したTHP-1細胞を、それぞれのウェル中のCacoGobletの上に加えた。THP-1細胞を蛍光色素の二酢酸クロロメチルフルオレセイン(CMFDA、Invitrogen社)で標識した。インキュベーション後、単層を穏やかに洗浄して非接着THP-1細胞を除去した。蛍光色素で標識された接着細胞を蛍光顕微鏡下で視察した。
【0136】
4.6.2 手順
処理後、標識したTHP-1細胞をCacoGobletの上に施用した。
【0137】
THP-1細胞を蛍光色素の二酢酸クロロメチルフルオレセインで標識した(CMFDA励起492、発光517、Invitrogen社)。
【0138】
1時間のインキュベーション後、単層を穏やかに洗浄して非接着THP-1細胞を除去した。蛍光色素で標識された接着細胞を蛍光顕微鏡下で視察した。
【0139】
5.結果
5.1 MTT試験を介した細胞生存度
MTT試験の結果を図3に提示する。図3は、10~100~1000μg/mlのクランベリーを用いた24時間の処理後の細胞生存度を示す。
【0140】
陰性対照(培地そのまま)を100%の生存度として割り当てた。
【0141】
試験したすべての濃度において、生成物は陰性対照と比較して生存度を低下させなかった。
【0142】
有効性研究に選択した非細胞毒性濃度は1000μg/mlであった。この濃度では、MTT試験で検査した物質の妨害は32%であった。
【0143】
in vitro同時培養系におけるクランベリー抽出物の抗炎症特性(THP-1細胞及び腸管上皮細胞)
5.2 単球-上皮細胞接着アッセイ
処理後、標識したTHP-1細胞をCacoGobletの上に施用した。
【0144】
1時間のインキュベーションの後、単層を穏やかに洗浄して非接着THP-1細胞を除去した。蛍光色素で標識された接着細胞を蛍光顕微鏡下で視察した。結果を図4に提示する。
【0145】
図4は、未処理の炎症CacoGoblet中の単球-上皮細胞接着を示す。
・ 予想通り、IL1ベータを用いた処理の後、THP-1細胞の接着の増加が観察された。
・ 予想通り、非常に少数のTHP-1細胞がCacoGoblet上皮に接着性であることが示された(陰性対照、NT)。
・ 健康な粘膜に対するクランベリーそのままは、THP-1細胞の接着を減らした。
・ etacortilenを炎症粘膜に施用した後、THP-1細胞の接着の顕著な減少が観察された。
・ クランベリーを炎症粘膜に施用した後、THP-1細胞の接着の顕著な減少が観察され、これはetacortilenを用いた処理よりもわずかに小さかった。
【0146】
大腸菌の粘膜への接着を防止するクランベリーの能力
5.3 TEERの測定
図5は、基底(0時間)、生成物で4時間処理した後、及び大腸菌によって2時間コロニー形成させた後(合計6時間の処理)のオーム*cm2で表す、経上皮電気抵抗(TEER)の結果を示す。
【0147】
処理前(T=0時間)のTEER値は、密着帯の構造の完全性に相関する、障壁の全体的な抵抗を示す。
【0148】
粘膜の障壁の完全性の物理的パラメーターであるTEERを使用して、粘膜上皮レベルでのイオンの傍細胞流に対する生成物の影響を特徴づけた。
【0149】
図5は、基底(0時間)、クランベリー1000μg/mlそのままで4時間処理した後、又は大腸菌によって2時間コロニー形成させた後のオーム*cm2で表す、経上皮電気抵抗(TEER)を示す。陰性対照の合計培養時間は6時間であった。
【0150】
図5に示すように、大腸菌によるコロニー形成は、2時間の処理の後、274.67オーム*cm2から218.68オーム*cm2へのTEERの低下を引き起こした(-21%)。
【0151】
クランベリーを用いた4時間の前処理は、315オーム*cm2から325.82オーム*cm2へのTEERの増加を引き起こし、大腸菌の接着に対抗した(TEERの3%の回復)。
【0152】
4時間の処理後、クランベリーそのままは、TEER値の43%の増加を誘導した(299.86オーム*cm2から430.54オーム*cm2)。これらの結果は、大腸菌の存在下及び非存在下のどちらにもおける、フィルム形成の妥当な特性及び上皮障壁に対するクランベリー抽出物のプラスの有効性を示している。
【0153】
5.4 ルシファーイエローを用いた試験:傍細胞透過性
ルシファーイエロー(LY)の傍細胞流を曝露期間の終わりに評価した。蛍光測定の結果を図6に示す。
【0154】
図6は、頂部区画における0時点でのLYと比較した、LYの%流れを示す。図6は、6時間の処理後のLYの流れを示す(クランベリーで4時間及び大腸菌によるコロニー形成で2時間)。
【0155】
陰性対照(NC)は、LYに対して0.52%の透過性を有していた。
【0156】
大腸菌は、陰性対照よりもLY(0.91%)に対して高い透過性を有していた(NCと対比してLYの通過の74%増加)。
【0157】
陰性対照と試験した生成物との間に有意差は出現しなかった。クランベリーを用いた前処理が腸上皮を修復し、大腸菌による接着を防止した。
【0158】
クランベリーそのままは、保護の有効性を有する。陰性対照と比較してLYの通過の29%の低下が観察された。
【0159】
5.5 アルファ-アクチニンの免疫蛍光染色
以下の一連の画像は、蛍光顕微鏡下で分析した試料を示す。緑色は膜レベルで位置するタンパク質アルファ-アクチニンを表す。アルファ-アクチニンは、大腸菌のタンパク質であるTirと相互作用してペデスタルとして知られる接着性溶菌斑を形成し、大腸菌感染のマーカーである。
【0160】
図7は、クランベリーで処理した又は処理していない、大腸菌によってコロニー形成された試料中のアルファ-アクチニンの免疫蛍光を示す。
【0161】
陰性対照と比較して、大腸菌によるコロニー形成後に膜レベルでの蛍光色の増加が明白である。
【0162】
クランベリーは、そのままで又は大腸菌によるコロニー形成前の前処理として施用した場合に、アルファ-アクチニンのわずかな減少を誘導した(大腸菌によるコロニー形成と比較して有意でない差)。
【0163】
5.6 走査電子顕微鏡
図8は、文献から得られたCaco-2細胞微絨毛の超微細構造的画像を示す。(BCD Cancer 2008 8:227頁)
【0164】
未処理のCaco-2細胞では、多数の微絨毛を観察することができる。細胞の縁は現れない。挿入:長い微絨毛が存在する。b.EGFで処理した細胞。数々の小胞が明白である。挿入:低下した数の微絨毛が存在する。c~f:処理した細胞。微絨毛は数が減少し、その立位を失う。
【0165】
大腸菌によるCaco-2細胞のコロニー形成に対する歴史的(Historical)VitroScreenデータ:大腸菌の増殖及び細胞層への接着が明白である(赤色矢印)。
【0166】
図9A及び図9Bは、走査電子顕微鏡下の分析した試料を示す。
【0167】
図10Aは、6時間での陰性対照:未処理のCacoGobletを示す。
【0168】
予想通り、陰性対照は細胞ストレスも細菌汚染も示さなかった。組織は栄養性であり、十分に構造化されたデスモソームを有する(1000×)。微絨毛は、表面全体にわたって十分に組織化されているように見える。微絨毛の密なブラシ様の境界を観察することができる(5000×、赤色四角)。
【0169】
図10Bは、大腸菌による組織のコロニー形成、2時間を示す。
【0170】
技術的問題の解決策が理由で、大腸菌の増殖はCacoGobletの表面に存在しない。しかし、単層は表面上に損傷した微絨毛を示す。陰性対照と比較して、その数は少なく、その正常な位置を失っており(10000×、赤色四角)、これは、大腸菌がブラシ様の境界に損傷を引き起こしたことを示している。
【0171】
図10Cは、2時間の大腸菌によるコロニー形成の前に、4時間のクランベリーを用いた前処理を示す。
【0172】
単層は十分に構造化されているように見え、表面に微絨毛を示す(5000×)。少数の大腸菌細胞が目に見え、その形態学は変化しており(10000×、赤色矢印)、溶解の明確な兆候がある。更に、豊富な細菌細片(10000×、赤色星)が明白であり、これは、クランベリーを用いた処理が大腸菌に損傷を引き起こしたことを示している。
【0173】
6.結論
Sofar S.p.A.社に代わって、クランベリー抽出物の有効性を評価するためにin vitro CacoGoblet腸上皮に基づく様々な実験モデルを適用した。
【0174】
生成物の潜在的な内因的毒性を除外するために、非細胞毒性濃度を予備段階でMTTアッセイによって試験した。
【0175】
有効性研究に選択した最も高い非細胞毒性濃度は1000μg/mlであった。
【0176】
2つのプロトコルを使用した。
1)同時培養系におけるクランベリー抽出物の抗炎症特性(THP-1細胞及び腸管上皮細胞)
2)大腸菌の接着を防止するクランベリーの能力
【0177】
以下に関する結論に到達するために、以下のパラメーターを評価した:
- IL1-ベータによって誘導した炎症を用いた、CacoGobletにおける単球-上皮細胞接着(抗炎症有効性)
- 経上皮電気抵抗(TEER)及びLYの傍細胞流(上皮障壁の変化)
- 走査電子顕微鏡(SEM)を用いた大腸菌の超微細構造解析(大腸菌の接着及び増殖の対抗)
- 免疫蛍光によるアルファ-アクチニンの位置(大腸菌の接着の対抗)
【0178】
結論として、結果により以下が実証された。
1)炎症腸管粘膜に施用したクランベリーは、THP-1細胞への接着の有意な低下を誘導し、これは有意な抗炎症作用を示唆している。
2)4時間のクランベリーを用いた前処理は、大腸菌の接着によって誘導された障壁の損傷にわずかに対応した。クランベリーそのままは、4時間の処理後にTEER値の43%の増加を誘導し、これは優れたフィルム形成能力を示唆している。
3)クランベリーそのままは、障壁の完全性に対して保護的作用を行う。陰性対照と比較して、LYの通過の29%の低下が観察された。陰性対照と比較して、試験した生成物で有意差は出現しなかった。クランベリーを用いた前処理は、腸上皮を修復し、大腸菌による接着を防止した。
4)大腸菌の接着のバイオマーカーとして関連性のあるα-アクチニンを用いた染色は、採用した実験条件下では、クランベリーを用いた処理によって有意な度合まで変わらなかった。しかし、蛍光のわずかな低下が観察された。
5)走査電子顕微鏡観察による分析により、大腸菌の接着、生存度、及び形態学に対するクランベリーの直接の活性が明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図8f
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11