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特許7321949織機における製織方法及びその製織方法を実現するための開口装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】織機における製織方法及びその製織方法を実現するための開口装置
(51)【国際特許分類】
   D03C 13/00 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
D03C13/00 H
D03C13/00 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020015999
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021123813
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 豊
(72)【発明者】
【氏名】金谷 陽一
(72)【発明者】
【氏名】越村 勇太
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03C 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
綜絖枠毎に設けられた専用の駆動モータを備えると共に製織される織物の織組織に応じて予め定められた開口パターン及び該開口パターンに応じた前記駆動モータの駆動態様に従って各前記駆動モータが独立して駆動される開口装置を備えた織機における製織方法であって、前記開口パターンが2以上の連続する製織サイクルの各製織サイクルにおける中間時点を含む停留期間中の各前記中間時点における前記綜絖枠の位置を同じ最大開口位置とするパターンである場合の製織方法において、
前記開口パターンと前記駆動態様との組み合わせから成る駆動パターンが2以上繰り返される織柄1リピート分の動作パターンが各前記綜絖枠に対し設定されると共に、
少なくとも一部の前記綜絖枠を対象綜絖枠として該対象綜絖枠に対し設定される前記動作パターンが、前記駆動態様を前記停留期間における筬打ち時点で前記対象綜絖枠が前記最大開口位置に停留した状態とされるように定めた第1の駆動パターンと、前記駆動態様を前記停留期間における筬打ち時点で前記対象綜絖枠が中口位置を超えない範囲で該中口位置側に定められた設定位置に位置した状態とされるように定めた第2の駆動パターンとを含むように設定され、
各前記綜絖枠が前記動作パターンに従って駆動されて製織が行われる
ことを特徴とする織機における製織方法。
【請求項2】
前記設定位置の前記中口位置に対する距離が、前記最大開口位置の前記中口位置に対する距離の50%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の織機における製織方法。
【請求項3】
前記対象綜絖枠に対し設定される前記動作パターンは、前記第2の駆動パターンとして、前記停留期間での前記最大開口位置と前記停留期間を含む製織サイクルに連続する製織サイクルにおける前記最大開口位置との間の前記対象綜絖枠の変位で経糸が前記中口位置に達する到達時点が前記第1の駆動パターンにおける前記到達時点よりも早い時点となるように前記駆動態様が定められた第2の駆動パターンを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の織機における製織方法。
【請求項4】
綜絖枠毎に設けられた専用の駆動モータと、製織される織物の織組織に応じて予め定められた開口パターン及び該開口パターンに応じた前記駆動モータの駆動態様に従って前記駆動モータの駆動を制御する制御器とを備えた織機の開口装置であって、
前記開口パターンと前記駆動態様との組み合わせから成る駆動パターンが2以上繰り返される織柄1リピート分の動作パターンを各前記綜絖枠に対し設定可能な設定器を備え、
該設定器は、前記開口パターンが2以上の連続する製織サイクルの各製織サイクルにおける中間時点を含む停留期間中の各前記中間時点における前記綜絖枠の位置を同じ最大開口位置とするパターンである場合の前記動作パターンに含まれる各前記駆動パターンとして、前記駆動態様を前記停留期間における筬打ち時点で前記綜絖枠が前記最大開口位置に停留した状態とされるように定めた第1の駆動パターンと、前記駆動態様を前記停留期間における筬打ち時点で前記綜絖枠が中口位置を超えない範囲で該中口位置側に定められた設定位置に位置した状態とされるように定めた第2の駆動パターンとを選択的に設定可能に構成されており、
前記制御器は、前記動作パターンに従って前記駆動モータの駆動を制御する
ことを特徴とする織機の開口装置。
【請求項5】
前記設定器は、前記設定位置の前記中口位置に対する距離が前記最大開口位置の前記中口位置に対する距離の50%以下となるような範囲で、前記設定位置を設定可能に構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の織機の開口装置。
【請求項6】
前記設定器は、前記動作パターンを、前記第2の駆動パターンとして、前記停留期間での前記最大開口位置と前記停留期間を含む製織サイクルに連続する製織サイクルにおける前記最大開口位置との間の前記綜絖枠の変位で経糸が前記中口位置に達する到達時点が前記第1の駆動パターンにおける前記到達時点よりも早い時点となるように前記駆動態様が定められた第2の駆動パターンを含むように設定可能に構成されている
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の織機の開口装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綜絖枠毎に設けられた専用の駆動モータを備えると共に製織される織物の織組織に応じて予め設定された開口パターン及び該開口パターンに応じた駆動モータの駆動態様に従って各駆動モータが独立して駆動される開口装置を備えた織機における製織方法、及びその製織方法を実現するための開口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機においては、製織中に各綜絖枠が予め定められた開口パターンに従って駆動されることで、所望の織組織の織物が製織される。なお、その開口パターンは、各綜絖枠について、製織サイクル毎にその位置(最大開口位置)が上口位置(最も上昇した位置)であるか下口位置(最も下降した位置)であるかを指定するかたちで定められる。
【0003】
そして、製織される織物の織組織が綾組織や朱子組織の場合には、その各綜絖枠の開口パターンは、2以上の連続する製織サイクルにおいて最大開口位置が同じ位置であるように定められる。したがって、その場合には、各綜絖枠は、2以上の連続する製織サイクルに跨がる期間において、開口パターンで定められた同じ最大開口位置に停留した状態となるように駆動される。なお、本出願では、このように各綜絖枠が停留する期間を停留期間と称する。
【0004】
因みに、そのように定められる開口パターンは、製織サイクル単位で、前記のように最大開口位置が指定されるかたちとなっている。一方で、各綜絖枠の位置は、その前後の製織サイクルに対し指定された最大開口位置によっては、製織サイクルに亘って最大開口位置に維持される場合と、そうで無い場合とがある。しかし、各製織サイクルにおける各綜絖枠の位置は、少なくとも製織サイクルの中間時点(織機の主軸の回転角度が180°である時点)では、開口パターンで指定された最大開口位置となっている。
【0005】
ところで、織機における開口装置としては、例えば特許文献1に開示されているような、綜絖枠毎に専用の駆動モータを備えると共に各綜絖枠を独立して駆動する開口装置が存在する。そして、そのような開口装置を備えた織機においては、その開口装置のための設定器等が前記のような開口パターンを任意に設定できるように構成されていると共に、その開口パターンに応じて綜絖枠を動作させるための駆動モータの駆動態様(開口曲線)が設定器あるいは制御器等に記憶されている。その上で、その開口装置は、各綜絖枠を設定された開口パターンに従って動作させるべく、その開口パターンに基づいて選択された駆動モータの駆動態様に従って各駆動モータの駆動を制御するように構成されている。
【0006】
なお、特許文献1の開口装置では、前記のように前記停留期間において綜絖枠が停留するような開口パターンに基づいて製織が行われる場合において、停留させる綜絖枠の位置が設定された量だけ最大開口位置よりも口閉じした位置となるように駆動モータが制御されている。但し、そのように駆動モータが制御される製織においても、各綜絖枠は、前記停留期間に亘ってその口閉じした位置に停留した状態とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-84007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような各綜絖枠を専用の駆動モータにより独立して駆動する開口装置を備えた織機において、特殊な風合いを有する織物を製織するための方法及びその製織方法を実現するための開口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、綜絖枠毎に設けられた専用の駆動モータを備えると共に製織される織物の織組織に応じて予め定められた開口パターン及び該開口パターンに応じた駆動モータの駆動態様に従って各駆動モータが独立して駆動される開口装置を備えた織機における製織方法であって、開口パターンが2以上の連続する製織サイクルの各製織サイクルにおける中間時点を含む停留期間中の各中間時点における綜絖枠の位置を同じ最大開口位置とするパターンである場合の製織方法を前提とする。
【0010】
そして、本発明の織機における製織方法は、開口パターンと駆動態様との組み合わせから成る駆動パターンが2以上繰り返される織柄1リピート分の動作パターンが各綜絖枠に対し設定されると共に、少なくとも一部の綜絖枠を対象綜絖枠として該対象綜絖枠に対し設定される動作パターンが、駆動態様を停留期間における筬打ち時点で対象綜絖枠が最大開口位置に停留した状態とされるように定めた第1の駆動パターンと、駆動態様を停留期間における筬打ち時点で対象綜絖枠が中口位置を超えない範囲で該中口位置側に定められた設定位置に位置した状態とされるように定めた第2の駆動パターンとを含むように設定され、各綜絖枠が動作パターンに従って駆動されて製織が行われることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の織機における製織方法は、設定位置の中口位置に対する距離が、最大開口位置の中口位置に対する距離の50%以下であるようにしても良い。
【0012】
さらに、本発明の織機における製織方法は、対象綜絖枠に対し設定される動作パターンが、第2の駆動パターンとして、停留期間での最大開口位置と停留期間を含む製織サイクルに連続する製織サイクルにおける最大開口位置との間の対象綜絖枠の変位で経糸が中口位置に達する到達時点が第1の駆動パターンにおける到達時点よりも早い時点となるように駆動態様が定められた第2の駆動パターンを含むようにしても良い。
【0013】
また、そのような製織方法を実現するための本発明による織機の開口装置は、綜絖枠毎に設けられた専用の駆動モータと、製織される織物の織組織に応じて予め定められた開口パターン及び該開口パターンに応じた駆動モータの駆動態様に従って駆動モータの駆動を制御する制御器とを備えた織機の開口装置を前提とする。
【0014】
そして本発明では、その開口装置が、開口パターンと駆動態様との組み合わせから成る駆動パターンが2以上繰り返される織柄1リピート分の動作パターンを各綜絖枠に対し設定可能な設定器を備え、該設定器は、開口パターンが2以上の連続する製織サイクルの各製織サイクルにおける中間時点を含む停留期間中の各中間時点における綜絖枠の位置を同じ最大開口位置とするパターンである場合の動作パターンに含まれる各駆動パターンとして、駆動態様を停留期間における筬打ち時点で綜絖枠が最大開口位置に停留した状態とされるように定めた第1の駆動パターンと、駆動態様を停留期間における筬打ち時点で綜絖枠が中口位置を超えない範囲で該中口位置側に定められた設定位置に位置した状態とされるように定めた第2の駆動パターンとを選択的に設定可能に構成されており、制御器は、動作パターンに従って駆動モータの駆動を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の開口装置は、設定器が、設定位置の中口位置に対する距離が最大開口位置の中口位置に対する距離の50%以下となるような範囲で、設定位置を設定可能に構成されているようにしても良い。
【0016】
さらに、本発明の開口装置は、設定器が、動作パターンを、第2の駆動パターンとして、停留期間での最大開口位置と停留期間を含む製織サイクルに連続する製織サイクルにおける最大開口位置との間の綜絖枠の変位で経糸が中口位置に達する到達時点が第1の駆動パターンにおける到達時点よりも早い時点となるように駆動態様が定められた第2の駆動パターンを含むように設定可能に構成されているようにしても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の織機における製織方法によれば、各綜絖枠に対して設定される駆動パターンの2以上の繰り返しからなる織柄1リピート分の動作パターンのうちの前記した対象綜絖枠に対し設定される動作パターンが、前記した第1の駆動パターンと第2の駆動パターンとを含むように設定され、その動作パターンに従って対象綜絖枠が駆動されるかたちで製織が行われる。そして、そのような製織方法によれば、第2の駆動パターンで綜絖枠が駆動されて製織が行われた製織部分は、筬打ち時の経糸の張力が通常とは異なることで、第1の駆動パターンで綜絖枠が駆動されて製織が行われた製織部分と比べ、織物の表面が盛り上がった状態となる。その結果として、製織される織物は、全体としてその表面に凹凸が形成されたような風合いを有するものとなり、一般的な(通常の)製織方法による製織(第1の駆動パターンのみで綜絖枠が駆動されることで行われる製織)の場合と比べ、特殊な風合いを有する織物を得ることができる。
【0018】
また、本発明の織機の開口装置によれば、設定器は、駆動パターンにおける開口パターンが綜絖枠の停留期間を発生させるようなパターンである場合の動作パターンの設定において、動作パターンに含まれる各駆動パターンとして前記した第1の駆動パターンと第2の駆動パターンとを選択的に設定できるように構成されている。それにより、任意の綜絖枠に対する駆動パターンの2以上の繰り返しからなる動作パターンを前記した第1の駆動パターンと第2の駆動パターンとを含むように設定することで、前記のような特殊な風合いを有する織物を得ることができる。
【0019】
さらに、第2の駆動パターンを含むように設定された動作パターンを、停留期間での最大開口位置と停留期間を含む製織サイクルに連続する製織サイクルにおける最大開口位置との間の綜絖枠の変位で経糸が中口位置に達する到達時点が第1の駆動パターンにおける到達時点よりも早い時点となるように駆動態様が定められた第2の駆動パターンを含むものとすれば、第2の駆動パターンによる製織部分での織物の表面の状態を均一とすることができる。
【0020】
詳しくは、本発明によれば、第2の駆動パターンによる製織では、対象綜絖枠により変位される経糸の張力が、停留期間内での筬打ち時点において、第1の駆動パターンによる製織の場合と比べて低い状態となり、それによって前記のような盛り上がる部分が織物の表面に形成される。但し、製織で用いられる糸の種類や製織条件(経糸の設定張力等)によっては、経糸の張力状態との関係で、その製織部分における織物表面の盛り上がり状態が、第2の駆動パターンによる製織の範囲に亘って均一にならない場合がある。
【0021】
なお、経糸が中口位置(閉口位置)に達する時点を筬打ち時点よりも早くすれば、当然ながら筬打ち時点では経糸が中口位置に対し上方又は下方に変位した状態となるため、筬打ち時点での経糸の張力は、経糸が中口位置にある状態で筬打ちが行われる場合と比べて高くなる。したがって、第2の駆動パターンにおける駆動態様について、前記した到達時点が通常の駆動パターンである第1の駆動パターンにおける駆動態様と同じである場合(到達時点に特に変更を加えない場合)と比べて早い時点であるような駆動態様とすることで、それによって駆動される対象綜絖枠で変位される経糸の筬打ち時点での張力は、前記変更を加えない場合と比べて高くなる。
【0022】
そして、開口パターン単位で見ると、前記のような停留期間における低張力での筬打ちによる盛り上がり部分の盛り上がり方が、その停留期間以外の筬打ち時点の張力を変化させることで変化することとなる。そこで、その筬打ち時点の張力が適宜な大きさとなるよう、すなわち、到達時点が適宜な時点となるように第2の駆動パターンにおける駆動態様を定めることで、第2の駆動パターンによる製織部分での織物表面の状態を適宜なものに調整することが可能となる。その結果として、第2の駆動パターンによる製織部分での織物表面の盛り上がった状態をその製織の範囲に亘って均一とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による織機の開口装置の一例を示すブロック図である。
図2】表示器に表示される駆動情報設定画面の一例である。
図3】表示器に表示される動作パターン設定画面の一例である。
図4】動作パターン設定画面上の設定欄の部分拡大図である。
図5】表示器に表示される駆動態様情報の割り当てを行うための別ウィンドウの一例である。
図6】綜絖枠の変位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明に係る織機の開口装置1の一例を示している。その開口装置1は、複数枚の綜絖枠2と、綜絖枠2毎に設けられた専用の駆動モータ21と、綜絖枠2と駆動モータ21とを連結する運動変換機構22とを備えている。そして、開口装置1は、各駆動モータ21の出力軸の回転がそれに連結された運動変換機構22によって変換され、対応する綜絖枠2を上下方向に往復駆動するように構成されている。すなわち、その開口装置1は、各綜絖枠2をその専用の駆動モータ21で独立して駆動するように構成されている。
【0025】
また、開口装置1は、各駆動モータ21の駆動を制御する開口制御装置3を備えている。その開口制御装置3は、記憶器31と、記憶器31に対し接続された駆動指令器32と、駆動指令器32に対し接続された駆動制御器33とを有している。なお、その開口装置1は、駆動モータ21毎に設けられると共に対応する駆動モータ21の出力軸の回転角度を検出する開口側エンコーダ23を備えている。そして、その各開口側エンコーダ23は、開口制御装置3(駆動制御器33)に接続されている。
【0026】
その開口制御装置3において、記憶器31には、製織される織物の織組織に応じた開口パターンやその開口パターンに応じた駆動モータの駆動態様に関する情報が記憶されている。なお、開口パターンは、製織サイクル毎の綜絖枠2の位置(上口位置、下口位置)を設定したものであり、例えば、織組織の1単位(1リピート)が4製織サイクルからなる3/1綾組織の開口パターンは、『上、上、上、下』といったかたちで設定される。但し、本発明で言う「開口パターン」は、綜絖枠2毎に設定されるパターンであって織組織の1単位に相当するパターンを指す。
【0027】
なお、開口パターンは、そのように製織サイクル単位で綜絖枠2の位置(以下、「枠位置」)を設定するものである。しかし、各製織サイクルにおけるその製織サイクルに亘る実際の枠位置は、例えば『上』に設定されている製織サイクルにおいてその製織サイクルに亘って綜絖枠2が上口位置(最上昇位置)に維持されるのに限られる訳では無く、前後の製織サイクルに対し設定された枠位置によっては、その製織サイクル中に上口位置へ向けて変位する部分や下口位置へ向けて変位する部分を含む。但し、少なくとも各製織サイクルにおける中間時点(織機の主軸4の回転角度(所謂、クランク角度)が180°の時点)では、綜絖枠2は、開口パターンで示された上口位置または下口位置に位置した状態となっている。したがって、開口パターンにおいて2以上の連続する製織サイクルに対し同じ枠位置が設定されている場合には、少なくとも中間時点で綜絖枠2が同じ位置となる製織サイクルがその設定分だけ連続することとなり、その枠位置が同じとなる各中間時点を含む期間が、本発明で言う「停留期間」に相当する。
【0028】
また、駆動態様は、開口パターンに応じた綜絖枠2の動作がどのように行われるかが定められたものである。すなわち、その駆動態様は、前記のように開口パターンにおいて製織サイクル毎に設定された枠位置の状態を実現すべく、連続する2つの製織サイクル間での綜絖枠2の動作を実現するものである。そこで、一般的には、駆動態様は、連続する2つの製織サイクルの両中間時点に亘る期間(先の製織サイクルのクランク角度180°から後の製織サイクルのクランク角度180°までの期間)において綜絖枠2を駆動するための態様とされる。そして、その駆動態様には、綜絖枠2が中口位置(経糸が閉口状態となる位置)や最大開口位置に達するタイミング等が含まれている。
【0029】
なお、織機は、製織条件等を入力設定する入力設定器5を備えており、その入力設定器5は、開口制御装置3(記憶器31)にも接続されている。そして、前記した開口パターン及び駆動態様に関する情報(以下、「駆動態様情報」)が、その入力設定器5により入力設定されて記憶器31に記憶(設定)される。したがって、その入力設定器5は、開口装置1の一部としても機能する。因みに、入力設定器5としては、例えば、表示器を備え、その表示器上の設定画面を操作することにより前記した開口パターン等の入力が可能なタッチパネル式のものが用いられる。
【0030】
そして、開口制御装置3は、設定された開口パターンに基づき、連続する製織サイクルの枠位置に応じた駆動態様に従って綜絖枠2が動作するように、駆動指令器32がその駆動態様に応じた駆動指令を駆動制御器33に対し出力すると共に、駆動制御器33がその駆動指令に従って駆動モータ21の駆動を制御するように構成されている。但し、その駆動態様は、前記した記憶器31に記憶された駆動態様情報から導き出される。また、駆動指令器32には、織機の主軸4に設けられると共にクランク角度を検出するための主軸側エンコーダ41が接続されており、検出したクランク角度に応じたクランク角度信号が入力される。そして、駆動指令器32は、そのクランク角度信号に基づいて駆動指令を出力するように構成されている。さらに、駆動制御器33には、前記した開口側エンコーダ23からの各駆動モータ21の回転角度に応じた回転角度信号が入力されており、駆動制御器33は、その回転角度信号に基づいてフィードバック制御を行うように構成されている。
【0031】
なお、本実施例の開口制御装置3においては、駆動指令器32は、各製織サイクルにおけるクランク角度が180°よりも前の設定角度(例えば、60°)に達した時点で、開口パターンに設定されたその製織サイクルでの枠位置と次の製織サイクルでの枠位置とに応じた駆動態様を記憶器31に記憶された駆動態様情報から導き出し、その製織サイクルにおけるクランク角度180°の時点でその導き出した駆動態様に応じた駆動指令を駆動制御器33に対し出力するように構成されている。そして、その駆動指令に従って駆動制御器33が駆動モータ21の駆動を制御することにより、開口パターンにおいて製織サイクル毎に設定された枠位置の状態が実現される。
【0032】
また、本実施例において、開口制御装置3は、その各構成要素がそれぞれの機能を有する回路素子によって構成された回路からなる装置であっても良いし、その各構成要素の機能についてプログラミングされたコンピュータが開口制御装置3として動作するものであっても良い。
【0033】
本発明は、以上で説明した開口装置1を備えた織機において、前記した開口パターンが、2以上の連続する製織サイクルに対し同じ枠位置が設定されるパターンである場合、すなわち、設定される開口パターンが、その開口パターンに従った製織中に前記した停留期間が存在するようなパターンである場合に適用される。そして、本実施例は、その開口パターンが前記した3/1綾組織の開口パターンである場合の例である。
【0034】
その上で、本実施例では、前記した入力設定器5(本発明で言う設定器に相当)は、綜絖枠2を駆動するための駆動パターンが2以上繰り返される織柄1リピート分の動作パターンを綜絖枠2毎に設定可能に構成されている。但し、本発明で言うその駆動パターンは、開口パターンと駆動態様との組み合わせから成るパターンである。また、その駆動態様について、前記の停留期間が存在するような開口パターンに対する通常の駆動態様は、停留期間における筬打ち時点で綜絖枠2が最大開口位置に停留した状態とされるように定められる。それに対し、本発明では、駆動態様が、停留期間における筬打ち時点で綜絖枠2が中口位置を超えない範囲で該中口位置側に定められた設定位置に位置した状態とされるようにも定められる。したがって、前記の動作パターンは、通常の駆動態様が定められる第1の駆動パターンと、停留期間における筬打ち時点で綜絖枠2が設定位置に位置した状態とされるような駆動態様が定められる第2の駆動パターンとを含むように設定される。
【0035】
以下では、本発明による入力設定器5について、その一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。入力設定器5は、表示器(ディスプレイ)を備えており、その表示器上に図2図3に示す設定画面を読み出すことができるように構成されている。なお、その表示器は、前記したようにタッチパネル式のものであり、タッチ操作により、その設定画面の入力欄に情報を入力することが可能となっている。
【0036】
図2に示す設定画面は、前記した駆動態様情報として綜絖枠2の駆動に関連する設定値(以下、「駆動設定値」)を設定するための駆動情報設定画面6である。その駆動情報設定画面6は、複数の設定項目を含んでいる。そして、入力設定器5は、その各設定項目について駆動設定値を入力できるように構成されている。なお、図示の例において、その設定項目は、ドエル(上ドエル、下ドエル)、クロスタイミング、前記した第2の駆動パターンにおける設定位置となっており、それぞれに対応した入力欄61,62,63,64が表示されている。また、駆動情報設定画面6は、その設定項目(入力欄61,62,63,64)に加え、中口のON/OFF設定を切り替える切替釦65も含んでいる。すなわち、図示の例では、駆動態様情報が、これらの設定項目及び中口のON/OFF設定の組み合わせから成っている。さらに、入力設定器5は、その駆動情報設定画面6において、そのような駆動態様情報を8通り(No.1~No.8)設定できる(各設定項目において8つの駆動設定値を設定できる)ように構成されている。また、その駆動態様情報は、No.毎に色分け(青、赤、黄等)がなされており、No.の数字と共にその色が表示されている。その各設定項目については、それぞれ以下の通りである。
【0037】
上ドエル、下ドエルは、最大開口位置に対する綜絖枠2の変位に関する設定値を設定する項目である。但し、そこに設定される駆動設定値(入力値)は、クランク角度の範囲であり、製織サイクルにおける中間時点であるクランク角度180°を基準としてその前後の同じ期間(範囲)の合計値である。
【0038】
なお、ドエルは、一般的には製織サイクル中に綜絖枠2を最大開口位置に維持する期間であり、その期間の始点は綜絖枠2が最大開口位置に到達するタイミングに対応し、その終点は綜絖枠2が最大開口位置から変位し始めるタイミングに対応している。そして、前記のように本発明は停留期間が存在するような開口パターンに従って製織が行われる場合を前提としていることから、停留期間に関しては、その駆動設定値によって導き出される中間時点よりも前の期間の始点が綜絖枠2を最大開口位置に到達させるタイミング(停留期間の始点)となり、同じく導き出される中間時点よりも後の期間の終点が綜絖枠2を最大開口位置から変位させ始めるタイミング(停留期間の終点)となる。
【0039】
具体的には、停留期間において綜絖枠2が上口位置となる開口パターンの場合であって、図示のように上ドエル、下ドエルの駆動設定値が100°に設定されている場合には、下口位置から綜絖枠2が変位し始めるタイミングが下ドエルの駆動設定値からクランク角度230°(=180°+100°/2)として導き出され、綜絖枠2が上口位置に到達するタイミング(停留期間の始点)が上ドエルの駆動設定値からクランク角度130°(=180°-100°/2)として導き出される。そして、上口位置から綜絖枠2が変位し始めるタイミング(停留期間の終点)が上ドエルの駆動設定値からクランク角度230°(=180°+100°/2)として導き出され、綜絖枠2が下口位置に到達するタイミングが下ドエルの駆動設定値からクランク角度130°(=180°-100°/2)として導き出される。そして、綜絖枠2が下口位置に到達した製織サイクルでは、下ドエルとして設定された期間に亘って綜絖枠2が下口位置に維持される。
【0040】
クロスタイミングは、一方の最大開口位置から他方の最大開口位置へ向けて綜絖枠2が変位する際に綜絖枠2が中口位置に達するタイミングを設定する項目である。そして、その駆動設定値(入力値)は、クランク角度である。
【0041】
設定位置は、前記した第2の駆動パターンの駆動態様で綜絖枠2を動作させる場合における、停留期間中の筬打ち時点での枠位置を設定する項目である。なお、その駆動設定値(入力値)は、中口位置を基準位置とした、その基準位置からの距離(単位:mm)として設定される。具体的には、図示の例のように駆動設定値(入力値)が0(mm)に設定されている場合には、その設定位置は中口位置と一致する位置である。なお、その設定位置は、停留期間中の筬打ち時点で、最大開口位置にある綜絖枠2を変位させて到達させる位置である。したがって、駆動態様としては、その駆動設定値からその変位に関する駆動量等が導き出される。
【0042】
また、駆動情報設定画面6における前記した中口のON/OFF設定を切り替える切替釦65は、停留期間中の筬打ち時点での設定位置への綜絖枠2の変位を実行するか否かを設定するための釦である。その切替釦65は、タッチ操作によりON/OFF設定が切り替えられるものとなっている。そして、ONに設定された場合は、その駆動態様は、停留期間中の筬打ち時点での設定位置への綜絖枠2の変位が実行される態様となる。一方、OFFに設定された場合は、その駆動態様は、設定位置の駆動設定値にかかわらず、停留期間中の筬打ち時点での綜絖枠2の変位が実行されない(綜絖枠2が最大開口位置に維持される)態様となる。
【0043】
図3に示す設定画面は、綜絖枠2を駆動するための駆動パターンを綜絖枠2毎に設定するための動作パターン設定画面7である。但し、本実施例においてその設定は、先に設定された開口パターンに対し前記した駆動態様情報を割り当てることで行われるものとする。なお、駆動態様情報は前述の駆動態様そのものではないが、その駆動態様情報と開口パターンとから連続する2つの製織サイクル間の各駆動態様が導き出されるため、開口パターンに駆動態様情報を割り当てたものは、開口パターンと駆動態様とを組み合わせたもの、すなわち、本発明で言う駆動パターンであると言える。
【0044】
その動作パターン設定画面7は、周知の開口パターンの設定画面と同じく設定枠71が行列状に配置された設定欄72を有している(図4に示すのは、設定欄72の部分拡大図である)。そして、入力設定器5は、綜絖枠2毎に、1製織サイクルを1ステップとしたステップ毎の枠位置(上口位置、下口位置)を設定することが可能であるように構成されている。因みに、図示の例は、12枚の綜絖枠2を用いて製織が行われる場合の設定例を示しており、1番目(枠No.1)の綜絖枠2から12番目(枠No.12)の綜絖枠2までの開口パターンが設定された状態を示している。また、図3では、第1ステップから第20ステップまでが示されているが、これは表示器上に一度に表示できる範囲を例示したものであり、その設定は、織柄1リピートに相当するステップ数分で行われる。そして、本実施例では、織柄1リピート分のステップ数はその20ステップを超えるステップ数であり、そのような場合には、動作パターン設定画面7は、表示器上でスクロールされるかたちとなる。
【0045】
その動作パターン設定画面7においては、設定欄72の設定枠71を選択することで設定枠71の表示状態が色付き表示の状態となり、枠位置を上口位置とする設定となる。また、設定枠71を選択せずにデフォルトの色無し表示の状態のままとすることで、枠位置を下口位置とする設定となる。そして、本実施例は、その開口パターンが前述のように3/1綾組織の開口パターンであることから、図示のような設定状態となる。すなわち、各綜絖枠2の枠位置は、3ステップ続けて上口位置に設定され(設定枠71の表示状態が色付き表示の状態)、次の1ステップが下口位置に設定され(設定枠71の表示状態が色無し表示の状態)、これが繰り返されている。そして、各綜絖枠2において、下口位置が設定されるステップは、枠No.の順に1ステップずつずれている。
【0046】
その上で、入力設定器5は、その動作パターン設定画面7において、そのように設定された開口パターンに対し前記した駆動態様情報を割り当てられるように構成されている。具体的には、入力設定器5は、動作パターン設定画面7における設定欄72上で、複数の設定枠71を含む任意の範囲を指定できるように構成されている。また、動作パターン設定画面7は、前記のような設定欄72とは別に、設定された開口パターンに対して駆動態様情報を割り当てるための設定釦73を含んでいる。その設定釦73は、指定された設定枠71に対して駆動態様情報の割り当てを行うための別ウィンドウ8を表示器上に表示するための釦である。そして、入力設定器5は、設定釦73のタッチ操作により、図5に示すような別ウィンドウ8を表示できるように構成されている。なお、その別ウィンドウ8は、1~8の番号が割り振られた選択釦81を含んでいる。各選択釦81の番号は、図2で示した駆動態様情報のNo.と対応しており、各選択釦81の左側には、図2で示した同じNo.の駆動態様情報に応じた色が表示されている。そして、入力設定器5は、前記のように複数の設定枠71を含む範囲を指定した状態において、前記の別ウィンドウ8上で選択釦81をタッチ操作することで、その指定された範囲の設定枠71に対し選択釦81に対応するNo.の駆動態様情報が割り当てられるように構成されている。
【0047】
その上で、本実施例では、その駆動態様情報の割り当ては、4ステップから成る開口パターン単位で行われるものとする。すなわち、本実施例では、各開口パターンにおけるその開口パターンを成す複数の設定枠71に対し、同じNo.の駆動態様情報が割り当てられる。
【0048】
なお、その駆動態様情報について、図2に示す例では、No.1の駆動態様情報は中口がOFFに設定されており、その駆動態様情報が開口パターンに割り当てられることで、その駆動パターンは、本発明で言う第1の駆動パターンとなる。また、No.2及びNo.3の駆動態様情報は、中口がONに設定されており、その駆動態様情報が開口パターンに割り当てられることで、その駆動パターンは、本発明で言う第2の駆動パターンとなる。但し、No.2の駆動態様情報とNo.3の駆動態様情報とは、クロスタイミングに関する駆動設定値を異ならせた設定となっている。
【0049】
図3は、動作パターン設定画面7(設定欄72)上において、そのような第1の駆動パターン、第2の駆動パターンが各綜絖枠2に対し割り当てられた状態を示している。図示の状態では、前記のような20ステップの範囲において、1~4番目の綜絖枠2に対し第2の駆動パターンが設定されている。また、5~12番目の綜絖枠2に対しては、第1の駆動パターンが設定されている。
【0050】
このように、図示の例では、第20ステップまでに4ステップから成る駆動パターン(種類が違う場合も含む)が5回繰り返されるかたちで設定されている。なお、本実施例では、図示外の設定として、第21~第24ステップについては、第17~第20ステップと同じ駆動パターンが各綜絖枠2に対し設定されているものとする。その上で、本発明においては、そのような複数の駆動パターンから成る織柄1リピート分の動作パターンが設定されるが、その動作パターンは、本実施例では、前記した24ステップで完結するのではなく、更に後続のステップまで継続するように設定されている。その動作パターンについて、詳しくは、以下の通りである。
【0051】
前記のように、第24ステップまでは、1~4番目の綜絖枠2に対し第2の駆動パターンが設定され、残りの綜絖枠2に対しては第1の駆動パターンが設定されている。なお、第2の駆動パターンに従って綜絖枠2が駆動される場合、その綜絖枠2に通された経糸は、第1の駆動パターンで駆動される綜絖枠2に通された経糸と比べ、筬打ち時点で張力が緩んだ状態となる。そのため、製織に伴って消費される経糸の消費量(経糸ビームから引き出される量)は、第1の駆動パターンで駆動される綜絖枠2に通された経糸と第2の駆動パターンで駆動される綜絖枠2に通された経糸とで異なる(第2の駆動パターンに従って綜絖枠2が駆動される場合の方が経糸の消費量が多くなる)状態となる。したがって、一部の綜絖枠2にのみ第2の駆動パターンが設定された動作パターンで製織が行われると、その経糸の消費量の違いに起因して製織が継続できない状態となる。
【0052】
そこで、図示において第1の駆動パターンが設定されている5~12番目の綜絖枠2に対しても、図示外において第2の駆動パターンが設定される。具体的には、前記した24ステップの後続の24ステップ(第25ステップから第48ステップ)に対しては、5~8番目の綜絖枠2に対し、1~4番目の綜絖枠2に対する第24ステップまでの設定と同様に、第2の駆動パターンが設定され、それ以外の綜絖枠2に対し第1の駆動パターンが設定される。また、更にその後の24ステップ(第49ステップから第72ステップ)に対しては、9~12番目の綜絖枠2に対し同様の第2の駆動パターンが設定され、それ以外の綜絖枠2に対し第1の駆動パターンが設定される。そして、その72ステップで動作パターンが完結する。すなわち、本実施例では、織柄1リピート分の動作パターンが72ステップから成るように設定される。
【0053】
なお、その各綜絖枠2に対し設定される動作パターンに含まれる第2の駆動パターンについて、前述のように、本実施例では、第2の駆動パターンのための中口ONの駆動態様情報が、駆動情報設定画面6においてNo.2、No.3に異なる内容で設定されている。その上で、本実施例では、24ステップに亘り設定される第2の駆動パターンのうち、前半の12ステップに設定される第2の駆動パターンはNo.3の駆動態様情報が割り当てられたものとされ、後半の12ステップに設定される第2の駆動パターンはNo.2の駆動態様情報が割り当てられたものとされる。このように、本実施例では、各動作パターンは、第2の駆動パターンとして2種類の第2の駆動パターンを含むように設定される。
【0054】
そして、そのように設定された綜絖枠2毎の各動作パターンは、枠No.と対応付けられたかたちで開口制御装置3における記憶器31に記憶される。
【0055】
以上のような開口装置1を備えた織機において、開口制御装置3は、前述のように設定された織柄1リピート分の動作パターンに従って綜絖枠2が動作するように、各駆動モータ21の駆動を制御する。その駆動制御は、以下のように実行される。
【0056】
前述のように、開口制御装置3における駆動指令器32は、各製織サイクルにおいてクランク角度が前記した設定角度(60°)に達した時点で、記憶器31に記憶された前記の動作パターンにおける開口パターン及び駆動態様情報に基づき、駆動モータ21(綜絖枠2)毎の駆動態様を導き出す。より詳しくは、駆動指令器32は、主軸側エンコーダ41から出力されるクランク角度信号に基づき、現在の製織サイクルが動作パターンの第何ステップかを順次把握しているものとする。その上で、駆動指令器32は、前記のクランク角度信号からクランク角度が設定角度に達したと判断された時点で、それぞれの駆動モータ21(綜絖枠2)について、1番目の綜絖枠2に対応するものから順に駆動態様を導き出す。その各駆動モータ21についての駆動態様の導出は、把握している現在の製織のステップ(現ステップ)と、記憶器31に記憶された動作パターンのうちの、その綜絖枠2の枠No.に対応付けられた動作パターンとに基づいて行われる。
【0057】
具体的には、駆動指令器32は、駆動態様を求める駆動モータ21について、当該駆動モータ21で駆動される綜絖枠2の枠No.に対応付けられた動作パターンから、現ステップ及びその次のステップ(次ステップ)に対し設定された枠位置を把握する。さらに、駆動指令器32は、現ステップ及び次ステップに対し割り当てられている駆動態様情報を把握する。その上で、それらの把握した情報に基づき、現ステップのクランク角度180°から次ステップのクランク角度180°に向けての、当該駆動モータ21の駆動態様を導出する。
【0058】
その導出される駆動態様は、前記で把握された枠位置及び駆動態様情報毎に、次のようなものとなる。現ステップ及び次ステップに対し設定された枠位置が異なる場合、駆動態様は、綜絖枠2を現ステップに設定された枠位置(上/下)から次ステップに設定された枠位置(下/上)へ変位させる態様となる。その上で、その駆動態様は、現ステップの枠位置が上口位置(下口位置)の場合には、現ステップに割り当てられた駆動態様情報における上ドエル(下ドエル)及びクロスタイミングと、次ステップに割り当てられた駆動態様情報における下ドエル(上ドエル)とに基づいて導出される態様となる。
【0059】
より具体的には、その駆動態様は、次の1)~3)の3つのタイミングを踏まえた(含む)態様となる。1)現ステップの駆動態様情報における上ドエル(下ドエル)に基づき前述のように導き出された現ステップの枠位置から綜絖枠2が変位を開始するタイミング。2)現ステップの駆動態様情報におけるクロスタイミングによる綜絖枠2が中口位置を通過するタイミング。3)次ステップの駆動態様情報における下ドエル(上ドエル)に基づき前述のように導き出された次ステップの枠位置に綜絖枠2が到達するタイミング。
【0060】
また、現ステップ及び次ステップに対し設定された枠位置が同じ(上口位置)である場合、駆動態様は、前記した停留期間のための態様となる。その上で、その駆動態様は、現ステップに割り当てられた駆動態様情報における中口のON/OFF設定に基づいて導出されると共に、その駆動態様情報における中口の設定がONの場合には設定位置の駆動設定値を踏まえて導出される態様となる。
【0061】
より具体的には、現ステップの駆動態様情報が図2におけるNo.1のように中口OFFの設定となっている場合には、駆動態様は、綜絖枠2を上口位置に維持する通常の態様となる。
【0062】
一方、現ステップの駆動態様情報がNo.2又はNo.3のように中口ONの設定となっている場合には、駆動態様は、筬打ち時点において綜絖枠2を設定位置の駆動設定値から導き出される設定位置に変位させる態様となる。その駆動態様について、前提として、その設定位置の駆動設定値は前述のように中口位置からの距離として設定されているため、駆動指令器32が上口位置からその設定位置までの綜絖枠2の移動量(距離)を演算で求めるように構成されているものとする。そのため、記憶器31には、中口位置から上口位置までの距離が前記した駆動態様情報とは別に記憶されている。さらに、その停留期間における綜絖枠2の設定位置へ向けた変位を開始するタイミング、及び設定位置から上口位置へ向けた綜絖枠2の変位で綜絖枠2が上口位置に達する到達タイミングも記憶器31に記憶されている。その上で、その駆動態様は、その開始タイミング及び到達タイミングを含むと共に、開始タイミングから筬打ち時点(クランク角度0°)及び筬打ち時点から到達タイミングにおける前記移動量を踏まえて導出された態様となる。
【0063】
その上で、駆動指令器32は、前記のクランク角度信号からクランク角度が180°に達したと判断された時点で、駆動制御器33に対して前述のように導出した駆動モータ21(綜絖枠2)毎の駆動態様に応じた駆動指令の出力を開始する。そして、駆動制御器33が駆動指令器32から出力された駆動指令に従って各駆動モータ21の駆動を制御することで、製織が行われるものとなる。
【0064】
図6は、前述した各駆動態様に従って駆動モータ21が駆動された結果として綜絖枠2がどのように変位するかを示した図である。なお、その図6において、(a)はNo.1の駆動態様情報が割り当てられた第1の駆動パターンの駆動態様で駆動モータ21が駆動される場合の綜絖枠2の変位を示し、(b)はNo.2の駆動態様情報が割り当てられた第2の駆動パターンの駆動態様の場合の綜絖枠の変位を示し、(c)はNo.3の駆動態様情報が割り当てられた第2の駆動パターンの駆動態様の場合の綜絖枠の変位を示している。(a)~(c)のそれぞれについて、詳しくは以下の通りである。
【0065】
No.1の駆動態様情報に基づく(a)では、下ドエルの駆動設定値が100°であることから、上口位置から下口位置へ向けては、綜絖枠2は、クランク角度130°で下口位置に到達するように変位する。そして、クランク角度130°で下口位置に達した綜絖枠2は、100°の期間に亘って下口位置に維持され、230°で再び上口位置へ向けて変位を開始する。また、その変位は、クロスタイミングの駆動設定値が350°であり、上ドエルの駆動設定値が100°であることから、クランク角度350°で中口位置を通過し、クランク角度130°で上口位置に到達するように行われる。そして、中口の設定がOFFであることから、綜絖枠2は、そのクランク角度130°から2製織サイクル後のクランク角度230°までの期間(停留期間)に亘って上口位置に維持され、その230°で下口位置へ向けて再び変位を開始する。
【0066】
また、No.2の駆動態様情報に基づく(b)では、上ドエル、下ドエル、クロスタイミングの駆動設定値がNo.1の駆動態様情報と同じであることから、上口位置から下口位置へ向けての変位及び下口位置から上口位置へ向けての変位は、(a)と同じ態様で行われる。但し、中口の設定がONであるため、綜絖枠2は、その停留期間中の各筬打ち時点において設定位置に位置した状態となるように変位する。
【0067】
より詳しくは、前記したようにNo.2の駆動態様情報における設定位置の駆動設定値が0(mm)であることから、その設定位置は中口位置と一致する位置である。すなわち、停留期間中の筬打ち時点(クランク角度0°の時点)で中口位置に位置するように綜絖枠2が変位する。また、前述のように停留期間中における設定位置へ向けた綜絖枠2の変位の開始タイミング及び設定位置から上口位置への到達タイミングは予め記憶器31に記憶されており、本実施例では、その開始タイミングが200°であり、到達タイミングが160°である。そこで、その停留期間中における綜絖枠2の変位は、クランク角度が200°に達した時点で開始され、クランク角度0°で中口位置に到達した後、クランク角度160°で再び上口位置に到達するような態様で行われる。なお、本実施例における3/1綾組織の開口パターンでは、停留期間中に2回の筬打ちが発生することから、停留期間中においてそのような綜絖枠2の変位が2回繰り返される。
【0068】
また、No.3の駆動態様情報に基づく(c)について、No.2の駆動態様情報と同じく中口の設定がONであり、設定位置の駆動設定値についても同じであることから、停留期間中の綜絖枠2の変位は、前記した(b)と同じ態様で行われる。また、上ドエル及び下ドエルの駆動設定値もNo.2の駆動態様情報と同じである。但し、クロスタイミングの駆動設定値はNo.2の駆動態様情報と異なっていることから、(c)では、綜絖枠2の下口位置から上口位置へ向けての変位及び上口位置から下口位置へ向けての変位は、クランク角度320°で中口位置を通過するような態様で行われる。
【0069】
そして、図3に基づく前述の72ステップから成る織柄1リピート分の動作パターンに従って綜絖枠2が駆動される場合では、例えば1~4番目の綜絖枠2は、第1~第12ステップでは(c)の態様で変位し、第13~第24ステップでは(b)の態様で変位する。また、その後の第25~第72ステップでは、その綜絖枠2は(a)の態様で変位する。
【0070】
なお、前述のように、(b)及び(c)の態様は第2の駆動パターンに従った変位態様(第2の変位態様)であり、(a)の態様は第1の駆動パターンに従った変位態様(第1の変位態様)である。
【0071】
また、いずれの変位態様も、筬打ち時点で綜絖枠2が中口位置付近に位置するような、下口位置から上口位置へ向けた綜絖枠2の変位及び上口位置から下口位置へ向けた綜絖枠2の変位を含んでいる。但し、第2の変位態様では、第1の変位態様で綜絖枠2が上口位置に維持される停留期間において、その停留期間中の各筬打ち時点で、綜絖枠2が設定位置(本実施例では中口位置)に位置するような綜絖枠2の変位を含んでいる。すなわち、第2の変位態様は、その製織サイクル中の各筬打ち時点で、綜絖枠2が中口位置又はその付近に位置するように綜絖枠2を変位させるものとなっている。
【0072】
そして、綜絖枠2に通された経糸(綜絖枠によって変位される経糸)の張力は、綜絖枠2が中口位置又はその付近に位置するときの方が、綜絖枠2が上口位置に位置するときよりも低くなる。
【0073】
以上を踏まえた上で、ステップ毎の各綜絖枠2の変位態様を見ると、第1~第12ステップ及び第13~第24ステップについては、1~4番目の綜絖枠2が第2の変位態様で変位するのに対し、5~12番目の綜絖枠2は第1の変位態様で変位する。したがって、その24ステップにおいては、3/1綾組織の開口パターン(駆動パターン)を構成する製織サイクル(4サイクル)毎に、5~12番目の綜絖枠2は、2回の筬打ち時点では経糸の張力が低くなる中口位置付近に位置するが、その間の2回の筬打ち時点では経糸の張力が高くなる上口位置に位置する。一方で、1~4番目の綜絖枠2は、その全ての筬打ち時点で、経糸の張力が低くなる中口位置又は中口位置付近に位置する。
【0074】
このように、その24ステップにおいては、5~12番目の綜絖枠2に通された経糸については、その張力が低い状態で筬打ちが行われた後に、2回に亘って張力が高い状態で筬打ちが行われる。すなわち、5~12番目の綜絖枠2に通された経糸で製織された部分は、通常の3/1綾組織の開口パターンでの製織部分となる。一方で、1~4番目の綜絖枠2に通された経糸については、毎回においてその張力が低い状態で筬打ちが行われる。それにより、その1~4番目の綜絖枠2に通された経糸で製織された部分は、通常の製織部分と比べ、その織物の表面が盛り上がった状態となる。その結果、織物には、通常の製織部分とその表面が盛り上がった製織部分とで凹凸が形成される。
【0075】
そして、前述のように、本実施例の織柄1リピート分の動作パターンは72ステップから成っており、24ステップ毎に第2の変位態様で変位される綜絖枠2が切り替えられることから、その動作パターンに従って製織される織物の表面には、その24ステップの製織範囲毎に凹凸部分が異なる位置に形成される。その結果として、そのように製織された織物は、通常の製織となる第1の駆動パターンのみが設定された動作パターンで製織された織物と比べ、特殊な風合いを有するものとなる。
【0076】
また、前述のように、本実施例の動作パターンは、クロスタイミングを異ならせた2種類の第2の駆動パターンを含んでいる。すなわち、その動作パターンは、(b)の変位態様を成す第2の駆動パターン(Bパターン)と、(c)の変位態様を成す第2の駆動パターン(Cパターン)とを含んでいる。
【0077】
その上で、クロスタイミングについては、Cパターンの方がBパターンよりも早いクランク角度に設定されていると共に、第2の駆動パターンが設定される24ステップでは、前半の12ステップに対しCパターンが設定され、後半の12ステップに対しBパターンが設定されるようになっている。さらに、織柄1リピートの72ステップ毎で見ると、例えば、1~4番目の綜絖枠2については、前記した後半の12ステップに続く48ステップに対し第1の駆動パターンが設定されており、それに続いて次の72ステップのうちの第2の駆動パターンにおけるCパターンが設定される前記した前半の12ステップが存在することとなる。すなわち、順番としては、Cパターン(12ステップ)→Bパターン(12ステップ)→第1の駆動パターン(48ステップ)→Cパターン(12ステップ)→…となる。
【0078】
なお、前記のようにクロスタイミングを異ならせると、下口位置から上口位置又は上口位置から下口位置へ綜絖枠2が変位する際の筬打ち時点における中口位置に対する綜絖枠2の位置が異なるものとなる。そして、クロスタイミングが早いほど筬打ち時点での中口位置に対する距離が大きくなり、その時点での経糸の張力が高くなる。したがって、BパターンとCパターンとのそれぞれの変位態様では、前記した停留期間における筬打ち時点での経糸の張力は同じであるが、それ以外の筬打ち時点では、Cパターンの場合の方がBパターンの場合よりも経糸の張力が若干高い状態となる。それにより、駆動パターン単位(4サイクル)での全体的な経糸の張力は、Cパターンの場合の方がBパターンの場合よりも高い状態となる。
【0079】
そして、前述のように、第2の変位態様で綜絖枠2が変位される場合のその綜絖枠2に通された経糸の製織に伴う消費量は、第1の変位態様で綜絖枠2が変位される場合のそれと比べて多くなる。そのため、一部の綜絖枠2が第2の変位態様で変位され続けると、他の綜絖枠2の経糸よりも消費量が多いことに起因し、その張力が上昇することとなる。なお、経糸が盛り上がった状態は、前述のように張力を低くすることで為されるものであるが、消費量に起因して張力が上昇すると、その盛り上がり状態が変化してしまう。
【0080】
そこで、第2の変位態様で綜絖枠2が変位されるステップにおいて、後半部分の第2の駆動パターンを、前記したBパターンのように綜絖枠2の変位に伴う経糸の張力が前半のCパターンの場合よりも低くなるように設定することで、その製織の範囲における盛り上がり状態が均一なものとなる。
【0081】
なお、本発明については、以上で説明した開口装置の一実施形態(前記実施例)に限定されるものではなく、以下の(1)~(8)のような別の実施形態(変形例)でも実施が可能である。
【0082】
(1)第2の駆動パターンの駆動態様で綜絖枠を動作させる場合における停留期間中の筬打ち時点での枠位置である設定位置について、前記実施例では、その設定位置は、中口位置を基準位置とした上で、その基準位置に対する距離(単位:mm)で設定されている。
【0083】
しかし、本発明においては、設定位置は、中口位置を基準位置として設定される位置に限らず、最大開口位置を基準位置として設定される位置であっても良い。また、設定位置の設定は、距離(単位:mm)で設定されるのにも限らず、その設定位置の中口位置又は最大開口位置からの距離の最大開口量(中口位置から最大開口位置までの距離)に対する割合を例えば%等で設定されるようにしても良い。
【0084】
(2)前記実施例では、設定位置に関する駆動設定値が0(mm)に設定されている。すなわち、その設定位置が中口位置と一致するように設定されている。
【0085】
しかし、本発明においては、設定位置は、そのような中口位置と一致する位置に限定されず、中口位置を超えない範囲で最大開口位置よりも中口位置側の位置であれば良い。そして、その設定位置は、経糸の種類や経糸の設定張力等の製織条件、及び織物に求められる表面の盛り上がり状態等を踏まえ、前記範囲において適宜に設定される。その上で、設定位置を最大開口量に対する50%の位置(最大開口位置と中口位置との中間位置)よりも中口位置側の位置に設定することで、より好ましい風合いの織物を得ることができる。
【0086】
(3)前記実施例では、停留期間中に綜絖枠を設定位置へ向けて変位させる制御が、設定された設定位置の駆動設定値に加え、記憶器に予め記憶された上口位置から設定位置への変位の開始タイミング、及び設定位置から上口位置への到達タイミングに基づいて行われている。
【0087】
しかし、本発明において、その制御は、そのような開始タイミング及び到達タイミングを予め設定される設定情報としてそれに基づいて行われるのには限らず、綜絖枠を設定位置へ向けて変位させる際の変位速度(駆動モータの駆動速度)を前記設定情報としてそれに基づいて行われるようにしても良い。その場合、駆動指令器は、設定位置が設定されるのに伴い、その設定位置と前記速度とから前記の開始タイミング及び到達タイミングを求めるように構成される。そして、駆動指令器は、設定された設定位置、前記速度、及びその求められた開始タイミング、到達タイミングに基づいて前記制御が行われるように、それらに基づく駆動態様に応じた駆動指令を駆動制御器に対して出力する。
【0088】
(4)前記実施例では、12枚の綜絖枠における4枚毎に、24ステップに亘り第2の駆動パターンが設定されており、その結果として織柄1リピート分の動作パターンが72ステップから成っている。
【0089】
しかし、本発明において、同じステップで第2の駆動パターンが設定される綜絖枠の枚数や第2の駆動パターンが設定されるステップ数は、前記実施例の数に限らず、目的とする織物に応じて適宜設定される。
【0090】
その上で、前記実施例では、その第2の駆動パターンが設定されるステップの範囲において、クロスタイミングの駆動設定値が異なる2種類の第2の駆動パターン(前述のBパターン、Cパターン)が含まれている。
【0091】
しかし、各種条件(経糸の種類、経糸の設定張力等の製織条件、第2の変位態様で綜絖枠を変位させるステップ数等)によっては、第2の変位態様で綜絖枠を変位させた場合でも、前述したような経糸の消費量に起因する張力の変化が小さく、その張力の変化による織物の表面の盛り上がり状態に対する影響が少ない場合がある。したがって、その場合には、動作パターンに含まれる第2の駆動パターンを1種類のみとしても良い。一方で、前記した経糸の消費量に起因する張力の変化が前記の盛り上がり状態に大きく影響するような前記各種条件の場合には、動作パターンに含まれる第2の駆動パターンを、クロスタイミングの駆動設定値が異なる3種類以上とするのが好ましい。
【0092】
(5)前記実施例では、駆動態様に関する情報(駆動態様情報)は、上口位置又は下口位置への変位に関する複数サイクルから成る開口パターンに対応できる1つのまとまった情報として、ドエル(上ドエル、下ドエル)、クロスタイミング、中口動作に関する設定(設定位置、中口のON/OFF設定)を含むように設定されている。
【0093】
しかし、本発明において、開口パターンと組み合わされる駆動態様として設定される情報は、そのようなかたちに設定されるのには限らない。例えば、前記実施例の場合で言うと、駆動態様情報としては3種類の情報が設定されているが、ドエルに関する駆動設定値は1種類のみであり、クロスタイミングに関する駆動設定値、中口動作に関する設定及び駆動設定値は2種類のみである。そこで、これらをそれぞれ別に設定する(個別設定する)ようにしても良い。その上で、開口パターンと駆動態様とを組み合わせるにあたり、そのように個別設定されたそれぞれを開口パターンに割り当てるようにすれば良い。因みに、その場合における設定画面上での各設定枠の表示態様は、前記実施例のような色付きの表示態様に加え、別の表示態様(例えば、ハッチング等)を組み合わせた表示とするのが好ましい。なお、前記のように個別設定される場合において、前記実施例のドエルに関する駆動設定値のように全て同じ値(1種類)に設定され、基本的にその織機での製織においてその駆動設定値に変更が無い場合には、その駆動設定値を固定値として予め記憶器に記憶させておくようにしても良い。
【0094】
また、前記実施例では、前記のように駆動態様情報がドエルに関する情報を含んでおり、一方の最大開口位置(下口位置、上口位置)から他方の最大開口位置(上口位置、下口位置)へ向けての綜絖枠の変位における、その変位をさせ始めるタイミング及び最大開口位置に到達させるタイミングの各タイミングをその駆動設定値から導き出すようになっている。しかし、その各タイミングに関する設定は、前記実施例のようにドエルを設定するのには限らず、その各タイミングが駆動設定値として直接的に設定されるようにしても良い。なお、前記のように駆動態様情報にドエルに関する情報が含まれる場合での導き出される前記した各タイミングについて、前記実施例では、その各タイミングは、製織サイクルの中間時点であるクランク角度180°を基準としてドエルの駆動設定値から導き出されている。しかし、そのドエルの駆動設定値を用いて前記の各タイミングを求める場合の基準となる時点は、その製織サイクルの中間時点に限らず、クロスタイミングに基づいて求められる時点であっても良い。具体的には、例えばクロスタイミングがクランク角度350°である場合では、その基準となる時点は、そのクランク角度350°よりも180°前の時点であるクランク角度170°となる。
【0095】
(6)前記実施例では、開口パターンに対する駆動態様情報の割り当ては、動作パターン設定画面における設定欄上で範囲を指定し、その指定された範囲の設定枠に対し駆動態様情報を割り当てるかたちで行われている。その上で、前記実施例では、その割り当てが開口パターン単位で(各開口パターンにおけるその開口パターンを成す複数の設定枠に対し同じ駆動態様情報が割り当てられるかたちで)行われている。
【0096】
しかし、前述のように前記実施例の構成では、その範囲の指定は任意の範囲で行えるようになっている。したがって、駆動態様情報が割り当てられる範囲は、前記実施例のような開口パターン単位に限らず、動作パターン中のある開口パターンの途中のステップで駆動態様情報が切り替わるような範囲とすることも可能である。具体的には、前記実施例の場合で言うと、1~4番目の綜絖枠について、第1ステップからの3単位の開口パターン(~第12ステップ)に対し第2の駆動パターンのCパターンが設定され、それに続く3単位の開口パターン(第13ステップ~第24ステップ)に対し第2の駆動パターンのBパターンが設定されている。すなわち、第2の駆動パターンの駆動態様については、第12ステップと第13ステップとの間で切り替えられるような設定となっている。これを、例えば、その切り替わりが第14ステップと第15ステップとの間で行われるように設定しても良い。すなわち、第13ステップ~第16ステップの4ステップで1単位が構成されている開口パターンにおいて、第13、14ステップに対しCパターンが設定され、第15、16ステップに対しBパターンが設定されるようにしても良い。また、第1の駆動パターンの駆動態様についても、その第1の駆動パターンの駆動態様情報が複数設定されるような場合には、前記と同様に開口パターンの途中のステップでその駆動態様が切り替えられるような設定としても良い。
【0097】
さらに、前記実施例のように駆動パターンの設定が開口パターン単位で行われる場合の開口パターンに対する駆動態様情報の割り当ては、前記のように動作パターン設定画面における設定欄上で範囲を指定して行うのに限らず、例えば、綜絖枠毎に各駆動態様情報がどのような順番で何回ずつ(開口パターンの何単位ずつ)繰り返されるかを数字等で設定できるようにし、その設定に基づいて駆動態様情報が開口パターンに割り当てられるようにしても良い。
【0098】
(7)開口パターンと駆動態様との組み合わせから成る駆動パターンについて、前記実施例では、その駆動パターンの設定が、先に設定された開口パターンに対し駆動態様情報を割り当てることで行われている。
【0099】
しかし、本発明において、駆動パターンの設定は、動作パターン設定画面の設定欄上の開口パターンに対し駆動態様情報を割り当てて行うのに限らず、1単位の開口パターンに対し駆動態様情報を割り当てた駆動態様毎の複数の駆動パターンを予め準備して記憶器に記憶させておき、その駆動パターンを織柄1リピート分の動作パターンに応じて設定欄に割り振るようにしても良い。また、設定欄に対する設定については、そのように開口パターン単位で設定するのでは無く、枠位置(上口位置、下口位置)と駆動態様とを組み合わせたステップ単位の設定情報を、想定される枠位置と駆動態様の組み合わせ分だけ予め準備して記憶器に記憶させておき、開口パターンを設定するようなかたちでその設定情報をステップ単位で(設定枠毎に)設定するようにしても良い。その場合、開口パターンの1単位となるステップ数分の設定情報によって駆動パターンが構成される。
【0100】
(8)本発明による製織方法が適用される製織について、前記実施例では、織組織が3/1綾組織である織物を製織する場合を例に説明した。しかし、本発明は、他の綾組織(2/2綾組織等)や朱子組織等の織物を製織する場合のように、2以上の連続する製織サイクルで枠位置が同じ位置に維持される開口パターンで製織(綜絖枠の往復駆動)が行われる製織であれば適用可能である。
【0101】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 開口装置
2 綜絖枠
21 駆動モータ
22 運動変換機構
23 開口側エンコーダ
3 開口制御装置
31 記憶器
32 駆動指令器
33 駆動制御器
4 主軸
41 主軸側エンコーダ
5 入力設定器
6 駆動情報設定画面
61,62,63,64 入力欄
65 切替釦
7 動作パターン設定画面
71 設定枠
72 設定欄
73 設定釦
8 別ウィンドウ
81 選択釦

図1
図2
図3
図4
図5
図6